【0008】
図1はプレート積層型熱交換器の第1実施形態であり、仮固定する際の各部材が分解斜視図として示されている。熱交換器1は完全積層型構造を有し、天板プレート2、底板プレート3および熱交換部となる複数のインナープレート4を備えている。
各プレートの材質は、アルミニウム(合金を含む)やステンレス等の金属であり、無垢材でも母材の表面にろう材が被覆されたクラッド材でも良い。なお、無垢材の場合は、接合箇所にろう材を塗布して使用する。
各プレートの平面形状は方形状(具体的には長方形)に形成されている。天板プレート2は冷却水等の流体入口管5と流体出口管6を有し、その4隅には熱交換器1を例えば固定対象物に固定するため等のボルト孔7が設けられている。各インナープレート4および底板プレート3の4隅にもそのボルト孔7に一致するようにボルト孔8,9が設けられている。
底板プレート3の4つの周縁部における中央部には爪部10がそれぞれ形成されている。底板プレート3の成形に際して、各爪部10の形成位置にそれぞれ面方向に突出する長方形の爪部10が一体的に形成され、その突出部を90度曲げ起こすことにより図示のような角度の爪部10が形成される。本実施形態における爪部10の高さは底板プレート3、複数のインナープレート4および天板プレート2の合計厚さに一致している。
天板プレート2および各インナープレート4における4つの周縁部には、平面形状が方形な切欠部11が形成されている。各切欠部11の位置は底板プレート3に形成された各爪部10の位置に矢印で示すようにそれぞれ適合している。
図2は、
図1のプレート積層型熱交換器を仮固定した状態を示す斜視図である。天板プレート2、底板プレート3および複数のインナープレート4は互いに密着して積層され、底板プレートに形成された各爪部10が天板プレート2と各インナープレート4に形成された切欠部11に嵌合されている。
図1の分解状態から
図2の状態に積層して仮固定するには、底板プレート3の各爪部10に各インナープレート4の各切欠部11を一致させ、その状態で各爪部10とそれに対応する各切欠部11とをそれぞれ嵌合させながら積層する。次いで積層したインナープレート4の上面に天板プレート2を積層する。その際、インナープレート4と同様に各爪部10と各切欠部11をそれぞれ嵌合させながら積層する。
別方法として、予め複数のインナープレート4を積層しておき、その積層体に天板プレート2を配置してから底板プレートを積層体の底面に配置し、各爪部10を曲げ起こして一気に嵌合させることもできる。さらに、底板プレート3に形成する爪部10の長さを天板プレート2に達するまで増加させることにより、天板プレート2、インナープレート4および底板プレートを一括して仮固定することもできる。
このように積層された各プレートは爪部10と切欠部11の嵌合による位置合わせ効果により、高い精度で且つ容易に積層することができる。そして
図2のように仮固定した積層体は、次いでろう付けなどにより互いに固定される。
図3はプレート積層型熱交換器の第2実施形態であり、仮固定する際の各部材が分解斜視図として示されている。熱交換器1はカッププレート型構造を有している。本実施形態の熱交換器1が
図1の完全積層型の熱交換器1と異なる部分は、天板プレートとカップ形状の底板プレートの組み合わせ形態であり、その他は同様に構成される。従って
図1の熱交換器1と同様な部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図3において、熱交換器1を構成する底板プレート3は、
図1のような平板状ではなく周縁部に短い側壁を有するカップ型に形成されている。天板プレート2は平板状に形成され、その周縁部が底板プレート3の短い側壁の上部に形成されたフランジに装着できるようになっている。
本実施形態においては、積層に際して最下段となるインナープレート4の周縁部には3つの爪部10が形成されている。インナープレート4は、図示のように一方の端部が台形状に形成され他方の端部がほぼ方形状に形成されており、爪部10は台形状の端部の2つの斜面および方形状の端部の中央部に形成されている。
爪部10を形成しない他のインナープレートの周縁部には、それぞれ3つの切欠部11が形成されている。各切欠部11の位置は前記爪部10の位置に対し、矢印で示すように適合している。そして最下段のインナープレート4の各爪部10と他のインナープレート4の各切欠部11を嵌合させることにより、複数のインナープレート4が互いに仮固定される。
図4は、上記のように互いに仮固体したインナープレート4をろう付けなどにより互いに固定した後、その底面側に底板プレート3を配置し、次いで上面側に配置した天板プレート2の周縁部を底板プレート3の側壁上部のフランジに装着した状態である。この
図4のような状態に組み立てた後、天板プレート2、インナープレート4および底板プレート3の各部材間を一括してろう付けし固定することができる。
