特許第6802830号(P6802830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802830スライドコア進退機構と、それを備える金型装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802830
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】スライドコア進退機構と、それを備える金型装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/44 20060101AFI20201214BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20201214BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20201214BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B29C33/44
   B29C45/44
   B22D17/22 H
   B22C9/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-218201(P2018-218201)
(22)【出願日】2018年11月21日
(65)【公開番号】特開2020-82450(P2020-82450A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2019年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】安田 正博
(72)【発明者】
【氏名】腰地 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】栗山 健士
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−212305(JP,A)
【文献】 特開2003−001682(JP,A)
【文献】 特開2003−305730(JP,A)
【文献】 実開昭61−085419(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1562508(KR,B1)
【文献】 中国実用新案第204183766(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドコアをスライドさせるアンギュラピンと、前記アンギュラピンを案内する案内部とを有するスライドコア進退機構において、
前記案内部は、前記アンギュラピンを通すピン挿通孔が形成されたインナ部材と、前記インナ部材がその軸線方向に沿って移動可能に挿入されるインナ挿入孔が形成されたアウタ部材とを有し、
前記ピン挿通孔は、前記インナ部材の軸線方向に平行な断面を見たときに直線状に延在し、且つ前記インナ挿入孔は、前記アウタ部材の軸線方向に平行な断面を見たときに直線状に延在し、
前記ピン挿通孔の軸線方向が前記インナ部材の軸線方向に対して傾斜するとともに、前記インナ挿入孔の軸線方向が前記アウタ部材の軸線方向に対して傾斜し、
且つ前記インナ部材の軸線方向と前記インナ挿入孔の軸線方向とが略一致するとともに、前記ピン挿通孔の軸線方向と前記アウタ部材の軸線方向とが略一致
前記アウタ部材の、前記インナ挿入孔の内周壁に対して、前記インナ部材の外周壁が前記インナ挿入孔の軸線方向に沿って相対的に移動する、スライドコア進退機構。
【請求項2】
請求項1記載の進退機構において、前記インナ部材の外周壁に第1ネジ部が刻設され、且つ前記アウタ部材の、前記インナ挿入孔の内周壁に、前記第1ネジ部を螺合する第2ネジ部が刻設されたスライドコア進退機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の進退機構において、前記アウタ部材に、前記インナ挿入孔の内周壁で開口したストッパ用孔が形成されるとともに、前記ストッパ用孔に、前記インナ部材を位置決めするストッパ部材が収容されるスライドコア進退機構。
【請求項4】
第1成形型と、前記第1成形型に対して接近又は離間する方向に変位する第2成形型と、アンダーカット部を成形するためのスライドコアと、型開きの際に前記スライドコアをスライドさせるアンギュラピンとを備える金型装置において、
前記アンギュラピンを案内する案内部を含むスライドコア進退機構をさらに備え、
