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特許6802904リチウムイオン電池用負極およびリチウムイオン電池
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  • 特許6802904-リチウムイオン電池用負極およびリチウムイオン電池 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802904
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用負極およびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20201214BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20201214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20201214BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01M4/133
   H01M4/587
   H01M4/36 C
   H01M4/62 Z
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-508655(P2019-508655)
(86)(22)【出願日】2018年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2018003128
(87)【国際公開番号】WO2018179802
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-69661(P2017-69661)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCエナジーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸三
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−290883(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183530(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/141552(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/104315(WO,A1)
【文献】 特開2017−183205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/36
H01M 4/587
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体層と、
前記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、負極活物質として表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆された表面被覆黒鉛質材料を含む負極活物質層と、
を備えるリチウムイオン電池用負極であって、
下記の方法で測定される前記負極活物質層の水蒸気飽和吸着量が、0.03cm(STP)/g以上0.25cm(STP)/g以下であるリチウムイオン電池用負極。
(方法)
前記負極活物質層3.0gを窒素雰囲気下で220℃、2時間乾燥する。次いで、乾燥した前記負極活物質層に対し、定容量法により25℃で水蒸気を吸着させ、前記負極活物質層の前記水蒸気飽和吸着量を算出する。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記表面被覆黒鉛質材料の窒素吸着BET法による比表面積が1.0m/g以上6.0m/g以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記表面被覆黒鉛質材料の真比重が2.00g/cm以上2.50g/cm以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記表面被覆黒鉛質材料の炭酸ガスの吸着量が0.05ml/g以上1.0ml/g以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記表面被覆黒鉛質材料のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒子径d50が1μm以上40μm以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極において、
熱重量分析により算出される前記非晶質炭素の被覆量が、前記表面被覆黒鉛質材料を100質量%としたとき、0.5質量%以上10.0質量%以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記表面被覆黒鉛質材料における前記非晶質炭素からなる被覆層の平均厚みが、0.5nm以上100nm以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記負極活物質層がバインダー樹脂をさらに含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項9】
請求項8に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記バインダー樹脂が水系バインダー樹脂を含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項10】
請求項8または9に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記負極活物質層の全体を100質量部としたとき、
前記バインダー樹脂の含有量が0.1質量部以上10.0質量部以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極において、
前記負極活物質層が導電助剤をさらに含み、
前記負極活物質層の全体を100質量部としたとき、
前記導電助剤の含有量が0.05質量部以上5.0質量部以下であるリチウムイオン電池用負極。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極を備えるリチウムイオン電池。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用負極と、電解質層と、正極と、がこの順に積層されることにより構成された発電素子を1つ以上含む電池本体と、
前記電池本体を封入する外装体を備えるリチウムイオン電池。
【請求項14】
請求項13に記載のリチウムイオン電池において、
前記外装体がラミネートフィルムを含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用負極およびリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、ノートパソコンや携帯電話等の電子機器の電源、ハイブリッド車や電気自動車等の自動車の電源等として用いられている。
ラミネート型のリチウムイオン電池は、正極、電解質および負極により構成された発電素子がラミネートフィルムにより封止された構造を有している。
【0003】
ラミネート型のリチウムイオン電池に用いられる負極は、一般的に、負極活物質層と集電体層から主に構成されている。負極活物質層は、例えば、負極活物質、水系バインダー樹脂、増粘剤、および導電助剤等を含む負極スラリーを金属箔等の集電体層の表面に塗布して乾燥することにより得られる。
【0004】
このようなリチウムイオン電池用負極に関する技術としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1(特開平10−012241号公報)には、平均粒子径50μm以下の黒鉛粒子の核と、化学蒸着処理法により該黒鉛粒子の表面を被覆した炭素層とよりなる黒鉛−炭素複合材であり、該黒鉛−炭素複合材の比表面積が1m/g以下であり、かつ、平衡吸着水分量が0.3wt%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料が開示されている。
特許文献1には、充電容量の大きな黒鉛粒子を核とし、該黒鉛粒子の表面を化学蒸着処理することにより、その表面に比表面積の小さな熱分解炭素を被覆させて得られる黒鉛−炭素複合材は、大きな充電量と高い初期放電効率を持つため、大きな可逆的放電容量を持ち得ると記載されている。
【0006】
