【実施例】
【0060】
実施例1−セツキシマブ-SMCC-DM1コンジュゲートの調製(A〜H)
A. セツキシマブ抗体の調製および測定
セツキシマブは、切断不可能なヘテロ二官能性架橋試薬SMCCを用いてDM1にコンジュゲートするために、公開市場から入手するか、またはWO 2012/100346に記載のように作製する。
【0061】
次に、セツキシマブ抗体は50mMリン酸カリウム、50mM塩化ナトリウム、2mM EDTA; pH6.5緩衝液(緩衝液A)にバッファー交換した。この実験での全ての緩衝液は、発色性のカブトガニ血球抽出物(Limulus amoebocyte lysate: LAL)試験法(Cambrex社)を用いて、エンドトキシンが存在しないことを検査した。抗体の濃度は、280nmで1.45mL/mg/cmの吸光係数および145,781gの分子量を用いて測定した。
【0062】
B. SMCC原液の調製および測定
SMCCの20mM溶液(6.69mg/mL)(Concortis Biosystems Corp.)をDMSO中に調製した。この溶液をアッセイ緩衝液で1/40に希釈し、サンプルの吸光度を302nmで測定した。原液の濃度は、602/M/cmのモル吸光係数を用いて算出した。
【0063】
C. DM1原液の調製および測定
DM1(遊離チオール形態;Concortis Biosystems Corp.)の10mM溶液をDMA中に調製した(7.37mg/mL)。エタノール中の原液の希釈物の吸光度を280nmで測定した。原料DM1の濃度は、280nmで5700/M/cmのモル吸光係数を用いることにより算出した。原料DM1調製物中の遊離-SHの濃度は、エルマン試薬(DTNB)を用いて測定した。3%(v/v) DMAにしたアッセイ緩衝液中に該原液の希釈物を調製し、その後DMSO中の100mM DTNB(1/100容量)を添加した。412nmでの吸光度の増加を試薬ブランクに対して測定し、14150/M/cmの吸光係数を用いて濃度を算出した。エルマンアッセイから得られた-SHの濃度は、コンジュゲーション条件の計算においてDM1原液の濃度を表すために使用した。
【0064】
D. SMCC架橋剤によるセツキシマブの修飾
抗体は、20mg/mLの抗体で7.5倍モル過剰のSMCCを用いて修飾した。反応は、DMSO(5%v/v)を含む緩衝液A(95%v/v)中で撹拌しながら室温にて2時間行った。
【0065】
E. 過剰のSMCCを除去するためのG25クロマトグラフィー
セツキシマブ-SMCC反応混合物は、緩衝液Aで平衡化したセファデックスG25樹脂の1.5×4.9cmプレパックカラムを通してゲルろ過した。負荷量と溶出量は、メーカーの指示(Amersham Biosciences社)に従った。修飾抗体の溶液の濃度は、上述した吸光係数を用いて分光光度法により測定した。
【0066】
F. セツキシマブ-SMCCとDM1とのコンジュゲーション
修飾抗体を1.7倍過剰のDM1とリンカーを介して(抗体あたり5リンカーと仮定して)反応させた。この反応は、DMA(6%v/v)を含む緩衝液A(94%v/v)中の10mg/mLの抗体濃度で行った。DM1の添加後、反応物を撹拌しながら室温で16.5時間インキュベートした。
【0067】
G. G25クロマトグラフィーによるコンジュゲーション精製
コンジュゲーション反応混合物は、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS), pH6.5(緩衝液B)で平衡化したセファデックスG25樹脂の1.5×4.9cmプレパックカラムを通してゲルろ過した。負荷量と溶出量は、メーカーの指示(Amersham Biosciences社)に従った。セツキシマブのモルあたりに連結されたDM1分子の数は、溶出物質の252nmと280nmの両方での吸光度を測定することによって決定した。DM1/抗体比は、2および4であると分かった。得られたコンジュゲートを結合および細胞毒性について分析した。
【0068】
H. セツキシマブ-SMCC-DM1の試験
これらの研究において使用した細胞株は、以下の特徴を有する:
A431:ヒト外陰部上皮癌細胞株;ATCCから入手可能;96ウェルプレートで100μl/ウェルのDMEM-10%FBS中に4000細胞/ウェルで播種した。
