特許第6802984号(P6802984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802984
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】燃料電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20201214BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20201214BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20201214BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20201214BHJP
   B60L 58/33 20190101ALN20201214BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 J
   H01M8/0432
   H01M8/0438
   H01M8/04694
   !B60L58/33
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-80920(P2017-80920)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-181654(P2018-181654A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大矢 香莉
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−170378(JP,A)
【文献】 特開2005−129459(JP,A)
【文献】 特開2006−147240(JP,A)
【文献】 特開2014−058931(JP,A)
【文献】 特開2005−285489(JP,A)
【文献】 特開2013−251231(JP,A)
【文献】 特開2008−153112(JP,A)
【文献】 特開2004−152666(JP,A)
【文献】 特開2006−244757(JP,A)
【文献】 特開2018−106900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、前記燃料電池を冷却する冷却水が循環する冷却水循環流路と、前記冷却水循環流路に設けられ、前記冷却水を圧送する冷却水ポンプと、を備えた燃料電池システムであって、
前記冷却水循環流路は、
前記燃料電池に冷却水を流すためのスタック流路と、
前記冷却水の熱を外部へ放出するラジエータを有し、該ラジエータと前記燃料電池間で冷却水が循環されるように前記スタック流路の両端に接続されるラジエータ流路と、
前記スタック流路の両端のうちの一端から分岐して他端に合流し、前記ラジエータ流路を迂回して冷却水を流すためのバイパス流路と、を備え、
前記スタック流路の両端のうちの一端に設けられ、前記ラジエータ流路及び前記バイパス流路に流入する冷却水の流量比率を調節する三方弁と、
前記冷却水ポンプの回転数及び前記冷却水の温度に基づいて推定された推定流量と、前記冷却水のポンプの消費電力と、に基づき流路異常状態を判定するためのマップを記憶した制御部と、を有し、
前記ラジエータ流路と前記バイパス流路との両方に前記冷却水を流している状態において、前記流路異常状態と前記制御部により判定された場合には、
前記三方弁の前記バイパス流路側の閉弁により前記流路異常状態が解消されたときに前記バイパス流路の異常と判定し、
前記三方弁の前記ラジエータ流路側の閉弁により前記流路異常状態が解消されたときに前記ラジエータ流路の異常と判定し、
前記三方弁の開度制御によって前記流路異常状態が解消しないときに前記スタック流路の異常と判定する、ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般に、燃料電池セル(以下、セルとも称する)が複数積層された燃料電池スタックとして使用されている。各セルは、電解質膜とその両面にそれぞれ接合されたアノード(燃料極)及びカソード(空気極)とから構成されたMEAを、一対のセパレータで挟持することで構成されている。
【0003】
