(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1のラテックススポンジの製造方法について説明する。
【0019】
本発明のラテックススポンジは発泡用ラテックス組成物から発泡成形して製造される。
【0020】
発泡用ラテックス組成物は、ラテックス又はエマルションに加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、起泡剤、気泡安定剤、酸化亜鉛、ゲル化剤、紫外線吸収剤、軟化剤、充填剤、色材、などの配合剤を配合したものである。
【0021】
ラテックスとしては、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスが使用できる。
天然ゴムラテックスとしては、ヘベア種などのゴムの木から採取した樹液を加工した天然ゴムラテックスが使用でき、具体例としては、ハイアンモニアタイプ、ローアンモニアタイプ、アルカリ添加タイプの天然ゴムラテックスが挙げられる。天然ゴムラテックスは、pHを9から12に調整して使用することが好ましい。また、天然ゴムラテックスの固形分濃度は、55〜65%を使用することができる。
【0022】
合成ゴムラテックスとしては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、イソプレンゴムなどのラテックスが使用でき、これらにアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどの重合性モノマーを共重合させたゴムラテックスも使用することができる。合成ゴムラテックスはpHを9から12に調整して使用することが好ましい。また、合成ゴムラテックスの固形分濃度は、45〜70%を使用することができ、好ましくは60%以上に高めて使用する。
【0023】
エマルションとしては、合成樹脂のエマルションが使用でき、アクリルエマルション、ウレタンエマルションなどの各種エマルションでイオン性がアニオン性のエマルションが使用できる。また、エマルションの固形分濃度は、45〜70%を使用することができ、好ましくは60%以上に高めて使用する。
【0024】
ラテックス又はエマルションは各種を相互に組み合わせて使用することができる。この例としては、天然ゴムラテックスとSBRラテックス、天然ゴムラテックスとNBRラテックス、天然ゴムラテックスとウレタンエマルション、SBRラテックスとNBRラテックスなどを挙げることができる。
【0025】
加硫剤及び加硫促進剤は、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスに配合し本発明のラテックススポンジにゴム弾性を付与する。加硫剤としては、イオウ、サルファドナー、酸化亜鉛などが挙げられる。これらはゴム分子又はゴム粒子を架橋しゴム弾性を付与する。加硫促進剤は加硫剤を活性化させ、短時間、低温度にて架橋しゴム弾性を付与することができる。加硫促進剤としては、MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)などのチアゾール系加硫促進剤、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)、BZ(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)などのジチオカルバミン酸系加硫促進剤、EUR(N、N‘−ジエチルチオ尿素)などのチオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、キサントゲン酸系加硫促進剤などが使用でき、これらを組み合わせて使用することができる。
【0026】
加硫剤、加硫促進剤の使用量は、使用するラテックスにより多少の相違はあるが、加硫剤はラテックス又はエマルション100重量部当たり0.5重量部から3重量部使用することができ、加硫促進剤は0.7重量部から4重量部使用することができる。
【0027】
酸化防止剤は、本発明のラテックススポンジの酸化劣化を防ぐもので、フェノール系酸化防止剤が使用できる。フェノール系酸化防止剤の例としては、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、スミライザーBBM(登録商標)などのビスフェノール系酸化防止剤、イルガノックス1010(登録商標)などのポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。使用量は、ラテックス又はエマルション100重量部あたり0.5から2重量部使用することができる。
【0028】
起泡剤は、本発明の発泡用ラテックス組成物を空気などの気体と混合し起泡させるもので、界面活性剤が使用できる。界面活性剤は、後述するゲル化剤の作用でラテックス又はエマルションがゲル化するのを阻害しないものが使用され、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が使用することができる。これらの例として、リシノール酸又はオレイン酸、ヒマシ油脂肪酸、ラウリン酸等の、カリウム塩又はナトリウム塩、アンモニウム塩の脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤が挙げられ、特にオレイン酸カリウムが好ましく使用される。起泡剤の使用量は、ラテックス又はエマルション100重量部あたり0.5重量部から5.0重量部使用することができる。なお、ラテックス及びエマルションにはラテックス粒子、エマルジョン粒子の安定化の為に界面活性剤が使用されている場合が多くあり、これが起泡剤を兼ねることができる。この場合、起泡剤を配合しないこともあり得る。
