(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802837
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】多重偏波放射素子およびこれを備えたアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/24 20060101AFI20201214BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q9/16
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-512560(P2018-512560)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-526930(P2018-526930A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】KR2016010171
(87)【国際公開番号】WO2017043918
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年3月8日
【審判番号】不服2020-145(P2020-145/J1)
【審判請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0129165
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン−ホヮン ソ
(72)【発明者】
【氏名】フン−ジュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】クヮン−ソク チョイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ−ジュン チョイ
【合議体】
【審判長】
北岡 浩
【審判官】
衣鳩 文彦
【審判官】
谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/000215(WO,A1)
【文献】
特表2018−519749(JP,A)
【文献】
特開2014−143590(JP,A)
【文献】
特表2012−503405(JP,A)
【文献】
米国特許第5977929(US,A)
【文献】
米国特許第2374271(US,A)
【文献】
米国特許第6034649(US,A)
【文献】
韓国公開特許第2002−0022071(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重偏波放射素子において、
平面上四方対称に、かつ時計回り順に配置される、第1、第2、第3および第4放射アームと、
前記第4放射アームおよび前記第1放射アームに共通に給電し、前記第2放射アームおよび前記第3放射アームに共通に接地する第1給電線路と、
前記第1放射アームおよび前記第2放射アームに共通に給電し、前記第3放射アームおよび前記第4放射アームに共通に接地する第2給電線路とを含み、
前記第1給電線路および前記第2給電線路は、同軸線路構造を用いてバラン構造を形成し、
第1給電線路の内部導体は、前記第4放射アームおよび前記第1放射アームと共通に連結され、前記第1給電線路の外部導体は、前記第2放射アームおよび前記第3放射アームと共通に連結され、
前記第2給電線路の内部導体は、前記第1放射アームおよび前記第2放射アームと共通に連結され、前記第2給電線路の外部導体は、前記第3放射アームおよび前記第4放射アームと共通に連結されることを特徴とする放射素子。
【請求項2】
多重偏波放射素子を備えたアンテナにおいて、
反射板と、
前記反射板上に設けられる第1帯域の少なくとも1つの第1放射素子と、
前記反射板上に設けられる第2帯域または第3帯域の少なくとも1つの第2または第3放射素子とを含み;
前記第1放射素子は、
平面上四方対称に、かつ時計回り順に配置される、第1、第2、第3および第4放射アームと、
前記第4放射アームおよび前記第1放射アームに共通に給電し、前記第2放射アームおよび前記第3放射アームに共通に接地する第1給電線路と、
前記第1放射アームおよび前記第2放射アームに共通に給電し、前記第3放射アームおよび前記第4放射アームに共通に接地する第2給電線路とを含み、
前記第1給電線路および前記第2給電線路は、同軸線路構造を用いてバラン構造を形成し、
第1給電線路の内部導体は、前記第4放射アームおよび前記第1放射アームと共通に連結され、前記第1給電線路の外部導体は、前記第2放射アームおよび前記第3放射アームと共通に連結され、
