【文献】
堀之内 成明,空力騒音シミュレータの開発,R&D Review of Toyota CRDL,2001年12月,Vol.36,No.4,41〜46頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のノイズ源のうちの少なくともいくつかを結合して1又は2以上のノイズ源のクラスタにするステップをさらに含み、前記ノイズ源は、少なくとも部分的に、前記ノイズ源のそれぞれの前記寄与に基づいてクラスタ化される、請求項1に記載のシステム。
前記1又は2以上のノイズ源の各々の強度を閾値と比較するステップと、前記閾値未満の強度を有する少なくとも1つのノイズ源を除外するステップと、をさらに含む、請求項7に記載のシステム。
前記1又は2以上のノイズ源のうちの前記複数を結合して前記1又は2以上のクラスタにするステップにより、前記システムの処理性能を向上する、請求項4に記載のシステム。
物理空間を表す体積内で流体の活動をシミュレートするコンピュータに実装された方法であって、前記体積内の前記流体の前記活動は、前記体積内の要素の移動をモデル化するためにシミュレートされ、前記方法は、
前記流体流れシミュレーションの第1の時点で生じる、前記流体流れによってモデル化された過渡的な乱流の中で第1の組の渦を特定するステップと、
前記流体流れシミュレーションの次の第2の時点で生じる、前記過渡的な乱流中に第2の組の渦を特定するステップと、
前記第1の組の離散渦と前記第2の組の離散渦とを比較することによって、前記渦の変化を追跡するステップと、
前記追跡に基づいて1又は2以上のノイズ源を特定するステップと、
前記体積内の所定の位置であるレシーバ位置においてノイズがもたらされる際の、前記1又は2以上のノイズ源の前記レシーバの位置において生じる寄与を決定するステップと、
ディスプレイデバイスに表示され、前記レシーバ位置でのノイズ源の分布を示すデータを出力するステップと、
を含む方法。
前記1又は2以上のノイズ源のうちの少なくともいくつかを結合して1又は2以上のクラスタにするステップをさらに含み、前記ノイズ源は、少なくとも部分的に、前記1又は2以上のノイズ源の前記寄与に基づいてクラスタ化される、請求項14に記載のコンピュータに実装された方法。
前記1又は2以上のノイズ源の寄与の各々の強度を閾値と比較するステップと、前記閾値未満の強度を有する少なくとも1つのノイズ源を除外するステップと、をさらに含む、請求項17に記載のコンピュータに実装された方法。
前記1又は2以上のノイズ源の各々の強度を閾値と比較するステップと、前記閾値未満の強度を有する少なくとも1つのノイズ源を除外するステップと、をさらに含む、請求項18に記載のコンピュータに実装された方法。
前記1又は2以上のノイズ源のうちの前記複数を結合して前記1又は2以上のクラスタにするステップにより、前記コンピュータに実装された方法の処理性能を向上する、請求項18に記載のコンピュータに実装された方法。
設計変更のために、前記特定された領域に基づいて1又は2以上の物理的対象物に物理的な修正をもたらすステップをさらに含む、請求項14に記載のコンピュータに実装された方法。
流れ誘起ノイズ源特定用のコンピュータの読み取り可能な非一時的記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品であって、当該コンピュータプログラム製品はシステムに、
物理空間を表す体積内で流体の活動をシミュレートすることであって、前記体積内の前記流体の前記活動は、前記体積内の要素の移動をモデル化するためにシミュレートされることと、
前記流体流れシミュレーションの第1の時点生じる、前記流体流れによってモデル化された過渡的な乱流の中で第1の組の渦を特定することと、
前記流体流れシミュレーションの次の第2の時点で生じる、前記過渡的な乱流中に第2の組の渦を特定することと、
前記第1の組の離散渦と前記第2の組の離散渦とを比較することによって、前記渦の変化を追跡することと、
前記追跡に基づいて複数のノイズ源を特定することと、
前記体積内の所定の位置であるレシーバ位置においてノイズがもたらされる際の、レシーバ位置に置いて生じる複数のノイズ源の寄与を決定することと、
ディスプレイデバイスに表示され、前記レシーバ位置でのノイズ源の分布を示すデータを出力することと、
を実行させる命令を含む、ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
前記複数のノイズ源のうちの少なくともいくつかを結合して1又は2以上のノイズ源のクラスタにする命令をさらに含み、前記ノイズ源は、少なくとも部分的に、前記ノイズ源のそれぞれの前記寄与に基づいてクラスタ化される、請求項27にコンピュータプログラム製品。
前記1又は2以上のノイズ源の寄与の各々の強度を、前記クラスタに含まれるものに対する閾値と比較する命令をさらに含む、請求項30にコンピュータプログラム製品。
前記1又は2以上のノイズ源の各々を閾値と比較し、前記閾値未満の強度を有する少なくとも1つのノイズ源を除外する命令をさらに含み、請求項31にコンピュータプログラム製品。
前記複数のノイズ源のうちの少なくともいくつかを結合して1又は2以上のノイズ源のクラスタにすることをさらに含み、前記ノイズ源は、少なくとも部分的に、前記ノイズ源のそれぞれの前記寄与に基づいてクラスタ化される、請求項35に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書は流れ誘起ノイズ特定法(FINSIM)を記載する。流れにおけるコヒーレント渦構造は、流れ誘起ノイズ生成機構と密接に関連しており、関連する渦の時間的並びに空間的発展を特徴付けることによって、ノイズを発生させる原因となる物理的発生源を特定できると考えられる。より詳細には、本明細書は、遠距離場にノイズを放射する可能性のある渦及び渦系を特定して追跡するための方法及びシステムを記載する。熱に関係する構成の場合、FINSIMは、温度場(又はいずれかの関連する受動的又は能動的スカラ場)の空間及び時間変動を解析してエントロピ源の音響放射を推定するために用いることもできる。
【0013】
本明細書に記載するシステム及び方法は、渦運動(例えば、共回転渦系−CRV)及び渦伸長によって生じるノイズを特定する。例えば、システムは、
1.離散CRV系として各関連する渦対を特定して、等価な四重極様のノイズ源及び対応する音響放射とを決定し(例えば、過渡的な流れ場を用いて、CRVの運動を追跡し、Powellの理論に従って放射場を再構成する)、
2.流れの中で検出された各渦の伸長速度及び対応する双極子状の音響放射と、及び/又は
3.エントロピ源及び対応する単極子様の音響放射と、を特定する。
【0014】
渦の流れ場全体の運動を解析することによって、完全な遠距離場ノイズを推定することができ、物理的ノイズ源の特性を解析することができる。
【0015】
受け手に対する各ノイズ生成渦の寄与は、伝達関数を用いることによって決定することができる。しかし別の方法では、各ノイズ渦を解析して、ノイズ生成渦によって発生したノイズのどれだけが受け手(例えば、デバイスの人間操作者及び/又は搭乗者が意図する態様(例えば、車を運転する又は乗る)でデバイスを利用する間の、操作者及び/又は搭乗者の耳など)によって聞こえるかを決定することができる。
【0016】
ノイズ渦をクラスタ化してグループにすることができる。クラスタは、ノイズの発生源、又はノイズを低減するために修正すべき設計領域を特定するのに役立つ場合がある。同時に、システムは、設計空間内に位置する個人が聞こえるノイズのレベルに基づいてノイズ渦又はクラスタを調整することができる。
【0017】
概要
図1Aは、流れ誘起ノイズ特定のためのフローチャートを示す。このシステムは、例えばナビエストークス及び格子ボルツマンに基づく数値流体力学ソルバからの流体流れシミュレーションから過渡的な流れデータを受け取る。このようなシミュレーションデータは、渦を特定するために使用される時間及び空間に依存した体積情報を提供する。
【0018】
この方法は、流れシミュレーションにおける複数の時間ステップで、渦と、位置、長さ、半径、及び循環などの渦特性とを特定するために流れデータを解析するステップ(10)を含む。以下でより詳細に説明するように、システムは、各時間フレームに対して、複数の渦を特定し、各渦は本明細書で渦の中心線と呼ぶ1組の連結点によって表現される。各渦の中心線及び渦の位置は、様々な技法を用いて生成することができる。例えば、3次元シミュレーションでは、λ
2判定基準(例えば、対称テンソル(Ω
2+S
2)の第2固有値λ
2(λ
1≧λ
2≧λ
3)が渦核内部のあらゆる点で負である領域として渦領域を特定するために用いられる判定基準)を使用して、渦を含む可能性のあるシミュレート系内の領域を特定することができる。渦を集合的に含む可能性があると認定された領域は、手動で与えられた又は本方法により自動的に決定された閾値を下回るλ
2値を有する領域を含んだ等値面として表現することができる。従って、特定された等値面は、シミュレーション空間内に複数の領域を含み、閾値条件を満たす渦の全てを含むことになる。等値面のさらなる計算を完了して、個別的な渦に関連する等値面の自己完結部分を特定することができる。例えば、フラッディングアルゴリズムは、ボクセルの非接触群を(各群が1つの渦/接触渦の1グループに対応するように)分離することができ、続いてアルゴリズムがボクセルの大きな群を小さな群に分割して、各群が単一の渦を代表するようにすることができる(細分化プロセスは2回以上繰り返すことができる)。一部の例では、閾値数未満のボクセルを含む、又は閾値数未満の最大循環を有するボクセルの群を除去することができる(例えば、無視できる渦を考慮から除外するために)。一旦このような自己完結型の等値面が特定されると、アルゴリズムを用いて、特定された渦の各々に対して中心線を三角測量する、又は別の方法で決定することができる。以下でより詳細に記載するように、渦度及び/又はQ判定基準など、他の量を用いて渦を特定することができる。
【0019】
系内の渦の組が流体流れシミュレーションで少なくとも2つの時間フレームについて特定されると、本方法は、特定された渦を2つの異なる時間ステップで比較することによる、渦を空間的に追跡するステップ(12)を含む。より詳細には、アルゴリズムは(可能であれば)中心線表現に基づいて、第1の時間ステップにおける各渦を第2の時間ステップにおける関係した渦と結び付ける。さらに、アルゴリズムは、第2の時間フレームにおける特定の渦が、以前に特定された渦のエンティティ化、新しい渦、複数の新しい渦への渦の分裂、或いは新しい単一渦における複数の渦の合体であるかどうかを決定する。各渦の運動を追跡することによって、サイズ、速度、強度、伸長、移動方向に関する情報、並びに各渦に関する動的な情報が生み出される。