特許文献2(特開平11−204109号公報)には、非水電解液を用いるとともに炭素材を負極材料とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法において、平均粒子径1〜50μmの黒鉛粒子を核として、該黒鉛粒子の表面を化学蒸着処理法により炭素層で被覆することにより黒鉛−炭素複合材を形成することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法が開示されている。
特許文献2には、上記のような製造方法により得られる負極材料を用いると、電解液溶媒の分解を抑制すると共に高容量のリチウムイオン二次電池を実現できると記載されている。
【0007】
特許文献3(国際公開第2015/037367号)には、正極および負極が対向配置された電極素子と、非水電解液と、上記電極素子および上記非水電解液を内包する外装体とを有し、上記負極における水分量が50ppm〜1000ppmであって、上記非水電解液が、添加剤として特定の構造をもつ環状スルホン酸エステル誘導体を含むことを特徴とする非水電解液二次電池が記載されている。
特許文献3には、上記の構成を備える非水電解液二次電池はクーロン効率に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−012241号公報
【特許文献2】特開平11−204109号公報
【特許文献3】国際公開第2015/037367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者の検討によれば、従来のラミネート型のリチウムイオン電池は、初回の充電時のガス発生量が多く、初回の充電後に電池が膨れてしまう場合があることが明らかになった。電池が膨らんでしまうと、電池が破裂したり、外装体の溶着部にストレスがかかってしまったりする懸念がある。
ここで、一般的には、ラミネート型のリチウムイオン電池は初回充電の後に一定の温度下で電池を放置するエージング処理をおこない、電池の良否を判別する工程をおこなう。
本発明者の検討によれば、初回の充電時のガス発生量が小さいリチウムイオン電池は、電池の膨れが抑制されるものの、今度はエージング処理後の放電容量の低下が大きくなる場合がある、すなわちエージング効率が低下してしまう場合があることが明らかになった。
すなわち、本発明者は、従来のラミネート型のリチウムイオン電池において、電池の膨れの抑制およびエージング効率の改善の間にはトレードオフの関係があることを見出した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エージング効率が良好で、かつ、電池の膨れが抑制されたラミネート型のリチウムイオン電池を実現できるリチウムイオン電池用負極を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、負極活物質の水蒸気吸着量を特定の範囲にすることにより、エージング効率を良好に維持しつつ、初回の充電時の電池の膨れを抑制できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明によれば、
集電体層と、
上記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、負極活物質として表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆された表面被覆黒鉛質材料を含む負極活物質層と、
を備えるリチウムイオン電池用負極であって、
下記の方法で測定される上記負極活物質層の水蒸気飽和吸着量が、0.03cm(STP)/g以上0.25cm(STP)/g以下であるリチウムイオン電池用負極が提供される。
(方法)
上記負極活物質層3.0gを窒素雰囲気下で220℃、2時間乾燥する。次いで、乾燥した上記負極活物質層に対し、定容量法により25℃で水蒸気を吸着させ、上記負極活物質層の上記水蒸気飽和吸着量を算出する。
【0013】
また、本発明によれば、
上記リチウムイオン電池用負極を備えるリチウムイオン電池が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エージング効率が良好で、かつ、電池の膨れが抑制されたラミネート型のリチウムイオン電池を実現できるリチウムイオン電池用負極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0016】
図1】本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池用負極の構造の一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池の構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。また、本実施形態では数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0018】
<リチウムイオン電池用負極>
はじめに、本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100について説明する。図1は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池用負極100の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100は、集電体層101と、集電体層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、負極活物質として表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆された表面被覆黒鉛質材料を含む負極活物質層103と、を備える。
そして、下記の方法で測定される負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量が、0.03cm(STP)/g以上0.25cm(STP)/g以下である。
(方法)
負極活物質層103(3.0g)を窒素雰囲気下で220℃、2時間乾燥する。次いで、乾燥した負極活物質層103に対し、定容量法により25℃で水蒸気を吸着させ、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を算出する。
【0019】
ここで、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量は、より具体的には、市販の水蒸気吸着量測定装置(例えば、日本ベル社製、製品名:BELSORP)を用いて定容量法により測定することができる。
また、cm(STP)/gとは、負極活物質層103(1g)あたりに飽和吸着した水蒸気の体積で、かつ、標準状態(0℃、1atm)における水蒸気の体積を表す。
【0020】
本発明者の検討によれば、従来のラミネート型のリチウムイオン電池は、初回の充電時のガス発生量が多く、初回の充電後に電池が膨れてしまう場合があることが明らかになった。電池が膨らんでしまうと、電池が破裂したり、外装体の溶着部にストレスがかかってしまったりする懸念がある。
ここで、一般的には、ラミネート型のリチウムイオン電池は初回充電の後に一定の温度下で電池を放置するエージング処理をおこない、電池の良否を判別する工程をおこなう。
本発明者の検討によれば、初回の充電時のガス発生量が小さいリチウムイオン電池は、電池の膨れが抑制されるものの、今度はエージング処理後の放電容量の低下が大きくなる場合がある、すなわちエージング効率が低下してしまう場合があることが明らかになった。
すなわち、本発明者は、従来のラミネート型のリチウムイオン電池において、電池の膨れの抑制およびエージング効率の改善の間にはトレードオフの関係があることを見出した。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、上記の方法で測定される負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を0.03cm(STP)/g以上0.25cm(STP)/g以下の範囲にすることにより、エージング効率を良好に維持しつつ、初回の充電時の電池の膨れを抑制できることを見出した。
【0021】
負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量の上限は0.25cm(STP)/g以下であるが、好ましくは0.20cm(STP)/g以下、より好ましくは0.16cm(STP)/g以下、特に好ましくは0.13cm(STP)/g以下である。本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100において、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を上記上限値以下とすることにより、得られるリチウムイオン電池の膨れを抑制しつつ、エージング効率を向上させることができる。