前記案内部は、前記アンギュラピンを通すピン挿通孔が形成されたインナ部材と、前記インナ部材がその軸線方向に沿って移動可能に挿入されるインナ挿入孔が形成されたアウタ部材とを有し、
前記ピン挿通孔は、前記インナ部材の軸線方向に平行な断面を見たときに直線状に延在し、且つ前記インナ挿入孔は、前記アウタ部材の軸線方向に平行な断面を見たときに直線状に延在し、
前記ピン挿通孔の軸線方向が前記インナ部材の軸線方向に対して傾斜するとともに、前記インナ挿入孔の軸線方向が前記アウタ部材の軸線方向に対して傾斜し、
且つ前記インナ部材の軸線方向と前記インナ挿入孔の軸線方向とが略一致するとともに、前記ピン挿通孔の軸線方向と前記アウタ部材の軸線方向とが略一致
前記アウタ部材の、前記インナ挿入孔の内周壁に対して、前記インナ部材の外周壁が前記インナ挿入孔の軸線方向に沿って相対的に移動する、金型装置。
【請求項5】
請求項4記載の金型装置において、前記インナ部材の外周壁に第1ネジ部が刻設され、且つ前記アウタ部材の、前記インナ挿入孔の内周壁に、前記第1ネジ部を螺合する第2ネジ部が刻設された金型装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の金型装置において、前記アウタ部材に、前記インナ挿入孔の内周壁で開口したストッパ用孔が形成されるとともに、前記ストッパ用孔に、前記インナ部材を位置決めするストッパ部材が収容される金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドコア進退機構と、それを備える金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のバンパ等、アンダーカット部を有する樹脂成形品を成形する金型装置は、スライド可能なスライドコアを含んで構成される。特許文献1に記載されるように、この場合、樹脂成形品を得た後、スライドコアに連結された長尺なアンギュラピンをその軸線方向に沿って移動させる。これにより、該スライドコアをアンダーカット部から容易に離型させることができるという利点がある。
【0003】
このことから諒解されるように、アンギュラピンは、スライドコア進退機構を構成する。特許文献2に記載されるように、スライドコア進退機構は、移動するアンギュラピンを案内する案内部(特許文献2においては「中間ユニット10」がこれに相当する)を有する。案内部の作用下にアンギュラピンが適切に移動することにより、アンダーカット部を離型させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−326233号公報
【特許文献2】特許第4414243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂成形品を多量に作製する量産時においては、毎回の成形終了後、案内部がアンギュラピンを可及的に同一方向に案内することが望ましい。これにより、スライドコアがいわゆる動作不良を起こすことを回避することができるので、成形終了毎にアンダーカット部を離型させることが可能となるからである。
【0006】
本発明はこの種の要請に対応するべくなされたものであり、アンギュラピンを同一方向に案内することが可能な案内部を有するスライドコア進退機構と、それを備える金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、スライドコアをスライドさせるアンギュラピンと、前記アンギュラピンを案内する案内部とを有するスライドコア進退機構において、
前記案内部は、前記アンギュラピンを通すピン挿通孔が形成されたインナ部材と、前記インナ部材を挿入するインナ挿入孔が形成されたアウタ部材とを有し、
前記ピン挿通孔の軸線方向が前記インナ部材の軸線方向に対して傾斜するとともに、前記インナ挿入孔の軸線方向が前記アウタ部材の軸線方向に対して傾斜し、
且つ前記インナ部材の軸線方向と前記インナ挿入孔の軸線方向とが略一致するとともに、前記ピン挿通孔の軸線方向と前記アウタ部材の軸線方向とが略一致する、スライドコア進退機構が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一実施形態によれば、第1成形型と、前記第1成形型に対して接近又は離間する方向に変位する第2成形型と、アンダーカット部を成形するためのスライドコアと、型開きの際に前記スライドコアをスライドさせるアンギュラピンとを備える金型装置において、
前記アンギュラピンを案内する案内部を含むスライドコア進退機構をさらに備え、
