特許第6803037号(P6803037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803037オパール加工布帛用糸とその製造方法、およびオパール加工用布帛とオパール加工布帛の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803037
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】オパール加工布帛用糸とその製造方法、およびオパール加工用布帛とオパール加工布帛の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 1/02 20060101AFI20201214BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20201214BHJP
   D02J 1/00 20060101ALI20201214BHJP
   D06Q 1/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   D02G1/02 B
   D02G3/04
   D02J1/00 K
   D06Q1/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-131295(P2016-131295)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-3193(P2018-3193A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】315006687
【氏名又は名称】株式会社深谷由松商店
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛志
(72)【発明者】
【氏名】濱口 能
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆之
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭61−011279(JP,Y2)
【文献】 特開2013−079464(JP,A)
【文献】 特公昭44−001477(JP,B1)
【文献】 特開平05−263375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 − 3/48
D02J 1/00 − 13/00
D04D 1/00 − 11/00
D06Q 1/00 − 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得る同時仮撚り工程と、
前記互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸に対して空気を噴射することによりエアー交絡を行ってエアー交絡糸を得る交絡工程と、を含むことを特徴とするオパール加工布帛用糸の製造方法。
【請求項2】
アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得る同時仮撚り工程と、
前記互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸に対して空気を噴射することによりエアー交絡を行ってエアー交絡糸を得る交絡工程と、を含むことを特徴とするオパール加工布帛用糸の製造方法。
【請求項3】
前記同時仮撚り工程と前記交絡工程を連続ラインで行い、前記同時仮撚り及び前記エアー交絡を行う際に、前記2種類の糸のうち相対的に溶解速度の大きい第2糸の走行速度を相対的に溶解速度の小さい第1糸の走行速度よりも大きくなるように設定する請求項1または2に記載のオパール加工布帛用糸の製造方法。
【請求項4】
酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含むエアー交絡糸を含み、
前記2種類の糸は、いずれも捲縮糸であることを特徴とするオパール加工布帛用糸。
【請求項5】
アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含むエアー交絡糸を含み、
前記2種類の糸は、いずれも捲縮糸であることを特徴とするオパール加工布帛用糸。
【請求項6】
構成糸の一部に請求項4または5に記載のオパール加工布帛用糸を含むことを特徴とするオパール加工用布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オパール加工布帛を製造するのに用いられる糸とその製造方法、および、例えばカーテン、ブラウス、スカート等として用いられるオパール加工布帛の製造方法に関する。
【0002】
なお、本願の特許請求の範囲および本明細書において、「エアー交絡糸」の語は、走行する糸束に空気(高圧空気等)を噴射することにより糸の配列を乱して絡み合わせた糸を意味する。
【背景技術】
【0003】
