(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光光が、出射光軸に対する強度分布の一様性が高い所定の方向と、当該所定の方向より出射光軸に対する強度分布の一様性が低い前記所定の方向に直交する不安定方向と、なる特性を有する発光装置と、
前記所定の方向の強度分布を調整可能に形成され、前記発光光が入射される強度変換レンズと、
前記不安定方向の強度分布を複数方向に分割し重畳することにより調整可能に形成される重畳変換光学部と、
を備え、
前記重畳変換光学部は、前記不安定方向に曲率を有するシリンドリカルレンズを前記不安定方向に複数組み合わせたシリンドリカルレンズアレイと、前記シリンドリカルレンズアレイからの光を重畳して照明対象面に照射する重畳レンズと、を含み、
前記強度変換レンズは、前記所定の方向の周辺部の曲率が中心部の曲率より小さいことを特徴とする光源装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る実施形態を図に基づいて説明する。
図1は投影装置10の投影装置制御部の機能回路ブロックを示す図である。投影装置制御部は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成される。
【0014】
この制御部38は、投影装置10内の各回路の動作制御を司るものであって、CPU、各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
【0015】
そして、この制御手段により、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
【0016】
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0017】
表示駆動部26は、表示素子制御手段として機能するものであり、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動するものである。
【0018】
そして、この投影装置10では、光源装置60から出射された光線束について光学系を介して表示素子51に照射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、投影側光学系を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。なお、この投影側光学系の可動レンズ群235は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0019】
また、画像圧縮/伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行う。
【0020】
さらに、画像圧縮/伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長し、この画像データを、画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行う。
【0021】
そして、投影装置10の筐体に設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37の操作信号は、直接に制御部38に送出され、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
【0022】
なお、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
【0023】
また、制御部38は、光源制御手段としての光源制御回路41を制御しており、この光源制御回路41は、画像生成時に要求される所定波長帯域の光が光源装置60から出射されるように、光源装置60の赤色光源装置、緑色光源装置及び青色光源装置の発光を個別に制御する。
【0024】
さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源装置60等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせ、この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を制御させている。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等により投影装置10本体の電源オフ後も冷却ファンの回転を持続させる、あるいは、温度センサによる温度検出の結果によっては投影装置10本体の電源をオフにする等の制御も行う。
【0025】
次に、この投影装置10の内部構造について述べる。
