(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、電極体を構成する電極の集電部をスリットに挿入する際に集電部がスリットに接触することにより破損するという問題があることがわかった。また、この集電部の破損は、スリットの幅を大きくすることにより抑制することができるが、スリットの幅を大きくすると、レーザ溶接の際にレーザがスリットを通り過ぎて電極体に損傷を与えやすくなるという問題があることがわかった。このような電極の集電部の破損および溶接時の電極体の損傷は、部品不良および製品不良を発生させるものであるために、非水電解質二次電池の歩留まりの低下を招くものである。
【0006】
そこで本発明の目的は、製造時の電極の集電部の破損や溶接時の電極体の損傷が抑制されることによって歩留まりよく製造可能な非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される非水電解質二次電池は、複数の電極が積層された電極体と、非水電解質とを備える。前記電極はそれぞれ、集電体と、当該集電体上に形成された活物質層とを有する。前記電極はそれぞれ、活物質層非形成部である集電部を有する。前記電極の集電部は纏められて、二以上の部材から構成される電極集電端子の当該部材により前記電極体の積層方向に挟持されている。前記電極の集電部と、当該集電部を挟持する前記部材とが溶接されている。
このような構成によれば、電極集電端子としての複数の部材で電極体の集電部を挟み込むため、従来技術であるスリットを備える電極集電端子で起こり得る、電極体の集電部をスリットに挿入する際に集電部がスリットに接触することにより破損するという問題を解消することができる。また、電極集電端子としての複数の部材で電極体の集電部を挟み込むため、従来技術であるスリットを備える電極集電体で起こり得る、電極集電端子の歪みによって溶接用のレーザがスリットを通り過ぎて電極体に損傷を与えるという問題を解消することができる。すなわち、このような構成によれば、製造時の電極の集電部の破損や溶接時の電極体の損傷が抑制されることによって歩留まりよく製造可能な非水電解質二次電池を提供することができる。
【0008】
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様では、前記電極体の電極の集電部は、複数のグループに纏められて前記電極集電端子の前記部材により挟持されている。前記複数のグループ同士は、前記電極体の積層方向において重なり合わないように配置されている。前記複数のグループは、前記電極体の積層方向に段違いに配置されている。
このような構成によれば、溶接部の集電部のグループの積層方向の長さを小さくすることができ、溶接が容易となる。また、集電部の総量を小さくすることができる。
【0009】
ここに開示される非水電解質二次電池のより好ましい一態様では、前記電極集電端子は、第一の部材と第二の部材とから構成されている。前記複数のグループは、階段状に配置されて前記第一の部材と前記第二の部材に挟持されている。前記第一の部材および前記第二の部材は、前記複数のグループを挟持する部分が、前記階段状の複数のグループに適合する形状を有している。前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方は、一のグループに当接する部分と他のグループに当接する部分との間の前記電極体の積層方向の寸法が、前記一のグループに当接する部分および前記他のグループに当接する部分の積層方向の寸法よりも短い。
このような構成によれば、電極集電端子を構成する部材の前記寸法が短くなっている部分は、荷重による荷重方向の変形がし易くなっているため、集電部と、電極集電端子を構成する部材との密着性をさらに向上させることができる。したがって、溶接部での不良の発生をさらに抑制することができ、歩留まりをさらに向上させることができる。
【0010】
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様では、前記非水電解質二次電池は、前記電極集電端子に取り付けられた電流遮断機構をさらに備える。
このような構成によれば、従来技術であるスリットを備える電極集電端子で起こり得る、電極集電端子の歪みに由来する電流遮断機構の作動不良の発生(取り付け不良の発生)を抑制することができる。したがって、歩留まりをさらに向上させることができる。
【0011】
ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法は、集電体と、当該集電体上に形成された活物質層とを備え、かつ活物質層非形成部である集電部が設けられた複数の電極を作製する工程と、前記複数の電極を積層して電極体を作製する工程と、前記電極体の電極の集電部を纏めて、二以上の部材から構成される電極集電端子の当該部材により前記電極体の積層方向に挟持する工程と、前記電極の集電部と、当該集電部を挟持する部材とを溶接する工程と、を包含する。
