(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1導体膜及び前記第2導体膜が、それぞれ平面形状で櫛型に形成されると共に、前記第1導体膜及び前記第2導体膜のそれぞれの櫛歯部分が噛み合うように形成されている、請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
前記櫛型の第1導体膜及び第2導体膜のそれぞれの櫛歯部分の先端部と前記第2導体膜又は前記第1導体膜との対向する部分の間隔が、噛み合っている前記櫛歯部分の間隔と等しく形成されることによって、前記チャネルの一部とされている、請求項3に記載の有機EL表示装置。
前記第1導体膜が九十九折に形成されており、前記第2導体膜の一部が前記第1導体膜の前記九十九折の対向する部分に挿入するように形成されている、請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照しながら本発明の一実施形態である有機EL表示装置が説明される。
図1A〜1Cに一実施形態の有機EL表示装置の一画素(厳密には、一画素中の赤、緑、青のサブ画素であるが、本明細書では、これらのサブ画素も含めて一画素ということもある)分の概略の断面図が示されている。
【0020】
本発明の一実施形態の有機EL表示装置は、
図1Aにその断面の説明図が、
図2Aにそのチャネル部分の構造の平面説明図がそれぞれ示されるように、TFT20を含む駆動回路が形成された表面を有する基板10と、駆動回路を覆うことによって基板10の表面を平坦化する平坦化膜30と、平坦化膜30の表面上に形成され、駆動回路と接続された第1電極41、第1電極41の上に形成された有機発光層43、及び有機発光層43の上に形成された第2電極44を有するOLED40と、を備えている。TFT20は、ゲート電極23、ドレイン電極26、ソース電極25、及びTFT20のチャネル21cとなる領域を含み、所定方向P(
図2A参照)に沿って延びる半導体層21を有している。また、ドレイン電極26を構成する第1導体膜26aと、ソース電極25を構成する第2導体膜25aとのそれぞれの一部26a1、26a2・・・と25a1、25a2・・・が、所定方向Pに沿って交互に並ぶように第1導体膜26a及び第2導体膜25aが配置されており、チャネル21cは、隣接する第1導体膜26aの一部26a1、26a2・・・と第2導体膜25aの一部25a1、25a2・・・との間に挟まれる半導体層21からなる。また、駆動回路と第1電極41との接続が、平坦化膜30に形成されたコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410を介して行われ、導体層410は、Ti層411及びCu層(Cu合金層)412を含んでいる。そして、平坦化膜30及びコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410の表面は、算術平均粗さRaで50nm以下に形成されている。
【0021】
すなわち、本実施形態の有機EL表示装置では、電子移動度の小さいアモルファスの半導体層を用いてOLED40の駆動用TFT20を形成するため、本発明者らが鋭意検討を重ねて検討した結果、駆動用TFTのゲート幅を大きくすることによって、大電流を得ることができ、OLED40を駆動できることを見出した。前述したように、従来は、アモルファスシリコンにレーザ光を照射することによって、低温ポリシリコンにすることで、大電流を流せるようにしていた。しかし、大きな基板にレーザ光を均一に照射することは、非常に大変であり、コストが非常に嵩むと共に、細心の注意を払ってレーザ光の照射を行っても、レーザ光の照射を大きな基板10に均一に行うことは難しく、画素によって、充分な電流が得られない場合が生じていた。その結果、色ムラ、輝度ムラなどの表示ムラの原因になっていた。
【0022】
本実施形態では、a−Siを用いて、ゲート幅を広くすることで大電流を得ているので、レーザ光の照射に基づくTFT特性のバラツキは無く、均一な特性で各画素のOLEDを駆動することができる。その結果、製造工程が非常に簡単でコストダウンを達成できると共に、品質の安定した、すなわち表示ムラのない表示品位の優れた有機EL表示装置が得られる。チャネル幅を広げる具体的な構造が以下に説明される。
【0023】
本実施形態のTFT20は、
図1A〜1Cに示されるような逆スタガ構造又はスタガ構造に形成され得る。
図1Aには、逆スタガ構造のボトムゲートの構造のTFT20が示されている。
図1A〜1Cは、
図2Aの所定方向Pに沿った一部の断面に対応する図である。なお、
図1Bは、トップゲートのスタガ構造を示した図で、
図1Cは、ポリシリコンに適した構造であるが、a−Siにも適用できる構造であり、
図1Aと同じ部分には同じ符号を付して、その説明は省略される。
【0024】
図1Aに示される例では、基板10の上に、ベースコート層11を介してゲート電極23が形成されている。この際、カソード配線27及び他の図示しない配線も同時に形成される。この上に、ゲート絶縁膜22及びa−Siからなる半導体層21、及びソース電極25を構成する第2導体膜25aとドレイン電極26を構成する第1導体膜26aとが積層して形成されている。
図1Aに示される例では半導体層21と第1導体膜26a及び第2導体膜25aとの間に、それぞれ第1導体膜26a及び第2導体膜25aとの電気的接触を良好にするため、高不純物濃度の第2半導体層が介在されている。しかし、これは必須ではなく、半導体層21の第1導体膜26a及び第2導体膜25aの接続される部分に不純物がドーピングされてもよい。本実施形態では、半導体層21のチャネル21c(
図2A参照)のチャネル幅が広くなるように形成されている。すなわち、
図2Aに示されるように、第1導体膜26a及び第2導体膜25aがそれぞれ櫛歯のように分岐した一部26a1、26a2・・・、25a1、25a2・・・が形成され、それぞれの櫛歯が噛み合うように第1導体膜26a及び第2導体膜25aが形成されている。
【0025】
図2Aは、チャネル21c部分の平面説明図であり、破線で示される領域がゲート電極23であり、半導体層21は示されていないが図示しないゲート絶縁膜を介して、ゲート電極23をカバーするように形成されている。その半導体層21と接続して第1導体膜26a、第2導体膜25aが形成されている。この積層構造は、
図1Aに示されるように逆スタガ構造でもよいし、
図1Bに示されるスタガ構造でもよい。すなわち、
図3A〜3Bに、
図2Aの第1部分26a1に沿った断面の構造例(正確な断面図ではない)が示されるように、逆スタガの構造例が
図3Aに、スタガの構造例が
図3Bに示されている。
図3A〜3Bにおいて、
図1A及び
図2Aに示される部分と同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略されている。