負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量の下限は0.03cm(STP)/g以上であるが、好ましくは0.04cm(STP)/g以上、特に好ましくは0.05cm(STP)/g以上である。本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100において、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を上記下限値以上とすることにより、得られるリチウムイオン電池のエージング効率の低下を抑制しつつ、電池の膨れを効果的に抑制することができる。
【0022】
本実施形態において、水蒸気飽和吸着量が上記範囲内にある負極活物質層103は、(A)負極活物質層103の配合比率、(B)負極活物質層103を構成する表面被覆黒鉛質材料やバインダー樹脂、増粘剤、導電助剤の種類、(C)負極活物質層103を形成するための負極スラリーの調製方法、(D)負極スラリーの乾燥方法、(E)負極のプレス方法等の製造条件を高度に制御することにより実現することが可能である。
より具体的には、表面被覆黒鉛質材料における非晶質炭素の被覆量や、黒鉛質材料に非晶質炭素を被覆する際の焼成温度、負極スラリーを調製する際の各成分の混合手順、負極スラリーの乾燥方法、負極活物質層103の膜厚方向に均一に圧力をかけること等が負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を制御するための因子として挙げられる。
【0023】
次に、本実施形態に係る負極活物質層103を構成する各成分について説明する。
負極活物質層103は必須成分として負極活物質を含み、必要に応じてバインダー樹脂、増粘剤、導電助剤をさらに含む。
【0024】
(負極活物質)
本実施形態に係る負極活物質層103に含まれる負極活物質は、表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆された表面被覆黒鉛質材料を含む。
すなわち、本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料は、黒鉛質材料を核材とし、上記黒鉛質材料の表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆されている。特に黒鉛質材料のエッジ部が上記非晶質炭素により被覆されていることが好ましい。黒鉛質材料のエッジ部が被覆されることにより、エッジ部と電解液との不可逆的な反応を抑制することができ、その結果、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下をより一層抑制することができる。
ここで、上記非晶質炭素は、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。
【0025】
核材として用いる黒鉛質材料はリチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の黒鉛質材料であれば特に限定されない。例えば、天然黒鉛、石油系および石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛等が挙げられる。本実施形態においては、これらの黒鉛質材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、コストの点から、天然黒鉛が好ましい。
ここで、天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛のことをいう。本実施形態の核材として用いる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に限定されない。
また、人造黒鉛とは、人工的な手法で作られた黒鉛および黒鉛の完全結晶に近い黒鉛をいう。このような人造黒鉛は、例えば、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣等から得られるタールやコークスを原料にして、焼成工程、黒鉛化工程を経ることにより得られる。
【0026】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料は、焼成工程により炭素化されて上記黒鉛質材料よりも結晶性の低い非晶質炭素となる有機化合物と、上記黒鉛質材料とを混合した後に、上記有機化合物を焼成炭素化することによって作製することができる。
【0027】
上記黒鉛質材料と混合する有機化合物は、焼成することによって炭素化して、上記黒鉛質材料よりも結晶性の低い非晶質炭素が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、石油系タール、石炭系タール等のタール;石油系ピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂等の熱硬化性樹脂;セルロース等の天然樹脂;ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
本実施形態においては、これらの有機化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機化合物は、必要に応じて、溶媒により溶解または分散させて用いてもよい。
上記有機化合物の中でも、価格の点からタールおよびピッチが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料の窒素吸着BET法による比表面積は、好ましくは1.0m/g以上6.0m/g以下であり、より好ましくは2.0m/g以上5.0m/g以下である。
比表面積を上記上限値以下とすることにより、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。また、比表面積を上記上限値以下とすることにより、後述する負極スラリーの安定性を向上させることができる。
比表面積を上記下限値以上とすることにより、リチウムイオンを吸蔵・放出する面積が大きくなり、レート特性を向上させることができる。
また、比表面積を上記範囲内とすることにより、バインダー樹脂の結着性を向上させることができる。
【0029】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料の真比重は、得られるリチウムイオン電池の電池特性をより良好にする観点から、好ましくは2.00g/cm以上2.50g/cm以下であり、より好ましくは2.10g/cm以上2.30g/cm以下である。
【0030】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料の炭酸ガスの吸着量は、得られるリチウムイオン電池の電池特性をより良好にする観点から、好ましくは0.05ml/g以上1.0ml/g以下、より好ましくは0.1ml/g以上0.5ml/g以下である。
【0031】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料において、熱重量分析により算出される上記非晶質炭素の被覆量は、表面被覆黒鉛質材料を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以上8.0質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上7.0質量%以下であり、特に好ましくは0.8質量%以上6.5質量%以下である。
非晶質炭素の被覆量を上記上限値以下とすることにより、リチウムイオンを吸蔵・放出する面積が大きくなり、レート特性を向上させることができる。
非晶質炭素の被覆量を上記下限値以上とすることにより、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。また、非晶質炭素の被覆量を上記下限値以上とすることにより、後述する負極スラリーの安定性を向上させることができる。
【0032】
ここで、非晶質炭素の被覆量は、熱重量分析により算出することができる。より具体的には、熱重量分析計(例えば、パーキンエルマ社製TGA7アナライザ)を用いて、酸素雰囲気下、昇温速度5℃/minにて表面被覆黒鉛質材料を900℃まで昇温したとき、質量減少が始まった温度から、質量減少割合が緩やかになり、その後質量減少が加速する温度までの減少質量を被覆量とすることができる。
【0033】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料において、上記非晶質炭素からなる被覆層の平均厚みは、好ましくは0.5nm以上100nm以下であり、より好ましくは1nm以上80nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上50nm以下である。
ここで、上記非晶質炭素からなる被覆層の平均厚みは、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)画像を撮り、ノギスを用いて測定することができる。
【0034】
本実施形態に係る表面被覆黒鉛質材料は、例えば、以下の(1)〜(4)の工程により製造することができる。
