特許第6802954号(P6802954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802954デジタル駆動型電気音響変換器の結線構造およびデジタル駆動型ヘッドホン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802954
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】デジタル駆動型電気音響変換器の結線構造およびデジタル駆動型ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/06 20060101AFI20201214BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20201214BHJP
   H01B 11/06 20060101ALI20201214BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H04R1/06 310
   H04R1/10 101Z
   H04R1/10 103
   H04R1/10 101B
   H01B11/06
   H01B7/18 D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-105626(P2019-105626)
(22)【出願日】2019年6月5日
(62)【分割の表示】特願2014-233916(P2014-233916)の分割
【原出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2019-208208(P2019-208208A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】田上 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】築比地 健三
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋二
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健二
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−028785(JP,A)
【文献】 特開2006−287720(JP,A)
【文献】 特開2008−287948(JP,A)
【文献】 特開2011−258330(JP,A)
【文献】 特開2004−214765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/06
H01B 7/17−7/288
H01B 11/06
H04R 1/10
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号によって振動板を駆動し音波に変換する信号変換部を有するデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造であって、
左右一対で構成される前記デジタル駆動型電気音響変換器において、第1信号線を介して前記デジタル信号の音源と接続される一方のデジタル駆動型電気音響変換器と、この一方のデジタル駆動型電気音響変換器と接続される他方のデジタル駆動型電気音響変換器は、第2信号線を介して接続されていて、
前記第2信号線は、正極入力線と負極入力線を一対とする撚り線構造からなる、
ことを特徴とするデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造。
【請求項2】
前記デジタル駆動型電気音響変換器のそれぞれは、複数のボイスコイルを有し、
前記第2信号線は、前記他方のデジタル駆動型電気音響変換器が有する前記ボイスコイルのそれぞれへの正極入力線と負極入力線を一対としてなる、
請求項1記載のデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造。
【請求項3】
前記第2信号線は、前記正極入力線と前記前記負極入力線を一対にまとめて覆う電磁シールド構造を備える、
請求項1または2記載のデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造。
【請求項4】
前記第2信号線は、前記正極入力線と前記負極入力線を個別に覆う電磁シールド構造を備える、
請求項1または2記載のデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造。
【請求項5】
前記電磁シールド構造は、網状部材からなる、
請求項3または4記載のデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造。
【請求項6】
前記シールド構造は、導電性チューブからなる、
請求項3または4記載のデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造。
【請求項7】
ハウジング内にデジタル駆動型電気音響変換器が組み込まれる左右一対のイヤピースと、
長手方向に湾曲し、両端部に前記イヤピースを有するヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドに沿って前記イヤピースのそれぞれに組み込まれる前記デジタル駆動型電気音響変換器を接続する結線構造を備えるヘッドホンであって、
前記結線構造は、請求項1乃至6のいずれかに記載のデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造である、