【0029】
気泡安定剤は、起泡させたラテックス組成物にゲル化剤を作用させ固化させる際に泡を安定化し泡の崩壊を防ぐ作用をする。本発明の気泡安定剤は、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を使用することができる。ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物は、ジシアンジアミドとジエチレントリアミンを塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などの酸と共に加熱して得られる第二級、第三級アミン化合物(構造式上の窒素分43.8%)である。
【0030】
構造式は下記の化学式(1)で示される。この重縮合物は重合時に使用した酸が含まれた水溶液として得られる。その後、希釈するなどして規定の濃度に調整する、アルカリにてpHを調整するなどして供給されている。この為、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物として販売されているものも、正確にはジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物と酸の混合物である。このため以下、酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物とする。
【0032】
上記化学式は骨格構造式であり、n及びmはそれぞれ1以上の数値である。
【0033】
本発明の気泡安定剤の原料となる酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物の具体例としては、ユニセンスシリーズKHP10L、KHP10LU、KHP20LU(センカ株式会社、商標名)などを挙げることができる。
【0034】
本発明の気泡安定剤は、重縮合物に含まれる酸成分を除去したことを特徴としている。酸成分は、塩酸、酢酸であれば加熱して蒸発させることで除去することができる。酸成分が硫酸であれば、硫酸カルシウムとして沈殿させ除去することができる。
【0035】
酸成分が除去されることで、気泡安定剤のpHは上昇し、pHが5〜7程度であったものが、7以上とすることができ、好ましくは9以上とすることができ、より好ましくは10以上とすることができる。上限は14であるが、好ましくは13とすることができる。
【0036】
また、このように製造された気泡安定剤は酸成分を2000mg/L 以下とすることができ、好ましくは1000mg/L以下、より好ましくは500mg/L以下とすることができる。
【0037】
一般に、発泡用ラテックス組成物に低pH液や高イオン濃度液を添加すると凝集ショックが起き、ラテックス・エマルジョンが部分的に破壊され凝固物が発生する。発生した凝固物は、製造したラテックススポンジにブツと呼ばれる未発泡の樹脂塊となって現れ成形物の歩留まりを落とすことになる。肌に直接接する化粧用スポンジでは、ブツは化粧料の塗布ムラになるのみならず、肌を痛めかねなく重大な欠点となる。一方、上記のように調整した酸成分を除去したジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物は、pHが高く且つイオン濃度が低い為、ラテックス組成物に添加する時にラテックス組成物が凝集ショックを起こすことなく安全に添加することができる。
【0038】
また、酸成分を除去したジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物は、起泡したラテックス組成物をゲル化する際に、泡の崩壊がなく、収縮が少なく且つピンホールが少ない特徴がある。この為、従来の気泡安定剤より細かいセルの発泡体を製造することが容易となり、歩留まりの良い製造を行うことができる。この理由については、重縮合物の窒素原子カチオンに対イオン(酸成分)が無い為、泡を形成している気泡剤のアニオン部分に容易に配位することができ、泡表面を重縮合物で覆うことができる。ゲル化時には、アニオン界面活性剤の活性が失われラテックス粒子が凝集するが、その瞬間泡は崩壊する。この時、泡を覆っている重縮合物が泡の形状保ち、泡が破壊するのを防ぐものと考えている。
【0039】
本発明の気泡安定剤は、ラテックス又はエマルションに配合することができるが、配合する気泡安定剤は水溶液として配合することができる。この場合、気泡安定剤水溶液濃度は、5%以上とすることができ、好ましくは10%以上とすることができる。上限は50%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。濃度がこれより低い場合は、配合した発泡原料の固形分濃度が下がり泡の成型性が低下する。また濃度がこれより高い場合は、添加時にラテックス、エマルションが凝集ショックを起こす可能性が高くなる。
【0040】
本発明の気泡安定剤の使用量としては、ラテックス又はエマルション100重量部当たり気泡安定剤の固形分として0.1重量部から5重量部、好ましくは0.25重量部から2重量部、さらに好ましくは0.5重量部から1重量部使用することができる。ラテックスに添加する気泡安定剤の濃度としては、10%〜50%が水溶液として使用できる。このような濃度とすることで、配合された発泡用ラテックス組成物の固形分濃度を高く保つ事ができ、発泡成形中の収縮を抑える効果がある。