【0020】
追跡情報を用いて、システムは、ノイズ生成渦の候補となりそうな単純な又は複雑な渦系を特定する(14)。より詳細には、高い伸長速度を備えた共回転系又は共回転渦は、他の渦よりもノイズを生成する可能性が高い。このように、追跡情報に基づいて、これらの特性を満たす渦又は渦系(例えば、共回転渦、並びに長くなったり短くなったり捻れたりすることによって伸長を受ける渦)は、サイズ、速度及び移動方向の情報に基づいて特定することができる。
【0021】
渦及び渦系が特定された後、システムは渦によって生成されたノイズをモデル化する(16)。ノイズのモデル化には、各ノイズ源に対する、並びに個々のノイズ源全てから構成される系全体に対する、周波数、振幅、位置、指向性、及び放射パワーの再構成が含まれる。共回転渦の場合、Powellの理論の一般化から導出される渦音の理論に基づいて、以前の情報全てが再構築される。この理論は、渦の動力学(例えば、回転速度、成長速度、及び/又は相対運動)とノイズ生成を関連付ける。伸長渦の場合、Powellの理論から導出される双極子様のノイズモデル化と結合された追跡アルゴリズムは、伸長ノイズ寄与へのアクセスを可能にする。この寄与は、渦構造の形状、長さ、強度、循環、及び変形速度の進展に関係する。
【0022】
システムはまた、決定されたノイズ情報に対して後処理操作を実行して、情報の有用な特徴を抽出し、システムの操作者に表示する(18)。例えば、データの後処理を用いて、ノイズ生成構造の密度マップを生成することができる。例えば、複数の異なる時間フレームからのノイズデータを総計して、共回転渦及び伸長渦によって生成されたノイズに基づく、ノイズ生成構造の周波数を示す密度マップを生成することができる。別の例では、後処理を用いて、ノイズ生成構造の多い箇所を特定することができる。別の例では、複数の異なる時間フレームからのノイズデータを総計して、共回転渦及び伸長渦によって生成されたノイズに基づく、時間平均放射音響パワーマップを生成することができる。別の例では、後処理を用いて、ノイズ生成構造の密度及び計数を調べる方向によってノイズ生成構造をフィルタ処理することができるが、これは特定の方向に指向したノイズに対してだけである。別の例では、データは、特定の周波数のノイズだけがユーザに表示されるように、周波数に基づいて後処理することができる。別の例では、ノイズ源に関する情報を流れデータと結び付けて、ノイズの発生の原因となる周囲の幾何形状領域(段差、隙間、及び/又は鋭い縁など)を特定し位置付けることができる。
【0023】
Powellの渦音理論の概要
上記のように、系で発生する音を決定する1つの方法は、Powellの渦音理論の適用に基づくことができる。自由流れでは、流れ誘起音は渦の運動によって発生すると考えられる。固体表面が存在しないので運動量の変化はないが、これは、渦度の変化が流れのどこかで生じると、それと反対の変化が他所で生じることを意味する。各渦は強度及び形の変化を経験し、どちらの場合も双極子様の放射を生成する。その場合、渦運動による遠距離場音響密度変動に対する以下の一般式を導き出すことができる。
【数1】
(1a)
y
jは積分ベクトル
の
への射影、
は観測者位置ベクトル、
は渦度ベクトル、
及び
は速度ベクトルである。
は流体の体積要素、ρ
∞は平均密度、及びcは音速である。渦中心線要素に関する積分体積Vの離散化を用いて、遠距離場密度変動に対する新しい式が式1aから導出される。
【数2】
(1b)
kは、1つの固有な離散化渦中心線の1つの部分要素を表す。ここで、
図2Aに示すように同じ循環Γ(それぞれ、矢印34及び36によって表される)を有する2yだけ離れた2つの共回転渦30、32の系を考察する。このような系は、角速度Ω
s=Γ/(4πy
2)で軸線O(38)周りの渦の回転を誘起し、ここでΓ及びyは定数である。この角速度を式1bで使用すると、密度変動はここで次式で与えられる。
【数3】
(2)
ここでΔlは渦中心線要素の長さである。Δl≪λと仮定すると、音波の時間遅延が無視され、ここでλは音波長である。式2で使用される単位ベクトルは、例えば、共回転渦(CRV)系の概略図を提供する
図2Aに記載されている。結果として、このCRV系に対応する放射音響パワーは次のとおりである。
【数4】
(3)
【0024】
Powellの理論は粘性効果(後述)を無視しており、結果としてCRVの永久運動が生じる。等価な音響系は、軸周りを回転する4つの定圧極から成る回転する四重極である。
【0025】
音は流れの中の渦の強度の変化によっても発生する。例えば、エルオス音は渦輪の伸縮によって生成され、放射されるノイズは双極子放射と等価である。しかしながら、このような強度の変化は流れの中で孤立して生じるのではなく、逆の伸縮が時間を遅延して見出される可能性が高く、分離(shedding)につながる。従って、振動する四重極様のノイズ源が見出されるはずである。Powellはまた、双極子様放射に関して理論を発展させた。変動する速度に関して対応する式は次のとおりである。
【数5】
(4)
ここで、
はLambベクトルであり、
である。渦伸長において、音響放射は、その軸に垂直な方向の渦要素の加速が局所的に変動する双極子様の流れ(Lambベクトルの時間微分の空間積分によって得られる)を引き起こすために生じる。
【0026】
Powellの理論の拡張
Powellの理論では、渦は、その循環と自転軸を中心とする位置とによって表現される。渦のサイズと循環の両方での変動を考慮に入れるために、回転速度に関して次のScully渦モデルを使用する。
【数6】
(5)
【0027】
2つの渦の強度の違いはこの回転系に影響を与える。
図2Bに定義されたパラメータに従って、異なる循環を有する2つの渦(例えば、
図2Bの渦50、52)を考察すると、系の角速度は次のとおりである。
【数7】
(6)
【0028】
回転中心の位置は次の式で与えられる。
【数8】
(7,8)
【0029】
式1bから始めて系の幾何学的パラメータ(
図2B)を用いると、密度変動及び音響パワーは次のようになる。
【数9】
(9)
【数10】
(10)
ここで、R、θ、及びZは、CRV系の基準座標系における
の円柱座標である。
【0030】
これは、渦の形状がコヒーレントである(すなわち、点モデルによってよく近似される)ことを仮定する。循環比率が特定の閾値を超えると、より複雑な粘性効果が生じ、低循環渦のサイズの変化によってノイズの発生をもたらす。
図2Aは、共回転渦(CRV)系の例示的な概略図を示し、
図2Bは、異なる強度の循環を有する共回転渦の例示的な概略図を示す。
【0031】
粘性効果を考慮に入れると、より複雑な機構が関与して、CRV渦対は最終的に合体する。合体過程は4つの段階から成る:
・第1拡散段階
・対流段階
・第2拡散段階
・最終拡散段階
【0032】
第1拡散段階は、その回転と流体の粘性とに起因する各渦の拡散に対応し、平方根則r
c(t)=r
c(0)+c√v(t−t
0)に従って、それらの核半径の増加をもたらす。この段階では、Powellの四重極の類推をうまく適用することができる。対流段階は、b
0=2y
0を2つの渦間の初期距離として、r
c critical=0.290b
0などの臨界値に達すると始まる。b
0の前の係数は正確な設定条件に依存する。層流渦の場合の対流段階の持続時間t
cは、実験から知られている:t
c=8.1*(b
02/Γ
0)。渦間の距離はこの段階では減少し、拡散は僅かに役割を果たすだけである。またこの段階の間に回転速度は増加して、非対称の渦度場を生成し、渦糸を生み出す。第2拡散段階は、渦が合体する(b=0)のに必要な期間に対応し、最終拡散段階は、結果として生じる単一の合体後渦の拡散である。4つの段階を
図3に示し、これは、本明細書に記載するCRV系のLBMシミュレーションから得られる。
図3は、(a)第1拡散ステップ、(b)対流ステップ、(c)第2拡散ステップ、(d)最終拡散ステップにおける、LBM・CRVシミュレーションから得られた瞬間的な渦度場Ω[s^(−1)]を示す。
【0033】
ノイズ源の特定
本明細書に記載する流れ誘起ノイズ特定法(FINSIM)の手法は、実際の産業事例の任意に複雑化された流れにおいて音発生に関与する渦構造を特定し追跡する。対象となる渦構造は、共回転渦(CRV)対、及び伸長(例えば、不均一な速度で)を受ける渦である。CRVノイズ源の場合、FINSIMは関連する各渦対を個別のCRV系として特定し、等価な四重極様ノイズ源と、対応する音響放射とを決定する。渦の流れ場全体の運動を詳しく調べることによって、完全な4重極ベースの遠距離場ノイズを推定することができ、物理的ノイズ源の特性を解析することができる。提案する追跡スキームは、ノイズ発生に関する最も重要な機構であるとされる、CRV運動の第1拡散段階と対流段階の初めとにおいて有効である。
【0034】
図1Bを参照すると、流れ誘起ノイズ特定法(FINSIM)の手法の流れ図が示されている。ハイレベルでは、FINSIM手法は、ノイズ特性132を生み出すために、渦検出102、渦追跡114、及びノイズのモデル化128/130を含む。
【0035】
FINSIM手法の渦検出102の部分は、渦の特定に使用される。渦の特定は、瞬間圧力、渦度、Q判定基準、λ
2判定基準、又は過渡的な乱流内で離散渦を特定することのできる他の方法に基づくことができる。2次元では、渦度に基づいて渦を抽出することができる。3次元の場合は、λ
2基準を用いる方がおそらく適している。
【0036】
より詳細には、
図1Cに示すように、渦検出プロセス102は流れシミュレータから測定ファイル100を受け取る(150)。測定ファイルは、最低でも圧力及び速度ベクトルを含む、系における各ボクセル内(又は特定された領域のボクセルの部分集合内)の粒子の流れに関する情報を含む。測定ファイルは、流れデータの1又は2以上のフレーム(例えば、シミュレーションにおける別々の時間ステップ)を含む。流れデータに基づいて、システムは各フレームの各ボクセルに対してλ
2及び渦度ベクトルを計算する(152)。これらの値を用いて、渦を位置付けることができる。例えば、λ
2が小さい値の場合は、渦の中心線に接近している可能性が高い。次に、λ
2及び渦度ベクトルを用いてボクセルの渦群(例えば、等値面)を生成し、各群は1つの渦/接触渦の1グループに対応する(154)。ボクセルの群を生成するために、システムは、λ
2及び渦度ベクトルに関する値を所定の閾値と比較して、所定の範囲内の値を備えたλ
