特許第6802976号(P6802976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802976
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/07 20060101AFI20201214BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20201214BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20201214BHJP
   B29C 65/54 20060101ALI20201214BHJP
   E04C 5/20 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   E04C5/07
   E04G21/12 105E
   B29C65/70
   B29C65/54
   E04C5/20
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-570569(P2016-570569)
(86)(22)【出願日】2016年1月8日
(86)【国際出願番号】JP2016050452
(87)【国際公開番号】WO2016117384
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2018年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-7576(P2015-7576)
(32)【優先日】2015年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 晋一
(72)【発明者】
【氏名】石峯 忠浩
(72)【発明者】
【氏名】河邊 亮介
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−279314(JP,A)
【文献】 特開平07−062753(JP,A)
【文献】 特開平06−129058(JP,A)
【文献】 特開2001−262714(JP,A)
【文献】 特開2014−171582(JP,A)
【文献】 特開2002−370289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C5/00−5/20
E04G21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹凸が形成された軸棒の側面に、樹脂が含浸された繊維シートを巻いた状態で固定しながら前記樹脂を硬化させ、硬化した前記樹脂が含浸された繊維シートから成る管状の継手を作成する第1の工程と、
前記継手の一端から前記軸棒を途中まで抜き出して、前記継手の側壁における前記軸棒の端部に対応する位置に第1の貫通穴を設けるとともに、前記継手の側壁において前記軸棒が挿入されていない奥側に対応する位置に第2の貫通穴を設ける第2の工程と、
曲げ補強用の第1の棒材を前記継手の他端から挿入した状態で、前記継手に接着剤を封入して前記第1の棒材を前記継手に固定する第3の工程と、
前記継手の一端から前記軸棒を完全に抜き出す第4の工程と、
前記継手の一端が他の建設部材と接合するための接合棒材を挿入可能な状態で、前記継手及び前記第1の棒材を、木質系又はコンクリート製の建設部材に固定する第5の工程と、
を含む構造物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程に先だって、
半径を調節可能な芯棒の側面に、複数の凹凸が網目状に形成され前記樹脂に対して非接着性を有するテープを巻くことにより、前記軸棒を生成する第6の工程を含み、
前記第2の工程では、
前記芯棒の半径を短くして、前記軸棒を抜き出す、
請求項1に記載の構造物の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程に先立って、
前記軸棒の側面に、らせん状のねじ溝を形成する第7の工程を含み、
前記第2の工程では、
前記ねじ溝に沿って前記継手に対して前記軸棒を回転させながら前記軸棒を抜き出す、
請求項1に記載の構造物の製造方法。
【請求項4】
前記第5の工程は、
前記継手の前記第の貫通穴と前記継手が固定された建設部材に空けられた第3の貫通穴とを位置合わせする第8の工程を含み、
他の建設部材と接合するための第2の棒材を前記継手の一端から挿入する第9の工程と、
前記第及び第3の貫通穴から接着剤を注入して、前記継手と前記第2の棒材とを固定する第10の工程と、
