【文献】
Chemical Research in Toxicology,2013年,Vol.26,No.4,p.608-615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術的な課題に鑑み、本発明は、より良好なプロテアソーム阻害活性および/またはより良好な薬力学的/薬物動態学的特性を有する、プロテアソーム阻害剤、医薬組成物およびそれらの使用を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これに対して、本発明の技術構成は以下の通りである。
式(I)で表される置換ボロン酸化合物、またはその結晶形、薬学的に許容される塩、水和物あるいは溶媒和物である、プロテアソーム阻害剤。
【0010】
【化1】
【0011】
ただし、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲンであり、;
追加の条件は、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15の中の少なくとも1つが、重水素または重水素に置換されたものである。
【0012】
本発明のさらなる改良として、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、重水素または水素である。
【0013】
本発明のさらなる改良として、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、重水素または水素である。
【0014】
本発明のさらなる改良として、R
6は重水素である。
【0015】
本発明のさらなる改良として、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、重水素または水素である。
【0016】
本発明のさらなる改良として、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、重水素または水素である。
【0017】
本発明のさらなる改良として、前記した化合物は、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0018】
【化2】
【0019】
このような技術構成を採用する場合、薬物分子において重水素の形状および体積は水素とほぼ同じであるため、薬物分子における水素が重水素で選択的に置換されると、重水素化薬物は一般的に、本来の生物活性および選択性を保持する。同時に、炭素−重水素結合は、炭素−水素結合よりも安定であり、それによって、一部の薬物の吸収、分布、代謝および排泄などの特性に直接影響を及ぼし、薬物の有効性、安全性および忍容性を改善できることを実験で確認した。
【0020】
好ましくは、重水素は、重水素に置換された位置における重水素同位体含有量が、少なくとも天然の重水素同位体含有量(0.015%)より多く、より好ましくは30%超、さらに好ましくは50%超、さらに好ましくは75%超、さらに好ましくは95%超、さらに好ましくは99%超である。
【0021】
具体的には、本発明において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15の重水素に置換された各位置における重水素同位体の含有量は、少なくとも5%であり、好ましくは10%超、より好ましくは15%超、より好ましくは20%超、より好ましくは25%超、より好ましくは30%超、より好ましくは35%超、より好ましくは40%超、より好ましくは45%超、より好ましくは50%超、より好ましくは55%超、より好ましくは60%超、より好ましくは65%超、より好ましくは70%超、より好ましくは75%超、より好ましくは80%超、より好ましくは85%超、より好ましくは90%超、より好ましくは95%超、より好ましくは99%超である。
【0022】
別の好ましい実施形態では、式(I)の化合物におけるR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15の少なくとも1個のRが重水素を含み、好ましくは2個のR、より好ましくは3個のR、より好ましくは4個のR、より好ましくは5個のR、より好ましくは6個のR、より好ましくは7個のR、より好ましくは8個のR、より好ましくは9個のR、より好ましくは10個のR、より好ましくは11個のR、より好ましくは12個のR、より好ましくは13個のR、より好ましくは14個のR、より好ましくは15個のRが重水素を含む。
【0023】
別の好ましい実施形態では、前記の化合物が重水素化されていない化合物を含まない。
【0024】
また、本発明は、薬学的に許容される担体と、および上記のようなプロテアソーム阻害剤、またはその結晶型、薬学的に許容できる塩、水和物または溶媒化合物、立体異性体、プロドラッグもしくは同位体異性体とを含む医薬組成物を開示する。
【0025】
本発明のさらなる改良として、前記の薬学的に許容される担体としては、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、呈味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、崩壊剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒又は乳化剤の少なくとも1種を含む。
【0026】
本発明のさらなる改良として、前記の医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、軟膏剤、乳剤、懸濁剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、ミクロスフェア、またはエアゾールなどである。
【0027】
本発明の医薬組成物の典型的な投与経路としては、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、経腸投与、または局所投与、経皮投与、吸入投与、非経口投与、舌下投与、膣内投与、鼻腔内投与、眼内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与が挙げられるが、これらに限定されない。経口投与または注射投与が好ましい。
【0028】
本発明の医薬組成物は、通用の混合法、溶解法、造粒法、糖衣錠剤を製造する方法、細粉砕法、乳化法、凍結乾燥法などの本分野で周知の方法により製造することができる。
【0029】
さらに、本発明は、薬学的に許容される担体と、前記のようなプロテアソーム阻害剤、またはその結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物とを混合して、医薬組成物となる工程を含む医薬組成物の調製方法を提供する。
【0030】