2及び渦度ベクトルを有するボクセルの部分集合を選択する。ボクセルの初期群は重なり合う渦を含む場合があるので、システムは、接触渦の各グループを単一の渦に分離するために渦群を純化する(156)。小さな渦(例えば、閾値サイズ未満の渦)を除去するために、システムはサイズに基づいて群をフィルタ処理する(158)。ボクセルの残りの群については、システムはボクセルの各群に対して中心線を生成する(160)。中心線情報には、位置106と長さ及び半径108など、様々な渦特性104が含まれる。
【0037】
FINSIM手法の渦追跡部分114は、各渦の変位を特定する。この部分では、離散時間ti及びti+1における全渦のパラメータ(位置、半径、循環など)が計算され、追跡アルゴリズムがtiとti+1間の各渦の変位を特定する。より詳細には、追跡アルゴリズムは、シミュレーションの現フレームから中心線データ110を受け取り、シミュレーションの前フレームから中心線データ112を受け取る。これら2組の中心線データに基づいて、追跡アルゴリズムは渦の動力学的情報116を生成する。これには、軌跡情報118、対流速度120、及び渦の伸長/変形に関する情報122が含まれる。渦の動力学的情報116に基づいて、追跡アルゴリズムは、共回転渦対に関係する追跡データ124と、伸長を受けている渦に関係する伸長データ130とを出力することができる。共回転渦対を特定するステップは、例えば、渦系の運動を解析するステップを含むことができる。各CRV系の特定は、各渦の位置及び変位の計算と、それらの最近接渦の決定とに基づく。その場合、渦とその近傍渦は離散CRV系と見なされる。CRV系候補の数は、渦間距離が距離閾値を超える系を捨てることによって減少する。CRV系の自己回転情報は、その動力学から抽出され、モデル化に使用される。
【0038】
伸長渦を特定するステップは、例えば、個々の構造の長さ又は循環(構造特定手順から分かる情報)の成長速度を計算するステップを含むことができる。渦の長さ又は強度の変化から、伸長渦が検出される。
【0039】
FINSIM手法のノイズモデル化部分(複数可)128、130は、特定された渦によって生成されるノイズを導出する。より詳細には、各CRVに関して、その動力学に基づいて、結果として生成されるノイズは、拡張Powell理論に従って導出される。渦伸長によるノイズ生成もまた導出される。ノイズのモデル化は、系に関する1組のノイズ特性(例えば、系内の各ノイズ生成渦に関するノイズ特性の概要又は編集物)を生じる。ノイズ特性には、系内の渦に関する周波数134、位置136、指向性138、及び放射パワー140を含めることができる。ノイズ特性を特定して、シミュレートされた系内の位置と関係付けることができる。例えば、系内の各ボクセルに関するノイズ特性を決定することができる。周波数情報134は重要であり、それは、或る周波数の音は外乱を引き起こす可能性がより高いが、別の周波数は人間の耳によって知覚可能なスペクトルの外にある場合があるからである。位置情報136は、ノイズを発生する系内の箇所を特定するのに役立つことができる。この情報を用いて、シミュレートされている対象物の物理的設計においてノイズを生成する構造に遡ることができる。ノイズ誘起渦の原因となる設計内の物理的位置は、例えば逆問題を実行することによって決定することができる。流れ内のノイズ源の位置が分かると、例えば平均流れの流線、渦の軌跡又は逆の粒子追跡アルゴリズムを用いて、音の原因となる渦が元々発生した箇所を特定することが可能である。位置情報は、グラフ上にノイズ生成渦が特定されたボクセルを備えたグラフとして表示することができる。渦に対する指向性情報138もまた、重要とすることができる。例えば、自動車のサイドミラーからノイズが発生しているが、そのノイズが窓の方ではなく自動車から離れる方向に向いている場合、自動車内の個人の快適性に対するノイズの影響を低減できるので、ノイズはそれほど問題ではない。最後に、ノイズ140の放射パワー又は振幅140は、ノイズのレベルが閾値を下回る場合には、特定レベルのノイズに対する許容範囲によって系に対する変更が不要となる場合があるので、重要である。
【0040】
図1Bには示されていないが、ノイズデータの後処理は、理解可能で有用な情報をユーザに提供する上で有益な場合がある。例えば、予測される流れ及び放射されるノイズに関して生成された結果に基づいて、有用な指標、表示、及び情報をユーザに提示することができる。これらには、渦の位置と対流速度に関する情報と統計、特徴的な渦寿命、渦伸長挙動、瞬時放射周波数、ノイズ源の位置と強度、周波数依存の強度マップなどを含めることができる。
【0041】
一例では、後処理を用いて渦位置及び対流速度のグラフを生成することができる。このマップは、各ボクセルに対する対流速度の色付け又は別の方法で視覚的指標を与えることによって、対流速度の表示を提供する。渦が存在しない位置も同様に、渦の欠如(例えば、関係する対流速度がない、又は対流速度が閾値を下回るため)を示すために色付けされることになる。一部の例では、渦位置及び対流速度のマップは単一の時点について表示されるが、別の例では複数の時間フレームの時間発展が与えられる。
【0042】
別の例では、後処理を用いて、中心線位置の視覚的表現を与えることによって渦位置のグラフを生成することができる。例えば、中心線は、ボクセル内の適切な視覚的指標によって系の表現上に表示することができる。中心線は複数のボクセルに跨ることになるので、ボクセルの中心線は各ボクセルに適切な指標を与えることによって表示される。さらに、中心線によって放射されるノイズの強度又は振幅を視覚的に表示することができる。例えば、中心線が適切な位置(複数可)で線によって表現される場合、その線の幅又は色付けにより、渦によって生成された音の振幅に関する情報を提供することができる。このような情報は、シミュレーションの単一の時間ステップに対して、又は複数の時間ステップに亘る時間ベースの発展として表示することができる。
【0043】
別の例では、後処理を用いて、系内で発生した音の周波数グラフを生成することができる。例えば、ノイズ源密度(例えば、系内の渦の数)対.渦によって生じる音の周波数のグラフを生成することができる。別の例では、放射音響パワー(例えば、様々な渦系によって生成される時間平均音響パワー)VS.渦によって生じる音の周波数のグラフを生成することができる。一部の例では、複数の異なる設計がシミュレートされ、生成される音響周波数の比較を提供することができる(例えば、双方の設計に関する情報を含むグラフ)。
【0044】
別の例では、後処理を用いて渦位置及び強度のグラフを生成することができる。このマップは、各ボクセルに対する対流速度の色付け又は別の方法で視覚的指標を与えることによって、渦強度の表示を提供する。渦が存在しない位置も同様に、渦の欠如(例えば、渦強度が閾値を下回るため)を示すために色付けされることになる。
【0045】
別の例では、後処理を用いて特徴的な渦寿命のグラフを生成することができる。例えば、総移動距離に応じた渦の分布グラフを生成することができる。乱流は多くの設計で問題となる可能性があり、機械的疲労や対象物の間接的な相互作用を回避するために、コヒーレント構造の寿命を短くする必要がある。渦の移動距離を最小限にすることによって適切な設計を選択することができる。
【0046】
別の例では、後処理を用いて渦伸長挙動のグラフを生成することができる。例えば、シミュレートされた対象物の特定方向に沿った渦の伸長速度のプロットを生成することができる。一部の設計では、流れ中の乱流、すなわち渦は、強度又はサイズが可能な限り早く減衰しなければならず、効率的な設計は、伸長速度分布を見ることによって決定することができる。
【0047】
別の例では、後処理を用いて瞬時放射周波数のグラフを生成することができる。例えば、周波数ごとに色分けされたノイズ源の空間マップを生成し、時間アニメーションとして提示することができる。一部の設計では、流れ中に発生するノイズが、遠距離場プローブのSPLグラフのピークに対応する、許可されていないレベルに達する場合がある。周波数ごとに色分けされたノイズ源のマップは、この特定の音の原因となる流れの領域を特定するのに役立ち、ノイズ源の動きの時間アニメーションを通じて、このようなレベルの原因となるノイズ誘起渦の寿命に関する洞察を提供することになる。
【0048】
別の例では、後処理を用いて周波数依存の強度マップを生成することができる。例えば、グラフを生成して、各ボクセルに対する対流速度の色付け又は別の方法で視覚的指標を与えることによって、渦強度の表示を提供することができる。このグラフの情報をフィルタ処理して、ユーザが選択した周波数範囲を表示することができる。例えば、ユーザは、人間の耳によって検出可能な周波数だけ、又は個人の快適性をより攪乱すると知覚される可能性のある高い周波数だけを表示したいと望む場合がある。関連するボクセルベースのグラフでの周波数によるフィルタ処理により、ユーザは、対象の周波数範囲内で最大量のノイズを発生している系内の位置に注意を集中させることができる。
【0049】
別の例では、後処理を用いて、対象の周波数範囲に亘ってパワーのグラフを生成することができる。例えば、規定された領域内の全ノイズ源の、シミュレーション時間中の平均パワーのSPLグラフを生成することができる。対象物によっては、流れ誘起ノイズが空間内のいくつかの位置から生じることがある。遠距離場では、どんな量の音響パワーがどの領域に由来するのかを正確に示すことは困難な場合があり、この情報を計算することは、ノイズ低減のために修正を必要とする対象物の部品を優先させることによって、より良い設計プロセスに役立つ。
【0050】
別の例では、後処理を用いて特定領域に対するパワーの指向性を生成することができる。例えば、特定の対象領域を中心とした球面に亘る時間平均音響パワーの分布を生成することができる。各設計を比較する場合、放射されるパワーの総量だけでなく、その指向性も重要である。方向によって、放射される音響パワーは着目対象である、すなわちノイズの低減が必要とされる方向、或いは無視できる、すなわちノイズが重要ではない方向の場合がある。
【0051】
別の例では、後処理を用いて、空間内の様々な点で音響信号の再構成をもたらすことができる。例えば、あらゆる表面上の圧力音響場を視覚化する又は使用して、伝導される音響パワーの量を定量化することができる。流れ領域では、音圧場は流体力学的圧力場の変動内に隠される場合があるので、直接的には得られない。フィルタ処理は難しく、数値的ノイズが混入する可能性がある。ノイズ源のモデル化を用いると、流れ領域内のあらゆる関心点における音圧場の再構成と共に音響フィルタ処理を実行することができる。
【0052】
別の例では、後処理を用いてノイズ源起点の表面マップを生成することができる。例えば、対象物の表面は、着目対象の位置から始まった流れ誘起ノイズ源の数によって局所的に色分けすることができる。一部の設計では、ノイズ発生の原因となる表面の特定領域は、修正の前に強調表示される必要がある。強調表示された表面部分を修正することにより、ノイズ源の強度を下げ、設計を改善することができる。