【0041】
本発明の気泡安定剤は、従来から知られている気泡安定剤を併用して使用することができる。このような気泡安定剤としては、トリメンベース、カチオン性界面活性剤、アルキル4級アンモニウム塩化合物、カチオン性ポリマー、両性界面活性剤、ベタイン界面活性剤などが挙げられる。併用する量としては、本発明の気泡安定剤1重量部あたり0.1から1重量部、好ましくは0.1から0.5重量部使用することができる。
【0042】
酸化亜鉛は、後述するゲル化剤と組み合わされ発泡用ラテックス組成物をゲル化することを助ける為に使用される。また、加硫促進剤と組み合わさり加硫を促進する。また、前述の加硫剤として架橋することができるラテックスもある。酸化亜鉛は、フランス法、などの製法で製造され、JIS1号、2号などゴム配合用の酸化亜鉛が使用できる。使用量としては、ラテックス又はエマルション100重量部当たり0.5重量部から5重量部、好ましくは1重量部から3重量部使用することができる。酸化亜鉛を加硫剤として使用する場合は、これに加えて1重量部から10重量部使用することができる。
【0043】
ゲル化剤は、発泡したラテックス組成物を固化するもので、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウムなどのケイフッ化塩、過酸化物などを使用することができる。これらの物質は、溶解又は分解して酸を発生することにより、ラテックス組成物のpHを下げ、ラテックス又はエマルションをゲル化させる。使用量としては、ラテックス又はエマルジョン100重量部当たり固形分として0.5重量部から5重量部、好ましくは1重量部から4重量部使用することができる。
【0044】
発泡用ラテックス組成物はこれらの薬剤を配合して製造されるが、これらの他に紫外線吸収剤、軟化剤、充填剤、色材、抗菌剤、抗カビ剤、などの配合剤を適宜使用することができる。しかしながら、これらの配合剤のうちには、発泡成形に悪影響を及ぼすものがある。
【0045】
軟化剤は、ラテックススポンジのモジュラスを下げ、柔軟性と弾性を付与するもので、常温で液状の炭化水素、エステル化合物及び油脂が使用できる。これらの例としては、パラフィン系炭化水素化合物、スクアラン、スクアレン、可塑剤、植物油、動物油などを挙げられる。軟化剤は一般的には発泡成形に悪影響があり、ピンホールと呼ばれる数個のセルが集まった巨大セルを出現させる。ピンホールは化粧用のスポンジとして使用した場合、化粧料の筋引きとなるので製品として使用することができなく歩留まりを落とすことになる。これに対し、本発明の気泡安定剤を使用することによりピンホールの発生を抑えて製造することができる。
【0046】
ピンホールはこれら軟化剤使用することにより、気泡膜に微細な油滴が存在し、ゲル化時に気泡が破壊しやすくしていると考えられている。本発明の気泡安定剤を使用することで気泡構造を維持してゲル化することでピンホールの発生を極少なく抑えられるものと考えている。軟化剤は、ラテックス又はエマルション100重量部あたり0.2重量部から10重量部使用することができ、使用量が1重量部を超える場合は、本発明の気泡安定剤を0.5重量部から2重量部使用することにより軟化剤の使用により増加するピンホールの発生率を低く抑えることができる。
【0047】
充填剤は、ラテックススポンジに硬度を与えることが出来るもので、無機、有機の紛体を使用することが出来る。充填剤の例としては、無機充填剤として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、カオリン、マイカ、タルク、パイロフィライト、ワラストナイト、セリサイト、シリカ、珪藻土、ガラス繊維などを挙げることができる。有機充填剤としては、樹脂パウダー、樹脂球、セルロースフロック、澱粉などを挙げることができる。充填剤は一般的には発泡成形に悪影響があり、ゲル化時に気泡が崩壊する現象が発生する。特に充填剤を10重量部以上使用する場合には崩壊現象が顕著になるが、本発明の気泡安定剤を使用することにより崩壊現象を防止することができる。
【0048】
崩壊現象は、これら充填剤を使用することにより、気泡膜に充填剤粒子が貫通し、ゲル化時に気泡が破壊すると考えられている。本発明の気泡安定剤を使用することで気泡構造を維持してゲル化することで崩壊を抑えられるものと考えている。
【0049】
充填剤はラテックス又はエマルジョン100重量部あたり1重量部から100重量部使用することができ、使用量が10重量部を超える場合は、本発明の気泡安定剤を1重量部から4重量部使用することにより充填剤の使用により発生する泡の崩壊を抑えることができる。
【0050】
この他、前述の配合剤のなかにも一般的には発泡成形に悪影響をおよぼす材料があるが、本発明の気泡安定剤を使用することにより悪影響を少なく抑えて製造することが出来る。
【0051】
これらの配合剤をラテックス及びエマルションに添加する配合方法としては、紛体であれば水分散体とし添加することが出来る。液体の場合、水溶性であれば水溶液として添加することができ、濃度は20%以下とすることが好ましい。非水溶性であれば、そのまま添加することができるものもあるが、50%程度のエマルジョンとして添加することが好ましい。
【0052】