本発明の化合物は、プロテアソーム酵素阻害活性を有するから、プロテアソームを阻害したり、そのペプチド基質の含有量を増加させたりすることで治療される疾患や病症に罹患する患者を治療するための治療剤として有用であると期待される。従って、本発明の一態様は、患者に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、プロテアソームの阻害によって治療される疾患や病症に罹患する患者を治療する方法に関する。本発明の別の態様は、治療有効量の本発明化合物を患者に投与することを含む心血管疾患の治療方法に関する。本発明の別の態様は、哺乳動物にプロテアソーム阻害量の本発明の化合物を投与することを含む、哺乳動物における高血圧の治療法またはプロテアソームの阻害方法に関する。
【0031】
また、本発明は、プロテアソーム阻害剤としての上記のような置換ボロン酸化合物の使用、すなわちプロテアソームにより介される疾患の薬物の調製に用いられる本発明の化合物の使用を開示する。
【0032】
本発明の前記のプロテアソームにより介される疾患には、炎症性病症(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、変形性関節症、皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬))、血管増殖性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、再狭窄)、眼球増殖性疾患(例えば、糖尿病性網膜症)、良性増殖性病変(例えば、血管腫症)、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、組織および臓器の拒絶反応)、および感染に関連する炎症(例えば、免疫反応)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、運動ニューロン疾患、神経因性疼痛、トリプレットリピート病(tripletrepeat disorder)、星状細胞腫、およびアルコール性肝臓疾患による神経変性、虚血性損傷(例えば、脳卒中)、ならびに悪液質(例えば、様々な生理学的および病理学的状態(例えば、神経損傷、絶食、発熱、アシドーシス、HIV感染、癌、および特定の内分泌疾患)に伴う筋肉タンパク質分解の促進)を含む。
【0033】
本発明の化合物は特に癌の治療に好適である。本明細書で使用される「癌」という用語は、制御されていないまたは調節不全の細胞増殖、細胞分化の減少、周囲組織への不適切な侵入能力、あるいは異所性部位で新たな増殖を形成する能力を特徴とする細胞障害を指す。「癌」という用語には、充実性腫瘍や血液系腫瘍が含まれるが、これに限定されない。「癌」という用語は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液、血管の疾患を含む。「癌」という用語には、原発癌と転移癌も含まれる。前記の癌の腫瘍細胞は、白血病細胞、骨髄腫細胞、非小細胞肺癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞のうちの1つ以上であることが好ましい。
【0034】
本明細書に開示された範囲内で、本発明の上述の各技術的特徴および以下(例えば実施例)に具体的に説明される技術的特徴は、互いに組み合わされて新しいまたは好ましい技術構成を形成できることが理解されるべきである。紙面スペースに限りがあるため、ここではいちいち説明しない。
【0035】
本明細書において、特に説明のない限り、「ハロゲン」とは、F、Cl、BrおよびIを指す。より好ましくは、ハロゲン原子がF、ClおよびBrから選択される。
【0036】
本明細書において、特に説明のない限り、「重水素化」とは、化合物または官能基における水素の1個以上が重水素に置換されていることを意味し、重水素化は一置換、二置換、多置換または完全置換であっても良い。「1つ以上の重水素化」および「1回以上の重水素化」という用語は、同じ意味で使用される。
【0037】
本明細書において、特に説明のない限り、「非重水素化された化合物」とは、重水素原子の割合が天然重水素同位体の含有量(0.015%)より多くない化合物を指す。
【0038】
薬学的に許容される塩としては、無機塩および有機塩がある。一種類の好ましい塩は、本発明の化合物と酸と形成された塩である。塩の形成に適する酸として、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機酸;及び、プロリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。別の一種類の好ましい塩は、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩或いはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩或いはカルシウム塩)、アンモニウム塩(例えば、メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン塩、ヒドロキシエチルアミン塩、ジヒドロキシエチルアミン塩、トリヒドロキシアミン塩、及びモルホリン、ピペラジン、リジンからそれぞれ形成されたアミン塩などの低級アルカノールアンモニウム塩および他の薬学的に許容されるアミン塩)などの本発明の化合物をアルカリで形成された塩である。
【0039】
「溶媒和物」という用語とは、本発明の化合物が溶媒分子と配位して特定の割合で形成した錯体を指す。「水和物」とは、本発明の化合物が水と配位して形成した錯体を指す。
【発明の効果】
【0040】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、本発明の化合物がプロテアソームに対して優れた阻害性を示し、重水素化という技術により、生体における化合物の代謝を変化させ、化合物がより良好な薬物動態パラメータ特性を持たせる。この場合、投与量を変更し、長時間作用型製剤として、適用性を改善することができる。重水素による化合物中の水素原子の置換では、重水素の同位体効果によって、動物の体内における化合物の薬物濃度を増加させ、薬物の有効性を向上させることができる。また、重水素による化合物中の水素原子の置換では、特定の代謝生成物が阻害されることにより、化合物の安全性を増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の式(I)で表される構造の化合物の調製方法をさらに具体的に説明するが、これらの具体的な方法は本発明を限定するものではない。また、本発明の化合物は、本明細書に記載された、又は本分野で公知された様々な合成方法を組み合わせることによって容易に調製することができ、そのような組み合わせは、当業者にとって明らかである。
【0042】
実施例1 (R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)−2,2−d2−アセトアミド)−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−1)の調製
【0046】
工程1:2,2−d2−グリシン(化合物3)の合成。