ことを特徴とするデジタル駆動型ヘッドホン。
【請求項8】
前記結線構造は、前記ヘッドバンドに沿って配置されている、
請求項7記載のデジタル駆動型ヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル駆動型電気音響変換器の結線構造およびデジタル駆動型ヘッドホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドホンは、アナログ信号を入力信号とし、アナログ信号の強弱や周波数に応じて振動板を駆動させて音波を出力するものである。したがって、音源装置からの信号がデジタル信号であったとしても、音源装置とヘッドホンとの間に「デジタル−アナログ変換装置」を配置して一旦アナログ信号に変換してから電気音響変換器に入力する必要があった。
【0003】
近年では、音源装置からのデジタル信号をアナログ信号に変換することなく、デジタル信号のまま電気音響変換器に入力して、デジタル信号の疎密に応じて振動板を駆動させて音波を出力することができるようにしたデジタルアナログ変換装置が開発されている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4883428号明細書
【0005】
上記のようなデジタルアナログ変換装置を応用した電気音響変換器を左右のイヤピースに組み込むことで、音源から駆動ユニットに至るまでの全てをデジタル信号にするヘッドホンを構成できる。
【0006】
左右一対のイヤピースに組み込まれる電気音響変換器の一方には音源からの信号が信号変換装置を介してデジタル入力され、かつ、他方の電気音響変換器には一方の電気音響変換器との間に配置される信号線を介して信号が入力されるヘッドホンが知られている。電気音響変換器の間を接続する信号線は「渡りケーブル」と呼ばれる接続ケーブルである。渡りケーブルは、主にヘッドバンドの内部か、ヘッドバンドに沿って配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般にデジタル信号は、信号線を介して伝送される途中において外来雑音が混入しても、伝送先(受け手)で信号補正処理を行うことで、その影響を排除しやすい。ここで、外来雑音の原因として、外部から信号線に至る電磁波などが挙げられる。ヘッドホンにおける渡りケーブルは、ヘッドホンを装着する使用者の頭上部を通過する態様になるから、外部からの電磁波を受けやすい位置にあたり、上記のような外来雑音が混入しやすい。
【0008】
特許文献1に記載されているような信号変換装置を応用して構成したヘッドホンを用いると、渡りケーブルによって伝送される信号は、振動板を駆動させるために信号変換されたデジタル信号である。この場合、伝送されたデジタル信号によって直接的に振動板を駆動させることから、伝送先であるヘッドホンにおいては信号補正処理は行われない。
【0009】
伝送先において信号補正処理が行われないデジタル信号によって、振動板を駆動させるということは、渡りケーブルから混入した雑音を含んだデジタル信号によって振動板が駆動されることになる。そうすると、信号線の途中(伝送途中)で混入した外来雑音の影響を排除することなく、雑音が混入しているデジタル信号に基づいて音波を出力する状態になる。このように、雑音耐性が高いと言われるデジタル信号を用いて直接的に振動板を駆動させて音波を出力する場合であっても、外部雑音の影響を受けて「音の質(音質)」が低下することがある。このようなデジタル駆動型ヘッドホンの課題は、従来から知られている「外来雑音の混入を阻止する。外来雑音を排除する。」という課題とは異なる課題であって、これに対する解決手段は知られていない。
【0010】
上記の課題を解決するために、左右それぞれの振動板の直近に信号変換装置を配置することがある。しかし、このような方法ではコストが上昇するとともに、左右の信号変換装置でそれぞれ信号処理用の回路が必要になるなど、構造が複雑化するという課題があった。
【0011】
また、一方の電気音響変換器から出力される音波は、雑音が混入していないデジタル信号に応じたものになり、他方の音響変換器から出力される音波は、雑音が混入しているデジタル信号に応じたものになる。そすると、左右一対の電気音響変換器において、左側の電気音響変換器からの出力音と右側の電気音響変換器からの出力音の感度や音質に差が生じることがある。
【0012】
また、デジタル信号は、高周波成分を多く含むので、渡りケーブルから外部に対して非常に大きな不要輻射を生じさせる可能性もある。
【0013】
本発明は、左右一対の電気音響変換器相互間に用いられる渡りケーブルへの外来雑音の進入を防ぎ、質の良い音波を出力できるデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造およびデジタル駆動型ヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
デジタル信号によって振動板を駆動し音波に変換する信号変換部を有するデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造であって、
左右一対で構成される前記デジタル駆動型電気音響変換器において、第1信号線を介して前記デジタル信号の音源と接続される一方のデジタル駆動型電気音響変換器と、この一方のデジタル駆動型電気音響変換器と接続される他方のデジタル駆動型電気音響変換器は、第2信号線を介して接続されていて、
