(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方側の面を電子部品接触面にし逆側の面を放熱面としたベース部と、前記ベース部において前記放熱面が連続する方向の一端側と他端側に設けられた二つの放熱片とを備え、
前記二つの放熱片の各々は、前記放熱面から突出する側壁部と、前記側壁部の突端側から他方の放熱片へ向かって突出して前記放熱面との間に内部空間を確保した天壁部とを有し、
二つの前記天壁部は、その間に、前記内部空間と外部空間とを連通する通気路を確保して離隔し、
前記通気路には、前記二つの天壁部の間のスリット部と、前記二つの天壁部に跨る貫通孔状であって且つ前記スリット部よりも幅の大きい貫通部とを含むことを特徴とするヒートシンク。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、一方側の面を電子部品接触面にし逆側の面を放熱面としたベース部と、前記ベース部において前記放熱面が連続する方向の一端側と他端側に設けられた二つの放熱片とを備え、前記二つの放熱片の各々は、前記放熱面から突出する側壁部と、前記側壁部の突端側から他方の放熱片へ向かって突出して前記放熱面との間に内部空間を確保した天壁部とを有し、二つの前記天壁部は、その間に、前記内部空間と外部空間とを連通する通気路を確保して離隔している(
図1〜
図20参照)。
【0010】
第三の特徴として、前記通気路には、前記二つの天壁部に跨る貫通孔状であって且つ前記スリット部よりも幅の大きい貫通部を含む(
図1〜
図9,
図13,
図17参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記二つの天壁部のうち、少なくともその一方には、該天壁部を厚み方向へ貫通する通気孔が設けられている(
図3〜
図6,
図15,
図16(a),
図17参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記通気孔の内縁側には、外部空間へ向かって突出する突縁部が設けられている(
図3〜
図6参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記通気孔の内縁側には、内部空間へ向かって突出する突縁部が設けられていることを特徴とする(
図15及び
図16(a)参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記通気孔及び前記突縁部が前記天壁部毎に複数設けられ、隣接する二つの前記突縁部は、隙間を置いて配設される(
図3〜
図4,
図15,
図17参照)。
【0015】
第八の特徴として、前記通気孔及び前記突縁部が前記天壁部毎に複数設けられ、隣接する二つの前記突縁部は、その間に位置する壁部を共用して一体に構成される(
図5〜
図6参照)。
【0016】
第九の特徴として、前記二つの天壁部のうち、少なくともその一方には、外部空間側へ突出する複数の突起が設けられ、前記各突起は、ベース部側に対する逆側に底部を有する有底筒状に形成されている(
図7〜
図9参照)。
【0017】
第十の特徴として、前記二つの天壁部のうち、少なくともその一方には、内部空間側へ突出する複数の突起が設けられ、前記各突起は、ベース部側に底部を有する有底筒状に形成されている(
図15及び
図16(b)参照)。
【0018】
第十一の特徴として、前記ベース部には、貫通状の取付孔が設けられ、前記取付孔は、前記通気路の平面視上の範囲内に設けられている(
図12,
図13,
図15,及び
図17〜
図20参照)。
【0019】
第十二の特徴として、記二つの放熱片のうち、その一方の放熱片の前記天壁部と、他方の放熱片の前記天壁部とを、互いに斜辺を対向するようにして配置された三角形状に形成して、対向する二つの斜辺間に前記通気路を確保した(
図12,
図13,
図15,
図17〜
図20参照)
【0020】
第十三の特徴は、前記側壁部に貫通状の通気部を設けた(
図18参照)。
【0021】
第十四の特徴として、上記ヒートシンクを第一のヒートシンクとし、この第一のヒートシンクの内部空間に、第二のヒートシンクを設けてなるヒートシンクであって、第二のヒートシンクは、前記ベース部及び前記二つの放熱片と略同構成のベース部及び二つの放熱片を有する(
図19及び
図20参照)。
【0022】
第十五の特徴として、前記電子部品接触面に、電子部品が接触して支持されている(
図2,
図4,
図6及び
図9参照)。
【0023】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜
図2に示すヒートシンク1は、一方側の面を電子部品接触面11にし逆側の面を放熱面12とした板状のベース部10と、ベース部10において放熱面12が連続する方向の一端側と他端側に設けられた二つの放熱片30とを備え、外部空間S1をベース部10と放熱片30によって囲まれた内部空間S2に連通するように構成される。
【0025】
なお、図示例のヒートシンク1は、一枚の板金材料を曲げ加工することで、ベース部10と二つの放熱片30,30を構成しているが、他例としては、それぞれ別体のベース部10と放熱片30,30を溶接や嵌合等により接続した態様とすることも可能である。
【0026】
