特許第6802955号(P6802955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802955チョコレート菓子用ナイフを用いたチョコレート菓子の切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802955
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】チョコレート菓子用ナイフを用いたチョコレート菓子の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26B 9/00 20060101AFI20201214BHJP
   A23G 1/00 20060101ALI20201214BHJP
   A23G 7/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B26B9/00 A
   A23G1/00
   A23G7/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-210101(P2016-210101)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2018-68527(P2018-68527A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】300040461
【氏名又は名称】株式会社龍泉刃物
(73)【特許権者】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(74)【代理人】
【識別番号】100148437
【弁理士】
【氏名又は名称】中出 朝夫
(72)【発明者】
【氏名】増谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢樹
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3199679(JP,U)
【文献】 実開平02−040369(JP,U)
【文献】 実開昭58−011461(JP,U)
【文献】 米国特許第03220110(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 9/00
A23G 1/00
A23G 7/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイフ本体における刀身部(1)が先端に亙りテーパ状に形成されており、この刀身部(1)の下縁には主刃部(2)が形成され、略直線状の刃先である一方、
この主刃部(2)のテーパ開始位置には微小な副刃部(3)が柄部(4)側に亙り連続的に形成されて構成されるナイフを用いて、
前記チョコレート菓子(C)の上面(t)に副刃部(3)のみを当接させた状態で一方向に直線的に摺動して、当該上面(t)に直線状の案内溝(s)を形成するのに連動しながら、この案内溝(s)の全長に亙り主刃部(2)を当接せしめ、
前記柄部(4)の上面を押圧することにより主刃部(2)を菓子の躯体方向に押し込んで剪断することを特徴とするチョコレート菓子用ナイフを用いたチョコレート菓子の切断方法。
【請求項2】
柄部(4)を手で挟持して、かつ、当該柄部(4)の終端(41)を掌の拇指球および小指球の間に当接せしめて保持した状態で、前記柄部(4)の上面を押圧することにより主刃部(2)を菓子の躯体方向に押し込んで剪断することを特徴とする請求項1記載チョコレート菓子用ナイフを用いたチョコレート菓子の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用切断器具の改良、更に詳しくは、スマートな所作でチョコレート菓子の繊細な切断作業を行うことができ、かつ、形態を害することなく美しい切断面を得ることができるチョコレート菓子用ナイフおよびそれを用いたチョコレート菓子の切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、菓子職人の手によって精巧に制作される菓子は、芸術的作品と認められるまでに発展しており、中でも、所謂「ボンボンショコラ」と呼ばれる一口サイズの小型のチョコレート菓子は、バラエティに富んでいて人気が高く愛好家も多い。
【0003】
このようなチョコレート菓子は、中身に種々の構造で材料を込めて、外周をチョコレートで薄くコーティングして構成されており、その精巧さおよび芸術性の高さから、単に賞味するだけではなく、菓子の中身の構成も美的鑑賞の対象となっている。
【0004】
そして、菓子の中身を鑑賞するために菓子を切断する場合、チョコレート菓子は、表面に薄くて硬いチョコレート層がコーティングされているのに対して、中身は比較的軟らかい材料が種々の構造で込められているという非常にデリケートな構造であるため、注意深く繊細な操作が必要とされる。
【0005】
従来、食卓において食品を切断する器具として、テーブルナイフが使用されているが、通常は剪断力を高めるための刃先に凹凸が形成されているものが多く、このような刃でチョコレート菓子を上面から切断しようとすると、上面を全体的に押圧してチョコレート層が不意に割れてしまったり、また、ナイフを下ろす際に、ナイフの側面が菓子の中身を擦過してしまい、切断面が崩れて外観が荒れてしまうという問題があった。
【0006】