H226:肺扁平上皮癌細胞株;ATCCで入手可能;96ウェル培養プレートで100μl/ウェルのRPMI-10%FBS中に4000細胞/ウェルで播種した。
MDA-MB-468:乳腺/乳房;転移部位:胸水に由来;ATCCから入手可能;ウシ胎児血清を10%の最終濃度まで添加した、ATCC配合のライボビッツ(Leibovitz's)L-15培地(カタログ番号30-2008)中に4000細胞/ウェルで播種した;96ウェルプレートに100μl/ウェル。
HaCaT:組織学的に正常な皮膚に由来するインビトロで自然に形質転換した角化細胞;武漢大学のタイプ・カルチャー・コレクションの中国センターから入手可能;96ウェル培養プレートで100μl/ウェルのDMEM-10%FBS中に2000細胞/ウェルで播種した。
HEKa:正常ヒト初代表皮角化細胞、成人;PromoCell GmbHから入手可能;100μl/ウェルのEpiLife培地、EpiLife培地 #MEP1500CA, Invitrogen社、+HKGSヒト角化細胞増殖サプリメント(#S-001-5)中に4000細胞/ウェルで播種した。
【0069】
結合研究は、DM1への抗体のコンジュゲーションがK
Dに影響を与えなかったことを示した;裸のセツキシマブ抗体とセツキシマブ-SMCC-DM1コンジュゲートの両方は、表面プラズモン共鳴によりEGFRに対して同じ結合親和性を有していた(約0.3nM、表1)。サンプルのインビトロ細胞毒性の評価は、セツキシマブ-SMCC-DM1コンジュゲートが癌細胞株に対してセツキシマブと比較して顕著により細胞毒性である(
図3および4)が、驚くべきことに、セツキシマブ-SMCC-DM1と裸のセツキシマブは角化細胞に対して同じ細胞毒性を有する(
図5および6)ことを示した。
【0070】
(表1)DM1へのコンジュゲーションがセツキシマブKDに及ぼす影響
【0071】
異なるEGFR MAb(huML66およびhuEGFR-7R)に対するDM1コンジュゲーションの影響は、ImmunoGen社の公開された米国特許出願第2012/0156217号に実証されており、本明細書における
図1および2は、その出願に添付されている図面の複製である。より具体的には、
図1に示すように、huML66-SMCC-DM1およびhuEGFR-7R-SMCC-DM1イムノコンジュゲートを作製するための、抗EGFR抗体huML66およびhuEGFR-7Rのメイタンシノイドへのコンジュゲーションは、正常な角化細胞に対する細胞毒性を増加させる。同様に、予想された通り、huML66-SMCC-DM1およびhuEGFR-7R-SMCC-DM1イムノコンジュゲートを作製するための、抗EGFR抗体huML66およびhuEGFR-7Rのメイタンシノイドへのコンジュゲーションは、H226癌細胞株に対する該抗体の細胞毒性を著しく増強させる(
図2)。
【0072】
図3および4に示すように、セツキシマブ-SMCC-DM1イムノコンジュゲート(HC-LC/DM1)を作製するための、抗EGFR抗体セツキシマブ(HC-LC)のDM1コンジュゲーションは、予想された通り、
図3に示すように、癌細胞に対する該抗体の細胞毒性を大いに増強させる。
図4に示すように、これもまた予想された通り、セツキシマブ-SMCC-DM1イムノコンジュゲート(HC-LC/DM1)を作製するための、抗EGFR抗体セツキシマブ(HC-LC)のメイタンシノイドへのコンジュゲーションは、癌細胞に対する該抗体の細胞毒性を大いに増強させる。
【0073】
しかし、まったく驚くべきことに、
図5および6に示すように、セツキシマブ-SMCC-DM1イムノコンジュゲート(HC-LC/DM1)を作製するための、抗EGFR抗体セツキシマブ(HC-LC)のメイタンシノイドへのコンジュゲーションは、これらの薬剤の実質的に同じIC
50値に反映されるように、角化細胞に対する細胞毒性を
増加させなかった(裸抗体のIC
50 0.4324に対してコンジュゲートのIC
50 0.8269;
図5、HaCaT-正常ヒト角化細胞株、裸抗体のIC
50 0.9348に対してコンジュゲートのIC
50 2.210;
図6、HEKa-初代ヒト角化細胞)。本明細書で使用されるIC
50は、細胞の50%を殺傷するのに必要な薬物の濃度を指す。
【0074】