(1)上記黒鉛質材料と上記有機化合物を、必要に応じて溶媒とともに混合機等を用いて混合する。こうすることによって、上記黒鉛質材料の表面の少なくとも一部に有機化合物を付着させる。
(2)溶媒を用いた場合は、得られた混合物を必要に応じて撹拌しながら加熱し、溶媒を除去する。
(3)上記混合物を、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、あるいは非酸化性雰囲気下で加熱して、付着させた有機化合物を炭化させる。そうすると、上記黒鉛質材料の表面の少なくとも一部が、上記黒鉛粉末よりも結晶性の低い非晶質炭素により被覆された表面被覆黒鉛質材料が得られる。
【0035】
この工程の加熱処理の下限温度は、有機化合物の種類や被覆量、熱履歴等によって適宜決定されるため特に限定されないが、好ましくは930℃以上、より好ましくは950℃以上、さらに好ましくは980℃以上である。加熱処理の温度を上記下限値以上とすることにより、負極活物質への水蒸気の吸着量を抑制することができる。その結果、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を低下させることができる。
また、この工程の加熱処理の上限温度は、有機化合物の種類や被覆量、熱履歴等によって適宜決定されるため特に限定されないが、好ましくは1150℃以下、より好ましくは1100℃以下、さらに好ましくは1080℃以下である。加熱処理の温度を上記上限値以下とすることにより、負極活物質への水蒸気の吸着量を向上させることができる。その結果、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を向上させることができる。
昇温速度、冷却速度、熱処理時間等も有機化合物の種類や熱履歴によって適宜決定される。
【0036】
また、本実施形態においては、黒鉛質材料の上記有機化合物による被覆処理を行った後、被覆層を炭化する前に、被覆層を酸化処理してもよい。被覆層を酸化することにより、被覆層の高結晶化を抑制することができる。
【0037】
(4)得られた表面被覆黒鉛質材料を、必要に応じて、粉砕、解砕、分級処理等をおこない所望の物性を有する表面被覆黒鉛質材料に調整する。この工程は、上記(3)の工程の前におこなってもよいし、上記(3)の工程の前後両方でおこなってもよい。また、被覆前の黒鉛質材料に、粉砕、解砕、分級処理等をおこなってもよい。
【0038】
本実施形態の表面被覆黒鉛質材料を得るためには、上記の各工程を適切に調整することが重要である。ただし、本実施形態の表面被覆黒鉛質材料の製法は、上記のような方法に限定されず、種々の条件を適切に調整することにより、本実施形態の表面被覆黒鉛質材料を得ることができる。
【0039】
表面被覆黒鉛質材料のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒子径d50は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、15μm以上が特に好ましく、入出力特性や電極作製上の観点(電極表面の平滑性等)から、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0040】
負極活物質の含有量は、負極活物質層103の全体を100質量部としたとき、85質量部以上99質量部以下であることが好ましく、90質量部以上98質量部以下であることがより好ましく、93質量部以上97.5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0041】
(バインダー樹脂)
本実施形態に係る負極活物質層103に使用されるバインダー樹脂は、負極活物質同士および負極活物質層103と集電体層101とを結着させる役割をもつ。
本実施形態のバインダー樹脂は電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、環境に優しい点から、水系媒体にバインダー樹脂を分散させて用いる、いわゆる水系バインダー樹脂が好ましい。
【0042】
本実施形態に係る負極活物質層103に含まれる水系バインダー樹脂としては、例えば、ゴム系バインダー樹脂やアクリル系バインダー樹脂等を用いることができる。なお、本実施形態において、水系バインダー樹脂とは、水に分散してエマルジョン水溶液を形成できるものをいう。
本実施形態に係る水系バインダー樹脂はラテックス粒子により形成され、水に分散させてエマルジョン水溶液として用いることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る負極活物質層103に含まれる水系バインダー樹脂は、水系バインダー樹脂のラテックス粒子により形成されていることが好ましい。これにより、負極活物質間や導電助剤間、負極活物質と導電助剤との間との接触を阻害せず、水系バインダー樹脂を負極活物質層103中に含有させることができる。
なお、水系バインダー樹脂を分散させる水にはアルコール等の水と親水性の高い溶媒を混合させてもよい。
【0043】
ゴム系バインダー樹脂としては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
アクリル系バインダー樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸塩、またはメタクリル酸塩の単位(以下「アクリル単位」という)を含む重合体(単独重合体又は共重合体)等が挙げられる。この共重合体としては、アクリル単位とスチレン単位を含む共重合体、アクリル単位とシリコン単位を含む共重合体等が挙げられる。
これらの水系バインダー樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、結着性、電解液との親和性、価格および電気化学安定性等に優れる点から、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムが特に好ましい。
【0044】
スチレン・ブタジエン共重合体ゴムは、スチレンと1,3−ブタジエンを主成分とする共重合体である。ここで、主成分とは、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム中において、スチレン由来の構成単位および1,3−ブタジエン由来の構成単位の合計含有量が、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムの全重合単位中50質量%以上の場合をいう。
スチレン由来の構成単位(以下、Stとも呼ぶ。)と1,3−ブタジエン由来の構成単位(以下、BDとも呼ぶ。)との質量比(St/BD)は、例えば、10/90〜90/10である。
【0045】
スチレン・ブタジエン共重合体ゴムは、スチレンおよび1,3−ブタジエン以外のモノマー成分を共重合させてもよい。例えば、共役ジエン系モノマー、不飽和カルボン酸モノマー、その他共重合可能である公知のモノマー等が挙げられる。
共役ジエン系モノマーとしては、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ピペリレン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0046】
スチレン・ブタジエン共重合体ゴムの製造方法は特に限定されないが、乳化重合法により製造することが好ましい。乳化重合法を用いると、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むラテックス粒子で得ることができる。
乳化重合としては従来既知の方法が用いられる。例えば、スチレンと、1,3−ブタジエンと、さらには上記の各種共重合可能なモノマー成分とを、好ましくは乳化剤の存在下、重合開始剤を添加し、水中で乳化重合することにより製造することができる。
得られるスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むラテックス粒子の平均粒子径は特に限定されないが、50nm以上500nm以下であることが好ましく、70nm以上250nm以下であることがより好ましく、80nm以上200nm以下がさらに好ましく、90nm以上150nm以下が特に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、電解液に対する水系バインダー樹脂の膨潤、溶出、結着性および粒子の分散性のバランスがより一層優れる。
なお、本実施形態におけるラテックス粒子の平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。
【0047】
動的光散乱法によるラテックス粒子の平均粒子径は、以下のようにして測定できる。ラテックス粒子の分散液は固形分に応じて200〜1000倍に水希釈しておく。この希釈液約5mlを測定装置(例えば、日機装社製マイクロトラック粒度分析計)のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本実施形態では水)およびポリマーの屈折率条件を入力後、測定をおこなう。このとき、得られた体積粒子径分布データのピークを本実施形態の平均粒子径とする。
