【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、炎症および/または炎症性疾患の予防および/または治療における使用のための、式(I)の化合物、または式(I)の化合物の任意の塩である。
【化1】
(I)
(式中、R1は、水素、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル−または2−メチルプロパ−2−イルを表し、R2は、水素、ヒドロキシルまたはメトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ−もしくは2−メチルプロパ−2−オキシを表し、Aは、−NH−または−CH
2−であり、
式中、Aが−NH−である場合、残基R3、R4、R5のうちの少なくとも1つはヒドロキシルであり、残基R3、R4、R5のうちの他の2つは、互いに独立に、ヒドロキシまたは水素からなる群から選択され、
式中、Aが−CH
2−である場合、残基R3、R4、R5のうちの少なくとも2つはヒドロキシルであり、残基R3、R4、R5のうちの他の1つは、ヒドロキシルまたは水素である)
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)および/もしくは式(Ib)の化合物、またはその塩である。
【化2】
(式中、R1は、水素、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル−または2−メチルプロパ−2−イルを表し、R2は、水素、ヒドロキシルまたはメトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ−もしくは2−メチルプロパ−2−オキシを表し、式(Ia)中のR3は、水素またはヒドロキシルであり、式(Ib)中のR4は、水素またはヒドロキシルである)
【0011】
本発明のより好ましい実施形態では、式(Ia)の化合物は、式(Ia’)もしくは式(Ia’’)の化合物、または(Ia’)と(Ia’’)との混合物から選択される。
【化3】
(式中、R3は、水素またはヒドロキシルである)
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(Ib)の化合物は、好ましくは、式(Ib’)の化合物またはその塩である。
【化4】
(Ib’)
(式中、R4は、水素またはヒドロキシルである)
【0013】
式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の好ましい化合物は、
2,4−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン−2−オン(化合物1)
【化5】
2,4−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−メトキシフェニル)−プロパン−2−オン(化合物2)
【化6】
2,4−ジヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−プロパン−2−オン(化合物3)
【化7】
2,4,6−トリヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン−2−オン(化合物4)
【0014】
【化8】
2,4,6−トリヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−プロパン−2−オン(化合物5)
【化9】
2,4,6−トリヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−プロパン−2−オン(化合物6)
【化10】
4−ヒドロキシ安息香酸N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)アミド(化合物7)
【0015】
【化11】
2,4−ジヒドロキシ安息香酸N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)アミド(化合物8)
【化12】
からなる群から選択される。
驚くことに、記載した化合物、これらの塩および混合物は、優れた抗炎症特性を示すことが観察された。
【0016】
一般に、本発明は、抗炎症性活性物質としての、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の上述した化合物、それらの塩または混合物に関する。好ましい実施形態では、本発明は、抗炎症性活性物質として、上述した化合物1〜8、それらの塩または混合物に関する。
【0017】
上にさらに述べられた、本発明に従って使用可能な、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の塩では、残基の好ましい意味という点でそれぞれ当てはまる。1つまたは複数のヒドロキシがまた、脱プロトン化で存在してもよい。本明細書では、式(I)の脱プロトン化された化合物と並んで、対応する量の対カチオンが存在し、ここで、これらは、好ましくは、第1の主基および遷移基の一重に正に電荷したカチオン、アンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウムイオン、第2の主基および遷移基の二重に正に電荷したカチオン、ならびに第3の主基および遷移基の三重に正に電荷したカチオン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の最大の脱プロトン化度は、そこへ隣接して存在するこの化合物のカルボキシル基およびヒドロキシ基から見出され、例えば塩はその最大の脱プロトン化度に基づく。次に、脱プロトン化された基の数から、対カチオンの対応する数が得られる(それらの電荷に応じて)。そのため、例えば、1つのカルボキシル基と1つのヒドロキシ基(例えば塩が基づく)とを有する式(I)の化合物では、基の完全な脱プロトン化で、2つの負に電荷したアニオンが存在し、次に、そこから正電荷の数が見出され(ここでは2つ)、これは対カチオンにより付与されているに違いないことが見出される。特に好ましくは、これらの対カチオンは、Na+、K+、NH4+、Ca2+、Mg2+、Al3+およびZn2+からなる群から選択されるカチオンである。
【0018】
式(I)の化合物誘導体は、香味化合物として既知である:化合物1、2、4および5は、異味を引き起こす食品の組成成分に対するマスキング活性を呈する香味化合物としてEP1,972,203に記載されており、化合物6もまた、この文献から既知であり、甘味物質として、とりわけ、J. Agric. Food Chem. 1977, 25(4), 763-772に記載されており、化合物3は、カロリー低減配合物において甘味を増強させることが、EP2,353,403において特許請求されており、化合物7および8は、苦味マスキング香味化合物として、EP1,784,088に記載された。
本明細書に記載の、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物、具体的には化合物(1)〜(8)は、有利には、特に強力な抗炎症作用を有する。式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物、具体的には(1)〜(8)は、有利には、(人間のおよび動物の)生理系における炎症プロセスに対する天然防御機構をサポートするのに好適である。
【0019】
好ましくは、本発明の意味における調製物は、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および/または(Ib’)の化合物のうちの1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種を含み、より好ましく有利には、調製物は、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および/または(Ib’)の化合物、具体的には化合物(1)〜(8)の少なくとも2種を含む。最も好ましいのは、化合物(1)〜(8)の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種またはすべてが調製物中に存在している調製物である。