前記第2給電線路の内部導体は、前記第1放射アームおよび前記第2放射アームと共通に連結され、前記第2給電線路の外部導体は、前記第3放射アームおよび前記第4放射アームと共通に連結されることを特徴とするアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信(PCS、Cellular、CDMA、GSM(登録商標)、LTEなど)システムの基地局や中継器などに用いられる無線通信アンテナ(以下、「アンテナ」と略称する)に関し、特に、多重偏波を発生するための放射素子およびこれを備えたアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの中継器を含めた基地局のアンテナに用いられる放射素子は、パッチ(patch)タイプ、ダイポール(dipole)タイプなどの多様な形態の放射素子が適用されている。これらのうち、ダイポールタイプの放射素子は、互いに対応する極(pole)を形成する放射アーム(radiating arm)が2つあるものであって、通常、各極(放射アーム)の長さは使用周波数波長の1/4λ(λ:波長)に設定され、2つの放射アームの総長さは1/2λで構成される。最近、無線通信アンテナは、偏波ダイバーシティ方式を適用して、通常、二重偏波アンテナ構造で実現されているが、ダイポールタイプの放射素子は、2つの(直交)偏波を発生するための構造を実現するのに容易でかつ、放射素子の配置が容易で、二重偏波アンテナに広く適用されている。
【0003】
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、一般的なダイポールタイプの放射素子の構成図であって、
図1Aには物理的モデルが示され、
図1Bには
図1Aの電流フロー経路を示す等価構造が示され、
図1Cには
図1Aの電流分布を示す。
図1A〜
図1Cに示されたダイポールタイプの放射素子は、1つのダイポール素子で実現され、基本的な同軸(coaxial)線路11構造を用いてバラン(balun)構造を形成する。同軸線路11の内部導体112は第1放射アーム122に連結され、外部導体114は第2放射アーム124に連結されて、全体的に半波長(half−wave)ダイポールタイプの放射素子を実現する。
【0004】
図2は、従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第1例示構造図であって、別名「X偏波」を発生する二重偏波放射素子の基本モデルと見なされる構造が示される。
図2の二重偏波放射素子は、前記
図1A〜
図1Cに示された構造のダイポール素子2つが相互90度に直交する構造であって、全体的に「X」字状に実現される。すなわち、第1ダイポール素子は、第1同軸線路の内部導体212に連結される第1−1放射アーム222と、第1同軸線路の外部導体214に連結される第1−2放射アーム224とから構成され、垂直軸(または水平軸)に対して+45度の角度で設けられる。第2ダイポール素子は、第2同軸線路の内部導体312に連結される第2−1放射アーム322と、第2同軸線路の外部導体314に連結される第2−2放射アーム324とから構成され、垂直軸(または水平軸)に対して−45度の角度で設けられる。この時、第1同軸線路および第2同軸線路はそれぞれ、別途の信号源(signal source)として給電信号を受信するように構成される。このようなダイポールタイプの二重偏波アンテナについては、「Andrew Corporation」の米国特許第6,034,649号(名称:『DUAL POLARIAED BASED STATION ANTENNA』、特許日:2000年3月7日)、または、「カートライン−ベルケ・カーゲー」により韓国先出願された特許出願番号第2000−7010785号(名称:『二重偏波多重帯域アンテナ』、出願日:2000年9月28日)に開示されたものが挙げられる。
【0005】
前記
図2に示されるような、ダイポールタイプの二重偏波アンテナは基本的なモデルに相当する形態であって、放射性能の向上、広帯域または狭帯域放射特性の改善、最適化されたサイズおよび形態、製造工程および設置費用などを考慮して、ダイポール素子の放射アームを含めたバランおよび給電構造などに対する多様な構造が提案されている。例えば、
図2にて点線で示されるように、特に、ダイポール素子の放射アームは、単に直線形棒状だけでなく、四角形のリング状、または四角板状、またはリボン状などの多様な構造を有することができる。
【0006】
図3は、従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第2例示構造図であって、放射アームの構造および給電構造において前記
図2に比べて変形した構造を提案する。
図3に示された二重偏波放射素子は、相互X字状に直交する第1および第2ダイポール素子で実現され、第1ダイポール素子は、第1−1および第1−2放射アーム242、244を備え、第2ダイポール素子は、第2−1および第2−2放射アーム342、344を備える。この時、第1および第2ダイポール素子の放射アーム242、244、342、344は、広帯域特性を有するように、例えば、四角板状の構造を有することが示されている。
【0007】
また、第1および第2ダイポール素子の給電構造は、