燃料電池には電解質膜の種類によって決まる好適な運転温度範囲がある。燃料電池の内部温度がその運転温度範囲より高温でも、逆に低温でも十分な発電性能を得ることができない。このため、各セルのセパレータには、アノードに燃料ガスを供給するためのガス流路やカソードに酸化ガスを供給するためのガス流路とともに、冷却水を流すための冷却水流路が設けられており、燃料電池は冷却水によって冷却されることで反応熱による温度上昇を抑え、適正な運転温度に温度調整されている。
【0004】
燃料電池を冷却するための冷却水は、通常、繰り返し再使用される。このため、燃料電池システムには、冷却水を燃料電池に循環供給するための冷却水循環流路が設けられている。例えば下記特許文献1に記載の冷却水循環流路は、燃料電池に冷却水を流すためのスタック流路と、このスタック流路に接続され、ラジエータを有するラジエータ流路と、ラジエータを迂回するバイパス流路とを備えており、このラジエータ流路又はバイパス流路に流す冷却水の流量比率を切り替える三方弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−285489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記冷却水循環流路において例えば冷却水漏れ等の異常が発生した場合に、その発生を速やかに検出する必要がある。従来では、このような冷却水漏れを検知する技術が提案されているものの、冷却水循環流路のうちスタック流路、ラジエータ流路、バイパス流路のいずれに異常が発生したかを判別できず、異常発生箇所の特定が困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、冷却水循環流路に異常が発生した際に、異常発生箇所の特定を容易に行うことができる燃料電池冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池冷却システムは、燃料電池と、燃料電池を冷却する冷却水が循環する冷却水循環流路と、冷却水循環流路に設けられ、冷却水を循環させる冷却水ポンプと、を備えた燃料電池システムであって、冷却水循環流路は、燃料電池に冷却水を流すためのスタック流路と、冷却水の熱を外部へ放出するラジエータを有し、該ラジエータと燃料電池間で冷却水が循環されるようにスタック流路の両端に接続されるラジエータ流路と、スタック流路の両端のうちの一端から分岐して他端に合流し、ラジエータ流路を迂回して冷却水を流すためのバイパス流路と、を備え、スタック流路の両端のうちの一端に設けられ、ラジエータ流路及びバイパス流路に流入する冷却水の流量比率を調節する三方弁と、冷却水ポンプの回転数及び冷却水の温度に基づいて推定された推定流量と、冷却水のポンプの消費電力と、に基づき流路異常状態を判定するためのマップを記憶した制御部と、を有し、ラジエータ流路とバイパス流路との両方に冷却水を流している状態において、流路異常状態と制御部により判定された場合には、三方弁のバイパス流路側の閉弁により流路異常状態が解消されたときにバイパス流路の異常と判定し、三方弁のラジエータ流路側の閉弁により流路異常状態が解消されたときにラジエータ流路の異常と判定し、三方弁の開度制御によって流路異常状態が解消しないときにスタック流路の異常と判定する。
【0009】
かかる構成によれば、推定流量と消費電力との関係に基づいたマップに基づき流路異常状態を判定し、三方弁におけるラジエータ流路側又はバイパス流路側の閉弁により上記流路異常状態が解消されたか否かを判定することにより、冷却水循環流路のうちのスタック流路、バイパス流路又はラジエータ流路のどの流路に異常が発生したかを判別することができる。これにより、冷却水循環流路における異常発生箇所の特定を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却水循環流路に異常が発生した際に、異常発生箇所の特定を容易に行うことができる燃料電池冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における燃料電池冷却システムの概略構成図である。
図2】異常発生箇所特定フローの一例を示すフローチャートである。
図3】ポンプの推定流量と消費電力との関係に基づくマップを示すグラフである。
図4】バイパス流路閉塞時のフェールセーフ処理の一例を示すフローチャートである。
図5】ラジエータ流路閉塞時のフェールセーフ処理の一例を示すフローチャートである。
図6】制限開始温度及び制限率について説明するためのグラフである。
図7】ポンプ回転数算出方法及び三方弁目標開度算出方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
