特許第6802868号(P6802868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802868
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】歯車を回転させるための機器
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   H02N2/04
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-39274(P2019-39274)
(22)【出願日】2019年3月5日
(65)【公開番号】特開2019-162021(P2019-162021A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】18160980.1
(32)【優先日】2018年3月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルケット
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・メイエ
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−217124(JP,A)
【文献】 特開2014−106231(JP,A)
【文献】 特開2008−220171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車(61;62)を回転させるための機器(100;101)であって、
−リニア圧電モータであって、
・細長い形状を有する受動要素(20)、
・双方向に前記受動要素(20)を軸方向に動かすことができる圧電アクチュエータ(30)
を備えるリニア圧電モータと、
−第1の移動方向(T1)に軸方向に前記受動要素(20)を動かすとき、第1の回転方向(R1)に前記歯車(61;62)を1つの歯だけ回転させるような方法で前記歯車(61;62)の歯部(610;620)とかみ合う、前記受動要素(20)に固定された伝道部材(71;72)と、さらに
−前記伝道部材(72)は、前記第1の移動方向(T1)と逆の第2の移動方向(T2)に前記受動要素(20)が軸方向に動くとき、前記第2の回転方向(R2)に前記歯車(62)を1つの歯だけ回転させるような方法で前記歯車(62)の前記歯部とかみ合い、
−前記第1の回転方向(R1)と逆の第2の回転方向(R2)に前記歯車が回転するのを妨害する低い位置を含む、2つの端部位置の間を移動するジャンパー(81;82)とを備え、
前記低い位置にある前記ジャンパー(82)は、前記歯車が前記第1の回転方向(R1)に回転するのを妨害する、機器(100;101)。
【請求項2】
前記ジャンパー(82)を一方の端部位置から他方の端部位置へ切り替えることができるようにする作動手段(92)を備える、請求項に記載の回転機器(101)。
【請求項3】
前記作動手段(92)は、前記ジャンパー(82)を前記歯車(62)に向けて、および前記歯車(62)から離して動かすことができるようにする第2のリニア圧電アクチュエータを備える、請求項に記載の回転機器(101)。
【請求項4】
前記圧電アクチュエータ(30)は、端部の一方が接続ゾーン(33)で接続された1対のアーム(31、32)を備える共振器を備え、他方の2つの端部(310、320)は、自由端と呼ばれ、前記受動要素(20)は、前記自由端(310、320)が前記受動要素(20)の表面上で摩擦を生じることにより軸方向に動かされるような方法で前記アーム(31、32)の前記自由端(310、320)の間を通過する、請求項1から請求項のいずれかに記載の回転機器(100;101)。
【請求項5】
前記歯車が回転するのを妨害することと組み合わせて、前記受動要素(20)が軸方向に動く影響を受けて、前記受動要素(20)が前記受動要素(20)の初期位置から逸脱するとき、前記受動要素(20)を前記受動要素(20)の前記初期位置に戻す傾向がある、前記受動要素(20)を軸方向に誘導するための手段(50)を備える、請求項1から請求項のいずれかに記載の回転機器(100;101)。
【請求項6】
時計仕掛けの部品であって、輪(61;62)と、請求項1から請求項のいずれかに記載の回転機器(100;101)とを備える時計仕掛けの部品。
【請求項7】