このような構成によれば、電極集電端子としての複数の部材で電極体の集電部を挟み込むため、従来技術であるスリットを備える電極集電体で起こり得る、電極体の集電部をスリットに挿入する際に集電部がスリットに接触することにより破損するという問題を解消することができる。また、電極集電端子としての複数の部材で電極体の集電部を挟み込むため、従来技術であるスリットを備える電極集電体で起こり得る、電極集電端子の歪みによって溶接用のレーザがスリットを通り過ぎて電極体に損傷を与えるという問題を解消することができる。すなわち、このような構成によれば、製造時の電極の集電部の破損や溶接時の電極体の損傷が抑制されることによって歩留まりよく非水電解質二次電池を製造することができる。
【0012】
ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法の好ましい一態様では、前記挟持する工程において、前記電極体の電極の集電部を複数のグループに纏めて前記電極集電端子の前記部材により挟持する。前記複数のグループ同士は、前記電極体の積層方向において重なり合わないように挟持され、かつ前記複数のグループは、前記電極体の積層方向に段違いに挟持される。
このような構成によれば、溶接部の集電部のグループの積層方向の長さを小さくすることができ、溶接が容易となる。また、集電部の総量を小さくすることができる。
【0013】
ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法のより好ましい一態様では、前記電極集電端子は、第一の部材と第二の部材とから構成されている。前記挟持する工程において、階段状に配置された前記複数のグループを前記第一の部材と前記第二の部材により挟持する。前記第一の部材および前記第二の部材は、前記複数のグループを挟持する部分が、前記階段状の複数のグループに適合する形状を有している。前記第一の部材および前記第二の部材の少なくとも一方は、一のグループに当接する部分と他のグループに当接する部分との間の前記電極体の積層方向の寸法が、前記一のグループに当接する部分および前記他のグループに当接する部分の積層方向の寸法よりも短い。
このような構成によれば、電極集電端子を構成する部材の前記寸法が短くなっている部分は、荷重による荷重方向の変形がし易くなっているため、集電部と、電極集電端子を構成する部材との密着性をさらに向上させることができる。したがって、溶接部での不良の発生をさらに抑制することができ、歩留まりをさらに向上させることができる。
【0014】
ここに開示される非水電解質二次電池の製造方法の好ましい一態様では、前記製造方法が、前記電極集電端子に、電流遮断機構を取り付ける工程をさらに包含する。
このような構成によれば、従来技術であるスリットを備える電極集電端子で起こり得る、電極集電端子の歪みに由来する電流遮断機構の作動不良の発生(取り付け不良の発生)を抑制することができる。したがって、歩留まりをさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない非水電解質二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る非水電解質二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池100の構成を模式的に示す断面図である。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、いわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0018】
リチウムイオン二次電池100は、複数の電極が積層された電極体10Aと、非水電解質90とを備える。電極体10Aおよび非水電解質90は、電池ケース80に収容されている。電池ケース80は、開口部を有するケース本体82と、当該開口部を塞ぐケース蓋体84とから構成されている。ケース蓋体84は、電池ケース80の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された安全弁(図示せず)、および非水電解質90を注入するための注液口(図示せず)を備えている。電池ケース80の材質としては、ここでは、軽量で熱伝導性の良い金属材料(例、アルミニウム)が用いられているが、これに限定されず、例えば樹脂を用いてもよい。
【0019】