本実施形態の燃料電池冷却システム1は、例えば車両に搭載される。図1に示すように、燃料電池冷却システム1は、燃料電池スタック10(燃料電池)と、循環流路20(冷却水循環流路)と、ラジエータ30と、温度センサ41、42と、三方弁50と、ウォーターポンプ60(冷却水ポンプ)と、インタークーラ70と、ECU100(制御部)等を備えている。
【0014】
燃料電池スタック10は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池セルを複数積層したスタック構造を有する。各燃料電池セルは電解質膜、アノード及びカソードを備える。アノードおよびカソードは、例えば白金、あるいは白金合金等の触媒を担持した電極触媒層である。電解質膜は、その両側に接合されたアノードとカソードと共に膜電極接合体(MEA)を構成する。燃料電池セルは、このMEAを一対のセパレータで挟持した構成を備える。
【0015】
循環流路20は、燃料電池を冷却する冷却水が燃料電池スタック10から流出して燃料電池スタック10へ戻るように、冷却水を燃料電池スタック10の外部に循環させる流路である。循環流路20は、燃料電池スタック10の図示下部の冷却水流出口と図示上部の冷却水流入口とを繋いでいる。冷却水としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液等を用いることができる。
【0016】
循環流路20は、スタック流路SLと、バイパス流路BLと、ラジエータ流路RLとを備える。スタック流路SLは、燃料電池スタック10に冷却水を流すために燃料電池スタック10入口側及び出口側に接続される流路である。スタック流路SLの両端は、バイパス流路BLの両端(言い換えれば、ラジエータ流路RLの両端)に接続されている。ラジエータ流路RLは、冷却水の熱を外部へ放出するラジエータ30を有し、ラジエータ30と燃料電池スタック10間で冷却水が循環されるようにスタック流路SLの両端と接続される流路である。バイパス流路BLは、スタック流路SLの両端のうちの一端から分岐して他端に合流し、ラジエータ流路RLを迂回して冷却水を流通させるための流路である。なお、図1において、スタック流路SL、バイパス流路BL、及び、ラジエータ流路RLの示す領域は、概略図として示すものであり、図1に示す領域に限定されるものではない。
【0017】
ラジエータ流路RLに設けられるラジエータ30は、冷却水の熱を外気との熱交換により外部へ放出する機能を有する。なお、図1に示すように、ラジエータ流路RLにラジエータ30を設ける構成に加え、ラジエータ30による熱交換機能を補助するサブラジエータ35を設ける構成としても良い。
【0018】
ラジエータ30を迂回して冷却水を流通させるバイパス管21は、スタック流路SLの両端(すなわち、スタック流路SLとラジエータ流路RLの接続箇所)のうちの一端(ラジエータ流路RL上流側)でラジエータ流路RLから分岐し、スタック流路SLの両端のうちの他端(ラジエータ流路RL下流側)に合流する流路である。言い換えれば、バイパス管21は、ラジエータ30よりも冷却水流れ上流側の分岐位置でラジエータ流路RLから分岐すると共に、ラジエータ30よりも冷却水流れ下流側の合流位置でラジエータ流路RLに接続される流路である。このようにバイパス管21を設け、後述する三方弁50の開度を制御することにより、ラジエータ流路RLをバイパスしてスタック流路SLとバイパス管21とで冷却水を循環させることができる。バイパス管21には、バイパス管21に並列接続した冷却水通路が設けられており、この冷却水通路にはイオン吸着手段をなすイオン交換器75が配設されている。イオン交換器75内には例えばイオン交換樹脂が充填されている。冷却水は燃料電池スタック10内において燃料電池に接するため、イオン交換器75において冷却水からイオンを吸着除去し、冷却水の導電率の上昇を抑止するようになっている。なお、本明細書において、バイパス管21及びイオン交換器75を通る管を含む流路を、バイパス流路BLと称して説明する。
【0019】
ラジエータ流路RLの上流側においてバイパス流路BLに分岐する分岐点(すなわち、スタック流路SLの両端のうちの一端)には、三方弁50が設けられている。言い換えれば、ラジエータ流路RLとスタック流路SLとの接続位置のうちの一方側(ラジエータ流路RL上流側)に、三方弁50が設けられている。三方弁50は、ラジエータ流路RLへ流す冷却水とバイパス流路BLへ流す冷却水との流量比率を調節する弁装置である。三方弁50は、上流側から流入する冷却水の導入口を有すると共に、冷却水をラジエータ30側へ流出させる第1流出口、及び、冷却水をバイパス管21側へ流出させる第2流出口を有し、この第1流出口と第2流出口の開度を各々調整可能に構成されている。