前記案内部は、前記アンギュラピンを通すピン挿通孔が形成されたインナ部材と、前記インナ部材を挿入するインナ挿入孔が形成されたアウタ部材とを有し、
前記ピン挿通孔の軸線方向が前記インナ部材の軸線方向に対して傾斜するとともに、前記インナ挿入孔の軸線方向が前記アウタ部材の軸線方向に対して傾斜し、
且つ前記インナ部材の軸線方向と前記インナ挿入孔の軸線方向とが略一致するとともに、前記ピン挿通孔の軸線方向と前記アウタ部材の軸線方向とが略一致する、金型装置が提供される。
【0009】
上記したように構成された案内部では、インナ部材をアウタ部材に対して相対的に移動させることにより、インナ挿入孔に沿ってインナ部材が旋回しながら移動する。アウタ部材の軸線方向に対してインナ挿入孔の軸線方向が傾斜しているので、インナ部材が移動することに伴って、ピン挿通孔に通されたアンギュラピンの軸線がアウタ部材に対して相対的に移動する。これにより、アンギュラピンの軸線の位置と、予め設定された設計軸線位置(理想軸線位置又は方向)とのズレ量を許容範囲内とすることができる。
【0010】
また、アンギュラピンの軸線が理想軸線位置に対して許容範囲外の角度をなす(角度ズレを起こしている)とき、上記の旋回によって角度ズレが修正される。又は、案内部を揺動させることで、角度ズレのズレ量を許容範囲内とすることができる。
【0011】
案内部は、このようにして姿勢が矯正されたアンギュラピンを、成形時にピン挿通孔で案内する。このように、本発明によれば、アンギュラピンの姿勢を矯正する姿勢矯正部を、該アンギュラピンを案内する案内部として利用することができる。
【0012】
しかも、案内部が、例えば、第1成形型又は第2成形型等に保持されることにより、案内部が位置ズレを起こすことが防止される。このため、アンギュラピンが矯正後の姿勢で安定する。すなわち、アンギュラピンの姿勢が変化することが防止される。このためにアンギュラピンが動作不良を起こすことが回避されるので、アンダーカット部を容易に離型させることができる。
【0013】
成形を繰り返すときにおいても、アンギュラピンの姿勢が保たれる。これにより、毎回の成形終了時のアンギュラピンの移動方向が略同一方向となる。すなわち、アンギュラピンの移動方向が安定する。従って、成形を繰り返してもアンギュラピンが動作不良を起こすことを防止し得るので、成形終了毎にアンダーカット部を離型させることができる。
【0014】
インナ部材の外周壁に第1ネジ部を刻設するとともに、アウタ部材の、インナ挿入孔の内周壁に、第1ネジ部を螺合する第2ネジ部を刻設するようにしてもよい。この場合、インナ部材を螺回することで該インナ部材をアウタ部材に対して相対的に移動させることができる。
【0015】
また、アウタ部材に、インナ挿入孔の内周壁で開口したストッパ用孔を形成するとともに、ストッパ用孔に、インナ部材を位置決めするストッパ部材を収容するようにしてもよい。これにより、位置が調整された移動済のインナ部材がさらに移動することが阻止されるので、アンギュラピンの姿勢がさらに安定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インナ部材とアウタ部材を含む案内部でアンギュラピンの姿勢を矯正し、成形を行うときには、この姿勢を維持したアンギュラピンを該案内部で案内するようにしている。すなわち、アンギュラピンが矯正後の姿勢で安定する。このために成形を繰り返した場合であっても、アンギュラピンが動作不良を起こすことが回避される。従って、アンダーカット部を容易に離型させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る金型装置の要部縦断面図である。
図2図1の金型装置に含まれるスライドコア進退機構を構成する案内部を示す要部拡大図である。
図3】案内部によってアンギュラピンの位置ズレを矯正している状態を示す要部拡大図である。
図4】案内部によってアンギュラピンの位置ズレが矯正された状態を示す要部拡大図である。
図5】ネジ部が設けられていないアウタ部材及びインナ部材を含んで構成された案内部を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るスライドコア進退機構につき、それを備える金型装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、自動車車体に組み付けられるバンパを樹脂成形品として得る金型装置を例示する。また、「左」、「右」、「下」及び「上」は、図1における左方、右方、下方及び上方に対応する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る金型装置10の要部縦断面図である。この金型装置10は、溶融樹脂からバンパBPを得るものであり、固定型12(第1成形型)と、該固定型12に対して接近又は離間する方向に変位する可動型14(第2成形型)とを備える。いわゆる型閉じがなされることにより、バンパBPを得るためのキャビティ16が形成される。バンパBPは、本体部18とアンダーカット部20を有する。