図1に示すように、電極体10Aの正極20は、正極集電部26Aに取り付けられた正極集電端子50Aを介して、ケース蓋体84に取り付けられた正極外部端子72と接続されている。また、電極体10Aの負極30は、負極集電部36Aに取り付けられた負極集電端子60Aを介して、ケース蓋体84に取り付けられた負極外部端子74と接続されている。
また、
図1では、正極集電端子50Aと正極外部端子72との間の経路に、電流遮断機構(CID)76が設けられている。電流遮断機構76は、電池ケース80の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に、反転して電流を遮断する反転板を備えている。なお、電流遮断機構76は、負極集電端子60Aに取り付けて、負極集電端子60Aと負極外部端子74との間の経路に設けられていてもよい。
【0020】
非水電解質90としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様のもの(例えば、カーボネート類等の非水溶媒に、リチウム塩等の支持塩を溶解させた非水電解質等)を使用することができる。
【0021】
図2に、リチウムイオン二次電池100の電極体10Aの一部の分解斜視図を示す。図面中の符号Wはリチウムイオン二次電池100の幅方向を示し、符号Dはリチウムイオン二次電池100の厚み方向を示し、符号Hはリチウムイオン二次電池100の高さ方向を示している。
電極体10Aは、正極20と負極30とがセパレータ40を介して積層された構造を有する。図では省略されているが、複数の正極20および複数の負極30が、これらの間にセパレータ40が介在しながら交互に積層されている。電極体10Aの積層方向は、ここでは厚み方向Dである。
【0022】
正極20は、正極集電体22と、正極集電体22上に形成された正極活物質層24とを備えている。正極集電体22には、例えば、アルミニウム箔等の金属箔が好適に使用される。図示例では、正極活物質層24は、正極集電体22の両面に設けられている。また、幅方向Wにおいて、正極活物質層24は、正極集電部26Aを除き、正極集電体22の全幅と同じ幅で形成されている。
【0023】
正極活物質層24は、正極活物質を含有する。正極活物質には、従来からリチウムイオン二次電池に正極活物質として用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。その例としては、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2等)、リチウムニッケル複合酸化物(例、LiNiO
2等)、リチウムコバルト複合酸化物(例、LiCoO
2等)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(例、LiNi
0.5Mn
1.5O
4等)などのリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質層24は、上述した正極活物質の他に、アセチレンブラック(AB)等の導電材や、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダを含有していてもよい。
【0024】
正極20は、電極体10Aの側面から幅方向Wに突出する正極活物質層非形成部である正極集電部(すなわち正極集電箔)26Aを有している。この正極集電部26Aでは、正極活物質層24が形成されていないため、正極集電体22が露出している。なお、正極集電部26Aの形状は図示したものに限られない。正極集電部26Aの高さ方向Hの位置は、後述のように変化する。
【0025】
負極30は、負極集電体32と、負極集電体32上に形成された負極活物質層34とを備えている。負極集電体32には、例えば、銅箔等の金属箔が好適に使用される。図示例では、負極活物質層34は、負極集電体32の両面に設けられている。また、幅方向Wにおいて、負極活物質層34は、負極集電部36Aを除き、負極集電体32の全幅と同じ幅で形成されている。
【0026】
負極活物質層34は、負極活物質を含有する。負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に負極活物質として用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。その例としては、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属窒化物などが挙げられる。負極活物質層34は、上述した負極活物質の他に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダや、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含有していてもよい。
【0027】
