特許第6802983号(P6802983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802983波長変換部材及び波長変換素子、並びにそれらを用いた発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802983
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】波長変換部材及び波長変換素子、並びにそれらを用いた発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20201214BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20201214BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G02B5/20
   H01L33/50
   H01S5/022
   C09K11/08 E
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-79488(P2017-79488)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-180271(P2018-180271A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古山 忠仁
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−013412(JP,A)
【文献】 特開2015−088636(JP,A)
【文献】 特開2016−204563(JP,A)
【文献】 特開平10−195428(JP,A)
【文献】 特開2006−059629(JP,A)
【文献】 特開2016−138020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20−5/28
H01L 33/50
G03B 21/14
G02F 1/13357
H01S 5/00−5/50
C09K 11/08
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1〜50μmである無機蛍光体粒子、及び、純度が99%以上である酸化マグネシウム粒子を含有する波長変換部材であって、
無機蛍光体粒子間に酸化マグネシウム粒子が介在しており、かつ、無機蛍光体粒子が酸化マグネシウム粒子により結着されている焼結体であることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
質量%で、無機蛍光体粒子 3〜80%、及び、酸化マグネシウム粒子 20〜97%を含有することを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
酸化マグネシウム粒子の平均粒子径が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
無機蛍光体粒子がガーネット構造を有する酸化物蛍光体からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のセラミックス波長変換部材。
【請求項5】
(酸化マグネシウム粒子の平均粒子径)/(無機蛍光体粒子の平均粒子径)が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材と、波長変換部材より高い熱伝導率を有する放熱層とが積層されてなる積層体からなることを特徴とする波長変換素子。
【請求項7】
放熱層が透光性セラミックスからなることを特徴とする請求項に記載の波長変換素子。
【請求項8】
透光性セラミックスが、酸化アルミニウム系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、炭化ケイ素系セラミックス、窒化ホウ素系セラミックス、酸化マグネシウム系セラミックス、酸化チタン系セラミックス、酸化ニオビウム系セラミックス、酸化亜鉛系セラミックス及び酸化イットリウム系セラミックスから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の波長変換素子。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材と、波長変換部材に励起光を照射する光源とを備えてなることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項のいずれか一項に記載の波長変換素子と、波長変換素子に励起光を照射する光源とを備えてなることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
光源がレーザーダイオードであることを特徴とする請求項または10に記載の発光装置。
【請求項12】
平均粒子径が1〜50μmである無機蛍光体粒子、及び、純度が99%以上である酸化マグネシウム粒子を含有する波長変換部材の製造方法であって、
無機蛍光体粒子、及び、酸化マグネシウム粒子を混合した原料粉末を1400℃以下で焼成することにより、無機蛍光体粒子間に酸化マグネシウム粒子が介在しており、かつ、無機蛍光体粒子が酸化マグネシウム粒子により結着されている焼結体である波長変換部材を製造することを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザーダイオード(LD:Laser Diode)等の発する光の波長を別の波長に変換する波長変換部材及び波長変換素子、並びにそれらを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光ランプや白熱灯に変わる次世代の発光装置として、低消費電力、小型軽量、容易な光量調節という観点から、LEDやLDを用いた発光装置に対する注目が高まってきている。そのような次世代発光装置の一例として、例えば特許文献1には、青色光を出射するLED上に、LEDからの光の一部を吸収して黄色光に変換する波長変換部材が配置された発光装置が開示されている。この発光装置は、LEDから出射された青色光と、波長変換部材から出射された黄色光との合成光である白色光を発する。