オパール加工布帛は、透かし模様が形成された布帛であり、従来よりカーテン等様々な用途で使用されている。このようなオパール加工布帛としては、アルカリ減量速度の異なる2種以上のポリエステル系繊維を含む布帛に、アルカリ含有抜食糊を印捺し、アルカリ減量速度の大なるポリエステル系繊維を抜食せしめて、透かし模様を形成せしめたものが公知である(特許文献1参照)。具体的には、例えば、経糸にポリエチレンテレフタレート繊維を使用し、緯糸に改質ポリエステル繊維(アルカリ減量速度が大きい)およびポリエチレンテレフタレート繊維(アルカリ減量速度が小さい)を使用して平織物を作成した後、アルカリ含有抜食糊を印捺せしめ、120℃で30分間蒸熱処理した後、水洗、乾燥を行って得たオパール加工布帛が知られている(特許文献1参照)。また、酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸(例えば酸性液に対する溶解性がないポリエステル糸と、酸性液に対して溶解しやすいセルロース糸の組み合わせ)を用いて作製されたオパール加工布帛も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−90673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のオパール加工布帛では、緯糸として、改質ポリエステル繊維(アルカリ減量速度が大きい)およびポリエチレンテレフタレート繊維を使用し、これらの糸を交互に打ち込んで平織物(布帛)を作成しており、布帛に柔らかい風合いを付与し難いという問題があったし、緯糸として交互に打ち込んだうちの改質ポリエステル繊維を抜食する(溶解除去する)ので、より鮮明な透かし模様が得られ難いという問題もあった。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、生産性に優れ、布帛に鮮明な透かし模様等を形成できると共に柔らかい風合いを付与できるオパール加工布帛用糸とその製造方法およびオパール加工用布帛とオパール加工布帛の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得る同時仮撚り工程と、
前記互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸に対して空気を噴射することによりエアー交絡を行ってエアー交絡糸を得る交絡工程と、を含むことを特徴とするオパール加工布帛用糸の製造方法。
【0009】
[2]アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得る同時仮撚り工程と、
前記互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸に対して空気を噴射することによりエアー交絡を行ってエアー交絡糸を得る交絡工程と、を含むことを特徴とするオパール加工布帛用糸の製造方法。
【0010】
[3]前記同時仮撚り工程と前記交絡工程を連続ラインで行い、前記同時仮撚り及び前記エアー交絡を行う際に、前記2種類の糸のうち相対的に溶解速度の大きい第2糸の走行速度を相対的に溶解速度の小さい第1糸の走行速度よりも大きくなるように設定する前項1または2に記載のオパール加工布帛用糸の製造方法。
【0011】
[4]酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含むエアー交絡糸を含むことを特徴とするオパール加工布帛用糸。
【0012】
[5]アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含むエアー交絡糸を含むことを特徴とするオパール加工布帛用糸。
【0013】
[6]前記2種類の糸は、いずれも捲縮糸である前項4または5に記載のオパール加工布帛用糸。
【0014】
[7]構成糸の一部に前項4〜6のいずれか1項に記載のオパール加工布帛用糸を含むことを特徴とするオパール加工用布帛。
【0015】
[8]構成糸の一部に前項4に記載のオパール加工布帛用糸を用いて製織又は製編を行って印捺用布帛を得る工程と、
前記印捺用布帛の一部に、酸を含む薬剤を印捺する工程と、
前記印捺された布帛を洗浄して前記薬剤を除去する工程と、を含むことを特徴とするオパール加工布帛の製造方法。
【0016】
[9]構成糸の一部に前項5に記載のオパール加工布帛用糸を用いて製織又は製編を行って印捺用布帛を得る工程と、
前記印捺用布帛の一部に、アルカリを含む薬剤を印捺する工程と、
前記印捺された布帛を洗浄して前記薬剤を除去する工程と、を含むことを特徴とするオパール加工布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得るので、オパール加工布帛用糸を製造する際の生産性を顕著に向上させることができる。また、得られた糸を用いて製作したオパール加工布帛において鮮明な透かし模様等を形成できると共に布帛に柔らかい風合いを付与できる。
【0018】
[2]の発明では、アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得るので、オパール加工布帛用糸を製造する際の生産性を顕著に向上させることができる。また、得られた糸を用いて製作したオパール加工布帛において鮮明な透かし模様等を形成できると共に布帛に柔らかい風合いを付与できる。
