(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6803088
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】フィルターシート、及びマスク
(51)【国際特許分類】
B01D 39/14 20060101AFI20201214BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20201214BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20201214BHJP
B32B 15/14 20060101ALI20201214BHJP
D06M 11/42 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B01D39/14 C
A62B18/02 C
A41D13/11 M
B32B15/14
D06M11/42
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-162736(P2019-162736)
(22)【出願日】2019年9月6日
【審査請求日】2020年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592258133
【氏名又は名称】相田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】和気 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】手塚 基文
(72)【発明者】
【氏名】松前 裕稀
(72)【発明者】
【氏名】矢次 昭孔
【審査官】
橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第101275361(CN,A)
【文献】
特開2006−014965(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3151082(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第1865487(CN,A)
【文献】
実開平06−058955(JP,U)
【文献】
国際公開第2018/074337(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/130799(WO,A1)
【文献】
特開2014−128387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
A41D13/11
A62B7/00−33/00
B01D39/00−4104
D06M11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性・抗ウィルス性を有するフィルターシートにおいて、
親水性の不織布により構成された基材と、
前記基材の表面に積層された銀薄膜と、を備え、
前記銀薄膜の膜厚が、10nmであり、前記基材の表面には、前記銀薄膜のみ積層されている、
ことを特徴とするフィルターシート。
【請求項2】
前記不織布は、ポリエステル繊維又は綿で構成され、
前記銀薄膜は、前記基材の両面に積層され、外観上視認可能であり、
侵入したウィルスや菌の活性を弱め、
マスクに使用される、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルターシート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフィルターシートを有し、着用者の顔面の少なくとも鼻及び口を被覆するマスク本体を備えるマスクであって、
前記マスク本体は、内面シートと、微粒子捕集用フィルターシートと、前記フィルターシートと、外面シートとが、着用者側から順次積層され、
前記銀薄膜が、少なくとも前記フィルターシートの前記外面シート側に積層されている、
ことを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性・抗ウィルス性を有するフィルターシート、及びそのフィルターシートを備えるマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、花粉や埃が体内に侵入するのを抑制するために、不織布で構成された使い捨てタイプのマスクが使用されている。マスクには、花粉や埃に加え、外気に含まれるウィルスや菌の侵入を防いだり、体内に侵入する前にウィルスや菌を失活させることも望まれいている。
これまでに、抗菌性を有するマスクが多数開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−20006号公報
【特許文献2】特開2019−131928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2のように、マスクは、通常、マスク本体と、マスク本体の両側に取り付けられた固定部材(伸縮部材)とを備えている。そして、マスク本体を構成するシートに抗ウィルス性や抗菌性を付与することで、外気に含まれているウィルスや菌が体内に侵入することを抑制したり、ウィルスや菌を失活させたりできる。
現在、これまで開示されているマスクよりもさらに抗ウィルス性、抗菌性が高いマスクやマスクに使用するフィルターシートが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、抗菌性・抗ウィルス性を有するフィルターシート、及びそのフィルターシートを備えるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルターシートは、抗菌性・抗ウィルス性を有するフィルターシートにおいて、不織布により構成された基材と、基材の表面に積層された銀薄膜と、を備え、銀薄膜の膜厚が、0.1nmから50nmであることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフィルターシートは、不織布が親水性であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るマスクは、上述したのフィルターシートを有し、着用者の顔面の少なくとも鼻及び口を被覆するマスク本体を備え、マスク本体は、内面シートと、微粒子捕集用フィルターシートと、フィルターシートと、外面シートとが、着用者側から順次積層され、銀薄膜が、少なくともフィルターシートの外面シート側に積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフィルターシートは、基材の表面に、0.1nmから50nmで積層された銀薄膜を備え、外気に含まれるウィルスや菌の活性を低減することができる。