【0053】
格子ボルツマン法(LBM)
本明細書で記載のように、様々な種類の流れシミュレーションを用いて、渦を特定し追跡するために使用される流れ情報を生成することができる。このような流れシミュレーションの1つは、格子ボルツマン法に基づく。CFD/CAAコードを用いて、非定常流の物理を計算する。そのコードは格子ボルツマン法(LBM)に基づく。格子ベースの方法は、伝統的な数値流体力学(CFD)に代わる数値的解法として提案された。巨視的な連続方程式を離散化することに基づく従来の方法とは異なり、LBMは巨視的な流体力学を予測するために「メゾスコピック」運動論的方程式、すなわちボルツマン方程式から開始する。格子ボルツマン方程式は以下の通りである。
【数11】
(11)
ここで、f
iは、離散速度ベクトルの有限集合{c
i:i=0,..b}に従ってi番目の方向に移動する粒子分布関数であり、c
iΔt及びΔtは、それぞれ空間及び時間の増分である。便宜上、以下の説明では慣用式Δt=1を選択する。式(11)の右辺の衝突項に関して、最も単純で最も一般的な具体化は、次のBhatnagar−Gross−Krook(BGK)形式である。
【数12】
(12)
【0054】
ここでτは緩和時間パラメータであり、f
ieqは局所平衡分布関数であって、Maxwell−Boltzmann形式に従う。流体密度ρや速度uなどの基本的な流体力学量は、モーメント和によって得られる。
【数13】
(13,14)
【0055】
低周波数及び長波長の極限では、離散速度ベクトルの集合を適切に選択した場合には、Chapman−Enskog展開によって示されるように、過渡的な圧縮性Navier−Stokes方程式が取り戻される。結果として得られる状態方程式は理想気体の法則に従い、流体の動粘度νは緩和時間パラメータτ及び温度Tに関係する。
【数14】
(15)
【0056】
式(11−15)の組合せにより、流体力学に対する通常のLBMスキームが形成される。それは、ボクセルと呼ばれる立方体の体積要素から成るグリッド上で解かれ、可変分解能(VR)方式が許容されて、隣接する分解能領域に対してグリッドサイズが2倍に変化する。
【0057】
共回転渦(CRV)
A.数値設定
LBM直接数値シミュレーション(DNS)を用いてCRV系をシミュレートし、2つの初期渦は、核半径r
c=8×10
-4mと、v
max=0.3m/sである循環Γ=4πr
cv
maxとを備えるScullyのモデルを用いる初期条件として規定する。渦間の初期距離はb
0=1.6×10
-4mであり、v
max及びr
cに基づくレイノルズ数はRe=159である。シミュレーション領域は2048r
c平方60である(
図4)。シミュレーション領域60は、境界での音響反射を回避するために、粘度及び分解能が増大するいくつかの流体層に帰着するスポンジゾーン62によって囲まれる。スポンジゾーン外縁の境界条件は、無反射条件の圧力出口境界条件であり、特徴的な圧力はp
0=101325Paである。最小ボクセルサイズは、Δx=r
c/30である。CRV放射の先験的推定波長はλ=1000r
cなので、シミュレーション領域及び測定領域は、放射音場を表現するのに足りるだけ大きい。合体過程が終了するまで、すなわち、300,000時間ステップに対応するT=13.3×10−3sの間、シミュレーションが実行される。
【0058】
B.CRVシミュレーション結果及び解析
図3は、共回転渦(CRV)系に関する合体過程の概略図を示す。
図3には瞬間的な渦度場が表されており、CRVの4つの段階が取り出されている。運動学的解析から予測される角速度はω
0=208.3Hzである。シミュレーションの短い初期過渡期間(t=0.3ms)の後に得られた収束値はω
0-sim=208±3Hzであり、理論値と非常によく一致する。シミュレーションの渦核半径は時間の関数として、膨張係数α=2.3の二乗則依存性を示す。Cerrelli及びWilliamsonによると、その値はLam Oseen渦に対してα=2.24であるが、実験的にはα=1.9が見出されており、これらは予測値と比較してもあまり劣っていない。
【0059】
2つの渦の完全な時間発展を解析して、望まれる四重極モデル化、詳細には四重極ノイズ源の時間に依存した特性評価を可能にした。
図5A〜5Dは、Re=159の共回転渦に対する渦度等値線(s
-1)及びdB空間マップを示し、a)及びb)はt=0.91msで計算され、c)及びd)はt=6.38msで計算されている。
図5B及び5Dには、流体平面dBマップ(すなわち、変動する圧力レベルごとに色分けされたボクセル/領域を備えた画像)が、渦度場によって放射されるノイズの瞬時周波数を強調表示して示され、
図5A及び5Cにはノイズの強度がプロットされている。この表示は、指向性表記のない物理的なノイズ源を示す。2つの渦が益々近づき加速するにつれて、放射周波数は時間と共に増加するのが観察される。合体過程により系が崩壊するまで、音響パワーも増加する。
【0060】
再構成された放射音場全体を
図6に示す。LBMシミュレーション(グレイスケール)で直接得られた音場とFINSIMで計算された圧力波の極値(線72、74によって表示される)との比較は満足の行く一致を示し、ノイズモデ化ステップに関するアルゴリズムの検証をもたらす。これは2次元の例に過ぎないが、この(CRV追跡による音発生の予測の)概念が正しく機能することを示している。より詳細には、
図6において、白黒は、LBMから予測される、200Hz〜1500Hzにおける範囲[−0.5Pa,0.5Pa]でのフィルタ処理された音圧場を示し、線72、74は、FINSIMで計算された最小及び最大の圧力波値に対応する。
【0061】
2次元剪断層流
A.剪断層流
以前の研究では、剪断層の主構造によって発生するノイズは四重極性を有し、孤立CRV系と非常によく似た渦ペアリング機構に関係することが示されている。ここでは、重要なノイズ源動力学と結果として生じる音場とが知られている比較的簡単な事例でFINSIMを実証するために、2次元強制剪断層がその第1高調波周波数f
0=40kHzでシミュレートされる。
【0062】
剪断層(SL)問題は、3つのパラメータ、厚さδ
w(0)、最大速度U
1及び最小速度U
2で特徴付けられる。入口速度プロファイルは次式で与えられる。
【数15】
(16)
ここで、θ=δ
w(0)である。強制剪断層の場合、θ=δ
w(0)(1+0.8sin(2πf
0t))のように、正弦波強制成分がθに付加される。対応するレイノルズ数は、δ
w(0)=4.34×10
-5mの場合にRe=250である。
【0063】
シミュレーション領域は、y方向に9600δw(0)を超え、xに沿って6800δw(0)に亘って広がる。スポンジゾーンを再び用いて、無響条件を与える。2次元DNSシミュレーションは、80サイクル、すなわち80の1次ペリングに対して実行される。
図7に示すように、強制SLの場合には流れは周期的であり、検出方法は、SLで発生した2つの連続する渦の1つのペアリング期間中の4つの瞬間に適時適用される。時間に依存する流れの結果はFINSTMで処理されて四重極ノイズ源を取り出し、ペアリング機構に明示的に関係付けることができる(
図7)。ペアリング周波数に対応する主放射周波数もまた取り出され、時間及び空間への依存性を示す。より詳細には、
図7は、強制剪断層流の1つのペアリング期間内の4つの時点に対応する流れ及び音場を示す。上から下へ、t=0s;t=0.146s;t=0.151s;t=0.161sである。左側のグラフはs−1での渦度の等値線を示し、真ん中のグラフはノイズ源の瞬間的な空間dBマップを示し、右側のグラフは再構成された音場を示し、線72は圧力波最小値、線74は圧力波最大値である。
【0064】
3次元噴流
A.数値設定
噴流は、航空宇宙から重機まで、数多くの用途において重要なノイズ源である。ノイズ発生の機構(乱流発生及び渦対渦相互作用)は多くの研究者によって広範に解析されてきたが、幾何学的設計の詳細がノイズ発生の方法及び位置に与える影響は、明確には理解されていない。従って、噴流はノイズ源の特定に説得力のある例を提示する。
【0065】
円形噴流のシミュレーションはCMS000構成で行われる(例えば
図11参照)。3次元への拡張を含むFINSIMの開発及び検証を支援するために、大規模な3次元の過渡的な流れデータセットが生成される。特性長は、ノズル直径に対応するD=50.8mmである。
【0066】
噴流のマッハ数はM=0.35、レイノルズ数はRe=410,000である。分解能はΔx=1mmで、物理時間t=0.1sのシミュレーションが実行される。前の2次元の場合と同様に、領域境界からの擬似反射を回避するために、ノズル及び噴流を囲むスポンジゾーンスキームが使用される。
【0067】
B.流れとノイズの結果
図8A及び8Bは、それぞれ、噴流軸に沿う平均流れ方向速度成分と、ノズル出口の3mm上流における流れ方向速度プロファイルを示す。
図8A及び
図8Bでは、平均流れ方向速度成分が、噴流軸と出口の3mm上流におけるノズルプロファイルの両方に沿って、実験と比較されている。予測結果は実験とよく一致している。特に、ノズル内側の境界層は正確に予測され、噴流の膨張は、ポテンシャルコア長さと共によく再現されている。渦度場の瞬間的なスナップショットを
図9に表すが、剪断層内に存在してポテンシャルコアの端部で噴流の乱流混合によって誘起される構造を含めて、噴流中に多数の渦の存在を示している(
図9は、様々な位置及び平面における瞬間的な渦度場を示す)。
【0068】
音響放射が同じ過渡シミュレーションで表現されており、瞬間的な圧力変動を示すスナップショットが
図10Aにプロットされ、
図10Bはx整列平面における瞬間的な圧力変動を示す。この図には主要なノイズ源が見えており、ポテンシャルコアの端部から生じている。ノズル出口から100Dに位置するマイクロフォンで測定された全音量レベルの指向性が
図10Bに示され、
図10BはOASPL指向性プロットである。ノイズレベル及び指向性依存はよく予測されており、特に観測角度の増加と共に増加するノイズレベルが得られている。
【0069】
C.FINSIMの結果
以前に提示されたノイズ源特定方法は、3次元過渡入力に適合され、3次元噴流シミュレーションのノイズ源を解析するために使用される。初めに、シミュレーション測定ファイルが渦検出方法に入力され、これにより渦核中心線、並びに半径、位置、長さなどの各渦に関する幾何学的情報が返される。渦の中心線及び半径(すなわち、λ2等値面の平均半径)から、渦構造は、