【0019】
[3]の発明では、同時仮撚り工程と交絡工程を連続ラインで行うと共に、同時仮撚りおよびエアー交絡を行う際に、前記2種類の糸のうち相対的に溶解速度の大きい第2糸の走行速度を相対的に溶解速度の小さい第1糸の走行速度よりも大きくなるように設定してエアー交絡を行うので、第1糸からなる芯糸に第2糸が巻き付いてなる嵩高性の増大したエアー交絡糸を生産効率良く製造できる。
【0020】
[4]の発明(オパール加工布帛用糸)では、酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含むエアー交絡糸(Air Intermingle Yarn)を含むので、このオパール加工布帛用糸は生産性に優れており、オパール加工布帛の製造の生産性を十分に向上させることができる。また、この糸を用いて製作されたオパール加工布帛は、鮮明な透かし模様等を形成できると共に、柔らかい風合いを備えている。
【0021】
[5]の発明(オパール加工布帛用糸)では、アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含むエアー交絡糸(Air Intermingle Yarn)を含むので、このオパール加工布帛用糸は生産性に優れており、オパール加工布帛の製造の生産性を十分に向上させることができる。また、この糸を用いて製作されたオパール加工布帛は、鮮明な透かし模様等を形成できると共に、柔らかい風合いを備えている。
【0022】
[6]の発明では、前記2種類の糸はいずれも捲縮糸であるから、嵩高性の増大したオパール加工布帛用糸が提供され、この糸を用いて製作されたオパール加工布帛は、より柔らかい風合いを備えたものとなる。
【0023】
[7]の発明では、このオパール加工用布帛に対して薬剤を印捺した後に薬剤の除去を行うことによって、透かし模様等の透かし意匠が付与され、柔らかい風合いを備えたオパール加工布帛を生産性良く得ることができる。
【0024】
[8]及び[9]の発明では、透かし模様等の透かし意匠が形成され、柔らかい風合いを備えたオパール加工布帛を生産効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るオパール加工布帛用糸は、酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含む第1エアー交絡糸を含むことを特徴とする。前記第1エアー交絡糸は、該第1エアー交絡糸を構成する前記2種類の糸以外に、1ないし複数種類の他の糸を含んでいてもよい。
【0026】
本発明に係る他のオパール加工布帛用糸は、アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含む第2エアー交絡糸を含むことを特徴とする。前記第2エアー交絡糸は、該第2エアー交絡糸を構成する前記2種類の糸以外に、1ないし複数種類の他の糸を含んでいてもよい。
【0027】
前記第1エアー交絡糸を構成する2種類の糸は、いずれも捲縮糸(捲縮加工糸)であるのが好ましく、この場合には嵩高性の増大したオパール加工布帛用糸が得られるし、このオパール加工布帛用糸を用いて製作したオパール加工布帛は、より良好な風合いを備えたものとなる。
【0028】
前記第2エアー交絡糸を構成する2種類の糸は、いずれも捲縮糸(捲縮加工糸)であるのが好ましく、この場合には嵩高性の増大したオパール加工布帛用糸が得られるし、このオパール加工布帛用糸を用いて製作したオパール加工布帛は、より良好な風合いを備えたものとなる。
【0029】
前記オパール加工布帛用糸の製造方法の好適例について説明する。まず、前記第1エアー交絡糸によって構成されるオパール加工布帛用糸の製造方法について説明する。酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得る(同時仮撚り工程)。次に、前記互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸に対して空気(高圧空気等)を噴射してエアー交絡を行うことによって、第1エアー交絡糸で構成されるオパール加工布帛用糸を得る(交絡工程)。なお、前記2種類の糸以外に、1ないし複数種類の他の糸を含有した状態で前記同時仮撚り工程および交絡工程を実施して第1エアー交絡糸を得るようにしてもよい。
【0030】
次に、前記第2エアー交絡糸によって構成されるオパール加工布帛用糸の製造方法について説明する。アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を互いに引き揃え状態で同時に仮撚りすることによって互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸を得る(同時仮撚り工程)。次に、前記互いに引き揃え状態の2種類の捲縮糸に対して空気(高圧空気等)を噴射してエアー交絡を行うことによって、第2エアー交絡糸で構成されるオパール加工布帛用糸を得る(交絡工程)。なお、前記2種類の糸以外に、1ないし複数種類の他の糸を含有した状態で前記同時仮撚り工程および交絡工程を実施して第2エアー交絡糸を得るようにしてもよい。