細胞毒性が増加するか否かの尺度は、アラマーブルー細胞生存アッセイを用いてもたらされたIC
50値を比較することによって、上記で決定される(各実験は96ウェルプレートで三つ組にて行った)。1対数オーダー内の差は、有意とみなされず、細胞毒性に変化がないことを示すと考えられ、一方、1対数オーダーより大きい差は、細胞毒性に大きな変化があることを示す。
【0075】
実施例2−霊長類での評価
カニクイザル種は、皮膚副作用を含めて、抗EGFR抗体の毒性を評価するための有益な高度予測モデルであることが以前に実証されている。EGFRを標的とする抗体についてのカニクイザルとヒトとの毒性データの高レベルの相関は、一部には、該抗体について非常に類似したK
D値をもたらすサルおよびヒトEGFR受容体間の高度の相同性によるものである:
【0076】
(表1)ヒトおよびカニクイザルEGFRへのセツキシマブとパニツムマブの結合親和性は、種を超えて一致している。ヒトEGFR(huEGFR)およびカニクイザルEGFR(cyEGFR)の組換え細胞外ドメインを用いたELISAにおいて最大結合の半量を達成するのに必要とされる抗体濃度(ピコモル濃度、pM)として定義される見かけの抗体親和性。出典:Koefoed et al, MABs. 2011 Nov-Dec; 3(6):584-595。
【0077】
セツキシマブ-SMCC-DM1イムノコンジュゲートは、特に、コンジュゲート化毒素が正常細胞に及ぼす抗体副作用の有意な増強を確認するために、霊長類で試験した。とりわけ、裸の完全アンタゴニスト抗EGFR抗体の場合に予想される副作用に比べて、質的に異なりかつ/または有意に悪化する皮膚副作用に対して細心の注意を払った。
【0078】
この研究では最初に2匹の雄カニクイザルを使用し、これらの動物をケタミンで落ち着かせ、イソフルランで麻酔して抗体-薬物コンジュゲートの静脈内投与を容易にし、該コンジュゲートを10mg/kgで投与した。その後、急性毒性の全身兆候のために犠牲にする前に、動物を5日間観察し、さらに試験した。
【0079】
詳細な病理組織学的分析は、重篤な皮膚科学的毒性または裸のセツキシマブ治療の結果として予想されるもの以外の他の深刻な質的に新しい皮膚副作用がないことを明らかにした。また、これらの動物には他の深刻なオンターゲット(on-target)の毒性が認められず、本発明のADCの安全性および裸抗体の著しい毒性増悪の欠如を実証している。
【0080】
急性霊長類研究の無事完了に続いて、反復投与安全性試験を追加の動物で開始した。ADCを10mg/kgの用量で3週間に1回、4サイクルにわたって投与した。この用量および計画は、霊長類およびヒトにおいて他のADCの場合によく使用される投与計画に基づいて選択された(Poon KA et al, Preclinical safety profile of trastuzumab emtansine (T-DM1): mechanism of action of its cytotoxic component retained with improved tolerability. Toxicol Appl Pharmacol. 2013 Dec 1;273(2):298-313; カドサイラ(Kadcyla:商標)についてのFDA添付文書、2014年2月24日アクセス:
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2013/1254271bl.pdf)。
【0081】
ADCの予想された副作用である可逆的肝酵素上昇を別にすれば、裸のセツキシマブによる治療の結果としてすでに予想されたもの(セツキシマブのカニクイザルデータは、http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/bla/2004/125084_ERBITUX_PHARMR_P3.PDFで利用可能)以外の他の深刻かつ/もしくは質的に新しい皮膚副作用または他のオンターゲットの副作用は、この進行中の研究においてこれまで観察されていない。以前に抗CD44v6 ADC(これもまた、SMCC-DM1ペイロード技術を使用しており、正常な角化細胞により発現される抗原を標的とする)で報告された重度の皮膚毒性および中毒性表皮壊死症は、この研究では観察されていない(Tijink et al., Clin Cancer Res, 2006, 12:6064)。これらの安全性データは、完全アンタゴニストの裸の抗EGFR抗体のオンターゲット毒性が細胞毒性ペイロードへのコンジュゲーションの結果として有意には増強されない、というインビトロ結果をさらに立証する。