図11に可視化されるように単純化された形で再構成される(例えば、再構成された中心線を示す)。渦が生成されるポテンシャルコアに近い剪断層に高密度の渦が観察される。渦はその後、合体と散逸のために渦密度を減少させながら下流側に対流で移動する。渦再構成プロセス(これは各渦の「骨格」バーションを生成する)の精度を評価するために、初期等値面の包絡面から渦の再構成メッシュまでの平均距離に基づいて誤差が計算される。次いでこの平均距離は、個々の骨格の等価半径によって正規化される。
図12はこの計算結果を示しており、各渦は誤差の大きさに対応する半径を備えた球として表現されている。この誤差計量の数値は全体として1.0未満に留まり、最大で3.0のピーク値が観察されるが、この誤差レベルは、再構成プロセスとして許容可能な精度を示すと考えられる。ピーク値は実際には、このプロセスの第1ステップでは個別に捉えられない複雑に絡み合った構造に対応する。単一の等値面が同時に複数の混合渦を表す場合、FINSIMはそれを1つのものとして扱い、単一の管を複雑な渦系に当てはめようとする。
【0070】
渦管情報が全てのフレームに対して得られ、流れ中の乱流に関する統計を行うことが可能となる。
図13は、(x,y)平面に射影された渦の分布を示す。
図13では、各フレームからの各渦位置が、噴流軸を中心とする100セル×100セルのグリッド上に直交射影され、3次元の全幅を表している。投影が個々のグリッドセルの内側に入る渦の割合は、そのセルの色で表現される。結果として得られる渦の分布は、予想される軸対称性と共に、剪断層内の渦の、ポテンシャルコアの境界における高い集中を示す。各渦の長さも再構成プロセスで計算されて、x軸に沿う渦長さの分布が
図14に示され、これは、渦長さを0〜0.04mに及ぶ100個の値に、並びに流れ方向位置を0〜15Dに及ぶ100個の値に分割することによって構築される。
図14に提示された分布は、x=3Dの前には乱流が僅かに存在し、長さが0.006m未満の渦が存在しないことを示す。渦の密度は、3D(ポテンシャルコアの端部)と10Dの間で最も高い。渦の長さは、下流に対流で移動するにつれて増加する。
【0071】
渦追跡ステップの後、渦の幾何学的特性の時間変動が計算される。例えば、
図15のスナップショット画像に示すように、渦の対流速度が計算される。
図15には、30〜130m/sの対流速度ごとに色分けされた再構成中心線が示される。ここで、対流速度は対流剪断層の外層ではほとんどゼロであり、ポテンシャルコア境界の近くで最大値に達することが分かる。流れ方向に沿った対流速度の分布も計算される。
図16は、x軸に沿う平均対流速度の例示的なグラフを示す。
図16は、対流速度が初期に増加した後、約0.3mで始まるポテンシャルコアの端部から下流側へ移動するにつれて徐々に減少することを示す。対流速度の場合、99%信頼区間は平均値と比べて相対的に小さく、約5%である。渦の伸長も、フレーム間の渦中心線の長さ変化に基づいて計算される。個々の渦の伸張のスナップショットを
図17に示し(例えば、0から10000%/sまで伸長ごとに色分けされた再構成中心線)、噴流軸に沿った伸長の分布を
図18に示す。伸長の分布はフレームあたり3.5%というピーク値を示し、そこでは、剪断層がポテンシャルコアの外部境界に渦を生成し始める。その後、伸長はフレームあたり約0.7%で一定である。これは、渦が噴流内を下流に移動するにつれて渦の長さが増加し続けることを示し、これはほとんど渦核散逸の3次元効果に起因している。
【0072】
最後に、渦系の検出方法は、共回転状態の渦対に関する情報を提供する。各時間フレームにおいて、CRVによって放出される音の周波数がその回転速度から計算される。ノイズ源分布に対応する周波数依存のCRV空間分布を詳しく調べるために、その周波数が所定の200Hz帯域内にあるCRVの数が、0〜5kHzの周波数帯域に関して流れ内のどこにおいても計算される。この数は、グリッドセルの単位体積で正規化される。得られたスカラはノイズ源密度である。結果は
図19A〜Dに提示され、200〜400Hz(a)、800〜1000Hz(b)、2000〜2200Hz(c)及び3000〜3200Hz(d)の周波数帯域に関するノイズ源の密度を示している。最大密度は、800〜1000Hzの帯域範囲に関するセル内で得られる。これは、x=0.2mで噴流軸から90°に位置するプローブにおける、1/3オクターブSPLに対するシミュレーション結果を示す
図20に示されるように、遠距離場SPLの最大値が観測される帯域に対応する。渦対の存在は低周波数(<200Hz)では0に近く、高周波数帯の渦対の数は800〜1000Hzの範囲よりもより少ない。全体として、CRVノイズ源はポテンシャルコアの近くに集中しており、そこでは縦渦(従って乱流)が剪断層に発生する。
【0073】
FINSIMの適用
流れ誘起ノイズ源を特定する本手法の能力を説明するために、ノイズ発生において差異が観察された2つの異なる事例に本手法を適用する。第1の事例は、2つの噴流ノズル設計、SMC000(前節で提示した円形ノズル)とSMC006(シェブロン型ノズル)の比較であり、それらの幾何学的形状を、それぞれ
図21A及び21Bに示す。第2の事例は、異なるレベルの放射音響を生成することが知られている、十分に詳述される量産車用の2つの異なるサイドミラー設計の比較である。
【0074】
A.噴射ノズルの形状比較:SMC000対SMC006
FINSIMを用いたSMC000のシミュレーション及び解析は、IV節に記載した。SMC006のシミュレーションは、ノズル形状の変更を除いて同じであった。FINSIMを両方の事例に適用し、結果として得られた渦の空間分布は、
図22A及び22Bに表示され、興味深い差異を示す。SMC006の渦分布(
図22A)は、シェブロン(chevron)がポテンシャルコアを崩壊させる傾向があるため、より局在化している。SMC000の事例(
図22B)では、渦は全て噴流に沿って、ポテンシャルコアの下流側に及びその周りに位置する。しかしながら、SMC006の事例では、渦は主にポテンシャルコアの端部に位置し、SMC000と比べて流れ方向に約半分の距離だけ延びる。ポテンシャルコアもSMC006の場合により幅広く、渦はSMC000と比べて半径方向にさらに遠くまで分布する。
【0075】
さらに下流では、渦の数によって示されるように、SMC006では乱流が急速に散逸する。渦分布の違いを考慮すると、SMC006のノイズ源位置はより局在化され、特定の周波数帯域ではおそらくより強烈であると予想される。
【0076】
図23は、
図21A及び21Bのノズル設計に対してシミュレートされたノイズ源分布を種々の帯域幅において示す。
図23では、ノイズ源の分布(CRV密度によって以前のように表される)がSMC000及びSMC006について表示されている。2つの設計を比較するために、各帯域幅における分布は、両方の事例を考慮して最大CRV密度値によって正規化されている。これらのプロットは、低周波数では、CRVノイズ源の量がSMC006設計の場合により多く、ノズルの出口近くに局在化していることを示している。ノズルのシェブロンが噴流内に浸入して乱流が発生し、ポテンシャルコアの長さが短くなり、観測されるノイズ源が作り出される。渦の分布と同様に、CRVノイズ源の量はSMC000設計では相対的に少なく、それらはプルームに沿ってより均等に分布する。1200Hzに至るまで、最大のノイズ源密度はSMC006設計にある。しかしながら、より高い周波数ではこの傾向は逆転し、SMCO00がより高いノイズ源濃度を有するが、それらは依然としてプルーム内に均一に分布しているのに対して、SMC006のノイズ源は、周波数の増加と共に数が減少するにもかかわらず一層局在化する。
図24では、ノイズ源の総数が周波数に対してプロットされ、これは、これら2つのノズル設計に対するノイズ源の周波数分布の差異を明確に示しており、SMC006のノイズ源は、SMC000と比較して低周波数に集中し、高周波数で減少する。
【0077】
今のところ、結果として得られた放射音響パワーの比較は、ノイズ源の強度及びパワーの計算を必要とするので提示しない。これまでのところ、渦の強度に関する描写が示されていないことに留意されたい。これまで、中心線の計算はそのような量を得るほどには正確ではなかった。中心線アルゴリズム及び回転検出の新規開発により、この問題が克服され、CRVノイズ源の強度を考慮に入れること、並びに放射音響パワーを予測することが可能となる。
【0078】
B.自動車サイドミラー設計の比較
ここで、本手法を用いて、詳細な実際の量産車に関する2つの異なるサイドミラー設計の風切り音源を比較する。調査した2つの幾何学的形状を
図25A(ミラー1)及び
図25B(ミラー2)に提示する。以前の実験及びシミュレーションによる調査は、ミラー1はサイドガラス上により高い乱流壁圧変動レベルを引き起こすが、ミラー2はサイドガラス上により高い音響レベルを生成すると結論付けた。この推測の根拠は部分的には、
図26に見られるよう0k法を用いて計算されたサイドガラス上の音響壁圧負荷に由来し、これは、100Hzを除く全ての周波数においてミラー2についてより高いレベルを示す。双方のミラー設計に対して、FINSIMをPowerFLOW結果に適用して、シミュレーション体積に亘るCRVノイズ源の総数を、シミュレートされた物理時間に亘る周波数の関数として
図27〜29に示す。各周波数で、ノイズ源の数はミラー1の方が多い。渦のサイズと強度、ひいてはCRV強度及びその結果として生じるCRV当たりの音響パワーが2つの事例で比較可能であるとすると、ノイズ源の総数は全体的音響パワーによく対応するので、ここでFINSIMによって予測される傾向により、ミラー2がより高い音響レベルを生じるという予想結果、並びにその結果が与えられる。
【0079】
ノイズ源の分布を噴流の例と同様に計算し、
図30に提示する。縮小表示の視点では、全体的なノイズ源の分布は2つの設計間で非常に類似するように見える。高周波数では、双方の設計でAピラー付近により多くのノイズ源が存在し、これは、Aピラー渦の公知の挙動とよく一致する。拡大表示の視点では、ミラー2に対する付加的なノイズ源の主な位置は、ミラーハウジングの後面の周囲付近にあるように見える。
図31及び32では、水平面上のサイドミラー近傍における速度の大きさは、ミラー1と比べてミラー2の下流側でより強い再循環を示す。ミラー2の先端の下流側領域は、高速度に対応して、ミラー1と比べてより長い距離に亘って延びる。流れはミラー1の方が早く剥離するので、結果として再循環が生じるミラーの先端では遅くなる。大きな運動エネルギは、ミラーの先端に騒音となるより強力な乱流構造を誘起するが、運動エネルギが小さいので結果として生じる音響エネルギもまた小さい。より強力な乱流剪断層は、より高密度の活発な渦対相互作用と互いに関係があり、より高密度のノイズ生成CRV系を、ひいては、ミラー2に関して