【0003】
波長変換部材としては、従来、樹脂マトリクス中に無機蛍光体粒子を分散させたものが用いられている。しかしながら、当該波長変換部材を用いた場合、LEDからの光により樹脂マトリクスが変色したり、変形するという問題がある。そこで、樹脂に代えてガラスマトリクス中に蛍光体を分散固定した完全無機固体からなる波長変換部材が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。当該波長変換部材は、母材となるガラスマトリクスがLEDからの熱や照射光により劣化しにくく、変色や変形といった問題が生じにくいという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−208815号公報
【特許文献2】特開2003−258308号公報
【特許文献3】特許第4895541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、発光装置のハイパワー化を目的として、光源として用いるLEDやLDの出力が上昇している。それに伴い、光源の熱や、励起光を照射された蛍光体から発せられる熱により波長変換部材の温度が上昇し、その結果、発光強度が経時的に低下する(温度消光)という問題がある。また、場合によっては、波長変換部材の温度上昇が顕著となり、構成材料(ガラスマトリクス等)が溶解するおそれがある。
【0006】
以上に鑑み、本発明は、ハイパワーのLEDやLDの光を照射した場合に、経時的な発光強度の低下や構成材料の溶解を抑制することが可能な波長変換部材及び波長変換素子、並びにそれらを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長変換部材は、無機蛍光体粒子、及び、酸化マグネシウム粒子を含有する波長変換部材であって、無機蛍光体粒子間に酸化マグネシウム粒子が介在しており、かつ、無機蛍光体粒子が酸化マグネシウム粒子により結着されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の波長変換部材においては、無機蛍光体粒子間に酸化マグネシウム粒子が介在している。ここで、酸化マグネシウム粒子はガラス等と比較して熱伝導性に優れているため、無機蛍光体粒子で発生した熱を効率良く外部に放出することができる。その結果、波長変換部材の温度上昇が抑制され、温度消光が生じにくくなる。また、酸化マグネシウム粒子は耐熱性にも優れるため、ハイパワーのLEDやLDの光を照射した場合であっても溶解しにくい、あるいは、急激な温度上昇によるサーマルクラックといった不具合の発生を抑制することができるという利点もある。さらに、酸化マグネシウム粒子は、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウム等のセラミック粒子と比較して低温で焼結可能であるという利点もある。そのため、波長変換部材作製時の焼成温度も低くすることができ、焼成時における無機蛍光体粉末の劣化を抑制することができる。
【0009】
本発明の波長変換部材は、質量%で、無機蛍光体粒子 3〜80%、及び、酸化マグネシウム粒子 20〜97%を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の波長変換部材において、酸化マグネシウム粒子の平均粒子径が0.01〜10μmであることが好ましい。このようにすれば、波長変換部材の緻密性が向上して、熱伝導パスが形成されやすくなるため、無機蛍光体粒子で発生した熱をより一層効率良く外部に放出することができる。
【0011】
本発明の波長変換部材において、酸化マグネシウム粒子の純度が99%以上であることが好ましい。このようにすれば、酸化マグネシウム粒子を比較的低温で焼結することが可能となる。
【0012】
本発明の波長変換部材において、無機蛍光体粒子の平均粒子径が1〜50μmであることが好ましい。
【0013】
本発明の波長変換部材において、無機蛍光体粒子がガーネット構造を有する酸化物蛍光体からなることが好ましい。ガーネット構造を有する酸化物蛍光体は耐熱性に優れるため、ハイパワーのLEDやLDの光を照射した場合に、無機蛍光体粒子自体の劣化を抑制することができる。
【0014】
本発明の波長変換部材において、(酸化マグネシウム粒子の平均粒子径)/(無機蛍光体粒子の平均粒子径)が0.5以下であることが好ましい。このようにすれば、波長変換部材の緻密性が向上して、熱伝導パスが形成されやすくなるため、無機蛍光体粒子で発生した熱をより一層効率良く外部に放出することができる。
【0015】
本発明の波長変換素子は、上記の波長変換部材と、波長変換部材より高い熱伝導率を有する放熱層とが積層されてなる積層体からなることを特徴とする。このようにすれば、波長変換部材で発生した熱を放熱層に伝達することができるため、波長変換部材の温度上昇を抑制しやすくなる。
【0016】
本発明の波長変換素子において、放熱層として透光性セラミックスからなるものを使用することができる。
【0017】