フラスコにグリシン(200mg,2.66mmol)とサリチルアルデヒド(0.04mL,0.376mmol)を加え、10mLの重水素化酢酸を添加して溶解させ、窒素ガス保護下で100℃に加熱し、攪拌して2時間反応させ、室温まで冷却し、濃縮して酢酸を除去した後、2mLの重水を加え、室温下で15分間攪拌し、さらに少量の水を加えて希釈させ、活性炭を加えて0.5時間脱色し、ろ過して、濾液を濃縮乾固させた。少量のメタノールを添加し、攪拌して白色固体を析出させ、ろ過して、真空下で乾燥させた後、收率88%で生成物176.7mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=78.1(M+1)
+。
【0047】
工程2:2,5−[(ジクロロベンゾイル)アミノ]−d2−酢酸(化合物5)の合成。
フラスコに化合物3(131mg,1.7mmol)と水酸化ナトリウム(212.5mg,5.31mmol)を加え、2mLの水で溶解させ、氷浴中で2,5−ジクロロベンゾイルクロリド(176.7mg,0.85mmol)のテトラヒドロフラン溶液1mLを滴下した後、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、希塩酸でPHを酸性に調整し、白色固体を析出させ、ろ過し、氷水で洗浄させ、真空下で乾燥させた後、收率94.5%で生成物200mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=250.3(M+1)
+。
【0048】
工程3:2−メチルプロピルボロン酸−(+)−ピナンジオールエステル(化合物8)の合成。
フラスコにイソブチルボロン酸(510.5mg,5mmol)と(1S,2S,3R,5S)−(+)−2,3−ピナンジオール(850.65mg,5mmol)を加え、5mLのn-ヘプタンで溶解させ、室温下で攪拌して2時間反応させ、TCLで反応の完了を検出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮して、真空下で乾燥させ、收率93.14%で生成物1.1gを得た。
【0049】
工程4:(S)−1−クロロ−3−メチルブチルボロン酸−(+)−ピナンジオールエステル(化合物9)の合成。
フラスコに化合物8(1.1g,4.66mmol)を加え、6.5mLの無水テトラヒドロフランと1.54mLの無水ジクロロメタンで溶解させ、窒素ガス保護下で−78℃に冷却し、2Mのリチウムジイソプロピルアミド溶液(LDA,4.66mL,9.32mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して2時間反応させた。さらに、1Mの塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液(8.16mL,8.16mmol)をゆっくり滴下した後、低温で2時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、少量の10%希硫酸を添加して反応をクエンチし、有機相を分離し、水相をn−ヘキサンで抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空下で乾燥させ、收率98.9%で生成物1.31gを得た。LC−MS(APCI):m/z=285.5(M+1)
+。
【0050】
工程5:(R)−1−(ヘキサメチルジシラニル)アミノ−3−メチルブチルボロン酸ピナンジオールエステル(化合物10)の合成。
フラスコに化合物9(1.35g,4.75mmol)を加え、10mLの無水テトラヒドロフランを加えて溶解させ、窒素ガス保護下で−40℃に冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS,5.7mL,5.7mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して1時間反応させ、さらに室温まで昇温し、1時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、シリカゲルのプラグを通してろ過し、濾液を蒸発乾固させて收率97.7%で生成物1.9gを得た。そのまま次の工程に用いた。
【0051】
工程6:L−ロイシンボロン酸−(+)−ピナンジオールエステルトリフルオロ酢酸塩(化合物11)の合成。
干燥したフラスコに、化合物10(1.7g,4.15mmol)を加え、6mLのジイソプロピルエーテルを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−15℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(TFA,1.89g,16.6mmol)をゆっくり滴下した後、温度を維持して2時間反応させた後、室温まで昇温し、一晩反応させた。ろ過してろ過ケーキをジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させ、收率39.5%で白色固体620mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=266.2(M+1)
+。
【0052】
工程7:2,5−ジクロロ−N−[2−({(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メチレン−1,3,2−ベンゾジオキサボロラン−2−イル]ブチル}アミノ)−2−オキサ−1,1−d2−エチル]ベンズアミド(化合物12)の合成。
フラスコに、化合物5(100mg,0.402mmol)および化合物11(152.3mg,0.402mmol)を加え、窒素ガス保護下でO−ベンゾトリアゾール−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU,142mg,0.44mmol)を加え、2mlの無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加して溶解させ、氷浴中でN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,156mg,1.21mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、少量の水を加えて希釈し、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して收率98.2%で生成物196mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=497.5(M+1)
+。
【0053】
工程8:(R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)−2,2−d2−アセトアミド)−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−1)の合成。