図2は、投影装置10の内部構造を示す平面模式図である。ここで、投影装置10の筐体は、略箱状に形成されて、上面及び下面と、正面パネル12、背面パネル13、左側パネル14及び右側パネル15を備える。なお、以下の説明においては、投影装置10における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とは投影装置10のスクリーン側方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
【0026】
投影装置10は、中央部分に光源装置60を備える。投影装置10は、光源装置60の左側方に投影光学系が内装された投影側光学系220とされるレンズ鏡筒225を備えている。また、投影装置10は、レンズ鏡筒225と背面パネル13との間に、左側パネル14と平行に配置されたDMD等の表示素子51を備えている。さらに、投影装置10は、光源装置60と正面パネル12との間に主制御回路基板241を備え、レンズ鏡筒225と左側パネル14との間に電源制御回路基板242を備えている。
【0027】
また、光源装置60からの出射光は、RTIRプリズム175を介して表示素子51に照射される。そして、表示素子51で反射されたオン光の光軸は、RTIRプリズム175により投影光学系の光軸に一致させてレンズ鏡筒225に向かって出射する。
【0028】
また、光源装置60と右側パネル15との間には、電源コネクタ57、後述する緑色光源101及び青色光源141を冷却するヒートシンク190、後述する赤色光源121で発生する熱をヒートシンク190へ導くヒートパイプ130、ヒートシンク190に冷却風をあてる冷却ファン261を備えている。
【0029】
光源装置60は、電源コネクタ57の近傍であって背面パネル13の近傍に配置される青色光源装置140と、青色光源装置140の正面パネル12側に配置される緑色光源装置100と、正面パネル12側略中央に配置される赤色光源装置120と、を備える。
【0030】
青色波長帯域光を出射する青色光源装置140は、青色光源141と、シリンドリカルレンズアレイ142と、光の強度分布を分布調整可能に形成される強度変換レンズ143と、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144と、を備える。青色光源装置140は、青色波長帯域光の出射方向が左側パネル14方向であって、背面パネル13と平行な方向よりも正面パネル12側に向けて傾斜して出射するよう配置される。青色光源141は、青色波長帯域光を出射する半導体発光素子であるレーザダイオードとされる。
【0031】
緑色波長帯域光を出射する緑色光源装置100は、緑色光源101と、シリンドリカルレンズアレイ102と、強度変換レンズ103と、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)104と、を備える。緑色光源装置100は、緑色波長帯域光を左側パネル14に向けて背面パネル13と平行に出射する。緑色光源101は、緑色波長帯域光を出射する半導体発光素子であるレーザダイオードとされる。
【0032】
赤色波長帯域光を出射する赤色光源装置120は、赤色光源121と、シリンドリカルレンズアレイ122と、強度変換レンズ123と、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)124と、を備える。赤色光源装置120は、赤色波長帯域光を背面パネル13に向けて左側パネル14と平行に出射する。赤色光源121は、赤色波長帯域光を出射する半導体発光素子であるレーザダイオードとされる。
【0033】
なお、青色光源装置140、緑色光源装置100、赤色光源装置120が備えるシリンドリカルレンズアレイ142,102,122、強度変換レンズ143,103,123、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124の詳細については後述する。
【0034】
緑色光源装置100からの緑色波長帯域光と、赤色光源装置120からの赤色波長帯域光が交差する位置には、第1ダイクロイックミラー171が配置される。第1ダイクロイックミラー171は、緑色波長帯域光を反射して、赤色波長帯域光を透過する。従って、緑色光源装置100からの緑色波長帯域光と、赤色光源装置120からの赤色波長帯域光は光軸を一致されて背面パネル13方向に導光される。
【0035】
第1ダイクロイックミラー171を透過する赤色波長帯域光(換言すれば、第1ダイクロイックミラー171を反射する緑色波長帯域光)と、青色光源装置140からの青色波長帯域光が交差する位置には、第2ダイクロイックミラー172が配置される。第2ダイクロイックミラー172は、緑色波長帯域光及び赤色波長帯域光を反射して、青色波長帯域光を透過する。従って、第1ダイクロイックミラー171からの赤色波長帯域光及び緑色波長帯域光と、青色光源装置140からの青色波長帯域光とは、第2ダイクロイックミラー172により光軸を一致されて、左側パネル14側のRTIRプリズム175に向けて導光される。RTIRプリズム175に入射する光源装置60からの光束は、前述の通り、表示素子51に照射される。
