(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802813
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】アヒル腸炎ウイルス及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 7/04 20060101AFI20201214BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20201214BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20201214BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20201214BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20201214BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20201214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20201214BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20201214BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20201214BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20201214BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20201214BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20201214BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20201214BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20201214BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20201214BHJP
C12N 15/45 20060101ALN20201214BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20201214BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20201214BHJP
A61K 39/17 20060101ALN20201214BHJP
A61K 39/145 20060101ALN20201214BHJP
A61K 39/295 20060101ALN20201214BHJP
A61K 39/12 20060101ALN20201214BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
C12N7/04ZNA
C12N15/869 Z
C12N15/38
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
A61K39/245
A61P37/04
A61K39/39
A61P31/22
A61P31/14
A61P31/04 171
!C12N15/31
!C12N15/45
!C12N15/40
!C12N15/44
!A61K39/17
!A61K39/145
!A61K39/295
!A61K39/12
!A61K39/00 J
【請求項の数】26
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-567689(P2017-567689)
(86)(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公表番号】特表2018-519826(P2018-519826A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016065132
(87)【国際公開番号】WO2017001469
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】15174515.5
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500061279
【氏名又は名称】セヴァ・サンテ・アニマール
【氏名又は名称原語表記】CEVA SANTE ANIMALE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】サエキ ユカリ
(72)【発明者】
【氏名】サイトウ シュウジ
【審査官】
星 功介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/036735(WO,A1)
【文献】
Archives of Virology,2015, Vol.160, Nol.1,pp.267-274
【文献】
Antiviral Research,2013, Vol.97, No.3,pp.329-333
【文献】
Journal of General Virology,2006, Vol.87, No.9,pp.2517-2525
【文献】
Virus Genes,2012, Vol.45, No.2,pp.295-303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−15/90
A61K 39/00−39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アヒル腸炎ウイルス(DEV)であって、該ウイルスは不活性UL4遺伝子を有するDEV。
【請求項2】
前記UL4遺伝子が、突然変異、又は欠失、又は割り込みを受けている、請求項1記載のDEV。
【請求項3】
前記UL4遺伝子配列の少なくとも20%が、欠失されている、請求項2記載のDEV。
【請求項4】
前記UL4遺伝子配列の少なくとも50%が、欠失されている、請求項2記載のDEV。
【請求項5】
前記UL4遺伝子配列の少なくとも60%が、欠失されている、請求項2記載のDEV。
【請求項6】
外来核酸をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項記載のDEV。
【請求項7】
外来核酸が、不活性UL4遺伝子内に局在する、請求項6記載のDEV。
【請求項8】
前記ウイルスが、UL4遺伝子配列の全て又は一部に代えて、UL4遺伝子に局在する外来核酸を含む、請求項6又は7記載のDEV。
【請求項9】
外来核酸が、UL44遺伝子、UL27−UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45−UL46遺伝子間領域、UL50−UL51遺伝子間領域、US4遺伝子、US5遺伝子、US7遺伝子、US7−US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択される挿入部位に局在する請求項6記載のDEV。
【請求項10】
外来核酸が、抗原又は免疫促進性分子をコードする、請求項6〜9のいずれか一項記載のDEV。
【請求項11】
外来核酸が、鳥病原体由来の抗原をコードする、請求項10記載のDEV。
【請求項12】
抗原が、鳥パラミクソウイルス1型抗原性タンパク質又はペプチド、ガンボロ病ウイルスの抗原性タンパク質又はペプチド、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)の抗原性タンパク質又はペプチド、マイコプラズマ・ガリセプチカムの抗原性タンパク質又はペプチド、又は鳥インフルエンザウイルスの抗原性タンパク質又はペプチドから選択される、請求項11記載のDEV。
【請求項13】
抗原が、ニューカッスル病ウイルス(NDV)又はそのフラグメント、伝染性嚢病ウイルスVP2(IBDV)又はそのフラグメント、伝染性咽頭気管炎ウイルス(ILTV)のgBタンパク質又はそのフラングメント、Mycoplasma galisepticumの40Kタンパク質又はそのフラグメント、及び鳥インフルエンザウイルスの表面タンパク質ヘマグルチニン(HA)又はそのフラグメントから選択される、請求項12記載のDEV。
【請求項14】
抗原性ペプチドが、IBDVのVP2タンパク質若しくはその免疫原性フラグメント、又はインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質若しくはそのフラグメントである、請求項13記載のDEV。
【請求項15】
前記DEVが、ニワトリにおいて弱毒化されている、請求項1〜14のいずれか一項記載のDEV。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項記載のDEVのゲノムを含む、核酸分子。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項記載のDEV又は請求項16記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項18】
コンピテント細胞に、請求項16記載の核酸分子又は請求項1記載のDEVを感染させ、DEVを回収することを含む、請求項1〜15のいずれか一項記載のDEVを製造又は複製するための方法。
【請求項19】
家禽へのワクチン接種又は免疫付与に使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のDEV。
【請求項20】
家禽において防御免疫を誘導するために使用するための、請求項1〜15のいずれか一項記載のDEV。
【請求項21】
家禽が、ニワトリである、請求項19又は20記載の使用のためのDEV。
【請求項22】
DEVが、注射により投与される、請求項19〜21のいずれか一項記載の使用のためのDEV。
【請求項23】
DEVが、インオボ又は孵化後第1日若しくは第2日に投与される、請求項19〜22のいずれか一項記載の使用のためのDEV。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか一項記載のDEV、請求項16記載の核酸分子、又は請求項17記載の宿主細胞、及び薬学的又は獣医学に許容し得る賦形剤又は担体を含む、組成物。
【請求項25】
佐剤をさらに含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
鳥に免疫付与するためのワクチン接種キットであって、以下の成分、
a.有効量の請求項24又は25記載の組成物、及び
b.該組成物を該鳥に投与するための手段
を含むワクチン接種キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ウイルス及びその使用に関する。さらに詳細には、本発明は、新規アヒル腸炎ウイルス(Duck Enteritis Virus)構築体、及び関心対象のポリペプチドを発現、又は動物、特に家禽に送達するための、それらの使用に関する。本発明は特に、家禽に、鳥病原体に対するワクチン接種をするのに好適である。
【背景技術】
【0002】
家禽の肉及び卵は重要な食物源であり、それらの消費は人口増加及び人々の高い品質−価格比に起因して継続的に増加している。近年の鳥インフルエンザの流行により、世論の焦点が家禽の健康や食品の安全性及び安全保障に集まり、また家禽ワクチン技術が世界的に注目されている。
【0003】
病原体タンパク質を発現しているリコンビナントウイルスが、標的病原体に対する家禽ワクチンとして一般的に用いられている。このようなウイルスを含むワクチンは、感染細胞内で外来病原体タンパク質又はそのフラグメントの発現を誘導し、その後特異的且つ保護的な体液性免疫や細胞媒介性免疫を誘導できる。
【0004】
これに関し、病原体由来の外来遺伝子が統合されているウイルスがいくつか、ウイルスベクターワクチンとして使用するために開発されている。これらのウイルスベクター(又はリコンビナントウイルス)は典型的には、鶏痘(EP−A−0,517,292)などの鳥ポックスウイルス、ヘルペス(疱疹)ウイルス、特にHVT(例えば、WO−A−87/04463、5,980,906、5,853,733)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)又は鳥アデノウイルスに基づいている。これらのリコンビナント鳥ウイルスは、疾患及び/又は動物に応じて様々なレベルの保護を提示する。
【0005】
例えば、ポックスウイルス、NDV、及びアデノウイルスはニワトリにおいて存続しないので、それらはニワトリでの長期継続期間の免疫のための最良の候補とは考えられない。リコンビナントHVT発現抗原は利点を示しており、現在ニワトリのワクチン接種用に市販されている(例えば、Vectormune(登録商標)IBD、Vectormune(登録商標)ND、又はVectormune(登録商標)LT)。
【0006】
しかしながら、病原体の数と多様性の増加、及び家禽消費の継続的成長を考慮して、家禽において有効な防御免疫を引き起こすために使用され得る、代替的なワクチン接種戦略及び/又はシステムが必要とされている。特に、非常に若年の動物(3日以内)又はインオボ(in ovo)で免疫を獲得するのに有効なシステムが必要とされている。
【0007】
これに関し、動物での、特に家禽でのワクチン接種を改良して安定なタンパク質発現及び有効な防御効果を許容する、代替的な適合性ウイルスベクターを見出すことを目的として新しいウイルス血清型が探索されている。
【0008】
WO 2014/0036735で、ニワトリにおけるアヒル腸炎ウイルス(Duck Enteritis Virus)の使用の可能性が議論されている。DEVは自然にアヒル(カモ)又はガチョウに感染するものの、ニワトリに対する公知の向性はない。この明細書では、DEV構築体が1週齡のニワトリに筋肉内注射により投与されてもよいことを示唆する。この明細書ではしかしながら、晩期投与のみが報告される。