【0031】
上記いずれの製造方法においても、同時仮撚り工程と交絡工程を連続ラインで行うものとし、かつ、同時仮撚り及びエアー交絡を行う際に、前記2種類の糸のうち相対的に溶解速度の大きい第2糸の走行速度を相対的に溶解速度の小さい第1糸の走行速度よりも大きくなるように設定するのが好ましい。このような条件で実施することにより、第1糸からなる芯糸に第2糸が巻き付いてなるエアー交絡糸を得ることができる。このようにして得られたエアー交絡糸において、該交絡糸の長さ1mあたりに10回〜20回のインターレース(エアー交絡)が施されているのが好ましい。なお、同時仮撚り工程としたこと及び連続ラインでエアー交絡を行うものとしたこと等により、オパール加工布帛用糸の製造方法は、例えば、1分間に450m〜600m程度の高速生産を行うことが可能となり、非常に生産性を向上させることができる。従来の2本の糸束をそれぞれ別々の工程で仮撚りを行ったものを準備してこれらを合糸してカバーリング工程を実施してカバーリング糸を製造する従来方法では生産速度が1分間に20m〜30m程度が一般的であったので、本発明の製造方法によれば生産性を顕著に向上させることができる。
【0032】
次に、本発明に係る、オパール加工布帛の製造方法について説明する。
【0033】
まず、前記第1エアー交絡糸によって構成されるオパール加工布帛用糸を用いてオパール加工布帛を製造する方法について説明する。第1エアー交絡糸で構成されるオパール加工布帛用糸を構成糸の一部に用いて製織又は製編を行って印捺用布帛を得る。製織を行う場合には前記オパール加工布帛用糸を緯糸に用いてもよいし、経糸に用いてもよいし、或いは緯糸及び経糸の両方に用いてもよいが、生産性向上の観点から、緯糸に用いるのが好ましい。次いで、得られた印捺用布帛の一部に、酸を含む薬剤を印捺する。この時、所望のすかし模様等が得られるように所定の部分に酸を含む薬剤を印捺する。次に、印捺された布帛を水等により洗浄して薬剤を除去し、乾燥することによって、透かし模様等の透かし意匠が形成されたオパール加工布帛を製造できる。なお、前記酸を含む薬剤が印捺された部分(領域)において、前記第1エアー交絡糸を構成する2種類の糸のうち、相対的に酸に対する溶解速度が大きい方の糸(第2糸)が薬剤に溶解して除去される一方、相対的に酸に対する溶解速度が小さい方の糸(酸に対し溶解性のない糸を含む)(第1糸)が溶解されずに糸として残存して、前記印捺部分(印捺領域)に透かし模様等の透かし意匠が形成される。このように前記2種類の糸のうち一方の糸が溶解除去され、他方の糸が溶解されずに残存するように前記印捺時間を設定する。
【0034】
前記第2エアー交絡糸によって構成されるオパール加工布帛用糸を用いてオパール加工布帛を製造する方法について説明する。第2エアー交絡糸で構成されるオパール加工布帛用糸を構成糸の一部に用いて製織又は製編を行って印捺用布帛を得る。製織を行う場合には前記オパール加工布帛用糸を緯糸に用いてもよいし、経糸に用いてもよいし、或いは緯糸及び経糸の両方に用いてもよいが、生産性向上の観点から、緯糸に用いるのが好ましい。次いで、得られた印捺用布帛の一部に、アルカリを含む薬剤を印捺する。この時、所望のすかし模様等が得られるように所定の部分にアルカリを含む薬剤を印捺する。次に、印捺された布帛を水等により洗浄して薬剤を除去し、乾燥することによって、透かし模様等の透かし意匠が形成されたオパール加工布帛を製造できる。なお、前記アルカリを含む薬剤が印捺された部分(領域)において、前記第2エアー交絡糸を構成する2種類の糸のうち、相対的にアルカリ液に対する溶解速度が大きい方の糸(第2糸)が薬剤に溶解して除去される一方、相対的にアルカリ液に対する溶解速度が小さい方の糸(アルカリ液に対し溶解性のない糸を含む)(第1糸)が溶解されずに糸として残存して、前記印捺部分(印捺領域)に透かし模様等の透かし意匠が形成される。このように2種類の糸のうち一方の糸が溶解除去され、他方の糸が溶解されずに残存するように前記印捺時間を設定する。
【0035】
本発明において、前記第1エアー交絡糸は、酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含む構成であるが、酸に対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸性液に対する溶解性がないポリエステル糸と、酸性液に対して溶解しやすいセルロース糸の組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
前記酸性液としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸アルミニウム水溶液等が挙げられる。
【0037】
また、本発明において、前記第2エアー交絡糸は、アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸を含む構成であるが、アルカリに対する溶解速度が互いに異なる2種類の糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ性液に対する溶解性がないセルロース糸と、アルカリ性液に対して溶解しやすい常温カチオン可染糸の組み合わせ、或いは、アルカリ性液に対する溶解速度の小さいポリエステル糸と、アルカリ性液に対する溶解速度の大きい常温カチオン可染糸の組み合わせ等が挙げられる。