【0026】
図2Aに示されるように、第1導体膜26の一部である第1部分26a1、26a2、26a3、26a4と、第2導体膜25の一部である第2部分25a1、25a2、25a3、25a4とが所定の方向Pに沿って交互に配置されるように、第1導体膜26aと第2導体膜25aとが形成されている。
【0027】
すなわち、第2導体膜25aの一部である第2部分25a1と第1導体膜26aの一部である第1部分26a1との間に挟まれる半導体層21の部分がチャネル21cであり、第1部分26a1と第2部分25a2とで挟まれる半導体層21の部分がチャネル21cになる。それ以降も同じであり、交互に配置され、隣接する第1部分26anと第2部分25anとの間に挟まれる半導体層の部分にチャネル21cが形成される。従って、チャネル21cは、噛み合った櫛歯の隣接する第1部分26anと第2部分25anとの対向する部分の全ての和になる。このチャネル21cはスマートフォンのような小型の表示装置であっても、トップエミッション型にすれば、有機発光素子40の発光領域の全面に形成することができるので、チャネル21cを沢山形成することができる。その結果、チャネル幅を広くすることができるので、電子移動度が小さくても、大きな電流を流すことができる。
【0028】
このTFT20のチャネル幅Wは、1組の第2部分25a1と第1部分26a1とが対向する部分の長さをWとし、対向する部分がn個あるとすると、その全部の和になるので、W=n・wになる。一方、チャネル長Lは、第2部分25a1と第1部分26a1との間隔であり、両者の間隔を全て等しくすれば、チャネル長はLになる。従って、チャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lを大きくできる。従来、このW/Lの値が2.5であったが、本実施形態によれば、50〜500にすることができた。すなわち、W/Lが大きくなることによって、電流を増大させることができ、a−SiをLTPSにすることによる電流の増大の寄与は、20倍程度であるのに対して、本実施形態によれば、20〜200倍程度に増大することができる。
【0029】
図2Aに示される構造であれば、所定の方向に並ぶ第2部分25a1と第1部分26a1とが対向する部分(wの長さの部分)の間隔は一定で安定してチャネルとして寄与する。しかし、
図2Aに示されるようにゲート電極23が大きく形成されていれば、第2部分25a1又は第1部分26a1の先端部分と対向する第1導体膜26a及び第2導体膜25a、との間にも、それぞれチャネルが形成される。従って、この間隔も必要最小限のチャネル長Lにして形成すれば、さらにチャネル幅は広がる。しかし、第1部分26a1又は第2部分5a1の先端のエッジの部分のチャネルとしての寄与が不明確であるので、前述したW/Lには、この先端部分の寄与を含めていない。従って、実際にはさらにチャネル幅は大きくなっている。その観点から、発光領域、すなわちチャネル21cの形成領域が矩形形状である場合には、
図2Bに示されるように、その長辺に沿って第1部分26a1、第2部分25a1が形成されれば、チャネル幅の確定的な長さWを大きくすることができる。
図2Bにおいて、
図2Aと同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略される。
【0030】
図2Cは、第1導体膜26aの一部である第1部分26a1、26a2・・・が、第1導体膜26aから分岐した形状ではなく、連続して九十九折(ジグザグ)に形成され、その間に第2導体膜25aの第2部分25a1・・・が挿入されることによって、第1導体膜26aの第1部分26a1・・・と、第2導体膜25aの第2部分25a1・・・とが交互に配置される構造になっている。すなわち、
図2A等に示される櫛歯状の櫛歯を噛み合わせる構造には限らない。
図2Cにおいても、
図2Aと同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略される。
【0031】
また、前述したように、本発明者らは、有機EL表示装置の色ムラ及び/又は輝度ムラが生じる原因について鋭意検討を重ねて調べた結果、OLEDの有機発光層の面に凹凸があり、微視的には、有機発光層の表面が様々な方向に傾いて完全な平坦ではないこと、すなわち、有機発光層の表面の法線方向が表示面の法線方向に対して様々な方向に傾いていることに起因していることを見出した。すなわち、発光面に傾いている面があると、表示面と垂直方向から視認する場合、発光光が斜め方向に進む画素の光は認識し難くなり、輝度の低下又は混色の色が変化することになる。すなわち、発光する光は、その法線方向に最も輝度が大きく法線方向から傾くにつれてその輝度は低下する。スマートフォンなどの小型の表示装置では、このサブ画素の大きさは、一辺が数十μm程度と非常に小さい。そのため、僅かな凹凸があっても有機発光層の表面に凸凹のあるサブ画素では、正面に対する発光が非常に弱くなる。
【0032】
従来は、このような色ムラ及び/又は輝度ムラの対策としては、表示パネルの外縁にTFTを作り込んでおいて、製品になった後の検査で色ムラ及び/又は輝度ムラがある画素の輝度を回路によって調整することが行われている。そのため、駆動回路が複雑になるという問題もある。
【0033】
さらに、詳述すると、従来のTFTと第1電極とは、平坦化膜に形成されたコンタクト孔内にITO膜とAg膜などをスパッタリング又は真空蒸着などによって埋め込むことで接続されていた。しかし、このコンタクト孔は、直径が5μm程度と小さい。しかも、平坦化膜は、無機絶縁膜と有機絶縁膜の少なくとも2層構造で形成されており、2層を同時にエッチングしても無機絶縁膜と有機絶縁膜とでエッチングレートが異なるため、その界面で段差又はアンダーカットが生じやすい。有機絶縁膜に感光性樹脂を用いて、無機絶縁膜のコンタクト孔と有機絶縁膜のコンタクト孔を別々に形成しても、コンタクト孔のパターンが全く一致することは難しく、段差が生じやすい。このコンタクト孔にはITOとAg又はAPCなどがスパッタリング又は真空蒸着などによって埋め込まれると、孔が小さくなるにつれてコンタクト孔内に金属が入り難くなる。その結果、空隙も多くなり、TFTのソース電極とOLEDの第1電極などとの間の電気抵抗が増大する場合があることを本発明者らは見出した。このような電気抵抗が増大した画素の輝度は低下し、輝度ムラになることを本発明者らは見出した。
【0034】