フラスコに、化合物12(196mg,0.395mmol)とイソブチルボロン酸(104.8mg,1.03mmol)を加え、2mLのメタノールと2mLのn-ヘキサンを添加して溶解させ、1Nの塩酸(0.5mL,0.5mmol)を加え、窒素ガス保護下で室温で攪拌して一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、メタノール層を分離し、n-ヘプタンで3回洗浄し、減圧下で濃縮乾固させ、少量の2Nの水酸化ナトリウムを加えて溶解させ、ジクロロメタンで3回洗浄し、水相を濃塩酸でPH2〜3に調整し、さらにジクロロメタンで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、乾燥させ、秤量して收率59.4%で85mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=345.2(M+1−H
2O)。
1H NMR(400mHz,DMSO)δ8.93(s,1H),8.71(d,J=7.8Hz,1H),7.65(s,1H),7.55(d,J=1.3Hz,2H),2.64(s,1H),1.61(dd,J=13.3,6.5Hz,1H),1.40-1.32(m,1H),1.26(s,1H),0.85-0.80(m,6H)。
【0054】
実施例2 (R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)アセトアミド)−1−d−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−2)の調製
【0058】
工程1:2,5−[(ジクロロベンゾイル)アミノ]酢酸(化合物13)の合成。
フラスコに、グリシン(1.125g,15mmol)と水酸化ナトリウム(750mg,18.75mmol)を加え、7.5mLの水を添加して溶解させ、氷浴中で2,5−ジクロロベンゾイルクロリド(623.7mg,3.0mmol)の1mLのテトラヒドロフラン溶液を滴下した後、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、希塩酸でPHを酸性に調整し、白色固体を析出させ、ろ過して、氷水で洗浄し、真空下で乾燥させ、收率91.1%で生成物675mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=248.3(M+1)
+。
【0059】
工程2:(S)−1−クロロ−1−d−3−メチルブチルボロン酸−(+)−ピナンジオールエステル(化合物14)の合成。
フラスコに、化合物8(1.1g,4.66mmol)を加え、6.5mLの無水テトラヒドロフラン(THF)と1.54mLの重水素化ジクロロメタンを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−78℃に冷却し、2MのLDA溶液(4.66mL,9.32mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して2時間反応させた。さらに、1Mの塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液(8.16mL,8.16mmol)をゆっくり滴下した後、低温を維持して2時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、少量の10%希硫酸を添加して反応をクエンチし、有機相を分離し、水相をn−ヘキサンで抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空下で乾燥させ、收率97.0%で生成物1.29gを得た。LC−MS(APCI):m/z=286.2(M+1)
+。
【0060】
工程3:(R)−1−(ヘキサメチルジシラニル)アミノ−1−d−3−メチルブチルボロン酸ピナンジオールエステル(化合物15)の合成。
フラスコに、化合物14(1.29g,4.52mmol)を加え、9mLの無水テトラヒドロフランを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−40℃に冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(5.4mL,5.4mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して1時間反応させ、さらに室温まで昇温し、1時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、シリカゲルのプラグを通してろ過し、濾液を蒸発乾固させて、收率86.3%で生成物1.6gを得た。そのまま次の工程に用いた。
【0061】
工程4:1−d−L−ロイシンボロン酸−(+)−ピナンジオールエステルトリフルオロ酢酸塩(化合物16)の合成。
干燥したフラスコに、化合物15(1.6g,3.8mmol)を加え、6mLのジイソプロピルエーテルを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−15℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(1.75g,15.4mmol)をゆっくり滴下した後、温度を維持して2時間反応させ、その後、室温まで昇温し、一晩反応させた。ろ過して、ろ過ケーキをジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させ、收率38.9%で白色固体561mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=267.7(M+1)
+。
【0062】
工程5:2,5−ジクロロ−N−[2−({(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メチレン−1,3,2−ベンゾジオキサボロラン−2−イル]−1−d−ブチル}アミノ)−2−オキサエチル]ベンズアミド(化合物17)の合成。
フラスコに、化合物16(100mg,0.405mmol)と化合物13(154mg,0.405mmol)を加え、窒素ガス保護下でTBTU(143mg,0.46mmol)を加え、2mLの無水DMFを添加して溶解させ、氷浴中でDIPEA(157mg,1.21mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、。少量の水を加えて希釈し、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して收率73.8%で生成物148mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=496.5(M+1)
+。
【0063】
工程6:(R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)アセトアミド)−1−d−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−2)の合成。