このヒートシンク1の原材料には、単一の金属元素からなる純金属や、複数の金属元素あるいは金属元素と非金属元素から成る合金を含む。ここで、前記金属元素の具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル又はマグネシウム等が挙げられる。
また、このヒートシンク1は、単一材料から形成してもよいし、二つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた複合材料から形成してもよい。
そして、図示例のヒートシンク1は、電子部品接触面11を電子部品X(例えば、CPUや、トランジスタ、サイリスタ、その他の半導体や電子部品等)に接触させて電子部品パッケージP(
図1参照)を構成する。
【0027】
ベース部10は、矩形平板状(図示例によれば正方形平板状)に形成され、その厚み方向の一方側(図示の下側)に位置する面を、平坦状に形成して電子部品Xに接触させるための電子部品接触面11としている。
このベース部10の逆側(図示の上側)の面は、凹凸のない平坦状に形成されるが、必要に応じて、適宜形状の放熱フィン等を設けることも可能である。
【0028】
図1中の符号13は、貫通状の取付孔であり、ベース部10の対角線状の一端側と他端側や、四角側等に適宜数(本実施態様によれば対角線上に二つ)設けられる。この取付孔13は、ベース部10を電子部品接触面11に止着するためのネジを挿通したり、あるいはベース部10を電子部品接触面11側の凸部に嵌め合わせて位置決めしたり等のために用いられる。
【0029】
各放熱片30は、ベース部10の一辺側から上方へ略垂直に突出する側壁部31と、側壁部31の突端側から他方の放熱片30へ向かって放熱面12と略平行に突出して放熱面12との間に内部空間S2を確保した天壁部32とを一体に有し、略逆L字状に形成される。
【0030】
左右二つの天壁部32,32は、対向する突端部間を離隔しており、その突端部間に、内部空間S2と上方側の外部空間S1とを連通する通気路Aを確保している。
【0031】
通気路Aは、前記二つの天壁部32,32を分離するスリット部32aと、二つの天壁部32,32に跨る貫通孔状であってスリット部32aよりも幅(図示例によれば内径)の大きい貫通部32b(貫通孔)とにより形成される。
【0032】
スリット部32aは、二つの天壁部32,32が並ぶ方向に対する交差方向へ長尺状に延設される。このスリット部32aは、貫通部32bを間に置くようにしてその両側に二つ設けられる。
【0033】
また、貫通部32bは、一方と他方の天壁部32,32に設けられる半円状の切欠部により、円形の貫通孔状に形成される(
図1参照)。
【0034】
そして、上記構成により、二つの天壁部32,32が並ぶ方向に対する交差方向の一端側と他端側(
図2(a)によれば右端側と左端側)には、それぞれ、正面視略横長矩形状の開口部Bが形成される。
この開口部Bは、外部空間S1と内部空間S2とを間に空気を流通させる空気流路として機能する。
【0035】
なお、図中、符号32cは、取付孔13に挿通されるネジ等を締める治具(例えばドライバー等)を遊挿するための切欠部である。
また、図示例以外の他例としては、取付孔13を省くことも可能である。この場合、例えば、放熱片30を、嵌合や接着等、ねじ止め以外の手段により電子部品Xに固定すればよい。
【0036】
上記構成のヒートシンク1は、その電子部品接触面11に、熱源となる電子部品Xを接触して支持し、電子部品パッケージを構成する(
図2(a)(b)参照)。
【0037】
次に、上記構成のヒートシンク1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図2(a)に示すように、ヒートシンク1について、電子部品接触面11を下方へ向けて電子部品Xに接触させた場合(以降、水平設置と称する)、通気路Aにベース部10の熱による上昇気流が発生し、この上昇気流に両側の空気が引き込まれるようにして、図示の2点鎖線F1に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、両側の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、スリット部32a及び貫通部32bを通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、及び放熱片30の内面に接触して熱交換を行い、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇を抑制する。
【0038】
また、
図2(b)に示すように、ヒートシンク1について、電子部品接触面11を側方へ向けて電子部品Xに接触させた場合(以降、垂直設置と称する)、内部空間S2にベース部10の熱による上昇気流が発生し、この上昇気流に通気路A側の空気と、下方の開口部B側の空気とが引き込まれるようにして、図示の2点鎖線F2に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、通気路Aと下方の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、上方の開口部Bを通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12及び放熱片30の内面に接触して熱交換を行い、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇を抑制する。