図26に観察されるようにより強いノイズ発生をもたらす。
【0080】
C.付加的な自動車サイドミラー設計の比較
次の事例は、2つの類似した設計間でノイズ生成の不一致を正確に示すFINSIMの機能を説明する。基準ミラーは実際の自動車形状に対応し、後縁延長(TEE)ミラーは、基準ミラーに段差を付加することによって基準ミラーから構築される(
図33A〜Bの灰色の体積)。ミラー形状は非常に似ているので、前縁の流れは形状の変更によって変化しないと予想される。実験は、自動車の車内ノイズのレベルがTEEミラーの方が高いことを示す。流れは窓上では変化しないので、その差は、おそらくミラー後流域に発生する流れの音響的寄与によるものである。ここで、ミラーの後域でFINSIM解析を実行する。CRVの総数の差が
図34に見られる。この差は、周波数の全範囲に亘って約25%(約2dB)で一定である。FINSIMは音響発生の差を検出した。この差は
図35A〜Bでも観察され、xに沿うノイズ源の分布は両周波数範囲において、TEE設計の場合に、特に前縁の下流側でより高い。
【0081】
結論として、TEE設計は基準形状に付加された段差により、より多くのノイズを発生させる。これは、ノイズ源の密度がTEE設計の場合にこの付加的な体積の近くで最も高いものとして
図36に示されている。しかしながら、ノイズ源の密度レベルは基準設計の方が低い。
【0082】
D.HVACダクト設計の比較
次の事例は、ノイズ源(別名CRV)の位置を正確に示すために、HVACユニットシステムへのFINSIMの適用を説明する。実際のダクト+ベント形状(
図37A〜B)並びにこの基準から導き出された新規設計が、FINSIMを用いて比較される。新規設計は、乱流領域の変動を低減するためにダクト形状を変更することによって得られる。SPLレベルの顕著な差が観察され、結果として車内ノイズが低減する。変更形態を
図38A〜B及び39A〜Bに示す。
【0083】
FINSIMは、
図40に示すようにノイズ源の位置及び量の違いをうまく表現する。CRVの総数は、全周波数において3から4倍で新規設計と異なる。新規設計は基準よりも静かである。さらに、
図41A〜B及び
図42A〜Bに示すCRV密度マップは、ノイズ低減における形状変更の有効性を説明する。FINSIMは基準に対するノイズ源の位置を正確に示しているが、将来の設計改善の優先順位付けのために重要度によってそれらをランク付けすることもできる。図示するベント近くの領域は、大部分がダクト内でより多数のCRVの原因となる領域である。
【0084】
渦及び共回転渦対の運動を追跡することによって、流れ誘起ノイズ源特定法(FINSIM)は渦の動力学と結果として生じる四重極様のノイズ放射とを明確に関連付ける。渦対の時間発展及び空間発展を解析することによって、これらノイズ源の位置、周波数、指向性及び強度が再現される。正準2次元孤立共回転渦(CRV)問題と強制2次元剪断層流事例のシミュレーション及び解析により、基本概念の実行可能性が検証される。ノイズ源は正しく位置付けられることが示され、その強度の時間発展は流れ誘起ノイズ生成の妥当な予測を提供する。剪断層流の結果はまた、平均流れによってノイズ源の対流を表現する能力を示す。最初に本方法の3次元流れへの拡張を乱流噴流の構成に適用する。3次元渦の検出及び追跡方法は、CRVの特定を可能にし、渦密度及びノイズ源の統計的分布(さしあたりCRV密度によって表現される)に関する妥当な結果を与えることが分かる。設計比較へのFINSIMの適用は、2つの異なるノズル形状に関する噴流と、2つの異なるサイドミラーを備えた自動車に関して実証される。双方の研究で、予想される全体的なノイズ源の傾向が正しく表現される。サイドミラーの比較では、FINSIMは主要な空力音響源の特定位置をうまく提示し、なぜ一方のミラーが他方よりも音響的に優れているかについてより明確な理解を可能にする。
【0085】
一部の実施態様では、クラスタリングプロセスを用いてノイズ源を識別し、グループ分けすることができる。前述のように、ノイズ源は、空間内の所与のx、y及びz座標と所与の音響「強度」とを備えた有限点の集合、或いは所与の位置(x,y,z)においてノイズ生成を表す連続変数/離散変数のいずれかとすることができる。空間のx、y、z領域が離散化され、関係する強度が変数(x,y,z)である場合、変数を有限点の集合に減すことができる。「強度」閾値があってもなくても、音響ノイズ源を表す有限点の集合を減すことができる。点の有限集合を仮定すれば、ノイズ生成領域は、高密度のノイズ源を有する領域として識別することができ、このような領域内の各ノイズ源に対して、所定の距離以内でこの領域の中に別の音源があることを意味する。このようにして、ノイズ生成クラスタを識別することができる。各クラスタ内のノイズ源に関する特性を組み合わせて(例えば、平均化、総和、及び/又は体積積分)、クラスタに関する総量を生成するができる。
【0086】
図43は、クラスタリングを説明するグラフ4300である。グラフ4300上の点は、異なる音響強度の音響パワー源を表す。各音響パワー源は、例えばデカルト座標系のx、y及びz座標によって表すことのできる空間位置を有する。音響パワー源をグループ分けして、クラスタ化ノイズ源4302及び4304を形成することができる。音響パワー源のグループ分けは、音響パワー源の強度及び密度分布に依存することができる。例えば、閾値強度を予め規定することができ、予め規定された閾値を超える強度を有する音響パワー源を1又は2以上のクラスタにグループ分けすることができる。所定の閾値強度を変えて、クラスタリングプロセスにおいて1又は2以上の音響パワー源を含める又は除外することができる。
【0087】
音響パワー源は、例えば多目的最適化に基づくアルゴリズムなど、様々なクラスタリング技法を用いてグループ分けすることができる。アルゴリズムは、所望の結果が達成されるまで最適化に関係するパラメータが修正される反復プロセスとすることができる。利用可能な一部のクラスタリング技法には、連結度ベースのクラスタリング、重心ベースのクラスタリング、分布ベースのクラスタリング、及び密度ベースのクラスタリングが含まれるが、これらに限定されない。一実施態様では、音響パワー源は、クラスタ化ノイズ源(例えば、4302、4304など)において音響パワー源の近接度を決定する閾値距離Lに基づいてグループ分けすることができる。閾値距離Lは、クラスタリングプロセスの前に予め規定することができ、及び/又は様々な音響ノイズ源の位置を比較することによって動的に計算することができる。基準音響ノイズ源を特定することができ、基準音響源から距離Lにある全てのノイズ源をクラスタ化ノイズ源に分類することができる。
【0088】
ノイズ源特定の技術を適用して、自動車のHVACシステムを通る空気の流れを決定し表現することができる。例えば、一旦空気流が決定されると、空気の乱流領域を特定することができる。空気の乱流に基づいて、音響パワー源の位置及び強度を特定することができる。
【0089】
図44は、HVACシステム4400で特定された音響ノイズ源のクラスタリングの一例を示す。ノイズ源は、他の同様に位置付けられたノイズ源と共にクラスタ化される。例えば、ノイズクラスタ4402は右下のブロワに位置する。ノイズクラスタ4408は、ノイズクラスタ4402の左後方に位置する。ノイズクラスタ4404は、ノイズクラスタ4402の左側に位置する。ノイズクラスタ4406は、ノイズクラスタ4404の左側に位置する。ノイズクラスタ4410は、ノイズクラスタ4406の左上方に位置する。クラスタリングプロセスは、空間的に互いに近接する高音響パワー測定値の体積セルを寄せ集め、結果として、強力なノイズ源が特に存在する空間の領域を特定する。このクラスタリングは、複数の個々の音響ノイズ源の処理を単一クラスタの処理に削減することによって、音響解析を簡易化し、シミュレーション及び解析を実行するコンピュータシステムの性能を向上させる。
【0090】
クラスタごとに放射される全体的音響パワーを評価することによって、積算レベル及び/又はスペクトル特性について、ランク付けを導入することができる。例えば、
図45はノイズクラスタのランク付けを示すチャート4500である。バー4502は、
図44のノイズクラスタ4402によって生成されたノイズに対応する。バー4504は、
図44のノイズクラスタ4404によって生成されたノイズに対応する。バー4506は、
図44のノイズクラスタ4406によって生成されたノイズに対応する。バー4508は、
図44のノイズクラスタ4408によって生成されたノイズに対応する。バー4510は、
図44のノイズクラスタ4410によって生成されたノイズに対応する。システムは、周囲ノイズの大部分に寄与する領域、例えばノイズクラスタ4402を強調表示することができる。
【0091】
一部の実施態様では、システムの動作条件に従って様々な異なる状況下でノイズを決定し、クラスタ化することができる。例えば、HVACからのノイズは、ブロワの高回転速度及びブロワの低回転速度の条件下で別々に決定することができる。双方の動作点からのクラスタは、一緒にそして別々に(逐次的に又は並行してのいずれかで)解析することができる。
【0092】
図46Aは、ノイズ源が特定されたがクラスタ化されていないHVACシステム4616を示す。一般的なHVACシステム4616が、理想的な車室内部4600と共にモデル化されている。現段階では、空洞の形状以外には車室の音響特性が考慮されていない。
図46Bは、ノイズ源が特定されて(例えば、クラスタ4604に)クラスタ化されたHVACシステム4616を示す。
【0093】
一部の実施態様では、全ての音響ノイズ源及びノイズクラスタが等しい影響力又は重要性を有する訳ではない。例えば、誰にも聞こえない、又は対象の聴取者に聞こえないノイズは、設計上の決定に対して関連性が低いとすることができる。騒音公害とは、人や動物の活動又はバランスに悪影響を与える可能性のある、邪魔になる又は過度のノイズである。不必要な騒音は精神的健康を損なう可能性がある。騒音は高血圧、高ストレス、耳鳴り、難聴、睡眠障害、及び他の有害な影響を引き起こす可能性がある。従って、静粛性又は騒音低減が高級感及び高品質に関連する望ましい品質であることは驚くべきことではない。品質の印として騒音低減を取り入れた産業の一例は自動車産業である。多くの高級車はその車室の相対的な静かさを宣伝する。
【0094】
前述のように、自動車の車室内のノイズは、例えば自動車のエンジン、道路上のタイヤの移動、暖房換気空調(HVAC)システムからの空気の流れなど、様々なノイズ源から生じる可能性がある。外部ノイズ源、エンジン、及びタイヤに由来する車内のノイズは、例えば消音/防音材料を適用して、自動車の車室を防音することによって低減することができる。一方、車室内からの空気流によって生じるノイズ(例えば、HVACシステムを通る乱流によるノイズ)は、自動車の内装設計を変更することによってのみ低減することができる。