フラスコに、化合物17(148mg,0.3mmol)をイソブチルボロン酸(79.63mg,0.78mmol)を加え、2mLのメタノールと2mLのn-ヘキサンを添加して溶解させ、1Nの塩酸(0.4mL,0.4mmol)を加え、窒素ガス保護下で室温で攪拌して一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、メタノール層を分離し、n-ヘプタンで3回洗浄し、減圧下で濃縮乾固させ、少量の2Nの水酸化ナトリウムを加えて溶解させ、ジクロロメタンで3回洗浄し、水相を濃塩酸でPH2〜3に調整し、さらにジクロロメタンで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、乾燥させ、秤量して收率56.3%で61mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=344.3(M+1−H
2O)。
1H NMR(400mHz,DMSO)δ8.94(t,J=5.9Hz,1H),8.69(s,1H),7.65(s,1H),7.55(d,J=1.4Hz,2H),4.02(d,J=5.8Hz,2H),1.62(dt,J=13.3,6.7Hz,1H),1.35(dd,J=13.0,6.7Hz,1H),1.25(d,J=7.2Hz,1H),0.86-0.79(m,6H)。
【0064】
実施例3 (R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)アセトアミド)−2,2−d2−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−3)の調製
【0068】
工程1:1,1−d2−2−メチルプロパノール(化合物19)の合成。
イソ酪酸エチル(580.8mg,5mmol)を無水THF(20mL)に溶解し、氷浴中でLiAlD
4(230.9mg,5.5mmol)を少しずつ加え、室温まで昇温し、一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、氷浴中で硫酸ナトリウム・十水和物を加えて反応をクエンチし、ろ過で不溶物を除去し、濾液を濃縮して收率64.73%で生成物246mgを得た。そのまま次の工程に用いた。
【0069】
工程2:1,1−d2−ブロモイソブタン(化合物20)の合成。
化合物19(850mg,11.17mmol)と四臭化炭素(3.7g,11.17mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解し、氷浴中でトリフェニルホスフィン(PPh
3,2.93g,11.17mmol)を少しずつ加え、窒素ガス保護下、低温で攪拌して1時間反応させ、さらに室温まで昇温し、1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、少量の水を加えて反応をクエンチし、水相をジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して收率56.2%で生成物865mgを得た。
【0070】
工程3:1,1−d2−イソブチルボロン酸(化合物21)の合成。
化合物20(120mg,0.87mmol)を5mLの無水THFに溶解し、窒素ガス保護下で削り状のマグネシウム(104.3mg,4.35mmol)と触媒量のヨウ素(1粒)を加え、50℃に加熱し、攪拌して3時間反応させた。室温まで冷却した後、グリニャール試薬をシリンジで取り出し、−15℃でホウ酸トリメチル(180.8mg,1.74mmol)の5mL無水THFにゆっくり滴下し、窒素ガス保護下で攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、室温まで昇温し、希塩酸を加えてPHを2〜3に調整し、15分間攪拌し、有機相を分離し、水相を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して收率70.7%で生成物64mgを得た。
【0071】
工程4:1,1−d2−2−メチルプロピルボロン酸−(+)−ピナンジオールエステル(化合物22)の合成。
フラスコに、化合物21(110mg,1.06mmol)および(1S,2S,3R,5S)−(+)−2,3−ピナンジオール(179.8mg,1.06mmol)を加え、3mLのn-ヘプタンを添加して溶解させ、室温下で攪拌して2時間反応させ、TCLで反応の完了を検出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過、濃縮して、真空下で乾燥させて收率94.2%で生成物238mgを得た。
【0072】
工程5:(S)−1−クロロ−2,2−d2−3−メチルブチルボロン酸−(+)−ピナンジオールエステル(化合物23)の合成。
フラスコに化合物22(238mg,1.0mmol)を加え、2mLの無水テトラヒドロフランと0.5mLの無水ジクロロメタンを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−78℃に冷却し、2MのLDA溶液(1.0mL,2.0mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して2時間反応させた。さらに、1Mの塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液(1.75mL,1.75mmol)をゆっくり滴下した後、低温を維持して2時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、少量の10%希硫酸を添加して反応をクエンチし、有機相を分離し、水相をn−ヘキサンで抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空下で乾燥させて收率92.6%で生成物265mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=287.7(M+1)
+。
【0073】
工程6:(R)−1−(ヘキサメチルジシラニル)アミノ−2,2−d2−3−メチルブチルボロン酸ピナンジオールエステル(化合物24)の合成。
フラスコに化合物23(265mg,0.93mmol)を加え、3mLの無水テトラヒドロフランを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−40℃に冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.11mL,1.11mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して1時間反応させ、さらに室温まで昇温し、1時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、シリカゲルのプラグを通してろ過し、濾液を蒸発乾固させて收率100%で生成物382.5mgを得た。そのまま次の工程に用いた。
【0074】
工程7:L−d2−ロイシンボロン酸−(+)−ピナンジオールエステルトリフルオロ酢酸塩(化合物25)の合成。
