(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する前記複数のホログラム素子からの回折光の前記第1方向に交差する前記第2方向に沿った照射幅は、それぞれ同一である、請求項1に記載の照明装置。
前記被照明領域の前記第1方向に交差する前記第2方向に沿った任意の位置に入射する前記複数のホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さは、それぞれ同一である、請求項1又は2に記載の照明装置。
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に交差する前記第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラムからの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明装置。
前記被照明領域の前記第1方向に交差する前記第2方向に沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に沿った照射長さは、前記被照明領域の前記第2方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さと、同一である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の照明装置。
前記複数の光源のそれぞれに対応づけて設けられ、対応する光源からの光を整形して、対応するホログラム素子に向ける、複数の整形光学系をさらに備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、照明されるべき領域、すなわち被照明領域のエッジが不鮮明となることを防止するための工夫について、検討がなされていない。被照明領域のエッジの鮮明さは、長手方向を有する被照明領域を照明する場合、とりわけライン状の被照明領域を照明する場合に、より顕著に感知されることになる。また、同一波長域又は異なる波長域の複数の光源を用いて被照明領域を照明する場合に、被照明領域のエッジがより不鮮明となりやすい。
【0005】
さらに、レーザー光を照射する光源を用いた場合、被照明領域を明るく照明することができる。ただしその一方で、照明装置からの照明光を直視した場合に、人間の目に悪影響を与える虞がある。
【0006】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであって、長手方向を有する被照明領域を、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様では、第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
光源と、
前記光源からの光を回折して前記被照明領域に向ける第1ホログラム素子及び第2ホログラム素子を有する回折光学素子と、を備え、
前記第1ホログラム素子での回折光が前記被照明領域の全域を照明し且つ前記第2ホログラム素子での回折光が前記被照明領域の全域を照明する、照明装置が提供される。
【0008】
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する前記第1ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に交差する第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する前記第2ホログラム素子からの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一となっていてもよい。
【0009】
前記被照明領域の前記第1方向に交差する第2方向に沿った任意の位置に入射する前記第1ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さは、前記被照明領域の前記第2方向に沿った前記任意の位置に入射する前記第2ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さと、同一となっていてもよい。
【0010】
本開示の他の一態様では、第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域を照明する照明装置であって、
光源と、
前記光源からの光を回折して前記被照明領域に向ける第1ホログラム素子及び第2ホログラム素子を有する回折光学素子と、を備え、
前記被照明領域の前記第1方向と前記第2方向との少なくとも一方において、前記第1ホログラム素子からの回折光の照明範囲は、前記第2ホログラム素子からの回折光の照明範囲に揃っている、照明装置が提供される。
【0011】
前記第1ホログラム素子及び前記第2ホログラム素子は、前記被照明領域の第1方向に交差する方向であって且つ前記被照明領域が形成される面への法線方向に交差する方向に、配列されており、
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する前記第1ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に交差する第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する前記第2ホログラム素子からの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一となっていてもよい。
【0012】
前記第1ホログラム素子及び前記第2ホログラム素子は、前記被照明領域の第1方向に交差する方向であって且つ前記被照明領域が形成される面への法線方向に沿った方向に、配列されており、
前記被照明領域の前記第1方向に交差する第2方向に沿った任意の位置に入射する前記第1ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さは、前記被照明領域の前記第2方向に沿った前記任意の位置に入射する前記第2ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さと、同一となっており、
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する前記第1ホログラム素子からの回折光の前記第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する前記第2ホログラム素子からの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一となっていてもよい。
【0013】
前記第1ホログラム素子は、複数の要素ホログラムを含み、
前記複数の要素ホログラムのうち少なくとも2以上の要素ホログラムからの回折光は、前記被照明領域の全域を照明してもよい。
【0014】
前記第2ホログラム素子は、複数の要素ホログラムを含み、
前記複数の要素ホログラムのうち少なくとも2以上の要素ホログラムからの回折光は、前記被照明領域の全域を照明してもよい。
【0015】
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に交差する第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラムからの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一となっていてもよい。
【0016】
