特許第6803001号(P6803001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6803001-燃料電池の触媒インク作成方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803001
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】燃料電池の触媒インク作成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20201214BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01M4/88 K
   H01M4/86 M
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-248978(P2016-248978)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-106810(P2018-106810A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 恒政
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢夫
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−513668(JP,A)
【文献】 特開2016−115455(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031060(WO,A1)
【文献】 特開2008−308683(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153146(WO,A1)
【文献】 特開2015−053166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86−4/98
H01M 8/00−8/0297, 8/08−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒分散液を作成する工程と、
スプレードライによりアイオノマー溶液を噴霧してアイオノマーを微粒化した後に、微粒化したアイオノマー溶液をアルコール溶液に再溶解して、その後に加熱混合して、固形分比30wt%以上のゲル体を作成する工程と、
前記触媒分散液と前記ゲル体とを混合する工程と、
を含む、燃料電池の触媒インク作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の触媒インク作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、通常、電解質膜の両面に電極が配置された発電体である膜電極接合体を備える。膜電極接合体の電極は、燃料電池反応を促進するための触媒が担持された触媒電極として形成される。触媒電極は、一般に、導電性を有する粒子に触媒を担持させた触媒担持粒子と、アイオノマーと、を有機溶媒または無機溶媒に分散させたスラリーである触媒インクを塗布・乾燥させることにより形成される。
【0003】
このような燃料電池の触媒インクを作成する方法としては、例えば特許文献1に記載されるように、触媒分散液を作成する工程と、アイオノマーのゲル体を作成する工程と、作成した触媒分散液及びゲル体を撹拌混合する工程と、を含む方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/031060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される従来方法では、触媒分散液の作成工程時間を短縮するために、触媒分散液の固形分を低減しゲル体の固形分比を増大させることが考えられる。しかし、このような対応をとると、ゲル体作成工程における加熱時にゲル体の不均一性が増大する虞が生じる。
【0006】
そこで本発明は、ゲル体の固形分比を増大させてもゲル体の不均一性の増大を好適に抑制でき、触媒インクの作成時間の短縮を図ることができる触媒インクの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る燃料電池の触媒インク作成方法は、触媒分散液を作成する工程と、アイオノマーを微粒化した後に再溶解してゲル体を作成する工程と、前記触媒分散液と前記ゲル体とを混合する工程と、を含む。
【0008】
この態様によれば、アイオノマーを微粒化する処理を施すことによって、ゲル体の固形分比増大に伴うゲル不均一性の悪化を抑制できるので、従来より高い固形分比のゲル体を作成することが可能となる。これにより、触媒分散液の作成工程時間を充分に短縮することが可能となり、最終的に作成される触媒インクの作成時間も充分に短縮できる。この結果、ゲル体の固形分比を増大させてもゲル体の不均一性の増大を好適に抑制でき、触媒インクの作成時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲル体の固形分比を増大させてもゲル体の不均一性の増大を好適に抑制でき、触媒インクの作成時間の短縮を図ることができる触媒インクの作成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る触媒インク作成方法の各工程を示すフローチャートである。
図2図2は、比較例と本実施形態におけるゲル固形分比とゲル不均一性との間の特性を示す図である。
図3図3は、従来の触媒インク作成方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
まず図3を参照して、本実施形態に係る触媒インク作成方法の比較例として、特許文献1に記載される従来の触媒インク作成方法について説明する。図3は、従来の触媒インク作成方法の各工程を示すフローチャートである。
【0013】
ステップS11の触媒インク分散工程では、触媒担持粒子(例えば、白金担持カーボン)を溶媒に分散させて触媒分散液を作成する。具体的には、触媒担持粒子と水とを混合した分散水溶液に、アルコールを投入し、さらにステップS12で用いるのと同種のアイオノマーを含むアイオノマー溶液を添加して混合溶液とする。そして、この混合溶液を、超音波分散器などを用いて撹拌して、触媒分散液を作成する。ステップS11の処理が完了するとステップS12に進む。
【0014】