干燥したフラスコに化合物24(382.5mg,0.93mmol)を加え、3mLのジイソプロピルエーテルを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−15℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(424.1mg,3.72mmol)をゆっくり滴下した後、温度を維持して2時間反応させた後、室温まで昇温し、一晩反応させた。ろ過して、ろ過ケーキをジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させて收率57.1%で白色固体202mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=268.2(M+1)
+。
【0075】
工程8:2,5−ジクロロ−N−[2−({(1R)−2,2−d2−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メチレン−1,3,2−ベンゾジオキサボロラン−2−イル]ブチル}アミノ)−2−オキサエチル]ベンズアミド(化合物26)の合成。
フラスコに、化合物13(100mg,0.402mmol)および化合物25(152.4mg,0.402mmol)を加え、窒素ガス保護下でTBTU(142mg,0.44mmol)を加え、2mLの無水DMFを添加して溶解させ、氷浴中でDIPEA(156mg,1.21mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、少量の水を加えて希釈し、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して收率91.9%で生成物183mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=497.4(M+1)
+。
【0076】
工程9:(R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)アセトアミド)−2,2−d2−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−3)の合成。
フラスコに、化合物26(183mg,0.369mmol)およびイソブチルボロン酸(97.9mg,0.96mmol)を加え、2mLのメタノールと2mLのn-ヘキサンを添加して溶解させ、1Nの塩酸(0.5mL,0.5mmol)を加え、窒素ガス保護下で室温で攪拌して一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、メタノール層を分離し、n-ヘプタンで3回洗浄し、減圧下で濃縮乾固させ、少量の2Nの水酸化ナトリウムを加えて溶解させ、ジクロロメタンで3回洗浄し、水相を濃塩酸でPH2〜3に調整し、さらにジクロロメタンで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、乾燥させ、秤量して收率56.4%で75mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=345.2(M+1−H
2O)。
1H NMR(400mHz,DMSO)δ8.94(t,J=5.9Hz,1H),8.69(s,1H),7.65(s,1H),7.55(d,J=1.4Hz,2H),4.02(d,J=5.8Hz,2H),2.64(s,1H),1.26(m,1H),0.86-0.79(m,6H)。
【0077】
実施例4 (R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)−2,2−d2−アセトアミド)−1−d−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−4)の調製
【0081】
工程1:2,5−ジクロロ−N−[2−({(1R)−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メチレン−1,3,2−ベンゾジオキサボロラン−2−イル]−1−d1−ブチル}アミノ)−2−オキサ−1,1−d2−エチル]ベンズアミド(化合物27)の合成。
フラスコに、化合物5(100mg,0.402mmol)および化合物16(154mg,0.402mmol)を加え、窒素ガス保護下でTBTU(142mg,0.44mmol)を加え、2mLの無水DMFを添加して溶解させ、氷浴中でDIPEA(156mg,1.21mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、少量の水を加えて希釈し、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して收率99%で生成物199mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=498.2(M+1)
+。
【0082】
工程2:(R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)−2,2−d2−アセトアミド)−1−d−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−4)の合成。
フラスコに、化合物27(203mg,0.408mmol)およびイソブチルボロン酸(108.4mg,1.06mmol)を加え、2mLのメタノールと2mLのn-ヘキサンを添加して溶解させ、1Nの塩酸(0.5mL,0.5mmol)を加え、窒素ガス保護下で室温で攪拌して一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、メタノール層を分離し、n-ヘプタンで3回洗浄し、減圧下で濃縮乾固させ、少量の2Nの水酸化ナトリウムを加えて溶解させ、ジクロロメタンで3回洗浄し、水相を濃塩酸でPH2〜3に調整し、さらにジクロロメタンで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、乾燥させ、秤量して收率64.8%で96mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=346.4(M+1−H
2O)。
1H NMR(400mHz,DMSO)δ8.93(s,1H),8.71(d,J=11.4Hz,1H),7.65(s,1H),7.55(d,J=1.3Hz,2H),1.61(dd,J=13.3,6.6Hz,1H),1.35(dd,J=13.0,7.0Hz,1H),1.25(d,J=7.1Hz,1H),0.83(dd,J=6.5,1.9Hz,6H)。
【0083】
実施例5 (R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)アセトアミド)−1−d−2,2−d2−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−5)の調製
【0087】