【0020】
ウォーターポンプ60は、循環流路20に冷却水を循環させるための循環ポンプである。ウォーターポンプ60は、ラジエータ流路RLの下流側におけるバイパス流路BLの合流点よりも冷却水流れ下流側に配設されている。詳細には、ウォーターポンプ60は、ラジエータ流路RLの下流側におけるバイパス流路BLの合流点よりも下流側、且つ、燃料電池スタック10よりも上流側に配設されている。ウォーターポンプ60は、例えば、ポンプハウジング内でインペラをモータ61駆動により回転させるポンプ装置とすることができる。
【0021】
循環流路20には、燃料電池スタック10をバイパスする冷却水通路が設けられており、この冷却水通路にはインタークーラ70が配設されている。インタークーラ70は、燃料電池スタック10に供給される空気と冷却水とを熱交換する熱交換器であり、燃料電池スタック10に供給される空気を好適な温度に温度調節するようになっている。
【0022】
循環流路20には、冷却水の温度を検出する温度検出手段である温度センサ41、42が配設されている。温度センサ41(ラジエータ出口温度センサ)は、ラジエータ30よりも冷却水流れ下流側に配設され、温度センサ42(スタック出口温度センサ)は、燃料電池スタック10よりも冷却水流れ下流側に配設され、各温度センサ41、42が検出する冷却水の温度情報はECU100に出力される。
【0023】
ECU100は、システム内の各種機器の動作を制御するものであり、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現されるようになっている。ECU100は、例えば、燃料電池スタック10が出力する燃料電池の発熱量もしくは発電量に関する情報や、温度センサ41、42が出力する温度情報を入力し、これらの入力情報に基づいて三方弁50やウォーターポンプ60を駆動制御する。またECU100は、例えば、ウォーターポンプ60の消費電力を監視し、記憶する。またECU100は、例えば、温度センサ42が検出する燃料電池スタック10の出口における冷却水の温度情報に基づいて三方弁50の開度を制御する。三方弁50の開度制御方法として、例えば、温度センサ42により検出された冷却水の温度が所定値よりも高い場合には、ラジエータ30へ冷却水を流して冷却するように三方弁50を制御する一方、所定値よりも低い場合には、イオン交換器75を含むバイパス流路BLに冷却水を流すように三方弁50を制御する。またECU100は、例えば、循環流路20の導電率を所定の導電率検出手段(図示略)により検出し、導電率が所定値よりも低い場合には、イオン交換器75を含むバイパス流路BLに冷却水を流し、導電率を低下させるように三方弁50を制御する。本実施形態における三方弁50の開度調整については、図2を参照しながら後述する。
【0024】
またECU100には、ウォーターポンプ60の回転数及び冷却水の温度に基づくマップ(或いは、ウォーターポンプ60の回転数と冷却水との関係を示す計算式)が記憶されている。ECU100は、このマップ(或いは計算式)に基づいてウォーターポンプ60の消費電力の推定値を算出する。
【0025】
またECU100には、図3(A)に示すように、ウォーターポンプ60としてターボ型(羽根車)のポンプを用いた場合の、ウォーターポンプ60によって圧送される冷却水の推定流量及びウォーターポンプ60の消費電力の関係に基づくマップ(或いは、推定流量及び消費電力の関係を示す計算式)が記憶されている。なお、図3(A)に示す推定流量は、例えばウォーターポンプ60の回転数(rpm)に基づき推定することができる。図3(A)のマップ(横軸は推定流量(rpm)、縦軸は消費電力(w))に基づけば、図3(A)に示す正常時の推定流量−消費電力ライン(以下、推定ラインR1とも称する)よりも上方側領域である場合、言い換えれば、所定流量のときのウォーターポンプ60の消費電力の測定値が、図3(A)に示す推定ラインR1以上の場合には、正常(流路閉塞無し、流路漏れ無し)と判定することができ、図3(A)に示す推定ラインR1未満の場合には、異常(流路閉塞、冷却水漏れ)と判定することができる。
【0026】