【0048】
バインダー樹脂の含有量は、負極活物質層103の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以上4.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることが特に好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であると、負極スラリーの塗工性、バインダー樹脂の結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、バインダー樹脂の含有量が上記上限値以下であると、負極活物質の割合が大きくなり、電極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記下限値以上であると、電極剥離が抑制されるため好ましい。
【0049】
(増粘剤)
バインダー樹脂として水系バインダー樹脂を使用する場合、塗布に適した流動性を確保する点から、増粘剤を併用することが好ましい。そのため、負極活物質層103は、さらに増粘剤を含んでいてもよい。
増粘剤としては負極活物質層103を形成するための電極スラリーの塗工性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース等のセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;ポリカルボン酸;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩;ポリビニルアルコール;等の水溶性ポリマーが挙げられる。
これらの中でもセルロース系ポリマー、セルロース系ポリマーのアンモニウム塩、セルロース系ポリマーのアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩がより好ましい。
これらの増粘剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
増粘剤の含有量は、負極活物質層103の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下であることがさらに好ましい。増粘剤の使用量が上記範囲内であると、負極スラリーの塗工性およびバインダー樹脂の結着性のバランスがより一層優れる。
【0051】
(導電助剤)
本実施形態に係る負極活物質層103に含まれる導電助剤としては電極の導電性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。これらの導電助剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
導電助剤の含有量は、負極活物質層103の全体を100質量部としたとき、0.05質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.08質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下がさらに好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下であることが特に好ましい。導電助剤の含有量が上記範囲内であると、負極スラリーの塗工性、バインダー樹脂の結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、導電助剤の含有量が上記上限値以下であると、負極活物質の割合が大きくなり、電極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。導電助剤の含有量が上記下限値以上であると、負極の導電性がより良好になるため好ましい。
【0053】
本実施形態に係る負極活物質層103は、負極活物質層103の全体を100質量部としたとき、負極活物質の含有量は好ましくは85質量部以上99質量部以下、より好ましくは90質量部以上98質量部以下、さらに好ましくは93質量部以上97.5質量部以下である。また、バインダー樹脂の含有量は好ましくは0.1質量部以上10.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上5.0質量部以下、さらに好ましくは0.8質量部以上4.0質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以上3.0質量部以下である。また、増粘剤の含有量は好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上3.0質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上2.0質量部以下である。また、導電助剤の含有量は好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.08質量部以上3.0質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上2.0質量部以下、特に好ましくは0.2質量部以上1.0質量部以下である。
負極活物質層103を構成する各成分の含有量が上記範囲内であると、リチウムイオン電池用負極100の取扱い性と、得られるリチウムイオン電池の電池特性のバランスが特に優れる。
【0054】
負極活物質層103の密度は、得られるリチウムイオン電池のエネルギー密度をより一層向上させる観点から、1.30g/cm以上が好ましく、1.40g/cm以上がより好ましい。
負極活物質層103の密度の上限は特に限定されないが、電極への電解液浸み込み性を向上させ、電極へのリチウムの析出をより一層抑制する観点から、1.90g/cm以下が好ましい。
負極活物質層103の密度は、所定のサイズ(例えば、5cm×5cm)の負極活物質層103の質量と厚みを測定することにより、単位体積あたりの質量を算出し、この密度とすることができる。
【0055】
負極活物質層103の厚みは特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。負極活物質層103の厚みは、例えば、50〜1000μmの範囲で適宜設定でき、100〜800μmが好ましく、120〜500μmがより好ましい。
【0056】
(集電体層)
本実施形態に係る集電体層101としては特に限定されないが、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができ、価格や入手容易性、電気化学的安定性等の観点から、銅が特に好ましい。また、集電体層101の形状についても特に限定されないが、厚さが0.001mm以上0.5mm以下の範囲で箔状、平板状、またはメッシュ状のものを用いることが好ましい。
【0057】
<リチウムイオン電池用負極の製造方法>
次に、本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100の製造方法について説明する。
本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100の製造方法は、従来の電極の製造方法とは異なるものである。負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量が上記範囲内にある本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100を得るためには、負極活物質層103の配合比率、負極活物質層103を構成する各成分の種類、負極活物質層103を形成するための負極スラリーの調製方法、負極スラリーの乾燥方法、負極のプレス方法等の製造条件を高度に制御することが重要である。すなわち、以下の(A)〜(E)の5つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100を得ることができる。
(A)負極活物質層103の配合比率
(B)負極活物質層103を構成する表面被覆黒鉛質材料やバインダー樹脂、増粘剤、導電助剤の種類
(C)負極活物質層103を形成するための負極スラリーの調製方法
(D)負極スラリーの乾燥方法
(E)負極のプレス方法
【0058】
ただし、本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100は、上記5つの条件に係る各種因子を高度に制御することを前提に、例えば、負極スラリーの混練時間、混練温度等の具体的な製造条件は種々のものを採用することができる。言い換えれば、本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100は、上記5つの条件に係る各種因子を高度に制御すること以外の点については、公知の方法を採用して作製することが可能である。
以下、上記5つの条件に係る各種因子を高度に制御していることを前提に、本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100の製造方法の一例について説明する。