【0036】
このように投影装置10を構成することで、各色光源装置100,120,140から異なるタイミングで光を出射すると、赤色、緑色及び青色の各波長帯域光がRTIRプリズム175に順次入射され、表示素子51の画像形成面に照射されるため、投影装置10の表示素子51であるDMDがデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、スクリーンにカラー画像を投影することができる。
【0037】
ここで、青色光源装置140、緑色光源装置100、赤色光源装置120が備えるシリンドリカルレンズアレイ142,102,122、強度変換レンズ143,103,123、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124について、詳細に説明する。
図3(a)は
図2と同様に平面視した模式図であり、
図3(b)は
図2の正面パネル12側から見た側面模式図である。各色光源141,101,121は、断面楕円形状の光を発する半導体発光素子であるレーザダイオードであり、各色光源141,101,121から出射した直後の位置Qにおける光の断面形状は、
図3(a)では短軸が紙面に垂直な方向とされ(光軸方向から見た出射光の断面形状Q1参照)、
図3(b)では長軸が紙面に垂直な方向とされる(光軸方向から見た出射光の断面形状Q2参照)。
【0038】
なお、
図2、
図3、
図4(後述)では、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122と、強度変換レンズ143,103,123とが、接している場合の図を示しているが、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122と、強度変換レンズ143,103,123とが離間していてもよい。
【0039】
シリンドリカルレンズアレイ142,102,122は、各色光源141,101,121からの出射光の短軸方向に曲率を有するシリンドリカルレンズCL(
図3(b)参照)を短軸方向(
図3(b)においては図の上下方向)に複数組み合わせて形成される。シリンドリカルレンズアレイ142,102,122は、曲率面を各色光源141,101,121に向けて配置される。
【0040】
光の長軸方向の強度分布を調整可能に形成される強度変換レンズ143,103,123は、ガウス分布をトップハット分布(平坦化された分布)に変換するレンズである。本設計例では、レンズの中心付近の光はそのまま直進して広がり、レンズの周辺付近の光は少し曲がって光軸と概略平行になるように光学設計されたものである。
【0041】
ここで、強度変換レンズ143,103,123の設計例を
図4に基づいて説明する。
図4において、位置Sは出射光が矩形の均一な(強度分布が平坦化された)光と設定される位置(照明対象面)、主点Pは強度変換レンズ143,103,123の主点、発光点Tはレーザダイオードの発光点、焦点Fは強度変換レンズ143,103,123の焦点である。また、第1屈折面をR1、第2屈折面をR2として示す。
【0042】
ここでは、まず、代表例として青色の光路の強度変換レンズ143の設計例を説明する。強度変換レンズ143の光学設計(レンズデータ)の例を以下に示す。ガラス材質:L−LAH84(屈折率nd 1.80835 アッベ数νd 40.55)
レンズ厚:2.5mm
有効径:φ5.4mm
R1面:平面
R2面:数式(1)及び以下の値を用いて算出される偶数次非球面
曲率半径(R):-4.125mm
コーニック定数(k):-7.328
α1:0.00E+00
α2:-2.06E-02
α3:2.59E-03
α4:-2.77E-04
α5:1.49E-05
【0043】
【数1】
z:サグ量
y:光軸からの距離
c:曲率(1/R)
【0044】
上記のレンズデータにより設計された強度変換レンズ143は、入射面が平らで出射面が凸の平凸形状で回転対称の非球面レンズとされて、出射面は、中心部が略球面で、周辺部が中心部の曲率より小さい曲率変化面となっている。そして、光の長軸方向の光は、レンズの中心部の略球面部分及び周辺部の曲率変化面部分に入射され、光の短軸方向の光は、レンズの中心部の略球面部分に入射される。具体的には、このように設計された強度変換レンズ143は、以下の条件1〜3に基づいて、青色光源141からの光がシリンドリカルレンズアレイ142、強度変換レンズ143、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144を順に介して出射する青色光源装置140のレイアウト設計がされる。まず、青色光源141のレーザダイオードの出射光における広がり角度は、強度分布のピーク値に対し1/e2(e:自然対数の底)の強度となる角度の半角として、