図2に示されるような同軸線路を用いる構造ではなく、ストリップライン伝送線路構造を有する。すなわち、
図3に示された構造では、給電線路の給電導体部分は、第1および第2ストリップライン232、332から構成される。第1−1放射アーム242を支持しながら給電線路の接地部分を形成するバラン構造の支持台に沿って第1ストリップライン232が置かれ、第1ストリップライン232は、前記第1−2放射アーム244の支持台まで延びて、第1−2放射アーム244に、例えば、キャパシタンスカップリング方式で給電信号を伝達する。同じく、第2ストリップライン332は、第2−1放射アーム342を支持するバラン構造の支持台に沿って置かれ、第2−2放射アーム344の支持台まで延びて、第2−2放射アーム344に給電信号を伝達する。
【0008】
図4A、
図4B、
図4Cおよび
図4Dは、従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第3例示構造図であって、
図4Aには平面図、
図4Bは上側から眺めた斜視図、
図4Cは下側から眺めた斜視図、
図4Dは
図4A〜
図4C中のストリップラインに対する別途の斜視図を示す。
図4A〜
図4Dに示された二重偏波放射素子は、第1−1および第1−2放射アーム262、264を備える第1ダイポール素子と、第2−1および第2−2放射アーム362、364を備える第2ダイポール素子とから構成される。この時、第1および第2ダイポール素子の放射アーム262、264、362、364は、広帯域特性を有するように、例えば、前記
図2に示された構造において四角リング状の構造がさらに備えられた構造を有し、全体的に四角形状を有する。
【0009】
図4A〜
図4Dに示された第1および第2ダイポール素子の給電構造は、前記
図3に示されるようなストリップライン伝送線路構造を有する。すなわち、第1ストリップライン252は、第1−1放射アーム262の支持台から第1−2放射アーム264の支持台まで延びる形態で置かれ、第1−2放射アーム264に給電信号を伝達する。同じく、第2ストリップライン352は、第2−1放射アーム362の支持台から第2−2放射アーム364の支持台まで延びる形態で置かれ、第2−2放射アーム364に給電信号を伝達する。この時、
図4Dにより明確に示されるように、第1および第2ストリップライン252、352間の交差部位は、相互連結されないように、エアブリッジ(air bridge)形態で設けられる。
【0010】
図5は、従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第4例示構造図であって、平面構造を示す。
図5に示された二重偏波放射素子は、第1−1および第1−2放射アーム282、284を備える第1ダイポール素子と、第2−1および第2−2放射アーム382、384を備える第2ダイポール素子とから構成される。この時、第1および第2ダイポール素子それぞれの放射アーム282、284、382、384は、その平面構造が真ん中の折曲げられた形状(表1の形状1)を有し、それぞれ折曲部が順次に相互隣接し、全体的に平面上四方対称となる形状(表1の形状2)に配置される構造を有する。すなわち、それぞれの放射アーム282、284、382、384は、まるで2つのサブ放射アームが互いに直角に連結されるのと類似の構造を有することができる。
【0011】
【表1】
【0012】
また、第1および第2ダイポール素子の給電構造は、前記
図3または
図4に示されるようなストリップライン伝送線路構造を有するが、第1ストリップライン272は、第1−1放射アーム282の折曲部に備えられる支持台から第1−2放射アーム284の折曲部に備えられる支持台まで延びる形態で置かれる。同じく、第2ストリップライン372は、第2−1放射アーム382の折曲部に備えられる支持台から第2−2放射アーム384の折曲部に備えられる支持台まで延びる形態で置かれる。
【0013】
前記
図5に示されるような構造を有するダイポールタイプの二重偏波アンテナについては、本出願人により先出願された韓国特許出願番号第2011−9834号(名称:『移動通信基地局用二重偏波アンテナおよびこれを用いた多重帯域アンテナシステム』、出願日:2000年9月28日)、または「Radio Frequency Systems」の米国特許第6,747,606号(名称:『SINGLE OR DUAL POLARIZED MOLDED DIPOLE ANTENNA HAVING INTEGRATED FEED STRUCTURE』、特許日:2004年6月8日)に開示されたものが挙げられる。
【0014】
上記のように、多重偏波放射素子を実現するために、放射性能および放射特性、形態およびサイズ、製造方式、設計の容易性などを考慮して、現在多様な研究が進められている。特に、ダイポール素子の放射アームを含めたバランおよび給電構造などに対する多様な構造が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の少なくとも一部の実施例では、より最適化された構造およびサイズの最適化、アンテナのより安定した放射特性およびアンテナ設計の容易性を有するようにするための多重偏波放射素子およびこれを備えたアンテナを提供する。