を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を建築する際には、建設部材中に挿入されている鉄筋同士を継手(スリーブ又はパイプ)で接合することが行われている。このような継手の中には、内側面に複数の凹凸を形成することにより、鉄筋との接合強度を高めたものがある(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−49356号公報
【特許文献2】特開平7−279314号公報
【特許文献3】特開平6−129058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1等の継手を製造するためには、内側面に複数の凹凸を形成するための複雑な工程が必要になる。また、このような継手は、肉厚の厚いものしか製造することができない。
【0005】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単に製造することができ、小型軽量かつ高い接合力を有する構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る構造物の製造方法は、
複数の凹凸が形成された軸棒の側面に、樹脂が含浸された繊維シートを巻いた状態で固定しながら前記樹脂を硬化させ、硬化した前記樹脂が含浸された繊維シートから成る管状の継手を作成する第1の工程と、
前記継手の一端から前記軸棒を途中まで抜き出して、前記継手の側壁における前記軸棒の端部に対応する位置に第1の貫通穴を設けるとともに、前記継手の側壁において前記軸棒が挿入されていない奥側に対応する位置に第2の貫通穴を設ける第2の工程と、
曲げ補強用の第1の棒材を前記継手の他端から挿入した状態で、前記継手に接着剤を封入して前記第1の棒材を前記継手に固定する第3の工程と、
前記継手の一端から前記軸棒を完全に抜き出す第4の工程と、
前記継手の一端が他の建設部材と接合するための接合棒材を挿入可能な状態で、前記継手及び前記第1の棒材を、木質系又はコンクリート製の建設部材に固定する第5の工程と、
を含む。
【0007】
前記第1の工程に先だって、
半径を調節可能な芯棒の側面に、複数の凹凸が網目状に形成され前記樹脂に対して非接着性を有するテープを巻くことにより、前記軸棒を生成する第6の工程を含み、
前記第2の工程では、
前記芯棒の半径を短くして、前記軸棒を抜き出す、
こととしてもよい。
【0008】
前記第1の工程に先立って、
前記軸棒の側面に、らせん状のねじ溝を形成する第7の工程を含み、
前記第2の工程では、
前記ねじ溝に沿って前記継手に対して前記軸棒を回転させながら前記軸棒を抜き出す、
こととしてもよい。
【0009】
前記第5の工程は、
前記継手の前記第の貫通穴と前記継手が固定された建設部材に空けられた第3の貫通穴とを位置合わせする第8の工程を含み、
他の建設部材と接合するための第2の棒材を前記継手の一端から挿入する第9の工程と、
前記第及び第3の貫通穴から接着剤を注入して、前記継手と前記第2の棒材とを固定する第10の工程と、
を含む、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、複数の凹凸が側面に形成された軸棒に樹脂が含浸された繊維シートを巻いて樹脂を硬化させるという簡便な方法で管状の継手が形成される。また、この継手は、繊維シートで形成されているので、小型で軽量である。さらに、この継手の内側面には、複数の凹凸が形成されているので、内部に挿入される棒材との間に高い接合力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】この発明の実施の形態1に係る継手及び棒材の外観を示す図である。
図1B】継手と棒材を長手方向から見た図である。
図1C】2つの棒材が継手に接合された状態を示す図である。
図2A】長手方向から見た継手の断面図である。
図2B】長手方向に沿った継手の断面図である。
図3A】継手が組み込まれる建設部材を長手方向に延びる側面から見た断面図である。
図3B】建設部材を長手方向から見た図である。
図3C】建設部材に挿入された継手の一部を示す断面図である。
図4】継手、建設部材及び構造物の製造方法のフローチャート(その1)である。
図5】継手、建設部材及び構造物の製造方法のフローチャート(その2)である。
図6A】継手の製造に用いられる芯棒の斜視図である。
図6B】芯棒にP.P.テープを巻いた状態を示す図である。
図6C】軸方向を繊維の方向とする繊維シートを軸棒に巻いた状態を示す図である。
図6D】周方向を繊維の方向とする繊維シートを軸棒に巻いた状態を示す図である。
図7A】軸レゾルシノール樹脂棒に巻かれた継手を示す図である。
図7B】軸棒の半径を小さくした状態を示す図である。
図7C】軸棒が途中まで引き抜かれた様子を示す図である。