【0059】
本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100の製造方法は、以下の(1)〜(3)の3つの工程を含んでいるのが好ましい。
(1)表面被覆黒鉛質材料と、バインダー樹脂と、増粘剤と、導電助剤とを混合することにより負極スラリーを調製する工程
(2)得られた負極スラリーを集電体層101上に塗布して乾燥することにより、負極活物質層103を形成する工程
(3)集電体層101上に形成した負極活物質層103を集電体層101とともにプレスする工程
以下、各工程について説明する。
【0060】
まず、(1)表面被覆黒鉛質材料と、バインダー樹脂と、増粘剤と、導電助剤とを混合することにより負極スラリーを調製する。負極活物質、バインダー樹脂、増粘剤および導電助剤の種類や配合比率は前述したため、ここでは説明を省略する。
【0061】
負極スラリーは、例えば、表面被覆黒鉛質材料と、水系バインダー樹脂と、増粘剤と、導電助剤とを水等の溶媒に分散または溶解させたものである。
各成分の混合手順は表面被覆黒鉛質材料と導電助剤とを乾式混合した後に、水系バインダー樹脂のエマルジョン水溶液および増粘剤溶液、さらに必要に応じて水等の溶媒を添加して湿式混合することにより負極スラリーを調製することが好ましい。
こうすることにより、負極活物質層103中の導電助剤および水系バインダー樹脂の分散性が向上し、水系バインダー樹脂、増粘剤および導電助剤が負極活物質層103の表面に偏在することを抑制でき、負極活物質層103への水蒸気の浸み込み性を向上させることができる。その結果、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を向上させることができる。
このとき、用いられる混合機としては、ボールミルやプラネタリーミキサー等の公知のものが使用でき、特に限定されない。
【0062】
次いで、(2)得られた負極スラリーを集電体層101上に塗布して乾燥することにより、負極活物質層103を形成する。この工程では、例えば、上記工程(1)により得られた負極スラリーを集電体層101上に塗布して乾燥し、溶媒を除去することにより集電体層101上に負極活物質層103を形成する。
【0063】
負極スラリーを集電体層101上に塗布する方法は、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法およびスクイーズ法等を挙げることができる。これらの中でも、負極スラリーの粘性等の物性および乾燥性に合わせて、良好な塗布層の表面状態を得ることが可能となる点で、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法が好ましい。
【0064】
負極スラリーは、集電体層101の片面のみに塗布しても両面に塗布してもよい。集電体層101の両面に塗布する場合は、片面ずつ逐次でも、両面同時に塗布してもよい。また、集電体層101の表面に連続で、あるいは、間欠で塗布してもよい。塗布層の厚さや長さ、幅は、電池の大きさに応じて、適宜決定することができる。
【0065】
集電体層101上に塗布した負極スラリーの乾燥方法としては、40〜80℃程度の低い温度で、長時間かけてじっくり行うことが好ましい。
こうすることで、水系バインダー樹脂、増粘剤および導電助剤が負極活物質層103の表面に偏在してしまうことを抑制でき、負極活物質層103への水蒸気の浸み込み性を向上させることができる。その結果、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を向上させることができる。
また、負極活物質層103を形成後は100〜150℃程度の高温で乾燥し、負極活物質層103中の水分を除去することが好ましい。
【0066】
次いで、(3)集電体層101上に形成した負極活物質層103を集電体層101とともにプレスする。プレスの方法としては線圧を高くすることができ、負極活物質層103の膜厚方向に均一に圧力をかけることが可能なロールプレスが好ましい。これにより、負極活物質層103の表面の密度が集電体層101側の密度よりも極端に高くなることを抑制でき、負極活物質層103への水蒸気の浸み込み性を向上させることができる。その結果、負極活物質層103の水蒸気飽和吸着量を向上させることができる。
【0067】
<リチウムイオン電池>
図2は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池80の構造の一例を示す断面図である。本実施形態に係るリチウムイオン電池80はリチウムイオン二次電池である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池80はリチウムイオン電池用負極100を備える。
例えば、図2に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン電池80は、正極活物質層2および正極集電体3を有する正極1と、セパレータ20および電解液を含む電解質層と、負極活物質層7および負極集電体8を有する負極6と、がこの順に積層されることにより構成された発電素子を1つ以上含む電池本体50と、電池本体50を内部に封入する外装体30と、正極集電体3に電気的に接続し、かつ、少なくとも一部が外装体30の外側に露出した正極端子11と、負極集電体8に電気的に接続し、かつ、少なくとも一部が外装体30の外側に露出した負極端子16と、を備える。そして、負極6が本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100を含む。
本実施形態に係るリチウムイオン電池80は公知の方法に準じて作製することができる。
本実施形態に係るリチウムイオン電池80は特にその形態や種類が限定されるものではないが、例えば、以下のような構成とすることができる。
【0068】
図2は、本実施形態に係るリチウムイオン電池80がラミネート型のリチウムイオン電池である場合の構成の一例を模式的に示したものである。ラミネート型のリチウムイオン電池は、正極1と負極6とが、セパレータ20を介して交互に積層された発電素子を1つ以上含む電池本体50を備えており、これらの発電素子は電解液(図示せず)とともに外装体30からなる容器に収納されている。発電素子には正極端子11および負極端子16が電気的に接続されており、正極端子11および負極端子16の一部または全部が外装体30の外部に引き出されている構成になっている。
【0069】
正極1には正極集電体3の表裏に、正極活物質の塗布部(正極活物質層2)と未塗布部がそれぞれ設けられており、負極6には負極集電体8の表裏に、負極活物質の塗布部(負極活物質層7)と未塗布部が設けられている。
【0070】
正極集電体3における正極活物質の未塗布部を正極端子11と接続するための正極タブ10とし、負極集電体8における負極活物質の未塗布部を負極端子16と接続するための負極タブ5とする。
正極タブ10同士は正極端子11上にまとめられ、正極端子11とともに超音波溶接等で互いに接続され、負極タブ5同士は負極端子16上にまとめられ、負極端子16とともに超音波溶接等で互いに接続される。そのうえで、正極端子11の一端は外装体30の外部に引き出され、負極端子16の一端も外装体30の外部に引き出されている。
【0071】
正極活物質の塗布部と未塗布部の境界部4には、必要に応じて絶縁部材を形成することができ、当該絶縁部材は境界部4だけでなく、正極タブと正極活物質の双方の境界部付近に形成することができる。
【0072】
負極活物質の塗布部と未塗布部の境界部9にも同様に、必要に応じて絶縁部材を形成することができ、負極タブと負極活物質の双方の境界部付近に形成することができる。
【0073】
通常、負極活物質層7の外形寸法は正極活物質層2の外形寸法よりも大きく、セパレータ20の外形寸法よりも小さい。
【0074】
次に、本実施形態に係るリチウムイオン電池80の各構成要素の例を説明する。
【0075】
(正極)
正極1は特に限定されず、用途等に応じて、公知のリチウムイオン電池に使用することのできる正極の中から適宜選択することができる。正極1は、正極活物質層2と、正極集電体3と、を含む。
【0076】
正極1に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が容易に行えるように電子伝導度の高い材料が好ましい。
正極1に用いられる正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物;TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物;MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。
オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
【0077】
