特許第6802826号(P6802826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802826
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】車両電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20201214BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20201214BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20201214BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20201214BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20201214BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H02M3/28 K
   H02M3/28 U
   H02M3/155 W
   H02M7/12 F
   B60L1/00 L
   B60R16/03 V
   H02J7/00 P
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-171466(P2018-171466)
(22)【出願日】2018年9月13日
(65)【公開番号】特開2020-43729(P2020-43729A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃則
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/081103(WO,A1)
【文献】 特開2016−127608(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0117937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
B60L 1/00
B60R 16/03
H02J 7/00
H02M 3/155
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧負荷部及び前記高圧負荷部よりも電圧が低い低圧負荷部に直流電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに交流電力を供給する交流電源部に接続される電源接続部と、
前記交流電源部から供給される交流電力を直流電力に変換し当該直流電力を前記バッテリに充電するAC/DC変換部、及び、前記バッテリから供給される直流電力の電圧を降圧した中間電圧を生成する降圧DC/DC変換部を有する電力変換部と、
前記降圧DC/DC変換部により生成された前記中間電圧を降圧した直流電力を前記低圧負荷部に出力する定圧DC/DC変換部と、
前記AC/DC変換部と前記電源接続部との電気的な接続をオン又はオフし、且つ、前記降圧DC/DC変換部と前記定圧DC/DC変換部との電気的な接続をオン又はオフする切替部と、
前記交流電源部から供給される交流電力の供給開始を検出する検出部と、
前記検出部により検出された検出結果に基づいて前記切替部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部により前記交流電力の供給開始を検出した場合、前記AC/DC変換部及び前記電源接続部の接続をオンし当該AC/DC変換部により変換した直流電力を前記バッテリに充電し、且つ、前記降圧DC/DC変換部及び前記定圧DC/DC変換部の接続をオフし当該降圧DC/DC変換部から前記定圧DC/DC変換部に直流電力を出力せず、
前記検出部により前記交流電力の供給開始を検出していない場合、前記降圧DC/DC変換部及び前記定圧DC/DC変換部の接続をオンし当該降圧DC/DC変換部及び前記定圧DC/DC変換部により降圧した直流電力を前記低圧負荷部に出力し、且つ、前記バッテリから前記降圧DC/DC変換部を介さずに前記高圧負荷部に直流電力を供給可能であり、更に、前記AC/DC変換部及び前記電源接続部の接続をオフし当該AC/DC変換部から前記バッテリに直流電力を充電せず、
前記定圧DC/DC変換部は、前記降圧DC/DC変換部から出力される直流電力の前記中間電圧を一定の降圧比で降圧した直流電力を前記低圧負荷部に出力し、