また、OLEDは、前述のように、駆動回路が形成されたTFTなどの上に、表面を平坦にする平坦化膜の上に形成される。この有機絶縁膜の表面は、一応平坦になっており、従来は、これで問題はないと考えられていた。しかし、本発明者らが鋭意検討を重ねて調べた結果、有機絶縁膜表面は、非感光性の樹脂を用いても、算術平均粗さRaで、100〜300nm程度あり、従来一般的に用いられている感光性樹脂では、これよりもさらに凹凸が生じていることが分り、この表面にOLEDの電極及び有機発光層を形成すると、有機発光層の表面も同程度の表面粗さになっていた。有機発光層の表面に凸凹が生じると、微視的に見た光の進む向きは区々になる。そのため、正面から表示画面を見ると、斜め方向に進む光は視認され難くなり、色ムラ及び/又は輝度ムラになることを見出した。また、駆動回路のTFTとOLEDの第1電極とを接続するコンタクト孔の内部の導体層が低抵抗に形成されていないこと、すなわち、接続部分に抵抗があるために、電流が減り、輝度が低下することを見出した。
【0035】
そこで、本発明者らは、コンタクト孔30a内に埋め込む導体層410をスパッタリングなどによって形成されるTi層411と、このTi層411をシード層として電気めっきによって形成されるCu層412とで形成することによって、コンタクト孔30a内に完全に導体を埋め込むことができ、低抵抗にすることができることを見出した。すなわち、Ti層411がコンタクト孔30a内にスパッタリングなどによって形成されても、コンタクト孔30a内に金属膜が形成される初期の段階であるため、コンタクト孔30aも大きく均一に形成され、その後は、電気めっきによるCu層412であるため、コンタクト孔30aが小さくなってもめっき液が浸み込みやすく、全面に均一にCu層412も形成される。なお、Ti層411は、CuがTFT20に侵入するのを防止する機能を有している。また、Cu層412を構成するCuは、例えば、Cu−Moの組成を有するCu合金であってもよい。
【0036】
このTi層411の形成は、スパッタリングなどによって形成されるため、コンタクト孔30aの内部のみならず、有機絶縁膜32の表面にも全面に形成される。そのため、有機絶縁膜32の表面の導体層410は除去される必要がある。しかし、Cu層412は化学的に安定しているため、エッチングをし難い。一方、前述したように、この有機絶縁膜32の表面の平坦度も輝度ムラなどの表示ムラの原因になっていることを本発明者らは見出した。そのため、この有機絶縁膜32の上に形成されたCu層412を研磨によって除去し、さらに、Cu層412及びTi層411の研磨によって露出する有機絶縁膜32も研磨する。その際、前述したように微細な凹凸のある表面を表面粗さが算術平均粗さRaで50nm以下となるようにコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた部分を含む導体層410の表面及び有機絶縁膜32の表面を研磨することによって、前述した表面粗さによる色ムラ及び/又は輝度ムラを抑制することができる。換言すると、本実施形態では、コンタクト孔30aの内部に埋め込む金属がTi層411とCu層412で形成され、さらに、平坦化膜30及びコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410の表面が研磨され、算術平均粗さRaで50nm以下に形成されていることに特徴がある。
【0037】
表面粗さは、小さいほど好ましいが、前述した特許文献1に示されるように、20nm以下という平坦度にする必要はなく、算術平均粗さRaで20nm以上であっても、接続抵抗が安定して十分に小さければ、色ムラ又は輝度ムラが殆ど現れないことを見出した。すなわち、表面粗さは小さいほど好ましいので下限は設定されないが、表面粗さを小さくするには、研磨作業が大変になるので、算術平均粗さで20nm以上で、50nm以下の表面粗さにすることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、さらに、平坦化膜30にコンタクト孔30aが形成され、OLED40の第1電極41を構成するAg又はAPCとの接触抵抗が低いCu又はCu合金を含む導体層410が、コンタクト孔30aに埋め込まれているので、TFT20とOLED40との間の抵抗が低減される。これによって、有機EL表示装置の消費電力が低減される。
【0039】
(有機EL表示装置の構造)
次に、
図1Aに示される有機EL表示装置が、具体的に説明される。
図1A〜1Cに、一実施形態の有機EL表示装置の一画素(厳密には、一画素中の赤、緑、青のサブ画素であるが、本明細書では、これらのサブ画素も含めて一画素ということもある)分の概略の断面図が示されている。
【0040】
基板10は、ボトムエミッション型の有機EL表示装置の場合には、有機発光層43で発光した光を透過させる必要があり、透光性の材料で、絶縁性の基板が用いられる。具体的には、ガラス基板又はポリイミドなどの樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムが用いられることによって、有機EL表示装置を可撓性にすることができ、曲面などに貼り付けることも可能になる。
【0041】
基板10がガラス基板の場合は必要ないが、基板10がポリイミドのような樹脂フィルムの場合には、シリコンなどからなる半導体層を形成しにくいため、基板10の表面に、ベースコート層11が形成される。ベースコート層11としては、例えばプラズマCVD法によってSiO
2(酸化シリコン)を厚さ500nm/SiN
x(窒化シリコン)を厚さ50nm/SiO
2を厚さ250nm程度の積層体が形成される。
【0042】
ベースコート層11の表面に、TFT20を含む駆動回路が形成されている。
図1A〜1Cでは、陰極配線27のみが示されているが、その他のゲート配線及び信号配線なども同様に形成されている。
図1A〜1Cでは、OLED40を駆動するTFT20のみが示されているが、その他のスイッチングTFTなど、他のTFTも同様に形成されている。この駆動回路は、トップエミッション型の有機EL表示装置の場合は、OLED40の発光領域の下方の全面に亘って形成され得る。しかし、ボトムエミッション型の有機EL表示装置では、OLED40の発光領域の下方にTFTなどを形成することはできないため、TFTなどは、発光領域と平面的に重ならない部分に形成される必要がある。この場合、OLED40の周縁部のTFT又は配線が形成される領域と、発光領域の下のTFTなどが形成されない領域との境界部に傾斜面ができるため、発光領域の周縁部で凹凸ができ、表示品位を低下させる原因になる。従って、ボトムエミッション型でも、同様の平坦度が求められる。
【0043】
TFT20は、
図1Aに示される構造では、ゲート電極23の上に、ゲート絶縁膜22を介して、半導体層21が形成されている。ゲート電極23は、陰極配線27などと同時に、厚さ250nm程度のMoなどの成膜後にパターニングされることによって、形成されている。ゲート電極23及びベースコート層11の表面に設けられたゲート絶縁膜22は、厚さ50nm程度のSiO
2などからなり、ゲート絶縁膜22の表面に設けられた半導体層21は、a−Siによって厚さ200nm程度に形成されている。