前記輪(61;62)と一体に回転する針(40)を備える、請求項に記載の時計仕掛けの部品。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載の前記回転機器(100;101)を用いて歯車(61;62)を回転させるための方法であって、
−A:前記圧電アクチュエータ(30)を用いて、第1の移動方向(T1)に軸方向に前記受動要素(20)を動かすステップと、
−B:前記伝道部材(71;72)を用いて、第1の回転方向(R1)に前記歯車(61;62)を1つの歯だけ回転させるステップと、
−C:前記低い位置に前記ジャンパー(81;82)を配置するステップと、
−D:前記圧電アクチュエータ(30)を用いて、第2の移動方向(T2)に軸方向に前記受動要素(20)を動かすステップと
を連続して備える、回転させるための方法。
【請求項9】
前記ステップDの後に実行される、前記ステップA、B、C、およびDを繰り返すステップを備える、請求項に記載の回転方法。
【請求項10】
請求項から請求項のいずれかに記載の前記回転機器(101)を用いて、
−E:前記圧電アクチュエータ(30)を用いて、前記第2の移動方向(T2)に軸方向に前記受動要素(20)を動かすステップと、
−F:前記伝道部材(72)を用いて、第2の回転方向(R2)に前記歯車(62)を1つの歯だけ回転させるステップと、
−G:前記低い位置に前記ジャンパー(82)を配置するステップと、
−H:前記圧電アクチュエータ(30)を用いて、前記第1の移動方向(T1)に軸方向に前記受動要素(20)を動かすステップと
を連続してさらに備える、請求項8または9に記載の回転させるための方法。
【請求項11】
前記ステップHの後に実行される、前記ステップE、F、G、およびHを繰り返すステップを備える、請求項10に記載の回転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア圧電モータを用いて歯車を回転させるための機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
リニア圧電モータは従来、受動要素と、圧電効果を使用することにより受動要素を直線的に動かすことができるようにするアクチュエータとを備える。図1を参照すると詳細には、受動要素が細長い要素20(たとえば、長方形の横断面を有する棒)であり、かつ圧電アクチュエータが接続ゾーン33で互いに接続された1対のアーム31、32から形成された、実質的に音叉またはU字の形状の共振器30を備えるリニア圧電モータ10は、公知である。アクチュエータは、それぞれアーム31、32の一方に取り付けられ、かつアームに振動を与えるためにアームを励振するための手段の役割を果たす、2つの圧電要素(図示せず)をさらに備える。一方、受動要素20は、共振器30のアーム31、32に実質的に平行に伸長し、受動要素20を軸方向に誘導することは、共振器から距離を置いて配置された誘導手段50により提供される。受動要素20はまた、アーム31、32の自由端310、320が接触領域上で摩擦を生じることにより受動要素20を軸方向に動かすような方法で、共振器30のアーム31、32の自由端310、320と局所的に接触している。
【0003】
圧電モータの占有面積を低減することが重要な用途では、詳細には時計の分野では、共振器30のアーム31、32の長さは短くなければならず、この長さは、受動要素20の最大直線移動を限定する。接続ゾーン33の方向に軸方向に受動要素20が平行移動することは、停止具の役割を果たす前記接続ゾーン33が存在することにより限定され、その他の方向に軸方向に受動要素20が動くことは、アーム31、32の長さにより限定される。このように移動が限定されることは、ある種の状況で、詳細には、受動要素20が、たとえばラックシステム70を介して輪60とかみ合う場合、輪60の回転が結果として抑制されるので問題がある。たとえば、受動要素20の移動がほぼ1ミリメートルに限定される場合、輪60の直径は、移動中に前記輪60が完全に1回転することができるためには、最大限でもほぼ0.3ミリメートルなければならない。この寸法は、小さすぎて、技術的に実現することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、受動要素の最大直線移動を増大させることなく、輪が完全に1回転することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、第1の様態によれば、本発明は、歯車を回転させるための機器であって、
−リニア圧電モータであって、