前記被照明領域の前記第1方向に交差する第2方向に沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に沿った照射長さは、前記被照明領域の前記第2方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラム素子からの回折光の前記第1方向に沿った照射長さと、同一となっていてもよい。
【0017】
前記複数の要素ホログラムは、前記被照明領域の第1方向に交差する方向であって且つ前記被照明領域が形成される面への法線方向に交差する方向に、配列されており、
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に交差する第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラムからの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一となっていてもよい。
【0018】
前記複数の要素ホログラムは、前記被照明領域の第1方向に交差する方向であって且つ前記被照明領域が形成される面への法線方向に沿った方向に、配列されており、
前記被照明領域の前記第1方向に交差する第2方向に沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に沿った照射長さは、前記被照明領域の前記第2方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラムからの回折光の前記第1方向に沿った照射長さと、同一となっており、
前記被照明領域の前記第1方向に沿った任意の位置に入射する前記一つの要素ホログラムからの回折光の前記第2方向に沿った照射幅は、前記被照明領域の前記第1方向に沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラムからの回折光の前記第2方向に沿った照射幅と、同一となっていてもよい。
【0019】
前記光源は、第1コヒーレント光源及び第2コヒーレント光源を有し、
前記第1コヒーレント光源からの光を整形して前記第1ホログラム素子に向ける第1整形光学系と、前記第2コヒーレント光源からの光を整形して前記第2ホログラム素子に向ける第2整形光学系と、をさらに備えてもよい。
【0020】
本開示の他の一態様では、第1方向を有した被照明領域を照明する照明装置であって、 光源と、
前記光源からの光を回折して前記被照明領域に向けるホログラム素子を有する回折光学素子と、を備え、
前記ホログラム素子は、複数の要素ホログラムを含み、
前記複数の要素ホログラムのうち少なくとも2以上の要素ホログラムからの回折光は、前記被照明領域の全域を照明する、照明装置が提供される。
【0021】
前記光源は、長軸方向およびこれに交差する短軸方向を有する発光部を含み、
前記発光部から前記短軸方向に拡がる光を、前記ホログラム素子で前記第1方向に交差する第2方向に拡がるように整形する整形光学系をさらに備えていてもよい。
【0022】
本開示の他の一態様では、第1方向を有した被照明領域を照明する照明装置であって、 長軸方向およびこれに交差する短軸方向を有し、コヒーレント光を発光する発光部を含む光源と、
前記光源からのコヒーレント光を回折して前記被照明領域に向けるホログラム素子を有する回折光学素子と、を備え、
前記発光部から前記短軸方向に拡がるコヒーレント光が、前記ホログラム素子で前記第1方向に交差する第2方向に拡がるように整形される、照明装置が提供される。
【0023】
前記光源からのコヒーレント光を整形して前記ホログラム素子に向ける整形光学系を備え、
前記発光部から前記短軸方向に拡がるコヒーレント光が、前記整形光学系で整形された後に前記ホログラム素子で前記第2方向に拡がるように整形されてもよい。
【0024】
前記整形光学系は、前記光源からのコヒーレント光を平行光に整形するコリメートレンズを含んでもよい。
【0025】
前記短軸方向は、前記第2方向に平行であってもよい。
【0026】
前記回折光学素子は、前記被照明領域の前記第1方向に交差する第2方向の中心位置を通って前記第1方向に延びる中心線と、前記回折光学素子の中心位置を通って前記第1方向に延びる照明光線を前記被照明領域上に投影した投影線と、がずれるように、前記被照明領域を照明してもよい。
【0027】
前記光源から出射される光は、コヒーレント光であり、
前記回折光学素子は、前記回折光学素子に入射された前記コヒーレント光のうち、前記回折光学素子で回折されずに前記回折光学素子を透過した0次光が、前記被照明領域の前記第1方向における最近端よりも最遠端側に入射されるように、前記被照明領域を照明してもよい。
【0028】
前記光源から出射されて前記回折光学素子に入射される光は、平行光よりも広がった拡散光であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、長手方向を有する被照明領域を、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0032】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0033】
図1は、照明装置10の全体構成を模式的に示す斜視図である。照明装置10は、第1方向に延在するとともに、この第1方向に交差する第2方向に延在する被照明領域Zを照明するものである。被照明領域Zの形状およびサイズは任意であるが、典型的には、照明装置10は、長手方向を有した被照明領域Z、例えば、長手方向の短手方向に対する比が10以上、さらには、この比が100以上となる被照明領域Z、典型的にはライン状の被照明領域Zを、照明する装置である。この照明装置は、例えば、自動車や船等の乗り物に適用され得る。乗り物では、進行方向の前方に広がる領域を照明する必要がある。とりわけ、高速で走行する自動者の前照灯、いわゆるヘッドランプは、当該自動車の前方近傍から前方遠方までの路面を明るく照らすことが好ましい。また、サーチライトと呼ばれる探照灯においては、前方に広がる細長い領域のみを明るく照らすことが要求されることもある。ここで説明する照明装置10では、長手方向dlを有した被照明領域Z、とりわけ照明装置10の前方に位置し且つ照明装置10から離間する方向に長手方向dlを有する被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明し得るようにするための工夫が、施されている。したがって、前照灯や探照灯への適用においては、照明することが適切ではない領域、例えば対向車線を照明することなく、所定の範囲内のみをそのエッジまで鮮明に照明することができる。また、コンピューターによる画像解析との組み合わせることで、被照明領域Z内に存在する異物や不審物等を高精度に検出することも可能となる。
【0034】
図1に示すように、照明装置10は、光を投射する光源装置15と、光源装置15からの光を回折して被照明領域Zに向けるホログラム素子40と、を有している。光源装置15は、光源20と、光源20から射出した光を整形する整形光学系30と、を有している。
【0035】
図1に示された例において、光源装置15は、複数の光源20を有している。光源20として、レーザー光を発振するレーザー光源を用いることができる。レーザー光源から投射されるレーザー光は、直進性に優れ、被照明領域Zを高精度に照明するための光として好適である。複数の光源20は、独立して設けられていてもよいし、共通の基板上に複数の光源20を並べて配置した光源モジュールであってもよい。複数の光源20は、一例として、赤色の発光波長域の光を発振する第1レーザー光源20aと、緑色の発光波長域の光を発振する第2レーザー光源20bと、青色の発光波長域の光を発振する第3レーザー光源20cと、を有している。この例によれば、複数の光源20で発光された三つのレーザー光を重ね合わせることで、白色の照明光を含む種々の色の照明光を生成することができる。ただし、この例に限られず、光源装置15は、発光波長域が互いに相違する二つの光源20又は四つ以上の光源20を有するようにしてもよい。また、発光強度を高めるために、発光波長域ごとに、複数個ずつの光源20が設けられていてもよい。