またECU100には、図3(B)に示すように、ウォーターポンプ60として容積型のポンプを用いた場合の、ウォーターポンプ60によって圧送される冷却水の推定流量及びウォーターポンプ60の消費電力の関係に基づくマップ(或いは、推定流量及び消費電力の関係を示す計算式)も記憶されている。図3(A)と同様に、図3(B)に示す横軸は推定流量(rpm)、縦軸は消費電力(w)を示す。図3(B)に示すマップに基づけば、図3(B)に示す正常時の推定流量−消費電力ライン(以下、推定ラインR2とも称する)よりも上方側領域である場合、言い換えれば、所定流量のときのウォーターポンプ60の消費電力の測定値が、図3(B)に示す推定ラインR2以上の場合には、異常(流路閉塞、冷却水漏れ)と判定することができ、図3(B)に示す推定ラインR2未満の場合には、正常(流路閉塞無し、流路漏れ無し)と判定することができる。
【0027】
なお、本実施形態において、ウォーターポンプ60(以下、図示のように「ポンプ」とも称する)の回転数目標値及び三方弁50の目標開度を、次のように算出する。図7に示すように、まず、ポンプの回転数目標値を算出し、当該ポンプの回転数目標値に基づいて制御信号をポンプへ出力する(図7に示す信号A1)。ポンプの消費電力及び回転数を、ポンプからECUへ入力する(図7に示す信号A2)。入力される消費電力及び回転数はECUで記憶され、該記憶情報に基づき流路閉塞判定(後述)が行われる。ECUは、流路閉塞判定の結果を踏まえて三方弁50の目標開度を算出し、目標開度を駆動信号へ変換した上、三方弁50の開度を制御する。またECUは、流路閉塞判定を踏まえてポンプ回転数目標値を算出し、ポンプへ出力する。
【0028】
続いて、上記した燃料電池冷却システムにおいて実行される異常発生箇所特定フローについて説明する。図2は、異常発生箇所特定フローの一例を示すフローチャートである。以下で説明する、異常発生箇所を特定するための判定処理は、例えば、始動時、部品交換時或いは運転中常時のタイミングで実行される。
【0029】
まず、ステップS110では、他のダイアグノーシス情報(例えば、センサが正常に動作しているか否か等を含むセンサ断線短絡)の有無を判定し、有る場合には(ステップS110(NO))、判定終了する。一方、他のダイアグノーシス情報が無い場合には(ステップS110(YES))、ステップS120に移行する。
【0030】
ステップS120では、三方弁50の開度を50%に調整する。すなわち、三方弁50のラジエータ30側の開度と三方弁50のバイパス流路BL側の開度とを調整して、ラジエータ30側に流す冷却水流量と、バイパス流路BL側に流す冷却水流量との比率が等しくなるように三方弁50の開度を調整する。このように三方弁50の開度を調整後、ステップS130に移行する。
【0031】
ステップS130では、ウォーターポンプ60の消費電力の測定値(以下、単に「測定値」とも称する)がウォーターポンプ60の消費電力の推定値(以下、単に「推定値」とも称する)より小さいか否かが判定される。ウォーターポンプ60の消費電力の推定値は、例えばウォーターポンプ60によって圧送される冷却水流量(以下、「ポンプ流量」とも称する)から推定しても良い。この冷却水流量は、冷却水温度及びウォーターポンプ60の回転数に基づくマップ(或いは、冷却水温度とウォーターポンプ60の回転数との関係を示す計算式)により推定される。なお、冷却水温度は、ウォーターポンプ60近傍に配置した温度センサによる検出値を利用することが好適であるが、例えばラジエータ30出口に配置した温度センサ41等の検出値を利用することができる。また、ポンプ流量は、ウォーターポンプ60の入口及び出口に圧力センサ(図示略)を設置してウォーターポンプ60の揚程を計測し、当該計測値に基づき推定しても良いし、或いは、ポンプ流量を推定するための流量センサを設置しても良い。上記のような推定値の算出方法とは別の方法として、ウォーターポンプ60の消費電力の推定値を、冷却水温度及びウォーターポンプ60の回転数に基づくマップ(或いは、冷却水温度及びウォーターポンプ60の回転数の関係を示す計算式)により直接算出することとしても良い。
【0032】
ウォーターポンプ60の消費電力の測定値がウォーターポンプ60の消費電力の推定値以上の場合には(ステップS130(NO))、図2に示す判定フローを終了する。一方、ウォーターポンプ60の消費電力の測定値がウォーターポンプ60の消費電力の推定値より小さい場合には(ステップS130(YES))、図3(A)に示すマップに基づき冷却水循環流路に異常有り(すなわち、冷却水流路閉塞又は冷却水漏れの異常有り)と判定する(ステップS140)。
【0033】
次いで、ステップS150では、三方弁50を全開にしてラジエータ流路RLに冷却水全量を流す。言い換えれば、三方弁50のバイパス流路BL側を閉弁する。