前記第2信号線は、正極入力線と負極入力線を一対とする撚り線構造からなることを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、振動板の駆動がデジタル方式である左右一対の電気音響変換器に用いられる渡りケーブルへの外来雑音の進入を防ぎ、質の良い音波を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るデジタル駆動型電気音響変換器の実施例の外観を示す斜視図である。
図2】上記実施例の内部の一部を拡大して示す斜視図である。
図3】上記実施例における結線構造の端部付近を拡大して示す斜視図である。
図4】上記実施例の機能ブロック図である。
図5】本発明に係るデジタル駆動型電気音響変換器の別の実施例であって結線構造の端部付近を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るデジタル駆動型電気音響変換器の結線構造およびデジタル駆動型ヘッドホンの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
●電気音響変換器
まず、電気音響変換器の実施例について説明する。図1に示すように、ヘッドホン100は、電気音響変換器が組み込まれるイヤピースであるヘッドホンユニット101を左右一対に有してなる。ヘッドホンユニット101はそれぞれ、ヘッドパッド30の両端に連結されている支持部材20に保持されている。ヘッドホンユニット101は、使用者の耳周辺に接触するイヤパッド41と、イヤパッド41が取り付けられるハウジング40と、を有してなる。イヤパッド41の接触面の外形は、使用者の耳の周囲を覆うことができるように略長円状になっている。ハウジング40の外形も、イヤパッド41に倣って略長円状になっている。なおハウジング40、イヤパッド41の形状は上記略長円状には限らない。これらの形状は従来から用いられている略円形でも良く、多角形であってもよい。
【0019】
ハウジング40の内部には、電気信号を音波に変換する電気音響変換機構が配置されている。電気音響変換機構は、デジタル信号が入力信号として印加されるボイスコイルと、ボイスコイルに印加されるデジタル信号に応じて振動し音波を出力する振動板と、を有してなる。電気音響変換機構はまた、磁気ギャップを含む磁気回路を有する。ボイスコイルは、磁気ギャップ内に位置している。ハウジング40を保持している支持部材20は、ハウジング40の外側に取り付けられていて、ヘッドパッド30の長手方向に連結するようになっている。支持部材20は、長手方向の先端に向かって先細りの縦長形状を有している。
【0020】
ボイスコイルに印加されるデジタル信号は、通常の音源装置から出力されるデジタル信号に対して、所定の変調処理(信号変換処理)が施されたデジタル信号である。音源装置から出力されるデジタル信号がPCM信号であっても、電気音響変換機構において振動板に印加されるデジタル信号は、同じ信号形式ではない。例えば、パルス密度変調(PDM)信号である。以下、振動板に印加されるデジタル信号は同様とする。
【0021】
支持部材20には、内部空間が形成されていて、後述する信号処理回路21(図4参照)が収められている。なお、信号処理回路21は、左右一対のハウジング40の一方の支持部材20の内部空間にのみ収められている。信号処理回路21が収められている支持部材20の下端部には、音源からの信号入力線である第1信号線(接続ケーブル51)が接続されるインターフェースが設けられている。接続ケーブル51を第1信号線とする。
【0022】
左右のハウジング40を保持する左右の支持部材20は、互いにヘッドパッド30を介して繋がっている。また、左右の支持部材20は、バネ性を有する湾曲バー10を介して繋がっている。湾曲バー10は、その両端部が支持部材20の前方側の上端部と後方側の上端部に取り付けられている。この湾曲バー10によって、ヘッドホン100を使用するときの側圧が与えられる。湾曲バー10は、ヘッドバンドとしての機能も併せ持つ。なお、本実施例における湾曲バー10には、後述する第2信号線が収納される。また、湾曲バー10の代わりにヘッドパッド30にバネ性を持たせて側圧を与えるように構成してもよい。かかる構成では、ヘッドパッド30がヘッドバンドとしての機能も併せ持つ。
【0023】
●ヘッドホンユニットの構成
ここで、ヘッドホン100が備えるヘッドホンユニット101の構造について説明する。図4に示すように、ヘッドホンユニット101は、信号処理回路21と駆動ユニット401とを有してなる。駆動ユニット401は、信号処理回路21から供給されるデジタル信号から直接的に音波へと変換して音を出力する電気音響変換器である。
【0024】
駆動ユニット401は、磁気ギャップを含む磁気回路と、磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルと、ボイスコイルに電気信号を印加したときに、印加された電気信号に応じて振動する振動板と、を有してなる。この振動板の振動によって、電気信号が音波に変換されて出力される。駆動ユニット401に印加される信号は、すでに述べたように、例えばパルス密度変調によるデジタル信号であって、各駆動ユニット401は、1つの振動板に対して複数のボイスコイルを有している。
【0025】
信号処理回路21は、第1信号線である接続ケーブル51を介してデジタル音源である音源装置50と接続されている。
【0026】
信号処理回路21が配置される側の駆動ユニット401は、信号ケーブル404を介して信号処理回路21と電気的に接続されている。信号処理回路21が配置されない側の駆動ユニット401は、第2信号線である渡りケーブル11を介して信号処理回路21と電気的に接続されている。
【0027】