【0009】
DEVを用いてさらに実験を行うことによって、本発明者らはしかしながら、このようなウイルスが若年のニワトリ(3日以下)又はインオボで投与されると致死的であることを見出した。驚くべきことに、孵化後一週でニワトリに野生型DEV(又はWO 2014/0036735で提案されるような全てのネイティブな遺伝子を含むDEV構築体)を投与することは、良好な寛容性を示すようであるが、孵化後第1日又はインオボでこのような構築体を投与することは、動物の夥しい大量死(すなわち、80〜100%の範囲)を引き起こす。さらにいっそう驚くべきことに、本発明者らは、DEVの構造を改変して、ごく早期(3日以下)のものを含む家禽にて又はインオボで使用されてもよく、且つインビボにて実質的で早期的なタンパク質発現を引き起こすことのできるDEV構築体を生成することを可能としている。このようなウイルスはしたがって、家禽にワクチン接種するための新規な効力あるベクターを表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ごく早期(すなわち、孵化後第3日又はそれ以前や、インオボ)を含む動物、特に家禽においてインビボで、遺伝子又はタンパク質を発現するのに好適な新規ウイルス構築体を提供する。特に、本発明はUL4遺伝子の不活化によって得られる新規DEVを提供し、このようなDEVが(i)インビボ、特にニワトリにおいて弱毒化されていること、及び(ii)安定であって防御免疫を誘発するのに好適な様態で外来遺伝子を発現することができることを立証する。このようなDEVは、例えばニワトリに対する公知な天然の向性を有しないので、ニワトリをワクチン接種するためのこのようなDEV構築体の使用は、汎発又はワクチン接種を受けていない動物への混入のリスクを伴うものでない。さらに、ニワトリはDEVに対する母系の抗体又は免疫を有さず、本発明のウイルスは、ワクチン接種を受けた動物においてごく早く免疫の開始を誘発するために使用することができる。驚くべきことに、以前に示されたとおり、野生型DEVは若年のニワトリ又はインオボにおいて致死的であるが、本発明のDEVは安全であり、関心対象の遺伝子をインビボで事実上発現することができる。このような新規DEVはしたがって、非ヒト動物、特に家禽をワクチン接種するための、且つ早期防御免疫を与えるための非常に強力なベクターを表す。
【0011】
本発明の目的は、さらに詳細にはアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を有する。本発明は実際に、UL4遺伝子を不活化することによって、生存能力があり安定且つ複製性のDEVを得ることが可能なこと、及び外来遺伝子材料の挿入によって、リコンビナントDEVを生成するためにこのようなウイルスが使用され得ることを示す。結果はさらに、このようなウイルスから細胞感染に伴ってこのような外来遺伝子材料が高発現されること、及びこのような発現は長期に亘り安定なままであることを示す。さらに、そして顕著に、ネイティブなDEVや本発明者らにより生成された多くの他の欠失されたDEV構築体は若年のニワトリ(孵化後第3日又はそれ以前)及びインオボにて病原性又は致死性であることが見出されたが、UL4の不活化は、インオボを含め若年の動物内にタンパク質及び抗原を発現させるのに安全に使用されることのできる弱毒化ウイルスを生成する。このような知見は総体的に驚くべきであり、本発明のウイルスの優れた利点及び有用性を提示する。
【0012】
本発明のさらなる目的はしたがって、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を有し、外来核酸を含む。
【0013】
特定の実施形態によれば、UL4遺伝子は、突然変異、若しくは欠失、若しくは割り込みを受けており、且つ/又は外来核酸は、UL4遺伝子配列の全て又は一部に代えて、UL4遺伝子に局在し、且つ/又は外来核酸は、鳥病原体をコードする。
【0014】
本発明のさらなる目的は、不活性UL4遺伝子を有するDEVのゲノムを含む核酸分子である。
【0015】
本発明はさらに、先に定義したようなDEV又は核酸を含む宿主細胞に関する。
【0016】
本発明はまた、コンピテント細胞に先に定義したようなDEV又は核酸分子を感染させ、DEVを回収することを含む、先に定義したようなDEVを製造又は複製するための方法も提供する。
【0017】
本発明はまた、DEVのUL4遺伝子配列に、好ましくは全て又は少なくとも20%のUL4遺伝子配列に代えて、外来核酸を挿入することを含む、リコンビナントDEVを作成するための方法にも関する。
【0018】
本発明はまた、先に定義したようなDEV、核酸、又は宿主細胞、薬学的又は獣医学的に許容し得る賦形剤又は担体、及び任意で佐剤を含む組成物も提供する。
【0019】
本発明はまた、先に定義したようなDEV、核酸、又は宿主細胞、薬学的又は獣医学的に許容し得る賦形剤又は担体、及び任意で佐剤を含むワクチンも提供する。
【0020】
本発明のさらなる目的は、鳥類、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日もしくはそれ以前又はインオボ)へのワクチン接種又は免疫付与をする使用のための先に定義したような組成物、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0021】
本発明のさらなる目的は、鳥類、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日もしくはそれ以前又はインオボ)において防御免疫を誘導する使用のための先に定義したような組成物、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0022】
本発明はまた、非ヒト動物、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日もしくはそれ以前又はインオボ)にワクチン接種する方法であって、当該非ヒト動物に先に定義したような組成物、又はウイルスを投与することを含む方法にも関する。
【0023】
本発明の特定の目的は、家禽にワクチン接種する方法であって、先に定義したような組成物、又はウイルスをインオボ投与することを含む方法である。
【0024】
別の本発明の特定の目的は、家禽にワクチン接種する方法であって、先に定義したような組成物、又はウイルスを、孵化後第1日(すなわち、約24時間以内)に投与することを含む。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、非ヒト動物において一以上の鳥病原体に対して免疫原性又は保護的応答を誘導するための方法であって、当該非ヒト動物、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日もしくはそれ以前又はインオボ)に、先に定義したような組成物、ワクチン又はウイルスを投与することを含む方法を提供する。
【0026】
本発明のウイルス又は組成物は、任意の経路によって投与され得る。好ましくは、それらはインオボ、又は孵化後1又は2日に皮下(例えば、s.c.)注射により投与され、非常に早期に免疫を付与する。
【0027】
本発明はさらに、鳥に免疫付与するためのワクチン接種キットであって、以下の成分:
a.有効量の前記組成物、及び
b.前記組成物を当該鳥に投与するための手段
を含むワクチン接種キットを提供する。
【0028】
本発明は、任意の動物においてポリペプチドを発現させるため、好ましくは鳥のワクチン接種のために使用されてもよく、1又は数種のポリペプチド又はペプチド、特に鳥病原体の免疫原性ペプチドを発現させるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】アヒル腸炎ウイルス(DEV)ゲノム、及び挿入部位を含むリコンビナントDEV/rpsLneo-DsRed2のクローニングされた領域の場所の概略図である。
【
図2】ウイルスのゲノム構造を確認するためにPCR反応で増幅されたジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の場所を示す、リコンビナントDEV/rpsLneo-DsRed2ゲノムの略図である。
【
図3】DEVゲノム、並びにpUC18-KAPEVAC-UL4delのUL4遺伝子及びクローニングされた領域の場所の概略図である。
【
図4】DEVゲノム、並びにウイルスのゲノム構造を確認するためにPCR反応で増幅されたジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の場所を示す、UL26/UL27挿入領域の場所の概略図である。
【
図5】DEVゲノム、並びにUL23遺伝子と、pUC18-KAPEVAC-UL23del-BacVP2及びpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2のクローニングされた領域の場所の概略図である。
【
図6】DEVゲノム、及びUL45/UL46挿入領域の場所の概略図である。
【
図7】DEVゲノム、及びUL50/UL51挿入領域の場所の概略図である。
【
図8】DEVゲノム、並びにUS7領域及びpUC18-KAPEVAC-US7-BacVP2クローニングされた領域の場所の概略図である。
【0030】
[発明の詳細な説明]
本発明は一般的には、弱毒化DEVに、さらには、そのゲノム内の特定の挿入部位に位置する外来遺伝子配列(1または複数)を含むDEVに関する。本発明はまた、このようなDEVを含む組成物に、さらには動物、特に家禽、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日もしくはそれ以前、又はインオボ)のワクチン接種のための、それらの使用にも関する。
【0031】
本開示は、以下の定義を参照することにより最大限に理解されよう。
【0032】
定義
「ウイルス」の用語は特に、カプシド又はカプセル剤内に封入された核酸分子(例えば、ゲノム)を含むウイルス粒子意味する。「ウイルス」の用語はまた、ウイルスベクター又は単離されたウイルスゲノム意味する。
【0033】
「リコンビナント」の用語は、遺伝的技術を使用して生成、設計又は修飾されている分子を意味する。ウイルスに対して、「リコンビナント」の用語はさらに具体的には、そのゲノム(又はその祖先のゲノム)が少なくとも1つの核酸配列の挿入又は欠失によって修飾されているウイルスを意味する。
【0034】
「外来核酸」の用語は、ウイルスに対して、そのウイルスのゲノム内に自然には見出されない、又は当該ゲノム内に自然に見出されるが異なるフォーム若しくは異なる位置の核酸を意味する。
【0035】
本願明細書において、「核酸」又は「核酸(複数)」の用語は、デオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)などの、任意の核酸分子又は配列を意味し、例えば、一本鎖又は二本鎖であり得る。核酸は、ORFを含んでも、又は含まなくてもよい。核酸分子は、人工的な合成、リコンビナント技術、酵素による技術、宿主細胞での複製、又はこれらの組み合わせによるなど、当技術分野において自体公知の技術によって生成され得る。
【0036】
「遺伝子」は、ポリペプチド(例えば、ペプチド、タンパク質など)又はRNAなどの産物をコードするオープンリーディングフレームを含む、核酸分子又は配列を意味する。
【0037】
「弱毒化(された)」の用語は本願明細書で使用する場合、動物モデルにおいて疾病を本質的に引き起こさないウイルスをいう。弱毒化ウイルスは典型的には、宿主内でその死を引き起こすことなく複製できる。弱毒化ウイルスはより詳細には、1×10
3プラーク形成単位(pfu)/卵の投与分で注射されると胚において病原性でないウイルスを意味する。最も好ましい弱毒化ウイルスは、少なくとも70%の注射された卵中、より好ましくは少なくとも80%の注射された卵中、さらにより好ましくは少なくとも90%、95%、97%、98%、99%以上において1×10
3pfu/卵の投与分で安全である。本発明の弱毒化ウイルスは、第0日を含む孵化後注射(すなわち、孵化後0.1〜48時間)についても安全である。
【0038】
「鳥(avian)」の用語は、鳥綱(Aves)のクラスのトリ(bird)類などの、全種類の鳥類、すなわち、羽が生えていて、翼があり、二足の、内温性、且つ卵生の脊椎動物を含むことを意図する。本発明に関連して、鳥類又は鳥種はより詳細には、家禽などの経済的及び/又は農学的関心対象のトリ類、より好ましくはニワトリ及びシチメンチョウ、又はハクチョウ及びオウムなどの鑑賞鳥(ornamental bird)類をいう。
【0039】
「ワクチン」の用語は本願明細書で使用する場合、生物における免疫応答の惹起、刺激、又は増幅に使用され得る物質を意味する。
【0040】
「免疫応答」は、宿主における関心対象の組成物又はワクチンへの細胞性及び/又は抗体媒介性免疫応答の発生を意味する。通常「免疫応答」は、対象となる組成物又はワクチンに含まれる抗原(1種又は複数種)に特異的向性のある抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、及び/又は細胞毒性T細胞の生成を含む。好ましくは、免疫応答は、新しい感染への抵抗性が増強されることになり、且つ/又はその疾患の臨床的重症度が低減するように保護的である。
【0041】
「インオボ」投与又は注射の用語は一般的に、卵に含まれる胚内への接種又は注射を意味する。インオボ注射は、好ましくは孵化前の第5日と第1日との間の任意の時点で行なわれる。
【0042】
アヒル腸炎ウイルス
アヒル腸炎ウイルス(DEV)は、アヒルウイルス性腸炎ウイルス(DVEV)としても公知であり、自然にアヒル及びガチョウに感染する。DEVの全長ヌクレオチド配列が決定されており、オンラインで利用可能である(例えば、JQ673560参照)。ウイルスゲノムは約162Kbを含み、約80の別異のタンパク質をコードしている。DEVの様々な血清型、並びにJansen株、CSC株、CHv株、VAC株、及び2085株などの株が単離されている。