図5は、
図3に示すインナープレート部分のみを示しており、図中の一点鎖線で示す記号VIの範囲は爪部10と切欠部11の一部である。なお
図5に示す例では、爪部10を曲げ起こす前の状態、すなわちインナープレートの面に平行な状態の爪部10が示されている。このように形成された爪部10と切欠部11の嵌合工程を
図6に示す。
図6(A)は嵌合前の
図5と同じ状態を示し、(B)は嵌合後の状態を示し、(C)は(B)のC−C矢視の部分拡大断面図である。
図6(A)に示すように、積層に際して最下段に位置するインナープレート4の周縁部に形成された爪部10は、互いに平行する一対の側面12,13およびそれらの先端を形成した端部14を有する細長い方形状とされ、側面12,13の外側には細長い方形状の間隙部15が設けられている。
爪部10の長手方向の長さは、爪部10を形成しない他のインナープレート4の合計厚さに適合した値になっている。なお2つの間隙部15は爪部10の曲げ起こしを容易にするために設けられている。そしてこの2つの間隙部15における底面位置は爪部10を曲げ起こす際の曲げの起点部となる。
爪部10を形成しない他のインナープレート4に形成される各切欠部11は、
図6(B)に示すように互いに平行する一対の側面16,17と、それら側面16,17に直交する平坦な底面18を有する方形状とされ、一対の側面16,17の間隔は爪部10の側面12と13の間隔に適合する値、すなわち適宜な嵌合強度を確保及び維持できる値になっている。
爪部10を形成するインナープレート4と、爪部10を形成しない複数のインナープレート4とを、
図6(A)における矢印のように積層する際には、全てのインナープレート4の周縁部を互いに一致させる。そのように一致させた状態で爪部10を
図6(B)における矢印のように曲げ起こすことにより、爪部10と複数の切欠部11が一度に嵌合する。
図6(C)に示すように、爪部10を曲げ起こして切欠部11に嵌合させた状態において、爪部10の曲げ方向の面19、すなわち曲げ起こした状態における切欠部11の底面18と対面する面は、切欠部の底面18から所定の間隔を持って離間している。この離間の間隔は、爪部10の2つの間隙部15における平坦な底面位置、すなわち、爪部10を曲げ起こす際の曲げの起点部となる位置と切欠部11の底面18の位置との間隔を選択することにより任意に設定できる。
このように爪部10の曲げ方向の面19を切欠部の底面18から所定の間隔で離間させることにより、前記のように爪部の折れ曲がっている角部が仮に多少湾曲している場合、あるいは角度に多少のばらつきが生じた場合でも、嵌合に際してその曲がり部分へのプレートの乗り上げが確実に防止される。そして、爪部は切欠部の底面と干渉することがないので、より確実、高精度に仮固定することができる。
図7はプレート積層型熱交換器の第3の実施形態であり、(A)は仮固定する際の各インナープレートの分解斜視図,(B)は仮固定後のインナープレートの斜視図である。本実施形態が
図3に示されているインナープレート4と異なる部分は、爪部10の形状と、それに嵌合する切欠部11の形状のみで、その他は同様に構成される。
図7(A)に示すように、インナープレート4は、その長手方向の一方の端部が台形状に形成され、他方の端部がほぼ方形状に形成されており、爪部10は台形状の端部の周縁部から離れた内側の2箇所と、方形状の端部の周縁部の1箇所にそれぞれ形成されている。台形状の端部の周縁部から離れた内側の2箇所に形成された爪部10は、細長く形成されたインナープレート4の幅方向外側に曲げ起こされる。
この爪部10は
図6に示す爪部10と同様に、互いに平行する一対の側面およびそれらの先端を形成した端部を有する細長い方形状とされる。そしてその長さは
図6の例と同様に、爪部10を形成しない他のインナープレート4の合計厚さに適合した値になっている。なお方形状の端部の周縁部の1箇所に形成された爪部10も同様な形状となっている。
爪部10を形成しない他のインナープレート4の切欠部11は、それらインナープレート4における台形状の端部と方形状の端部では、その形状が互いに異なる。すなわち台形状の端部の切欠部11は細長い方形状の孔部により形成される。その方形状の孔部における長手方向の長さは、それと嵌合する前記爪部10の側面の間隔に適合する値、すなわち適宜な嵌合強度が確保及び維持できる値になっている。一方、方形状の端部の切欠部11は
図6に示す切欠部と同様な形状とされる。
図7(A)に示す各インナープレート4を積層し、爪部10と各切欠部11を互いに嵌合させて仮固定すると
図7(B)のようになる。
図7(B)において、インナープレート4における台形状の端部では、最下段のインナープレート4の一対の爪部10がそれに積層された上段側の各インナープレート4の切欠部11に直線的に嵌入されて互いに嵌合される。一方、インナープレート4における方形状の端部では、最下部のインナープレート4の一対の爪部10が曲げ起こされて、上側に積層された各インナープレート4の切欠部11に横方向から嵌合される。