【0016】
特に、本発明の少なくとも一部の実施例では、放射素子の体積を最小化して、複数の放射素子が配置された場合、配置された放射素子間の影響を最小化することにより、アンテナの全体特性を改善できるようにするための多重偏波放射素子およびこれを備えたアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の一部の実施例では、多重偏波放射素子において、平面上四方対称に配置される、第1、第2、第3および第4放射アームと、前記第4放射アームおよび第1放射アームに共通に給電し、前記第2放射アームおよび第3放射アームに共通に接地する第1給電線路と、前記第1放射アームおよび第2放射アームに共通に給電し、前記第3放射アームおよび第4放射アームに共通に接地する第2給電線路とを含むことを特徴とする。
【0018】
前記第1〜第4放射アームそれぞれは、バラン構造を形成する支持台によって個別的に支持されるように構成され、前記第1〜第4放射アームを支持する支持台は、互いに予め設計された間隔で離隔するように設けられる。
【0019】
前記第1給電線路および前記第2給電線路はそれぞれ、第1ストリップラインおよび第2ストリップラインを給電導体部分として有するストリップライン伝送線路構造を用いて構成される。この時、前記第1ストリップラインは、前記第2放射アームの支持台と前記第3放射アームの支持台との間に置かれる形態で設けられ、前記第4放射アームの支持台と前記第1放射アームの支持台との間まで延びて、前記第4放射アームおよび前記第1放射アームに共通にキャパシタンスカップリング方式で給電信号を伝達するように構成される。また、前記第2ストリップラインは、前記第3放射アームの支持台と前記第4放射アームの支持台との間で置かれる形態で設けられ、前記第1放射アームの支持台と前記第2放射アームの支持台との間まで延びて、前記第1放射アームおよび第2放射アームに共通にキャパシタンスカップリング方式で給電信号を伝達するように構成される。
【0020】
前記第1〜第4放射素子の配置形態は、全体的に平面上V字状を示すことができる。
【0021】
本発明の他の一部の実施例では、多重偏波放射素子を備えたアンテナにおいて、反射板と、前記反射板上に設けられる第1帯域の少なくとも1つの第1放射素子と、前記反射板上に設けられる第2帯域または第3帯域の少なくとも1つの第2または第3放射素子とを含み;前記第1放射素子は、平面上四方対称に配置される、第1、第2、第3および第4放射アームと、前記第4放射アームおよび第1放射アームに共通に給電し、前記第2放射アームおよび前記第3放射アームに共通に接地する第1給電線路と、前記第1放射アームおよび前記第2放射アームに共通に給電し、前記第3放射アームおよび前記第4放射アームに共通に接地する第2給電線路とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、本発明の少なくとも一部の実施例による多重偏波放射素子は、より最適化された構造およびサイズの最適化をもたらすことができ、当該アンテナのより安定した放射特性およびアンテナ設計の容易性を有するようにすることができる。特に、本発明の少なくとも一部の実施例では、放射素子の体積を最小化して、複数の放射素子が配置された場合、配置された放射素子間の影響を最小化することにより、アンテナの全体特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】一般的なダイポールタイプの放射素子の構成図である。
【
図1B】一般的なダイポールタイプの放射素子の構成図である。
【
図1C】一般的なダイポールタイプの放射素子の構成図である。
【
図2】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第1例示構造図である。
【
図3】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第2例示構造図である。
【
図4A】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第3例示構造図である。
【
図4B】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第3例示構造図である。
【
図4C】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第3例示構造図である。
【
図4D】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第3例示構造図である。
【
図5】従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子の第4例示構造図である。
【