図7D】棒材が継手に挿入された様子を示す図である。
図7E】棒材と継手の間に接着層が形成された様子を示す図である。
図7F】軸棒が完全に引き抜かれた様子を示す図である。
図8】継手及び棒材が平板の溝部に挿入され固定された様子を示す図である。
図9】2つ建設部材と、それらを接合する接合棒材とを示す斜視図である。
図10】一方の建設部材に接合棒材が挿入された状態を示す図である。
図11A】両方の建設部材に接合棒材が挿入された状態を示す平面図である。
図11B】両方の建設部材に接合棒材が挿入された状態を示す斜視図である。
図12】接合された建設部材に接着剤が注入される様子を示す図である。
図13A】柱を介して梁としての2つの建設部材を接合する様子(接合前)を示す図である。
図13B】柱を介して梁としての2つの建設部材を接合する様子(接合後)を示す図である。
図14】この発明の実施の形態2に係る継手の製造に用いられる軸棒及び継手の構成を示す斜視図である。
図15A】鉄筋コンクリート造基礎と建設部材とを接合する例(その1、接合前)を示す図である。
図15B】鉄筋コンクリート造基礎と建設部材とを接合する例(その1、接合後)を示す図である。
図16A】鉄筋コンクリート造基礎と建設部材とを接合する例(その2、接合前)を示す図である。
図16B】鉄筋コンクリート造基礎と建設部材とを接合する例(その2、接合後)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1Aに示すように、継手1は、一方向に延びる管状の継手部材(スリーブ)である。継手1は、炭素繊維の強化プラスチックで構成される炭素繊維パイプ(Carbon Fiber Pipe)である。継手1は、棒材2と棒材3とを接合する。棒材2、3は、例えば異形鉄筋である。
【0017】
図1Bに示すように、継手1は、円環状の継手である。棒材2、3は、円柱状の棒材である。継手1の内管の直径は、棒材2、3の半径よりも2、3mm程度大きくなっている。
【0018】
図1Cに示すように、継手1は、両端から管の内側に棒材2及び棒材3を挿入して、さらに、接着剤を封入することにより、棒材2と棒材3とを接合する。継手1は、簡便な製法で形成することができ、小型軽量で、棒材2と棒材3との間に高い接合力を与える。以下、その構成及び製法について説明する。
【0019】
図2A及び図2Bに示すように、継手1は、2つの繊維層1A、1Bで構成されている。
【0020】
繊維層1Aは、樹脂が含浸された炭素繊維シートが円環状に巻かれ樹脂が硬化することにより形成されている。この炭素繊維シートは、繊維の方向を、継手1の軸方向として巻かれている。この繊維シートは、例えば4層に巻かれている。
【0021】
繊維層1Bは、樹脂が含浸された炭素繊維シートが円環状に巻かれ樹脂が硬化することにより形成されている。この炭素繊維シートは、繊維の方向を、継手1の周方向として巻かれている。この繊維シートは、例えば4巻に巻かれている。
【0022】
図2Aに示すように、棒材2と継手1(繊維層1A)との間には、接着剤が充填されることにより形成された接着層4が形成されている。接着層4を介して、継手1と棒材2(あるいは棒材3)が接合されている。図2Bに示すように、棒材2と棒材3とは、継手1で軸方向に連結されている。
【0023】
継手1は、繊維層1A、1Bで構成されているため、非常に小型で軽量である。また、繊維層1Aと繊維層1Bとでは、繊維方向が異なるため、軸方向の引張力、圧縮力等、あらゆる方向の力に対して継手1を強くすることができるので、継手1の強度を向上することができる。
【0024】
図2A及び図2Bに一部拡大して示すように、繊維層1Aの最内側、すなわち継手1の内側面には、複数の凹凸が形成されている。この凹凸により、継手1と接着層4との接触面積を高め、挿入される棒材2、3の接合強度を飛躍的に高めることができる。例えば、凹凸の存在で、継手1から鉄筋の棒材2、3が抜ける引っ張り力を、鉄筋の棒材2、3が降伏するレベルの力にまで高めることができる。また、継手1の内壁面の凹凸は、棒材2、3を介して伝わる圧縮応力に対しても効果を発揮する。すなわち、圧縮降伏が発生する力を飛躍的に高めることができる。
【0025】
図2Bに示すように、継手1には、管の内側と外側とを挿通する貫通穴10が2つ設けられている。貫通穴10は、棒材2、3の端部付近に形成されている。貫通穴10は、接着剤を管内に挿入したり、管内の空気を外に排出したりするために設けられている。
【0026】