・細長い形状を有する受動要素、
・受動要素を双方向に軸方向に動かすことができる圧電アクチュエータ
を備えるリニア圧電モータと、
−第1の方向の移動方向に軸方向に受動要素を動かすとき、第1の回転方向に歯車を1つの歯だけ回転させるような方法で歯車の歯部とかみ合う、受動要素に固定された、強固に接続された伝道部材と、
−第1の回転方向と逆の第2の回転方向に歯車が回転するのを妨害する低い位置を含む、2つの端部位置の間を移動するジャンパーと
を備える機器に関する。
【0006】
圧電アクチュエータを介して行われる第1の移動方向に直線的に受動要素が動くたびに、歯車は、伝道部材を介して第1の回転方向に1つの歯だけ回転する。圧電アクチュエータを介して行われる第1の移動方向と逆の第2の移動方向に直線的に受動要素が動くたびに、歯車は、下部ジャンパーを介して動かないままでいる。したがって、歯車は、受動要素が反復して往復運動することにより、第1の回転方向に完全に1回転することができる。
【0007】
本発明の第1の実施形態では、回転機器は、第1の回転方向に歯車が回転する影響を受けて、ジャンパーが、低い位置から逸脱するとき、ジャンパーを低い位置に戻す傾向がある戻し手段を備える。戻し手段は、歯車が第1の回転方向に回転するとき、歯車の歯部に対してジャンパーを維持することができるようにする、たとえば弾性手段である。
【0008】
この第1の実施形態は、詳細にはつめ車に適合される。最初に、ジャンパーは、つめ車の歯部の内側を圧迫する(ジャンパーは、低い位置にある)。受動要素は、第1の移動方向に動くとき、接触するようになる歯車の歯止めを押しつける伝道部材を介して、第1の回転方向に1つの歯だけ歯車の回転を引き起こす。ジャンパーは、接触するようになる歯車の歯止めが通過する影響を受けて持ち上げられ、次いで、前記歯止めが通過するとすぐに、戻し手段の影響を受けて低い位置に戻る。しかしながら、受動要素が第2の移動方向に動くとき、ジャンパーは、歯車が第2の回転方向に回転するのを防止する。したがって、受動要素が前方および後方に連続して動くことにより、歯車は第1の回転方向に完全に1回転することができる。
【0009】
本発明の第2の実施形態では、
−伝道部材は、受動要素が第1の移動方向と逆の第2の移動方向に軸方向に動くとき、第2の回転方向に歯車を1つの歯だけ回転させるような方法で歯車の歯部とかみ合い、
−低い位置にあるジャンパーは、歯車が第1の回転方向に回転するのを妨害する。
【0010】
この第2の実施形態は、第1の回転方向に、またはしたがって、第2の回転方向に歯車を回転させるという選択をすることができるようにするので有利である。しかしながら、歯車はつめ車ではなくてもよく、実際は、ジャンパーが低い位置になく、かつ受動要素が第2の移動方向に動かされるとき、伝道部材は、第2の回転方向に歯車を1つの歯だけ回転させることができなければならない。受動要素が圧電アクチュエータを介して行われる第2の移動方向に軸方向に動くたびに、歯車は、伝道部材を介して第2の回転方向に1つの歯だけ回転する。受動要素が圧電アクチュエータを介して第1の移動方向に直線的に動くたびに、歯車は、下部ジャンパーを介して動かないままでいる。したがって、歯車は、受動要素が反復して往復運動することにより、第2の回転方向に完全に1回転することができる。
【0011】
第2の実施形態の特定モードでは、回転機器は、ジャンパーを一方の端部位置から他方の端部位置へ切り替えることができるようにする作動手段を備える。作動手段は、ジャンパーを歯車に向けて、および歯車から離して動かすことができるようにする、たとえば第2のリニア圧電アクチュエータを備える。
【0012】
したがって、ジャンパーの位置は、独立して制御され、歯車は、低い位置からジャンパーを第1の実施形態のようには取り除くことができない。
【0013】
限定しない一実施形態では、圧電アクチュエータは、端部の一方が接続ゾーンで接続された1対のアームを備える共振器を備え、2つのその他の端部は、自由端と呼ばれ、受動要素は、自由端が受動要素の表面上で摩擦を生じることにより軸方向に動かされるような方法で前記アームの自由端の間を通過する。
【0014】
そのようなアクチュエータは、占有面積が狭く、詳細には厚さが薄く、製造および組み立てしやすい。
【0015】
一実施形態では、回転機器は、歯車が回転するのを妨害することと組み合わせて、受動要素が軸方向に動く影響を受けて受動要素が受動要素の初期位置から逸脱するとき、受動要素を受動要素の初期位置に戻す傾向がある、受動要素を軸方向に誘導するための手段を備える。