本発明の波長変換素子において、透光性セラミックスとして、酸化アルミニウム系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、炭化ケイ素系セラミックス、窒化ホウ素系セラミックス、酸化マグネシウム系セラミックス、酸化チタン系セラミックス、酸化ニオビウム系セラミックス、酸化亜鉛系セラミックス及び酸化イットリウム系セラミックスから選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0018】
本発明の発光装置は、上記の波長変換部材と、波長変換部材に励起光を照射する光源とを備えてなることを特徴とする。
【0019】
本発明の発光装置は、上記の波長変換素子と、波長変換素子に励起光を照射する光源とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
本発明の発光装置において、光源がレーザーダイオードであることが好ましい。本発明の波長変換部材及び波長変換素子は耐熱性及び放熱性に優れるため、光源として比較的ハイパワーであるレーザーダイオードを使用した場合に発明の効果を享受しやすい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ハイパワーのLEDやLDの光を照射した場合に、経時的な発光強度の低下や構成材料の溶解を抑制することが可能な波長変換部材及び波長変換素子、並びにそれらを用いた発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の波長変換部材の一実施形態を示す模式的断面図である。
図2】本発明の波長変換素子の一実施形態を示す模式的断面図である。
図3】本発明の発光装置の一実施形態を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
(波長変換部材)
図1は、本発明の波長変換部材の一実施形態を示す模式的断面図である。波長変換部材10は無機蛍光体粒子1と酸化マグネシウム粒子2を含有している。ここで、無機蛍光体粒子1間に酸化マグネシウム粒子2が介在しており、無機蛍光体粒子1が酸化マグネシウム粒子2により結着されている。
【0025】
無機蛍光体粒子1は、励起光の入射により蛍光を出射するものであれば、特に限定されるものではない。無機蛍光体粒子1の具体例としては、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、カルコゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。なお後述するように、波長変換部材10は無機蛍光体粒子1と酸化マグネシウム粒子2の混合粒子を焼結することにより作製されるため、無機蛍光体粒子1としては焼結時に熱劣化しないように耐熱性に優れるものが好ましい。そのような観点からは、無機蛍光体粒子1は酸化物蛍光体、特にガーネット構造を有する酸化物蛍光体(YAl12:Ce3+、LuAl12:Ce3+等)であることが好ましい。
【0026】
無機蛍光体粒子1の平均粒子径(D50)は1〜50μm、特に5〜25μmであることが好ましい。無機蛍光体粒子1の平均粒子径が小さすぎると、発光強度が低下しやすくなる。一方、無機蛍光体粒子1の平均粒子径が大きすぎると、発光色が不均一になる傾向がある。
【0027】
酸化マグネシウム粒子2の平均粒子径(D50)は0.01〜10μm、特に0.05〜5μm、特に0.08〜1μmであることが好ましい。平均粒子径を上記範囲とすることにより、酸化マグネシウム粒子2を比較的低温で焼結することが可能となる。
【0028】
酸化マグネシウム粒子2の純度は99%以上、99.9%以上、特に99.98%以上であることが好ましい。酸化マグネシウム粒子2の純度を上記範囲とすることにより、酸化マグネシウム粒子2を比較的低温で焼結することが可能となる。
【0029】
上記の通り、酸化マグネシウム粒子2の平均粒子径や純度を適宜調整することにより、焼結温度を低くすることが可能となる。具体的には、1000〜1400℃、1020〜1250℃、さらには1050〜1100℃未満の比較的低温で焼成しても緻密に焼結することができる。
【0030】
酸化マグネシウム粒子2の作製方法としては、気相酸化反応による合成法や、水中火花放電法等が挙げられる。なかでも、気相酸化反応による合成法は、高純度の酸化マグネシウム粒子が得られやすいため好ましい。なお、酸化マグネシウム粒子の市販品としては、宇部マテリアルズ製の50Aや2000A等を用いることができる。
【0031】
なお、(酸化マグネシウム粒子2の平均粒子径)/(無機蛍光体粒子1の平均粒子径)は0.5以下、0.2以下、0.1以下、特に0.05以下であることが好ましい。このようにすれば、波長変換部材10の緻密性が向上して、熱伝導パスが形成されやすくなるため、無機蛍光体粒子1で発生した熱をより一層効率良く外部に放出することができる。
【0032】
波長変換部材10における無機蛍光体粒子1及び酸化マグネシウム粒子2の割合は、質量%で、無機蛍光体粒子1 3〜80%、酸化マグネシウム粒子2 20〜97%であることが好ましく、無機蛍光体粒子1 15〜75%、酸化マグネシウム粒子2 25〜95%であることがより好ましく、無機蛍光体粒子1 8〜70%、酸化マグネシウム粒子2 30〜92%であることがさらに好ましい。無機蛍光体粒子1の含有量が少なすぎる(酸化マグネシウム粒子2の含有量が多すぎる)と、波長変換部材10の発光強度が低下しやすくなる。一方、無機蛍光体粒子1の含有量が多すぎる(酸化マグネシウム粒子2の含有量が少なすぎる)と、波長変換部材10において酸化マグネシウム粒子2からなる熱伝導パスが形成されにくくなるため、無機蛍光体粒子1で発生した熱が外部に放出されにくくなる。また、無機蛍光体粒子1の結着性が低下して、波長変換部材10の機械的強度が低下しやすくなる。
【0033】