【0043】
DEVはあまりその特徴付けがなされておらず、遺伝子を発現するためのベクターとしてのその使用は深く検討されていない。例えば、Liu et al (2013)及びWO 2014/0036735は、ニワトリ内に遺伝子を発現させるためにリコンビナントDEVを使用することを試みている。彼らは、ネイティブな遺伝子発現を変えることなく、ウイルスゲノムのUS7遺伝子とUS8遺伝子との間に核酸がクローニングされているDEV構築体を利用している。このような構築体は、1週齡のニワトリへ筋肉内注射によって転移され得ると報告されているが、しかしながら、家禽のインオボワクチン接種のため、又は若年の家禽、すなわち孵化後第3日以内、特に孵化後第1日若しくは第2日のワクチン接種のためのDEVの何らかの使用の可能性は、当該文献又は他の何れの先行技術文献にも開示されていない。
【0044】
DEVを用いてさらなる実験を行うことによって、本発明者らは驚くべきことに、このウイルスが若年のニワトリ(3日以下)又はインオボで投与されると致死的であることを見出した。驚くべきことに、孵化後一週でニワトリに野生型DEV(又はWO 2014/0036735で提案されるような全てのネイティブな遺伝子を含むDEV構築体)を投与することは、良好な寛容性を示すようであるが、孵化後第1日又はインオボでこのような構築体を投与することは、動物の夥しい大量死(すなわち、80〜100%の範囲)を引き起こす(実施例1に報告のとおり)。
【0045】
さらにいっそう驚くべきことに、本発明者らは、DEVの構造を改変して、ごく早期(3日以下)のものを含む家禽にて又はインオボで使用されてもよく、且つインビボにて実質的で早期的なタンパク質発現を引き起こすことのできるDEV構築体を生成することを可能としている。さらに詳細には、本発明者らはDEVを用いてさらなる研究を行い、異なる遺伝子欠失又は改変を持つ種々のリコンビナントを生成した。本発明者らは驚くべきことに、これらの構築体の1つが、安定、安全且つ強力なDEVリコンビナントであるものの、その他はインオボで本質的に致死的であることを発見している。さらに詳細には、UL4遺伝子の不活化によって、(i)インビボ、特にニワトリにおいて弱毒化され、また(ii)安定であって防御免疫を誘発するのに好適な様態で外来遺伝子を発現することのできるリコンビナントDEVを得ることができる。本発明は実際に、UL4遺伝子を不活化することによって、生存能力があり安定且つ複製性のDEVを得ることが可能なこと、及び外来遺伝子材料を挿入するためにこのようなウイルスが使用され得ることを示す。結果はさらに、このようなウイルスから細胞感染に伴ってこのような外来遺伝子材料が高発現されること、及びこのような発現は長期に亘り安定なままであることを示す。さらに、そして顕著に、ネイティブなDEV又は他のリコンビナントDEVは若年のニワトリ(3日齢未満又はインオボ)にて病原性又は致死性であるが、UL4の不活化は、若年の家禽及びインオボ内にタンパク質又は抗原を発現させるのに安全に使用されることのできる弱毒化DEVを生成する。DEVは、例えばニワトリに対する公知な天然の向性を有しないので、ニワトリをワクチン接種するための本発明のDEV構築体の使用は、汎発又はワクチン接種を受けていない動物への混入のリスクを伴うものでない。さらに、ニワトリはDEVに対する母系の抗体又は免疫を有さず、本発明のウイルスは、ワクチン接種を受けた動物においてごく早く免疫の開始を誘発するために使用することができる。
【0046】
本発明の目的はしたがって、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を有する。
【0047】
本発明のさらなる目的は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を有し、外来核酸を含む。
【0048】
別の本発明の目的は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは、少なくとも第一及び第二の不活性遺伝子を有し、第一の不活性遺伝子はUL4遺伝子であり、第二の不活性遺伝子はUL23及びUS7遺伝子から選択される。
【0049】
本発明のDEVは、任意のDEV種又は株から調製され得る。DEVの株がいくつか報告されており、CSC株(Genbank番号:JQ673560)、Jansen株、CHv株(Genbank番号:JQ647509)、VAC株(Genbank番号:EU082088)、及び2085株(Genbank番号:JF999965)などの公的なコレクションから入手できる。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明のDEVは、Jansen株若しくはCSC株から選択される親株、又はJansen株若しくはCSC株と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する任意のDEV株より由来するか又は調製される。
【0051】
本発明は、UL4遺伝子を不活化すること(すなわち、非機能性とすること又は欠失させること)によって、インオボ又は若年の家禽に注射しても安全であり、家禽においてタンパク質を複製及び発現できる、弱毒化DEVを生成するのが可能であることを示す。DEVのUL4遺伝子は、核タンパク質をコードすると予測される。しかしながら、DEVのUL4遺伝子の実際の機能は不明確なままである。本発明までは、UL4欠損DEVウイルスを生成できることは公知でなく、鳥類にて致死的となることなしにUL4欠損DEVウイルスが外来遺伝子を複製及び発現する能力は全く公知でなかった。
【0052】
UL4遺伝子は典型的には、DEVゲノムの717bpからなる。CSC株を参照することによれば、UL4遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド112845〜ヌクレオチド113561に対応する。DEVのJansen型株のUL4遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号:13に示される。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUL4遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。
【0053】
本発明に関連して、不活性UL4遺伝子を有するDEVは、機能性UL4タンパク質を発現できないDEVを意味する。不活性UL4遺伝子はしたがって、野生型UL4タンパク質をコードできない、突然変異、欠失、及び/又は割り込みを受けているUL4遺伝子を意味する。
【0054】
特定の変異は、全長UL4タンパク質の発現を妨げる、UL4コーディング配列における点変異である。このような変異は、その配列に終止コドン若しくは非センスコドンを導入し得るか、又はコードされるタンパク質に必須アミノ酸残基(1または複数)の置換を起こし、結果として不活性タンパク質を生じさせる。
【0055】
本発明の特定のDEVにおいて、UL4遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも85%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、UL4遺伝子配列の少なくとも400bp、より好ましくは少なくとも500bp、少なくとも600bp、又はそれ以上の欠失を有する。
【0056】
具体的な実施形態において、本発明のDEVは、UL4遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜500、より好ましくは少なくともヌクレオチド100〜600、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド80〜650に亘る欠失を有する。具体例では、本発明のDEVはUL4遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド667(すなわち、約85%)の欠失を有する(例えば、DEV/UL4/rpsLneo-DsRed2)。
【0057】
実施例に示されるように、不活性UL4遺伝子を有するDEV構築体は安定であり、培養物中で複製されることができ、そして家禽卵又は若年の家禽に安全に投与されることができる。このようなウイルスはしたがって、外来核酸材料、特に抗原性コーディング遺伝子を含むリコンビナントDEVを生成して、家禽においてこのような遺伝子を発現させるのに使用され得る。
【0058】
特定の実施形態では、本発明はしたがって、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を有し、外来核酸を含む。
【0059】
好ましい実施形態では、外来核酸は、存在しているUL4遺伝子配列(したがって、遺伝子配列に割り込まれていることにより遺伝子が不活性となっているもの)に加えて、又はUL4遺伝子の欠失された配列に代えて、又は突然変異されたUL4遺伝子配列において、のいずれかにて、DEVウイルスゲノムのUL4遺伝子配列に局在する。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明のDEVは、UL4遺伝子配列に欠失を有し、欠失されたヌクレオチドの代わりに局在する外来核酸を含む。
【0061】
別の特定の実施形態では、外来核酸は、存在している遺伝子配列に加えて、又は欠失された配列に代えて、又は変異遺伝子配列において、のいずれかにて、UL4遺伝子配列と別異のDEVウイルスゲノムのクローニング部位に局在する。このような付加的な挿入部位は、UL44遺伝子、UL27−UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45−UL46遺伝子間領域、UL50−UL51遺伝子間領域、US4遺伝子、US5遺伝子、US7遺伝子、US7−US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択され得る。
【0062】
本発明のDEVにおいて、外来遺伝子は一般的に、転写プロモーターの制御下にある。好ましくは、プロモーターはその外来遺伝子と共にクローニングされる。プロモーターは、任意の天然又は合成プロモーターであり得、細胞又はウイルス遺伝子から由来してもよい。好適なプロモーターの例として、例えば、Coa5などのニワトリβ-アクチン(Bac)プロモーター又はその誘導体、Pecプロモーター、マウスサイトメガロウイルス(Mcmv)最早期(ie)1プロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(Hcmv)、シミアンウイルス(SV)40プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、又はプロモーター活性を保持するその任意のフラグメントが挙げられる。
【0063】
さらに、本発明のDEVは、様々な外来核酸を含んでもよい。これに関し、様々な外来核酸は、単一又は様々な別異のプロモーターの制御下、先に記載したようなUL4領域に挿入され得る。あるいは、DEVは、UL4に挿入される外来核酸、及び一以上の別異の挿入部位に挿入される一以上の外来核酸を含み得る。このような付加的な挿入部位は、UL44遺伝子、UL27−UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45−UL46遺伝子間領域、UL50−UL51遺伝子間領域、US4遺伝子、US5遺伝子、US7遺伝子、US7−US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択され得る。
【0064】
これに関し、特定の実施形態では、本発明は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子及び不活性UL44遺伝子を有する。さらに詳細には、本発明はDEVに関し、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸と、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL44遺伝子へとクローニングされた第二の外来核酸とを含む。UL44遺伝子は典型的には、DEVゲノムの1296bpからなる。CSC株を参照することによれば、UL44遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド27419〜ヌクレオチド28714に対応する。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUL44遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。本発明の特定のDEVにおいて、UL44遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、UL44遺伝子配列の少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれ以上の欠失を有する。具体的な実施形態において、本発明のDEVは、UL44遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜1000、より好ましくは少なくともヌクレオチド100〜1100、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド100〜1200に亘る欠失を有する。具体例では、本発明のDEVはUL44遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド1246(すなわち、90%超え)の欠失を有する。
【0065】