前記AC/DC変換部は、前記交流電源部から供給される交流電力を直流電力に整流する整流回路、及び、前記整流回路により整流された直流電力の電圧を昇圧する双方向DC/DCコンバータを有し、
前記降圧DC/DC変換部は、前記双方向DC/DCコンバータを用いて、前記バッテリから供給される直流電力の電圧を降圧した前記中間電圧を生成し、
前記切替部は、前記整流回路と前記双方向DC/DCコンバータとの間に設けられ、前記整流回路と前記双方向DC/DCコンバータとの電気的な接続をオン又はオフし、且つ、前記降圧DC/DC変換部と定圧DC/DC変換部との間に設けられ、前記降圧DC/DC変換部と定圧DC/DC変換部との電気的な接続をオン又はオフすることを特徴とする車両電源装置。
【請求項2】
前記定圧DC/DC変換部は、電流を通電又は遮断するスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子の動作に応じて誘導電流を出力するコイルを有する降圧チョッパ回路を含んで構成される請求項に記載の車両電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両電源装置として、例えば、特許文献1には、走行用バッテリと、当該走行用バッテリよりも電圧が低い標準バッテリと、走行用バッテリから供給される電力の電圧を降圧して標準バッテリに出力する降圧コンバータとを備える車両電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−41999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の車両電源システムは、例えば、降圧コンバータの数が増加し装置が大型化する傾向にあり、この点で更なる改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化を抑制することができる車両電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両電源装置は、高圧負荷部及び前記高圧負荷部よりも電圧が低い低圧負荷部に直流電力を供給するバッテリと、前記バッテリに交流電力を供給する交流電源部に接続される電源接続部と、前記交流電源部から供給される交流電力を直流電力に変換し当該直流電力を前記バッテリに充電するAC/DC変換部、及び、前記バッテリから供給される直流電力の電圧を降圧した中間電圧を生成する降圧DC/DC変換部を有する電力変換部と、前記降圧DC/DC変換部により生成された前記中間電圧を降圧した直流電力を前記低圧負荷部に出力する定圧DC/DC変換部と、前記AC/DC変換部と前記電源接続部との電気的な接続をオン又はオフし、且つ、前記降圧DC/DC変換部と前記定圧DC/DC変換部との電気的な接続をオン又はオフする切替部と、前記交流電源部から供給される交流電力の供給開始を検出する検出部と、前記検出部により検出された検出結果に基づいて前記切替部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部により前記交流電力の供給開始を検出した場合、前記AC/DC変換部及び前記電源接続部の接続をオンし当該AC/DC変換部により変換した直流電力を前記バッテリに充電し、且つ、前記降圧DC/DC変換部及び前記定圧DC/DC変換部の接続をオフし当該降圧DC/DC変換部から前記定圧DC/DC変換部に直流電力を出力せず、前記検出部により前記交流電力の供給開始を検出していない場合、前記降圧DC/DC変換部及び前記定圧DC/DC変換部の接続をオンし当該降圧DC/DC変換部及び前記定圧DC/DC変換部により降圧した直流電力を前記低圧負荷部に出力し、且つ、前記バッテリから前記降圧DC/DC変換部を介さずに前記高圧負荷部に直流電力を供給可能であり、更に、前記AC/DC変換部及び前記電源接続部の接続をオフし当該AC/DC変換部から前記バッテリに直流電力を充電せず、前記定圧DC/DC変換部は、前記降圧DC/DC変換部から出力される直流電力の前記中間電圧を一定の降圧比で降圧した直流電力を前記低圧負荷部に出力し、前記AC/DC変換部は、前記交流電源部から供給される交流電力を直流電力に整流する整流回路、及び、前記整流回路により整流された直流電力の電圧を昇圧する双方向DC/DCコンバータを有し、前記降圧DC/DC変換部は、前記双方向DC/DCコンバータを用いて、前記バッテリから供給される直流電力の電圧を降圧した前記中間電圧を生成し、前記切替部は、前記整流回路と前記双方向DC/DCコンバータとの間に設けられ、前記整流回路と前記双方向DC/DCコンバータとの電気的な接続をオン又はオフし、且つ、前記降圧DC/DC変換部と定圧DC/DC変換部との間に設けられ、前記降圧DC/DC変換部と定圧DC/DC変換部との電気的な接続をオン又はオフすることを特徴とする車両電源装置。