Θ//:5度
Θ⊥:20度
を仮定する。強度変換レンズ143は、レーザダイオードにおける断面楕円形の出射光の長軸方向(垂直方向)について主に作用させるため、垂直方向の角度20度(条件1)を用いる。
【0045】
そして、強度変換レンズ143から位置Sまでの距離S1を25mm(条件2)、位置Sにおける出射光の長軸方向の長さS2を4mm(条件3)とする。ここで、出射光の長軸方向については平行平板として作用するシリンドリカルレンズアレイ142及び重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144の厚みL3,L6は、共に1mmに設定される。また、強度変換レンズ143のR1面から主点Pまでの距離L4は1.3mmであり、強度変換レンズ143の厚みL5は2.5mmである。すると、強度変換レンズ143を備える青色光源装置140のレイアウトは、主点Pと焦点Fの距離L1が5mm、発光点Tとシリンドリカルレンズアレイ142の距離L2が1.8mmとなる。このようにして、青色光源141の発光点Tは、強度変換レンズ143の中心部に対応する焦点Fの位置よりも強度変換レンズ143側に位置している。
【0046】
そして、緑色及び赤色の光路の強度変換レンズ103,123についても、青色の光路の強度変換レンズ143の設計と同様に、色の波長、広がり角度(条件1)、DMDまでの距離(
図2のように、DMDまでの距離は、青色の光路より緑色及び赤色の光路の方が長い)(条件2)に合わせて、最適になるように設計を行う。
【0047】
レーザダイオードとされる各色光源141,101,121からの出射光は、
図4(a)の位置Qにおける光強度分布である
図5(a)で示すように、中心付近の光強度が高いガウス分布を示している。このような各色光源141,101,121からの出射光は、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122に入射すると、短軸方向に光束が複数分割される。シリンドリカルレンズアレイ142,102,122により複数分割された光束は、強度変換レンズ143,103,123により長軸方向がトップハット化される。そして、強度変換レンズ143,103,123を出射した複数分割された光束は、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124により重畳され、短軸方向もトップハット化される。すると、
図4(a)の位置Sにおける光強度分布である
図5(b)で示すように、各色光源141,101,121からの出射光は、位置Sでは矩形の均一な(強度分布が平坦化された)光として照射される。
【0048】
このようにして、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122と重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124とにより、光を複数方向に分割し重畳することにより、光の長軸方向と直交する短軸方向の強度分布を調整可能に形成される重畳変換光学部300が構成される。
【0049】
また、各色光源141,101,121の発光点Tの位置は、強度変換レンズ143,103,123の焦点Fの位置よりも強度変換レンズ143,103,123に近い。そして強度変換レンズ143,103,123は、
図6のような曲率分布を有する。
図6の曲率分布は、横軸に中心からの位置、縦軸にその位置でのレンズの曲率を示しており、その絶対値が0に近いほど平面に近似することを表す。この図から、強度変換レンズ143,103,123は、周辺にいくほど曲率が0に近づくような設計になっていることが分かる。従って、強度変換レンズ143,103,123は、中心部が略球面で、周辺部が当該中心部の曲率より小さい曲率変化面となっている。このように設計された強度変換レンズ143,103,123の中心付近の光線は広がる一方、周辺付近の光線は非球面部に入射するため強く曲がり、平行に近い光線になる。
【0050】
レーザダイオードからの出射光は、断面楕円形の短軸方向は長軸方向に比べて強度分布のバラツキが大きく、変動し易い特性を有する。そのため、本実施形態のように、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122により短軸方向で光束を分割し、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124により重畳することにより、出射光の短軸方向の変動を補償することができる。