工程1:(S)−1−クロロ−1−d1−2,2−d2−3−メチルブチルボロン酸−(+)−ピナンジオールエステル(化合物28)の合成。
フラスコに、化合物22(238mg,1.0mmol)を加え、2mLの無水テトラヒドロフランと0.5mLの重水素化ジクロロメタンを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−78℃に冷却し、2MのLDA溶液(1.0mL,2.0mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して2時間反応させた。さらに、1Mの塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液(1.75mL,1.75mmol)をゆっくり滴下した後、低温を維持して2時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、少量の10%希硫酸を添加して反応をクエンチし、有機相を分離し、水相をn−ヘキサンで抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空下で乾燥させて收率69.7%で生成物200mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=288.1(M+1)
+。
【0088】
工程2:(R)−1−(ヘキサメチルジシラニル)アミノ−1−d1−2,2−d2−3−メチルブチルボロン酸ピナンジオールエステル(化合物29)の合成。
フラスコに、化合物28(200mg,0.70mmol)を加え、3mLの無水テトラヒドロフランを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−40℃に冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.84mL,0.84mmol)をゆっくり滴下した後、攪拌して1時間反応させ、さらに室温まで昇温し、1時間反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、シリカゲルのプラグを通してろ過し、濾液を蒸発乾固させて收率100%で生成物288.6mgを得た。そのまま次の工程に用いた。
【0089】
工程3:L−d3−ロイシンボロン酸−(+)−ピナンジオールエステルトリフルオロ酢酸塩(化合物30)の合成。
干燥したフラスコに化合物29(288.6mg,0.7mmol)を加え、3mLのジイソプロピルエーテルを添加して溶解させ、窒素ガス保護下で−15℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(319.2mg,2.8mmol)をゆっくり滴下した後、温度を維持して2時間反応させた後、室温まで昇温し、一晩反応させた。ろ過して、ろ過ケーキをジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させて收率35.6%で白色固体95mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=269.3(M+1)
+。
【0090】
工程4:2,5−ジクロロ−N−[2−({(1R)−1−d1−2,2−d2−3−メチル−1−[(3aS,4S,6S,7aR)−3a,5,5−トリメチルヘキサヒドロ−4,6−メチレン−1,3,2−ベンゾジオキサボロラン−2−イル]ブチル}アミノ)−2−オキサエチル]ベンズアミド(化合物31)の合成。
フラスコに、化合物13(56mg,0.226mmol)および化合物30(86.4mg,0.226mmol)を加え、窒素ガス保護下でTBTU(80mg,0.25mmol)を加え、2mLの無水DMFを添加して溶解させ、氷浴中でDIPEA(87.6mg,0.34mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、攪拌して1時間反応させた。TLCで反応の完了を検出した後、少量の水を加えて希釈し、酢酸エチルで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して收率78.6%で生成物88mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=498.4(M+1)
+。
【0091】
工程5:(R)−(1−(2−(2,5−ジクロロベンズアミド)アセトアミド)−1−d−2,2−d2−3−メチルブチル)ボロン酸(化合物I−5)の合成。
フラスコに、化合物31(88mg,0.177mmol)およびイソブチルボロン酸(47mg,0.46mmol)を加え、1mLのメタノールと1mLのn-ヘキサンを添加して溶解させ、1Nの塩酸(0.3ml,0.3mmol)を加え、窒素ガス保護下、室温で攪拌して一晩反応させ、TLCで反応の完了を検出した後、メタノール層を分離し、n-ヘプタンで3回洗浄し、減圧下で濃縮乾固させ、少量の2Nの水酸化ナトリウムを加えて溶解させ、ジクロロメタンで3回洗浄し、水相を濃塩酸でPH2〜3に調整し、さらにジクロロメタンで3〜4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、乾燥させ、秤量して收率50.1%で32mgを得た。LC−MS(APCI):m/z=346.4(M+1−H
2O)。
1H NMR(400mHz,DMSO)δ8.94(t,J=5.9Hz,1H),8.69(s,1H),7.65(s,1H),7.55(d,J=1.4Hz,2H),4.02(d,J=5.8Hz,2H),1.26(m,1H),0.86-0.79(m,6H)。
【0092】
実施例6:生物活性実験
(1)20Sプロテアソームアッセイ
384ウェルの黒色マイクロタイタープレートにおいて、DMSOに溶解した1μLの試験化合物に、ヒトPA28アクチベーター(Boston Biochem、最終濃度12nm)およびAc−WLA−AMC(β5選択性基質)(最終濃度15μm)を含むアッセイ緩衝液25μLを37℃で添加し、さらにヒト20Sプロテアソーム(Boston Biochem、最終濃度0.25nm)を含むアッセイ緩衝液25μLを37℃で添加した。アッセイ緩衝液は、20mMのHEPES、0.5mMのEDTAおよび0.01%のBSAからなり、pHの値は7.4であった。BMG Galaxyプレートリーダー(37℃、380nm励起、460nm発光、20ゲイン)を用いて反応を追跡した。0%阻害(DMSO)および100%阻害(10μMのボルテゾミブ)対照群に基づいて阻害パーセントを算出した。
上記の測定法により本発明の化合物のプロテアソーム阻害作用を測定したところ、本発明の化合物がプロテアソームに対する阻害活性を示すことが観察された。本発明の化合物のプロテアソームに対する阻害活性のIC
50値は50nm未満である。
【0093】
(2)代謝安定性評価