【0016】
実際は、歯車を1つの歯だけ回転させた後、受動要素が巻き戻されたとき、すなわち、受動要素の初期位置に戻ったとき、歯車をもう一度回転させるために、伝道部材と伝道部材が押しつけなければならない次の歯との間で接触する影響を受けて、受動要素を持ち上げることができる。誘導手段は、受動要素を受動要素の初期位置に戻すことにより、受動要素が激しくぶつかって一直線上に並ばなくなるのを防止することができるようにする。
【0017】
第2の様態によれば、本発明は、輪と、上記で提示した実施形態の1つによる回転機器とを備える時計仕掛けの部品に関する。
【0018】
一実施形態では、時計仕掛けの部品は、輪と一体に回転する針を備える。
【0019】
第3の様態によれば、本発明は、上記で提示した実施形態の1つによる回転機器を用いて歯車を回転させるための方法であって、
−A:圧電アクチュエータを用いて、第1の移動方向に軸方向に受動要素を動かすステップと、
−B:伝道部材を用いて、第1の回転方向に歯車を1つの歯だけ回転させるステップと、
−C:低い位置にジャンパーを配置するステップと、
−D:圧電アクチュエータを用いて、第2の移動方向に軸方向に受動要素を動かすステップと
を連続して備える方法に関する。
【0020】
歯車を2つ以上の歯だけ回転させることができるようにする一実施形態では、ステップA、B、C、およびDを、必要な回数だけ繰り返す。
【0021】
本発明の特定の実施形態では、方法は、
−E:圧電アクチュエータを用いて、第2の移動方向に軸方向に受動要素を動かすステップと、
−F:伝道部材を用いて、第2の回転方向に歯車を1つの歯だけ回転させるステップと、
−G:低い位置にジャンパーを配置するステップと、
−H:圧電アクチュエータを用いて、第1の移動方向に軸方向に受動要素を動かすステップと
を連続してさらに備える。
【0022】
方法は、ステップHの後に遂行される、ステップE、F、G、およびHを繰り返すステップをさらに備えることができる。
【0023】
他の独自性および利点は、添付図面を参照して、情報を提供する目的でまったく限定しない以下に示す記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】すでに記述した、従来技術による回転機器を概略的に示す。
図2】本発明の第1の実施形態による回転機器を概略的に示す。
図3】本発明の第2の実施形態による回転機器を概略的に示す。
図4】本発明の一実施形態による、輪を回転させるための方法のステップの構成図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態による、輪61を回転させるための機器100を示し、図3は、本発明の第2の実施形態による、輪62を回転させるための機器101を示す。いずれの事例も、回転機器100、101は、圧電モータを備える。圧電モータは、細長い形状を有する受動要素20と、圧電効果を使用することにより受動要素20を平行移動させる(すなわち、直線的に/軸方向に動かす)ことができるようにする圧電アクチュエータとを備える。
【0026】
図示する実施形態では、圧電アクチュエータは、図示しない圧電励振手段と、振動することができる2つのアーム31、32を備える共振器30とを備える。励振手段は、有利には、異なるアームにそれぞれ取り付けられた2つの部分から構成される。しかしながら、励振手段の他の実施形態を考えることができ、たとえば、アーム間の接合箇所に配置された単一の部分から構成することができる。適合した電圧を励振手段に印加する間、励振手段は変形し、機械的応力がアーム31、32に伝達され、その結果、アーム31、32は、振動し始める。アーム上の励振手段を適切に設計し、組み立てることにより、所望の形状を有する多次元振動を実現することができる。
【0027】
アーム31、32は、接続ゾーン33で接続され、前記接続ゾーン33から互いに実質的に平行に伸長する。その結果、共振器30は、音叉の全体形状を、すなわち、U字形を有する。しかしながら、この形状に限定するわけではない。接続ゾーン33で接続されないアームの端部を、自由端310、320と呼ぶ。アーム31、32の振動の振幅は、これらの端部310、320で最大になる。
【0028】