【0051】
ここで、レーザダイオードからの出射光をマイクロレンズアレイで重畳する場合と比較すると、マイクロレンズアレイでは、マイクロレンズ間の稜線が縦横に存在する。従って、長軸方向のみに稜線が存在するシリンドリカルレンズアレイ142,102,122を用いる本実施形態の方が、光の損失量が半減する。
【0052】
また、本実施形態で示すレイアウト(各色光源141,101,121からの光の出射方向から順に、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122、強度変換レンズ143,103,123、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124の順)では、レイアウト上ある程度の距離を必要とするシリンドリカルレンズアレイ142,102,122と重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124の間に強度変換レンズ143,103,123を配置するため、省スペース化が実現できる。本実施形態の他、例えば、出射方向から順に、強度変換レンズ143,103,123、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124の順とすることもできる。この場合には、強度変換レンズ143,103,123を出射する光が短軸方向について平行化されてシリンドリカルレンズアレイ142,102,122に入射されるので、光学効率が向上する。
【0053】
また、出射方向から順に、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124、強度変換レンズ143,103,123の順としてもよい。
【0054】
また、強度変換レンズ143,103,123は、断面楕円形の長軸方向の光について主に作用する回転対称なレンズとしたが、強度変換レンズ143,103,123については、光の長軸方向の強度分布を調整可能に形成されていればよく、例えば、長軸方向に曲率を有するシリンドリカル形状のレンズに換えることもできる。
【0055】
また、重畳レンズ144,104,124は、光の短軸方向に曲率を有するシリンドリカル形状のもので説明したが、それに限らず、光の長軸方向に曲率を持つレンズであってもよい。例えば、光の短軸方向と長軸方向に同じ曲率を持つ回転対称なレンズであってもよいし、光の短軸方向と長軸方向に異なる曲率を持つレンズであってもよい。
【0056】
(第2実施形態)
次に、光路を細線で示す
図7及び
図8に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態は、第1実施形態における青色光源装置140、緑色光源装置100、赤色光源装置120において、重畳変換光学部300(シリンドリカルレンズアレイ142,102,122、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124)を重畳変換光学部300Aとしてのパウエルレンズ145,105,125に換えて、第1実施形態における回転対称に形成される強度変換レンズ143,103,123を略長尺状(シリンドリカル形状)の強度変換レンズ143A,103A,123Aに換えたものである。なお、第1実施形態の説明と同様に、各色光源141,101,121から断面楕円形の光を出射した直後の位置を位置Qとし、
図7(a)では短軸が紙面に垂直な方向(光軸方向から見た出射光の断面形状Q1参照)を示し、
図7(b)では長軸が紙面に垂直な方向(光軸方向から見た出射光の断面形状Q2参照)で示している。
【0057】
パウエルレンズ145,105,125は、長軸方向に略長尺状に形成される。パウエルレンズ145,105,125の入射面は、凹面に形成される。パウエルレンズ145,105,125の出射面は、非球面である。また、パウエルレンズ145,105,125の出射面は、短軸方向に曲率を有する。具体的には、長軸方向(
図7(b)参照)から見て、頂点を出射方向に向けた略三角形状であり、当該略三角形状の辺部分が外方向に凸湾曲状とされている。
【0058】
光の長軸方向の強度分布を調整可能に形成される強度変換レンズ143A,103A,123Aは、長軸方向に略長尺状に形成される。強度変換レンズ143A,103A,123Aは、入射面側が平坦に形成され、出射面が長軸方向に曲率を有するように形成される。本実施形態における強度変換レンズ143A,103A,123Aは、光の長軸方向については、第1実施形態における強度変換レンズ143,103,123と同様に、レンズの中心付近の光はそのまま直進して広がり、レンズの周辺付近の光は少し曲がって光軸と概略平行になるように光学設計されたものである。