【0082】
実施例3−パニツムマブ-SMCC-DM1コンジュゲートの調製(A〜H)
DM-1コンジュゲート化パニツムマブは、本質的にセツキシマブについて上述したように調製した。具体的には、以下の通りである。
【0083】
A. パニツムマブ抗体の調製および測定
パニツムマブは、切断不可能なヘテロ二官能性架橋試薬SMCCを用いてDM1にコンジュゲートするために、公開市場から入手するか、またはUS 6,235,883もしくはUS 7,807,798に記載のように調製する。
【0084】
次に、パニツムマブ抗体は50mMリン酸カリウム、50mM塩化ナトリウム、2mM EDTA; pH6.5緩衝液(緩衝液A)にバッファー交換した。この実験での全ての緩衝液は、発色性のカブトガニ血球抽出物(Limulus amoebocyte lysate: LAL)試験法(Cambrex社)を用いて、エンドトキシンが存在しないことを検査した。抗体の濃度は、280nmで1.45mL/mg/cmの吸光係数および145,781gの分子量を用いて測定した。
【0085】
B. SMCC原液の調製および測定
SMCCの20mM溶液(6.69mg/mL)(Concortis Biosystems Corp.)をDMSO中に調製した。この溶液をアッセイ緩衝液で1/40に希釈し、サンプルの吸光度を302nmで測定した。原液の濃度は、602/M/cmのモル吸光係数を用いて算出した。
【0086】
C. DM1原液の調製および測定
DM1(遊離チオール形態;Concortis Biosystems Corp.)の10mM溶液をDMA中に調製した(7.37mg/mL)。エタノール中の原液の希釈物の吸光度を280nmで測定した。原料DM1の濃度は、280nmで5700/M/cmのモル吸光係数を用いることにより算出した。原料DM1調製物中の遊離-SHの濃度は、エルマン試薬(DTNB)を用いて測定した。原液の希釈物は、3%(v/v) DMAにしたアッセイ緩衝液中に調製し、その後、DMSO中の100mM DTNB(1/100容量)を添加した。412nmでの吸光度の増加を試薬ブランクに対して測定し、14150/M/cmの吸光係数を用いて濃度を算出した。エルマンアッセイから得られた-SHの濃度は、コンジュゲーション条件の計算においてDM1原液の濃度を表すために使用した。
【0087】
D. SMCC架橋剤によるパニツムマブの修飾
抗体は、20mg/mLの抗体で7.5倍モル過剰のSMCCを用いて修飾した。反応は、DMSO(5%v/v)を含む緩衝液A(95%v/v)中で撹拌しながら室温にて2時間行った。
【0088】
E. 過剰のSMCCを除去するためのG25クロマトグラフィー
パニツムマブ-SMCC反応混合物は、緩衝液Aで平衡化したセファデックスG25樹脂の1.5×4.9cmプレパックカラムを通してゲルろ過した。負荷量と溶出量は、メーカーの指示(Amersham Biosciences社)に従った。修飾抗体の溶液の濃度は、上述した吸光係数を用いて分光光度法により測定した。
【0089】
F. パニツムマブ-SMCCとDM1とのコンジュゲーション
修飾抗体を1.7倍過剰のDM1とリンカーを介して(抗体あたり5リンカーと仮定して)反応させた。この反応は、DMA(6%v/v)を含む緩衝液A(94%v/v)中の10mg/mLの抗体濃度で行った。DM1の添加後、反応物を撹拌しながら室温で16.5時間インキュベートした。
【0090】
G. G25クロマトグラフィーによるコンジュゲーション精製
コンジュゲーション反応混合物は、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH6.5(緩衝液B)で平衡化したセファデックスG25樹脂の1.5×4.9cmプレパックカラムを通してゲルろ過した。負荷量と溶出量は、メーカーの指示(Amersham Biosciences社)に従った。パニツムマブのモルあたりに連結されたDM1分子の数は、溶出物質の252nmと280nmの両方での吸光度を測定することによって決定した。DM1/抗体比は、2および4であると分かった。得られたコンジュゲートを結合および細胞毒性について分析した。