図8はプレート積層型熱交換器の第4の実施形態であり、
図8(A)は仮固定する際の各インナープレートの分解斜視図で、
図8(B)は
図8(A)に示すB部分の拡大斜視図である。本実施形態の各インナープレートの形状は、
図7に示すインナープレート4と同様であり、長手方向の一方の端部が台形状に形成され、他方の端部がほぼ方形状に形成されている。ただし本実施形態ではインナープレート4に形成される流体の流通孔が積層段数のほぼ中央部を境に上下2種類に分かれている。
すなわち、
図8(A)における上段側のインナープレート4の流通孔は、プレートのほぼ全面に整列されているが、下段側のインナープレート4の流通孔は、プレート面に間隔をあけて整列されている。このように積層されたインナープレート4の熱交換性能は、上段側のほうが下段側より高くなる。かかるインナープレート構成による熱交換器は、例えばその上段側の外面(天面)に高い熱交換性能を要求する電気部品を配置し、下段側の外面(底面)に熱交換性能が多少低くてもよい電気部品を配置することができる。それにより単一の熱交換器で2種の冷却が可能になり、全体的な熱交換効率も向上できる。
図8(A)において、積層されるインナープレート4のほぼ中央部に位置する1枚のインナープレート4に複数個所の爪部10が形成され、それ以外のインナープレート4に切欠部11が形成されている。爪部10を形成するインナープレート4には、その台形状の端部における周縁部の3か所にそれぞれ方形状の爪部10が形成され、
図8(B)に拡大して示すように、周縁部の中央の爪部10は下向きに形成され、それを挟む周縁部の左右の爪部10は上向きに形成されている。また方形状の端部における周縁部の3箇所にもそれぞれ方形状の爪部10が形成され、周縁部の中央の爪部10は上向きに形成され、それを挟む周縁部の左右の爪部10は下向きに形成されている。
爪部10を形成しない上段側の各インナープレート4の切欠部11は、前記爪部10を形成したインナープレート4における上向きの爪部10に対応する位置に方形状に形成されている。一方、爪部10を形成しない下段側の複数のインナープレート4の各切欠部11は、前記爪部10を形成したインナープレート4における下向きの爪部10に対応した位置に方形状に形成されている。
上記のように構成した複数段のインナープレート4は、ほぼ中央部に位置する1枚のインナープレート4に形成された爪部10と、それ以外のインナープレート4に形成された切欠部11とを互いに嵌合させることにより仮固定される。嵌合に際しては、
図6に示す嵌合工程と同様な方法で行うこともできるが、場合によっては、
図8(A)に示すように、爪部10を上向きまたは下向きに形成した状態で切欠部11に嵌合することもできる。
上記のように、本実施形態では上向きの爪部10と下向きの爪部10の位置が互いに異なっている。その理由は上段側の各インナープレート4との嵌合位置と下段側の各インナープレート4との嵌合位置が互いに重ならないようにし、誤組立てを防止するためである。
図9は第5の実施形態であって、
図9(A)は仮固定する際の各インナープレートの分解斜視図、
図9(B)は
図9(A)のB部分を示す拡大斜視図、
図9(C)は
図9(B)のC−C矢視の部分拡大断面図である。本実施形態のインナープレート構成は、
図8に示すインナープレート構成の変形例である。
図8の実施形態と異なる部分は、爪部10を形成するインナープレート4が最下段の上側に接して積層されるインナープレート4であること、および爪部10の一部と最下段のインナープレートの切欠部11の嵌合構造が異なることの2点である。
爪部10を形成するインナープレート4において、その周辺部の3箇所には
図8の実施形態と同様に上向きの方形状の爪部10が形成されている。さらに、
図9(B)に拡大して示すように、4箇所に短い円柱状(いわゆる半抜きダボ型)の爪部10aが形成されている。
爪部10を形成しない上段側の各インナープレート4の切欠部11は、前記上向きの爪部10に対応した位置に形成され、その形状は
図8の実施形態と同様に方形状である。一方、最下段のインナープレート4の切欠部11aは、前記爪部10aの円柱状の形状に対応する大きさの断面が円形な貫通孔になっている。
爪部10を形成したインナープレート4と方形状の切欠部11を形成した上段側のインナープレート4との嵌合は、
図8の実施形態の場合と同様である。一方、短い円柱状の爪部10aを形成したインナープレート4と円形な貫通孔からなる切欠部11aを形成した最下段のインナープレート4との嵌合は、
図9(C)に示されているように、円柱状の爪部10aを円形な貫通孔からなる切欠部11aに嵌入させることによって行われる。