負極30は、電極体10Aの側面から幅方向Wに突出する負極活物質層非形成部である負極集電部(すなわち負極集電箔)36Aを有している。負極集電部36Aは、正極集電部26Aとは反対方向に突出している。この負極集電部36Aでは、負極活物質層34が形成されていないため、負極集電体32が露出している。なお、負極集電部36Aの形状は図示したものに限られない。負極集電部36Aの高さ方向Hの位置は、後述のように変化する。
【0028】
セパレータ40は、正極20と負極30とを隔てる絶縁性の部材である。この例では、セパレータ40は、微小な孔を複数有する所定幅のシート材で構成されている。セパレータ40には、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータ或いは積層構造のセパレータを用いることができる。セパレータ40は、耐熱層(HRL)を有していてもよい。
【0029】
図3(a)に、電極体10Aの正極20側の側端部の斜視図を示す。
図3(b)に、電極体10Aの正極20側の側面図を示す。
図3に示すように、正極集電端子50Aは、第一の端子部材52Aおよび第二の端子部材54Aの二つの部材から構成されている。正極集電端子50Aの上面は、電流遮断機構76と当接する面となる。
複数の正極集電部26Aは、位置を変化させることにより3つのグループに分割され、纏められている。3つのグループは階段状に配置されている。すなわち、3つのグループは、電極体10Aの積層方向に沿って、電極体10Aの一の端部から他の端部に向かって順に位置を変えている。そして、端子部材52Aおよび端子部材54Aの、正極集電部26Aのグループを挟持する部分は、階段状の複数のグループに適合する形状を有しており、各グループは、端子部材52Aおよび端子部材54Aにより積層方向に挟持されている。
また、正極集電部26Aは、端子部材52Aおよび端子部材54Aと溶接されており、溶接部28Aが形成されている。溶接部28Aの高さ方向Hの長さL2は、正極集電部26Aの一つのグループが、端子部材52Aおよび端子部材54Aと当接する高さ方向の長さL1よりも短くなっている。
【0030】
複数の端子部材(第一の端子部材52Aおよび第二の端子部材54A)で、正極集電部26Aを挟み込むため、従来技術であるスリットを備える電極集電端子で起こり得る、電極体の集電部をスリットに挿入する際に集電部がスリットに接触することにより破損するという問題を解消することができる。また、複数の端子部材(端子部材52Aおよび端子部材54A)で正極集電部26Aを挟み込むため、従来技術であるスリットを備える電極集電体で起こり得る、電極集電端子の歪みによって溶接用のレーザがスリットを通り過ぎて電極体に損傷を与えるという問題を解消することができる。
また、電極集電端子の歪みに由来する電流遮断機構の作動不良の発生(取り付け不良の発生)を抑制することができる。
【0031】
なお、分割された正極集電部26Aにより構成されるグループの数は図示例に限られない。電極体10Aが薄い場合には、正極集電部26Aは1つのグループのみであってもよい。
溶接部28の信頼性の観点から、複数の正極集電部26Aと、端子部材52Aおよび端子部材54Bとが密着した状態で、グループを構成する正極集電部(すなわち正極集電箔)26Aのすべてが溶接されることが好ましい。
そのため、正極集電部26Aのグループの数(言い換えると、正極集電部26Aを分割する数)は、複数であり、複数のグループ同士は、電極体10Aの積層方向において重なり合わないように配置されており、複数のグループは、電極体10Aの積層方向に段違いに配置されていることが好ましい。
このようにすれば、溶接部28の正極集電部26Aのグループの積層方向の長さを小さくすることができ、溶接が容易となる。また、正極集電部26Aの総量を小さくすることができる。
【0032】
なお、分割された正極集電部26Aにより構成されるグループの数は、2つ以上6つ以下であることがより好ましい。グループの数が少な過ぎると、溶接部28一箇所あたりの正極集電部(すなわち正極集電箔)26Aの枚数が増えるため、グループの積層方向(
図2における方向Dでもある)の長さが大きくなる。グループの積層方向の長さが大きい場合、正極集電部26Aの突出方向の長さを大きくする必要がある。これは、溶接の前に、正極集電部26Aをグループとし、当該グループを端子部材52Aおよび端子部材54Bにより纏めて挟持する場合、端子部材52Aおよび端子部材54Bの間から正極集電部26Aがはみ出るようにするためである。そして、グループの積層方向の長さが大きい場合、グループの中央部ほど、端子部材52Aおよび端子部材54Bの間からはみ出る長さが大きくなる。その結果、溶接に必要な熱がより大きくなり、これにより、溶接時の多量の熱による電極体10Aのセパレータ40への悪影響や、溶接に必要な装置の大型化等によるコストの増大を招くおそれがある。一方、グループの数が多くなり過ぎると、正極集電端子50Aの形状の複雑化を招くおそれがあり、また、正極集電部26Aを挟持する際の位置決め精度がより高くなって位置決め作業が煩雑化するおそれがある。