【0034】
次いで、ステップS160では、ウォーターポンプ60の消費電力の測定値が、ウォーターポンプ60の消費電力の推定値以上か否かを判定する。このようにラジエータ流路RLに冷却水全量を流しているときに、測定値が推定値以上のときは(ステップS160(YES))、図3(A)に示すマップに基づきラジエータ流路RLは正常すなわちラジエータ流路RLは閉塞していないと判定する。つまりこの場合は、バイパス流路BLの異常と判定する。このように本実施形態では、三方弁50のバイパス流路BL側の閉弁により異常状態(冷却水流路の閉塞、冷却水漏れ)が解消されたときにはバイパス流路BLの異常と判定する。一方で、測定値が推定値未満のときは(ステップS160(NO))、ステップS170に移行する。
【0035】
ステップS170では、三方弁50を全閉にしてバイパス流路BLに冷却水全量を流す。つまり、三方弁50のラジエータ流路RL側を閉弁する。
【0036】
次いで、ステップS180では、ウォーターポンプ60の消費電力の測定値が、ウォーターポンプ60の消費電力の推定値以上か否かを判定する。このようにバイパス流路BLに冷却水全量を流しているときに、測定値が推定値以上のときは(ステップS180(YES))、図3(A)に示すマップに基づきバイパス流路BLは正常すなわちバイパス流路BLは閉塞していないと判定する。つまりこの場合は、ラジエータ流路RLの異常と判定する。このように本実施形態では、三方弁50のラジエータ流路RL側の閉弁により異常状態(冷却水流路の閉塞、冷却水漏れ)が解消されたときにはラジエータ流路RLの異常と判定する。一方で、測定値が推定値未満のときは(ステップS180(NO))、次のステップS190に移行する。
【0037】
ステップS190では、ラジエータ流路RLに冷却水を流してもバイパス流路BLに冷却水を流しても、流路の閉塞が生じているため、三方弁50の開度に関係なく流路が閉塞しているとしてスタック流路SLの閉塞と判定する。このように本実施形態では、三方弁50におけるバイパス流路BL側及びラジエータ流路RL側のいずれの閉弁によっても異常状態(すなわち、ポンプ消費電力の測定値が推定値より小さい状態)が解消しないとき、スタック流路SLの閉塞と判定する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、ウォーターポンプ60の消費電力の減少により、循環流路20(スタック流路SL、ラジエータ流路RL及びバイパス流路BL)における冷却水漏れだけでなく、流路閉塞をも検知することができる。また以上説明したように、三方弁50の開度を変えたときの消費電力の変化を監視することで、循環流路20における閉塞箇所を特定することができる。
【0039】
なお、図2を参照しながら説明したステップS130、ステップS160、ステップS180において、ウォーターポンプ60の消費電力の測定値がウォーターポンプ60の消費電力の推定値より小さい場合に、図3(A)に示すマップに基づき、流路異常有り(すなわち、流路閉塞有り又は冷却水漏れ有り)と判定しているが、本実施形態における流路異常状態の判定としてはこの例に限定されない。すなわち、ウォーターポンプ60として用いるポンプの方式によって、流路閉塞等によって生じる圧力損失の変化と消費電力の変化の関係が異なるため、この関係に応じて上述した流路異常状態の判定と異なる判定条件としても良い。一例として、ターボ型(羽根車)のポンプをウォーターポンプ60として用いた場合には、流路閉塞等により圧力損失が上昇すると、等回転数で冷却水流量が低下し、消費電力も低下するため、上述した流路異常状態の判定条件(図2に示すステップS130、ステップS160、ステップS180)と同じ判定条件とする。一方、他の例として、容積型のポンプをウォーターポンプ60として用いた場合、流路閉塞等により圧力損失が上昇しても等回転数で冷却水流量が同じであり、消費電力が上昇するため、上述した流路異常状態の判定条件(ステップS130、ステップS160、ステップS180)と逆の判定条件とする。すなわち、ウォーターポンプ60の消費電力の測定値がウォーターポンプ60の消費電力の推定値より大きい場合に、図3(B)に示すマップに基づき流路異常有りと判定する。
【0040】
続いて、上記のように閉塞箇所を特定したときの退避走行(フェールセーフ)について説明する。図4は、バイパス流路BLの閉塞が特定されたときのフェールセーフの一例を示すフローチャートである。図5は、ラジエータ流路RLの閉塞が特定されたときのフェールセーフの一例を示すフローチャートである。