また、単に鋭利な刃で構成されたナイフを使用するとしても、薄くて硬いチョコレート層を割ることなく切断するには技巧が必要であり、菓子職人のようなプロではなく一般の愛好家では失敗することも多く、ぎこちない動作となりスマートな所作が得られずテーブルマナーに反するおそれがある。
【0007】
更に、一般的に食品を切断する器具は、柄を握って用いる「包丁」であるが(例えば、特許文献1および2参照)、調理においては使用されるものの、食卓には似付かず使用されることはなく、特に、小型のチョコレート菓子を切断するような場合は、利き手と反対側の手の指先で菓子を押さえる必要があり、指先の体温でチョコレートが溶けてしまうため、迅速かつ正確な作業が求められるため、繊細な切断作業の用途には相応しくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−51708号公報
【特許文献2】特開平11−235479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の食品用切断器具に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、スマートな所作でチョコレート菓子の繊細な切断作業を行うことができ、かつ、形態を害することなく美しい切断面を得ることができるチョコレート菓子用ナイフおよびそれを用いたチョコレート菓子の切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0017】
即ち、本発明は、ナイフ本体における刀身部1が先端に亙りテーパ状に形成されており、この刀身部1の下縁には主刃部2が形成され、略直線状の刃先である一方、
この主刃部2のテーパ開始位置には微小な副刃部3が柄部4側に亙り連続的に形成されて構成されるナイフを用いて、
前記チョコレート菓子Cの上面tに副刃部3のみを当接させた状態で一方向に直線的に摺動して、当該上面tに直線状の案内溝sを形成するのに連動しながら、この案内溝sの全長に亙り主刃部2を当接せしめ、
前記柄部4の上面を押圧することにより主刃部2を菓子の躯体方向に押し込んで剪断するという技術的手段を採用することによって、チョコレート菓子用ナイフを用いたチョコレート菓子の切断方法を完成させた。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、柄部4を手で挟持して、かつ、当該柄部4の終端41を掌の拇指球および小指球の間に当接せしめて保持した状態で、前記柄部4の上面を押圧することにより主刃部2を菓子の躯体方向に押し込んで剪断するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ナイフ本体における刀身部を先端に亙りテーパ状に形成して、この刀身部の下縁には主刃部を形成し、略直線状の刃先にする一方、この主刃部のテーパ開始位置には微小な副刃部を柄部側に亙り連続的に形成したことによって、
前記副刃部により前記チョコレート菓子の上面において直線的な案内溝を形成可能にして、かつ、主刃部により当該案内溝から菓子の躯体を剪断することができる。
【0020】
したがって、本発明のチョコレート菓子用ナイフは、人間工学に基づいて緻密に設計されているため、手に馴染みやすく操作性に優れており、一般のチョコレート菓子の愛好家であっても、技巧を必要とせずに一連の動作でスマートかつ繊細な切断作業を実現することができる。
【0021】
また、必要に応じて、柄部の上面に、指載せガイドを形成することにより、この指載せガイドを押さえることにより、少ない力で局部的な押圧を確実に行うことができ、この際、更に、副刃部の刃先が円弧をなしており、その円弧における法線の延長線上に指載せガイドを形成することにより、副刃部に最も効率的に押圧力を伝達することができる。
【0022】
そして、本発明のチョコレート菓子用ナイフを用いることによって、チョコレート菓子の上面に副刃部のみを当接させた状態で一方向に直線的に摺動して、当該上面に直線状の案内溝を形成するのに連動しながら、この案内溝の全長に亙り主刃部を当接せしめ、前記柄部の上面を押圧することにより主刃部を菓子の躯体方向に押し込んで剪断することができ、スマートな所作でチョコレート菓子の繊細な切断作業を行うことができ、かつ、形態を害することなく美しい切断面を得ることができることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態のチョコレート菓子用ナイフを表わす側面図である。
図2】本発明の実施形態のチョコレート菓子用ナイフの副刃部を表わす拡大側面図である。
図3】本発明の実施形態のチョコレート菓子用ナイフの構造を表わす側面図である。
図4】本発明の実施形態のチョコレート菓子用ナイフの変形例を表わす側面図である。
図5】本発明の実施形態のチョコレート菓子用ナイフの使用状態を表わす斜視図である。
図6】本発明の実施形態のチョコレート菓子の切断方法を表わす説明側面図である。
図7】本発明の実施形態のチョコレート菓子の切断方法を表わす斜視図である。
図8】本発明の実施形態のチョコレート菓子の切断方法を表わす説明側面図である。
図9】本発明の実施形態のチョコレート菓子の切断方法を表わす斜視図である。
図10】本発明の実施形態のチョコレート菓子の切断方法を表わす説明側面図である。
図11】本発明の実施形態のチョコレート菓子の切断方法を表わす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図1から図11に基づいて説明する。本発明は、硬化したチョコレートが表面にコーティングされてなるチョコレート菓子Cを切断するための小型のナイフである。
【0025】