受動要素20は、アーム31、32に実質的に平行に伸長し、前記アーム31、32の自由端310、320の間を通過する。その結果、共振器30は、受動要素20の第1の端部ゾーンを取り囲む。アーム31、32の自由端310、320が多次元振動することにより、前記端部310、320が受動要素20に対して摩擦を生じることによって、受動要素20に軸方向の平行移動を課すことができるようになる。接続ゾーン33の方向に平行移動することは、前記接続ゾーン33により限定されること、ならびにその他の方向に平行移動することは、アーム31、32の長さにより限定されることが理解される。
【0029】
圧電アクチュエータは、とても申し分なく上述のタイプ以外の別のタイプとすることができることが留意され、重要なことは、圧電アクチュエータは、一方の運動方向および他方の運動方向に軸方向に受動要素20を平行移動させることができるということである。
【0030】
回転機器100、101はまた、軸方向に受動要素20を誘導するための手段50を備え、受動要素20が平行移動する間、受動要素20の配向を維持することができるようにする。誘導手段50を、圧電アクチュエータから一定距離の所に配列する。これらの誘導手段50は、たとえばレールである。
【0031】
回転機器はまた、伝道部材71、72と、ジャンパー81、82とを備える。伝道部材71、72およびジャンパー81、82は、ノッチを備え、ノッチの形状は、有利には輪の歯部に適合する。伝道部材71、72は、第1の端部ゾーンと反対側の、受動要素20の第2の端部ゾーンに固定される。伝道部材71、72は、受動要素20が圧電アクチュエータの活動の下で運動方向に平行移動するとき、少なくとも1つの回転方向に輪を回転させることができるような方法で、輪に対して配置される。ジャンパー81、82は、2つの端部位置間で移動する。下の位置と呼ばれる、これらの位置の1つでは、ジャンパー81、82は、輪61、62の2つの歯の間でくさび形をなす。
【0032】
図2に示す第1の実施形態では、輪61は、第1の回転方向R1でだけ回転することが意図されるつめ車である。第1の回転方向R1の回転は、第1の運動方向T1に受動要素20を平行移動させるときだけ伝道部材71を介して可能であり、伝道部材71は、輪61の歯止め610の1つと接触するようになり、次いで、押しつけ、輪61を1つの歯だけ回転させる。
【0033】
第1の実施形態では、回転機器100は、弾性要素の形をとる、たとえば、輪の歯止めにジャンパー81を押しつける傾向がある、ばねまたはブレードの形をとる戻し手段91を備える。輪61が第1の回転方向R1に回転するとき、ジャンパー81は、歯部の形状に実質的に追従するような方法で輪が通過することにより持ち上げられ、戻し手段91の影響を受けて低い位置に戻る。当然、ジャンパーが低い位置にあるとき、つめ車61は、第1の回転方向R1と逆の第2の回転方向R2に回転することができない。
【0034】
その結果、受動要素20が移動方向T1に平行移動する間、つめ車61は、1つの歯だけ回転し、受動要素20が移動方向T1と逆の移動方向T2に平行移動する間、つめ車61は、ジャンパー81により動けなくなる。受動要素20が複数回前後に動くことにより、第1の回転方向R1に輪61を複数の歯だけ回転させることが可能である。したがって、最大移動が小さな受動要素20で十分である。
【0035】
図4を参照して、上述の回転機器100を用いて輪61を回転させるための方法は、
−ステップA:圧電アクチュエータ30を用いて第1の移動方向T1に軸方向に受動要素20を動かすステップと、
−ステップB:輪61の歯610に押しつける伝道部材71を用いて、第1の回転方向R1に輪61を1つの歯だけ回転させるステップと、
−ステップD:圧電アクチュエータ30を用いて、第2の移動方向T2に軸方向に受動要素20を動かすステップであって、戻し手段91によりジャンパーを低い位置に維持する(ステップC)ステップと、
−必要な回数だけステップA、B、C、Dを繰り返すステップと
を備えることが理解される。
【0036】
図3に示す第2の実施形態では、輪62は、従来の歯部を有し、第1の回転方向R1だけではなく第2の回転方向R2にも回転するように設計される。第1の回転方向R1の回転は、受動要素20を第1の運動方向T1に平行移動させるとき、伝道部材71を介して可能であり、第2の回転方向R2の回転は、受動要素20を第2の移動方向T2に平行移動させるとき、伝道部材71を介して可能である。
【0037】