【0059】
本実施形態における代表例として、前述の数式(1)を用いて、青色の光路の強度変換レンズ143Aの設計例を
図8と共に説明する。強度変換レンズ143Aの光学設計(レンズデータ)の例を以下に示す。
ガラス材質:L−LAM60(屈折率nd 1.7432 アッベ数νd 49.29)
レンズ厚:2.0mm
有効径:φ3.6mm
R1面:平面
R2面:数式(1)及び以下の値を用いて算出される偶数次非球面
曲率半径(R):-2.808mm
コーニック定数(k):-1.05E+00
α1:0.00E+00
α2:-1.40E-02
α3:2.29E-03
α4:-2.79E-04
α5:8.70E-06
【0060】
上記のレンズデータにより設計された強度変換レンズ143Aは、入射面が平らで、出射面は凸となるような形状である。そして
図9は、凸面の曲率の変化を示している。
図9のように、強度変換レンズ143Aは、周辺にいくほど曲率が0に近づくような設計になっているため、中心付近の光線は広がる一方、周辺付近の光線は非球面部に入射して強く曲がり、平行に近い光線になる。このように、強度変換レンズ143Aは、中心部が略球面で、周辺部が当該中心部の曲率より小さい曲率変化面となっている。また、光の長軸方向の光は、
図7(a)において光路を細線で示すが、レンズの中心部及び周辺部の曲率変化面部分に入射され、光の短軸方向の光は、レンズにそのまま入射される。
【0061】
具体的には、レーザダイオードの長軸方向(垂直方向)の広がり角度20度(条件1)を用いて、第1実施形態(
図4(a)参照)と同様に、強度変換レンズ143Aから位置Sまでの距離S1を25mm(条件2)、位置Sにおける出射光の長軸方向の長さS2を4mm(条件3)とする。ここで、
図8に示すように、強度変換レンズ143AのR1面から主点Pまでの距離L12は1.1mm、主点Pと焦点Fの距離L10が3.8mmである。すると、強度変換レンズ143Aを備える青色光源装置140のレイアウトは、発光点TとR1面までの距離L11が2.2mmとなる。このようにして、青色光源141の発光点Tは、強度変換レンズ143Aの焦点Fの位置よりも強度変換レンズ143A側に位置している。強度変換レンズ103A,123Aについても、同様に設計を行う。
【0062】
強度変換レンズ143A,103A,123Aから出射された光の短軸方向は、
図7(b)に示すように、パウエルレンズ145,105,125の凹面とされる入射面で短軸方向に広げられる。パウエルレンズ145,105,125に入射して広げられた光は、略三角状の頂点を境に上側と下側の2つに分割され、照明対象面にて重畳される。
【0063】
従って、第1実施形態と同様の
図5に示すように、位置Qにおいてガウス分布の光強度分布の光(
図5(a)参照)である、レーザダイオードとされる各色光源141,101,121からの出射光は、強度変換レンズ143A,103A,123A及びパウエルレンズ145,105,125を介して、トップハット化され照明対象面(位置S、
図4(a)参照)に照射される。
【0064】
なお、本実施形態においては、強度変換レンズ143A,103A,123Aとパウエルレンズ145,105,125は別体としたが、一体的に形成することもできる。また、パウエルレンズ145,105,125の出射側を略三角形状としたが、本実施形態と逆に、入射側の面を略三角形状として、出射側の面を凹面としてもよい。また、重畳する光によっては、本実施形態におけるパウエルレンズ145,105,125の凹面の入射面を平坦とすることもできる。
【0065】
上記実施形態では、発光装置として、レーザダイオードを例に挙げた。
レーザダイオードのθ⊥(長軸)方向は、シングルピークだが、θ//(短軸)方向はマルチモードということで複数のピークがある。この一つ一つがレーザダイオードの発振モードとなっており、駆動条件や劣化具合により各ピークの比率が変動し、不安定の原因となる。
【0066】
θ⊥(長軸)方向については、活性層の厚みが1μm程度と薄く複数のモードが存在できない状態の為、分布の一様性が安定している(一様性が高い)。
θ//(短軸)方向は、発光部分の幅が数十μm〜数百μm程度とθ⊥(長軸)方向に比べて桁違いに幅広い。そのため、局所的に、電流値もしくは温度が異なる。すると、発光の位置/半導体の屈折率/結晶内の欠陥などが局所的に変化し、その結果各ピークの比率も変化し、分布の一様性が不安定となる(一様性が低い)。
【0067】
したがって、上記実施形態では、θ//(長軸)方向の光を安定方向(所定の方向)として、強度変換レンズによってトップハット化し、θ⊥(短軸)方向の光を不安定方向として、重畳変換光学部によってトップハット化する構成をとった。
逆に、短軸方向が安定で、長軸方向が不安定な場合の発光装置の場合には、短軸方向を強度変換レンズでトップハット化し、長軸方向を重畳変換光学部でトップハット化すればよい。