【0020】
この場合、固定型12が下方、可動型14が上方に配置される。固定型12は作業ステーションのフロア等に位置決め固定されており、一方、可動型14にはアクチュエータが設けられる。可動型14は該アクチュエータの作用下に昇降し、下降に伴って固定型12に接近するとともに、上昇に伴って固定型12から離間する。以上の構成は従来周知であることから、アクチュエータ等の図示及び詳細な説明を省略する。なお、可動型14の昇降方向は、図1中の矢印A方向である。
【0021】
固定型12には、低位部22と高位部24を有する係合凹部26が形成されている。この係合凹部26には、スライドコア28が離間可能に着座する。具体的には、スライドコア28は、柱状部30と、該柱状部30の右方から断面略扇形状に突出した係止部32とを有する。型閉じを行ってキャビティ16を形成するときには、柱状部30の左方側面が高位部24の側壁に当接し、係止部32の底面が高位部24の上面に当接する。
【0022】
固定型12には、下端面から係合凹部26に連なるピン収容孔34が形成されている。該ピン収容孔34の、係合凹部26に近接する上端側の内径は、下端側に比して小さく設定される。これにより小径孔36が形成されることで、径方向内方に突出したストッパ部38が形成されている。柱状部30の下端面は、ストッパ部38の上端面に着座する。
【0023】
図1に矢印Bで示される柱状部30の軸線方向(スライドコア28の軸線方向)は、可動型14の昇降方向、換言すれば、型開き方向(矢印A方向)に対して所定角度θで傾斜する。型開きの後、スライドコア28は、後述するアンギュラピン40の移動に追従して軸線方向(矢印B方向)に沿って上方に移動し、これにより係合凹部26から脱離する。
【0024】
金型装置10は、スライドコア28を係合凹部26に対して着座又は離脱させる方向に移動させるためのスライドコア進退機構42をさらに備える。このスライドコア進退機構42につき説明する。
【0025】
柱状部30の下部には、その軸線方向Xが柱状部30の軸線方向(矢印B方向)に略一致するようにして、スライドコア進退機構42を構成するアンギュラピン40の上端部が、ネジ部を介して連結されている。該アンギュラピン40は、前記ピン収容孔34に挿通されるとともに、その下端部が固定型12の下方に突出する。
【0026】
スライドコア進退機構42は、固定型12の外方に設けられてアンギュラピン40を軸線方向Xに沿って移動させるピン移動部44を含む。一層詳細には、ピン移動部44は、その上面に凹部46が形成された可動プレート48と、前記凹部46内に配設された2個1組のレール部材50と、該1組のレール部材50によってブッシュホルダ52ごと案内される球状ブッシュ54とを主に有する。なお、図1においては、1組のレール部材50中の1個を示している。
【0027】
可動プレート48は、前記アクチュエータとは別のアクチュエータ(図示せず)によって、型開き方向(矢印A方向)と略同一方向に昇降することが可能である。この可動プレート48の下端面には、凹部46に連なるボルト挿通孔56が形成される。
【0028】
球状ブッシュ54の案内孔58は、該球状ブッシュ54の中心を通る貫通孔であり、前記中心よりも下方は内径が小さな小径孔、上方は内径が大きな大径孔となっている。案内孔58内には、この内径差に基づいて段部60が形成される。アンギュラピン40の下端面は、該段部60に堰き止められる。小径孔の下方の開口からは連結ボルト62が挿入されるとともに、該連結ボルト62がアンギュラピン40の下端部に形成された雌ネジに螺合される。この螺合により、アンギュラピン40の下端部が球状ブッシュ54に保持される。なお、大径孔の直径は、アンギュラピン40の直径と略同一である。
【0029】
ブッシュホルダ52は、球状ブッシュ54の、案内孔58の開口近傍を除く外周面の一部を、球面状の受面で支持する。このため、球状ブッシュ54は、案内孔58が所望の方向を臨んで傾斜するように転動することが可能である。
【0030】