これらの中でも、オリビン型リチウム鉄リン酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物が好ましい。これらの正極活物質は作用電位が高いことに加えて容量も大きく、大きなエネルギー密度を有する。
正極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
正極活物質にはバインダー樹脂や導電助剤等を適宜加えることができる。導電助剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛等を用いることができる。また、バインダー樹脂としてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース、変性アクリロニトリルゴム粒子等を用いることができる。
【0079】
正極1は特に限定されないが、公知の方法により製造することができる。例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダー樹脂を有機溶媒中に分散させスラリーを得た後、このスラリーを正極集電体3に塗布・乾燥する等の方法を採用することができる。
正極1の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0080】
正極集電体3としては、特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用でき、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等が挙げられる。価格や入手容易性、電気化学的安定性等の観点から、正極集電体3としてはアルミニウムが好ましい。
【0081】
(負極)
負極6は本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100を含んでいる。また、用途等に応じて、公知のリチウムイオン電池に使用することのできる負極をさらに含んでもよい。以下、本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100以外の負極6について説明する。
【0082】
負極6は、負極活物質層7と、負極集電体8と、を含む。
本実施形態に係るリチウムイオン電池用負極100以外の負極6に用いられる負極活物質についても負極に使用可能なものであれば用途等に応じて適宜設定することができる。
負極活物質として使用可能な材料の具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素材料;リチウム金属材料;シリコンやスズ等の合金系材料;NbやTiO等の酸化物系材料;あるいはこれらの複合物を用いることができる。
負極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
また、負極活物質には、正極活物質と同様に、バインダー樹脂や導電助剤等を適宜加えることができる。これら結着剤や導電剤は正極活物質に添加するものと同じものを用いることができる。
【0084】
負極集電体8としては銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができ、これらの中でも銅が特に好ましい。
【0085】
また、本実施形態における負極6は、公知の方法により製造することができる。例えば負極活物質とバインダー樹脂とを有機溶媒中に分散させスラリーを得た後、このスラリーを負極集電体8に塗布・乾燥する等の方法を採用することができる。
【0086】
(電解質層)
電解質層は、正極1と負極6との間に介在するように配置される層である。電解質層はセパレータ20および電解液を含み、例えば、多孔性セパレータに非水電解液を含浸させたものが挙げられる。
【0087】
セパレータ20としては正極1と負極6を電気的に絶縁させ、リチウムイオンを透過する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多孔性セパレータを用いることができる。
多孔性セパレータとしては多孔性樹脂フィルム等が挙げられる。多孔性樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ20としては、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、多孔性ポリエチレンフィルムおよび多孔性ポリプロピレンフィルム等がより好ましい。
【0088】
多孔性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体等が挙げられ、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)が好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、単独で用いても二種以上を併用して用いてもよい。
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0089】
多孔性ポリエチレンフィルムを構成するポリエチレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体等が挙げられ、エチレン単独重合体(ホモポリエチレン)が好ましい。ポリエチレン系樹脂は、単独で用いても二種以上を併用して用いてもよい。
なお、エチレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0090】
セパレータ20の厚みは、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、好ましくは5μm以上50μm以下であり、より好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0091】
セパレータ20は、耐熱性をさらに向上させる観点から多孔性樹脂フィルムの少なくとも一方の面にセラミック層をさらに備えることが好ましい。
セパレータ20は、上記セラミック層をさらに備えることにより、熱収縮をより小さくすることができ、電極間の短絡をより一層防止することができる。
【0092】
上記セラミック層は、例えば、上記多孔性樹脂層上に、セラミック層形成材料を塗布して乾燥させることにより形成することができる。セラミック層形成材料としては、例えば、無機フィラーとバインダー樹脂とを適当な溶媒に溶解または分散させたものを用いることができる。
このセラミック層に用いられる無機フィラーは、リチウムイオン電池のセパレータに使用される公知の材料の中から適宜選択することができる。例えば、絶縁性の高い酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等が好ましく、酸化チタン、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化鉄、セリア、イットリア等の酸化物系セラミック等から選択される一種または二種以上の無機化合物を粒子状に調整したものがより好ましい。これらの中でも、酸化チタン、アルミナが好ましい。
【0093】
上記バインダー樹脂は特に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂;アクリル系樹脂;ポリビニリデンフロライド(PVDF)等のフッ素系樹脂;等が挙げられる。バインダー樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
これら成分を溶解または分散させる溶媒は特に限定されず、例えば、水、エタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から適宜選択して用いることができる。
【0095】
上記セラミック層の厚みは、機械的強度、取扱い性およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上12μm以下である。
【0096】
本実施形態に係る電解液は電解質を溶媒に溶解させたものである。
上記電解質としてはリチウム塩が挙げられ、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
【0097】
上記電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類;等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
(外装体)
本実施形態に係る外装体30は公知の部材を用いることができ、電池の軽量化の観点からは金属層および熱融着性の樹脂層を有するラミネートフィルムを用いることが好ましい。金属層には電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、銅等を用いることができる。
熱融着性の樹脂層を構成する樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
【0099】