【0033】
なお、正極集電端子50Aは、端子部材52Aおよび端子部材54Aの二つの部材から構成されているが、正極集電部26Aのグループの数に応じて、二つよりも多い部材から構成されていてもよい。
【0034】
なお、
図3では、正極集電部26Aの複数のグループ同士が、電極体10Aの積層方向において重なり合わないように配置されており、複数のグループが、電極体10Aの積層方向に段違いに配置されているように、3つのグループは階段状に配置されている。しかしながら、正極集電部26Aの配置は階段状に限られない。
【0035】
図4に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の第一の変形例が備える電極体10Bを示す。
図4(a)は、電極体10Bの正極側の側端部の斜視図であり、
図4(b)電極体10Bの正極側の側面図である。
図4に示すように、正極集電端子50Bは、第一の端子部材52Bおよび第二の端子部材54Bの二つの部材から構成されている。
複数の正極集電部26Bは、3つのグループに分割されて、纏められている。
図3の例とは異なり、本例では、3つのグループが階段状に配置されていない。しかしながら、3つのグループは、電極体10Bの積層方向において重なり合わないように配置されており、複数のグループが、電極体10Bの積層方向に段違いに配置されている。
端子部材52Bおよび端子部材54Bの、正極集電部26Bのグループを挟持する部分は、これらのグループに適合する形状を有しており、各グループは、端子部材52Bおよび端子部材54Bにより挟持されている。
また、正極集電部26Bは、端子部材52Bおよび端子部材54Bと溶接されており、溶接部28Bが形成されている。
【0036】
図4に示す第一の変形例においても、正極集電部26Bのグループの数が、複数であり、複数のグループ同士は、電極体10Bの積層方向において重なり合わないように配置されており、複数のグループは、電極体10Bの積層方向に段違いに配置されているため、溶接部28Bの信頼性が高い。
【0037】
図5に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の第二の変形例が備える電極体10Cを示す。
図5(a)は、電極体10Cの正極側の側端部の斜視図であり、
図5(b)電極体10Cの正極側の側面図であり、
図5(c)は、正極集電端子50Cを構成する一部材54Cの平面図である。
図5に示すように、正極集電端子50Cは、第一の端子部材52Cおよび第二の端子部材54Cの二つの部材から構成されている。
複数の正極集電部26Cは、3つのグループに分割されて、纏められている。3つのグループは階段状に配置されている。
端子部材52Cおよび端子部材54Cの、正極集電部26Cのグループを挟持する部分は、これらのグループに適合する形状を有しており、各グループは、端子部材52Cおよび端子部材54Cにより挟持されている。
また、正極集電部26Cは、端子部材52Cおよび端子部材54Cと溶接されており、溶接部28Cが形成されている。
【0038】
第二の変形例では、
図3に示した例とは、正極集電端子50Cの端子部材54Cの形状が異なっている。具体的には、第二の変形例では、正極集電端子50Cの端子部材54Cが、電極体10Cの積層方向におけるグループを挟持する端部と反対側の端部も、階段状に形成されている。
これにより、端子部材50Cの一のグループに当接する部分54Caと、他のグループに当接する部分54Cbとの間の(部分54Ccの)電極体10Cの積層方向の寸法Lcが、一のグループに当接する部分54Caの積層方向の寸法Laおよび他のグループに当接する部分54Cbの積層方向の寸法Lbよりも短くなっている。
このような構成によれば、正極集電部26Cを端子部材52Cおよび端子部材54Cにより挟持する際に、端子部材50Cの一のグループに当接する部分54Caと、他のグループに当接する部分54Cbとの間の寸法の短い部分54Ccは、荷重による端子の荷重方向の変形がし易くなるため、正極集電部26C、端子部材52Cおよび端子部材54Cの密着性をさらに向上させることができる。したがって、溶接部での不良の発生をさらに抑制することができ、歩留まりをさらに向上させることができる。
なお、正極集電端子50Cのもう一方の端子部材52Cにおいて、一のグループに当接する部分と他のグループに当接する部分との間の電極体の積層方向の寸法が、当該一のグループに当接する部分および当該他のグループに当接する部分の積層方向の寸法よりも短くしてもよい。また、端子部材52Cと端子部材54Cの両方において、このような構成としてもよい。