【0008】
上記車両電源装置において、前記定圧DC/DC変換部は、電流を通電又は遮断するスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子の動作に応じて誘導電流を出力するコイルを有する降圧チョッパ回路を含んで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両電源装置は、電力変換部を充電時の変換部及び放電時の変換部として兼用することができ、更に、中間電圧を一定の降圧比で降圧することができるので、装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る車両電源装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る車両電源装置の充電例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る車両電源装置の放電例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る車両電源装置の動作例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態の第1変形例に係る車両電源装置の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態の第2変形例に係る車両電源装置の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、実施形態の第3変形例に係る車両電源装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
図面を参照しながら実施形態に係る車両電源装置1について説明する。図1は、実施形態に係る車両電源装置1の構成例を示すブロック図である。図2は、実施形態に係る車両電源装置1の充電例を示すブロック図である。図3は、実施形態に係る車両電源装置1の放電例を示すブロック図である。
【0013】
車両電源装置1は、例えば、電気自動車(EV)やプラグインハイブリット自動車(PHV)等の車両に搭載され、インバータやモータジェネレータ等を含む高圧負荷部3、及び、高圧負荷部3よりも電圧が低い補機負荷部等を含む低圧負荷部4に電力を供給するものである。ここで、補機負荷部とは、例えば、車両システム起動部、ワイパー、ヘッドランプ、オーディオ機器等である。
【0014】
車両電源装置1は、図1に示すように、電源接続部としてのACインレット10と、検出部としての検出センサ20と、バッテリとしての高圧バッテリ30と、フィルター40と、電力変換部としての電力変換ユニット50と、定圧DC/DC変換部60と、補機バッテリ70と、切替部としての切替スイッチ80とを備えている。
【0015】
ACインレット10は、家庭用のAC電源(交流電源部)2のACコンセントに接続されるコネクタである。ACインレット10は、その一部が車両の外側に露出している。ACインレット10は、家庭用のACコンセントに接続され、AC電源2から交流電力が出力される。
【0016】
検出センサ20は、交流電力の供給開始を検出するものである。検出センサ20は、例えば、ACコンセントを介して供給される交流電力の供給開始を検出する。検出センサ20は、例えば、ACコンセントがACインレット10に接続されたことを、交流電力の供給開始として検出する。検出センサ20は、ACコンセント及びACインレット10が電気的又は機械的に接続されたことを検出する。検出センサ20は、後述する制御部53に接続され、検出結果を制御部53に出力する。
【0017】
高圧バッテリ30は、高圧の直流電力を供給するものである。高圧バッテリ30は、例えば、400V、800V、1000V等の電圧であり、相対的に高圧の直流電力を供給する。高圧バッテリ30は、電力変換ユニット50及び定圧DC/DC変換部60を介して低圧負荷部4に接続され、当該低圧負荷部4に直流電力を供給する。また、高圧バッテリ30は、高圧負荷部3に接続され、当該高圧負荷部3に直流電力を供給する。高圧負荷部3のインバータは、高圧バッテリ30から供給された直流電力を交流電力に変換し当該交流電力をモータジェネレータに供給する。モータジェネレータは、インバータにより供給された直流電力により駆動し車両の車輪を回転させる。