【0036】
次に、整形光学系30について説明する。整形光学系30は、光源20から射出したレーザー光を整形する。言い換えると、整形光学系30は、レーザー光の光軸に直交する断面での形状や、レーザー光の光束の立体的な形状を整形する。図示された例において、整形光学系30は、光源20から射出したレーザー光を拡幅した平行光束に整形する。
図1に示すように、整形光学系30は、レーザー光の光路に沿った順で、レンズ31及びコリメートレンズ32を有している。レンズ31は、光源20から射出したレーザー光を発散光束に整形する。コリメートレンズ32は、レンズ31で生成された発散光束を、平行光束に整形し直す。
【0037】
図示された例において、光源装置15は、第1〜第3レーザー光源20cにそれぞれ対応して、第1整形光学系30a、第2整形光学系30b及び第3整形光学系30cを有している。第1整形光学系30aは、第1レンズ31a及び第1コリメートレンズ32aを有し、第2整形光学系30bは、第2レンズ31b及び第2コリメートレンズ32bを有し、第3整形光学系30cは、第3レンズ31c及び第3コリメートレンズ32cを有している。
【0038】
次に、ホログラム素子40について説明する。ホログラム素子40は、光源装置15からの光を回折して、被照明領域Zに向ける回折光学素子である。したがって、被照明領域Zは、ホログラム素子40での回折光によって、照明されることになる。
【0039】
図示された例において、照明装置10は、複数のホログラム素子40を有している。より具体的には、照明装置10は、第1ホログラム素子40a、第2ホログラム素子40b及び第3ホログラム素子40cを有している。各ホログラム素子40a,40b,40cは、レーザー光を発振するレーザー光源20a,20b,20cのそれぞれに対応して設けられている。この例によれば、レーザー光源20a,20b,20cが異なる波長域のレーザー光を発振する場合にも、各ホログラム素子40a,40b,40cは、対応するレーザー光で生成された異なる波長域のレーザー光を高効率で回折することが可能となる。
【0040】
図2に示すように、本実施の形態では、各ホログラム素子40a,40b,40cで回折された回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域を照明する。後述するように、各ホログラム素子40a,40b,40cからの回折光が、それぞれ、被照明領域Z内のみをその全域に亘って照明することで、被照明領域Z内における明るさのムラや色のムラを効果的に目立たなくすることができる。なお、本明細書において、「被照明領域Zの全域」とは、各ホログラム素子40a,40b,40cで回折された回折光の照明範囲が完全に一致する場合だけでなく、それぞれの照明範囲のずれが±20%以内であることを意味する。この数値範囲は、本発明者が作製した照明装置10のプロトタイプによる実験結果から導出されたものである。
【0041】
図1及び
図2に示された例において、複数のホログラム素子40は、被照明領域Zの長手方向dlに交差する、典型的には垂直な第1配列方向daに配列されている。また、複数のホログラム素子40が配列された第1配列方向daは、被照明領域Zが位置する平坦面としての面plへの法線方向ndと平行になっている。とりわけ図示された例において、複数のホログラム素子40が配列された第1配列方向daは、典型的には水平方向に垂直な鉛直方向となっている。すなわち、図示された具体例では、地面や水面よりも鉛直方向上方に配置された複数のホログラム素子40からの回折光で、地面や水面等の水平面pl上を照明し、この水平面pl上に被照明領域Zが形成される。そして、複数のホログラム素子40は、例えば鉛直方向にずらして配置されている。複数のホログラム素子40は、2つ以上であればよく、数に制限はない。例えば、複数のホログラム素子40が第1ホログラム素子と第2ホログラム素子を有し、被照明領域Zが互いに交差する第1方向と第2方向とに延在する照明範囲を有する場合、被照明領域の第1方向と第2方向の少なくとも一方において、第1ホログラム素子からの回折光の照明範囲は、第2ホログラム素子からの回折光の照明範囲に揃っている。
【0042】
また、
図3に示すように、各ホログラム素子40は、複数の要素ホログラム45に区分けされている。各要素ホログラム45は、干渉縞パターンを記録されたホログラム記録媒体として構成されている。干渉縞パターンを種々に調整することで、各要素ホログラム45で回折される光の進行方向、言い換えると、各要素ホログラム45で拡散される光の進行方向を、制御することができる。そして、
図3に示すように、各要素ホログラム45に入射した光源装置15からの光は、当該要素ホログラム45で回折されて、それぞれ、被照明領域Zの全域を照明する。後述するように、各要素ホログラム素子45からの回折光が、それぞれ、被照明領域Z内のみを全域に亘って照明することで、被照明領域Z内における明るさのムラを効果的目立たなくすることができる。
【0043】
図3に示された例において、第1ホログラム素子40aは複数の第1要素ホログラム45aを含み、第2ホログラム素子40bは複数の第2要素ホログラム45bを含み、第3ホログラム素子40cは複数の第3要素ホログラム45cを含んでいる。各ホログラム素子40において、複数の要素ホログラム45は、複数のホログラム素子40の配列方向と平行な第1配列方向daに配列されている。すなわち、各ホログラム素子40に含まれる複数の要素ホログラム45は、被照明領域Zの長手方向dlに交差する、典型的には垂直な方向であって且つ被照明領域Zが形成する面plへの法線方向ndに交差する、典型的には垂直な第1配列方向daに配列されている。また、各ホログラム素子40において、複数の要素ホログラム45は、被照明領域Zの長手方向dlに交差する、典型的には垂直な方向であって且つ被照明領域Zが形成する面plへの法線方向ndと平行である第2配列方向dbにも配列されている。図示された例において、複数の45は、鉛直方向da及び水平方向dbに配列されている。
【0044】
ここで、被照明領域Zは、ホログラム素子40によって照明されるニアフィールドの被照明領域と考えることができる。この被照明領域Zは、実際の被照射面積(照明範囲)だけでなく、後述するように、一定の座標軸を設定した上で角度空間における拡散角度範囲によっても表現することができる。
【0045】
要素ホログラム45は、例えば実物の散乱板からの散乱光を物体光として用いて作製することができる。より具体的には、要素ホログラム45の母体であるホログラム感光材料に、互いに干渉性を有するコヒーレント光からなる参照光と物体光とを照射すると、これらの光の干渉による干渉縞がホログラム感光材料に形成されて、要素ホログラム45が作製される。参照光としては、コヒーレント光であるレーザー光が用いられ、物体光としては、例えば安価に入手可能な等方散乱板からの散乱光が用いられる。
【0046】
要素ホログラム45を作製する際に用いた参照光の光路を逆向きに進むよう要素ホログラム45に向けてレーザー光を照射することで、要素ホログラム45を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板の配置位置に、散乱板の再生像が生成される。要素ホログラム45を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板が均一的な面散乱をしていれば、要素ホログラム45により得られる散乱板の再生像も、均一な面照明となり、この散乱板の再生像が生成される領域を被照明領域Zとすることができる。