別の特定の実施形態では、本発明は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子及び不活性UL23遺伝子を有する。このような本発明のリコンビナントDEVの例として、JK015、JK022、JK023、JK024、及びJK025が挙げられる。本発明は、これら2つの遺伝子の不活化で、高度に弱毒化されたDEVが生成されることを示し、インオボ投与での生存率は約95%である。得られた結果は、このような弱毒化ウイルスが事実上インビトロで複製でき、また外来遺伝子配列を発現できることも示す。さらに詳細には、本発明はDEVに関し、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸と、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL23遺伝子へとクローニングされた第二の外来核酸とを含む。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL23遺伝子へとクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは、不活性UL4遺伝子及び不活性US7遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL23遺伝子へとクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは、不活性UL4遺伝子及び不活性UL23遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、UL26-27遺伝子間領域へと、又はUL45-46遺伝子間領域へと、又はUL50-51遺伝子間領域へとクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。DEVのUL23遺伝子はチミジンキナーゼをコードしており、これはヌクレオチド合成の触媒反応に関わると考えられる。本発明までは、UL23欠損DEVウイルスを生成できることは公知でなかった。UL23遺伝子は典型的には、DEVゲノムの1077bpからなる。CSC株を参照することによれば、UL23遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド77997〜ヌクレオチド79073に対応する。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUL23遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。本発明の特定のDEVにおいて、UL23遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、UL23遺伝子配列の少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれ以上の欠失を有する。具体的な実施形態において、本発明のDEVは、UL23遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜900、より好ましくは少なくともヌクレオチド100〜1000、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド80〜1000に亘る欠失を有する。具体例では、本発明のDEVはUL23遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド1027(すなわち、約90%)の欠失を有する。
【0066】
さらなる特定の実施形態では、本発明は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子及び不活性US4遺伝子を有する。さらに詳細には、本発明はDEVに関し、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸と、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUS4遺伝子へとクローニングされた第二の外来核酸とを含む。DEVのUS4遺伝子は糖タンパク質Dをコードしており、これはウイルスエンベロープ上、及び感染細胞の細胞膜上に局在すると考えられる。本発明までは、US4欠損DEVウイルスを生成できることは公知でなかった。US4遺伝子は典型的には、DEVゲノムの1380bpからなる。CSC株を参照することによれば、US4遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド141123〜ヌクレオチド142502に対応する。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUS4遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。本発明の特定のDEVにおいて、US4遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、US4遺伝子配列の少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれ以上の欠失を有する。具体的な実施形態において、本発明のDEVは、US4遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜1000、より好ましくは少なくともヌクレオチド150〜1150、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド100〜1300に亘る欠失を有する。具体例では、本発明のDEVはUS4遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド1330(すなわち、90%超え)の欠失を有する。
【0067】
これに関連し、特定の実施形態では、本発明は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子及び不活性US5遺伝子を有する。さらに詳細には、本発明はDEVに関し、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸と、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUS5遺伝子へとクローニングされた第二の外来核酸とを含む。DEVのUS5遺伝子は糖タンパク質Jをコードしており、その機能は不明のままである。本発明までは、US5欠損DEVウイルスを生成できることは公知でなかった。US5遺伝子は典型的には、DEVゲノムの1620bpからなる。2085株及びJansen株などの特定のDEV株では、遺伝子の変異の結果、US5遺伝子はより短い(約1197bp)。CSC株を参照することによれば、US5遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド142662〜ヌクレオチド144281に対応する。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUS5遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。本発明の特定のDEVにおいて、US5遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、US5遺伝子配列の少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれ以上の欠失を有する。具体的な実施形態において、本発明のDEVは、US5遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜1000、より好ましくは少なくともヌクレオチド100〜1100、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド80〜1120に亘る欠失を有する。具体例では、Jansen株から生成された本発明のDEVはUS5遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド1147(すなわち、90%超え)の欠失を有し、CSC株から生成されたDEVはUS5遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド1570の欠失を有する。
【0068】
別の特定の実施形態では、本発明は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子及び不活性US7遺伝子を有する。このような本発明のリコンビナントDEVの例として、JK016、JK025、JK026、JK027、及びJK028が挙げられる。本発明は、これら2つの遺伝子の不活化で、高度に弱毒化されたDEVが生成されることを示し、インオボ投与で0%の死亡率となっている。得られた結果は、このような弱毒化ウイルスが事実上インビトロで複製でき、また外来遺伝子配列を発現できることも示す。さらに詳細には、本発明はDEVに関し、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸と、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUS7遺伝子へとクローニングされた第二の外来核酸とを含む。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUS7遺伝子へとクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは、不活性UL4遺伝子及び不活性US7遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL23遺伝子へとクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは、不活性UL4遺伝子及び不活性US7遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、UL26-27遺伝子間領域へと、又はUL45-46遺伝子間領域へと、又はUL50-51遺伝子間領域へとクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。DEVのUS7遺伝子は糖タンパク質Iをコードしており、これはウイルス細胞の細胞伝播に関わると考えられる。本発明までは、US7欠損DEVウイルスを生成できることは公知でなかった。US7遺伝子は典型的には、DEVゲノムの1116bpからなる。CSC株を参照することによれば、US7遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド145769〜ヌクレオチド146884に対応する。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUS7遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。本発明の特定のDEVにおいて、US7遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、US7遺伝子配列の少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれ以上の欠失を有する。具体的な実施形態において、本発明のDEVは、US7遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜900、より好ましくは少なくともヌクレオチド100〜1000、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド80〜1120に亘る欠失を有する。具体例では、本発明のDEVはUS7遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド1066(すなわち、90%超え)の欠失を有する。
【0069】
これに関連し、特定の実施形態では、本発明は、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関し、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子及び不活性US10を有する。さらに詳細には、本発明はDEVに関し、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸と、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUS10遺伝子へとクローニングされた第二の外来核酸とを含む。DEVのUS10遺伝子はビリオンタンパク質をコードすると予測され、その機能は不明のままである。本発明までは、US10欠損DEVウイルスを生成できることは公知でなかった。US10遺伝子は典型的には、DEVゲノムの約900〜970bpからなるが、株によって異なる。CSC株を参照することによれば、US10遺伝子はそのゲノムのヌクレオチド136391〜ヌクレオチド137320に対応する。本願に含まれる情報及び一般常識を用いて、又は配列アライメントにより、当業者であれば容易に、任意のDEV株におけるUS10遺伝子の正確な場所を同定し得ることは理解される。本発明の特定のDEVにおいて、US10遺伝子配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失される。好ましい例において、本発明のDEVは、US10遺伝子配列の少なくとも500bp、より好ましくは少なくとも600、700、又は800、又はそれ以上の欠失を有する。具体的な実施形態において、本発明のDEVは、US10遺伝子配列の少なくともヌクレオチド200〜700、より好ましくは少なくともヌクレオチド100〜800、さらにより好ましくは少なくともヌクレオチド80〜850に亘る欠失を有する。具体例では、CSC株から生成された本発明のDEVはUS10遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド880(すなわち、80%超え)の欠失を有し、VAC株から生成されたDEVはUS10遺伝子配列のヌクレオチド51〜ヌクレオチド847の欠失を有する。