また、このフィルターシートを備えるマスクをも提供する。具体的には、本発明に係るマスクは、内面シートと、微粒子捕集用フィルターシートと、フィルターシートと、外面シートとが、着用者側から順次積層され、銀薄膜が、少なくともフィルターシートの外面シート側に積層されている。そうすると、外気に含まれるウィルスや菌は、フィルターシートに積層されている銀薄膜に接触し、失活する。
したがって、着用者の体内に活性化しているウィルスや菌が混入することが防止され、着用者の健康を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルターシートの断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るマスクの正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るマスクの部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るマスクの断面図である(
図2のA−A断面図)。
【
図5】本発明の実施形態の変形例に係るマスクの正面図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係るマスクの部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例に係るマスクの断面図である(
図5のA−A断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本実施形態に係るフィルターシートの抗ウィルス性、抗菌性について検討した。フィルターシート10は、
図1に示すように、不織布である基体11の片側の表面に銀薄膜12が積層されている。
【0012】
[実施例]
フィルターシートの抗ウィルス試験を以下の通り行った。
具体的には、以下の試料をファージ希釈液(1/4NB)に所定時間浸漬させた後、抗ウィルス性を調べた。抗ウィルス試験は、JIS R1756、及びJIS R1702を参考に行った。
試料1(実施例):親水性のポリエステル不織布(目付:30g/m
2、厚さ:0.10mmから0.25mm)、試料2(実施例):親水性の綿不織布(目付:30g/m
2、厚さ:0.10mmから0.25mm)、試料3(比較例):疎水性のポリエステル不織布(目付:30g/m
2、厚さ:0.10mmから0.25mm)
評価基準は、以下の通りとした。
◎:高い、〇:やや高い、△:やや低い、×:低い
【0014】
抗ウィルス性試験の結果を表1に示した。
これらの結果から、銀薄膜12を0.1nmから50nm積層させた親水性の不織布において、抗ウィルス性が高く、中でも銀薄膜12の膜厚が10nmの場合、非常に高い抗ウィルス性を有することが分かった。このことから、銀薄膜12の膜厚が0.1nmから50nmであることが好ましく、10nmであることが最も好ましいことがわかった。また、試料1と試料3の結果から、疎水性の不織布よりも、親水性の不織布を使用することが良いことがわかった。
したがって、親水性の不織布の表面に0.1nmから50nmの銀薄膜12を積層させたフィルターシート10を使用することで、外気からマスクの内部に侵入したウィルスや菌の活性を弱めることができる。
【0015】
本実施形態に係るマスクを、
図2から
図4を参照し説明する。
本実施形態に係るマスク1は、
図2に示すように、着用者の顔面の鼻や口を被覆するマスク本体2と、マスク本体2の左右端部に設けられ、マスク本体2を着用者の顔面に固定する固定部材3とを備えている。使用前のマスク本体2は、長方形状であり、表裏を貫通する孔4が複数形成されている。固定部材3は、伸縮性を有する紐状部材であり、この固定部材3を着用者の両耳にかけることで、マスク1が着用者の顔面に固定される。
【0016】
マスク本体2は、
図3に示すように、不織布で構成された内面シート20と、微粒子捕集用フィルターシート21と、フィルターシート10と、不織布で構成された外面シート22とが、着用者側から順次積層されている。これらのシートは、上端部、下端部、側部において、熱融着されている。なお、
図3において、各シートが密着して積層されているように現わされているが、融着部以外は、シート同士の間に隙間が形成されている。
【0017】
内面シート20、微粒子捕集用フィルターシート21、フィルターシート10、外面シート22は、
図4に示すように、マスク1の内側に折り畳み部5の山部6が複数形成されるように、ひだ状に折り畳まれている。具体的には、マスク1の上部では、山部6が上向きになるように、マスク1の下部では、山部6が下向きになるように折り畳まれている。マスク1の使用時には、折り畳み部5を広げ、所望の大きさまで広げて、着用される。
【0018】
フィルターシート10は、不織布である基体11の片側の表面に銀薄膜12が積層されている。この銀薄膜12は、基体11の上方領域A1、及び下方領域A2に積層されている(
図2)。基体11は、親水性の不織布であることが好ましく、基体11には、例えば、親水性のポリエステル不織布や親水性の綿(コットン)不織布を使用する。銀薄膜12は、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法の物理蒸着法によって、基体11の表面に積層される。中でも、蒸着法は、加工コストを低減させるために好ましい。