図6】本発明の第1実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図である。
【
図7A】本発明の第2実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図である。
【
図7B】本発明の第2実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図である。
【
図7C】本発明の第2実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図である。
【
図7D】本発明の第2実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図である。
【
図8】本発明の一部の実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子と従来の放射素子との比較図である。
【
図9】本発明の一部の実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子を備えた無線通信アンテナの主部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による好ましい実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。下記の説明では、具体的な構成素子などのような特定事項が示されているが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものに過ぎず、このような特定事項が本発明の範囲内で所定の変形やあるいは変更がなされ得ることは、この技術分野における通常の知識を有する者には自明というべきであろう。
【0025】
図6は、本発明の第1実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図であって、X偏波の二重偏波を発生する放射素子の本発明の特徴による基本モデルと見なされる構造が示される。
図6に示された本発明の第1実施例による二重偏波放射素子は、例えば、上下左右4方向に平面上四方対称に配置され、全体的にV字状を示す、第1、第2、第3および第4放射アーム621、622、623、624と、前記第4放射アーム624および第1放射アーム621に共通に給電し、前記第2放射アーム622および第3放射アーム623に共通に接地する第1給電線路と、前記第1放射アーム621および第2放射アーム622に共通に給電し、前記第3放射アーム623および第4放射アーム624に共通に接地する第2給電線路とを含んで構成される。前記第1給電線路および第2給電線路はそれぞれ、別途の信号源(signal source)として給電信号を受信するように構成される。また、前記各放射アーム621〜624の長さは使用周波数波長の1/4λ(λ:波長)に設定され、同一軸(垂直軸または水平軸)上にある2つの放射アームの総長さは1/2λで構成される。
【0026】
図6の例において、第1および第2給電線路は、基本的な同軸線路構造を用いてバラン構造を形成する。これによって、第1給電線路の内部導体412は、第4および第1放射アーム624、621と共通に連結され、第1給電線路の外部導体414は、第2および第3放射アーム622、623と共通に連結される。また、第2給電線路の内部導体512は、第1および第2放射アーム621、622と共通に連結され、第2給電線路の外部導体514は、第3および第4放射アーム623、624と共通に連結される。
【0027】
図6に示されるように、従来のダイポールタイプの二重偏波放射素子は、基本的に、1つのダイポール素子ごとにそれぞれ別途に給電線路が提供される構造であるが、本発明の実施例では、例えば、第1給電線路の給電導体部分が、4つの放射アームのうち隣接したいずれか2つの放射アームに共通に連結され、残りの2つの放射アームには第1給電線路の接地部分が共通に連結される構造であることが分かる。また、第2給電線路の給電導体部分は、第1給電線路の給電導体部分が共通に連結される2つの放射アームのうちいずれか選択された放射アームおよび前記選択された放射アームと隣接した放射アーム(第1給電線路の給電導体部分が共通に連結されていない放射アーム)と共通に連結される。さらに、第2給電線路の接地部分は、当該第2給電線路の給電導体部分が共通に連結された2つの放射アームを除いた残りの2つの放射アームと共通に連結される。
【0028】
図6の矢印は、第1〜第4放射アーム621〜624による電流フローの一例を示しているが、第2給電線路512、514によって第1および第2放射アーム621、622に共通に給電して、第1および第2放射アーム621、622に沿って電流iA1、iA2経路が形成される。第1および第2放射アーム621、622に沿って形成された電流iA1、iA2経路のベクトル和に沿った方向に、例えば、垂直軸対比+45方向の偏波を形成するための電流iA1+iA2経路が発生する。同じく、第1給電線路412、414によって第4および第1放射アーム624、621に共通に給電して、第4および第1放射アーム624、621に沿って電流iB1、iB2経路が形成される。第4および第1放射アーム624、621に沿って形成された電流iB1、iB2経路のベクトル和に沿った方向に、例えば、垂直軸対比−45方向の偏波を形成するための電流iB1+iB2経路が発生する。
