【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0033】
[頭蓋骨再建試験]
実施例1
CaHPO
4・2H
2OパウダーとCaCO
3を1:2の比率で混合したものに水を加えて、ボールミルで24時間粉砕混練してスラリーを得た。前記スラリーを乾燥させ、垂直方向に連通する直径330μmの連通孔を91個有する長さ3.95mmx幅3.95mm、厚さ2mmの長方体のTCP前駆体からなる成形体を得た。前記成形体を1200℃まで50℃h
−1の速度で昇温し、その温度で1時間保持して焼成処理を行い、β−TCPからなる頭蓋骨接合部材を得た。前記頭蓋骨接合部材の連通孔と連通孔の間の壁面の厚さは約100μmであり、気孔率は49.8%であった。前記頭蓋骨接合部材をオートクレーブで殺菌処理した後、マトリゲル(登録商標)(BD Bioscience社製)の中に浸漬させて遠心分離機にかけ、頭蓋骨接合部材の連通孔内にマトリゲル(登録商標)を充填させた。
【0034】
8週齢雄性ウィスター系ラットの頭蓋骨欠損モデルを用いて検討を行った。ラットの頭部の皮膚を切開した後、頭蓋骨をダイヤモンドバーを用いて切削し、硬膜を温存して約5×5mmの骨組織欠損を左右に1つずつ作成した。頭蓋骨接合部材をオートクレーブで殺菌処理し、連通孔の向きが、硬膜と骨膜とが最短距離で結ばれる仮想軸と略平行になるように骨欠損部位に配置し、頭部皮膚を縫合した。
【0035】
頭蓋骨接合部材を埋入後、3週間目にラットを安楽死させ、周囲の頭蓋骨組織と共に頭蓋骨接合部材を摘出した。摘出した組織は4%パラフォルムアルデヒドで一晩固定し、続いて10%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液にて脱灰、定法にてパラフィンブロックを作成し、ヘマトキシリン・エオジンで染色(HE染色)の後、組織学的に観察を行った。結果を
図1−a、bに示す。
【0036】
実施例2
殺菌処理後の頭蓋骨接合部材の連通孔内に80μg/mL濃度のBMP−2を混和したマトリゲル(登録商標)(BD Bioscience社製)を充填した以外は実施例1と同様にして、頭蓋骨再建試験を行った。頭骸骨接合部材全体のBMP含有量は、約1.24μgであった。結果を
図1−c、dに示す。
【0037】
比較例1
長さ3.95mm×幅3.95mm、厚さ5mmとした以外は実施例1と同様にして長方体のTCP前駆体からなる成形体を得た。実施例1と同様にして1200℃で焼成処理した前記成形体を、幅2mmの位置で切断面が連通孔と平行になるように切断して2等分し、β−TCPからなる頭蓋骨接合部材を得た。オートクレーブで殺菌処理した前記頭蓋骨接合部材を、連通孔の向きが硬膜と骨膜とが最短距離で結ばれる仮想軸と略垂直になるように骨欠損部位に配置した以外は、実施例1と同様にして頭蓋骨再建試験を行った。このとき、連通孔は頭骸骨板間層に連通孔が連絡している状態、すなわち水平連通孔となっている。結果を
図2−a、bに示す。
【0038】
比較例2
殺菌処理後の頭蓋骨接合部材の連通孔内に80μg/mL濃度のBMP−2を混和したマトリゲル(登録商標)(BD Bioscience社製)を充填した以外は比較例1と同様にして、頭蓋骨再建試験を行った。結果を
図2−c、dに示す。
【0039】
[頭蓋骨再建における組織観察結果]
実施例1のように配置された頭蓋骨接合部材では、BMPの添加がない条件においても、骨組織の形成が認められた(
図1−a、b)。骨組織は硬膜側から形成されており、連通孔内の骨膜近傍にまで骨組織の形成が認められた。連通孔内に炎症反応はほとんど認められず、孔の全ての内壁に添加するように良好な骨組織が形成されていた。
【0040】
実施例1のように配置され、さらにBMPが添加されている頭蓋骨接合部材(実施例2)では、実施例1よりも旺盛な骨組織の形成が認められた(