【0047】
また、各要素ホログラム45に形成される複雑な干渉縞のパターンは、現実の物体光と参照光を用いて形成する代わりに、予定した再生照明光の波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計することが可能である。このようにして得られた要素ホログラム45は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とも呼ばれる。例えば、照明装置10が地面上や水面上の一定の大きさを有した被照明領域Zを照明することに用いられる場合、物体光を生成することが困難であり、計算機合成ホログラムを要素ホログラム45として用いることが好適である。
【0048】
また、各要素ホログラム45上の各点における拡散角度特性が同じであるフーリエ変換ホログラムを計算機合成により形成してもよい。さらに、ホログラム素子40の下流側にレンズなどの光学部材を設けて、回折光が被照明領域Zの全域に入射するように調整してもよい。
【0049】
ホログラム素子40を用いることによる利点の一つは、光源装置15からの光、例えばレーザー光の光エネルギー密度を拡散により低下できることである。また、その他の利点の一つは、要素ホログラム45が指向性の面光源として利用可能になるため、従来のランプ光源(点光源)と比較して、同じ照度分布を達成するための光源面上の輝度を低下できることである。これらにより、光源20としてレーザー光源を用いた場合でも、レーザー光の安全性向上に寄与することができ、被照明領域Z内からレーザー光を人間の目で直視しても、単一点光源を直視する場合に比べ、人間の目に悪影響を与えるおそれが少なくなる。
【0050】
一方、ホログラム素子を複数の要素ホログラム45で構成することによる利点は、詳しくは後述するように、被照明領域Z、とりわけ有限距離内の被照明領域Zを照明する際に、エッジを鮮明にし得る点である。ホログラム素子が、単一のフーリエ型ホログラムであれば、ホログラムの面積の大きさに応じたぼけが被照明領域Zに生じる。本実施の形態では、被照明領域Zとの位置関係を考慮した上で各要素ホログラム45の回折特性を設計することが可能となり、エッジの鮮明さを格段に向上させることができる。すなわち、一つのホログラム素子40に、回折特性が異なる複数の要素ホログラム45を含むことで、エッジを鮮明にしながら被照明領域Zを照明することができる。なお、単一のフレネル型のホログラムを撮影で作製することには、物体光を用意することの困難さから制約が生じ、また、単一のフレネル型計算機合成ホログラムを作製することは、ホログラムの全域に亘って計算を行うことを意味し、計算量の観点から実質的な制約が生じる。
【0051】
さらに、レーザー光に代表されるコヒーレント光を用いた場合、例えばWO2012/034174に開示されているように、スペックルの発生という問題が生じる。スペックルは、斑点模様として認識され、生理的な不快感を与え得る。ホログラム素子40が複数の要素ホログラム45を含むことで、各要素ホログラム45からの回折光にそれぞれ対応して生成されたスペックルパターンが被照明領域Zにおいて重なり合って平均化し、観察者に観察されることになる。これにより、各要素被照明領域Zpにおいて、スペックルを目立ちにくくすることができる。
【0052】
要素ホログラム45の具体的な形態としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム記録媒体でもよいし、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラム記録媒体でもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体でもよい。
【0053】
次に、ホログラム素子40の回折特性について説明する。
【0054】
まず、
図7及び
図8を参照して、ホログラムの回折特性と、ホログラムからの回折光によって照明される照明領域との関係について説明する。ここで、
図7及び
図8は、同一の回折特性を有した第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bからの回折光による照明領域Za,Zbを示す図である。なお、「同一」とは、第1ホログラム60aと第2ホログラム60bの回折特性のずれが±20%以内であることを意味する。この数値範囲は、本発明者が作製した照明装置10のプロトタイプによる実験結果から導出されたものである。この例では、第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bは、地面や水面等の水平面に回折光を照射し、且つ、当該水平面よりも上方に保持されている。すなわち、第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bからの回折光は、水平方向よりも下方に向けて進み、被照明領域Zが形成されることを意図された地面plに照射される。例えば
図7及び
図8に示された例は、
図1〜
図6の例と同様に、自動車の前照灯で路面を照明することを想定している。ホログラム60a,60bは、要素ホログラム45と同様に、前方に位置し且つ前方に細長く延びる被照明領域に光を回折することを意図されている。
図7及び
図8は、回折光を照射される面plへの法線方向から、各ホログラム60a,60bでの回折光の照明領域Za,Zbが示されている。
【0055】
図7及び
図8に示された例において、第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bは、本来意図された被照明領域の長手方向dlに交差する、典型的には垂直な方向に沿って、互いからずれた位置に配置されている。とりわけ
図7に示された例において、第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bの配列方向は、被照明領域が形成される面plへの法線方向ndに交差する方向、典型的には水平方向に一致している。一方、
図8に示された例において、第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bの配列方向は、被照明領域が形成される面plへの法線方向ndと平行な方向、典型的には鉛直方向に一致している。また、各ホログラム60a,60bには、
図1に示された光源装置15から射出した光束が入射する。したがって、
図8に示された例では、紙面の奥行き方向に、第1ホログラム60a及び第2ホログラム60bが重ねて配置され、且つ、紙面の奥行き方向に、第1及び第2の光源装置15が重ねて配置されている。
【0056】
図7に示された例において、第1ホログラム60aでの回折光による照明領域Zaと、第2ホログラム60bでの回折光による照明領域Zbは、ホログラム60a,60bの配列方向と平行な方向にずれる。具体的には、第1ホログラム60aからの回折光によって照明される照明領域Za及び第2ホログラム60bからの回折光によって照明される照明領域Zbは、照明領域の長手方向dlに交差する、典型的には垂直な幅方向dwにずれる。したがって、二つのホログラム60a,60bから出射した光によって照明される被照明領域Zxのうち、幅方向dwの両縁に位置し且つ長手方向dlに延びる両縁部分Zyは、二つのホログラム60a,60bのうちの一方から出射した光のみによって照明される。
【0057】
図8に示された例では、二つのホログラム60a,60bは、回折光を照射される面plへの法線方向ndにずれて配置されている。すなわち、二つのホログラム60a,60bから回折光を照射される面plまでの距離は異なっている。したがって、