【0029】
このような構造により、結果的に、第2給電線路と、第1、第2放射アーム621、622の組み合わせおよび第3、第4放射アーム623、624の組み合わせによって、「X」偏波のうち、垂直軸対比+45度偏波が発生し、第1給電線路と、第4、第1放射アーム624、621の組み合わせおよび第2、第3放射アーム622、623の組み合わせによって、「X」偏波のうち、垂直軸対比−45度偏波が発生する。
【0030】
図7A、
図7B、
図7Cおよび
図7Dは、本発明の第2実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子の構造図であって、
図7Aには平面図、
図7Bは上側から眺めた斜視図、
図7Cは下側から眺めた斜視図、
図7Dは
図7A〜
図7C中のストリップラインに対する別途の斜視図を示す。
図7A〜
図7Dに示された、本発明の第2実施例による二重偏波放射素子は、
図6に示された実施例と類似に、例えば、全体的にV字状を示す、第1、第2、第3および第4放射アーム641、642、643、644と、前記第4放射アーム644および第1放射アーム641に共通に給電し、前記第2放射アーム642および第3放射アーム643に共通に接地する第1給電線路と、前記第1放射アーム641および第2放射アーム642に共通に給電し、前記第3放射アーム643および第4放射アーム644に共通に接地する第2給電線路とを含んで構成される。
【0031】
この時、
図7A〜
図7Dに示された第1および第2給電線路は、前記
図6に示されるような同軸線路を用いる構造ではなく、ストリップライン伝送線路構造を用いて構成される。すなわち、
図7A〜
図7Dに示された構造では、給電線路の給電導体部分は、第1および第2ストリップライン432、532から構成される。第1〜第4放射アーム641〜644それぞれは、バラン構造を形成する支持台によって個別的に支持されるように構成され、第1〜第4放射アーム641〜644を支持する支持台は、互いに予め適切に設計された間隔で離隔するように設けられる。
【0032】
前記第1ストリップライン432は、第2放射アーム642の支持台と第3放射アーム643の支持台との間で両支持台と相互同一の間隔で離隔する形態で置かれるように設けられ、前記第4放射アーム644の支持台と第1放射アーム641の支持台との間まで延びて、第4放射アーム644および第1放射アーム641に共通にキャパシタンスカップリング方式で給電信号を伝達するように構成される。同じく、第2ストリップライン532は、第3放射アーム643の支持台と第4放射アーム644の支持台との間で両支持台と相互同一の間隔で離隔する形態で置かれるように設けられ、前記第1放射アーム641の支持台と第2放射アーム642の支持台との間まで延びて、第1放射アーム641および第2放射アーム642に共通にキャパシタンスカップリング方式で給電信号を伝達するように構成される。この時、
図7Dにより明確に示されるように、第1および第2ストリップライン432、532間の交差部位は、相互連結されないように、エアブリッジ形態で相互一定間隔を置くように設けられる。この時、第1および第2ストリップライン432、532を放射アームの支持台の間に正確な離隔間隔を維持しながら設置を容易にするために、通常適切な形態の絶縁材質のスペーサ(spacer)(図示せず)などが追加的に設けられる。
【0033】
前記
図7A〜
図7Dに示された構造において、各放射アーム
641〜644を支持する支持台の直立する長さは使用周波数波長の1/4λに設定される。
図7A〜
図7Dにて、各放射アーム
641〜644を支持する支持台は下端の相互連結される形態で構成された例が示されているが、これは、当該放射アーム641〜644間の相互整列および当該放射アームから構成される放射素子の設置を容易にするためのものであって、他の例においては、各放射アーム
641〜644が個別的に(例えば、アンテナの反射板上に)設けられることも可能である。
【0034】
図8は、本発明の一部の実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子と従来の放射素子との比較図であって、例えば、本発明の構造と最も類似していると見られる、前記
図5に示されるような従来の一例示構造(平面構造)と、前記
図7A〜
図7Dに示されるような本発明の第2実施例による構造(平面構造)とを重ねて示した。
図8に示された従来の一例示構造と、本発明の一例示構造は、隣接した位置に異なる帯域の放射素子が設けられる多重帯域(multi−band)アンテナを設計する場合に、互いに異なる帯域の放射素子間の相互信号干渉を低減し、全体的なアンテナサイズを最適化するのに有利な構造と見なされる。