【0039】
よって、ヒートシンク1によれば、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、水平設置と垂直設置の何れの場合も、良好な放熱性能を得ることができる。
【0040】
次に、本発明に係るヒートシンクの他の実施態様について説明する。なお、以下に示す実施態様は、上述した実施態様を一部変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、共通部分の説明は同一符号を用いる等して適宜省略する。
【0041】
<第二の実施態様>
図3に示すヒートシンク2は、上記構成のヒートシンク1に対し、各天壁部32に、通気孔33と突縁部34を設けたものである。
【0042】
通気孔33は、天壁部32の面が連続する方向へ並ぶように複数設けられる。隣接する通気孔33の間には隙間が確保される。
各通気孔33は、多角形状(図示例によれば正六角形状)に形成され、天壁部32を厚み方向へ貫通している。
【0043】
突縁部34は、天壁部32の外面における各通気孔33の内縁側から外部空間S1へ向かって突出する筒状(図示例によれば六角形筒状)に設けられる。
この突縁部34は、複数の通気孔33にそれぞれ対応するように、複数配設される。隣接する突縁部34の間には隙間が確保される。この隙間は、突縁部34の放熱面積を増大している。
各突縁部34との突出量は、図示例によれば、天壁部32の厚み程度に設定される。
【0044】
次に、上記構成のヒートシンク2について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図4(a)に示すように、ヒートシンク2を水平設置した場合には、上記ヒートシンク1と略同様にして、図示の2点鎖線F1に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、両側の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、スリット部32a、貫通部32b及び通気孔33を通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、放熱片30の内面、通気孔33及び突縁部34の内面等に接触して熱交換を行い、突縁部34の外面側でも外部空間S1の空気との熱交換が行われ、ひいては、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇が抑制される。
【0045】
また、
図4(b)に示すように、ヒートシンク2を垂直設置した場合も、上記ヒートシンク1と略同様にして、図示の2点鎖線F2に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、通気路A、通気孔33及び下方の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、上方の開口部Bを通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、放熱片30の内面、通気孔33及び突縁部34の内面等に接触して熱交換を行い、突縁部34の外面側でも外部空間S1の空気との熱交換が行われ、ひいては、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇が抑制される。
【0046】
よって、ヒートシンク2によれば、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、水平設置と垂直設置の何れの場合も良好な放熱性能を得ることができる。その上、通気孔33及び突縁部34とによって、天壁部32を強度アップすることができる。
【0047】
<第三の実施態様>
図5に示すヒートシンク3は、上記構成のヒートシンク1に対し、各天壁部32に、通気孔35と突縁部36を設けたものである。
【0048】
通気孔35は、天壁部32の面が連続する方向へ並ぶように複数設けられる。
各通気孔35は、多角形状(図示例によれば正六角形状)に形成され、天壁部32を厚み方向へ貫通している。
【0049】
突縁部36は、天壁部32の外面における各通気孔35の内縁側から外部空間S1へ向かって突出する筒状(図示例によれば六角形筒状)に設けられる。
この突縁部36は、複数の通気孔35にそれぞれ対応するように、複数配設される。隣接する二つの突縁部36,36は、その間に位置する壁部36aを共用して一体に構成される。壁部36aは、天壁部32を強度アップする作用を奏する。
各突縁部36との突出量は、図示例によれば、天壁部32の厚み程度に設定される。
【0050】
次に、上記構成のヒートシンク3について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図6(a)に示すように、ヒートシンク3を水平設置した場合には、上記ヒートシンク1と略同様にして、図示の2点鎖線F1に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、両側の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、スリット部32a、貫通部32b及び通気孔35を通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、放熱片30の内面、通気孔35及び突縁部36の内面等に接触して熱交換を行い、突縁部36の外面側でも外部空間S1の空気との熱交換が行われ、ひいては、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇が抑制される。