1組のレール部材50は、図1の紙面奥側と手前側で互いに対向するようにしてブッシュホルダ52を摺動自在に挟持する。なお、図1においては、紙面手前側のレール部材50の図示を省略し、紙面奥側のレール部材50のみを示している。レール部材50、50同士は、1組の連結プレート64を介して連結され、これにより一体化されている。
【0031】
2個のレール部材50には、アンギュラピン40の軸線方向Xに略直交する矢印C方向に延在する摺動溝66がそれぞれ形成される。ブッシュホルダ52は、摺動溝66に沿って摺動する。このように、1組のレール部材50は、ブッシュホルダ52を摺動可能に保持する。
【0032】
レール部材50の、凹部46の底面に臨む下端面には、ボルト挿通孔56に対応する位置にボルト止穴68が形成される。ワッシャ70及びボルト挿通孔56に通された据付ボルト72のネジ部がボルト止穴68内のネジ部に螺合されることにより、レール部材50が可動プレート48に固定される。
【0033】
凹部46の側壁部には、摺動溝66の右端側に向かって延在するストッパピン74が設けられている。ブッシュホルダ52の右方への移動は、ストッパピン74に当接することによって停止する。すなわち、ストッパピン74は、ブッシュホルダ52の移動を規制する。
【0034】
アンギュラピン40の長手方向略中間には、アンギュラピン40の姿勢を調節する際に該アンギュラピン40を案内する案内部80が設けられる。この案内部80は、インナ部材82と、該インナ部材82に外嵌されるアウタ部材84とを有する。インナ部材82及びアウタ部材84は、略円筒形形状をなす。
【0035】
インナ部材82には、アンギュラピン40を通すピン挿通孔86が形成される。ピン挿通孔86の直径は、アンギュラピン40の直径に略一致する。このため、アンギュラピン40は、インナ部材82がアウタ部材84に対して相対的に移動するとき、インナ部材82と一体的に移動する。その一方で、インナ部材82の外周壁には、第1ネジ部88が刻設される。
【0036】
図2に示すように、ピン挿通孔86の軸線方向Y1は、アンギュラピン40の軸線方向Xに略一致する一方で、インナ部材82の軸線方向Y2に対して所定角度で傾斜する。すなわち、ピン挿通孔86の軸線方向Y1は、インナ部材82の軸線方向Y2と平行ではない。
【0037】
アウタ部材84には、インナ部材82を挿入するインナ挿入孔90が形成される。インナ挿入孔90の内周壁には、第2ネジ部92が刻設される。この第2ネジ部92には、インナ部材82の外周壁に刻設された第1ネジ部88が螺合される。このため、アウタ部材84を回転ないし揺動させると、インナ部材82及びアンギュラピン40が一体的に回動ないし揺動する。
【0038】
インナ部材82の高さは、アウタ部材84に比して短尺である。このため、インナ部材82をアウタ部材84に対して相対的に螺回することにより、インナ部材82の、インナ挿入孔90内での位置を様々に変更することが可能である。なお、インナ部材82の上端がインナ挿入孔90から露呈しても特に差し支えはない。
【0039】
インナ挿入孔90の軸線方向Z1は、アウタ部材84の軸線方向Z2に対して所定角度で傾斜する。すなわち、インナ挿入孔90の軸線方向Z1は、アウタ部材84の軸線方向Z2と平行ではない。その一方で、軸線方向Z1は、インナ部材82の軸線方向Y2に略一致する。また、ピン挿通孔86の軸線方向Y1、ひいてはアンギュラピン40の軸線方向Xは、アウタ部材84の軸線方向Z2と略一致する。
【0040】
アウタ部材84には、その外周壁から内周壁にわたって貫通し、インナ挿入孔90で開口するネジ用貫通孔(ストッパ用孔)94が形成される。該ネジ用貫通孔94の、内周壁側開口近傍にはネジ部が刻設されており、該ネジ部に、ストッパ部材としての止めネジ96が螺合される。止めネジ96を螺回させることにより、該止めネジ96をネジ用貫通孔94に沿って進行させることが可能である。
【0041】
このように構成される案内部80は、図1に示すように、組付プレート100の上面に図示しない保持部材を介して位置決め固定される。さらに、該組付プレート100が組付ボルト102を介して固定型12に保持されることにより、案内部80がピン収容孔34内に収容される。
【0042】
本実施の形態に係る金型装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。
【0043】
溶融樹脂の成形を行うに先んじ、アンギュラピン40が組み付けられる。すなわち、はじめに、スライドコア28を固定型12の係合凹部26に仮置きする。具体的には、スライドコア28の柱状部30に連結されたアンギュラピン40を、固定型12に形成されたピン収容孔34に通す。さらに、柱状部30の下端面をストッパ部38の上端面に着座させ、係止部32の底面を、係合凹部26の、低位部22の上面に着座させる。この際、柱状部30の左方側面が高位部24の側壁に当接する。