【0039】
なお、上記の例ではいずれも正極20側のみ具体的に説明したが、負極30側も同様の構成を備える。しかしながら、正極20側および負極30側の一方のみ、上述した構成を備えていてもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法について説明する。本実施形態に係る非水電解質二次電池は、集電体と、当該集電体上に形成された活物質層とを備え、かつ活物質層非形成部である集電部が設けられた複数の電極を作製する工程(電極作製工程)と、当該複数の電極を積層して電極体を作製する工程(電極体作製工程)と、当該電極体の電極の集電部を纏めて、二以上の部材から構成される電極集電端子の当該部材により電極体の積層方向に挟持する工程(挟持工程)と、当該電極の集電部と、当該電極体を挟持する部材とを溶接する工程(溶接工程)とを包含する。
以下、図面を参照しながら、上記のリチウムイオン二次電池100(
図1〜3で例示するリチウムイオン二次電池100)を例に挙げて本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法について詳細に説明する。
【0041】
電極作製工程では、
図2に示すような、正極20および負極30を作製する。
正極20は、公知方法により従い作製することができる。例えば、正極集電体22上に正極活物質層24の構成成分を含有するペーストを塗布する。このとき、正極集電体22の一の端部に沿ってペーストが塗布されていない部分を設けるように塗布する。すなわち、正極集電体22が一の端部に沿って露出するように塗布する。塗布したペーストを乾燥し、必要に応じプレス処理して正極活物質層24を形成する。正極集電体22が露出した部分を、正極集電部26Aが形成されるようにカットする。
負極30は、公知方法により従い作製することができる。例えば、負極集電体32上に負極活物質層34の構成成分を含有するペーストを塗布する。このとき、負極集電体32の一の端部に沿ってペーストが塗布されていない部分を設けるように塗布する。すなわち、負極集電体32が一の端部に沿って露出するように塗布する。塗布したペーストを乾燥し、必要に応じプレス処理して負極活物質層34を形成する。負極集電体32が露出した部分を、負極集電部36Aが形成されるようにカットする。
図3に示すように、電極体10Aにおいて、正極集電部26Aおよび負極集電部36Aを分割してグループとして纏める場合、正極集電部26Aおよび負極集電部36Aの位置が異なる正極20および負極30をそれぞれいくつか用意する。
【0042】
電極体作製工程では、複数の正極20および負極30を積層して、
図6に示すような電極体10Aを作製する。このとき、正極20と負極30とを絶縁するために、セパレータ40を、正極20と負極30との間に介在させる。また、正極集電部26Aおよび負極集電部36Aの位置をそれぞれ合わせながら積層する。図示例では、正極集電部26Aおよび負極集電部36Aがそれぞれ3つのグループに分割されており、各グループはブロック状になっている。3つのブロック状のグループは階段状に配置されている。
当該工程は、公知方法に従い行なうことができる。
【0043】
挟持工程については、電極体10Aの正極20側についてのみ、
図7を参照しながら具体的に説明するが、負極30側についても挟持工程は同様にして実施することができる。
挟持工程では、
図7に示すように、二以上の部材(ここでは、第一の端子部材52Aおよび第二の端子部材54A)から構成される正極集電端子50Aを準備する。そして、端子部材52Aおよび端子部材54Aにより、階段状に配置された前記複数の正極集電部26Aのグループをそれぞれ積層方向に挟み込んで、端子部材52Aおよび端子部材54Aを固定する。
図示例ではこのようにして、電極体10Aの正極集電部26Aを複数のグループに纏めて正極集電端子50Aの端子部材52Aおよび端子部材54Aにより挟持する。当該複数のグループ同士は、電極体10Aの積層方向において重なり合わないように挟持され、かつ当該複数のグループは、電極体10Aの積層方向に段違いに挟持される。
【0044】
溶接工程では端子部材52Aおよび端子部材54Aにより、正極集電部26Aを挟持した部分を、レーザ溶接等により溶接する。これにより、
図3に示されるような、正極集電部26Aが端子部材52Aおよび端子部材54Aと接合された溶接部28Aが形成される。負極30側についても溶接工程は同様にして実施することができる。
以上のようにして、電極体10Aを作製することができる。
【0045】
本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法は、電極体を用いて非水電解質二次電池を用いる工程がさらに行なわれる。当該工程は、公知方法に従って行なうことができる。