【0018】
フィルター40は、ノイズを低減するものである。フィルター40は、ACインレット10に接続され、当該ACインレット10から出力される交流電力のノイズを低減する。フィルター40は、電力変換ユニット50に接続され、ノイズを低減した交流電力を電力変換ユニット50に出力する。
【0019】
電力変換ユニット50は、電力を変換するものである。電力変換ユニット50は、AC/DC変換部51と、降圧DC/DC変換部52とを有する。AC/DC変換部51は、交流電力を直流電力に変換するものである。AC/DC変換部51は、例えば、図2に示すように、AC電源2から供給される交流電力を直流電力に変換し当該直流電力を高圧バッテリ30に充電する。AC/DC変換部51は、整流回路51Aと、双方向DC/DCコンバータ51Bとを有する。整流回路51Aは、交流電力を直流電力に整流するものである。整流回路51Aは、例えば、4つのスイッチング素子を有するフルブリッジ回路である。整流回路51Aは、フィルター40に接続され、当該フィルター40から出力される交流電力を直流電力に整流する。整流回路51Aは、双方向DC/DCコンバータ51Bに接続され、整流した直流電力を双方向DC/DCコンバータ51Bに出力する。
【0020】
双方向DC/DCコンバータ51Bは、電圧を昇圧又は降圧するものである。双方向DC/DCコンバータ51Bは、例えば、3相DAB(Dual Active Bridge)を用いたワンコンバータ回路である。双方向DC/DCコンバータ51Bは、第1ブリッジ回路51aと、第2ブリッジ回路51bと、トランス51cと、コンデンサC1、C2と、コイル部51d、51eと、コイルL1、L2とを有する。
【0021】
第1ブリッジ回路51aは、6つのスイッチング素子を有する3相のフルブリッジ回路である。第1ブリッジ回路51aは、切替スイッチ80を介して整流回路51Aに接続され、且つ、トランス51cに接続されている。第1ブリッジ回路51aは、整流回路51Aから出力される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をトランス51cに出力する。また、第1ブリッジ回路51aは、切替スイッチ80を介して定圧DC/DC変換部60に接続され、トランス51cから出力される交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を切替スイッチ80を介して定圧DC/DC変換部60に出力する。
【0022】
第2ブリッジ回路51bは、6つのスイッチング素子を有する3相のフルブリッジ回路である。第2ブリッジ回路51bは、トランス51c及び高圧バッテリ30に接続されている。第2ブリッジ回路51bは、トランス51cから出力される交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を高圧バッテリ30に出力する。また、第2ブリッジ回路51bは、高圧バッテリ30から供給される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をトランス51cに出力する。
【0023】
トランス51cは、3つのコイルを有する一次巻線部と、3つのコイルを有し一次巻線部と磁気的に結合される二次巻線部とを含んで構成される。一次巻線部及び二次巻線部は、互いに絶縁されている。これにより、トランス51cは、モータジェネレータ等の高圧負荷部3及び高圧バッテリ30を含む走行用の高圧電源系統と、補機負荷部等の低圧負荷部4を含む低圧電源系統とを絶縁することができる。更に、トランス51cは、走行用の高圧電源系統とACインレット10とを絶縁することができる。このように、車両電源装置1は、電力変換ユニット50を介して走行用の高圧電源系統と低圧電源系統等とを接続するので、走行用の高圧電源系統を容易に隔離することができ、整備性を向上できる。
【0024】
トランス51cの一次巻線部は、コイル部51dを介して第1ブリッジ回路51aに接続されている。トランス51cの二次巻線部は、コイル部51eを介して第2ブリッジ回路51bに接続されている。トランス51cは、一次巻線部及び二次巻線部の電磁誘導により電圧を変換する。トランス51cは、AC電源2から供給される電力の電圧を昇圧し、高圧バッテリ30から供給される電力の電圧を降圧する。
【0025】