【0051】
また、
図6(b)に示すように、ヒートシンク3を垂直設置した場合も、上記ヒートシンク1と略同様にして、図示の2点鎖線F2に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、通気路A、通気孔35及び下方の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、上方の開口部Bを通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、放熱片30の内面、通気孔35及び突縁部36の内面等に接触して熱交換を行い、突縁部36の外面側でも外部空間S1の空気との熱交換が行われ、ひいては、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇が抑制される。
【0052】
よって、ヒートシンク3によれば、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、水平設置と垂直設置の何れの場合も良好な放熱性能を得ることができる。その上、通気孔35及び突縁部36によって、天壁部32を強度アップすることができる。
【0053】
<第四の実施態様>
図7に示すヒートシンク4は、上記構成のヒートシンク1に対し、各天壁部32に、外部空間側へ突出する突起37を設けたものである。
【0054】
突起37は、天壁部32の面が連続する方向へ並ぶように複数設けられる。
各突起37は、ベース部10側に対する逆側に底部を有する多角形(図示例によれば正六角形状)の有底筒状に形成され、外部空間S1側へ突出している(
図8参照)。
各突起37の突出量は、図示例によれば、天壁部32の厚み程度に設定される。
隣接する突起37,37間には、隙間が確保されている。この隙間は、各突起37の放熱面積を広く確保している。
【0055】
なお、図示例以外の他例としては、隣接する37,37間を一体的に連結して、各天壁部32の強度をより向上することも可能である。
【0056】
次に、上記構成のヒートシンク4について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
図9(a)に示すように、ヒートシンク4を水平設置した場合には、上記ヒートシンク1と略同様にして、図示の2点鎖線F1に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、両側の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、スリット部32a及び貫通部32b等の通気路Aを通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、放熱片30の内面、及び突起37の内面等に接触して熱交換を行い、突起37外面側でも外部空間S1の空気との熱交換が行われ、ひいては、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇が抑制される。
【0057】
また、
図9(b)に示すように、ヒートシンク4を垂直設置した場合も、上記ヒートシンク1と略同様にして、図示の2点鎖線F2に沿う連続的な空気の流れが形成される。
詳細に説明すれば、外部空間S1の空気は、通気路A及び下方の開口部Bから内部空間S2へ侵入し、上方の開口部Bを通過して、上方の外部空間S1へ流れる。
そして、このようにして流れる空気が、ベース部10の放熱面12、放熱片30の内面、突起37の内面等に接触して熱交換を行い、突起37外面側でも外部空間S1の空気との熱交換が行われ、ひいては、ベース部10及び電子部品Xの温度上昇が抑制される。
【0058】
よって、ヒートシンク4によれば、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、水平設置と垂直設置の何れの場合も良好な放熱性能を得ることができる。その上、突起37によって、天壁部32を強度アップすることができる。
【0059】
<従来構造との比較>
次に、上記構成のヒートシンク1〜4と、従来構造の比較例100について、コンピュータ解析によるベース部の温度上昇値、重量等を比較した結果を説明する(
図11参照)。
【0060】
ヒートシンク1〜4、及び比較例100は、同じ外観寸法(約60×59×10mm)のものを用いた。
比較例100は、矩形状のベース部110の上面に、間隔を置いて略平行に6枚の放熱フィン120を設けたものである。
【0061】
図11の表に示すように、ヒートシンク1〜4は、水平設置と垂直設置の何れにおいても、比較例100よりも温度上昇値が低く、特に垂直設置にて顕著に低い温度上昇値が得られた。
また、ヒートシンク1〜4は、何れも、比較例100よりも重量が大幅に低かった。
【0062】
なお、上記ヒートシンク2によれば、特に好ましい態様として、通気孔33及び突縁部34とを設けたが、他例としては、突縁部34を省くことも可能であり、この場合でも通気孔33による通気効果を得ることができる。同様にして、ヒートシンク3についても、突縁部36を省くことが可能である。