配合剤のなかにはラテックス及びエマルションに添加するとラテックス及びエマルションを不安定にするものがある。このような配合剤は発泡成形の直前又は発泡成形中に添加することができる。この例としては、酸化亜鉛、ゲル化剤が挙げられる。各種の配合剤を添加したラテックス及びエマルションは発泡用ラテックス組成物となり、発泡成形される。
【0053】
発泡成形は、発泡用ラテックス組成物に空気などの気体を混合し起泡させ、さらにゲル化剤を作用させ気泡した状態を維持したままゲル化することでスポンジを成型する。起泡したラテックス組成物は金型に注型し、その後ゲル化することにより形状を賦形することできる。この後必要に応じて加硫を行いゴム弾性を付与する。
【0054】
気体の混合には、バッチ式ではワイヤーホイップ、ホバートミキサーなどを使用することができる。連続式では、ピンミキサー、オークスミキサーなどを使用することができる。
【0055】
加硫は、ゲル化したラテックス組成物に熱を掛けることにより行われ、ラテックススポンジに弾性を与える。加硫は蒸気、熱、高周波などで行い、95〜150℃で30分〜3時間行うことができる。
【0056】
出来上がったラテックススポンジは必要に応じて洗浄、乾燥を行い、必要な大きさに切り出し、実際に使用されるスポンジとすることができる。
【0057】
気泡安定剤の製造
(脱硫工程)下記の化学式(2)で示す、対イオンが硫酸イオンである硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物、ユニセンスKHP10LU(センカ株式会社、商標名)、固形分70%、硫酸イオン濃度20%の10kgを、ステンレス製ジャーに計量していれ、さらに水2.0kgを加えて希釈した。この希釈液のpHは6.9であった。
【0059】
上記の化学式は骨格構造式であり、n及びmはそれぞれ1以上の数値である。
【0060】
前記ステンレス製ジャーにプロペラ式撹拌機を装着し、液温を20°Cとして攪拌しつつ消石灰0.15kgを添加した。添加後、1時間攪拌を続けた。その後、濾過器にて濾過し、濾液を回収した。濾液は透明薄黄色で3.02kgを得ることができた。蒸発法により固形分を求めると22%であった。
【0061】
これを水で固形分濃度が20%となるように希釈した。JIS K0102(1998)に準拠して過マンガン酸塩共沈比色法により硫酸イオン濃度を測定すると、2000ppmであった。また、溶液のpHは13.0であった。脱硫前の硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物の硫酸濃度は20%(硫酸イオン濃度19.6%、196、000ppm)であり、効率的に脱硫が行われたことが確認できた。
【0062】
ラテックススポンジの製造
(実施例1)
【0063】
(発泡用組成物の作成)NBRラテックス Nipol LX531B(固形分66% 日本ゼオン株式会社、商標名)の固形分100重量部に対し、加硫剤としてイオウ1.0重量部、加硫促進剤MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)0.8重量部、加硫促進剤EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)0.2重量部、酸化防止剤BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)1.0重量部をそれぞれ有効成分が50%となる水分散体として添加した。なお、このラテックスは安定剤としてオレイン酸カリウムが使用されており、追加の起泡剤は配合していない。
【0064】
さらに、気泡安定剤として、上記実施の形態例1にて製造したジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物の20%水溶液を、固形分0.25重量部となるように添加し発泡用ラテックス組成物とした。
【0065】
(発泡成形)連続式撹拌機ピンミキサーにて、発泡用ラテックス組成物と空気と酸化亜鉛及びゲル化剤を混合攪拌し起泡し発泡する。発泡物は、金型へ注型しゲル化剤の働きによりゲル化する。その後加硫を行い、ゴム弾性を持つラテックススポンジとなる。
【0066】
発泡用ラテックス組成物のゴム固形分100重量部あたり酸化亜鉛の水分散体(固形分25%)3重量部とゲル化剤としてケイフッ化ナトリウムの水分散体(固形分20%)3重量部を使用した。空気は発泡物の重量が200g/Lとなるよう調整した。金型は直径約60mmの円柱状金型を使用した。金型へ注入後、120秒後に流動性が無くなり個体状態となった。
【0067】
この時間をゲル化時間とした。ゲル化後、蒸気により100°Cで60分間加硫を行った。その後、金型からスポンジを取り出し水洗、乾燥し、厚み8mm、直径60mmに切り出した。
【0068】
(比較例1)
実施例1の発泡用組成物の作成において、気泡安定剤をジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物に替えてトリメンベース(米国アディバント社、商標名)を使用した。NBRラテックスの固形分100重量部に対してトリメンベースの20%水溶液を固形分0.25重量部添加した。他は実施例1と同様である。また、発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0069】
(比較例2)