図8に示すように、第1ホログラム60aからの回折光によって照明される照明領域Za及び第2ホログラム60bからの回折光によって照明される照明領域Zbは、照明領域の長手方向dl及び幅方向dwの両方にずれる。したがって、二つのホログラム60a,60bから出射した光によって照明される被照明領域Zxの周縁部分Zzは、二つのホログラム60a,60bのうちの一方から出射した光のみによって照明される。
【0058】
一方のホログラム60からの回折光のみによって照明されるようになる
図7の両縁部分Zy及び
図8の周縁部分Zzは、二つのホログラム60a,60bから出射する光の波長域が同一である場合、その他の部分と比較して暗く照明されることになる。また、二つのホログラム60a,60bから出射する光の波長域が異なる場合、
図7の両縁部分Zy及び
図8の周縁部分Zzは、その他の部分と比較して異なる色で暗く照明されることになる。すなわち、二つのホログラム60a,60bの回折特性が同一である場合、被照明領域Zのエッジが、明るさの低下や色の変化によって、ぼやけてしまう。
【0059】
図1〜
図3に示された照明装置10において、光源装置15から各ホログラム素子40へ向かう光は、
図7及び
図8に示す例と同様に、平行光束となっている。複数のホログラム素子40及び複数の要素ホログラム45は、その入射面および出射面が互いに平行となるように配置され、且つ、各ホログラム素子40及び各要素ホログラム45への入射光は、ホログラム素子40の法線方向及び要素ホログラム45の法線方向に沿った平行光束となっている。
【0060】
そして、
図3に示すように、各ホログラム素子40に含まれる複数の要素ホログラム45は、まず、被照明領域Zの長手方向dlに交差、典型的には垂直であり且つ被照明領域Zがなす面plへの法線方向ndに交差する、典型的には垂直な平行である第2配列方向dbに配列されている。そして、第2配列方向dbに配列された要素ホログラム45の相対位置関係は、
図7に示されたホログラム60a,60bの相対位置関係と同様となる。
また、一つのホログラム素子40に含まれる複数の要素ホログラム45は、次に、被照明領域Zの長手方向dlに交差、典型的には垂直であり且つ被照明領域Zがなす面plへの法線方向ndと平行である第1配列方向daにも配列されている。加えて、複数のホログラム素子40が、第1配列方向daに配置されていることから、異なるホログラム素子40に含まれる要素ホログラム45も、第1配列方向daに配置されていることになる。そして、第1配列方向daに配列された要素ホログラム45の相対位置関係は、
図8に示されたホログラム60a,60bの相対位置関係と同様となる。
【0061】
その一方で、
図2に示すように、各ホログラム素子40での回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域を照明する。さらに、図示された例では、
図3に示すように、各要素ホログラム45での回折光が、それぞれ、被照明領域Zのみをその全域に亘って照明する。このような照明を実現すべく、各要素ホログラム45の回折特性は、次に説明するように調整されている。
【0062】
まず、第2配列方向dbにずらして配列された要素ホログラム45からの回折光は、要素ホログラム45の回折特性が特に調整されず互いに同一であると仮定すると、
図7を参照して説明したように、当該要素ホログラム45の配列方向である第2配列方向dbに変位して、被照明領域Zがなす面pl上に照射される。そこで、
図4に示すように、被照明領域Zの長手方向dlに沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラム45sからの回折光の長手方向dlに直交する幅方向dwに沿った照射幅iwが、被照明領域Zの長手方向dlに沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラム45kからの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwと、同一となるように、第2配列方向dbに配列された要素ホログラム45の回折特性を調整する。この回折特性の調整は、被照明領域Zの長手方向に沿った全域に亘って行われる。なお、
図4は、照明装置10から照明光を照射されて被照明領域Zを含むようになる照射面plへの法線方向ndからの観察により、ホログラム素子40及び被照明領域Zを示す図である。なお、本明細書において、照射幅iwが「同一」とは、照射幅iwのずれが±20%以内であることを意味する。この数値範囲は、本発明者が作製した照明装置10のプロトタイプによる実験結果から導出されたものである。
【0063】
図4に示された例において、各要素ホログラム45から長手方向dlに沿って距離Rだけ離間した被照明領域Z内の位置に向かう光の回折特性を、被照明領域Zの幅に応じて調整する。また、回折特性は、角度空間における拡散角度分布を用いて、調整され得る。まず、基準となる要素ホログラム45sの回折特性を調整する。例えば
図4に示された例では、長手方向dlに沿って距離Rだけ離れた位置に向かう基準要素ホログラム45sの拡散角度特性は、
図4に示された座標系によって、次のように特定される。
tan(θ
1+)=x
+/R
tan(θ
1−)=x
−/R
【0064】
次に、他の要素ホログラム45kの拡散角度特性を、基準となる要素ホログラム45sの拡散角度特性と、基準要素ホログラム45sから当該要素ホログラム45kまでの第2配列方向dbに沿ったずれ量aと、を考慮して、決定する。具体的には、つぎのように決定される。
tan(θ
2+)=(x
++a)/R
tan(θ
2−)=(x
−−a)/R
【0065】
基準要素ホログラム45sの拡散角度特性は、被照明領域Zの長手方向dlに沿った全域に亘って行われる。同様に、他の要素ホログラム45kの拡散角度特性も、被照明領域Zの長手方向dlに沿った全域に亘って行われる。
【0066】
次に、第1配列方向daにずらして配列された要素ホログラム45からの回折光は、要素ホログラム45の回折特性が特に調整されず互いに同一であると仮定すると、
図8を参照して説明したように、要素ホログラム45から見た正面方向および当該正面方向に垂直な方向の両方に変位して、すなわち図示された例では、被照明領域Zが位置する面pl上において被照明領域Zの長手方向dl及び幅方向dwの両方に変位して照射される。そこで、第2配列方向dbにずらして配列された要素ホログラム45の回折特性の調整と同様にして、一具体例として
図4を参照して説明した角度空間での回折特性の調整と同様にして、被照明領域Zの長手方向dlに沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラム45sからの回折光の長手方向dlに直交する幅方向dwに沿った照射幅iwが、被照明領域Zの長手方向dlに沿った前記任意の位置に入射する他の要素ホログラム45t,45nからの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwと、同一となるように、第1配列方向daに配列された要素ホログラム45の回折特性を調整する。
【0067】
さらに、
図5に示すように、被照明領域Zの幅方向dwに沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラム45sからの回折光の長手方向dlに沿った照射長さilが、被照明領域Zの幅方向dwに沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラム45t,45nからの回折光の長手方向dlに沿った照射長さilと、同一となるように、第1配列方向daに配列された要素ホログラム45の回折特性を調整する。なお、