図3Aに示すように、継手1は、建設部材100に組み込まれた形で使用される。建設部材100は、集成材又は製材から成る木質系の角材である。図3A及び図3Bに示すように、建設部材100には、その長手方向に延びる長穴50が6つほど設けられている。各長穴50には、建設部材100の曲げ補強用の棒材2(異形鉄筋)が挿入されている。継手1は、同じ長穴50の両端部付近に組み込まれている。継手1には、棒材2の端部が途中まで挿入されている。継手1は、他端が他の建設部材100と接合するための接合用の棒材3を挿入可能な状態で、すなわち長穴50が外部に開放された状態で、建設部材100に固定されている。
【0027】
図3Cに示すように、建設部材100に挿入された継手1の内部には、左上側の貫通穴10の手前まで、棒材2が挿入されている。棒材2は、接着剤による接着層4を介して継手1と固定されている。継手1では、貫通穴10より左側、すなわち棒材2が挿入されていない部分では、中空のままとなっている。
【0028】
次に、この発明の実施の形態に係る継手1の製造方法、建設部材100の製造方法及び建設部材100を用いた構造物の製造方法について説明する。図4図5には、これらの製造方法の流れが示されている。
【0029】
図4に示すように、まず、芯棒が作成される(ステップS1)。図6Aに示すように、芯棒6は、塩化ビニルの円管状のパイプ7と、長片8とで構成されている。パイプ7の一部は、軸方向(長手方向)に沿って切断されており、その切断箇所に長片8が挿入可能となっている。パイプ7に長片8を挿入すると、芯棒6の半径は所定の大きさとなり、パイプ7から長片8を退避させると、芯棒6の半径は、長片8が挿入されているときよりも小さくなる。パイプ7の側面は、繊維シートに含浸されている樹脂と接着性を有しない。なお、図示されている側の芯棒6の端部は、開口されているが、図示しない側の芯棒6の端部は、閉じられた平面となっている。
【0030】
続いて、図6Bに示すように、P.P.テープ9及び透明テープ11等のテープを芯棒6に巻く(ステップS2)。まず、透明テープ11が芯棒6に1巻きごとに5mm程度重なり合うようにらせん状に巻かれる。透明テープ11は、外側が接着面となっている。透明テープ11の上にP.P.テープ9が巻かれる。P.Pテープ9は、透明テープ11に接着された状態となっている。P.P.テープ9は、芯棒6の側面に前後が重ならないようにらせん状に巻かれる。P.P.テープ9の表面には、複数の凹凸が網目状に形成されている。この実施の形態では、ステップS1、S2が、半径を調節可能な芯棒6の側面に、複数の凹凸が網目状に形成され樹脂に対して非接着性を有するP.P.テープ9を巻くことにより、軸棒12を生成する第6の工程に対応する。
【0031】
続いて、繊維層1Aを形成する(ステップS3)。ここで、図6Cに示すように、繊維方向が軸方向の繊維シート(樹脂含浸)2Aを軸棒12の側面に巻くことにより、繊維層1Aが形成される。
【0032】
続いて、繊維層1Bを形成する(ステップS4)。ここで、図6Dに示すように、繊維方向が周方向の繊維シート(樹脂含浸)2Bを繊維層1Aの上に巻くことにより、繊維層1Bが形成される。
【0033】
続いて、外側からプレスをかけて樹脂を硬化させる(ステップS5)。これにより、図7Aに示すように、軸棒12の周りに巻回された2つの繊維層1A、1Bから成る継手1が形成される。この実施の形態では、ステップS3、S4、S5が、複数の凹凸が形成された軸棒12の側面に、樹脂が含浸された繊維シート2A、2Bを巻いた状態で固定しながら樹脂を硬化させ、硬化した樹脂が含浸された繊維シート2A、2Bから成る管状の継手1を作成する第1の工程に対応する。
【0034】
続いて、半径が小さくなるように軸棒12(芯棒6)の半径を調整する(ステップS6)。ここでは、パイプ7から長片8を軸方向に抜いて、図7Bに示すように、軸棒12(芯棒6)の半径を小さくする。軸棒12の径は、軸棒12を抵抗なく抜き出すことができ、かつ、接着剤が軸棒12と継手1の隙間に入り込まない程度の大きさとなる。パイプ7の背割り部分には、P.P.テープ9等がまかれているので、パイプ内に後述する接着剤が流れ込まないようになっている。ここで、P.Pテープ9が、繊維層1Aに貼り付いている場合には、軸棒12が抜かれた部分のP.Pテープ9を繊維層1Aから剥がすようにする。P.P.テープ9は、エポキシ樹脂との間の接着性が低く、らせん状に巻かれているため、容易に剥がすことができる。このため、図7Aの軸棒12の右半分と左半分とで、芯棒6に巻くP.Pテープ9を分けておくのが望ましい。
【0035】
続いて、軸棒12を途中まで抜き出す(ステップS7)。ここでは、図7Cに示すように、軸棒12が左側に抜き出される。すなわちこの実施の形態では、ステップS6、S7が、継手1の一端から軸棒12を途中まで抜き出す第2の工程に対応する。なお、ここで、継手1に貫通穴10が形成される。貫通穴10は、軸棒12の端部と、軸棒12が挿入されていない部分の奥側とに2カ所形成される。