図1Aに示される例では、半導体層21の表面に高不純物濃度a−Siからなる第2半導体層211が形成されている。第2半導体層211は、半導体層21とソース電極25を構成する第2導体膜25a及びドレイン電極26を構成する第1導体膜26aとの電気的接続を良好にするために設けられている。従って、第2半導体層211を形成しないで、半導体層21の該当領域をドーピングなどによって高不純物濃度にしてもよい。これら全体の表面に、Ti/Al/Tiなどからなる導体膜を成膜後にパターニングすることによって、ソース電極25を構成する第2導体膜25a及びドレイン電極26を構成する第1導体膜26aが形成されている。第1導体膜26a及び第2導体膜25aは、前述したように、第1部分26a1、・・・及び第2部分25a1、・・が交互に配置されるように形成される。
【0044】
後述する平坦化膜30及び第2導体膜25aが露出するようにコンタクト孔30aが形成された後に、コンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410が形成され、導体層410によって、ソース電極25を構成する第1導体膜25aは、有機発光素子40の第1電極41と接続されている。ドレイン電極26を構成する第1導体膜26aは、図示されていない部分で駆動回路に接続されている。
【0045】
図1Bに示される例では、まず、ベースコート層11の表面に、第1導体膜25a及び第2導体膜25aが形成され、ベースコート層11、第1導体膜25a、及び第2導体膜25aの表面に半導体層21が形成され、半導体層21の表面にゲート絶縁膜22が形成され、ゲート絶縁膜22の表面にゲート電極23が形成されることによって、TFT20が形成されている。
【0046】
図1Cに示される例は、LTPSを用いたTFTの構造と同じであるが、a−Siでも同様の構成にすることができる。すなわち、ベースコート層11上にa−Siからなる半導体層21が形成され、ソース電極25、ドレイン電極26とそれぞれ接続される部分が高濃度にドーピングされることによって、ソース21s及びドレイン21dが形成され、その間に低濃度にドーピングされたチャネル21cが形成されている。その上にゲート絶縁膜22とゲート電極23が形成され、その上には300nm厚程度のSiO
2膜と300nm厚程度のSiN
x膜からなる層間絶縁膜24が形成されている。この層間絶縁膜24を介してコンタクト孔24a内に導体膜を埋め込んでソース21sと接続され、ソース電極25とされる第2導体膜25a及びドレイン21dと接続され、ドレイン電極26とされる第1導体膜26aが形成されている。なお、層間絶縁膜24が形成される前に、ソース21s及びドレイン21dの電極接続部には、B(ボロン)イオンがドーピングされてp
+化され、アニールによってドーパントが活性化されている。
【0047】
TFT20を含む駆動回路の表面にバリア層としての厚さ200nm程度のSiN
xなどからなる無機絶縁膜31と、例えばポリイミド又はアクリル樹脂からなる有機絶縁膜32を厚さ2μm程度成膜した平坦化膜30が形成されている。この平坦化膜30にコンタクト孔30aが形成され、その中に導体層410が形成されている。このコンタクト孔30aは無機絶縁膜31と有機絶縁膜32を一括して形成されてもよいし、後述されるように、無機絶縁膜31に第1コンタクト孔30a1を形成した後に感光性の有機絶縁膜32を形成してから露光、現像によって第2コンタクト孔30a2が重なるように形成され、コンタクト孔30aとされてもよい。有機絶縁膜32は、後述するように、表面が、算術平均粗さRaで50nm以下となるように、CMP研磨によって平坦化されている。また、後述するように、算術平均粗さRaは20nm以上であることが好ましい。
【0048】
導体層410は、厚さ25〜100nm程度のTi層411と、厚さ1000〜2000nm厚程度のCu層412とで形成されている。Ti層411は、スパッタリングなどで全面に形成されているので、コンタクト孔30a内に段差があっても隙間なく形成される。Cu層412は、Ti層411を電流供給層(シード層)として電気めっきされることによって、形成されている。従って、コンタクト孔30a内に段差があっても、切れ目なく連続して低抵抗の導体層410になる。なお、Cu層412を構成するCuは、例えば、上述の組成を有するCu合金であってもよい。有機EL表示装置の第2電極(陰極)を陰極配線27と接続するための第2コンタクト45も同様に、Ti層411とCu層412とで形成されている。
【0049】
この平坦にされた平坦化膜30及びコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410の表面にAg膜413がスパッタリングなどによって厚さ100nm程度に成膜され、さらに、Ag膜413の表面にITO膜414が成膜された後に、フォトリソグラフィ工程によってパターニングされることによってOLED40の第1電極(陽極)41が形成されている。このAgは、導体層410のCuやCu合金とは非常に馴染みがよく、良好に接合されるので、これらの間の接触抵抗が低減される。従って、TFT20とOLED40との間の抵抗も低減されるので、有機EL表示装置の消費電力が低減される。また、Agなどは光反射性が大きいため、OLED40で発光した光を基板10と反対面に反射させるので、トップエミッション型として輝度の大きい表示装置にし得る。なお、Ag膜413を構成するAgは、APCであってもよく、上述のAgと同様の効果を得ることができる。また、ITO膜413を構成するITOは、透光性で仕事関数が5eV程度の材料で、有機発光層43との関係で正孔の注入性を向上させる。そのため、AgまたはAPCからなる第1電極41の表面には厚さ10nm程度のITO膜が積層形成されている。なお、第1電極41は、ボトムエミッション型の場合には、ITO膜が厚さ300nm〜1μm程度に形成される。その第1電極41の周縁部に各画素を区画すると共に、第1電極41と第2電極44との絶縁を図るための絶縁材料からなる絶縁バンク42が形成されており、その絶縁バンク42によって囲まれる第1電極41の上に有機発光層43が積層されている。
【0050】
有機発光層43は、絶縁バンク42に囲われて露出する第1電極41の上に積層される。この有機発光層43は、
図1A〜1Cなどでは一層で示されているが、種々の材料が積層されて複数層で形成される。また、この有機発光層43は水分に弱く全面に形成してからパターニングをすることができないため、蒸着マスクを用いて、蒸発又は昇華させた有機材料を選択的に必要な部分のみに蒸着することによって形成される。又は印刷によって有機発光層43が形成されてもよい。
【0051】