具体例として、上記の電極体10Aを用いて、リチウムイオン二次電池100を構築する工程について説明する。
【0046】
まず、電池ケース80を用意する。電池ケース80は、開口部を有するケース本体82と、当該開口部を塞ぐケース蓋体84とから構成される。電池ケース80の素材は、例えば、アルミニウム等である。ケース蓋体84には、安全弁(図示せず)、および注液口(図示せず)が設けられている。
また、電極体10Aの正極集電端子50Aおよび負極集電端子60Aをそれぞれ、ケース蓋体84の外部側に設けられた、正極外部端子72および負極外部端子74と接合する。
このとき、正極集電端子50Aに電流遮断機構76を取り付ける工程を行なって、
図1に示すように、正極集電端子50Aと正極外部端子72との間の経路に、電流遮断機構76を設けてもよい。なお、電流遮断機構76を、負極集電端子60Aに取り付けて、負極側の負極集電端子60Aと負極外部端子74との間の経路に設けてもよい。電流遮断機構76の取り付けは、公知方法に従い行なうことができる。
続いて、電極体10Aをケース本体82に収容しつつ、ケース本体82の開口部をケース蓋体84で塞ぎ、次いでケース本体82とケース蓋体84とを封止する。
そして、非水電解質90を注液口から注入し、注液口を封止する。
このようにして、リチウムイオン二次電池100を構築することができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る非水電解質二次電池の第一の変形例を製造する場合には、上記電極体作製工程で、
図8に示すように、電極体10Bにおいて、電極集電部(図では正極集電部26B側のみ示している)のグループを電極体の積層方向に段違いに配置すればよい。そして、上記挟持工程において、これらのグループに適合する形状の電極集電端子を用いればよい。
本実施形態に係る非水電解質二次電池の第二の変形例を製造する場合には、上記挟持工程で、正極集電端子50Aに代えて、
図9に示す第一の端子部材52Cおよび第二の端子部材54Cから構成される正極集電端子50Cを用いればよい。正極集電端子50Cでは、
図5に示すように、端子部材50Cの一のグループに当接する部分54Caと、他のグループに当接する部分54Cbとの間の部分54Ccの電極体10Cの積層方向の寸法Lcが、一のグループに当接する部分54Caの積層方向の寸法Laおよび他のグループに当接する部分54Cbの積層方向の寸法Lbよりも短くなっている。また、負極側でも同様の負極集電端子を用いればよい。
【0048】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0049】
下記に示すリチウムイオン二次電池A〜Cを作製し、下記の手順で評価した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
〔リチウムイオン二次電池A〕
上述の方法に従い、
図3に示す形態(負極側も同様の構成)を有する電極体を作製し、これを用いてリチウムイオン二次電池Aを作製した。正極集電体には、厚さ15μmのアルミニウム箔を用い、負極集電体には、厚さ10μmの銅箔を用いた。正極集電端子はアルミニウム製とし、正極集電端子の厚さは1.5mmとした。負極集電端子は銅製とし、負極集電端子の厚さは1.0mmとした。電極体には、高さ方向の長さが14mmである集電部のグループを階段状に3つ設けた。各グループを構成する集電箔(集電部)の枚数は24枚とした。なお、正極側に、作動圧が0.7MPa以上に設定された電流遮断機構(CID)を取り付けた。溶接はレーザ溶接により行なった。
【0050】
〔リチウムイオン二次電池B〕
図10に示す形態(負極側も同様の構成)を有する電極体を作製し、これを用いてリチウムイオン二次電池Bを作製した。
図10に示す電極体110は、正極集電部126が纏められて、3本のスリット156を備え、単一部材からなる正極集電端子150によって保持され、正極集電部126と正極集電端子150が溶接された形態を有する。負極側も同様の形態を有する。リチウムイオン二次電池Bでは、正極集電端子150のスリット156の幅(加圧前)を0.6mmに設定した。正極集電体には、厚さ15μmのアルミニウム箔を用い、負極集電体には、厚さ10μmの銅箔を用いた。正極集電端子はアルミニウム製とし、正極集電端子の厚さは1.5mmとした。負極集電端子は銅製とし、負極集電端子の厚さは1.0mmとした。集電部は、電極体の両端部に沿って設けた。なお、正極側に、作動圧が0.7MPa以上に設定された電流遮断機構(CID)を取り付けた。各スリットには、集電箔(集電部)を24枚ずつ挿入し、スリットの幅方向から押圧した後、レーザ溶接した。