【0063】
また、上記以外の他例としては、ヒートシンク1の天壁部32に対し、通気孔33、突縁部34及び突起37を全て配設した態様や、通気孔33、突縁部34、突起37を適宜に組み合わせて配設した態様等とすることが可能である。
【0064】
<第五の実施態様>
図12に示すヒートシンク5は、上記構成のヒートシンク1に対し、ベース部10をベース部10’に置換し、各放熱片30の天壁部32を、天壁部32’に置換したものである。
このヒートシンク5は、一方の放熱片30の天壁部32’と、他方の放熱片30の天壁部32’とを、互いに斜辺を対向させた三角形状に形成するとともに、対向する二つの斜辺間に形成されるスリット部32a’によって通気路Aを確保している。
【0065】
ベース部10’は、上記ベース部10の取付孔13を取付孔13’に置換したものである。
取付孔13’は、貫通孔であり、通気路Aの平面視上の範囲内に設けられる。言い換えれば、取付孔13’の中心軸上に通気路Aが位置する。
【0066】
上記構成のヒートシンク5は、電子部品(図示せず)に対し水平設置された場合、上記ヒートシンク1と略同様に、開口部Bから内部空間S2へ向かいスリット部32a’を介して外部空間S1へ向かう空気の流れF1を形成する。また、垂直設置された場合には、上記ヒートシンク1と同様(
図2参照)に、一方の開口部Bから内部空間S2へ侵入して他方の開口部Bから外部空間S1へ出てゆく空気の流れが形成され、この流れに、スリット部32a’から内部空間S2へ侵入する空気が合流する(図示せず)。
【0067】
よって、上記構成のヒートシンク5によれば、傾斜状のスリット部32a’により比較的長尺な通気路Aを確保することができ、ひいては、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、良好な放熱性能を得ることができる。
その上、取付孔13’に挿通される止着具(例えばネジやボルト等)によってヒートシンク5を電子部品等に止着固定する際に、止着具を締め込むための治具(例えばドライバー等)を遊挿するための空間として、通気路Aを用いることができる。
なお、
図12に示す一例では、取付孔13’を、通気路A(スリット部32a’)の一端側と他端側に対応して二か所に設けているが、単数又は三以上設けることも可能である。
【0068】
<第六の実施態様>
図13に示すヒートシンク6は、上記構成のヒートシンク5に対し、貫通部32b’を加えて、スリット部32a’及び貫通部32b’によって通気路Aを構成したものである。
貫通部32b’は、スリット部32a’よりも幅の大きい平面視略正方形状であって、二つの天壁部32’,32’に跨って設けられる。
【0069】
このヒートシンク6について、水平設置した場合の空気の流れF1と、垂直設置した場合の空気の流れ(図示せず)は、上述したヒートシンク1及びヒートシンク5等と略同様である。
【0070】
よって、上記構成のヒートシンク6によれば、傾斜状のスリット部32a’と貫通部32b’により流通面積の大きい通気路Aを確保することができ、ひいては、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、良好な放熱性能を得ることができる。
【0071】
次に、上記構成のヒートシンク5,6について、コンピュータ解析によりベース部の温度上昇値、重量等を比較した結果を説明する(
図14参照)。
この実験に用いた試料の外観寸法は、何れも、約60×59×10mmである。
ヒートシンク6は、
図14の表に示すように、略正方形状の貫通部32b’の一辺の寸法Qが異なる五種類の試料について、それぞれ、実験を行った。
【0072】
図14の表に示すように、水平設置の場合の温度上昇値は、寸法Qが大きくなるにつれて上昇し、Q=30mmで最小となり、Qがさらに大きくなると上昇した。
また、垂直設置の場合の温度上昇値は、寸法Qが大きくなるにつれて上昇することを、Q=40mmになるまで確認した。
これらの結果より、水平設置で用いる場合には、寸法Q=30mmとするのが好ましく、垂直設置で用いる場合には、寸法Q=40mmとするのが好ましいといえる。
【0073】
<第七の実施態様>
図15に示すヒートシンク7は、上記構成のヒートシンク5における天壁部32’に、通気孔33’及び突縁部34’を設けたものである。
【0074】
通気孔33’は、各天壁部32’の面に沿って、所定間隔を置いて複数設けられる。各通気孔33’は、
図16(a)に示すように、天壁部32’を厚み方向へ貫通している。
突縁部34’は、通気孔33’の内縁全周から内部空間S2へ向かって突出し、略筒状に構成される。
【0075】
このヒートシンク7は、電子部品(図示せず)に対し水平設置された場合、上記ヒートシンク2と略同様に、開口部Bから内部空間S2へ侵入しスリット部32a’を通って外部空間S1へ抜ける空気の流れや、開口部Bから内部空間S2へ侵入して通気孔33’を通って外部空間S1へ抜ける空気の流れを形成する(
図15の2点鎖線F1参照)
また、垂直設置された場合には、上記ヒートシンク2等と同様に、一方の開口部Bから内部空間S2へ侵入して他方の開口部Bから外部空間S1へ出てゆく空気の流れが形成され、この流れに、スリット部32a’から内部空間S2へ侵入する空気が合流し、さらに、通気孔33’から内部空間S2へ侵入する空気も合流する(図示せず)。