ステップS12のアイオノマゲル作製工程では、アイオノマーと揮発性溶媒とを混合することにより、アイオノマーのゲル体を作成する。具体的には、アイオノマー溶液を入れた容器を加温して水分を蒸発させた後に、揮発性溶媒(例えばアルコール溶液)で希釈することで、所定の粘弾性を有するゲル体を作成する。ステップS12の処理が完了するとステップS13に進む。
【0015】
ステップS13のアイオノマゲル投入工程では、ステップS11にて作成された触媒分散液に、ステップS12にて作成されたアイオノマーのゲル体が投入され、触媒分散液とゲル体とが混合される。ステップS13の処理が完了するとステップS14に進む。
【0016】
ステップS14の触媒インク混合工程では、ステップS13にて混合された触媒分散液及びゲル体を撹拌することにより、所望の粘度を有する触媒インクを得る。
【0017】
次に図1及び図2を参照して、本実施形態に係る触媒インク作成方法について説明する。図1は、本実施形態に係る触媒インク作成方法の各工程を示すフローチャートである。
【0018】
図3を参照して説明した従来の触媒インク作成方法では、ステップ11の触媒インク分散工程において、触媒分散液の作成工程時間を短縮するために、触媒分散液の固形分比を低減させる対策を取り得る。その理由は、分散時の固形分比が高い程、許容できる分散力が小さくなり、結果として分散時間が長くなるためである(固形分比が高い状態で分散力を増すとカーボンが凝集して分散不良になる)。触媒分散液の固形分比を下げると、最終的に生成される触媒インクの固形分比が下がり、粘度不足となって間欠塗工できない虞がある。
【0019】
触媒インクの固形分比を維持したまま、触媒分散液の固形分比を下げるためには、この触媒分散液に投入するゲル体、すなわち、ステップS12のアイオノマゲル作製工程において作成されるゲル体の固形分比を増大させる必要がある。しかし、ゲル体の固形分比を増大させると、アイオノマー溶液の加温時に溶液内のアイオノマー溶液温度が不均一になり、アルコールで希釈した後もゲル体が不均一な状態となる虞がある。つまり、図3に示す従来手法では、ゲル固形分比の上限があるため、また、これにより触媒分散液の固形分比にも下限があるため、触媒インクの作成時間の短縮化に制約を受けることになる。
【0020】
本実施形態の触媒インク作成方法では、このような従来手法の問題に対して、図3のステップS12のアイオノマゲル作製工程の代わりに、図1に示すようにステップS2のアイオノマー微粒化・再分散・加熱混合工程を実施する。なお、図1に示す他のステップS1,S3,S4の各工程は、図3を参照して説明したステップS11,S13,S14と同様であるので、説明を省略する。
【0021】
ステップS2のアイオノマー微粒化・再分散・加熱混合工程では、アイオノマーを微粒化した後に再溶解してゲル体を作成する。具体的には、まずアイオノマー溶液を微粒化し、この微粒化したアイオノマー溶液を揮発性溶媒(例えばアルコール溶液)に再分散(再溶解)し、その後に加熱混合して、アイオノマーのゲル体を作成する。
【0022】
なお、微粒化したアイオノマーの溶媒量は、微粒化前に含む溶媒量の1/90〜1/50程度が望ましい。溶媒量が多いと設備内に付着し歩留り低下の懸念があり、また、溶媒量が少ないとゲル不均一性の懸念があるためである。
【0023】
ステップS2のアイオノマー微粒化は、スプレードライ設備等でアイオノマー溶液を微量噴霧するため、アイオノマー溶液の温度が均一となり、再分散・加熱混合後も溶液が均一な状態を保つことができる。このため、ゲル固形分比の増大に伴う不均一性を抑制することができ、従来手法に比べて高固形分比のゲル体を作成することが可能となる。
【0024】
図2は、比較例と本実施形態におけるゲル固形分比とゲル不均一性との間の特性を示す図である。図2の縦軸はゲル不均一性を表し、図2の横軸はゲル固形分比を表す。本実施形態の触媒インク作成方法において作成されるアイオノマゲルのゲル固形分比とゲル不均一性との間の特性をグラフAで示し、比較例(図3に示す従来手法で作成されるアイオノマゲル)の特性をグラフBで示す。図2に示すように、本実施形態で作成されたアイオノマゲルは、ゲル不均一性が増大する固形分比が比較例に対して高い。例えば、比較例のゲルが固形分比20wt%程度で作製されるのに対し、本実施形態のゲルは固形分比30wt%程度で作製できる。つまり、本実施形態は、ゲル体の固形分比の使用範囲を比較例より高くすることができ、高固形分比のゲル体を作成することができる。
【0025】
このように、本実施形態に係る触媒インク作成方法は、触媒分散液を作成する工程(ステップS1)と、アイオノマーを微粒化した後に再溶解してゲル体を作成する工程(ステップS2)と、ステップS1にて作成した触媒分散液とステップS2にて作成したゲル体とを混合する工程(ステップS3、S4)とを含む。
【0026】
この構成により、特にステップS2のアイオノマー微粒化・再分散・加熱混合工程においてアイオノマーを微粒化する処理を施すことによって、上述のとおりゲル体の固形分比増大に伴うゲル不均一性の悪化を抑制できるので、従来より高い固形分比のゲル体を作成することが可能となる。つまり、触媒インクの固形分比を維持するためのゲル固形分比の上限の要件を緩和できる。これにより、触媒インクの固形分比を維持するための触媒分散液の固形分比の下限の要件も緩和できるので、触媒分散液の作成工程時間を充分に短縮することが可能となり、最終的に作成される触媒インクの作成時間も充分に短縮できる。この結果、本実施形態に係る触媒インク作成方法は、ゲル体の固形分比を増大させてもゲル体の不均一性の増大を好適に抑制でき、触媒インクの作成時間の短縮を図ることができる。
【0027】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0028】
上記実施形態において触媒インク作成方法の手順の一部として説明したステップS2のアイオノマー微粒化・再分散・加熱混合工程は、最終的にアイオノマーのゲル体が作成できればよく、他の手順としてもよい。例えば、アイオノマー溶液を微粒化する工程のみを行い、この微粒化したアイオノマーをステップS3にて触媒分散液に投入してもよいし、または、微粒化したアイオノマーを溶媒に再分散させる工程までを行い、これをステップS3にて触媒分散液に投入する方法としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
S1…触媒インク分散工程、S2…アイオノマー微粒化・再分散・加熱混合工程、S3…アイオノマゲル投入工程、S4…触媒インク混合工程
図1
図2
図3