具体的には、例えば第1電極(陽極電極)41に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる場合がある。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料により形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が、例えば赤色、緑色に対してはAlq
3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)に赤色又は緑色の有機物蛍光材料がドーピングされて形成される。また、青色系の材料としては、DSA(ジスチルアリレン)系の有機材料が用いられる。一方、図示しないカラーフィルタで着色される場合には、発光層は全てドーピングすることなく同じ材料で形成され得る。発光層の上には、さらに電子の注入性を向上させると共に、電子を安定に輸送する電子輸送層が、Alq
3などにより形成される。これらの各層がそれぞれ厚さ数十nm程度ずつ積層されることにより有機発光層43の積層膜が形成されている。なお、この有機発光層43と第2電極44との間にLiF(フッ化リチウム)やLiq(8−ヒドロキシキノリナートリチウム)などの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられることもある。これは有機層ではないが、本明細書では、有機層によって発光させるものとして、有機発光層43内に含めている。
【0052】
前述したように、有機発光層43の積層膜のうち、発光層は、R、G、Bの各色に応じた材料の有機材料が堆積されないで、カラーフィルタによってカラーの表示装置にされてもよい。すなわち、発光層が同じ有機材料で形成され、図示しないカラーフィルタにより発光色が特定されてもよい。また、正孔輸送層、電子輸送層などは、発光性能を重視すれば、発光層に適した材料で別々に堆積されることが好ましい。しかし、材料コストの面を勘案して、R、G、Bの2色又は3色に共通して同じ材料で積層される場合もある。
【0053】
LiF層などの電子注入層などを含む全ての有機発光層43の積層膜が形成された後に、その表面に第2電極44が形成されている。具体的には、第2電極(陰極)44が有機発光層43の上に形成される。第2電極44は、全画素に亘って、共通で連続して形成されている。また、第2電極44は、平坦化膜30に形成された第2コンタクト45及びTFT20の絶縁膜22、24に形成された第1コンタクト28を介して、陰極配線27に接続されている。また、第2電極44は、平坦化膜30に形成された第2コンタクト45を介して、陰極配線27に接続されている。なお、
図1Cの例では、第2コンタクト45と陰極配線27との間に、TFT20の絶縁膜22、24に形成された第1コンタクト28を介在させている。第2電極44は透光性の材料、例えば、薄膜のMg−Ag(マグネシウム−銀合金)共晶膜により形成され、水分で腐食しやすいので、その表面に設けられる被覆層46によって被覆されている。陰極材料は仕事関数の小さい材料が好ましく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属などが用いられ得る。Mg(マグネシウム)は、仕事関数が3.6eVと小さいので好ましいが、活性で安定しないので、仕事関数が4.25eVのAgが10質量%程度の割合で共蒸着されている。Al(アルミニウム)も仕事関数は4.25eV程度と小さく、下地にLiFが用いられることによって十分に使用し得る。そのため、ボトムエミッション型では、この第2電極44にAlを厚く形成し得る。
【0054】
被覆層46は、例えば、SiN
x、SiO
2などの無機絶縁膜や、TFE(テトラフルオロエチレン)などの有機絶縁膜からなり、一層、又は二層以上の積層膜によって形成され得る。例えば一層の厚さが0.1μm〜0.5μm程度で、好ましくは二層程度の積層膜で形成される。この被覆層46は、異なる材料で多層に形成されるのが好ましい。被覆層46は、複数層で形成されることによって、ピンホールなどができても、複数層でピンホールが完全に一致することは殆ど無く、外気から完全に遮断する。前述のように、この被覆層46は、有機発光層43及び第2電極44を完全に被覆するように形成される。なお、2層の無機絶縁膜の間に有機絶縁材料を備えていてもよい。
【0055】
(有機EL表示装置の製造方法)
(実施例1)
次に、
図1Aに示される有機EL表示装置の製造方法が、
図4A〜4Bのフローチャート及び
図5A〜5Gの製造工程の図を参照しながら説明される。
【0056】
まず、
図4Aのフローチャート及び
図5Aに示されるように、基板10の上に、TFT20を含む駆動回路が形成される(
図4AのS1)。具体的には、
図4Bにフローチャートが示されるように、基板10の上にベースコート層11が形成される。ベースコート層11は、例えばプラズマCVD法によって、SiO
2層を500nm程度の厚さに形成し、その上にSiN
x層を50nm程度の厚さに形成することによって下層を積層し、さらにその上層としてSiO
2層を250nm程度の厚さに積層することによって形成される(
図4BのS11)。
【0057】
その後、ベースコート層11の表面に、Moなどの金属膜をスパッタリングなどによって形成してパターニングすることで、ゲート電極23、陰極配線27、及びその他のゲート配線、信号配線などの配線が形成される(S12)。
【0058】
その後に、これら全体の表面に、ゲート絶縁膜22が成膜される(S13)。ゲート絶縁膜22は、プラズマCVD法によって、SiO
2層を厚さ50nm程度成膜することで形成される。
【0059】
その後、ゲート絶縁膜22の表面に、プラズマCVD法によってa−Si層からなる半導体層21が形成される(S14)。この半導体層21は、例えば350℃程度で、45分間程度のアニール処理によって脱水素化の処理が行われる。
【0060】
その後、半導体層21の表面に、ソース電極25を構成する第2導体膜25a及びドレイン電極26を構成する第1導体膜26aと接続される部分に高不純物濃度のSiからなる第2半導体層211が厚さ10nm程度に形成される(S15)。第2半導体層を形成しないで、半導体層21の第1導体膜26a及び第2導体膜25aが接続される部分に不純物がドーピングされてもよい。
【0061】
その上に、導体膜がスパッタリングなどの方法で、厚さ200nmから800nm程度に形成され、パターニングすることによって、第1導体膜26a及び第2導体膜25aが形成される(S16)。第1導体膜26a及び第2導体膜25aは、スパッタリングなどの後にパターニングすることによって、Ti膜を300nm程度と、Al膜を300nm程度積層し、その上にTiを100nm程度積層することによって、例えば、
図2Aに示されるような平面形状に各々形成される。そして、第1導体膜26a及び第2導体膜25aとの間に挟まれた第2半導体層211が、エッチングによって除去される。