図1−c、d)。骨組織は全ての連通孔で孔全体を充填するように形成されており、骨組織の形成は外側の骨膜にほぼ達していた。また、骨髄組織の形成も確認された。
【0041】
これらに対し、比較例1のように配置された頭蓋骨接合部材では、BMPの添加がない条件においても骨組織の形成は認められたが、硬膜近傍のみであった(
図2−a、b)。骨膜側の孔内には骨組織の形成が認められなかった。
【0042】
また、比較例1のように配置され、さらにBMPが添加されている頭蓋骨接合部材(比較例2)では、比較例1よりも骨組織の形成される量は増加したが、全ての孔に骨形成は認められなかった(
図2−c、d)。
【0043】
参考例1
CaHPO
4・2H
2OパウダーとCaCO
3を1:2の比率で混合したものに水を加えて、ボールミルで24時間粉砕混練してスラリーを得た。前記スラリーを乾燥させ、直径330μmの貫通孔を91個有する長さ3.95mmx幅3.95mm、厚さ1mmの長方体のTCP前駆体からなる成形体を得た(気孔率:49.8%)。得られた前記成形体を1100℃まで50℃h
−1の速度で昇温し、その温度で1時間保持して焼成処理を行った。
【0044】
[X線回折の測定]
前記焼成処理を行った成形体(1100TCP)について、XRD(BRUKER D8 Advance)を用いて、X線回折を測定した(X線:Cu-Kα線、出力:40KV、40mA)。スキャン角度の範囲は20°〜60°、スキャンスピードは2°min
-1であった。回折パターンはJoint Committee on Powder Diffraction Standards Powder Diffraction Filesのデータベースと比較した。
【0045】
[表面形態の観察]
焼成処理後の成形体に白金コーティングを行い、SEM(Philips XL30W10D)を用いて表面構造を観察した。結果を
図3に示す。
【0046】
[骨再生試験]
2匹の健康な4週齢雄性ウィスター系ラットを用いて試験を行った。外耳道に骨欠損部を設け、骨欠損部を補うように成形体(1200TCP)を埋入した。4週間後、成形体(1200TCP)をラットから取り出し、中性緩衝ホルマリン中で固定した。そのサンプルを10%EDTA溶液中で2週間浸漬し、カルシウムを除去した。引き続き、サンプルをパラフィン中に埋め込み、切片をHE染色し、組織学的に観察を行った。結果を
図4に示す。
【0047】
参考例2〜6
前記焼成処理の温度を表1に示すように変更した以外は、参考例1と同様にして焼成処理を行い、評価した。結果を表1及び
図3〜5に示す。
【0048】
[X線回折結果]
参考例1〜6のX線回折結果より、焼成処理後の成形体の組成が焼成温度に依存することがわかった(表1)。焼成温度が1100、1150、1200℃のサンプルでは、焼成後の成形体の組成としてβ−TCPのピークのみが検出された(
図5−a)。焼成温度が1250℃のサンプルでは、焼成後の成形体の組成として主にβ−TCPのピークが検出され、少しα−TCPのピークも検出された(
図5−b)。焼成温度が1500℃のサンプルでは、β−TCPのピークは確認されず、α−TCPのピークのみ検出された(
図5−c)。
【0049】
[骨再生試験結果]
成形体の焼成処理温度が高くなるほど、粒子の数が減少し、粒子径が大きくなり、表面が滑らかになっていることがわかる(
図3-b)。各処理温度のサンプルを生体内に埋入したところ、1100TCPでは炎症細胞の浸潤などの異物反応が確認された。組成中にβ-TCPのみが確認された条件のうち、もっとも高温で処理された1200TCPでは炎症反応は減少し、新しい骨細胞が確認された(
図4)。組成中にα−TCPが確認された1250TCPでは、再び炎症反応が確認された。1500TCPは4週間の間に埋入されたサンプルが溶解していた(
図4)。したがって、1200℃で焼成して得られる成形体を用いることが、最も好適な実施態様であることがわかる。
【0050】
【表1】