【0095】
各ノイズ生成領域について、この系に導入される強度(音響パワー)は上記のように決定することができる。しかしながら、この系の音響特性(吸収、回折など)に関わらず、この強度が系に導入されるものであるため、所与の位置(運転者の耳など)に対するこれらの領域の各々の実際の寄与はまだ説明されていない。
【0096】
数値解析を用いて各領域又はノイズ源と所与の位置との間の音響伝達関数を計算すると、システムは、各領域又はノイズ源の強度を補正して、各ノイズ生成領域又はノイズ源の所与の位置に対する寄与を直接得る、並びに各周波数について所望の位置に対する各測定セルの音響パワーレベルの寄与を直接得ることができる。
【0097】
このような方法は、受け手の位置に基づいて系のノイズ生成領域の独特なランク付けを可能にし、最大の影響を与えるために設計のどの領域に最初に取り組むべきかの効率的な選択を可能にする。
【0098】
図47は、自動車4700の車室4704にいる乗員4702を示す。乗員4702は、例えば外部ノイズ源47470、タイヤ4712、エンジン4714及びHVACシステム4716など、様々なノイズ源からノイズを聞くことができる。前述のように、外部ノイズ源47470、タイヤ4712、及びエンジン4714からのノイズは、自動車の車室を防音することによって低減することができる。乗員4702の耳4706に達するHVACシステムからのノイズは、HVACシステムの設計を改善することによって低減(例えば、最小化)することができる。HVACシステム(又は系内の空気又は他の流体の流れに関連する何らかの他のノイズ源)を改善する方法を決定するために、HVACシステム内に存在する流れ誘起ノイズ源の解析を実行することができる。以下の例を自動車のHVACシステムに関連して説明するが、本明細書に記載するシステムは、限定するものではないが、車両周囲の気流(風切り音)、燃焼機関(吸気、排気系)を通る空気流、冷却ファン、車両(飛行機、ボート、電車など)、映画館、ホームシアタ、住居、事務所の周りに空気流などを含む、あらゆる流体流れ誘起ノイズ源に適用することができる。
【0099】
一部の実施態様では、音響ノイズ源及び/又はノイズクラスタの強度は、特定の位置(複数可)で聞こえるノイズの量に基づいて調整することができる。個々のノイズ源及びノイズクラスタの音響パワーは、運転手の耳位置にあるセンサ点に基づいて調整することができる。例えば、マイクロフォンが戦略的に配置され、圧力信号がその時点で記録される。音響パワーは、ノイズ源又はノイズクラスタからセンサ点への伝達関数に基づいて調整することができる。一般に、伝達関数は、ノイズ源の強度(例えば、ノイズ源又はノイズクラスタにおける音響パワー)と、受け手として知られる遠隔地点(例えば、運転者の耳)における強度との間の関係である。それぞれの音響源又はクラスタと、例えば運転者の左耳などの対象位置との間の音響伝達関数は、幾何学的境界条件並びに伝達経路に沿う吸音材料の存在に依存する場合がある。
【0100】
図48A及び48Bは、それぞれ、低速及び高速の吹き出し条件下でノイズ源から運転者の左耳への計算された伝達関数の例を示す。それは伝達関数が大きく異なることを示している。低ブロワ速度4802の下で計算された伝達関数は、高ブロワ速度で計算された伝達関数とは明らかに異なる。これらの図において、各線は、車両内の異なるノイズ源に対して決定された伝達関数を表す。例えば、ノイズ源#1の4806及び4816は、
図44のクラスタ4402に対して計算された伝達関数であり、ノイズ源#2の4808及び4818は、
図44のクラスタ4404に対して計算された伝達関数であり、ノイズ源#3の4810及び4820は、
図44のクラスタ4406に対して計算された伝達関数であり、ノイズ源#4の4812及び4822は、
図44のクラスタ4408に対して計算された伝達関数であり、ソース#5の4814及び4824は、
図44のクラスタ4410に対して計算された伝達関数である。
【0101】
伝達関数は通常、2つの量の比として定義される。音響学において、伝達関数は2つの音圧の比(ノイズ源での圧力に対する受け手での圧力)として、又はより一般的に、ノイズ源での体積流量に対する受け手での音響圧力の比として定義することができる。系の音響シミュレーション(音響有限要素法(FEM)ソルバ、LBMソルバ、又は他の音響ソルバで計算される)で得られたデータを用いて、各ノイズ源、又は結合された複数のノイズ源間の音響伝達関数を計算することができる。音響伝達関数はまた、体積ノイズ源と系の各位置における圧力を記録するマイクロフォンとを用いて実験的に測定することもできる。
【0102】
LBMでは、ノイズ源と受け手と間の音響伝達関数を各ノイズ源に対して計算することができるが、ノイズ源ごとに1つのシミュレーションを必要とする場合がある(各ノイズ源に課される体積流れ変動)。第1の点から第2の点への音響伝達関数が第2の点から第1の点への伝達関数に等しいという特性を用いて、受け手をノイズ源として設定し(体積変動境界条件が課される)、且つノイズ源を受け手として設定した(各ノイズ源で圧力が測定される)、単一のシミュレーションで伝達関数を計算することができる。このプロセスにより、ノイズ源と同数のシミュレーションから1つのシミュレーションへ、音響伝達関数の計算が高速化される。
【0103】
図49A〜Dは、HVACシステムのノイズ源、及びHVACシステムの運転者に対するノイズ源の寄与の例を示す。
図49Aは、500Hzでのノイズ源を示す。この例では、各黒点はノイズ源を表す。
図49Bは、運転者の耳に対する500Hzでの各ノイズ源の寄与の一例を示す。2つの図に示されるように、一部のノイズ源は重要な寄与をしない。例えば、ブロワ4902からの空気は、予想されるよりも遥かに小さな寄与4904をし、全てのノイズ源が運転者に聞こえるノイズに重要な寄与をする訳ではない。
【0104】
図49C及び49Dはそれぞれ、200Hzでのノイズ源及び運転者に対する200Hzでのノイズ源の寄与を表す。
【0105】
一部の実施態様では、ノイズ源の寄与は、最適化プロジェクトにおける目的関数として使用することができる。例えば、最適化プロジェクトの目標は、ノイズ源の寄与を最小限に抑えることであるとすることができる。
【0106】
図50A〜Bはそれぞれ、ノイズ源と外部観測者に対するノイズ源の寄与とを示す図である。
図50Aでは、ノイズ源5002は白点で表されている。
図50Bでは、ノイズ源の寄与は、白点5004で表されている。
【0107】
一部の実施態様では、左耳及び右耳に関して独立して音圧を測定することができる。同様に、複数の異なる場所に関して(例えば、乗り物の乗客、劇場の観客などに対して)音圧を測定することができる。
【0108】
一部の実施態様では、音響パワー源をノイズクラスタにクラスタ化する前に、伝達関数を各音響パワー源に適用することができる。一部の実施態様では、伝達関数を各ノイズクラスタに適用することができる。各方法は、データを処理するコンピュータシステムに対して異なる性能向上を提供することができる。(前述のように)クラスタリングの前に各ノイズ源の音響パワーを調整し、各ノイズ源の調整されたパワーを閾値と比較することによって、ノイズ源の一部は閾値未満であるとして考慮から外れるので、クラスタリング時に考慮する必要のあるノイズ源が少なくなる。考慮する必要のある各ノイズ源は処理サイクル及びメモリを必要とするので、考慮中のノイズ源の数を減らすことにより、コンピュータで必要なプロセッササイクルとメモリ使用量とを減らすことができる。一方では、伝達関数を適用する前にノイズ源をノイズクラスタにクラスタ化することによって、1つの伝達関数がクラスタ全体に適用可能となるので、適用する必要のある関数が少なくなる。このように、決定に達するために必要とされる処理ステップの数を最小限に抑えることにより、処理サイクルを節約することができる。
【0109】
図51は、ノイズ源を特定するための例示的なプロセ5100スのフローチャートである。
【0110】
プロセス5100は、体積内の流体の活動をシミュレートする(5102)。その体積は物理空間を表す。体積内の要素の移動をモデル化するために、体積内の流体の活動がシミュレートされる。
【0111】
プロセス5100は、第1の時点及び第2の時点で渦を特定する(5104)。流体流れシミュレーションの第1の時点で、この方法は、流体流れによってモデル化された過渡的な乱流の中で第1の組の渦を特定することができる。第1の時点に続く流体流れシミュレーションの第2の時点で、過渡的な乱流中に第2の組の渦を特定する。
【0112】
プロセス5100は渦の変化を追跡する(5106)。プロセス5100は、第1組の離散渦と第2組の離散渦とを比較することができる。
【0113】
プロセス5100は、追跡に基づいて1又は2以上の潜在的なノイズ源を特定する(5108)。ノイズ源は、個々の離散渦に対応すること、又はノイズ渦のクラスタ化集合に対応することができる。
【0114】
プロセス5100は、1又は2以上のノイズ源の受け手に対する寄与を決定する(5110)。寄与は、各ノイズ源に伝達関数を適用することによって決定することができる。
【0115】
プロセス5100は、受け手における1又は2以上のノイズ源の寄与に基づいて、デバイス又はエンティティの1又は2以上の幾何学的特徴に対する1又は2以上の修正を示すデータを出力する(5112)。
【0116】
本主題の実施形態及び本明細書に記載する操作は、本明細書に開示する構造及びそれらの構造上等価物を含めて、デジタル電子回路で、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアで、或いはそれらの1又は2以上の組合せで実施することができる。本明細書に記載する主題の実施形態は、1又は2以上のコンピュータプログラム(データ処理プログラムとも呼ぶ)(すなわち、データ処理装置による実行のために、又はデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ記憶媒体上にコード化された、1又は2以上のコンピュータプログラム命令のモジュール)として実装することができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶デバイス、コンピュータ可読記憶基板、ランダム又はシリアルアクセスメモリアレイ又はデバイス、或いはそれらの1又は2以上の組合せである、又はそれらに含まれるとすることができる。コンピュータ記憶媒体は、1又は2以上の別々の物理的構成要素又は媒体(例えば、複数のCD、ディスク、又は他の記憶デバイス)である、又はそれらの中に含まれるとすることができる。本主題は、非一時的コンピュータ記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラム命令で実施することができる。