【0076】
よって、上記構成のヒートシンク7によれば、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造を得ることができ、しかも、傾斜状のスリット部32a’、通気孔33’、突縁部34’等により、通気量及び放熱面積を多く確保し、良好な放熱性能を得ることができる。
【0077】
なお、上記構成のヒートシンク7において、通気孔33’及び突縁部34’は、その一部又は全部を、
図16(b)に示す突起37’に置換することが可能である。突起37’は、ベース部側に底部を有する有底筒状に形成され、内部空間S2側へ突出する。
この突起37’を具備したヒートシンクによれば、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造を得ることができる上、突起37’によって天壁部32’の強度アップや、放熱性能の向上等の作用効果を得ることができる。
【0078】
また、他例としては、ヒートシンク7において、通気孔33’及び突縁部34’、あるいは突起37’等の一部又は全部を、上述した六角形状の通気孔33及び突縁部34や、突起37等に置換することが可能である。
【0079】
<第八の実施態様>
図17に示すヒートシンク8は、上記構成のヒートシンク6における天壁部32’に、通気孔33’と突縁部34’とを複数設けたものである。
通気孔33’及び突縁部34’は、ヒートシンク7のものと同構造である(
図16(a)参照)。
【0080】
このヒートシンク8によれば、傾斜状のスリット部32a’、貫通部32b、通気孔33’、突縁部34’等により、通気量及び放熱面積を多く確保することができ、ひいては、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造により、良好な放熱性能を得ることができる。
【0081】
なお、このヒートシンク8も、通気孔33’及び突縁部34’を、突起37’(
図16(b)参照)に置換することが可能である。
【0082】
<第九の実施態様>
図18に示すヒートシンク9は、上記構成のヒートシンク5における側壁部31に、複数の通気部31aを形成したものである。
通気部31aは、側壁部31の突出方向(図示例によれば上方)へ長尺なスリット状の貫通孔であり、前記突出方向に対する交差方向へ間隔を置いて複数設けられる。
【0083】
ヒートシンク9では、スリット部32a’及び開口部Bを通過する空気の流れを形成できるのに加え、各側壁部31の通気部31aを通過する空気の流れも形成することができ、ひいては、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造によって、良好な放熱性能を得ることができる。
【0084】
<第十の実施態様>
図19及び
図20に示すヒートシンク50は、上記ヒートシンク5(
図12参照)を第一のヒートシンク51とし、この第一のヒートシンク51の内部空間に、第二のヒートシンク52を設けてなる。
【0085】
第二のヒートシンク52は、ヒートシンク5のベース部10及び放熱片30と略同構成であって一回りほど小さいベース部52a及び放熱片52bを有し、第一のヒートシンク51のベース部10’に接している。
【0086】
ベース部52aは、ベース部10’よりも若干小さい矩形平板状に形成され、ベース部10’の放熱面12に接している。
このベース部52aには、ベース部10’の各取付孔13’に連通するように、取付孔52cが設けられる。
【0087】
放熱片52bは、上記ヒートシンク5の放熱片30と略同様にして、側壁部52b1と天壁部52b2とを一体に有する略逆L字状に形成される。
【0088】
第一のヒートシンク51の天壁部32’と、第二のヒートシンク52の天壁部52b2との間には、空気を流通可能な隙間cが確保される。
【0089】
上記構成のヒートシンク50では、開口部Bからスリット部32a’にわたる空気の流通路を、前記隙間c及び第二のヒートシンク52内に形成するとともに、二つのヒートシンク51,52によってより広い放熱面積を確保することができ、ひいては、外部に突出するフィン等の無い省スペース且つ軽量な構造によって、良好な放熱性能を得ることができる。
【0090】
なお、第二のヒートシンク52は、第一のヒートシンク51に対し溶接等によって予め一体化すればよいが、他例としては、第一のヒートシンク51に対し第二のヒートシンク52が必要に応じて組付けられるようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施の態様では、第二のヒートシンク52のベース部52aを第一のヒートシンク51のベース部10’に接したが、他例としては、これらベース部52a,10’間に隙間を有する態様とすることも可能である。この場合、例えば、第二のヒートシンク52の側壁部52b1を、第一のヒートシンク51の側壁部31に溶接等によって接続すればよい。
【0092】
また、ヒートシンク50の第一のヒートシンク51と第二のヒートシンク52には、上記ヒートシンク7〜8と同様に(
図15〜
図17参照)、貫通部32b’、通気孔33’及び突縁部34’、突起37’、通気部31a等を適宜に配設することが可能である。
【0093】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。