ミクロソーム実験:ヒト肝臓ミクロソーム:0.5mg/mL,Xenotech;ラット肝臓ミクロソーム:0.5mg/mL,Xenotech;補酵素(NADPH/NADH):1mM,Sigma Life Science;塩化マグネシウム:5mM、100mMのリン酸塩緩衝液(pH7.4)。
ストック溶液の調製:一定量の実施例化合物の粉末を精確に秤量し、それぞれDMSOで5mMに溶解した。
リン酸塩緩衝液(100mM,pH7.4)の調製:予め0.5Mのリン酸二水素カリウム150mLと0.5Mのリン酸水素二カリウム溶液700mLとを混合し、更に0.5Mのリン酸水素二カリウム溶液で混合液のpHを7.4に調整し、使用前に超純水で5倍に希釈し、塩化マグネシウムを加えて、100mMのリン酸カリウム、3.3mMの塩化マグネシウムを含む、pHが7.4であるリン酸塩緩衝液(100mM)を得た。
NADPH再生系溶液(6.5mMのNADP、16.5mMのG−6−P、3U/mLのG−6−P D、3.3mMの塩化マグネシウムを含む)を調製し、使用前に湿った氷上に置いた。
【0094】
停止液の調製:50ng/mLの塩酸プロプラノロールと200ng/mLのトルブタミド(内部標準)を含むアセトニトリル溶液である。25057.5μLのリン酸塩緩衝液(pH7.4)を50mL遠心管に入れ、ヒト肝臓ミクロソーム812.5μLをそれぞれ添加し、均一に混合して、タンパク質濃度が0.625mg/mLである肝臓ミクロソーム希釈液を得た。25057.5μLのリン酸塩緩衝液(pH7.4)を50mL遠心管に入れ、SDラット肝臓ミクロソーム812.5μLをそれぞれ添加し、均一に混合して、タンパク質濃度が0.625mg/mLの肝臓ミクロソーム希釈液を得た。
サンプルのインキュベーション:対応する化合物のストック溶液を、70%アセトニトリルを含む水溶液でそれぞれ0.25mMに希釈し、作業溶液として使用した。398μLのヒト肝臓ミクロソーム或いはラット肝臓ミクロソームの希釈液を96ウェルインキュベーションプレート(N=2)にそれぞれ加え、0.25mMの作業溶液2μLにそれぞれ添加して均一に混合した。
【0095】
代謝安定性アッセイ:予め冷却した停止液300μLを96ウェルディープウェルプレートの各ウェルに添加し、氷上に置いて停止プレートとした。96ウェルインキュベーションプレートおよびNADPH再生系を37℃の水浴に置いて、100rpmで振とうし、5分間プレインキュベートした。インキュベーションプレートの各ウェルから80μLのインキュベーション溶液を取出し、停止プレートに加え、均一に混合し、NADPH再生系溶液20μLを補充して0分間サンプルとした。インキュベーションプレートの各ウェルに80μLのNADPH再生系溶液を更に添加し、反応を開始し、時間を計り始めた。対応する化合物の反応濃度は1μMで、タンパク濃度は0.5mg/mLである。反応の10分間、30分間、90分間に、それぞれ100μLの反応液を採取し、停止プレートに加え、3分間ボルテックス操作を行い、反応を停止させた。5000×g、4℃の条件下で停止プレートを10分間遠心分離した。予め100μLの蒸留水を入れた96ウェルプレートに、100μLの上清を加え、均一に混合し、LC−MS/MSを用いてサンプルを分析した。
データ分析:LC−MS/MSシステムによって対応する化合物および内部標準のピーク面積を検出し、化合物と内部標準のピーク面積の比を計算した。時間に対する化合物残存量の百分率の自然対数をプロットすることによって、傾きを測定して、以下の式に従ってt
1/2及びCL
intを計算した。ここで、V/Mは1/タンパク濃度に等しい。
【0097】
本発明の化合物と重水素化されていない化合物を同時に試験して比較し、ヒトとラット肝臓ミクロソームの代謝安定性を評価した。代謝安定性の指標である半減期と肝臓内因性クリアランスを表に示す。表では、重水素化されていない化合物Ixazomibを対照品とした。表に示されるように、ヒトとラット肝臓ミクロソームの実験において、Ixazomibと比べて、本発明の化合物は代謝安定性を有意に改善することができる。
【0099】
(3)ラットの薬物動態実験
実験目的:ラットにIxazomib、実施例の化合物を投与した後、本発明の化合物の薬物動態学的挙動を研究する。
実験動物:
種および系:SD ラットの等級:SPF級
性別および数量:オス、6匹
重量範囲:180〜220g(実際の重量範囲は187〜197g)
供給:Shanghai Sippr−BK Laboratory Animal Co. Ltd
実験室および動物の証明書番号:SCXK(Shanghai)2013−0016
【0100】
実験プロセス:
血液サンプルを採取する前に、2Mのフッ化ナトリウム溶液(エステラーゼ阻害剤)20μLをEDTA−K2抗凝固剤チューブに予め添加し、80℃のオーブンで乾燥させた後、4度の冷蔵庫に保管した。
ラット(オス、体重187〜197g)をランダムに2グループに分け、実験の1日前の午後から一晩絶食させたが、水を自由に飲ませ、薬物を投与した後、4時間に食物を与えた。AグループにはIxazomib 3mg/kg、Bグループには実施例の化合物3mg/kgを投与した後、15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、5時間、8時間および10時間後にそれぞれラット眼窩静脈から100〜200μL程度採血し、EDTA−K2で抗凝固化した0.5mLのエッペンドルフチューブ(Eppendorf Tube)に入れ、直ちに均一に混合し、抗凝固化した後、できるだけ早くチューブを穏やかに5〜6回反転させて均一に混合した。その後、採血した後、アイスボックスに置き、血液サンプルを30分間内に4000rpm、10分間、4℃の条件で遠心分離し、すべての血漿を回収して直ちに−20℃で保存した。全ての時点のサンプルを採取した後に、各時点における薬物の血中濃度を測定した。
【0101】
上記により得られた投与後の平均血中濃度−時間データに基づいて、Winnoninソフトウェアを使用して、非コンパートメント統計モーメント理論に従って、オスのSDラットにi.gでIxazomib(3mg/kg)および実施例の化合物(3mg/kg)をそれぞれ投与した後の薬物動態関連パラメータを算出した。
【0102】
実験結果から、Ixazomibと比較して、本発明の化合物は、優れた薬物動態学的性質を有することから、プロテアソームを阻害する化合物としてより好適であり、さらにプロテアソームに介された疾患を治療する医薬の調製に適していることが示された。
【0103】
これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。実施例における具体的な条件を記載していない実験方法は、通常、慣用の条件または製造業者の推奨条件に従う。特に説明のない限り、部および百分率は重量部および重量百分率である。
【0104】
上記の内容は、特定の好ましい実施形態を参照して本発明に対するさらなる詳細な説明であるが、本発明の実施形態がこれらの記載に限定されない。当業者にとって明らかであるように、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、すべてが本発明の保護範囲内にあるとみなされるべきである。