実施例1の発泡用組成物の作成において、気泡安定剤をジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物に替えてジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物・硫酸配位物を使用した。NBRラテックスの固形分100重量部に対し硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物ユニセンスKHP10LUの20%水溶液を固形分0.25重量部添加した。他は実施例1と同様である。また、発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0070】
(実施例2)
実施例1の発泡用組成物の作成において、配合剤に加えて軟化剤としてスクアラン(C
30H
62、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサン)を使用した。NBRラテックスの固形分100重量部に対しスクアラン1重量部を添加した。気泡安定剤は、実施例1のジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を0.5重量部とし、他は実施例1と同様である。発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0071】
(比較例3、4)
実施例2の発泡用組成物の作成において、気泡安定剤をジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物に替えてトリメンベースを使用したものを比較例3とし、硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を使用したものを比較例4とした。
【0072】
比較例3はNBRラテックスの固形分100重量部に対し気泡安定剤としてトリメンベースを0.5重量部添加し、他は実施例1と同様に作製した。発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0073】
比較例4はNBRラテックスの固形分100重量部に対し気泡安定剤として硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物ユニセンスKHP10LUを0.5重量部添加し、他は実施例1と同様に作成した。発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0074】
(実施例3)
実施例1の発泡組成物の作成において、配合剤に加えて充填剤として水酸化アルミニウムを使用した。NBRラテックスの固形分100重量部に対して水酸化アルミニウム、ハイジライトH−32(昭和電工株式会社、商標名)10重量部を添加した。気泡安定剤は、実施例1のジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を1.0重量部とし、他は実施例1と同様である。発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0075】
(比較例5、6)
実施例3の発泡用組成物の作成において、気泡安定剤をジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物に替えてトリメンベースを使用したものを比較例5とし、硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を使用したものを比較例6とした。
【0076】
比較例5はNBRラテックスの固形分100重量部に対して気泡安定剤としてトリメンベースを1.0重量部添加し、他は実施例1と同様に作成した。発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0077】
比較例6は、NBRラテックスの固形分100重量部に対して気泡安定剤として硫酸・ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物ユニセンスKHP10LUを1.0重量部添加し、他は実施例1と同様に作成した。発泡成形は実施例1と同様にしてスポンジを製造した。
【0078】
(製造されたスポンジの評価及び条件)
セル
スポンジのセル(気泡)の細かさと均一性
ゲル化時間が長いほどセルは合一し大きくなるため、同一のゲル化時間で比較する。以下のように評価した。
◎:セルが小さく均一、〇:粗い/細かいセルが見られる。△:部分的に疎なセルが見られる。
【0079】
平均気泡径
スポンジ表面の拡大写真を撮影し、対角線が通る気泡の直径を測定し平均する。
【0080】
見かけ密度
直方体を切り出し、重量を見かけの体積で割って求める。
強度、伸び
JISK6251に従って、ダンベル状1号形にて引張り強さ、破断時伸び、及び伸び100%時の引張り応力を測定した。
【0081】
硬度
アスカーF型硬度計(高分子計器株式会社)の値
不良率
ピンホール
スポンジセルが数個連結した巨大セルで、直径が0.1mm以上のものをピンホールとした。直径60mmのスポンジの500個の両面を肉眼で観察し、ピンホールの個数を数えた。スポンジ個数で除して製造上の不良率とした。
【0082】
収縮
発泡成形中に収縮が起こり、金型から引けて表面が凹状になる。極僅かであれば表面を削る製品には使用可能である。金型から取り出したスポンジ素材にて評価した。収縮部分の全長に対する割合を測定した。
【0083】
下記の表(1)に、上記実施例1〜3及び比較例1〜6の結果を示す。
【0084】