【0070】
本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸、及びUL27遺伝子とUL26遺伝子との間に局在する遺伝子間領域へクローニングされた第二の外来核酸を含むDEVにも関する。本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、UL27遺伝子とUL26遺伝子との間に局在する遺伝子間領域へクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。CSC株を参照することによれば、UL27とUL26との間に局在する遺伝子間領域は、そのゲノムのヌクレオチド72195〜ヌクレオチド72646に対応する。クローニングは、このようなドメイン内の任意の位置で、より好ましくはヌクレオチド72300とヌクレオチド72500との間、さらにより好ましくはヌクレオチド72350とヌクレオチド72450との間で実施され得る。具体的な実施形態において、クローニングはヌクレオチド72431とヌクレオチド72432との間で実施される。
【0071】
本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは、当該遺伝子の少なくとも20%に代えてUL4遺伝子へとクローニングされた第一の外来核酸、及びUS7遺伝子とUS8遺伝子との間に局在する遺伝子間領域へクローニングされた第二の外来核酸を含むDEVにも関する。このような遺伝子間クローニング部位は、WO 2014/0036735に記載されている。
【0072】
本発明はまた、DEVであって、当該ウイルスは不活性UL4遺伝子を含み、且つ当該ウイルスは、及びUL45遺伝子とUL46遺伝子との間、又はUL50遺伝子とUL51遺伝子との間に局在する遺伝子間領域へクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。CSC株を参照することによれば、UL45とUL46との間に局在する遺伝子間領域は、そのゲノムのヌクレオチド25132〜ヌクレオチド25352に対応する。クローニングは、このようなドメイン内の任意の位置で、より好ましくはヌクレオチド25200とヌクレオチド25300との間で実施され得る。具体的な実施形態において、クローニングはヌクレオチド25275とヌクレオチド25276との間で実施される。CSC株を参照することによれば、UL50とUL51との間に局在する遺伝子間領域は、そのゲノムのヌクレオチド15914〜ヌクレオチド16063に対応する。クローニングは、このようなドメイン内の任意の位置で、より好ましくはヌクレオチド15970とヌクレオチド16010との間で実施され得る。具体的な実施形態において、クローニングは、ヌクレオチド15979とヌクレオチド15980との間で実施される。
【0073】
ウイルス構築及びクローニングは、当技術分野において自体公知の技術によって成し遂げられ得る。遺伝子クローニング及びプラスミド構築は当業者にとって周知であり、本質的には標準的な分子生物学技術によって実施され得る(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 4th Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, USA, 2012)。典型的には、リコンビナントウイルスは、ウイルスゲノムと、挿入部位からヌクレオチドに隣接して組換えを許容する、挿入すべき核酸を含む構築体(例えば、相同性プラスミド)との間の相同組換えにより調製され得る。クローニングは、内在性の配列の欠失を伴って又は伴わずに行うことができる。特定の実施形態では、リコンビナント配列は、少なくとも50ヌクレオチド以上などの、そのゲノムの配列の少なくとも一部に代えてクローニングされる。このような欠失は、ウイルスのクローニング受容能を高める。
【0074】
構築のために、ターゲッティングされる挿入領域を含む配列は典型的には、先ず好適なベクターへとクローニングされて相同性ベクターを生成する。ベクターの例としては、pBR322、pBR325、pBR327、pBR328、pUC18、pUC19、pUC7、pUC8、又はpUC9などのプラスミド;ラムダファージ及びM13ファージなどのファージ;又はpHC79などのコスミドが挙げられる。ターゲッティング領域列は、従来のクローニング方法によってベクター内に統合される。使用されるターゲッティング領域配列は、その次のDEVウイルスゲノムとのインビボ相同組換えを許容するために十分な長さであることが好ましい。好ましくは、クローニングされるターゲッティング領域配列は、少なくとも約100ヌクレオチドの長さ、典型的には300を超え、500から2000ヌクレオチドの間の長さを有するべきであろう。外来核酸(典型的には、遺伝子及びプロモーターを含むもの)はその後、ベクターへクローニングされたターゲッティング領域内に挿入される。挿入は好ましくは、クローニングされたインサート各々の側に、相同組換えを許容するのに十分な長さ(例えば、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも100ヌクレオチド)の、ターゲッティング領域の配列の一部を残すように行うべきであろう。制限酵素及びライゲーション手法などの古典的な技術によって、外来核酸をクローニングされたターゲッティング領域へと導入することができる。適切な場合、突然変異(1または複数)をターゲッティング領域の特異的な部位で導入し、制限酵素に対する新しい切断部位を創出してもよい。当業者により周知の、例えば、インビトロ変異生成又はPCRなどの従来の変異生成技術がその目的のために使用されてもよい。外来核酸がターゲッティング領域内に挿入されている相同性ベクターは次いで、電気穿孔、リン酸カルシウム、リポフェクチン・ベースの方法などの公知技術を用いて、DEV感染細胞又はDEVゲノムでトランスフェクションされた細胞へと導入され得る。リコンビナントウイルスはこれにより、当該細胞においてウイルスとベクターとの間での組換えによって生成される。得られたリコンビナントウイルスは、例えば、ハイブリダイゼーション、配列決定、PCR又は機能性アッセイ法によるなど公知技術を使用し、実施例に記載したように外来核酸によってコードされる任意の産物を検出して、遺伝子型により又は表現型により選択され得る。選択されたリコンビナントウイルスは、細胞培養液において大規模に培養されることができ、その後に、コンビナントウイルスを回収することができる。
【0075】
外来遺伝子
本発明のDEVは、任意の外来核酸、好ましくは任意の外来遺伝子を含み得る。外来遺伝子は、RNA又は生物活性及び/又は免疫原性(例えば、抗原性)のあるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドなどの、対象となる任意の産物をコードし得る。好ましい実施形態では、外来遺伝子は、抗原、さらにより好ましくは動物、特に鳥で感染を引き起こすことができる病原性物の抗原から由来するペプチド又はポリペプチドをコードする。鳥で感染を引き起こす病原体の例としては、ウイルス、細菌、真菌、原虫などが挙げられる。免疫原性の(ポリ)ペプチドは、好ましくは当該病原体の表面タンパク質、分泌タンパク質、若しくは構造タンパク質又はそのフラグメントであり得る(これらに由来し得る)。ポリペプチドは、例えば、ウイルス性、原核性、真核性又は合成によるなど、任意の供給源に由来することができる。
【0076】
好ましい実施形態では、外来遺伝子は、トリ病原性物質の抗原ペプチドをコードする。
【0077】
病原性物質の具体的な例としては、鳥インフルエンザウイルス、鳥パラミクソウイルス1型、これはニューカッスル病ウイルス(NDV)とも呼ばれる、鳥メタニューモウイルス、マレック病ウイルス、ガンボロ(Gumboro)病ウイルス、これは伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)とも呼ばれる、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、Escherichia coli、サルモネラ種、Pasteurella multocida、Riemerella anatipestifer、Ornithobacterium rhinotracheale、Mycoplasma gallisepticum、Mycoplasma synoviae、鳥種に感染するマイコプラズマ微生物又はコクシジウム類が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
好適には、外来遺伝子は、NDVのFタンパク質、NDVのHNタンパク質、IBDVのVP2タンパク質、ILTVのgBタンパク質、Mycoplasma gallisepticumの40Kタンパク質、若しくは鳥インフルエンザウイルスの表面タンパク質ヘマグルチニン(HA)、又はその免疫原性フラグメントから選択される抗原をコードする。本発明に関連して、タンパク質の「フラグメント」の用語は、好ましくは当該タンパク質の少なくとも5の、さらにより好ましくは5〜100の連続したアミノ酸残基を含むフラグメントを意味する。好ましい実施形態では、このようなフラグメントは、少なくとも1つのエピトープを含み、且つ/又はインビボで免疫原性である、すなわち、全長タンパク質に結合する抗体の生成をもたらすことができる。
【0079】
免疫原性ペプチドの具体的な例としては例えば、VP2の1〜453、gBの1〜469、又はFの1〜540、のアミノ酸残基を含むペプチドが挙げられる。
【0080】
好ましいDEV
本発明の好ましいDEVは、全UL4遺伝子の欠失を含む。
【0081】
本発明の特定のDEVは、DEVUL4ゲノムのヌクレオチド51〜ヌクレオチド667の欠失などの、UL4遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド600の欠失を含む。
【0082】
別の本発明の好ましいDEVは、不活性UL4遺伝子及び不活性UL23遺伝子を含む。
【0083】
別の本発明の好ましいDEVは、不活性UL4遺伝子及び不活性US7遺伝子を含む。
【0084】
本発明の好ましいDEVにおいて、外来核酸は鳥抗原、より好ましくはVP2、HN若しくはFタンパク質又はその免疫原性フラグメントをコードする。
【0085】
別の本発明の好ましいDEVは、UL4遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド600の欠失、及び以下から選択される少なくとも1つのさらなる欠失を含む。
・UL44遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド1200の欠失、
・UL23遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド1000の欠失、
・US4遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド1300の欠失、
・US5遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド1100の欠失、
・US7遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド1000の欠失、及び/若しくは
・US10遺伝子配列の少なくともヌクレオチド100〜ヌクレオチド800の欠失、又はこれらの組み合わせ。
【0086】
核酸
本発明はまた、不活性UL4遺伝子を有するDEVのゲノムを含む核酸分子にも関する。このような核酸は、一本鎖又は二本鎖の、DNA又はRNAであり得る。特定の実施形態では、核酸は先に定義したようなDEVのゲノムを含むDNA分子である。
【0087】
核酸は、遊離の形態、又はプラスミド、BACなどのベクター等の中にあってもよい。核酸は単離されたものでも、又は宿主細胞に含まれるものでもよい。
【0088】
細胞培養液
本発明のリコンビナントウイルスは、任意のコンピテント細胞培養において増殖され得る。ウイルスの必要とされる成長が成し遂げられた後は、細胞をスクレーパーを使用して又はトリプシンでウェルから剥離させてもよく、そして感染細胞は遠心分離により上清から分離されてもよい。
【0089】
コンピテント細胞の例としては、CEF、胚発育卵、ニワトリ腎臓細胞などが挙げられる。細胞又はウイルスは、Eagle's MEM、Leibowitz-L-15/McCoy 5A(1:1混合)培地などの培地にて約37℃で3〜6日間培養され得る。感染細胞は典型的には、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する培地に懸濁され、液体窒素下に凍結保存される。
【0090】
組成物及びワクチン
本発明はまた、一以上の本発明のDEVを含む、ワクチンなどの組成物にも関する。
【0091】
本発明の組成物及びワクチンは、薬学的又は獣医学的に許容し得る媒質又は賦形剤中にDEVを含み得る。加えて又は代わりに、組成物及びワクチンは好適な佐剤を含み得る。
【0092】
本発明の組成物及びワクチンは、例えば水性緩衝液又はホスファート緩衝液などの好適な溶媒を含み得る。好ましくは、組成物及びワクチンは、安定化剤、防腐剤、着色剤、界面活性剤などの添加剤等も含む。
【0093】
例えば、本発明の組成物又はワクチンは、等張性、生理学的pH及び安定性を維持するため、例えば、生理食塩水(0.85%)、ホスファート緩衝性生理食塩水(PBS)、シトレート緩衝液、Tris(ヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)、Tris緩衝性生理食塩水などの緩衝液等、又は抗生物質、例えば、ネオマイシン若しくはストレプトマイシンなどの、一以上のさらなる添加剤と共に製剤化され得る。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、防腐剤を含む。
【0095】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、溶解補助剤を含む。