図5は、被照明領域Zがなす照射面plへの法線方向ndと第1配列方向daとの両方に平行な面で、ホログラム素子40及び被照明領域Zを示す図である。なお、本明細書において、照射長さilが「同一」とは、照射長さilのずれが±20%以内であることを意味する。
この数値範囲は、本発明者が作製した照明装置10のプロトタイプによる実験結果から導出されたものである。
【0068】
図5に示された例において、第1配列方向daに配列された要素ホログラム45から幅方向dwにおける任意の位置に向かう光の回折特性を、被照明領域Zの長さに応じて調整する。また、回折特性は、角度空間における拡散角度分布を用いて、調整され得る。まず、基準となる要素ホログラム45sの回折特性を調整する。例えば
図5に示された例では、幅方向dwにおける任意の位置に向かう基準要素ホログラム45sの拡散角度特性は、
図5に示された座標系によって、次のように特定される。
tan(θ
3+)=h/y
tan(θ
3−)=h/(y+il)
なお、式中の「h」は、被照明領域Zが形成される照射面plから基準要素ホログラム45までの第1配列方向daに沿った距離、すなわち基準要素ホログラム45の配置された位置の高さに相当する。
【0069】
次に、基準要素ホログラム45sと同一の第1ホログラム素子40aに含まれた他の要素ホログラム45tの拡散角度特性を、基準となる要素ホログラム45sの拡散角度特性と、基準要素ホログラム45sから当該要素ホログラム45tまでの第1配列方向daに沿ったずれ量bと、を考慮して、決定する。具体的には、つぎのように決定される。なお、本明細書において、拡散角度特性が「同一」とは、拡散角度特性のずれが±20%以内であることを意味する。この数値範囲は、本発明者が作製した照明装置10のプロトタイプによる実験結果から導出されたものである。
tan(θ
4+)=(h−b)/y
tan(θ
4−)=(h−b)/(y+il)
【0070】
さらに、基準要素ホログラム45sと異なるホログラム素子40に含まれた他の要素ホログラム45nについても、同様に、拡散特性を決定することができる。すなわち、第3ホログラム素子40cに含まれた他の要素ホログラム45nの拡散角度特性を、基準となる要素ホログラム45sの拡散角度特性と、基準要素ホログラム45sから当該要素ホログラム45nまでの第1配列方向daに沿ったずれ量cと、を考慮して、決定することができる。具体的には、つぎのように決定される。
tan(θ
5+)=(h−c)/y
tan(θ
5−)=(h−c)/(y+il)
【0071】
基準要素ホログラム45sの長手方向dlへの拡散角度特性は、被照明領域Zの幅方向dwに沿った全域に亘って行われる。同様に、他の要素ホログラム45t,45nの拡散角度特性も、被照明領域Zの幅方向dwに沿った全域に亘って行われる。
【0072】
以上のようにホログラム素子40及び要素ホログラム45の回折特性を調整することで、各ホログラム素子40からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zのみをその全域に亘って照明し、また、各要素ホログラム45からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zのみをその全域に亘って照明するようになる。
【0073】
以上に説明した本実施の形態によれば、複数のホログラム素子40の配置位置の相違に応じて各ホログラム素子40の回折特性が調整され、その結果として、各ホログラム素子40からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zを照明するようになっている。したがって、複数のホログラム素子40からの回折光が同一波長域の光であれば、被照明領域Zを明るく照明することができる。また、複数のホログラム素子40からの回折光が異なる波長域の光であれば、加法混色による所望の色で被照明領域Zを照明することができる。そして本実施の形態では、各ホログラム素子40からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zを照明するので、発光点が分散されることになり、照明装置10を直視した人間の目に対する悪影響の程度を小さくすることができる。加えて、各ホログラム素子40からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域を照明するので、被照明領域Zのエッジ近傍における明るさのムラや色のムラを効果的に抑制することができる。これらにより、被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、ホログラム素子40での回折光により、長手方向dlを有する被照明領域Zを照明することになる。したがって、ホログラム素子40の回折特性を調整することで、被照明領域Zが照明装置10の前方に位置し且つ照明装置10から離間する方向に長手方向dlを有する場合であっても、照明装置10から離間した遠くの領域をより高い光照射強度で明るく照明することが可能となる。この結果、長手方向dlを有する被照明領域Z、例えば幅方向dwの長さに対する長手方向dlの長さの比が10以上、さらにはこの比が100以上となる被照明領域Z、さらに典型的にはライン状の被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0075】
なお、複数のホログラム素子40が、被照明領域Zの長手方向dlに垂直な方向であって且つ被照明領域Zが形成される面plへの法線方向ndと平行な第1配列方向daに、配列されている場合における各ホログラム素子40の回折特性の調整方法として、被照明領域Zの長手方向dlに直交する幅方向dwに沿った任意の位置に入射する一つのホログラム素子40からの回折光の長手方向dlに沿った照射長さilが、被照明領域Zの幅方向dwに沿った前記任意の位置に入射する他の一つのホログラム素子40からの回折光の長手方向dlに沿った照射長さilと、同一となるようにし、さらに、被照明領域Zの長手方向dlに沿った任意の位置に入射する一つのホログラム素子40からの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwが、被照明領域Zの長手方向dlに沿った前記任意の位置に入射する他の一つのホログラム素子40からの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwと、同一となるようにしてもよい。このような調整は、照明装置10を簡易小型化しながら実現することが可能である。したがって、照明装置10の簡易小型化を可能としながら、長手方向dlを有する被照明領域Z、典型的にはライン状の被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、ホログラム素子40が複数の要素ホログラム45を含んでいる。そして、複数の要素ホログラム45の配置位置の相違に応じて各要素ホログラム45の回折特性が調整され、その結果として、各要素ホログラム45からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域を照明する。したがって、被照明領域Zのエッジ近傍における明るさのムラを効果的に抑制することができる。これにより、被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、照明することができる。また、一つのホログラム素子40が、要素ホログラム45の数量と同数の発光点を有することになり、照明装置10を直視した人間の目に対する悪影響の程度を小さくすることができる。加えて、各要素ホログラム45からの回折光が被照明領域Zで重ね合わされることになるので、レーザー光を用いた場合においても、スペックルを効果的に目立たなくすることができる。