波長変換部材10の形状は特に限定されないが、通常は板状(矩形板状、円盤状等)である。波長変換部材10の厚みは、目的とする色合いの光が得られるよう適宜選択することが好ましい。具体的には、波長変換部材10の厚みは2mm以下、1mm以下、特に0.8mm以下であることが好ましい。但し、波長変換部材10の厚みが小さすぎると機械的強度が低下しやすくなるため、0.03mm以上であることが好ましい。
【0034】
波長変換部材10は、無機蛍光体粒子1と酸化マグネシウム粒子2を所定の割合で混合した原料粉末を予備成型した後、焼成することにより製造することができる。ここで、原料粉末に結合剤や溶剤等の有機成分を添加してペースト状にした後、焼成してもよい。このようにすれば、グリーンシート成形等の方法を利用して、所望の形状の予備成型体が形成しやすくなる。この際、まず脱脂工程(600℃程度)で有機成分を除去した後、酸化マグネシウム粒子2の焼結温度で焼成することにより、緻密な焼結体が得られやすくなる。また、1次焼成後に焼成温度±150℃でHIP(熱間静水圧プレス)処理を施しても良い。そうすることによって、波長変換部材10内の空孔を収縮させて消滅させることができ、過剰な光の散乱を抑制することができる。
【0035】
結合剤としては、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステルカーボネート等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
【0036】
溶剤としては、テルピネオール、酢酸イソアミル、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等を単独または混合して使用することができる。
【0037】
ペースト中には、焼結助剤が含有されていてもよい。焼結助剤としては、例えば、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素等の晶質粉末や、ケイ酸系やリン酸系等の酸化物非晶質粉末を用いることができる。
【0038】
(波長変換素子)
図2は、本発明の波長変換素子の一実施形態を示す模式的断面図である。波長変換素子20は波長変換部材10と、波長変換部材10より高い熱伝導率を有する放熱層3とを積層させた積層体から構成されている。本実施形態では、波長変換部材10に励起光が照射されることにより発生した熱は、放熱層3を通じて外部に効率良く放出される。よって、波長変換部材10の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0039】
放熱層3は、波長変換部材10より高い熱伝導率を有している。具体的には、放熱層3の熱伝導率は5W/m・K以上、10W/m・K以上、特に20W/m・K以上であることが好ましい。
【0040】
放熱層3の厚みは0.05〜1mm、0.07〜0.8mm、特に0.1〜0.5mmであることが好ましい。放熱層3の厚みが小さすぎると、機械的強度が低下する傾向がある。一方、放熱層3の厚みが大きすぎると、波長変換素子が大型化する傾向がある。
【0041】
放熱層3としては透光性セラミックスからなるものを使用することができる。このようにすれば、励起光または蛍光を透過させることができるため、透過型の波長変換素子として使用することができる。透光性セラミックスからなる放熱層の波長400〜800nmにおける全光線透過率は10%以上、20%以上、30%以上、40%、特に50%以上であることが好ましい。
【0042】
透光性セラミックスとしては、酸化アルミニウム系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、炭化ケイ素系セラミックス、窒化ホウ素系セラミックス、酸化マグネシウム系セラミックス、酸化チタン系セラミックス、酸化ニオビウム系セラミックス、酸化亜鉛系セラミックス及び酸化イットリウム系セラミックスから選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0043】
本実施形態の波長変換素子20は、波長変換部材10の一方の主面のみに放熱層3が形成されているが、波長変換部材10の両主面に放熱層3を形成してもよい。このようにすれば、波長変換部材10で発生した熱をより一層効率よく外部に放出することができる。さらに、波長変換部材10と放熱層3とを交互に積層させた4層以上の積層体であってもよい。
【0044】
なお、放熱層3としては透光性セラミックスからなるもの以外にも、Cu、Al、Ag等の金属からなる層であってもよい。このようにすれば、反射型の波長変換素子として使用することができる。
【0045】
(発光装置)
図3は、本発明の発光装置の一実施形態を示す模式的側面図である。本実施形態に係る発光装置は、透過型の波長変換部材を用いた発光装置である。図3に示すように、発光装置30は、波長変換部材10と光源4を備えている。光源4から出射された励起光L0は、波長変換部材10により、励起光L0よりも波長の長い蛍光L1に波長変換される。また、励起光L0の一部は波長変換部材10を透過する。このため、波長変換部材10からは、励起光L0と蛍光L1との合成光L2が出射する。例えば、励起光L0が青色光であり、蛍光L1が黄色光である場合、白色の合成光L2を得ることができる。なお、波長変換部材10の代わりに、上記で説明した波長変換素子20を使用してもよい。
【0046】
光源4としては、LEDやLDが挙げられる。発光装置30の発光強度を高める観点からは、光源4は高強度の光を出射できるLDを用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 無機蛍光体粒子
2 酸化マグネシウム粒子
3 放熱層
4 光源
10 波長変換部材
20 波長変換素子
30 発光装置
図1
図2
図3