【0062】
以上の工程によって、TFT20を含む駆動回路、すなわちバックプレーンと呼ばれる部分が形成される。
【0063】
その後、
図5Bに示されるように、駆動回路の表面に無機絶縁膜31を形成する(
図4Aに戻りS2)。無機絶縁膜31は、例えばプラズマCVD法によって、SiN
xを厚さ200nm程度に形成される。これは、有機絶縁膜32の成分がTFT20の方に侵入するのを防止するバリア層として機能する。そして、無機絶縁膜31の表面に有機絶縁膜32を形成する(S3)。有機絶縁膜32は、TFT20などの形成によって表面に凹凸のある部分に埋め込むもので、液状の樹脂を塗布することで有機絶縁膜32の表面が平坦化しやすい。塗布法としては、スリットコート又はスピンコートなどの方法があるが、両方を合せたスリット・アンド・スピンコート法が好ましい。この有機絶縁膜32は厚さ2μm程度になるように形成され、例えばポリイミド樹脂とか、アクリル樹脂が用いられ得る。これらの樹脂に光重合開始剤を混入させた感光性樹脂でもよい。この例については、後述される。しかし、光重合開始剤を含まない非感光性樹脂であれば、純度が高く、しかも表面平滑性が高いので好ましい。特に、アクリル樹脂が、安価であるため好ましい。これら無機絶縁膜31と有機絶縁膜32によって、平坦化膜30が構成される。
【0064】
その後、この平坦化膜30にTFT20に達するコンタクト孔30aが形成される(S4)。このコンタクト孔30aの形成は、前述したコンタクト孔24aなどと同様に、レジストマスクを形成して、ドライエッチングなどのエッチングによって行われる。なお、この平坦化膜30のように、無機絶縁膜31と有機絶縁膜32とが混在する層を纏めてエッチングをする場合には、両者のエッチングレートが異なるので、特にドライエッチングによってエッチングすることで、両者の界面に段差が生じ難いので好ましい。段差が生じると、コンタクト孔30a内に埋め込む金属が完全に埋め込まれず、ソース電極25などとの接触抵抗が増大しやすいという問題がある。しかし、本実施形態では、Ti層411の薄い層だけなので、段差があっても電気めっきによって十分に埋め込まれる。この際、陰極配線27と接続する第2コンタクト45を形成するためのコンタクト孔30bも同様に形成される。
【0065】
次に、
図5Cに示されるように、コンタクト孔30aの内部及び有機絶縁膜32の表面にTi層411、及びCu層412からなる導体層410が形成される(S5)。具体的には、スパッタリングなどの方法によって、Ti層411が前述した厚さに形成され、その後、Ti層411を電流供給層(シード層)として電気めっきによってCu層412が形成される。なお、上述のように、Cu層412を構成するCuは、Cu合金に置き換えられ得る。
【0066】
その後、
図5Dに示されるように、有機絶縁膜32の表面上の導体層410が研磨によって除去され、さらに有機絶縁膜32の表面がCMP研磨されることによって平坦化される(S6)。CuやCu合金は化学的に安定しているため、エッチングなどをし難い。そのため、機械的研磨によって有機絶縁膜32の表面に形成された導体層が除去される。その結果、コンタクト孔30a内に埋め込まれた導体層410の表面と有機絶縁膜32の表面とがほぼ面一になると共に、有機絶縁膜32の表面が微視的に見ても平坦化される。
【0067】
この導体層410の研磨は、酸化セリウム(CeO
2)、シリカ(SiO
2)又はアルミナ(Al
2O
3)などの微粒子からなる研磨剤、及びpH調整剤などを水又はアルコールに混入させた研磨スラリーを用いて研磨されることによって行われ、有機絶縁膜32上の導体層410は除去される。シリカを用いる場合、SiCl
4(四塩化ケイ素)を原料として、火炎中にて酸化及び脱塩がされたヒュームドシリカであることが好ましい。このような研磨スラリーを用いてCMP研磨されることによって、
図3Dに示されるように、表面粗さが算術平均粗さRaで50nm以下の平坦面にされている。この際、有機EL表示装置の陰極(第2電極)を陰極配線27と接続するための第2コンタクト45も同様にTi層411とCu層412とで形成されている。
【0068】
すなわち、有機絶縁膜32は、液状の樹脂をスリット・アンド・スピンなどの方法で塗布して乾燥させるため、表面が平坦になりやすく、前述したように、この表面は、算術平均の表面粗さRaで100〜300nm程度に形成されている。しかし、前述したように、この有機絶縁膜32の塗布だけの平坦度では、色ムラ及び/又は輝度ムラが現れ、発光特性を十分に満足し得ないことを本発明者らは見出した。そのため、CMP研磨によって、その表面の平坦度を算術平均粗さRaで50nm以下になるように研磨している。この平坦度は小さいほど好ましいが、特許文献1に示されるような20nm以下という非常に平坦性を要求されるものではない。50nm程度以下であれば、色ムラ及び/又は輝度ムラが問題になるほどには現れなかった。前述したように、Cu層412は化学的に安定しているため、機械的研磨で行うことが好ましいが、有機絶縁膜32の研磨は、上述の研磨剤を用いたCMPで行うことが好ましい。また、表面粗さは小さいほど好ましいので、下限は設定されないが、研磨作業が大変になるので、20nm以上で、50nm以下の表面粗さにすることが好ましい。
【0069】
その後、
図5Eに示されるように、有機絶縁膜32の表面にコンタクト孔30aの内部に形成された導体層410と接続されるようにOLED40の第1電極41が形成される(S7)。具体的には、例えばスパッタリングなどによって、Ag膜413を厚さ100nm程度積層した下層と、厚さ10nm程度のITO膜414からなる上層が成膜された後、レジスト膜の形成とフォトリソグラフィ工程によってマスクを形成し、ウェットエッチングなどのエッチングを行うことによって、第1電極41が形成される。その結果、コンタクト孔30aの内部の導体層410のCu層412と密着したAg膜413が形成されるので、導体層410と第1電極41との接触抵抗が低減される。さらに、Ag膜413の表面に、ITO膜414が形成されることで、この上に形成される有機発光層43とも整合性の良い第1電極41が形成される。なお、Ag膜413を構成するAgは、APCに置き換えられ得る。
【0070】
その後、
図5Fに示されるように、第1電極41の上に有機発光層43が形成される(S8)。具体的には、第1電極41の周縁部に各画素を区画すると共に、陰極と陽極の接触を防止するための絶縁バンク42が形成される。絶縁バンク42は、SiO