【0117】
本明細書に記載する操作は、1又は2以上のコンピュータ可読記憶デバイスに記憶された、又は他のソースから受け取ったデータに対してデータ処理装置によって実行される動作として実施することができる。
【0118】
用語「データ処理装置」は、例としてプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システムオンチップ、或いはそれらの複数物、又は組合せを含めて、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、及び機械を包含する。装置は、専用論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路))を含むことができる。装置は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムに対する実行環境を作り出すコード(例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームのランタイム環境、仮想マシン、又はそれらの1又は2以上の組合せを構成するコード)も含むことができる。装置及び実行環境には、ウェブサービス、分散コンピューティング及びグリッドコンピューティングのインフラストラクチャなど、様々な異なるコンピューティングモデルのインフラストラクチャを実現することができる。
【0119】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても知られる)は、コンパイル言語又はインタプリタ言語、宣言型言語又は手続き型言語を含めて、あらゆる形式のプログラミング言語で記述することができ、独立型プログラムとして、或いはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、又はコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてを含めて、あらゆる形態で配置することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもそうである必要はないが、ファイルシステム内のファイルに対応することができる。プログラムは、他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語文書に格納された1又は2以上のスクリプト)に、当該プログラム専用の単一ファイルに、又は複数の協調ファイル(例えば、1又は2以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、或いは1つのサイトに設置された又は複数のサイトに亘って分散されて通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように配置することができる。
【0120】
本明細書に記載するプロセス及び論理フローは、入力データに作用して出力を生成することによって動作を行うための1又は2以上のコンピュータプログラムを実行する1又は2以上のプログラマブルプロセッサによって実施することができる。プロセス及び論理フローはまた、専用論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路))によって実施することができ、専用回路又はASICとして装置を実装することができる。
【0121】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用と専用両方のマイクロプロセッサ、並びにいずれかの種類のデジタルコンピュータのいずれかの1又は2以上のプロセッサを含む。一般にプロセッサは、読取り専用メモリ又はランダムアクセスメモリ或いはその両方から命令及びデータを受け取ることになる。コンピュータの必須要素は、命令に従って動作を実行するためのプロセッサと、命令及びデータを格納するための1又は2以上のメモリデバイスである。一般に、コンピュータはまた、データを記憶するための1又は2以上の大容量記憶デバイス(例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は光ディスク)を含む、又はそれらとの間でデータを受け取る又はデータを転送する、或いはその両方を行うように動作可能に連結されるが、このようなデバイスを備える必要がない。さらに、コンピュータは、別のデバイス(例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯型オーディオ又はビデオプレーヤ、ゲーム機、全地球測位システム(GPS)受け手、或いは携帯型記憶デバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ))に埋め込むことができる。コンピュータプログラム命令及びデータを記憶するのに適切なデバイスには、例として半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、及びCD‐ROM及びDVD−ROMディスクを含めて、不揮発性メモリ、媒体及びメモリの全形態が含まれる。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補完される、又はその中に組み込まれるとすることができる。
【0122】
ユーザとの対話を提供するために、本明細書に記載する主題の実施形態は、ユーザに情報を示すための表示デバイス(例えば、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタ)と、ユーザがコンピュータに入力を与えることのできるキーボード及びポインティングデバイス(例えば、マウス又はトラックボール)とを有するコンピュータ上で実施することができる。他の種類のデバイスを用いて、同様にユーザとの対話を提供することができる:例えば、ユーザに与えられるフィードバックは、いずれかの形態の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバック)とすることができ、ユーザからの入力は、音響、音声、又は触覚入力を含めていずれかの形態で受け取ることができる。さらに、コンピュータは、ユーザが使用するデバイスとの間でから文書を送受信することによって(例えば、ウェブブラウザから受信された要求に応えてユーザのユーザデバイス上のウェブブラウザにウェブページを送信することによって)ユーザと対話することができる。
【0123】
本明細書に記載する主題の実施形態は、バックエンド構成要素を(例えばデータサーバとして)含む、又はミドルウェア構成要素(例えばアプリケーションサーバ)を含む、又はフロントエンド構成要素(例えば、ユーザが本明細書に記載する主題の実施態様と対話することのできるグラフィカルユーザインタフェース又はウェブブラウザを備えたユーザコンピュータ)を含む、或いはこのようなバックエンド、ミドルウェア、又はフロントエンド構成要素の1又は2以上のいずれかの組合せを含むコンピューティングシステムで実施することができる。システムの構成要素は、デジタルデータ通信のいずれかの形態又は媒体(例えば、通信ネットワーク)によって相互接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えばインタネット)、並びにピアツーピアネットワーク(例えばアドホックピアツーピアネットワーク)が含まれる。
【0124】
コンピューティングシステムは、ユーザとサーバを含むことができる。ユーザとサーバは一般に互いに離れており、通常は通信ネットワークを介して対話する。ユーザとサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにユーザ−サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。一部の実施形態では、サーバはデータ(例えば、HTMLページ)をユーザデバイスに送信する(例えば、ユーザデバイスと対話するユーザにデータを示し、ユーザからユーザ入力を受信する目的で)。ユーザデバイスで生成されたデータ(例えば、ユーザとの対話の結果)は、サーバでユーザデバイスから受信することができる。
【0125】
本明細書は多くの具体的な実施詳細を含むが、これらは、いずれかの発明又は請求可能な事物の範囲に関する限定として解釈すべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特有な特徴の記述として解釈すべきである。本明細書で別々の実施形態に関連して記載する特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態に関連して記載する様々な特徴もまた、複数の実施形態で別々に、又はいずれかの適切な部分的組合せで実施することができる。さらに、特徴は特定の組合せで機能するものとして上記に記載し、最初はそういうものとして請求することさえあるが、場合によっては、請求する組合せに由来する1又は2以上の特徴をその組合せから削除することができ、請求する組合せは、部分的組合せ又は部分的組合せの変形に関するとすることができる。
【0126】
同様に、動作は特定の順序で図面に描かれるが、望ましい結果を達成するために、このような動作が図示する特定の順序で又は連続的な順序で実行されること、或いは示された全ての動作が実行されることを必要とすると理解すべきではない。特定の状況では、マルチタスク処理及び並列処理が有利な場合がある。さらに、上述の実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施形態でそのような分離を必要とすると理解すべきではなく、記載するプログラム構成要素及びシステムは、一般的に単一のソフトウェア製品に統合される又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化される場合があると理解すべきである。
【0127】
このように、主題の特定の実施形態を記述した。他の実施形態は、次に述べる特許請求の範囲内にある。場合により、請求項に列挙する動作を異なる順序で実行することができ、それでも望ましい結果を達成する。さらに、添付図面に示したプロセスは、望ましい結果を達成するために、図示する特定の順序、又は連続的な順序を必ずしも必要としない。特定の実施態様では、マルチタスク処理及び並列処理が有利な場合がある。