本実施形態において切断の対象となるチョコレート菓子Cは、所謂「ボンボンショコラ」と呼ばれる一口サイズの小型のチョコレート菓子であって、表面が薄いチョコレートでコーティングされており、その大きさや形状は様々であり、中身の具材は、例えば、ガナッシュやプラリネ、マジパン、ジャンドゥジャなどがある。
【0026】
そして、図1に示すように、ナイフ本体における刀身部1が先端に亙りテーパ状に形成されており、この刀身部1の下縁には主刃部2が形成され、略直線状の刃先である。
【0027】
ナイフ本体を構成する材料としては。金属(鉄や鋼鉄、チタンなど)やセラミックス、プラスチックなどの硬質材料を採用することができる。なお、刀身部1の切っ先は、切断作業には不要であり、安全性を高めるために丸みを帯びているのが好ましい。
【0028】
この際、必要に応じて、主刃部2を両刃状にすることによって、片面から研磨されてなる片刃状とは異なり、切断の際に、刃が真っ直ぐに入っていくことができる。また、略直線状の刃先にしたことにより、チョコレート菓子Cの上面tが平面状の場合に、上面にピッタリとフィットさせて均等圧に切り始めることができる。
【0029】
そして、前記主刃部2のテーパ開始位置には微小な副刃部3が柄部4側に亙り連続的に形成されている(図2参照)。この副刃部3は、刃渡り3mm以内が好ましく、必要十分な機能を発揮して安全性も高い。本実施形態における主刃部2のテーパは、ナイフ本体の柄部4の上面から刀身部1の切っ先にかけて一直線状をなす一方、主刃部2の刃先直線部分と柄部4の下面とが鈍角をなすことで構成されている。この鈍角の範囲は、110°〜140°が使い勝手が良く好ましい。
【0030】
本実施形態では、柄部4の上面に、指載せガイド5を形成することができる。この指載せガイド5は、主として使用者の人差し指の腹を適切な位置に載置できるように誘導するためのものである。
【0031】
本実施形態では、副刃部3の刃先が円弧をなしており、その円弧における法線の延長線上に指載せガイド5を形成することができ(図3参照)、こうすることにより、人差し指で押さえた力が副刃部3にダイレクトに伝わるので、最も効率的に押圧力を伝達することができ、少ない力で局部的な押圧を確実に行うことができる。
【0032】
なお、前記指載せガイド5の構成は、柄部4の上面または近傍側面における表面の色彩を異ならせるなどの二次元的な識別表示であっても良いし、図4に示すように、三次元的な凹凸51を形成するものであっても良い。
【0033】
また、本実施形態では、ナイフ本体の刀身部1および柄部4が単一板体(一枚の単板あるいは、真ん中のコア材の両側を同一または他材料で挟み込んでなる複数層のクラッド材などの見かけ上が一枚ものの板体であって、好ましくは厚さ1〜3mm程度)で構成されており、この柄部4の終端41が掌の拇指球および小指球の間に当接して保持可能な全長(切っ先から終端まで16cm前後が好ましい)にすることもできる(図5参照)。こうすることにより、手の中に安定的に保持することができて切断時の操作性が向上する。更に、単一板体で形成することにより、デザイン性が向上するとともに、ナイフをテーブルに載置した際に、テーブル面から刃が浮き上がらないために安全である。
【0034】
<切断方法について>
次に、本発明の切断方法について説明する。使用するナイフの構成については前述のとおりである。
【0035】
まず、図6および図7に示すように、前記チョコレート菓子Cの上面tに副刃部3のみを当接させた状態で一方向(通常は、使用者の手前方向)に直線的に摺動する。
【0036】
次いで、図8および図9に示すように、チョコレート菓子Cの上面tに直線状の案内溝sを形成するのに連動しながら、この案内溝sの全長に亙り主刃部2を当接せしめる。即ち、副刃部3が上面tに直線状の案内溝sを形成し終わって、上面tの縁部に到達するときに、副刃部3(あるいは上面tの縁部)が支点になるようにして、刀身部1の切っ先を下げつつ柄部4の終端を上げることによって(図中の矢印方向)、主刃部2を上面tにスムースに当接させることができる。
【0037】
然る後、図10および図11に示すように、前記柄部4の上面を押圧することにより主刃部2を菓子の躯体方向に押し込んで剪断することができる。本実施形態では、必要に応じて、主刃部2を両刃状にすることによって、片面から研磨されてなる片刃状とは異なり、切断の際に、刃が真っ直ぐに入っていくことができる。
【0038】
このようにして、スマートな所作でチョコレート菓子の繊細な切断作業を行うことができ、かつ、鋭利な刃先で抵抗なく切断されることにより、チョコレート菓子の形態を害することなく美しい切断面を得ることができる。なお、チョコレート菓子Cの上面tに凹凸があったり、上面tの形状が曲面であっても、先に形成した案内溝sに沿って切断を開始するため、同様の美しい切断面を得ることができる。
【0039】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ナイフ本体の柄部4には、別部材を固定することができるし、他の指の位置をガイドする凹凸等を設けることもできる。
【0040】
また、ナイフ本体を収容するためのケースを附属することができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0041】
1 刀身部
2 主刃部
3 副刃部
4 柄部
41 終端
5 指載せガイド
51 凹凸
C チョコレート菓子
t 上面
s 案内溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11