【0019】
内面シート20、及び外面シート22には、例えば、ポリプロピレン製の不織布を使用する。そして、内面シート20及び外面シート22は、フィルターシート10や微粒子捕集用フィルターシート21よりも厚みが薄いものが使用される。そのため、フィルターシート10に積層された銀薄膜12が、外側から視認される。
また、マスク本体2の上端部及び中央部には、形状保持具7が設けられている(
図1)。着用者は、この形状保持具7を曲げて、マスク1を所望の形状とし、着用する。
【0020】
微粒子捕集用フィルターシート21は、外気に含まれる微粒子を吸着して、捕集するために設けられている。この微粒子捕集用フィルターシート21には、ポリプロピレン製の不織布を使用することができる。
【0021】
次に、本実施形態に係るマスク1の作用効果について説明する。
【0022】
本実施形態に係るマスク1は、抗ウィルス性、抗菌性が高いフィルターシート10を備えている。外気は、着用者の吸気に伴って、外面シート22、フィルターシート10、微粒子捕集用フィルターシート21、内面シート20の順に通過する。外気に含まれるウィルスや菌は、外面シート22を通過すると、フィルターシート10に積層されている銀薄膜12に接触する。銀薄膜12に接触したウィルスや菌は、銀の抗ウィルス作用、抗菌作用により、失活される。そのため、活性化しているウィルスや菌が着用者の体内に侵入することが防止され、着用者の健康を維持することができる。この効果は、特に、銀薄膜12が0.1nmから50nm積層されている場合に、顕著である。
【0023】
本実施形態に係るマスク1は、外面シート22の厚みが薄く、不織布であるため、銀薄膜12が外側から視認できる。そうすると、マスク1の外観に、純銀としての色調を付与することができる。そのため、着用者は、抗ウィルス性、抗菌性を有する銀薄膜12が確実に積層されていることを視認できる。
【0024】
本実施形態に係るフィルターシート10の基体11の上方領域A1、及び下方領域A2に銀薄膜12が積層されている。上方領域A1は鼻に対応する位置であり、下方領域A2は口に対応する位置である。そうすると、基体の全面に銀薄膜を積層させたものと比べ、マスク1は、積層させる銀の量を少なくすることができるため、廉価で作製することができる。
【0025】
[変形例]
本実施形態の変形例に係るマスク1Aを、
図5から
図7を参照し説明する。
マスク1Aは、
図5に示すように、マスク1と同様に着用者の顔面の鼻や口を被覆するマスク本体2と、マスク本体2を着用者の顔面に固定する固定部材3とを備え、マスク本体2は、
図6に示すように、不織布で構成された内面シート20と、微粒子捕集用フィルターシート21と、フィルターシート10と、不織布で構成された外面シート22とが、着用者側から順次積層されている。
【0026】
マスク1Aは、
図7に示すように、内面シート20、微粒子捕集用フィルターシート21、フィルターシート10、外面シート22が、マスク1Aの内側に山部6が複数形成されるように、折り畳まれることで折り畳み部5が形成されている。折り畳み部5の山部6は、全て下向きに形成されている。山部6が全て下向きである点で、マスク1と相違する。
また、マスク1Aのフィルターシート10の両面の表層に銀薄膜12A、12Bが積層されている(
図6)。これらの銀薄膜12A、12Bの膜厚は、0.1nmから50nmが好ましく、10nmが最も好ましい。
【0027】
本実施形態に係るマスク1Aは、フィルターシート10の両面に銀薄膜12A、12Bが積層されている。そうすると、フィルターシート10の外面シート22側の銀薄膜12Aにおいて失活しなかったウィルスや菌は、微粒子捕集用フィルターシート21側の銀薄膜12Bに接触することで、失活する。
したがって、フィルターシート10の両面に銀薄膜12A、12Bを積層させることで、より高い抗ウィルス性、抗菌性を付与することができる。
【0028】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【0029】
本実施形態のマスク1では、フィルターシート10の外面シート22側に銀薄膜12を積層させたが、内面シート20側にも積層させ、両面に積層させることもできる。
また、基体11には、本実施形態で示した親水性の不織布以外にも、親水性のポリエステルとポリプロピレンとの複合不織布、ポリオレフィン系繊維で構成された親水性の不織布(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、アクリル系繊維で構成された親水性の不織布(ポリアクリロニトリルなど)、ポリアミド系繊維で構成された親水性の不織布(ナイロン6、ナイロン66等)、合成繊維で構成された親水性の不織布(ポリビニルアルコール繊維、合成パルプ)、ポリエステル系繊維で構成された親水性の不織布(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、半合成繊維で構成された親水性不織布(レーヨン等)、天然繊維で構成された親水性の不織布(パルプ繊維)、及び、これらの混合物により構成された親水性の不織布を使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1,1A マスク
2 マスク本体
3 固定部材
4 孔
5 折り畳み部
6 山部
7 形状保持具
10 フィルターシート
11 基体
12,12A,12B 銀薄膜
20 内面シート
21 微粒子捕集用フィルターシート
22 外面シート
A1 上方領域
A2 下方領域
【要約】 (修正有)
【課題】抗菌性・抗ウイルス性を有するフィルターシート、及びそのフィルターシートを備えるマスクを提供する。
【解決手段】マスクは、着用者の顔面の少なくとも鼻及び口を被覆するマスク本体2を備え、マスク本体2は、内面シート20と、微粒子捕集用フィルターシート21と、不織布である基体11に銀薄膜12が0.1nmから50nm積層されたフィルターシート10と、外面シート22とが、着用者側から順次積層され、銀薄膜12が、少なくともフィルターシート10の外面シート22側に積層されている構成をとる。
【選択図】
図3