【0077】
さらに、各要素ホログラム45での回折光により、長手方向dlを有する被照明領域Zを照明することになる。したがって、要素ホログラム45の回折特性を調整することで、被照明領域Zが照明装置10の前方に位置し且つ照明装置10から離間する方向に長手方向dlを有する場合であっても、照明装置10から離間した遠くの領域をより高い光照射強度で明るく照明することが可能となる。この結果、長手方向dlを有する被照明領域Z、典型的にはライン状の被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0078】
なお、複数の要素ホログラム45が、被照明領域Zの長手方向dlに垂直であって且つ被照明領域Zが形成される面plへの法線方向ndに垂直な第2配列方向dbに、配列されている場合における各要素ホログラム45の回折特性の調整方法として、被照明領域Zの長手方向dlに沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラム45からの回折光の長手方向dlに直交する幅方向dwに沿った照射幅iwが、被照明領域Zの長手方向dlに沿った前記任意の位置に入射する他の一つ要素ホログラム45からの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwと、同一となるようにしてもよい。このような調整は、照明装置10を簡易小型化しながら実現することが可能である。したがって、照明装置10の簡易小型化を可能としながら、長手方向dlを有する被照明領域Z、典型的にはライン状の被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0079】
また、複数の要素ホログラム45が、被照明領域Zの長手方向dlに垂直な方向であって且つ被照明領域Zが形成される面plへの法線方向ndと平行な第1配列方向daに、配列されている場合における各要素ホログラム45の回折特性の調整方法として、被照明領域Zの長手方向dlに直交する幅方向dwに沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラム45からの回折光の長手方向dlに沿った照射長さilが、被照明領域Zの幅方向dwに沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラム45からの回折光の長手方向dlに沿った照射長さilと、同一となるようにし、さらに、被照明領域Zの長手方向dlに沿った任意の位置に入射する一つの要素ホログラム45からの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwが、被照明領域Zの長手方向dlに沿った前記任意の位置に入射する他の一つの要素ホログラム45からの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwと、同一となるようにしてもよい。このような調整は、照明装置10を簡易小型化しながら実現することが可能である。したがって、照明装置10の簡易小型化を可能としながら、長手方向dlを有する被照明領域Z、典型的にはライン状の被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0080】
さらに、上述した一実施の形態において、光源装置15は、レーザー光を生成する光源20と、光源20から射出した光を整形する整形光学系30と、を有している。とりわけ図示された例において、整形光学系30は、光源20からの光を平行光束に変換する。したがって、ホログラム素子40の各要素ホログラム45に平行光束が入射することになる。この例によれば、ホログラム素子40及び要素ホログラム45の設計及び製作を容易化することができる。また、ホログラム素子40での回折によって、光を被照明領域Z内の全域に高精度に向けることが可能となる。
【0081】
なお、上述した一実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0082】
上述した一実施の形態において、
図1に示すように、複数のホログラム素子40が、被照明領域Zの長手方向dlに垂直であって且つ被照明領域Zが形成される面plへの法線方向ndと平行となる第1配列方向daに、配列されている例を示した。すなわち、被照明領域Zが地面や水面等の水平面に設けられる場合、複数のホログラム素子40が鉛直方向に配列される例を示した。しかしながら、この例に限られず、複数のホログラム素子40が、
図6に示すように配列されていてもよい。
図6に示された例において、複数のホログラム素子40は、被照明領域Zの長手方向dlに垂直であって且つ被照明領域Zが形成される面plへの法線方向ndに垂直となる方向、すなわち上述した第2配列方向dbに、配列されている。より具体的には、被照明領域Zが地面や水面等の水平面に設けられる場合に、複数のホログラム素子40が水平方向に配列されるようにしてもよい。この例においても、複数のホログラム素子40の配置位置の相違に応じて各ホログラム素子40の回折特性が調整され、その結果として、各ホログラム素子からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域を照明することが可能となる。このようにホログラム素子40の回折特性を調整することで、上述した実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
なお、複数のホログラム素子40が、被照明領域Zの長手方向dlに垂直であって且つ被照明領域Zが形成される面plへの法線方向ndに垂直な第2配列方向dbに、配列されている場合における各ホログラム素子40の回折特性の調整方法として、
図4を参照して説明したように、被照明領域Zの長手方向dlに沿った任意の位置に入射する一つのホログラム素子40からの回折光の長手方向dlに直交する幅方向dwに沿った照射幅iwが、被照明領域Zの長手方向dlに沿った前記任意の位置に入射する他の一つホログラム素子40からの回折光の幅方向dwに沿った照射幅iwと、同一となるようにしてもよい。このような調整は、照明装置10を簡易小型化しながら実現することが可能である。したがって、照明装置10の簡易小型化を可能としながら、長手方向dlを有する被照明領域Z、典型的にはライン状の被照明領域Zを、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0084】
また、上述した一実施の形態において、ホログラム素子40が、複数の要素ホログラム45に区分けされている例について説明した。しかしながら、この例に限られず、各ホログラム素子40が、単一のホログラムとして形成されていてもよい。このような変形例においても、照明装置10に含まれた複数のホログラム素子40の各々からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域に入射するようにすることで、長手方向を有する被照明領域、典型的にはライン状の被照明領域を、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0085】
さらに、上述した一実施の形態において、照明装置10が複数のホログラム素子40を有する例を示したが、この例に限られず、照明装置10が単一のホログラム素子40のみを有するようにしてもよい。この例において、ホログラム素子40が、複数の要素ホログラム45を含んでおり、各要素ホログラム45からの回折光が、それぞれ、被照明領域Zの全域に入射するようにすることで、長手方向を有する被照明領域、典型的にはライン状の被照明領域を、そのエッジを鮮明としながら、安全に照明することができる。