コンデンサC1は、第1ブリッジ回路51aと切替スイッチ80との間に設けられ、第1ブリッジ回路51aから切替スイッチ80を介して定圧DC/DC変換部60に出力される直流電力を平滑化する。コンデンサC2は、第2ブリッジ回路51bと高圧バッテリ30との間に設けられ、第2ブリッジ回路51bから高圧バッテリ30に出力される直流電力を平滑化する。なお、第1ブリッジ回路51a及び切替スイッチ80は、コイルL1を介して接続され、第2ブリッジ回路51b及び高圧バッテリ30は、コイルL2を介して接続されている。
【0026】
降圧DC/DC変換部52は、直流電力の電圧を降圧するものである。降圧DC/DC変換部52は、高圧バッテリ30から供給される直流電力の電圧を降圧した中間電圧Vmを生成する。ここで、中間電圧Vmは、定圧DC/DC変換部60の相数に応じて予め定められる。中間電圧Vmは、例えば、低圧負荷部4の電圧の最小値に相数を積算した値から低圧負荷部4の電圧の最大値に相数を積算した値の範囲に定められる。中間電圧Vmは、例えば、低圧負荷部4の電圧の最大値を15Vとし、相数を4相とした場合、当該中間電圧Vmの最大値が60Vとなる。降圧DC/DC変換部52は、例えば、双方向DC/DCコンバータ51Bを用いて、高圧バッテリ30から供給される直流電力の電圧を降圧した中間電圧Vmを生成する。つまり、降圧DC/DC変換部52は、高圧バッテリ30を充電する際に用いられる双方向DC/DCコンバータ51Bを兼用して中間電圧Vmを生成する。
【0027】
降圧DC/DC変換部52は、例えば、図3に示すように、高圧バッテリ30から供給される直流電力の電圧をトランス51cにより降圧した中間電圧Vmを生成し、当該中間電圧Vmの直流電力を切替スイッチ80を介して定圧DC/DC変換部60に出力する。
【0028】
定圧DC/DC変換部60は、直流電力の電圧を降圧するものである。定圧DC/DC変換部60は、4相の降圧チョッパ回路CP1と、平滑コンデンサ64とを有する。降圧チョッパ回路CP1は、電流を通電又は遮断する4つのスイッチング素子61と、4つのダイオード62と、各スイッチング素子61の動作に応じて各ダイオード62を介して誘導電流を出力する4つのコイルから成る結合インダクタ63とを有する。定圧DC/DC変換部60は、切替スイッチ80を介して降圧DC/DC変換部52に接続され、当該降圧DC/DC変換部52により生成された中間電圧Vmを降圧した直流電力を低圧負荷部4等に出力する。定圧DC/DC変換部60は、例えば、降圧DC/DC変換部52から出力される直流電力の中間電圧Vmを一定の降圧比で降圧した直流電力を低圧負荷部4等に出力する。定圧DC/DC変換部60は、相数分の1(1/相数)の降圧比で中間電圧Vmを降圧する。定圧DC/DC変換部60は、例えば、4相の降圧チョッパ回路CP1を有する場合、1/4の降圧比で中間電圧Vmを降圧する。4相の降圧チョッパ回路CP1は、例えば、1/4の降圧比で60Vの中間電圧Vmを15Vの電圧に降圧する。平滑コンデンサ64は、降圧チョッパ回路CP1に接続され、当該降圧チョッパ回路CP1から出力された直流電力を平滑化する。平滑コンデンサ64は、補機バッテリ70及び低圧負荷部4に接続され、平滑化した直流電力を補機バッテリ70及び低圧負荷部4に出力する。なお、ダイオード62は、同期整流でスイッチング素子を使うこともある。
【0029】
補機バッテリ70は、補機負荷部等を含む低圧負荷部4に電力を供給するものである。補機バッテリ70は、定圧DC/DC変換部60に接続され、定圧DC/DC変換部60から出力される直流電力を充電する。補機バッテリ70は、低圧負荷部4に接続され、充電した直流電力を低圧負荷部4に供給する。
【0030】
切替スイッチ80は、電気的な接続をオン又はオフするものである。切替スイッチ80は、例えば、機械式リレーや半導体リレー等が採用される。切替スイッチ80は、ACインレット10とAC/DC変換部51との電気的な接続をオン又はオフする。切替スイッチ80は、例えば、整流回路51Aと双方向DC/DCコンバータ51Bとの間に設けられ、整流回路51Aと双方向DC/DCコンバータ51Bとの電気的な接続をオン又はオフする。また、切替スイッチ80は、降圧DC/DC変換部52と定圧DC/DC変換部60との間に設けられ、降圧DC/DC変換部52と定圧DC/DC変換部60との電気的な接続をオン又はオフする。切替スイッチ80は、整流回路51Aと双方向DC/DCコンバータ51Bとの電気的な接続をオンにする第1接続状態に切り替えることで、高圧バッテリ30を充電可能とする。切替スイッチ80は、降圧DC/DC変換部52と定圧DC/DC変換部60との電気的な接続をオンにする第2接続状態に切り替えることで、高圧バッテリ30から補機バッテリ70及び低圧負荷部4に電力供給を可能とする。