【0041】
図4に示すように、バイパス流路BLの閉塞を特定したときには、「バイパス流路閉塞」の警告ランプを点灯させる(ステップS210)。これにより、ユーザーにバイパス流路の異常を知らせることができる。
【0042】
次いで、ステップS220では、冷却系部品交換直後であるか否かが判定される。冷却系部品交換直後である場合には(ステップS220(YES))、直前に交換した部品を異常発生源と特定し(ステップS230)、部品の交換後(ステップS232)、上記した異常発生箇所特定フローに移行する(ステップS234)。
【0043】
ステップS220に戻り、冷却系部品交換直後でない場合には(ステップS220(NO))、バイパス流路閉塞時の冷却制御を行う(ステップS240)。具体的には、三方弁50(図1)を全開にしてラジエータ流路RL側に冷却水全量を流し、ウォーターポンプ60により圧送される流量を絞り、冷却水温度の目標値を通常より高くする。
【0044】
次いで、ステップS250では、セル電圧が下限閾値より低いか否かが判定され、セル電圧が下限閾値以上の場合には(ステップS250(NO))、セル電圧が下限閾値より低いと判定されるまでステップS250を繰り返す。セル電圧が下限閾値より低いと判定された場合には(ステップS250(YES))、出力制限を行う(ステップS260)。
【0045】
次いで、ステップS270では、セル電圧が下下限より低いか否かが判定され、セル電圧が下下限以上の場合には(ステップS270(NO))、セル電圧が下下限より低いと判定されるまでステップS270を繰り返す。セル電圧が下下限より低いと判定された場合には(ステップS270(YES))、燃料電池は使用せずにバッテリで退避走行を行う。
【0046】
続いて、図5を参照しながらラジエータ流路RLの閉塞が特定されたときの退避走行制御について説明する。
【0047】
ラジエータ流路RLの閉塞が特定されたときは、まず、ステップS310において、ラジエータ流路閉塞の警告ランプを点灯する。これにより、ユーザーにラジエータ流路RLの閉塞状況を知らせることができる。
【0048】
次いで、ステップS320では、冷却系部品交換直後であるか否かが判定される。冷却系部品交換直後である場合には(ステップS320(YES))、直前に交換した部品を異常発生源と特定し(ステップS330)、部品の交換後(ステップS332)、図2を参照しながら説明した異常発生箇所特定フローに移行する(ステップS334)。
【0049】
ステップS320に戻り、冷却系部品交換直後でない場合には(ステップS320(NO))、ステップS340に移行し、ラジエータ流路RL閉塞時の冷却制御を実行する。ラジエータ流路RL閉塞時の冷却制御とは、三方弁50を全閉にしてバイパス流路BL側に冷却水全量を流し、ウォーターポンプ60によって圧送される流量を大きくする制御である。
【0050】
次いで、ステップS350では、ラジエータ流路RL閉塞時の退避走行を実行する。図6に示すように、異常発生時すなわち故障時は、正常時(図6に示す点線G1)よりも、制限開始温度を低く設定し、制限率を大きくする(図6に示す実線G2)。外気温が高い場合には、制限開始温度を更に低く設定し、制限率も更に大きくする(図6に示す実線G3)。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、ウォーターポンプ60の回転数及び冷却水の温度に基づいた推定流量と、ウォーターポンプ60の消費電力と、の関係を示すマップ(図3参照)に基づき流路異常状態(冷却水漏れ、流路閉塞等)を判定することができる。そして、三方弁50におけるラジエータ流路側又はバイパス流路側の閉弁により流路異常状態が解消されたか否かを判定することにより、循環流路20のうちのスタック流路SL、バイパス流路BL、又はラジエータ流路RLのどの流路に異常が発生したかを判別することができる。これにより、循環流路20における異常発生箇所の特定を容易に行うことができる。
【0052】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…燃料電池冷却システム
10…燃料電池スタック
20…循環流路
21…バイパス管
30…ラジエータ
41、42…温度センサ
50…三方弁
60…ウォーターポンプ
70…インタークーラ
75…イオン交換器
100…制御部
BL…バイパス流路
RL…ラジエータ流路
SL…スタック流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7