2などの無機絶縁膜でもよいし、ポリイミド又はアクリル樹脂などの有機絶縁膜でもよく、第1電極41の所定の場所が露出するように形成される。絶縁バンク42の高さは、厚さ1μm程度に形成される。前述したように、有機発光層43は、各種の有機材料が積層されるが、有機材料の積層は、例えば真空蒸着によって行われ、その場合には、蒸着マスクの開口を通してR、G、Bなどの所望のサブ画素を開口した蒸着マスクを介して形成される。有機発光層43の表面には、電子の注入性を向上させるLiFなどの層が形成され得る。なお、蒸着によらないで、インクジェット法などによる印刷によっても形成され得る。第1電極41にAgを用いるのは、有機発光層43で発光した光を反射させてトップエミッション型として使用するためである。
【0071】
その後、
図5Gに示されるように、有機発光層43の上に、第2電極(陰極)44が形成される(S9)。第2電極44は、薄膜のMg−Ag共晶膜を蒸着などによって全面に形成し、パターニングすることによって陰極とされる。なお、この第2電極44は、第2コンタクト45上にも形成されることで第2コンタクト45、第1コンタクト28を介して陰極配線27に接続されている。このMg−Ag共晶膜は、MgとAgの融点が異なるので、別々のるつぼから蒸発させて成膜時に共晶化する。Mgが90質量%程度でAgが10質量%程度の割合で、厚さ10〜20nm程度に形成される。
【0072】
この第2電極44の上には、第2電極44及び有機発光層43を水分又は酸素などから護る被覆層46が形成される。この被覆層46は、水分又は酸素に弱い第2電極44及び有機発光層43を保護するため、水分などを吸収し難い、SiO
2、SiN
xなどの無機絶縁膜がCVD法などによって形成される。この被覆層46は、好ましくは、その端部が無機絶縁膜31などの無機膜と密着するように形成される。無機膜同士の接合であれば、密着性良く接合されるが、有機膜とでは、完全な密着性のよい接合を得にくいからである。従って、有機絶縁膜32の一部を除去して、その下層の無機絶縁膜31と接合させることが好ましい。そうすることによって、水分などの浸入を完全に防止し得る。
【0073】
このような工程を経て、
図1Aに示される有機EL発光装置が製造される。本実施例では、第1電極41との接合部におけるコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410の表面も前述の研磨が実施されているため、その表面粗さは50nm以下となっている。そのため、コンタクト孔30a及び導体層410と平面視で重なる領域に有機発光層43を形成したとしても、表示ムラを生じさせることがない。したがって、携帯機器などに搭載され、駆動回路を形成するスペースが少ない小型の有機EL表示装置であっても、従来よりも狭いピッチで、有機発光素子を配置することができるようになる。
【0074】
(実施例2)
図4A〜4B及び
図5A〜5Gに示される実施例1の製造方法は、平坦化膜30が無機絶縁膜31と有機絶縁膜32が連続して形成され、一括してコンタクト孔30aが形成されたが、有機絶縁膜32として、光重合開始剤を含む感光性の有機材料からなる有機絶縁膜32が形成され、無機絶縁膜31が形成された後に、第1コンタクト孔30a1が形成され、その後に感光性の有機絶縁膜32が形成され、露光と現像によって第2コンタクト孔30a2が形成され、コンタクト孔30aとされてもよい。その例が、
図6A〜6Bに示されている。
【0075】
具体的には、前述の
図5Aに示される工程は、実施例1と同様に行われる。その後、
図6Aに示されるように、無機絶縁膜31が形成された後に、コンタクト孔30aの形成箇所に第1コンタクト孔30a1が形成される。この第1コンタクト孔30a1は、前述したコンタクト孔30aの形成と同様に、レジスト膜を形成した後フォトリソグラフィ工程によってレジスト膜に開口が形成され、そのレジスト膜をマスクとして、ドライエッチングなどによってエッチングすることで形成される。感光性の有機絶縁膜が形成されると第2コンタクト孔30a2の形成が容易であるが、光重合開始剤の添加によって、有機絶縁膜のレベリングの効果が低下するので、表面粗さが粗くなる。しかし、その表面がCMP研磨されるため、問題は生じない。
【0076】
その後、
図6Bに示されるように、有機絶縁膜32が形成され、無機絶縁膜31の第1コンタクト孔30a1の位置に、露光と現像によって第2コンタクト孔30a2が形成される。その結果、第2コンタクト孔30a2は第1コンタクト孔30a1と連続してコンタクト孔30a、30bになる。その結果、
図5Bに示される構造と同じになり、以降の工程は実施例1と同じになる。そのため、その説明は省略される。本実施例においても、第1電極41との接合部におけるコンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層410の表面に研磨が実施され、その表面粗さは50nm以下となっているので、コンタクト孔30a及び導体層410と平面視で重なる領域に有機発光層43を形成したとしても、表示ムラを生じさせることがない。したがって、携帯機器などに搭載され、駆動回路を形成するスペースが少ない小型の有機EL表示装置であっても、従来よりも狭いピッチで、有機発光素子を配置することができるようになる。
【0077】
[まとめ]
本発明の態様1に係る有機EL表示装置は、薄膜トランジスタを含む駆動回路が形成された表面を有する基板と、前記駆動回路を覆うことによって前記基板の前記表面を平坦化する平坦化膜と、前記平坦化膜の表面上に形成され、前記駆動回路と接続された第1電極、前記第1電極の上に形成された有機発光層、及び前記有機発光層の上に形成された第2電極を有する有機発光素子と、を備え、前記薄膜トランジスタは、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極、及び前記薄膜トランジスタのチャネルとなる領域を含み、所定方向に沿って延びる半導体層を有し、前記ドレイン電極を構成する第1導体膜と、前記ソース電極を構成する第2導体膜とのそれぞれの一部が、前記所定方向に沿って交互に並ぶように前記第1導体膜及び前記第2導体膜が配置されており、前記チャネルは、隣接する前記第1導体膜の一部と前記第2導体膜の一部との間に挟まれる前記半導体層であり、前記駆動回路と前記第1電極との接続が、前記平坦化膜に形成されたコンタクト孔の内部に埋め込まれた導体層を介して行われ、前記導体層が、チタン層及び銅層又は銅合金層を含み、前記平坦化膜の表面が、算術平均粗さRaで50nm以下に形成されている。
【0078】
本発明の態様1の構成によると、薄膜トランジスタのW/Lが増加するので、電流駆動能力が高い薄膜トランジスタが得られる一方、第1導体膜と第2導体膜無機の形状を反映した複雑な形状の凹凸が、薄膜トランジスタを含む駆動回路の表面に形成される。しかしながら、算術平均粗さRaで50nm以下の表面の平坦化膜が形成されるので、有機発光素子の下地の凹凸が、微視的にもなくなる。その結果、微視的に斜め方向に進む光が抑制され、色ムラ及び/又は輝度ムラの発生を抑制し、有機EL表示装置の表示品位を大幅に向上させることができる。また、平坦化膜に形成されたコンタクト孔に、銅層又は銅合金層を含む導体層を埋め込んでいるので、エッチングなどをし難い銅又は銅合金を微細に形成することができる。これによって、銅層又は銅合金層を介して、薄膜トランジスタと有機発光素子とを接続することができるので、有機EL表示装置の消費電力が低減される。