【0051】
〔リチウムイオン二次電池C〕
図10に示す形態(負極側も同様の構成)を有する電極体を作製し、これを用いてリチウムイオン二次電池Cを作製した。リチウムイオン二次電池Cでは、正極集電端子150のスリット156の幅(加圧前)を1.0mmに設定した。正極集電体には、厚さ15μmのアルミニウム箔を用い、負極集電体には、厚さ10μmの銅箔を用いた。正極集電端子はアルミニウム製とし、正極集電端子の厚さは1.5mmとした。負極集電端子は銅製とし、負極集電端子の厚さは1.0mmとした。集電部は、電極体の両端部に沿って設けた。なお、正極側に、作動圧が0.7MPa以上に設定された電流遮断機構(CID)を取り付けた。各スリットには、集電箔(集電部)を24枚ずつ挿入し、スリットの幅方向から押圧した後、レーザ溶接した。
なお、リチウムイオン二次電池Aが、本実施形態に係る非水電解質二次電池に該当し、リチウムイオン二次電池BおよびCが、従来技術の非水電解質二次電池である。
【0052】
<リチウムイオン二次電池の評価>
〔評価1:集電部の外観観察〕
各リチウムイオン二次電池の電極体について、集電部の破損の有無を調べた。具体的には、集電部は集電箔であるため、集電箔に裂け目や破断がないかについて観察した。集電箔に裂け目や破断が無かったものを良品、集電箔に裂け目や破断があったものを不良品と判断した。各リチウムイオン二次電池について、10個のサンプルについて評価した。評価結果を、表1に「(良品サンプル数)/(作製サンプル数)」として示す。
【0053】
〔評価2:CIDの作動圧測定〕
各リチウムイオン二次電池について、CIDの作動圧を調べた。CIDの作動圧が、0.7MPa以上0.8MPa以下の範囲内のサンプルを良品とし、当該範囲外のサンプルを不良品とした。各リチウムイオン二次電池について、10個のサンプルについて評価した。評価結果を、表1に「(良品サンプル数)/(作製サンプル数)」として示す。
【0054】
〔評価3:溶接部の電極体の外観観察〕
各リチウムイオン二次電池の電極体の溶接部分を分解し、セパレータの焼損の有無を調べた。セパレータの焼損がなかったものを良品、セパレータに焼損があったものを不良品と判断した。各リチウムイオン二次電池について、10個のサンプルについて評価した。評価結果を、表1に「(良品サンプル数)/(作製サンプル数)」として示す。
【0056】
表1からわかるように、本実施形態に係る非水電解質二次電池に該当するリチウムイオン二次電池Aでは、評価1〜3のいずれにおいても不良品は見られなかった。
一方、評価1に関し、従来技術であるリチウムイオン二次電池Bでは、集電部のスリットの側面と接触した箇所に破断が見られたサンプルがあった。これは、スリット幅が狭く、集電部を集電端子のスリットに挿入する際に集電部がスリットの側面と接触して、破断したためである。
評価2に関し、従来技術であるリチウムイオン二次電池BおよびCでは、CIDの作動圧が低下したサンプルがあった。これは、従来技術であるリチウムイオン二次電池BおよびCでは、スリットを備える正極集電端子を取り付ける際に、集電部と密着させるためにスリットの幅方向から押圧して、スリットを閉じる操作を行なうが、これにより、正極集電端子の上面であるCID取り付け面に歪みが生じたためである。なお、スリット幅の大きいリチウムイオン二次電池Cの方が、不良品が多かった。
評価3に関し、従来技術であるリチウムイオン二次電池BおよびCでは、セパレータが焼損したサンプルがあった。これは、従来技術であるリチウムイオン二次電池BおよびCでは、上記のスリットを閉じる操作によって、正極集電端子が捩れながら歪み、正極集電端子の脚部(集電部を挟持する部分)に段差が生じ、これにより、溶接のためのレーザが段差部分においてスリットを透り抜けたためである。なお、スリット幅の大きいリチウムイオン二次電池Cの方が脚部の変形が大きく、かつレーザが通り抜ける隙間ができやすいため、不良品が多かった。
以上のことから、本実施形態に係る非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池は、製造時の電極の集電部の破損や溶接時の電極体の損傷が抑制されることによって歩留まり(材料歩留まりおよび製品歩留まり)よく製造可能であることがわかる。
また、従来技術のようにスリットを備える単一の集電端子を用いる場合には、集電部を集電端子のスリットに挿入する前に集箔する必要がある。しかしながら、本実施形態に係る非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池の製造の際には、当該集箔操作を省略することができる。
【0057】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。