【0035】
図8に示されるように、第1−1放射アーム282−1、282−2および第1−2放射アーム284−1、284−2と、第2−1放射アーム382−1、382−2および第2−2放射アーム384−1、384−2とから構成される従来の実施例による構造は、例えば、800MHz帯域を処理するように設計する場合に、その中心部導体の直径が、例えば、54mmに設計されなければならないのに対し、本発明の実施例による構造は、その中心部導体の直径が、例えば、26mmに設計されるとよい。これは、従来の実施例では、実質的に独立した2つの放射アームの間にそれぞれ独立に給電線路が備えられなければならないので、例えば、2つのストリップラインに対応して広い接地領域を確保しなければならない。したがって、従来の実施例では、給電構造のボディが大きくならざるを得ない。
【0036】
また、
図8に示されるように、従来の一実施例による構造は、実質的に放射アームに相当する構造が8つから構成されるとも見なされるが、本発明の実施例では、全体的に+字状に配置される4つの放射アームのみを用いてX偏波を発生することが分かる。これによって、本発明の実施例による構造は、従来の構造と比較して、放射アームに相当する構造の個数が半分に減少し、各放射アームに相当する構造が設けられるのに要求される面積を減少させることができる。
【0037】
これは、最近需要が急増している多重帯域アンテナ構造において、本発明の実施例による構造が非常に有利であることが分かる。多重帯域アンテナでは、1つのアンテナに複数の周波数帯域を処理し、各帯域ごとに多数の放射素子を含んでいるため、アンテナの限られた大きさによって放射素子間の距離も十分に確保することが容易でない。特に、互いに異なる帯域の隣接した放射素子間の影響によって電気的な特性(VSWR、Isolationなど)だけでなく、アンテナの放射パターンにも大きな影響を及ぼし得る。
【0038】
図9は、本発明の一部の実施例によるダイポールタイプの二重偏波放射素子を備えたマルチバンド無線通信アンテナの主部構造図であって、例えば、
図7A〜
図7Dに示すような、本発明の第2実施例による構造の第1放射素子60を第1帯域(例えば、800MHz帯域)の放射素子として反射板1上に設けられることが示されている。また、第2帯域(例えば、2GHz帯域)または第3帯域(例えば、2.5GHz帯域)の第2または第3放射素子70−1、70−2、70−3、70−4が第1放射素子60の左右側の上下側の位置に設けられる。すなわち、全体アンテナシステムの配置構造を四角状とする場合に、四角状の各角部分に第2または第3放射素子70−1、70−2、70−3、70−4が設けられ、真ん中部分に第1放射素子60が設けられる構造である。
【0039】
この時、第1放射素子60の放射アームと第2または第3放射素子70−1、70−2、70−3、70−4との間隔dは、
図8に示された従来の例に比べて、放射素子間の信号干渉を低減しながらも十分な間隔を確保したり減少させることができ、これによって、全体的にアンテナの特性を向上させることができる。また、当該アンテナの反射板1の幅wも、従来の例に比べて、より減少させることができ、これによって、全体的なアンテナサイズおよび構造がより最適化可能である。
【0040】
一方、上記において、第2または第3放射素子70−1、70−2、70−3、70−4も、前記
図6〜
図7Dに示された本発明の実施例による放射素子構造を有し得ることはもちろんである。また、前記第2または第3放射素子70−1、70−2、70−3、70−4は、その他にも、従来の多様な方式のダイポールタイプの放射素子構造を採用することができ、全体的な外形形態も、四角や、「c 」字状、または菱形状などの多様な形態を有してもよい。
【0041】
上記のように、本発明の一実施例による多重偏波放射素子およびこれを備えたアンテナの構成および動作が行われ、一方、上記の本発明の説明では具体的な実施例に関して説明したが、様々な変形が本発明の範囲を逸脱することなく実施可能である。
【0042】
例えば、上記の説明では、本発明の放射素子を構成する放射アームが、例えば、一字状の棒構造であると説明したが、本発明の他の実施例において、放射アームは、その他にも、四角(菱形)形のような多角形または円形のリング状を有することができ、または四角形の板状などでも実現可能である。
【0043】
また、前記
図7A〜
図7Dに示された本発明の第2実施例では、第1および第2給電線路がストリップライン構造を用いて構成されると説明したが、第1および第2給電線路は、その他にも、その断面形態が円状、四角状などの多様な形態での導体線路形態で実現してもよい。
【0044】
このように、本発明の多様な変形および変更があり得、したがって、本発明の範囲は、説明された実施例によって定めるものではなく、請求の範囲と請求の範囲の均等なものによって定められなければならない。