第2の実施形態では、回転機器100は、ジャンパー82の位置を制御することができる、第2のリニア圧電アクチュエータの形をとる作動手段92(しかし、作動手段92は他の形をとることができ、重要なことは、作動手段92は、第1の実施形態に反して能動要素であるということである)を備える。第1の回転方向R1に輪62を回転させることを望む場合、第1の回転方向R1に輪62を1つの歯だけ回転させるような方法で、受動要素20を介して第1の移動方向T1に伝道部材72を動かさなければならない。同時に、ジャンパー82は、高い位置になければならない、すなわち、ジャンパー82は、輪62の回転を邪魔しないように、輪62と接触してはならない。次いで、輪61を妨害するような方法でジャンパー82を低い位置に持って行かなければならず、巻き戻すような方法で、受動要素20を介して第2の移動方向T2に伝道部材72を動かさなければならない。受動要素20が複数回前後に動くことにより、第1の回転方向R1に輪を複数の歯だけ回転させることが可能である。
【0038】
これに反して、第2の回転方向R2に輪61を回転させることを望む場合、第2の回転方向R2に輪62を1つの歯だけ回転させるような方法で、受動要素20を介して第2の移動方向T2に伝道部材72を動かさなければならない。同時に、ジャンパー82は、高い位置になければならない、すなわち、ジャンパー82は、輪62の回転を邪魔しないように、輪62と接触してはならない。次いで、輪62を妨害するような方法でジャンパー82を低い位置に持って行かなければならず、巻き戻すような方法で、受動要素20を介して第1の移動方向T1に伝道部材72を動かさなければならない。受動要素20が複数回前後に動くことにより、第2の回転方向R2に輪を複数の歯だけ回転させることが可能である。
【0039】
上述の回転機器101を用いて輪62を回転させるための方法は、
−ステップA:圧電アクチュエータ30を用いて第1の移動方向T1に軸方向に受動要素20を動かすステップと、
−ステップB:輪62の歯620に押しつける伝道部材72を用いて、第1の回転方向R1に輪62を1つの歯だけ回転させるステップであって、ジャンパーは高い位置にあるステップと、
−ステップC:作動手段92を用いてジャンパー82を低い位置に配置するステップと、
−ステップD:圧電アクチュエータ30を用いて、ステップAの方向と逆の第2の移動方向T2に軸方向に受動要素20を動かすステップであって、ジャンパーは、低い位置に維持されるステップと、
−必要な回数だけステップA、B、C、Dを繰り返すステップと
を備えることが理解される。
【0040】
次いで、輪62をその他の方向R2に回転させるために、上述の回転機器101を用いて輪62を回転させるための方法は、
−ステップE:圧電アクチュエータ30を用いて、第2の移動方向T2に軸方向に受動要素20を動かすステップと、
−ステップF:伝道部材72を用いて、第2の回転方向R2に輪62を1つの歯だけ回転させるステップと、
−ステップG:低い位置にジャンパー82を配置するステップと、
−ステップH:圧電アクチュエータ30を用いて、第1の移動方向T1に軸方向に受動要素20を動かすステップと、
−必要な回数だけステップE、F、G、およびHを繰り返すステップと
を連続して備える。
【0041】
第1の実施形態でも第2の実施形態でも、受動要素20の巻戻しは、輪61、62の歯により邪魔され、その結果、巻き戻している間、伝道部材71、72を支える受動要素20の端部は、持ち上げられるが、歯が通過するとすぐに、誘導手段により最初の傾斜に戻る。
【0042】
本発明の実施形態の1つによる回転機器100、101を、腕時計タイプの時計仕掛けの部品の中に、詳細には、輪61、62と同軸で、輪61、62と一体に回転する針40を備える時計仕掛けの部品の中に、とても申し分なく一体化することができる。しかしながら、本発明の実施形態の1つによる回転機器を使用して、針ではなく、文字盤(たとえば、日付盤または月相盤)、輪、または外縁を回転させることができる。
【0043】
添付の特許請求の範囲が規定する、本発明の内容の範囲を超えることなく、上記に開示する本発明を実施するさまざまな形態に、当業者に明白なさまざまな修正および/または改善および/または組合せを行うことができることが理解される。
【符号の説明】
【0044】
10 リニア圧電モータ
20 受動要素
30 共振器、圧電アクチュエータ
31、32 1対のアーム
33 接続ゾーン
40 針
50 誘導手段
60 輪
61 輪、つめ車
62 輪
70 ラックシステム
71、72 伝道部材
81、82 ジャンパー
91 戻し手段
92 作動手段
100、101 回転機器
310、320 自由端
610 歯止め
620 歯
R1 第1の回転方向
R2 第2の回転方向
T1 第1の移動方向
T2 第2の移動方向
図1
図2
図3
図4