したがって、本発明の重要な一態様は、炎症および/または炎症性疾患の予防および/または治療における使用のための、上で定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物、それらの塩または混合物である。
【0020】
本発明の別の重要な態様は、
a)TNF−α、ならびに/または
b)インターロイキン、好ましくはIL−1、IL−6および/もしくはIL−8、ならびに/または
c)プロスタグランジン、好ましくはPGE2の、ならびに/または
d)インターフェロン−γおよび/もしくはNF−κB
の放出に関連する疾患の予防および/または治療における使用のための、上で定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物、それらの塩または混合物である。
【0021】
本明細書により好ましいのはまた、
a)TNF−α、ならびに/または
b)インターロイキン、好ましくはIL−1、IL−6および/もしくはIL−8、ならびに/または
c)プロスタグランジン、好ましくはPGE2の、ならびに/または
d)インターフェロン−γおよび/もしくはNF−κB
の放出に関連する疾患の予防および/または治療における使用のための、上で定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物、それらの塩または混合物の化粧用の使用である。
【0022】
本発明の別の態様は、上で定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の少なくとも1種の化合物、または式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の薬学的にまたは化粧学的に許容される塩、またはこれらの化合物もしくはそれらの塩のうちの2種以上を含有する混合物を含有する、炎症の予防および/または治療における使用のための医薬調製物または化粧用調製物である。
本発明のさらなる目的は、上で定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の少なくとも1種の化合物、または式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の薬学的にまたは化粧学的に許容される塩、またはこれらの化合物もしくはそれらの塩のうちの2種以上を含有する混合物を含有する、
a)TNF−α、ならびに/または
b)インターロイキン、好ましくはIL−1、IL−6および/もしくはIL−8、ならびに/または
c)プロスタグランジン、好ましくはPGE2、ならびに/または
d)インターフェロン−γおよび/もしくはNF−κB
の放出に関連する疾患の予防および/または治療における使用のための、医薬調製物または化粧用調製物である。
【0023】
本発明に従って使用されることになる、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物、ならびに特定の化合物(1)〜(8)、またはそれらの塩が、強力な抗炎症効果を媒介するまたは有することができることが、特に驚くべきことであった。本明細書に記載の、本発明による化合物、塩、混合物および調製物は、有利には、単球における炎症パラメータに正の影響を及ぼすことが可能である。特に歯肉および消化管の、粘膜が刺激されて炎症の現象がシミュレートされている細胞モデルにおいて、それらは抗炎症作用を呈する。具体的には、PGE2、IL−1、TNF、IL−6およびIL−8、特定するとPGE2の炎症パラメータが、本発明によって正の影響が及ぼされる。これについての適切な実験が、TS1(以下の「実施例TS:試験研究」を参照されたい)に記載の通り実施された。そのため、例えば0.2μg/lの濃度により、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)による物質、ならびに特定の化合物(1)〜(8)が、上述したパラメータのうちのいくつかにおいて、非常に重要な作用を既に呈している。20μg/l以上の濃度が、特に好適である。
【0024】
したがって、特に好ましいのは、上に定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の少なくとも1種の化合物、または式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の薬学的にまたは化粧学的に許容される塩、またはこれらの化合物もしくはそれらの塩のうちの2種以上を含有する混合物と、薬学的にまたは化粧学的に許容される担体、溶媒、アジュバントまたは希釈剤とを含む、医薬調製物または化粧用調製物である。
【0025】
本発明のさらなる一態様は、上に定義した、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の少なくとも1種の化合物、または式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の薬学的にまたは化粧学的に許容される塩、またはこれらの化合物もしくはそれらの塩のうちの2種以上を含有する混合物と、薬学的にまたは化粧学的に許容される担体、溶媒、アジュバントまたは希釈剤とを含む、口腔の炎症性状態の、治療、抑制または低減における使用のための口腔用組成物である。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態によれば、(化粧用のまたは医薬の)調製物における、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物とそれらの塩との総量の割合は、調製物の総量に照らした、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)のすべての化合物の総量に基づいて、0.1ppm〜120ppmの範囲内、好ましくは、0.1ppm〜60ppmの範囲内、特に好ましくは0.1ppm〜30ppmの範囲内にある。
【0027】
好ましくは、炎症および/または炎症性疾患の予防および/または治療のための医薬調製物または化粧用調製物の製造のための、式(I)、それぞれ式(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ia’’)および(Ib’)の化合物の使用は、より好ましくは、
a)TNF−α、ならびに/または
b)インターロイキン、好ましくはIL−1、IL−6および/もしくはIL−8、ならびに/または
c)プロスタグランジン、好ましくはPGE2、ならびに/または
d)インターフェロン−γおよび/もしくはNF−κB
の放出を低減させるためのものである。
有利には、本発明の化合物が、前記要素a)〜d)の放出の低減において優れた性質を有し、そのため炎症および/または炎症性疾患の予防および/または治療に寄与することが示された。
【0028】
好ましい一実施形態では、式(I)の化合物の使用は、
a)損傷したまたは損傷していない皮膚、特に口腔粘膜を強化する、
b)皮膚の、特に口腔粘膜の機能を再生するまたは安定化させる、
c)組織の損傷、特に腸における組織の損傷を低減する、
d)腸における正常な細胞組成を再生する
ための医薬調製物または化粧用調製物の製造のためのものである。
有利なことに、本発明の化合物が、調製物中で特性a)〜d)を有して、そのため炎症および/または炎症性疾患の予防および/または治療に寄与することが示された。
好ましいのは、炎症または炎症性疾患の予防または治療のための本発明の使用であり、ここで、前記炎症性疾患は、好ましくは慢性炎症性疾患、具体的には皮膚または口腔の炎症性疾患、好ましくは口腔の炎症性疾患によるものである。