【0044】
次に、組付プレート100の上面に仮支持された案内部80に、アンギュラピン40を通す。すなわち、アウタ部材84のインナ挿入孔90に収容されたインナ部材82の、ピン挿通孔86にアンギュラピン40を挿通する。
【0045】
その一方で、レール部材50を、据付ボルト72を介して可動プレート48に仮組付けする。レール部材50が凹部46に収容されることは勿論である。この際、レール部材50を手で揺動することが可能な程度に据付ボルト72の螺合の度合いを緩やかにしておくことが好ましい。
【0046】
次に、可動プレート48を所定位置まで固定型12に向かって上昇させ、且つ、ブッシュホルダ52をストッパピン74に当接させた状態で、アンギュラピン40の下端部を、球状ブッシュ54に形成された案内孔58(大径孔)内に挿入する。さらに、案内孔58の小径孔の開口から連結ボルト62を差し込み、アンギュラピン40の下端部に形成された雌ネジに螺合する。これにより、アンギュラピン40に球状ブッシュ54が連結される。
【0047】
上記したようにアンギュラピン40の下端部を案内孔58に挿入したとき、該案内孔58がアンギュラピン40の軸線方向Xと同じ方向に傾斜する。案内孔58とアンギュラピン40の軸線同士が一致するように、レール部材50が可動プレート48の凹部46の底面に沿って僅かに移動することで、可動プレート48に対するレール部材50の相対位置が自動的に調整される。
【0048】
この時点で、アンギュラピン40の姿勢が予め設定された設計姿勢に一致していないときには、案内部80を用いて姿勢を矯正する。すなわち、例えば、図3に仮想線で示すように、アンギュラピン40の軸線Xが理想軸線位置IXから偏倚している場合、例えば、インナ部材82を螺回する。
【0049】
この螺回により、インナ部材82がインナ挿入孔90内を変位する。第1ネジ部88と第2ネジ部92が正ネジであるときには、インナ部材82を時計回りに螺回するとインナ部材82がインナ挿入孔90内を旋回しながら下降する。インナ部材82の軸線方向Y2に対してピン挿通孔86の軸線方向Y1が傾斜しているので、この場合、アンギュラピン40が右方に移動する。これとは逆に、インナ部材82を反時計回りに螺回するとインナ部材82がインナ挿入孔90内を旋回しながら上昇するとともに、アンギュラピン40が左方に移動する。
【0050】
なお、第1ネジ部88と第2ネジ部92が逆ネジであるときには、インナ部材82を時計回りに螺回するとインナ部材82がインナ挿入孔90内を旋回しながら上昇してアンギュラピン40が左方に移動する。また、インナ部材82を反時計回りに螺回するとインナ部材82がインナ挿入孔90内を旋回しながら下降するとともに、アンギュラピン40が右方に移動する。
【0051】
図3では、仮想線で表す位置からインナ部材82を上昇させ且つアンギュラピン40を左方に移動させて実線で表す位置に移動させた状態を示している。以上のようにしてアンギュラピン40を移動させ、軸線方向Xと理想軸線位置IXとのズレが許容範囲内となった時点で、インナ部材82の螺回を停止する。
【0052】
その結果、図4に仮想線で示すように、アンギュラピン40の軸線方向Xが理想軸線位置IXに対して許容範囲外の角度で傾斜している場合であっても、角度ズレが修正される。又は、案内部80を揺動させるようにしてもよい。これにより、アンギュラピン40の軸線方向Xを理想軸線位置IXに略一致させることができる。
【0053】
このようにしてアンギュラピン40の姿勢を矯正した後、ネジ用貫通孔94のネジ部に止めネジ96を螺合する。螺回に伴って止めネジ96がネジ用貫通孔94を進行する結果、その先端に第2ネジ部92が食い込む。これにより、インナ部材82がさらに螺回することが阻止される。換言すれば、インナ部材82がそれ以上移動すること、すなわち、インナ部材82及びアンギュラピン40が位置ズレを起こすことが防止される。このため、アンギュラピン40が矯正された姿勢で安定する。
【0054】
さらに、組付プレート100の上面に案内部80を位置決め固定し、組付ボルト102を介して組付プレート100を固定型12に連結する。
【0055】
そして、次に、据付ボルト72を、ワッシャ70及びボルト挿通孔56に通し、さらに、レール部材50に形成されたボルト止穴68内のネジ部に螺合する。これにより本締めがなされ、レール部材50が可動プレート48に位置決め固定される。以上の結果、アンギュラピン40の組付けが終了する。