【0096】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、佐剤を含む。佐剤は、動物由来の種々のタンパク質及びペプチド(例えば、ホルモン、サイトカイン、共刺激性因子)を含むいくつかの供給源のいずれより得られてもよく、またウイルス及び他の供給源(例えば、二本鎖RNA、CpG)などに由来する新規核酸は、単独又は組み合わせ(1または複数)て、免疫応答を増強するのに十分なものである。
【0097】
本発明の組成物は、液体(溶液、懸濁液、エマルション)又は固体(粉末、ゲル、ペースト、オイル)であり得、これらは任意の投与経路用に製剤化され得る。好ましくは、インオボ注射、又は例えば、静脈内、皮下、筋肉内、眼窩内の、眼内、皮内及び/若しくは腹腔内注射などの注射用に製剤化され得る。あるいは、経口、眼内(例えば、点眼による)、鼻腔内、又は眼−鼻内投与、例えば、エアロゾル又はスプレー使用のために製剤化され得る。
【0098】
各ワクチンの投与分は、鳥種において防御免疫応答を誘発するのに十分な、好適な投与分を含有し得る。このような投与分の最適化は、当技術分野において周知である。投与分あたりの抗原の量は、抗原/抗体反応を用いる公知方法により、例えばLISA方法により求められ得る。
【0099】
本発明のワクチンは、ワクチン接種プロトコールに応じ、単回投与分として、又は反復投与分にて投与されることができる。
【0100】
特定の実施形態では、本発明は、先に定義したようなウイルス、核酸又は細胞と、好適な賦形剤又は佐剤とを含むワクチンに関する。
【0101】
さらなる特定の実施形態では、本発明は、先に定義したようなウイルス、核酸又は細胞の液体組成物と、好適な賦形剤又は佐剤とを含むワクチンに関する。
【0102】
本発明はさらには、家禽などの鳥種に免疫付与するための、先に記載したようなウイルス、組成物、ワクチン、核酸又は細胞の使用、及び免疫学的に有効量の、先に記載したようなウイルス、組成物、ワクチン、核酸又は細胞を投与することによる、鳥種に免疫付与する方法に関する。
【0103】
本発明のさらなる目的は、鳥類、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日又はそれ以前)又はインオボへのワクチン接種又は免疫付与に使用するための、先に定義したような組成物、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0104】
本発明のさらなる目的は、鳥類、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日又はそれ以前)又はインオボにおいて防御免疫の誘導に使用するための、先に定義したような組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0105】
本発明はまた、非ヒト動物、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日もしくはそれ以前、又はインオボ)にワクチン接種する方法であって、当該非ヒト動物に先に定義したような組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞を投与することを含む方法にも関する。
【0106】
本発明の特定の目的は、家禽にワクチン接種する方法であって、先に定義したような組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞のインオボ投与を含む方法である。
【0107】
別の本発明の特定の目的は、家禽にワクチン接種する方法であって、先に定義したような組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞を、孵化後第1日又は第2日に投与することを含む方法である。
【0108】
さらなる態様において、本発明は、非ヒト動物において一以上の鳥病原体に対して免疫原性又は保護的応答を誘導するための方法であって、当該非ヒト動物、特に家禽、より詳細にはニワトリ、より詳細には若年の家禽(孵化後第3日又はそれ以前)又はインオボに、先に定義したような組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0109】
実験の項で示すように、本発明のウイルスは、若年の家禽(孵化後第1日、第2日又は第3日)にワクチン接種するため、又はインオボワクチン接種のために特に好都合である。事実、本発明は驚くべきことに、本発明のウイルスがこのような早期投与に際しては安全であるが、ネイティブな又は野生型DEVは致死的であることを示す。このような早期投与は、これらのウイルスによって引き起こされる免疫の早期発生と相まって、早期防御免疫を、家禽が病原体に実質的に曝される可能性が出る前に誘導するのに特に好都合である。
【0110】
これに関し、より一般的な態様において、本発明はまた、鳥、特に家禽、より詳細にはニワトリにワクチン接種又は免疫付与するための方法であって、抗原をコードしている弱毒化DEVの当該鳥へのインオボ投与を含む方法にも関する。本発明はまた、鳥、特に家禽、より詳細にはニワトリにおいて外来遺伝子を発現させるための方法であって、当該外来遺伝子を含む弱毒化DEVの当該鳥へのインオボ投与を含む方法にも関する。本発明はまた、外来遺伝子を含む弱毒化DEVの使用であって、当該DEVのインオボ投与によって鳥に当該遺伝子を発現させるための使用にも関する。本発明はまた、抗原をコードする弱毒化DEVであって、当該DEVのインオボ投与によって免疫応答を誘導又は鳥にワクチン接種をする使用のための弱毒化DEVにも関する。DEVは好ましくは、当該DEVを弱毒化し、且つインオボ注射に際して良好な寛容性を示すものとする、不活性の内在性遺伝子を含む。
【0111】
本発明はさらには、鳥種に免疫付与するためのワクチン接種キットであって、有効量の先に記載したような多価ワクチンと、当該成分を当該種に投与するための手段とを含むキットに関する。例えば、このようなキットは、本発明に係るワクチンで満たされた注射デバイスと、皮内、皮下、筋肉内、又はインオボ注射のための指示書とを含む。あるいは、キットは、本発明に係るワクチンで満たされたスプレー/エアロゾル又は点眼デバイスと、眼−鼻内投与、経口又は粘膜投与のための指示書とを含む。
【0112】
本発明のさらなる態様及び利点は、請求項に係る発明を例証する、以下の実験の項に開示される。
【実施例】
【0113】
実施例1:卵又は若年の家禽における野生型DEVの病原力
臨床研究を実施して、異なるタイムスケジュールでの注射に際した、ニワトリでのDEVの病原性又は病原力(virulence)を検討した。さらに詳細には、インオボ(孵化前第3日)、孵化後第1日、又は孵化後第4日に、注射を実施した。使用したDEVは、野生型DEV Jansen株であった。投与された用量は、100又は1000pfu/投与分のいずれかであった。コントロールとして、グループ1ではPBS溶液が投与された。病原性は、孵化後毎日、死亡率を測定することによって評価された。
【0114】
結果を以下の表に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
前記結果は、孵化後第4日での野生型DEVの注射は安全で、100%生存率である(グループ5参照)ことを示す。著しく対照的に、DEVのインオボ注射後、100%のトリが4日齢までに死亡し、一方PBSのインオボ注射は安全である。これらの結果はしたがって、野生型DEVは成体の動物への投与は好適であり得るものの、驚くべきことに、若年の動物(孵化後第3日以内)で、又はインオボで投与されると致死的であることを示す。
【0117】
実施例2:不活性UL4遺伝子を含むDEVの構築。
【0118】
2.1 rpsLneo-DsRed2カセットの構築
rpsLneo-DsRed2カセットの2.8kbのDNAフラグメントをPCR反応によって構築した。手短に説明すると、3種のPCR反応を行った。第一のPCR反応は、配列番号:1(5’-GGCCTGGTGATGATGGCGGGATCGTTGTAT-3’)及び配列番号:2(5’-CCATGGTGCTGCGCTCAGAAGAACTCGTCA-3’)のプライマー対を使用し、rpsLneoの合成フラグメントの鋳型(配列番号:3)を用いて行われた。第二のPCR反応は、配列番号:4(5’-ACGAGTTCTTCTGAGCGCAGCACCATGGCC-3’)及び配列番号:5(5’-TCGGAGGAGGCCATCCTTAAGAGCTGTAAT-3’)のプライマー対を使用し、pSI哺乳類の発現ベクターの鋳型プラスミド(Promega、カタログ番号E1721)を用いて行われた。第三のPCR反応は、配列番号:6(5’-TACAGCTCTTAAGGATGGCCTCCTCCGAGA-3’)及び配列番号:7(5’-GCAGTGAAAAAAATGCTTTATTTGTGAAAT-3’)のプライマー対を使用し、pIRES2-DsRed2の鋳型プラスミド(Clontech、カタログ番号632420)を用いて行われた。第一及び第二のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:1及び配列番号:5をプライマーとして用いて別のPCR反応を行った。このPCR産物と第三のPCR反応からのPCR産物を混合して、配列番号:1及び配列番号:7のプライマー対を用いた最終PCR反応に用い、結果としてrpsLneo-DsRed2カセットを得た。
【0119】
2.2. 挿入カセットの構築
5’及び3’両端のアヒル腸炎ウイルス(DEV)UL4領域相同配列(各50bp)を両端に付加したrpsLneo-DsRed2カセットのDNAフラグメントをPCR反応によって構築した(
図1)。PCR反応は、rpsLneo-DsRed2カセットを鋳型として使用して行われた。使用されたプライマー対は配列番号:8(5’-ATGCAATCGCATCCGGCAACGTTTATAACTTACACTCTGGGGGGTACCGGGGCCTGGTGATGATGGCGGG-3’)及び配列番号:9(5’-TTAAATGTCTATACCGTTCACTGCAATTGGCTCCTGAGACGTTCCATTGCGCAGTGAAAAAAATGCTTTA-3’)である。得られたPCRフラグメントは電気泳動にかけられ精製された。
【0120】
2.3. rpsLneo-DsRed2遺伝子を担持しているリコンビナントDEVの構築
DEVゲノムを担持しており、0.1μgの挿入カセットでトランスフェクションされたE. coli.株における相同組換えにより、UL4領域にrpsLneo-DsRed2遺伝子を担持しているリコンビナントDEVの構築を行った。トランスフェクションは、Gene Pulser Xcell(Bio-Rad Laboratories)を使用して1.75kV、25μF、及び200ohmでエレクトロポレーションにより行った。トランスフェクションの後、E. coli.をLuria-Bertani(LB)寒天板上に播種し、30℃で一晩インキュベーションした。rpsLneo-DsRed2遺伝子を含む適切なインサートを担持しているE. coli.クローンを、DEVゲノムの挿入部位領域とrpsLneo-DsRed2遺伝子との間の領域(ジャンクション1、
図2)を増幅するプライマー対を使用したPCRによって同定した。プライマーは、配列番号:10(5’-TGTTTAGCGTTATCCGCCCACTGTGTAAAC-3’)及び配列番号:11(5’-TCAGAAGAACTCGTCAAGAAGGC-3’)である。修飾されたDEV DNAを、適切なインサートを担持しているE. coli.クローンから抽出し、Nucleofector II(Lonza, Basel, Switzerland)を使用してCEF細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞をLeibovitz’s L-15(Life Technologies Corp., カタログ番号41300-39)、McCoy’s 5A培地(Life Technologies Corp., カタログ番号21500-061)(1:1)及び4%子ウシ血清[LM(+)培地]に添加して、96ウェル組織培養プレートに播種し、次いで37℃で4〜5%CO
2にて5〜7日間、DEV細胞変性効果(CPE)が視認できるようになるまでインキュベーションした。
【0121】
2.4. ゲノム構造の確認
挿入された遺伝子の各端部でジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3;
図2)を増幅する3種のPCR反応によって、リコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2のゲノム構造を確認した。ジャンクション1に対するPCR反応で使用されるプライマー対を実施例2.3に記載する。ジャンクション2に対するPCR反応で使用されるプライマー対は、配列番号:6及び配列番号:12(5’-GGGAGTATTCACAAAATAATAAACAAAC-3’)である。ジャンクション3に対しては、配列番号:10及び配列番号:12が使用される。PCR産物の予測サイズが観察され、rDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2は予測されたゲノム構造を有していたことを確認した。
【0122】
実施例3:不活性UL4遺伝子を有するリコンビナントDEVによる外来遺伝子の発現
リコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2によるDsRed2タンパク質の発現を、DsRed2に対する刺激(excitation)によって確認した。DsRed2に対する刺激は、リコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2で感染されたCEF細胞を使用して行われた。手短に説明すると、rDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2又はその親DEV株で6ウェルプレート中のCEF細胞を約0.01の感染多重度にて感染させた。接種後3日目に、細胞を563nmで刺激した。赤色蛍光は、リコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2のプラーク中でのみ観察された。