【0091】
H. パニツムマブ-SMCC-DM1の試験
これらの研究において使用した細胞株は、以下の特徴を有する:
MDA-MB-468:乳腺/乳房;転移部位:胸水に由来;ATCCから入手可能;ウシ胎児血清を10%の最終濃度まで添加した、ATCC配合のライボビッツ(Leibovitz's)L-15培地(カタログ番号30-2008)中に4000細胞/ウェルで播種した;96ウェルプレートに100μl/ウェル。
HaCaT:組織学的に正常な皮膚に由来するインビトロで自然に形質転換した角化細胞;武漢大学のタイプ・カルチャー・コレクションの中国センターから入手可能;96ウェル培養プレートで100μl/ウェルのDMEM-10%FBS中に2000細胞/ウェルで播種した。
【0092】
角化細胞を用いたインビトロ研究は、パニツムマブの微小管阻害毒素への切断不可能なリンカーを介したコンジュゲーションがこの抗体の毒性を増強させないことを実証する。得られたADCは、裸のパニツムマブとだけでなく、完全アンタゴニスト抗体のセツキシマブに基づいた別のADCとも同様の角化細胞に対する安全性プロファイルを有する。MDA-MB-468癌細胞に対しては、該抗体を微小管阻害毒素に切断不可能なリンカーを介してコンジュゲートした結果として、パニツムマブの抗癌活性の大幅な増強が観察される。毒性の観察と同様に、パニツムマブベースのADCは、セツキシマブベースのADCと同様に活性であった。
【0093】
実施例4−部分的アンタゴニストEGFR MAbコンジュゲートを用いた結果
本明細書で推奨されるものとは異なるイムノコンジュゲート成分を選択することの影響は、添付の図面に示される。
図9は、J2989Aと指定された部分的アンタゴニストEGFR抗体が、DM-1にコンジュゲートした場合、正常な角化細胞に対して増強された活性を有することを示す。
図10は、同様に、6-LC (EGFRに対してより低い相対的親和性を有するセツキシマブの置換変異体)と指定された別の部分的アンタゴニスト抗体が、DM-1にコンジュゲートした場合、やはり正常な角化細胞に対して増強された活性を有することを示す。
図11は、角化細胞へのパニツムマブの効果が、DM-1にコンジュゲートした場合、角化細胞に対しては増強されないが、該コンジュゲートの抗癌効果は劇的に増強されることを示す(
図12)。そして、
図13は、セツキシマブのMMAEへの切断可能リンカー(バリン-シトルリン)によるコンジュゲーションが、正常細胞とMDA-MB-468癌細胞に対するその毒性を増強させるのに対し、切断不可能なリンカー(SMCC)を介したコンジュゲーションは抗癌活性を増強させることを示す。
【0094】
したがって、これらの研究では、完全アンタゴニスト抗EGFR抗体のみが、切断不可能なリンカーを介したペイロードのコンジュゲーションによって、正常細胞に対して増強されなかったが、部分的アンタゴニストEGFR抗体の正常細胞に対する毒性は、コンジュゲーションによって増強された。さらに、本発明者らは、その後、ペイロードの作用機序を同じ(すなわち、微小管阻害薬)に維持しながら、切断可能なリンカー対切断不可能なリンカーのこの活性プロファイルに及ぼす影響を調べた。抗体は、Doronina et al, Nature Biotechnology Nov 7, 2003, Vol 21: pp 778-784に記載されるように、微小管阻害ペイロードMMAEに切断可能リンカーを介してコンジュゲートした。切断可能リンカーのデータは、完全アンタゴニスト抗体を切断可能リンカーを介してそのペイロードにコンジュゲートした場合、正常細胞に対するその毒性が増強されることを実証する。かくして、安全な抗EGFR ADCは、切断不可能なリンカーによって微小管阻害ペイロードに連結された、強力なアンタゴニストの抗EGFR抗体を組み込むべきである。
【0095】
添付の特許請求の範囲は、実施例に記載された好ましい態様によって限定されるものではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0096】
参照配列