【0036】
続いて、図5に示すように、軸棒12を抜き出した部分に、曲げ補強の棒材2を挿入する(ステップS8)。ここでは、図7Dに示すように、軸棒12を抜き出した右側の端部から棒材2が挿入される。
【0037】
続いて、曲げ補強の棒材2を挿入した部分に、エポキシ樹脂等の接着剤を一方の貫通穴10を介して注入して硬化させ、接着層4を形成する(ステップS9)。図7Eに示すように、棒材2と継手1との間に接着層4が形成される。これにより、棒材2が継手1に固定される。すなわち、この実施の形態では、ステップS8、S9が、曲げ補強用の第1の棒材としての棒材2を継手1の他端から挿入した状態で、継手1に接着剤を封入して棒材2を継手1に固定する第3の工程に対応する。
【0038】
続いて、軸棒12を継手1の端部から完全に抜き出す(ステップS10)。これにより、図7Fに示すように、継手1内に棒材2が挿入されていない空間が形成される。すなわちこの実施の形態では、ステップS10が、継手1の一端から軸棒12を完全に抜き出す第4の工程に対応する。
【0039】
続いて、継手1と棒材2とを、平板の溝部に固定する(ステップS12)。図8に示すように、平板20には、長手方向に3つの溝部21が形成されている。各溝部21に、継手1と棒材2が挿入され、エポキシ等の接着剤が溝部21に充填されて、継手1と棒材2とが固定される。なお、ここでは、継手1に設けられた貫通穴10(棒材2が設けられていない側の貫通穴10)と、平板20に開けられた貫通穴10とを位置合わせして、それらの位置が一致するように、継手1が設置される。すなわち、この実施の形態では、ステップS12が、継手1の内側面と継手1が固定された建設部材100の外面とを挿通する貫通穴10を形成する第8の工程に対応する。
【0040】
続いて、溝部21も接着剤を充填して塞ぎ、接着剤が硬化後、平板20を成形する。続いて、集成材又は製材に平板20が貼り付けられることにより、建設部材100が作成される(ステップS13)。図3Aには、このようにして作成された建設部材100が示されている。図3Aに示すように、棒材2の両端に継手1が挿入され、固定されている。これにより、溝部21が長穴50となる。すなわち、この実施の形態では、ステップS12、S13が、継手1の一端が他の建設部材100と接合するための接合用の棒材3を挿入可能な状態で、継手1及び棒材2を、木質系の建設部材100に固定する第5の工程に対応する。
【0041】
建設部材100は、他の建設部材100と接合されて、梁として用いられる。図9に示すように、2つの建設部材100が接合用の棒材3を介して接合される。
【0042】
図5に戻り、接合用の棒材3を継手1に挿入する(ステップS14)。ここで、図10に示すように他の建設部材100と接合するための接合用の棒材3が、建設部材100の長穴50に挿入される。
【0043】
続いて、他の建設部材100にも接合用の棒材3を挿入する(ステップS15)。このようにして、図11A及び図11Bに示すように、2つの建設部材100が棒材3を介して連結される。すなわち、この実施の形態では、ステップS14、S15が、他の建設部材100と接合するための棒材3を継手1の一端から挿入する第9の工程に対応する。
【0044】
続いて、貫通穴10より、接着剤を注入する(ステップS16)。図12に示すように、一方の建設部材100の貫通穴10から注入された接着剤は、矢印で示すように、継手1の中を流れ、継手1から、さらに接合用の棒材3が挿入された長穴50に入り込み、他の建設部材100まで達する。継手1及び長穴50の中に存在していた空気は、他の建設部材100の貫通穴10から抜け、その後に接着剤が充填される。継手1及び長穴50に充填された接着剤が硬化すると、2つの建設部材100の接合が完了する。この実施の形態では、ステップS16が、貫通穴10から接着剤を注入して、継手1と棒材3とを固定する第10の工程に対応する。
【0045】
ところで、建設部材100の接合状態は上述したものには限られない。例えば、図13A及び図13Bに示すように、柱材101の長穴60に接合用の棒材3を通し、柱材101を介して、梁としての2つの建設部材100を接合することもできる。
【0046】
以上詳細に説明したように、この実施の形態に係る管状の継手1は、複数の凹凸が側面に形成された軸棒12に繊維シート2A、2Bを巻いて樹脂を硬化させるという簡便な方法で形成される。また、この継手1は、繊維シート2A、2Bで形成されているので、小型で軽量である。さらに、この継手1の内側面には、複数の凹凸が形成されているので、高い接合力を得ることができる。すなわちこの実施の形態によれば、複数の凹凸が内側面に形成され、軽量かつ接合耐力の高い継手1を簡便な方法で製造することができる。
【0047】
実施の形態2.