【0056】
上記のようにしてアンギュラピン40を組付けることで、アンギュラピン40、案内部80を構成するインナ部材82のピン挿通孔86、球状ブッシュ54の案内孔58の芯出しが高精度になされる。このため、アンギュラピン40は、その軸線方向Xに沿って円滑に移動し得る。
【0057】
金型装置10においてバンパBPを得るに際しては、図1に示すように、固定型12に対して可動型14を接近させ、型閉じを行う。さらに、溶融樹脂をキャビティ16に導入して硬化させ、該溶融樹脂から、キャビティ16の形状に対応する形状のバンパBPを得る。バンパBPには、本体部18とアンダーカット部20が形成される。
【0058】
その後、可動型14を上昇させて型開きを行う。次に、可動プレート48を固定型12に向かって上昇させる。これに伴って、ブッシュホルダ52が、レール部材50に形成された摺動溝66に摺接しながら、該摺動溝66の延在方向(矢印C方向)に沿って右斜め上方に移動する。このように可動プレート48が上昇し且つブッシュホルダ52が右斜め上方に移動することにより、アンギュラピン40とスライドコア28がアンギュラピン40の軸線方向Xに沿って一体的に移動する。すなわち、アンギュラピン40及びスライドコア28は、左斜め上方に上昇する。その結果、スライドコア28が係合凹部26から離脱するとともに、バンパBPがスライドコア28に同伴されて固定型12から離脱する。すなわち、バンパBPが離型される。
【0059】
この際、アンギュラピン40は、ピン挿通孔86の軸線方向X1に沿って案内されながら、該ピン挿通孔86内を摺動する。ここで、案内部80は、組付プレート100に位置決め固定されている。このため、該案内部80がピン収容孔34内で位置ズレを起こすことが有効に回避される。しかも、案内部80を構成するインナ部材82が、止めネジ96によって位置決め固定されている。以上のことが相俟って、アンギュラピン40が矯正後の姿勢から変化することが防止されるので、アンギュラピン40を設計方向に沿って移動させることができる。従って、スライドコア28が係合凹部26から離脱しない動作不良が抑制されるので、アンダーカット部20を離型させることができる。
【0060】
すなわち、この場合、アンギュラピン40の姿勢を矯正した姿勢矯正部を、成形時にアンギュラピン40を案内する案内部80として機能させるようにしている。しかも、案内部80は、インナ部材82とアウタ部材84を組み合わせることで簡素に構成されている。このように、本実施の形態によれば、簡素な構成でありながら、姿勢矯正機能と案内機能を兼ね備える案内部80を設けるようにしている。このため、部品点数の削減や構成の簡素化を図ることができる。
【0061】
スライドコア28の下降及び型閉じ、キャビティ16への溶融樹脂の導出、型開き及びスライドコア28の上昇を繰り返すことにより、バンパBPが連続的に作製される。上記したように案内部80が位置ズレを起こすことが回避されているので、成形を連続的に行うに際して、アンギュラピン40が略同一方向に案内される。このため、スライドコア28の移動方向が略同一に保たれる。これにより、毎回の成形終了毎にアンダーカット部20を離型させることが可能となる。
【0062】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、可動型14にスライドコア28を設けるようにしてもよい。
【0064】
また、樹脂成形品はアンダーカット部20を有するものであればよく、バンパBPに特に限定されるものではない。
【0065】
さらに、アウタ部材84のインナ挿入孔90、インナ部材82の外周壁に第1ネジ部88、第2ネジ部92を設けることは必須ではなく、図5に示すように、インナ挿入孔90内にインナ部材82を嵌合することで案内部110を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…金型装置 12…固定型
14…可動型 16…キャビティ
18…本体部 20…アンダーカット部
26…係合凹部 28…スライドコア
34…ピン収容孔 38…ストッパ部
40…アンギュラピン 42…スライドコア進退機構
44…ピン移動部 48…可動プレート
50…レール部材 54…球状ブッシュ
60…段部 66…摺動溝
74…ストッパピン 80、110…案内部
82…インナ部材 84…アウタ部材
86…ピン挿通孔 88…第1ネジ部
90…インナ挿入孔 92…第2ネジ部
100…組付プレート BP…バンパ
図1
図2
図3
図4
図5