【0068】
また、光の分布は楕円状に限らず、円状のものやその他分布の光であってもよい。
なお、ここで、一様性が不安定(一様性が低い)とは、強度分布が対称、非対称にかかわらず、ガウス分布がくずれたものや、ピークの数が変化したものや多様な分布をとることを意味する。
【0069】
いずれにしても、出射光軸に対して発光強度分布が所定の方向と当該所定の方向と直交する方向とで一様性が異なる特性を有する光を発する発光装置において、一様性の安定な(高い)方向は、強度変換レンズによってトップハット化し、一様性の不安定な(低い)方向は、重畳変換光学部によってトップハット化する構成とすれば、効率よく、トップハット化された矩形の照明光を実現することができる。
【0070】
以上、光源装置60は、発光光が、出射光軸に対する強度分布の一様性が高い所定の方向と、当該所定の方向より出射光軸に対する一様性が低い所定の方向に直交する方向と、なる特性を有する発光装置である各色光源141,101,121と、所定の方向の強度分布を調整可能に形成され、発光光が入射される強度変換レンズ143,103,123,143A,103A,123Aと、不安定方向の強度分布を複数方向に分割し重畳することにより調整可能に形成される重畳変換光学部300,300A(シリンドリカルレンズアレイ142,102,122と重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124の組合せ、又は、パウエルレンズ145,105,125)と、を有する。
【0071】
これにより、レーザダイオードを発光装置としても、ガウス分布をトップハット化した矩形の照明光とすることができる。従って、ライトトンネルやマイクロレンズアレイ等の比較的大きい光学部材を用いることなく、小型化した光源装置を提供することができる。
【0072】
また、重畳変換光学部300は、不安定方向に曲率を有するシリンドリカルレンズを不安定方向に複数組み合わせたシリンドリカルレンズアレイ142,102,122と、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122からの光を重畳して照射対象面に照射する重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124を含む。これにより、不安定方向の分割数を多くすることができるので、光強度分布の変動に強い光学系とすることができる。
【0073】
また、強度変換レンズ143,103,123は、光の安定方向の周辺部の曲率が中心部の曲率より小さい。これにより、中心を通る光よりも周辺部を通る光を大きく屈折させて、調整することができる。
【0074】
また、強度変換レンズ143,103,123は、平凸形状で回転対称の非球面レンズとして形成される。これにより、シリンドリカルレンズで形成するよりも製造に掛かるコストを低くすることができる。
【0075】
また、強度変換レンズ143,103,123は、中心部が略球面で、周辺部が当該中心部の曲率より小さい曲率変化面となっており、安定方向の光は中心部及び周辺部に入射し、不安定方向の光は中心部に入射する。これにより、長軸方向の強度分布を調整してトップハット化した光とすることができる。
【0076】
また、各色光源141,101,121からの出射光は、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122に入射し、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122からの出射光は強度変換レンズ143,103,123に入射し、強度変換レンズ143,103,123からの出射光は重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124に入射する。これにより、各色光源装置140,100,120をコンパクトに形成することができる。
【0077】
また、各色光源141,101,121からの出射光は、強度変換レンズ143,103,123に入射し、強度変換レンズ143,103,123からの出射光はシリンドリカルレンズアレイ142,102,122に入射し、シリンドリカルレンズアレイ142,102,122からの出射光は重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124に入射するようにしてもよい。これにより、光の利用効率の良い各色光源装置140,100,120を提供することができる。
【0078】
また、重畳シリンドリカルレンズ(重畳レンズ)144,104,124は、不安定方向に曲率を有するシリンドリカル形状のレンズを用いるようにした。これにより、不安定方向のみに作用する設計とすることができるので、光学設計を容易化することができる。