【0038】
前記アルカリ液としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>
セルロース繊維で形成される167デシテックスのセルロース糸と、ポリエステル繊維で形成される22デシテックスのポリエステル糸とを互いに引き揃え状態で走行させながら、セルロース糸とポリエステル糸とをそれぞれ独立して同時に仮撚りすることによって、互いに引き揃え状態にある2種類の捲縮糸(捲縮加工糸)を得た後(同時仮撚り工程)、互いに引き揃え状態で走行する前記捲縮糸に対して高圧空気を噴射することによりエアー交絡を行わしめてエアー交絡糸からなるオパール加工布帛用糸を製造した(交絡工程)。なお、前記同時仮撚り工程と前記交絡工程は、連続ラインで行った。前記同時仮撚り及びエアー交絡を行う際に、ポリエステル糸(第1糸)の走行速度を600m/分に設定し、セルロース糸(第2糸)の走行速度を615m/分に設定して、エアー交絡を行った。前記エアー交絡糸の長さ1mあたりに20回のインターレースが施されていた。
【0041】
次に、経糸として22デシテックスのポリエステル糸を用い、緯糸として上記オパール加工布帛用糸(エアー交絡糸)を用いて製織を行って印捺用布帛を得た。次いで、得られた印捺用布帛に平面視において部分的に酸性薬剤を印捺した。この時、印捺部分において植物の葉のすかし模様が得られるように所定の部分に酸性薬剤を印捺した。前記酸性薬剤(酸性液)として、硫酸アルミニウムを25質量%含有し、メイプロガム(糊剤)を50質量%含有する糊状水溶液を使用した。前記印捺状態で30分間保持した後、印捺された布帛を水で洗浄することによって酸性薬剤を除去した後、乾燥させることにより、植物の葉のすかし模様が形成されたオパール加工布帛を得た。なお、前記30分間の印捺状態の保持により、印捺部分において緯糸を構成するエアー交絡糸のうち、セルロース糸が酸性薬剤に溶解し(除去され)、ポリエステル糸が溶解せずに糸として残存して、印捺部分において植物の葉のすかし模様が形成された。得られたオパール加工布帛において鮮明な透かし模様が形成されていた。
【0042】
<実施例2>
ポリエステル繊維で形成される22デシテックスの第1ポリエステル糸(アルカリ液に対する溶解速度が第2ポリエステル糸より小さい糸)と、常温カチオン可染繊維で形成される167デシテックスの第2ポリエステル糸(アルカリ液に対する溶解速度が第1ポリエステル糸より大きい糸)とを互いに引き揃え状態で走行させながら、第1ポリエステル糸と第2ポリエステル糸とをそれぞれ独立して同時に仮撚りすることによって、互いに引き揃え状態にある2種類の捲縮糸(捲縮加工糸)を得た後(同時仮撚り工程)、互いに引き揃え状態で走行する前記捲縮糸に対して高圧空気を噴射することによりエアー交絡を行わしめてエアー交絡糸からなるオパール加工布帛用糸を製造した(交絡工程)。なお、前記同時仮撚り工程と前記交絡工程は、連続ラインで行った。前記同時仮撚り及びエアー交絡を行う際に、第1ポリエステル糸(第1糸)の走行速度を600m/分に設定し、第2ポリエステル糸(第2糸)の走行速度を615m/分に設定して、エアー交絡を行った。前記エアー交絡糸の長さ1mあたりに20回のインターレースが施されていた。
【0043】
次に、経糸としてポリエステル繊維で形成される22デシテックスの第1ポリエステル糸を用い、緯糸として上記オパール加工布帛用糸(エアー交絡糸)を用いて製織を行って印捺用布帛を得た。次いで、得られた印捺用布帛に平面視において部分的にアルカリ性薬剤を印捺した。この時、印捺部分において植物の葉のすかし模様が得られるように所定の部分にアルカリ性薬剤を印捺した。前記アルカリ性薬剤(アルカリ性液)として、水酸化ナトリウムを20質量%含有し、メイプロガム(糊剤)を30質量%含有する糊状水溶液を使用した。前記印捺状態で30分間保持した後、印捺された布帛を水で洗浄することによってアルカリ性薬剤を除去した後、乾燥させることにより、植物の葉のすかし模様が形成されたオパール加工布帛を得た。なお、前記30分間の印捺状態の保持により、印捺部分において緯糸を構成するエアー交絡糸のうち、第2ポリエステル糸がアルカリ性薬剤に溶解し(除去され)、第1ポリエステル糸が溶解せずに糸として残存して、印捺部分において植物の葉のすかし模様が形成された。得られたオパール加工布帛において鮮明な透かし模様が形成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るオパール加工布帛用糸および本発明の製造方法で製造されたオパール加工布帛用糸は、透かし模様等の透かし意匠が形成されたオパール加工布帛を製造するのに用いられる。
【0045】
また、本発明のオパール加工布帛および本発明の製造方法で製造されたオパール加工布帛は、特に限定されるものではないが、例えば、カーテン、ブラウス、スカート等として用いられる。