【0031】
電力変換ユニット50は、更に、制御部53を有する。制御部53は、切替スイッチ80を制御するものである。制御部53は、検出センサ20に接続され、当該検出センサ20により検出された検出結果に基づいて切替スイッチ80を制御する。
【0032】
制御部53は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出した場合、切替スイッチ80を上記第1接続状態に切り替える。そして、制御部53は、ACインレット10及びAC/DC変換部51の接続をオンし、当該AC/DC変換部51により変換した直流電力を高圧バッテリ30に充電する。更に、制御部53は、降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60の接続をオフし、当該降圧DC/DC変換部52から定圧DC/DC変換部60に直流電力を出力しない。
【0033】
一方、制御部53は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出していない場合、切替スイッチ80を上記第2接続状態に切り替える。そして、制御部53は、降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60の接続をオンし、当該降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60により降圧した直流電力を低圧負荷部4に出力する。更に、制御部53は、高圧バッテリ30から降圧DC/DC変換部52を介さずに高圧負荷部3に直流電力を供給する。また、制御部53は、AC/DC変換部51及びACインレット10の接続をオフし、当該AC/DC変換部51から高圧バッテリ30に直流電力を充電しない。
【0034】
次に、図4を参照して車両電源装置1の動作例について説明する。図4は、実施形態に係る車両電源装置1の動作例を示すフローチャートである。車両電源装置1は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出したか否かを判定する(ステップS1)。検出センサ20は、例えば、ACコンセントがACインレット10に接続されたことを、交流電力の供給開始として検出する。車両電源装置1は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出した場合(ステップS1;Yes)、高圧バッテリ30を充電する(ステップS2)。車両電源装置1は、例えば、切替スイッチ80を第1接続状態に切り替え、ACインレット10及びAC/DC変換部51の接続をオンする。そして、制御部53は、ACインレット10から出力されAC/DC変換部51により変換した直流電力を高圧バッテリ30に充電し、処理を終了する。なお、車両電源装置1は、高圧バッテリ30を充電中に、必要に応じて切替スイッチ80を第1接続状態から第2接続状態に切り替える。車両電源装置1は、例えば、高圧バッテリ30を充電中に補機バッテリ70の充電率が予め定められた基準値未満の場合、切替スイッチ80を第1接続状態から第2接続状態に切り替える。そして、車両電源装置1は、高圧バッテリ30の充電を一旦停止し、高圧バッテリ30から供給される電力により補機バッテリ70を充電する。これにより、車両電源装置1は、高圧バッテリ30を充電中に補機バッテリ70の充電率が著しく低下することを抑制できる。
【0035】
上述のステップS1で、車両電源装置1は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出していない場合(ステップS1;No)、高圧バッテリ30から電力を供給する(ステップS3)。車両電源装置1は、例えば、切替スイッチ80を第2接続状態に切り替え、降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60の接続をオンし、降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60により降圧した電圧の直流電力を低圧負荷部4及び補機バッテリ70に出力する。更に、制御部53は、高圧バッテリ30から降圧DC/DC変換部52を介さずに高圧負荷部3に直流電力を供給し、処理を終了する。
【0036】