上記実施の形態1に係る継手1の内側面は、P.P.テープ9を用いて網目状の凹凸を形成した。しかしながら、本発明はこれには限られない。継手1の内側面は、らせん状の凹凸で形成されていてもよい。
【0048】
図14において、継手1を一部破砕して示すように、この実施の形態では、軸棒12の側面に、らせん状のねじ溝が形成されている。継手1の内側面に形成される凹凸は、この軸棒12の側面に形成されたらせん状のねじ溝に沿ったものとなる。この軸棒12も、繊維シート2A、2Bに含浸される樹脂に対して、非接着性を有する。このようにすれば、ねじ溝に沿って軸棒12を回転させながら軸棒12を継手1から抜き出すことができる。
【0049】
この実施の形態における継手1、建設部材100及び構造物の製造方法は、上記実施の形態(図4図5参照)と同じである。ステップS7、S10では、巻かれた繊維シート2A、2Bに含浸した樹脂を硬化させた後に、ねじ溝に沿って軸棒12を回転させるようにすれば、軸棒12を継手1から抜き出すことができる。
【0050】
このように、この実施の形態では、継手1の内側面には、軸棒12のねじ溝に沿ったらせん状の凹凸が形成される。この凹凸により、挿入される棒材2と棒材3との接合力が向上する。この実施の形態では、図4のステップS1、S2の代わりに、繊維層1Aの形成(ステップS3)に先だって、表面にらせん状の凹凸が形成された軸棒12を生成する。この生成工程が、軸棒12の側面に、らせん状のねじ溝を形成する第7の工程に対応する。
【0051】
この実施の形態に係る軸棒12は、継手1を一本作成した後も、そのまま再利用が可能である。したがって、1本の軸棒12で、複数の継手1を作成することが可能である。これにより、継手1の生産性が向上する。
【0052】
上記実施の形態に係る建設部材100は、梁だけでなく、柱材にも適用可能である。例えば、図15A図15B図16A及び図16Bに示すように、建設部材100を柱脚として鉄筋コンクリート造基礎102に接合することができる。この場合、図15A及び図15Bに示すように、まず、建設部材100に接合用の棒材3を挿入、固定してから、無収縮グラウトが充填された鉄筋コンクリート造基礎102の縦穴70に棒材3を挿入して建設部材100を鉄筋コンクリート造基礎102の上に固定してもよい。
【0053】
また、図16A及び図16Bに示すように、鉄筋コンクリート造基礎102の縦穴70に接合用の棒材3を挿入して無収縮グラウトを充填して棒材3を固定してから、その棒材3を建設部材100の長穴50に挿入し、接着剤を貫通穴10から流し込んでもよい。この場合には、建設部材100に長穴50と外部とを挿通する空気抜き穴71を形成し、長穴50の空気を外部に排出する必要がある。
【0054】
上記実施の形態では、内側面の全面に複数の凹凸を形成したが、内側面の一部に複数の凹凸を形成するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、建設部材100に挿入する継手1の数を6対としたが、これには限られない。一対から5対であってもよいし、7対以上でもよい。継手1の数は接合する相手によって、任意に設定することができる。
【0056】
上記実施の形態では、棒材2、3を異形鉄筋としたが、アラミドロッド等の他の棒材であってもよい。要は、建設部材よりも堅い材料から成る棒材であればよい。
【0057】
上記実施の形態では、炭素繊維シートを用いて継手1を形成したが、他の繊維シートを用いて継手1を形成するようにしてもよい。例えば、アラミド繊維、ケブラー、ダイニーマ等を用いるようにしてもよい。
【0058】
上記実施の形態では、炭素繊維シートに含浸させる樹脂をエポキシ系樹脂としたが、本発明はこれには限られない。ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、レゾルシノール樹脂を用いてもよい。
【0059】
上記実施の形態では、各繊維シート2A、2Bをそれぞれ4巻きとしたが、これには限られない。1巻きでもよいし、2巻き、3巻きでもよい。また、5巻き以上でもよい。
【0060】
上記実施の形態では、建設部材100を木質系の部材としたが、本発明はこれには限られない。例えば、コンクリート製の部材、例えばプレキャスコンクリートであってもよい。
【0061】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0062】
なお、本願については、2015年1月19日に出願された日本国特許出願2015−7576号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2015−7576号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、建築物又は橋などの構造物内の継手として用いられるのに適している。
【符号の説明】
【0064】
1 継手、1A、1B 繊維層、2、3 棒材、2A、2B 繊維シート、4 接着層、6 芯棒、7 パイプ、8 長片、9 P.P.(ポリプロピレン)テープ、10 貫通穴、11 透明テープ、12 軸棒、20 平板、21 溝部、50、60 長穴、70 縦穴、71 空気抜き穴、100 建設部材、101 柱材、102 鉄筋コンクリート造基礎
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16A
図16B