【0123】
実施例4:不活性UL4遺伝子を有するリコンビナントDEVの生存率及び安定性
リコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2をCEF細胞中で15回継代させ、rpsLneo-DsRed2の挿入された遺伝子の安定性を確認した。継代は3〜4日ごとに行った。5継代ごとに、rDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2のプラークを蛍光顕微鏡により赤色蛍光につきチェックし、rDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2のゲノム構造は実施例2.4に示すプライマーを用いてジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3;
図2)を増幅するPCR分析によって確認した。PCR産物の赤色蛍光及び予測サイズは、観察されたウイルスの全てに観察され、rDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2は少なくとも15継代に亘りrpsLneo-DsRed2遺伝子を保持することが確認された。
【0124】
実施例5:インオボ投与
リコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2又は親DEVを、特定病原体除去(SPF)のニワトリ又は市販層(白色レグホン種)のニワトリの18日齢胚へと、母系の抗体と共に接種した。胚の全グループが、20ゲージ及び1.5インチの針を介して約1000pfu/0.1mLのリコンビナントDEV/UL4/rpsLneo-DsRed2、親DEV又はPBSでインオボのワクチン接種を受けた。1週齡から3週齡の間の各週に、孵化されたニワトリは採血された。ニワトリは、機能低下及び死などのDEVに伴う臨床徴候につき、毎日観察される。孵化後3週間、ニワトリの、体重増加についての検査、及び剖検、及び肉眼で見て観察可能な病変についての観察が行なわれる。
【0125】
【表2】
【0126】
結果は先に示すとおりである。親DEVを接種したほとんどすべてのトリが死亡したが、DEV/UL4/rpsLneo-DsRed2を接種したトリの60%より多くが生存していた。
【0127】
実施例6:不活性UL4遺伝子、及びUL27とUL26との間に挿入された外来遺伝子配列を有するDEVの構築及びインオボ投与。
不活性UL4遺伝子、及びUL27とUL26との間に挿入された外来遺伝子配列を有するDEVを構築した。
【0128】
6.1. pUC18-KAPEVAC-UL4delの構築
UL5遺伝子及びUL3.5遺伝子に隣接しているDEVゲノムの1.0kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図3)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:14(5’-gcGCATGCACTATAGCGCGCTCACAG-3’)及び配列番号:15(5’-CAGACCTAAAGGTTAGGCCGTCTGTGAATG-3’)、及び配列番号:16(5’-CATTCACAGACGGCCTAACCTTTAGGTCTG-3’)及び配列番号:17(5’-gcGAATTCCGCAAACTACACAAGTCCG-3’)である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:14及び配列番号:17をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはSphI及びEcoRIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL4delが得られた(
図3)。
【0129】
6.2. pUC18-KAPEVAC-UL26-BacVP2の構築
UL26遺伝子及びUL27遺伝子に隣接しているDEVゲノムの1.0kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図4)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:18(5’-CGGTCGACACTCCCAGGGGTGAAGC-3’)及び配列番号:19(5’-CGGCCAATAAGGCCAAGAATGCATTCGGCC-3’)、及び配列番号:20(5’-TGGCCTTATTGGCCGCCGTATGAATTGCGC-3’)及び配列番号:21(5’-GCGAGCTCCTGCAACCACAGACCGC-3’)である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:18及び配列番号:21をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはSalI及びSacIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIが得られた。次に、標準的なチャレンジ株からのIBDV VP2遺伝子及びプロモーターを含む相同性ベクターを、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIを利用することによって構築した。先ず、SfiIを用いてpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIを切断し、PAPを用いて脱リン酸化させた。p45/46bacVP2-STC#11のBglI消化によりBacプロモーター-VP2-STCカセットを得て(U.S. Pat. No. 6,764,684)、SfiIで消化されたpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIへと挿入し、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL26-BacVP2を得た(
図4)。このプラスミドを使用してDEV/UL4del/UL26/BacVP2を構築した。
【0130】
6.3. 不活性UL4遺伝子、及びUL27とUL26との間に挿入された外来遺伝子配列を有するDEVの構築
DEVゲノムを担持しており、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del及びpUC18-KAPEVAC-UL26-BacVP2でトランスフェクションされたE. coli.株における相同組換えにより、不活性UL4遺伝子、及びUL27とUL26との間の領域に挿入された外来遺伝子配列を有するリコンビナントDEVの構築を行った。トランスフェクションは、Gene Pulser Xcell(Bio-Rad Laboratories)を使用して1.75kV、25μF、及び200ohmでエレクトロポレーションにより行った。トランスフェクションの後、E. coli.をLuria-Bertani(LB)寒天板上に播種し、30℃で一晩インキュベーションした。rpsLneo-DsRed2遺伝子を含む適切なインサートを担持しているE. coli.クローンを、DEVゲノムのUL3.5遺伝子とUL5遺伝子との間の領域(ジャンクション4;
図4)又はBac-VP2遺伝子と挿入部位領域との間の領域(ジャンクション1、
図4)を増幅するプライマー対を使用したPCRによって同定した。プライマーは、ジャンクション4に対しては配列番号:14及び配列番号:17、並びにジャンクション1に対しては配列番号:22(5’-GACGCTATACCCAATGACGATGAAAAC-3’)及び配列番号:23(5’-GAGCAACTTCGAGCTGATCC-3’)である。修飾されたDEV DNAを、適切なインサートを担持しているE. coli.クローンから抽出し、Nucleofector IIを使用してCEF細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞をLM(+)培地に添加して、96ウェル組織培養プレートに播種し、次いで37℃で4〜5%CO
2にて5〜7日間、DEV CPEが視認できるようになるまでインキュベーションした。
【0131】
6.4. ゲノム構造の確認
挿入された遺伝子の各端部でジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3;
図4)を増幅する4種のPCR反応によって、リコンビナントDEV/UL4del/UL26/BacVP2のゲノム構造を確認した。ジャンクション1及びジャンクション4に対するPCR反応で使用されるプライマー対を実施例6.3に記載する。ジャンクション2に対するPCR反応で使用されるプライマー対は、配列番号:24(5’-GTACTGCCCGGCCGGTCTAATG-3’)及び配列番号:25(5’-GCCAGGGAATCCAGGGAAAAAGAC-3’)である。ジャンクション3に対しては、配列番号:22及び配列番号:24が使用される。PCR産物の予測サイズが観察され、rDEV/UL4del/BacVP2は予測されたゲノム構造を有していたことを確認した。
【0132】
6.5. インオボ投与
rDEV/UL4del/UL26/BacVP2又は親KAPEVACウイルスの1000プラーク形成単位を、18日齢ニワトリ胚へインオボでDOA3に投与した。トリの臨床徴候を、孵化後35日間観察した。17羽のトリの結果は、80%を超える生存率を示している。
【0133】
実施例7:不活性UL4遺伝子及び不活性UL23遺伝子を有するDEVの構築及びインオボ投与。
不活性UL4及びUL23遺伝子並びに外来遺伝子を有するDEVを構築した。
【0134】
7.1. pUC18-KAPEVAC-UL23-BacVP2及びpUC18-KAPEVAC-UL23-Coa5VP2の構築
UL24遺伝子及びUL22遺伝子に隣接しているDEVゲノムの1.0kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図5)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:26(5’-GCGCATGCCAATTGTCTAATTCCAG-3’)及び配列番号:27(5’-CCCGGCCAATAAGGCCACAGAAAAAGCGCG-3’)、及び配列番号:28(5’-CTGTGGCCTTATTGGCCGGGATCTGGAAC-3’)及び配列番号:29(5’-GCGAATTCATGTGCTACGCCCAG-3’)である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:26及び配列番号:29をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはEcoRI及びSphIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIが得られた。次に、プロモーター及びVP2-STCを含む相同性ベクターを、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIを利用することによって構築した。先ず、SfiIを用いてpUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIを切断し、PAPを用いて脱リン酸化させた。Bac-VP2カセットはプラスミドpUC18-KAPEVAC-UL26-BacVP2からSfiI消化により得られ、SfiIで消化されライゲーションされたpUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIへと挿入され、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL23-BacVP2が得られた(
図5)。加えて、pUC18-KAPEVAC-UL23-Coa5VP2を、pUC18-KAPEVAC-UL23-SfiIを利用することによって構築した。Coa5プロモーターは、BglI及びXbaI消化によりプラスミドpGICOAから得られ(U.S. Pat. No. 6,866,852)、p45/46bacVP2-STC#11(U.S. Pat. No. 6,764,684)のXbaI-EcoRIフラグメント(6.3kb)及びEcoRI-BglIフラグメント(0.1kb)とライゲーションされ、結果としてp45/46COA5VP2-STC#11が得られた。次いでp45/46COA5VP2-STC#11からBglI消化によりCoa5プロモーター-VP2-STCカセットを切り出し、SfiIで消化されたpUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIとライゲーションされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2(
図5)が得られた。
【0135】
7.2. pUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2の構築
SfiIで消化されたpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIを利用することによってpUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2を構築した。Coa5-VP2カセットは、pUC18-KAPEVAC-UL23-Coa5VP2からSfiI消化により得られ、SfiIで消化されたpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIへと挿入され、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2が得られた(
図4)。
【0136】