以上のように、実施形態に係る車両電源装置1は、高圧バッテリ30と、ACインレット10と、電力変換ユニット50と、定圧DC/DC変換部60と、切替スイッチ80と、検出センサ20と、制御部53とを備える。高圧バッテリ30は、高圧負荷部3及び当該高圧負荷部3よりも電圧が低い低圧負荷部4に直流電力を供給する。ACインレット10は、高圧バッテリ30に交流電力を供給するAC電源2に接続される。電力変換ユニット50は、AC電源2から供給される交流電力を直流電力に変換し当該直流電力を高圧バッテリ30に充電するAC/DC変換部51、及び、高圧バッテリ30から供給される直流電力の電圧を降圧した中間電圧Vmを生成する降圧DC/DC変換部52を有する。定圧DC/DC変換部60は、降圧DC/DC変換部52により生成された中間電圧Vmを降圧した直流電力を低圧負荷部4に出力する。切替スイッチ80は、AC/DC変換部51とACインレット10との電気的な接続をオン又はオフし、且つ、降圧DC/DC変換部52と定圧DC/DC変換部60との電気的な接続をオン又はオフする。検出センサ20は、AC電源2から供給される交流電力の供給開始を検出する。
【0037】
制御部53は、検出センサ20により検出された検出結果に基づいて切替スイッチ80を制御する。制御部53は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出した場合、AC/DC変換部51及びACインレット10の接続をオンし、当該AC/DC変換部51により変換した直流電力を高圧バッテリ30に充電する。また、制御部53は、降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60の接続をオフし、当該降圧DC/DC変換部52から定圧DC/DC変換部60に直流電力を出力しない。一方、制御部53は、検出センサ20により交流電力の供給開始を検出していない場合、降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60の接続をオンし、当該降圧DC/DC変換部52及び定圧DC/DC変換部60により降圧した直流電力を低圧負荷部4に出力する。更に、制御部53は、高圧バッテリ30から降圧DC/DC変換部52を介さずに高圧負荷部3に直流電力を供給する。また、制御部53は、AC/DC変換部51及びACインレット10の接続をオフし、当該AC/DC変換部51から高圧バッテリ30に直流電力を充電しない。定圧DC/DC変換部60は、降圧DC/DC変換部52から出力される直流電力の中間電圧Vmを一定の降圧比で降圧した直流電力を低圧負荷部4に出力する。
【0038】
この構成により、車両電源装置1は、電力変換ユニット50を用いて、AC電源2の交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ30を充電することができ、且つ、高圧バッテリ30の直流電力を降圧して低圧負荷部4に供給することができる。これにより、車両電源装置1は、高圧バッテリ30を充電する際の昇圧用の変換部及び高圧バッテリ30を放電する際の降圧用の変換部として、電力変換ユニット50を使用することができる。つまり、車両電源装置1は、例えば、電力変換ユニット50の双方向DC/DCコンバータ51Bを充電時の昇圧用の変換部及び放電時の降圧用の変換部として兼用することができる。これにより、車両電源装置1は、電力変換部の数の増加を抑制することができ、装置の大型化を抑制することができる。また、車両電源装置1は、製造コストを削減することができる。車両電源装置1は、中間電圧Vmを生成することにより、沿面距離を相対的に短くすることができ、装置の大型化を抑制できる。車両電源装置1は、中間電圧Vmを生成することにより、定圧DC/DC変換部60を高圧用の特別な仕様にする必要がないので、定圧DC/DC変換部60の製造コストを抑制できる。
【0039】
また、車両電源装置1は、従来のようにトランスを新たに追加しないので、双方向DC/DCコンバータ51Bのトランス51cを単機能とすることができ、設計の最適化を行いやすく、装置の大型化をより抑制することができる。車両電源装置1は、中間電圧Vmで電圧調整を行い当該中間電圧Vmを一定の降圧比で降圧するので、定圧DC/DC変換部60の設計を結合インダクタ63を用いて最適化することができる。これにより、車両電源装置1は、定圧DC/DC変換部60の大型化を抑制することができ、更に、定圧DC/DC変換部60のノイズ発生を抑制することができる。
【0040】