本実施形態において、ラミネートフィルムの熱融着性の樹脂層同士を電池本体50を介して対向させ、電池本体50を収納する部分の周囲を熱融着することで外装体30を形成することができる。熱融着性の樹脂層が形成された面と反対側の面となる外装体表面にはナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂層を設けることができる。
【0100】
(電極端子)
本実施形態において正極端子11および負極端子16には公知の部材を用いることができる。正極端子11には、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金で構成されたもの、負極端子16には、例えば、銅や銅合金あるいはそれらにニッケルメッキを施したもの等を用いることができる。それぞれの端子は容器の外部に引き出されるが、それぞれの端子における外装体30の周囲を熱溶着する部分に位置する箇所には熱融着性の樹脂をあらかじめ設けることができる。
【0101】
(絶縁部材)
活物質の塗布部と未塗布部の境界部4、9に絶縁部材を形成する場合には、ポリイミド、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレンあるいはこれらを構成中に含むものを用いることができる。これらの部材に熱を加えて境界部4、9に溶着させるか、または、ゲル状の樹脂を境界部4、9に塗布、乾燥させることで絶縁部材を形成することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
<表面被覆黒鉛質材料の作製)
表面被覆黒鉛質材料1〜6は以下のように作製した。以下、平均粒子径d50はMicrotrac社製、MT3000装置により測定し、比表面積は、Quantachrome Corporation社製、Quanta Sorbを用いて、窒素吸着BET法にて求めた。
また、非晶質炭素の被覆量は、熱重量分析計(パーキンエルマ社製TGA7アナライザ)を用いて、酸素雰囲気下、昇温速度5℃/minにて表面被覆黒鉛質材料を900℃まで昇温したとき、質量減少が始まった温度から、質量減少割合が緩やかになり、その後質量減少が加速する温度までの減少質量を被覆量とした。
また、炭酸ガスの吸着量の測定は、表面被覆黒鉛質材料3gを窒素雰囲気下で220℃、2時間乾燥したものを測定試料とし、QUANTACHROM社製NOVA2000を使用して定容法により測定した。吸着量は標準状態(STP)に換算した値である。
真比重はピクノメーター法により測定した。
【0105】
(表面被覆黒鉛質材料1の作製)
表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆された表面被覆黒鉛質材料1(平均粒子径d50:17.5μm、窒素吸着BET法による比表面積:3.2m/g)は以下のように作製した。
天然黒鉛粉末95質量部と、石炭系ピッチ粉末5質量部とを、Vブレンダーを用いた単純混合により固相で混合した。得られた混合粉末を黒鉛るつぼに入れ、窒素気流下950℃で10時間熱処理することにより石炭系ピッチ粉末を焼成して非晶質炭素とし、表面が非晶質炭素で被覆された表面被覆黒鉛質材料1を得た。得られた表面被覆黒鉛質材料1の物性を表1に示す。
【0106】
(表面被覆黒鉛質材料2〜6の作製)
石炭系ピッチ粉末の焼成温度を950℃から表1に示す温度にそれぞれ変えた以外は表面被覆黒鉛質材料1と同様にして表面被覆黒鉛質材料2〜6をそれぞれ作製した。得られた表面被覆黒鉛質材料2〜6の物性を表1にそれぞれ示す。
【0107】
【表1】
【0108】
<実施例1>
(負極の作製)
負極は以下のように作製した。負極活物質としては、上記表面被覆黒鉛質材料1を使用した。水系バインダー樹脂としてスチレン・ブタジエン共重合体ゴムからなるラテックス粒子、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース、導電助剤としてカーボンブラック(平均粒子径d50:100nm)を用いた。
まず、負極活物質である表面被覆黒鉛質材料1および導電助剤を乾式混合した。次いで、得られた混合物に増粘剤水溶液、水系バインダー樹脂のエマルジョン水溶液および水を添加して湿式混合することにより、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを、負極集電体である銅箔の両面に塗布・乾燥して負極を作製した。
ここで、負極スラリーの乾燥は、50℃で15分加熱することによりおこなった。この乾燥により銅箔上に負極活物質層を形成した。また、乾燥後、110℃で10分間加熱処理をおこない、負極中の水分を完全に除去した。
次いで、ロールプレスにより銅箔および負極活物質層をプレスし、負極活物質層の密度が1.46g/cmの負極(片面あたりの負極活物質層の塗工量:9mg/cm)を得た。
なお、負極活物質と水系バインダー樹脂と増粘剤と導電助剤の配合比率は、負極活物質/水系バインダー樹脂/増粘剤/導電助剤=96.7/2/1/0.3(質量比)である。
【0109】
<正極の作製>
正極活物質としてLiMnとLiNi0.85Co0.15を質量比78:22で混合した混合酸化物(正極活物質)、導電助剤としてカーボンブラック、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデンを用いた。これらをN−メチル-ピロリドン(NMP)に分散または溶解させ、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、正極集電体であるアルミニウム箔に塗布・乾燥した。次いで、ロールプレスによりアルミニウム箔および正極活物質層をプレスし、正極活物質層の密度が3.0g/cmの正極を得た。
【0110】
<リチウムイオン電池の作製>
得られた正極と負極とを厚さ20μmの多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを介して積層し、これに負極端子や正極端子を設け、積層体を得た。次いで、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比))に、電解質としてLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように溶解させた電解液と、得られた積層体をラミネートフィルムに収容することでラミネート型のリチウムイオン電池を得た。
【0111】
<評価>
(1)負極活物質層の水蒸気飽和吸着量の測定
負極活物質層の水蒸気飽和吸着量の測定は、負極活物質層3.0gを窒素雰囲気下で220℃、2時間乾燥したものを測定試料とし、日本ベル社製BELSORPを使用して行った。
25℃において試料管内の平衡圧力が0.31kPa(相対圧P/P=0.1に相当)に達するまでの水蒸気の吸着量を定容法により求め、下記の式により水蒸気飽和吸着量を求めた。
水蒸気飽和吸着量[cm(STP)/g]=(総水蒸気導入量−相対圧(P/P)を0.1にするのに必要な水蒸気量)/負極活物質層の質量
ここで、水蒸気飽和吸着量は標準状態(STP)に換算した値である。
【0112】
(2)ガス発生量の測定
得られたリチウムイオン電池を満充電し、充電前後の体積変化量からガス発生量を求めた。ガス発生量が2.5cm以下のものを○、ガス発生量が2.5cmを超えるものを×とした。
【0113】
(3)エージング効率の測定
満充電状態のリチウムイオン電池を50℃の環境下に14日間放置し、14日後の回復容量からエージング効率(=100×回復容量/放置前の充電容量)を算出し、以下の基準で評価した。
〇:エージング効率が83%以上のもの
×:エージング効率が83%未満のもの
【0114】
以上の評価結果を表2に示す。
【0115】
(実施例2〜4および比較例1〜2)
表面被覆黒鉛質材料1を表1に示す表面被覆黒鉛質材料2〜6に変更した以外は、実施例1と同様に負極およびリチウムイオン電池を作製し、各評価を行った。各評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表2から、負極活物質層の水蒸気飽和吸着量が0.03cm(STP)/g以上0.25cm(STP)/g以下である負極を用いた実施例のリチウムイオン電池はエージング効率が良好で、かつ、ガス発生量が抑制されていた。
これに対し、負極活物質層の水蒸気飽和吸着量が0.25cm(STP)/gを超える負極を用いた比較例1のリチウムイオン電池はエージング効率が低く劣っていた。また、負極活物質層の水蒸気飽和吸着量が0.03cm(STP)/g未満の負極を用いた比較例2のリチウムイオン電池はガスが多く発生し、電池の膨れを抑制できないものであった。
以上から、負極活物質層の水蒸気飽和吸着量が0.03cm(STP)/g以上0.25cm(STP)/g以下である負極を用いることにより、エージング効率が良好で、かつ、電池の膨れが抑制されたラミネート型のリチウムイオン電池を実現できることが理解できる。
【0118】
この出願は、2017年3月31日に出願された日本出願特願2017−069661号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2