駆動ユニット401が備えるボイスコイルは、例えば4個であって、これらが1つの振動板に取り付けられている。各ボイスコイルに、信号処理回路21で処理されたデジタル信号が個別に印加される。信号処理回路21と各ボイスコイルを接続する信号線は、1つのボイスコイル当たり2本必要になる。1本が正極入力線であり、もう一本が負極入力線である。この正極入力線と負極入力線が1対として1つのボイスコイルに対する信号ケーブル404および渡りケーブル11を構成する。
【0028】
●結線構造
次に、本発明に係る結線構造の実施形態について説明する。図2は、一方のヘッドホンユニット101において、支持部材20の外側のカバーとハウジング40を取り外した状態の例を示す拡大図である。図2に示すように、支持部材20の内部には、信号処理回路21が収納されている。信号処理回路21は、信号変換部と、信号変換プログラムが記憶される記憶部と、信号変換部において変換処理されたデジタル信号の出力端子であるケーブルソケット22と、を有してなる。信号処理回路21は、支持部材20の外形と同様に、下方向に向けて先細りになる形状を有している。なお、信号処理回路21の形状はこれに限られるものではない。
【0029】
信号変換部および信号変換プログラムは、音源装置50から入力されたデジタル信号に対して所定の信号変換処理、例えばパルス密度変調等に対応した信号へ変換する処理を実行する。この信号変換部および信号変換プログラムによって信号変換処理が行われ、生成されたデジタル信号は、ケーブルソケット22に接続される渡りケーブル11を介して、他方の駆動ユニット401へと伝送される。伝送されたデジタル信号は、駆動ユニット401が有する複数のボイスコイルのそれぞれに対して個別に印加される。
【0030】
渡りケーブル11は、正極入力線と負極入力線を一対として撚り合わせた撚り線構造によって構成されている。すでに説明したとおり、駆動ユニット401はボイスコイルを4個備えているので、撚り線である渡りケーブル11は4本必要になる。図2に示すように、渡りケーブル11は、例えば、2対ごとにケーブルプラグ12が取り付けられていて、このケーブルプラグ12がケーブルソケット22に嵌めこまれて接続されるようになっている。渡りケーブル11の他方の端部は、ボイスコイルの引出配線に結線される。これによって、他方の駆動ユニット401が、一方の駆動ユニット401側に配置されている信号処理回路21と接続される。
【0031】
図3は、図2において示される領域Aの部分を拡大した斜視図である。図3に示すように渡りケーブル11は、湾曲バー10を構成するバネ材13の被覆によって湾曲バー10の内部に配設されている。1本の湾曲バー10の内部に2対の渡りケーブル11が配設されている。これは、湾曲バー10の太さに起因するものであって、より径が太い湾曲バー10を用いれば、4対の渡りケーブル11を1本の湾曲バー10の内部に配設することもできる。また、渡りケーブル11をヘッドパッド30の内部に配設してもよい。
【0032】
なお、バネ材13の端部は湾曲バー10の径方向にL字状に折り曲げられている。このL字状の端部が支持部材20の上端部に嵌まり、支持部材20に湾曲バー10が取り付けられる。
【0033】
●結線構造の効果
信号処理回路21から駆動ユニット401に伝送される信号は振動板を直接駆動するためのデジタル変調処理が施された信号である。このデジタル信号は矩形波であるデジタル信号の羅列として振動板に印加され、直接的に振動板を振動させて音波を出力するので、信号補正処理は行われない。したがって、伝送途中において外来雑音がデジタル信号に混入すると、混入した雑音によって本来伝送される信号パターンに差異が生じ、音源装置からの信号に忠実に対応した音波を出力できず、出力される音の質を低下させることになる。
【0034】
上記説明した渡りケーブル11のように、正極入力線と負極入力線を1対として撚り合わせた撚り線構造にした結線構造を用いれば、上記のような外来雑音の影響を排除することができる。正極入力線を流れるデジタル信号と負極入力線を流れるデジタル信号は、符号が反転しているので、正極入力線と負極入力線を1対として撚り合わせることにより、線間結合性が良くなる。これによって、外来雑音への耐性を向上させることができ、特定のボイスコイルに対する入力デジタル信号の雑音の影響を抑制することができる。
【0035】
また、正極入力線と負極入力線を1対として撚り合わせて線間結合性が高められることによって、高調波成分を多く含むデジタル信号を流しても、渡りケーブル11からの不要輻射を抑えることができる。
【0036】
上記のように外来雑音の影響を排除できる結線構造を用いた電気音響変換器であれば、デジタル音源からのデジタル信号をアナログ変換することなく、フルデジタル構成にしても、音の質や感度を低下させることなく、高音質の出力を維持することができる。
【0037】
●結線構造の電磁シールド構造
なお、渡りケーブル11は、図5に示されるように1対の撚り線をまとめた電磁シールド14を用いて被覆を施してもよい。また、1つのケーブルソケット22に取り付けられる2対または4対の撚り線構造をまとめた電磁シールド構造を用いて被覆を施してもよい。また、湾曲バー10が電磁シールド構造を有していてもよい。これらの電磁シールドにおいて、その一端は基準電圧(GND電圧)に接続される。この基準電圧への接続点は信号処理回路がある側で接続されることが望ましい。
【0038】
上記のシールド構造は、電磁遮蔽特性を有する網状部材を用いて構成してもよい。また、導電性チューブを用いてもよい。
【0039】
渡りケーブル11に電磁シールド構造を施すことで、外来雑音に対する耐性をより向上させることができる。また、このような電磁シールド構造は外部に対する不要輻射を抑制する効果も合わせ持つ。
【符号の説明】
【0040】
10 湾曲バー
11 渡りケーブル
21 信号処理回路
40 ハウジング
51 接続ケーブル
100 ヘッドホン
101 ヘッドホンユニット
401 駆動ユニット
図1
図2
図3
図4
図5