実施例1の気泡安定剤に対アニオンを持たないジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を使用したスポンジは、セルは気泡径100μmと小さく微細であり、均一性も良好であった。ピンポールは非常に少なく、収縮は全く見られなかった。歩留まりが良好であった。
【0085】
一方、気泡安定剤にトリメンベースを用いた比較例1では、セルは気泡径110μmと小さく、細かであり、均一性も良好であった。しかし、ピンホールの発生が少し見られ歩留まりが悪化している。また、アニオンを持つ硫酸・シアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を用いた比較例2では、セル気泡径120μmと小さく細かであり、均一性も良好であった。しかしながら、ピンホールの発生が少し見られ歩留まりが悪化している。
【0086】
また、実施例2の軟化剤を使用したスポンジの場合でも対アニオンを持たないジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を使用したスポンジは、セル気泡径110μmと小さく細かく、均一性も良好であった。ピンホールは少なく、収縮は全く見られなく歩留まりが良好であった。
【0087】
これに対し、気泡安定剤にトリメンベースを用いた比較例3では、セルは気泡径120μmとやや粗くなっていて均一性も十分ではなかった。また、ピンホール発生が多く見られ、収縮も見られ歩留まりが悪化している。
【0088】
また、対アニオンを持つ硫酸・シアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を用いた比較例4では、セルは気泡径130μmとさらに粗くなっていて均一性も十分ではなかった。また、ピンホールの発生が見られ、収縮も見られ歩留まりが悪化している。
【0089】
実施例3の充填剤を使用したスポンジの場合でも対アニオンを持たないジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を使用したスポンジは、セルは気泡径90μmと微細で均一であった。ピンホールはたいへん少なく、収縮は全く見られなく、歩留まりが良好であった。
【0090】
これに対し、気泡安定剤にトリメンベースを用いた比較例5では、セルは気泡径110μmとやや粗くなっていたが、均一であった。また、ピンホールの発生が多く見られ、収縮も多く見られ、歩留まりが悪化している。
【0091】
また、対アニオンを持つ硫酸・シアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を用いた比較例6では、セル気泡径120μmと粗く、均一性が悪化していた。ピンホールの発生は少ないが収縮が多く見られ歩留まりが悪化している。
【0092】
化粧用スポンジの評価
実施例1〜3及び比較例1〜6で作成したスポンジを8mm厚にスライスし、直径60mmの円形に打ち抜いた。この円周端部に研磨加工を施し、端部をアール状に加工し、化粧用のスポンジに加工した。これを使用し、実際に化粧を行い使用感、塗布性を評価した。評価は女性5人が行い、市販のパウダーファンデーションを使用した。
【0093】
使用感については肌当たり、肌触り、しっとり感を確認した。これらを基準に良いとした人数により以下の様に評価し、表1に記載した。
◎:5人、〇:3〜4人、△:2〜3人、×:0〜1人
塗布性は、ファンデーションの取れ具合、肌への伸び具合、カバー力、ムラや筋引きにならないかを確認した。これらを基準に良いとした人数により使用感と同様に評価し、表1に記載した。
【0095】
本発明の製造方法により製造されたラテックススポンジは、均一できめ細かなセル構造を有しており、ワイピング材、各種ロール、洗い具、塗布具、吸着剤、クッション、マットレスなどに使用することができ、また、肌当たりが非常に良いことから直接肌に触れる用途に最適であり、化粧用スポンジ、アイシャドー用スポンジ、汚れ落とし用スポンジ等の使用に最適である。
【0096】
また、本発明の製造方法に使用する気泡安定剤は、イオン性がアニオン性の各種の分散体から発泡体、成形体を成型する際のゲル化時の安定剤として使用することができる。
【0097】
以上説明した本発明のラテックススポンジの製造方法は、ラテックス又はエマルジョンに配合する気泡安定剤にジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を用いることを特徴とするが、ラテックス又はエマルションに配合する気泡安定剤をpHが7以上14未満の水溶液として配合することを要旨とすることもできる。
【0098】
また、ラテックス又はエマルションに配合する気泡安定剤を、濃度5%以上50%以下の水溶液として配合することを要旨とすることもできる。
【0099】
またさらに、ラテックス又はエマルションに配合する気泡安定剤の酸成分が2000mg/L以下の水溶液として配合することを要旨とすることもできる。
【課題】ピンホールの少ない、収縮による変形のない、歩留まりの良い、すなわち、品質の良いラテックススポンジの製造方法及び当該製造方法によるラテックススポンジを提供する。
【解決手段】気泡安定剤に、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物を用いたラテックススポンジの製造方法とした。また、この場合、上記気泡安定剤をpHが7以上14未満の水溶液として配合することもある。また、上記気泡安定剤を、アニオン成分を5%以上50%以下の水溶液として配合することもある。