【0079】
本発明の態様2に係る有機EL表示装置では、上記態様1において、前記コンタクト孔の内部に埋め込まれた導体層の表面が、研磨によって前記算術平均粗さRaに形成されていてもよい。
【0080】
本発明の態様2の構成によると、埋め込まれた導体層及び所望の算術平均粗さRaを簡便に得ることができる。
【0081】
本発明の態様3に係る有機EL表示装置では、上記態様1又は2において、前記第1電極が、銀膜又はAPC膜とITO膜を含んでもよい。
【0082】
本発明の態様3の構成によると、導電体と第1電極との接触抵抗が低減される。これによって、有機EL表示装置の消費電極が低減される。
【0083】
本発明の態様4に係る有機EL表示装置では、上記態様3において、前記銀膜又は前記APC膜は、前記銅層又は前記銅合金と接続されており、前記ITO層が前記有機発光層との界面に形成されてもよい。
【0084】
本発明の態様4の構成によると、銀膜又はAPC膜が、銅層又は銅合金と接続されるので、導電体と第1電極との接触抵抗が低減される。これによって、有機EL表示装置の消費電極が低減される。また、ITO層が、有機発光層との界面に形成されているので、有機発光層とも整合性の良い第1電極となる。
【0085】
本発明の態様5に係る有機EL表示装置では、上記態様1〜4のいずれか1態様において、前記第1導体膜及び前記第2導体膜が、それぞれ平面形状で櫛型に形成されると共に、前記第1導体膜及び前記第2導体膜のそれぞれの櫛歯部分が噛み合うように形成されていてもよい。
【0086】
本発明の態様5の構成によると、薄膜トランジスタのW/Lがさらに増加するので、さらに電流駆動能力が高い薄膜トランジスタが得られる。
【0087】
本発明の態様6に係る有機EL表示装置では、上記態様5において、前記発光素子の発光領域が矩形形状に形成され、かつ、前記薄膜トランジスタが前記発光領域の下層に形成されており、前記第1導体膜の一部及び前記第2導体膜の一部の対向する部分が、前記矩形形状の長辺に沿って形成されていてもよい。
【0088】
本発明の態様6の構成によると、限られた半導体層の専有面積の中で、第1導体膜及び第2導体膜を矩形形状に合わせて簡単に配置できるので、W/Lの大きい薄膜トランジスタを効率的に形成することができる。また、有機発光素子と立体的に重なるように、薄膜トランジスタが配置されるので、画素を小さく形成することができる。これによって、有機EL発光装置を小型に製造することができる。
【0089】
本発明の態様7に係る有機EL表示装置では、上記態様1〜6のいずれか1態様において、隣接する前記第1導体膜の一部と前記第2導体膜の一部とで挟まれる領域が複数個あり、前記半導体層がアモルファス半導体からなり、前記複数個の隣接する前記第1導体膜の一部と前記第2導体膜の一部との対向する部分の長さの前記複数個の和をW、前記対向する部分の間隔をLとするとき、W/Lが50以上で、500以下であってもよい。
【0090】
本発明の態様7の構成によると、有機発光素子を電流駆動させるのに十分な電流駆動能力を有する薄膜トランジスタを得ることができる。
【0091】
本発明の態様8に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板の上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路を形成する工程と、前記駆動回路の表面に、無機絶縁膜及び有機絶縁膜を形成する工程と、前記有機絶縁膜及び前記無機絶縁膜に、前記薄膜トランジスタに達するコンタクト孔を形成する工程と、前記コンタクト孔の内部及び前記有機絶縁膜の表面にチタン層及び銅層又は銅合金層を形成することによって、導体層を形成する工程と、前記有機絶縁膜の表面の前記導体層を研磨によって除去し、さらに前記有機絶縁膜の表面を研磨することによって平坦化する工程を、前記導体層の表面に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上に有機発光層を形成する工程と、前記有機発光層の上に第2電極を形成する工程と、を含み、前記薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、チャネルとする領域を含み、所定方向に沿って延びる半導体層、及び前記半導体層と接続して形成されるドレイン電極とする第1導体膜とソース電極とする第2導体膜との積層構造によって形成され、前記第1導体膜と、前記第2導体膜とは、それぞれの一部が、前記所定方向に沿って交互に並んで配置されるように形成され、前記チャネルは、隣接する前記第1導体膜の一部と前記第2導体膜の一部との間に挟まれる前記半導体層である。
【0092】
本発明の態様8の構成によると、薄膜トランジスタのW/Lが増加するので、電流駆動能力が高い薄膜トランジスタが得られる一方、第1導体膜と第2導体膜無機の形状を反映した複雑な形状の凹凸が、薄膜トランジスタを含む駆動回路の表面に形成される。しかしながら、有機発光素子の下地が研磨されるので、その表面の凹凸が、微視的にもなくなる。その結果、微視的に斜め方向に進む光が抑制され、色ムラ及び/又は輝度ムラの発生を抑制し、有機EL表示装置の表示品位を大幅に向上させることができる。また、平坦化膜に形成されたコンタクト孔に、銅層又は銅合金層を含む導体層を埋め込んでいるので、エッチングなどをし難い銅又は銅合金を微細に形成することができる。これによって、銅層又は銅合金層を介して、薄膜トランジスタと有機発光素子とを接続することができるので、有機EL表示装置の消費電力が低減される。
【0093】
本発明の態様9に係る有機EL表示装置の製造方法では、上記態様8において、前記第1電極の形成工程において、前記銅層又前記銅合金層の表面に、銀膜又はAPC膜を成膜した後、ITO膜を成膜してからパターニングしてもよい。
【0094】
本発明の態様9の構成によると、導電体のCu層と、第1電極とAg膜が密着するので、導電体と第1電極との間の接触抵抗が低減される。これによって、有機EL表示装置の消費電極が低減される。
【0095】
本発明の態様10に係る有機EL表示装置の製造方法では、上記態様8又は9において前記半導体層が、アモルファス半導体からなり、前記半導体層と前記第1導体膜及び前記第2導体膜との間に高不純物濃度の半導体層を介在させてもよい。
【0096】
本発明の態様10の構成によると、高不純物濃度の半導体層によって、アモルファス半導体からなる半導体層と第1導体膜及び前記第2導体膜との間の接触抵抗が低減されるので、有機EL表示装置の消費電極が低減される。