7.3. pUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2の構築
UL45遺伝子及びUL46遺伝子に隣接しているDEVゲノムの1.0kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図6)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:30(5’-CGGTCGACATAGAACGCGCTTCATCTAA-3’)及び配列番号:31(5’-TGGCCAATAAGGCCGTTTATTGTTTATTAT-3’)、及び配列番号:32(5’-CGGCCTTATTGGCCAATCTGATTCATCCAA-3’)及び配列番号:33(5’-GCGAGCTCCGCCTAATCACAATCGGTATTG-3’)である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:30及び配列番号:33をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはSalI及びSacIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIが得られた。次に、標準的なチャレンジ株からのIBDV VP2遺伝子及びプロモーターを含む相同性ベクターを、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIを利用することによって構築した。先ず、SfiIを用いてpUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIを切断し、PAPを用いて脱リン酸化させた。pUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2からSfiI消化によりCoa5プロモーター-VP2-STCカセットを切り出し、SfiIで消化されたpUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIとライゲーションし、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2が得られた(
図6)。
【0137】
7.4. pUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2の構築
UL50遺伝子及びUL51遺伝子に隣接しているDEVゲノムの1.0kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図7)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:34(5’-CCGCATGCGCAACTATATATGTCGGTC-3’)及び配列番号:35(5’-GGGCCAATAAGGCCCAAAAGTACATTTTGT-3’)、及び配列番号:36(5’-GGGCCTTATTGGCCCAATTTATTTACTATT-3’)及び配列番号:37(5’-GCGAATTCTGGATATGATATACCGTTGC-3’)である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:34及び配列番号:37をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはEcoRI及びSphIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIが得られた。次に、標準的なチャレンジ株からのIBDV VP2遺伝子及びプロモーターを含む相同性ベクターを、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIを利用することによって構築した。先ず、SfiIを用いてpUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIを切断し、PAPを用いて脱リン酸化させた。pUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2からSfiI消化によりCoa5プロモーター-VP2-STCカセットを切り出し、SfiIで消化されたpUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIとライゲーションし、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2が得られた。このプラスミドを使用してDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2を構築した(
図7)。
【0138】
7.5. pUC18-KAPEVAC-UL23delの構築
UL24遺伝子及びUL22遺伝子に隣接しているDEVゲノムの1.0kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図5)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:26及び配列番号:38(5’-CTTGTTCCAGATCCCACAGAAAAAGCGCG-3’)、及び配列番号:39(5’-CGCGCTTTTTCTGTGGGATCTGGAACAAG-3’)及び配列番号:29である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:26及び配列番号:29をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはEcoRI及びSphIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-UL23delが得られた(
図5)。
【0139】
7.6. 不活性UL4及びUL23遺伝子並びに外来遺伝子配列を有するDEVの構築
DEVゲノムを担持しており、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del及びpUC18-KAPEVAC-UL23-BacVP2(JK015用)、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-UL23del、及びpUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2(JK022用)、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-UL23del、及びpUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2(JK023用)、又は0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-UL23del、及びpUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2(JK024用)でトランスフェクションされたE. coli.株における相同組換えにより、不活性UL4及びUL23遺伝子並びに外来遺伝子配列を有するリコンビナントDEVの構築を行った。トランスフェクションは先に記載したように行い、不活性UL4及びUL23遺伝子並びに外来遺伝子配列を有するDEVを獲得した(JK022〜JK024)。
【0140】
【表3】
【0141】
JK015、JK022、JK023、及びJK024を成功裡に獲得した。
【0142】
7.7. 成長速度
これらのDEVの成長速度を評価し、結果を以下に示す。
【0143】
【表4】
【0144】
7.8. インオボ投与
下記のDEV又は親KAPEVACウイルスの1000プラーク形成単位を、18日齢ニワトリ胚へインオボでDOA3に投与した。トリの臨床徴候を、孵化後35日間観察した。結果を以下の表に示す。
【0145】
【表5】
【0146】
この試験では、rDEV/UL4del/UL23/BacVP2を接種したほとんどのニワトリが、観察期間生存したが、親DEV株を接種したニワトリは全て死亡した。
【0147】
実施例8:不活性UL4遺伝子及び不活性US7遺伝子を有するDEVの構築及びインオボ投与。
不活性UL4及びUS7遺伝子並びに外来遺伝子を有するDEVを構築した。
【0148】
8.1. pUC18-KAPEVAC-US7-BacVP2の構築
US6遺伝子及びUS8遺伝子に隣接しているDEVゲノムの0.6kbのDNAフラグメントを、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローニングした(
図8)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:40(5’-gcGCATGCCCACCCATAGCCTATTAC-3’)及び配列番号:41(5’-TATGATTGACTGTTTGCCTTTCATTAACATCCAAATATATTTGTACATGAGGTAATAGGCTATGGGTGCCTTATTGGCCA-3’)、及び配列番号:42(5’-AACAGTCAATCATAACAAAAACATTTACTTTTAGTCATACTGATGTGAATTAggccttattggccTTCTATTTTTGAAAC-3’)及び配列番号:43(5’-gcGAATTCATGACCATGGACATGC-3’)である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:40及び配列番号:43をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはEcoRI及びSphIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-US7del-SfiIが得られた。次に、プロモーター及びVP2-STCを含む相同性ベクターを、プラスミドpUC18-KAPEVAC-US7del-SfiIを利用することによって構築した。先ず、SfiIを用いてpUC18-KAPEVAC-US7del-SfiIを切断し、PAPを用いて脱リン酸化させた。Bac-VP2カセットはプラスミドpUC18-KAPEVAC-UL26-BacVP2からSfiI消化により得られ、SfiIで消化されライゲーションされたpUC18-KAPEVAC-US7del-SfiIへと挿入され、結果としてpUC18-KAPEVAC-US7-BacVP2が得られた(
図8)。
【0149】
8.2. pUC18-KAPEVAC-US7delの構築
US6遺伝子及びUS8遺伝子に隣接している、DEVゲノムの0.6kbのDNAフラグメントをPCR反応によりクローニングした(
図8)。手短に説明すると、DEVから抽出されたDNAを鋳型として使用して、2種のPCR反応を行った。使用されたプライマー対は、配列番号:40及び配列番号:44(5’-GTGCGCCATATAGACGTAATTCACATCAG-3’)、及び配列番号:45(5’-CTGATGTGAATTACGTCTATATGGCGCAC-3’)及び配列番号:43である。前記2種のPCR反応からのPCR産物の混合物を鋳型とし、配列番号:40及び配列番号:43をプライマーとして使用して別のPCR反応を行った。得られたPCRフラグメントはEcoRI及びSphIでの消化後にpUC18ベクターへとクローニングされ、結果としてpUC18-KAPEVAC-US7delが得られた(
図8)。
【0150】
8.3. 不活性UL4及びUS7遺伝子並びに外来遺伝子配列を有するDEVの構築
DEVゲノムを担持しており、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del及びpUC18-KAPEVAC-US7-BacVP2(JK016用)、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-US7del、及びpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2(JK025用)、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-US7del、及びpUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2(JK026用)、0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-US7del、及びpUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2(JK027用)、又は0.1μgのpUC18-KAPEVAC-UL4del、pUC18-KAPEVAC-US7del、及びpUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2(JK028用)でトランスフェクションされたE. coli.株における相同組換えにより、不活性UL4及びUS7遺伝子並びに外来遺伝子配列を有するリコンビナントDEVの構築を行った。トランスフェクションは先に記載したように行い、不活性UL4及びUS7遺伝子並びに外来遺伝子配列を有するDEVを(JK022〜JK024)を獲得した(JK016、及びJK025-JK028)。
【0151】
【表6】
【0152】
JK016、JK025-JK028を成功裡に構築した。
【0153】
8.4.成長速度
これらのDEVの成長速度を評価し、結果を以下に示す。
【0154】
【表7】
【0155】
8.5. インオボ投与
下記のDEV又は親KAPEVACウイルスの1000プラーク形成単位を、18日齢ニワトリ胚へインオボでDOA3に投与した。トリの臨床徴候を、孵化後35日間観察した。結果を以下の表に示す。
【0156】
【表8】
【0157】
この試験では、rDEV/UL4del/US7/BacVP2の接種を受けた全てのニワトリが35日間生存した。
【0158】
配列のリスト
【化1】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]