上記車両電源装置1において、AC/DC変換部51は、AC電源2から供給される交流電力を直流電力に整流する整流回路51A、及び、当該整流回路51Aにより整流された直流電力の電圧を昇圧する双方向DC/DCコンバータ51Bを有する。降圧DC/DC変換部52は、双方向DC/DCコンバータ51Bを用いて、高圧バッテリ30から供給される直流電力の電圧を降圧した中間電圧Vmを生成する。この構成により、車両電源装置1は、双方向DC/DCコンバータ51Bを充電時の昇圧用の変換部及び放電時の降圧用の変換部として兼用することができ、装置の大型化を抑制できる。車両電源装置1は、双方向DC/DCコンバータ51Bのトランス51cにより高圧バッテリ30等の高圧電源系統と低圧負荷部4等の低圧電源系統との絶縁を確保することができる。車両電源装置1は、切替スイッチ80によりAC電源2と低圧負荷部4等の低圧電源系統との絶縁を確保することができる。
【0041】
上記車両電源装置1において、定圧DC/DC変換部60は、電流を通電又は遮断するスイッチング素子61、及び、スイッチング素子61の動作に応じて誘導電流を出力する結合インダクタ63を有する降圧チョッパ回路CP1を含んで構成される。この構成により、車両電源装置1は、定圧DC/DC変換部60の設計を結合インダクタ63を用いて最適化することができ、当該定圧DC/DC変換部60を低ノイズ且つ小型化することができる。
【0042】
〔変形例〕
次に、実施形態の変形例について説明する。なお、変形例では、実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図5は、実施形態の第1変形例に係る車両電源装置1Aの構成例を示すブロック図である。第1変形例に係る車両電源装置1Aは、定圧DC/DC変換部60Aが3相の降圧チョッパ回路CP2を備える点で実施形態に係る車両電源装置1と異なる。3相の降圧チョッパ回路CP2は、図5に示すように、電流を通電又は遮断する3つのスイッチング素子61と、3つのダイオード62と、各スイッチング素子61の動作に応じて各ダイオード62を介して誘導電流を出力する3つのコイルから成る結合インダクタ63とを有する。定圧DC/DC変換部60Aは、3相の降圧チョッパ回路CP2において、1/3の降圧比で中間電圧Vmを降圧する。中間電圧Vmは、例えば、低圧負荷部4の電圧の最大値を15Vとし、相数を3相とした場合、当該中間電圧Vmの最大値が45Vとなり、4相の降圧チョッパ回路CP1の中間電圧Vm(60V)よりも小さくなる。これにより、3相の降圧チョッパ回路CP2は、4相の降圧チョッパ回路CP2よりも電圧を扱い易くなるが、電力損失の点で4相の降圧チョッパ回路CP2よりも劣る。
【0043】
また、定圧DC/DC変換部60Aは、降圧チョッパ回路CP2を並列接続してもよい。図6は、実施形態の第2変形例に係る車両電源装置1Bの構成例を示すブロック図である。第2変形例に係る車両電源装置1Bにおいて、定圧DC/DC変換部60Bは、例えば、図6に示すように、3相の降圧チョッパ回路CP2を2並列に接続している。
【0044】
また、車両電源装置1は、力率を改善するPFC(Power Factor Correction)回路を有する構成としてもよい。図7は、実施形態の第3変形例に係る車両電源装置1Cの構成例を示すブロック図である。車両電源装置1Cは、例えば、図7に示すように、切替スイッチ80を介してAC電源2に接続されるPFC回路51Cと、当該PFC回路51Cに接続される双方向DC/DCコンバータ51Dとを有する。
【0045】
また、高圧負荷部3は、インバータやモータジェネレータ等を含んで構成される例について説明したが、これに限定されず、その他の電子機器を含んで構成されてもよい。
【0046】
また、低圧負荷部4は、補機負荷部等を含んで構成される例について説明したが、これに限定されず、その他の電子機器を含んで構成されてもよい。
【0047】
また、制御部53は、電力変換ユニット50に設けられる例について説明したが、これに限定されず、その他の箇所に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B、1C 車両電源装置
2 AC電源(交流電源部)
3 高圧負荷部
4 低圧負荷部
10 ACインレット(電源接続部)
20 検出センサ(検出部)
30 高圧バッテリ(バッテリ)
50 電力変換ユニット(電力変換部)
51 AC/DC変換部
51A 整流回路
51B 双方向DC/DCコンバータ
52 降圧DC/DC変換部
53 制御部
60、60A、60B 定圧DC/DC変換部
61 スイッチング素子
63 結合インダクタ(コイル)
80 切替スイッチ(切替部)
CP1、CP2 降圧チョッパ回路
Vm 中間電圧(第1電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7