【0079】
また、重畳変換光学部300Aは、不安定方向に曲率を有するパウエルレンズ145,105,125を含む。これにより、強度変換レンズ143A,103A,123Aとパウエルレンズ145,105,125によりガウス分布を矩形のトップハット化した照明光とすることができるので、装置を小型にすることができる。
【0080】
また、パウエルレンズ145,105,125の出射面は、非球面とすることができる。これにより、よりトップハット形状に近い光強度分布とすることができる。
【0081】
また、パウエルレンズ145,105,125の入射面は、凹面とすることができる。これにより、短軸方向の光を広げることができる。
【0082】
また、各色光源141,101,121の発光点Tの位置は、強度変換レンズ143,103,123の焦点Fの位置よりも強度変換レンズ143,103,123に近い位置とされる。これにより、ガウス分布とされるレーザダイオードの出射光における光強度分布をトップハット化させることができる。
【0083】
また、投影装置10は、光源装置60と、表示素子51と、投影側光学系220と、投影制御部とを備える。これにより、光源として明るい発光装置であるレーザダイオードを用いつつ、トップハット化した照明光を用いることができて小型化された投影装置10を提供することができる。
【0084】
また、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0085】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]発光光が、出射光軸に対する強度分布の一様性が高い所定の方向と、当該所定の方向より出射光軸に対する強度分布の一様性が低い前記所定の方向に直交する不安定方向と、なる特性を有する発光装置と、
前記所定の方向の強度分布を調整可能に形成され、前記発光光が入射される強度変換レンズと、
前記不安定方向の強度分布を複数方向に分割し重畳することにより調整可能に形成される重畳変換光学部と、
を備えることを特徴とする光源装置。
[2]前記重畳変換光学部は、
前記不安定方向に曲率を有するシリンドリカルレンズを前記不安定方向に複数組み合わせたシリンドリカルレンズアレイと、
前記シリンドリカルレンズアレイからの光を重畳して照明対象面に照射する重畳レンズと、を含む、
ことを特徴とする前記[1]に記載の光源装置。
[3]前記強度変換レンズは、前記所定の方向の周辺部の曲率が中心部の曲率より小さいことを特徴とする前記[2]に記載の光源装置。
[4]前記強度変換レンズは、平凸形状で回転対称の非球面レンズであることを特徴とする前記[2]又は前記[3]に記載の光源装置。
[5]前記強度変換レンズは、中心部が略球面で、周辺部が当該中心部の曲率より小さい曲率変化面となっており、
前記所定の方向の光は、前記強度変換レンズの前記中心部及び前記周辺部に入射し、前記不安定方向の光は、前記強度変換レンズの前記中心部に入射することを特徴とする前記[3]又は前記[4]に記載の光源装置。
[6]前記発光装置からの出射光は前記シリンドリカルレンズアレイに入射し、
前記シリンドリカルレンズアレイからの出射光は前記強度変換レンズに入射し、
前記強度変換レンズからの出射光は前記重畳レンズに入射する、
ことを特徴とする前記[3]乃至前記[5]の何れかに記載の光源装置。
[7]前記発光装置からの出射光は前記強度変換レンズに入射し、
前記強度変換レンズからの出射光は前記シリンドリカルレンズアレイに入射し、
前記シリンドリカルレンズアレイからの出射光は前記重畳レンズに入射する、
ことを特徴とする前記[3]乃至前記[5]の何れかに記載の光源装置。
[8]前記重畳レンズは、前記不安定方向に曲率を有するシリンドリカル形状であることを特徴とする前記[2]乃至前記[7]の何れかに記載の光源装置。
[9]前記重畳変換光学部は、前記不安定方向に曲率を有するパウエルレンズを含む、
ことを特徴とする前記[1]に記載の光源装置。
[10]前記パウエルレンズの出射面は、非球面であることを特徴とする前記[9]に記載の光源装置。
[11]前記パウエルレンズの入射面は、凹面であることを特徴とする前記[9]又は前記[10]に記載の光源装置。
[12]前記発光装置の発光点は、前記強度変換レンズの焦点位置よりも前記強度変換レンズ側に位置していることを特徴とする前記[1]乃至前記[11]の何れかに記載の光源装置。
[13]前記[1]乃至前記[12]の何れかに記載の光源装置と、
前記光源装置からの光源光が照射され、画像光を形成する表示素子と、
前記表示素子から出射された前記画像光をスクリーンに投影する投影側光学系と、
前記表示素子と、前記光源装置を制御する投影装置制御部と、
を有することを特徴とする投影装置。