【0086】
さらに、上述した一実施の形態において、複数のホログラム素子40の各々に対して、それぞれ別個の光源装置15が用意されている例を示したが、これに限られない。光源20、整形光学系30及びレンズ31のうちのいずれか一つを、複数のホログラム素子40間で共用してもよい。
【0087】
さらに、
図9に示すように、光源装置15の第1〜第3レーザー光源20a〜20cのそれぞれは、長軸方向d1およびこれに直交する短軸方向d2を有する第1発光部151と、第2発光部152と、第3発光部153とを有していてもよい。なお、
図9では、便宜上、第1〜第3レーザー光源20a〜20c、第1〜第3整形光学系30a〜30cおよび第1〜第3ホログラム素子40a〜40cのそれぞれを1つにまとめて図示している。実際のレーザー光源20a〜20c、整形光学系30a〜30cおよびホログラム素子40a〜40cは、
図1に示したように鉛直方向に配列されていてもよく、または、
図6に示したように、水平方向に配列されていてもよい。
【0088】
ここで、発光部151〜153の長軸方向d1とは、発光部151〜153から発光されるレーザー光の拡散方向のうち拡散角度が最大となる方向である。長軸方向d1は、光軸に直交するレーザー光の断面の最大径に平行な方向ということもできる。図示されている例において、長軸方向d1は、鉛直方向に一致する。また、短軸方向d2とは、発光部151〜153から発光されるレーザー光の拡散方向のうち拡散角度が最小となる方向である。短軸方向d2は、光軸に直交するレーザー光の断面の最小径に平行な方向ということもできる。図示されている例において、短軸方向d2は、水平方向に一致する。
【0089】
発光部151〜153は、短軸方向d2において同一の位置に、長軸方向d1に間隔を空けて配置されている。すなわち、レーザー光源20a〜20cは、それらの発光部151〜153の短軸方向d2が被照明領域Zの幅方向dwすなわち水平方向に平行となる姿勢で光源装置15の筐体150内に配置されている。
【0090】
このように配置されたレーザー光源20a〜20cの発光部151〜153から短軸方向d2に拡がるように出射されたレーザー光Lは、整形光学系30a〜30cで整形された後に、ホログラム素子40a〜40cで幅方向dwに拡がるように整形される。
【0091】
もし、長軸方向d1が幅方向dwに平行な場合、発光部151〜153は、幅方向dwに大きい拡散角度で拡散したレーザー光を出射する。拡散角度が大きいレーザー光は、整形光学系30a〜30cのコリメートレンズ32a〜32cで十分に平行化することが困難である。平行化が不十分なレーザー光をホログラム素子40a〜40cで所期のビーム形状を有する回折光に整形しようとする場合、ホログラム素子40a〜40cの形状に負担がかかり、ホログラム素子40a〜40cのコストが上昇や寸法精度の悪化を招く虞がある。
【0092】
これに対して、
図9に示される例によれば、発光部151〜153から幅方向dwに小さい拡散角度でレーザー光Lを出射できる。拡散角度が小さいレーザー光Lは、整形光学系30a〜30cのコリメートレンズ32a〜32cで十分に平行化することができるので、ホログラム素子40a〜40cの形状に負担をかけずに所期のビーム形状を有する回折光を得ることができる。
【0093】
したがって、
図9に示される例によれば、路面上にエッジが明確なライン状の光を確実かつ低コストで照明できる。
【0094】
上述した
図4は、照明領域の長手方向に直交する幅方向の中心位置を通って長手方向に延びる中心線L1がホログラム素子40の中心位置を通って長手方向に延びる照明光線を被照明領域Zのある面に投影した投影線L2と一致している例を示したが、
図10に示すように、被照明領域Zの上述した中心線L1が投影線L2からずれていてもよい。
【0095】
図10では、
図4と同様に、被照明領域Zの短手方向の幅をiw、ホログラム素子40の水平方向の幅をa、ホログラム素子40から被照明領域Zの最近接位置までの最短距離をR、被照明領域Zの長手方向の第1エッジe1とホログラム素子40の水平方向の第1端部を通過して被照明領域Zの長手方向に延びる第1端線e2との距離をx+、被照明領域Zの長手方向の第2エッジe3とホログラム素子40の水平方向の第2端部を通過して被照明領域Zの長手方向に延びる第2端線e4との距離をx-としている。また、被照明領域Zの任意の位置を通って短軸方向の境界位置をp1とp2としたときに、位置p1と第1端線e2との為す角度をθ1+、位置p2と第1端線e2との為す角度をθ1-、位置p1と第2端線e4との為す角度をθ2+、位置p2と第2端線e4との為す角度をθ2-とすると、以下の式が成り立つ。
【0096】
tan(θ
1+)=x
+/R
tan(θ
1−)=(x
+―iw)/R
tan(θ
2+)=(x
++a)/R
tan(θ
2−)=x
-/R
【0097】
このように、上記の式を満たすように、ホログラム素子40の回折特性を設計することにより、ホログラム素子40に対して任意の方向および位置にある被照明領域Zを照明することができる。
【0098】
ホログラム素子40に入射されたレーザー光の一部は、ホログラム素子40で回折されることなく、そのまま透過する0次光となる。0次光が被照明領域Zに照射される場合、予め設計された被照明領域Z内の0次光照射位置だけが特異的に照度が高くなってしまう。ホログラム素子40の位置を基準として、0次光が被照明領域Zの長手方向における最近端側に照射される場合と最遠端側に照射される場合とを比較すると、最近端側に照射される場合の方が0次光の照射面積が小さくなって、単位面積当たりの照度が高くなり、被照明領域Zにおける0次光の照射位置が目立ちやすくなる。そこで、0次光が被照明領域Zの長手方向における最近端よりも最遠端側に入射されるように、ホログラム素子40の回折特性を設計するのが望ましい。これにより、被照明領域Zの全域での光強度すなわち照度のばらつきを抑制できる。
【0099】
図1等では、整形光学系30a〜30cのコリメートレンズ32a〜32cにてレーザー光を平行化した後にホログラム素子40a〜40cに入射している。被照明領域Zのボケを抑制するには、ホログラム素子40a〜40cへの入射光を平行化するのが望ましいが、平行化されたレーザ光は、ホログラム素子40a〜40cへの入射面積が小さいため、その分、0次光の光強度が大きくなる。よって、0次光の光強度を弱める観点からは、ホログラム素子40a〜40cへの入射光が完全な平行光よりもわずかに広がった拡散光の方が望ましい。拡散光がホログラム素子40a〜40cに入射されると、被照明領域Zのボケ量が増大するおそれがあるが、
図3等で説明したように、ホログラム素子40a〜40cが複数の要素ホログラム45に区分けされていて、各要素ホログラム45が被照明領域Zの全域を照明するような回折特性を持っている場合には、ホログラム素子40a〜40cへの入射光が拡散光であったとしても、各要素ホログラム45内に入射されるレーザー光の入射角度はほとんど同じと考えられるため、各要素ホログラム45ごとに被照明領域Zの全域を照明するように回折特性を設計すれば、ホログラム素子40a〜40cの全体として、被照明領域Zを鮮明に照明することができる。
【0100】
図1等では、回折光学素子として、透過型のホログラム素子40a〜40cを用いる例を示したが、
図11に示すように反射型のホログラム素子40a〜40cを用いてもよい。反射型のホログラム素子40a〜40cであれば、0次光の進行方向が観察者の観察方向と異なるため、0次光に対する安全対策が容易になりうる。
【0101】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。