(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803149
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車の軸受温度検出装置
(51)【国際特許分類】
B61K 9/04 20060101AFI20201214BHJP
B61F 15/20 20060101ALI20201214BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20201214BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B61K9/04
B61F15/20
F16C41/00
F16C19/52
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-88906(P2016-88906)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-197001(P2017-197001A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴也
(72)【発明者】
【氏名】多賀 之高
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 史一
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−234102(JP,A)
【文献】
特開2005−17147(JP,A)
【文献】
特開2003−56557(JP,A)
【文献】
特開2013−11312(JP,A)
【文献】
特開2009−138824(JP,A)
【文献】
実開平8−239(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 9/04,
B61F 15/20,
F16C 19/52,41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸を支持する軸受が収容される軸箱の開口を通して前記軸受の外輪の温度を検出する温度センサユニットと、
前記温度センサユニットが取り付けられる基板部を有し、前記軸箱に外側から着脱可能に固定される温度センサユニット支持座と、
前記温度センサユニットと前記温度センサユニット支持座との間に配置され、前記温度センサユニットを前記外輪に向けて付勢する弾性体と、を備える、鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項2】
前記温度センサユニットは、検出した温度情報を無線信号により送信する無線送信部を有し、
前記基板部には、挿通孔が形成され、
前記温度センサユニットは、前記挿通孔を挿通し、前記温度センサユニット支持座の外側に露出している、請求項1に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項3】
前記温度センサユニット支持座は、前記基板部から前記軸箱側に向けて突出して、前記温度センサユニットと隙間をあけた状態で前記温度センサユニットを覆う側板部を有する、請求項1又は2に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項4】
前記軸箱の一部を構成し、前記外輪を下方から覆う軸箱下部を更に備え、
前記軸箱下部のうち前記軸受と隙間をあけて対向する部分に、前記開口が形成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項5】
前記軸箱下部は、前記開口の車幅方向両側から上方に突出し、前記外輪を支持する外輪支持部を更に有する、請求項4に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項6】
前記軸箱下部は、下方に突出して、前記温度センサユニットと隙間をあけた状態で前記温度センサユニットに対向する側壁部を更に有し、
前記温度センサユニット支持座は、前記側壁部に着脱可能に固定されている、請求項4又は5に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項7】
前記軸箱下部は、下方に突出した脚部を更に有し、
前記温度センサユニットは、前記温度センサユニット支持座よりも下方に突出し、
前記脚部の下端は、前記温度センサユニットの下端よりも下方に位置する、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【請求項8】
前記軸箱下部は、前記外輪を上方から覆う軸箱本体に対して着脱可能に固定される輪軸支えである、請求項4乃至7のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車の軸受温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用台車の軸受温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車では、車軸を支持する軸受が収容される軸箱に温度センサを設け、その温度センサにより軸受の外輪の温度を検出して軸受の異常昇温を検知する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−234102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、軸箱に嵌合された軸受の外輪は、軸箱に対して近接又は離間する方向に僅かに変位し得るため、台車の振動等の影響によって、軸受の外輪に対する温度センサの接触が不安定となり、正確な温度検出が行えない可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、鉄道車両用台車の軸箱に収容された軸受の外輪の温度を正確に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鉄道車両用台車の軸受温度検出装置は、車軸を支持する軸受が収容される軸箱の開口を通して前記軸受の外輪の温度を検出する温度センサユニットと、前記温度センサユニットを前記外輪に向けて付勢する弾性体と、前記弾性体を介して前記温度センサユニットが取り付けられる基板部を有し、前記軸箱に外側から着脱可能に固定される温度センサユニット支持座と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、温度センサユニットが軸受の外輪を押圧する向きに弾性体によって付勢されるので、台車に振動等が生じても、温度センサユニットは外輪の温度を安定して正確に検出できる。しかも、温度センサユニットと弾性体と温度センサユニット支持座とをセットで軸箱に対して着脱できるため、軸箱を分解することなく温度センサユニット等のメンテナンスを行え、作業性も良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉄道車両用台車の軸箱に収容された軸受の外輪の温度を正確に検出でき、メンテナンス作業性も良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る鉄道車両の台車の側面図である。
【
図2】
図1に示す台車の要部を一部断面化した側面図である。
【
図3】
図2に示す温度センサユニットの側面図である。
【
図4】
図2に示す輪軸支えの斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図2に示す温度センサユニット支持座の斜め上方から見た斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る台車の要部を一部断面化した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、鉄道車両が走行する方向であって車体が延びる方向を車両長手方向とし、それに直交する横方向を車幅方向として定義する。車両長手方向は前後方向とも称し、車幅方向は左右方向とも称しえる。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両の台車1の側面図である。
図1に示すように、鉄道車両の台車1は、空気バネ2を介して車体50を支持する台車枠3を備える。台車枠3は、車幅方向両側において車両長手方向に延びた一対の側梁4と、一対の側梁4を互いに連結して車幅方向に延びた横梁(図示せず)とを有し、平面視でH形状を呈する。台車枠3の車両長手方向の両側には、車幅方向に沿って延びた車軸6が配置されている。車軸6の車幅方向両側の部分には、車輪7が夫々固定されている。車軸6の車幅方向の両端部には、車輪7よりも車幅方向外側にて車軸6を回転自在に支持する軸受8が設けられている。軸受8は、内輪(図示せず)と、外輪8a(
図2参照)と、内輪と外輪8aとの間に挟まれた転動体(図示せず)とを有する。軸受8は、軸箱11に収容されている。
【0012】
軸箱11の軸箱本体16と、軸梁12とは一体化されている。軸梁12は、台車枠3に連結されている。軸梁12の先端部は、ゴムブッシュ13等を介して台車枠3に弾性的に連結されている。側梁4の車両長手方向の端部4aと軸箱11との間には、鉛直方向に伸縮するコイルバネ14が介設されている。軸箱11の下部には、温度センサユニット20が取り付けられている。
【0013】
図2は、
図1に示す台車1の要部を一部断面化した側面図である。
図3は、
図2に示す温度センサユニット20の側面図である。
図2に示すように、軸箱11は、軸受8の外輪8aの外周面の上領域を覆い、台車枠3からの荷重を支持する軸箱本体16と、軸受8の外輪8aの外周面の下領域を覆う輪軸支え17とを有する。即ち、輪軸支え17は、軸箱11の一部を構成し、外輪8aを下方から覆う軸箱下部に相当する。輪軸支え17は、軸箱本体16に対してボルトB1により着脱可能に固定されている。
【0014】
温度センサユニット20は、弾性装置21を介して温度センサユニット支持座22に取り付けられている。温度センサユニット支持座22は、輪軸支え17にボルトB2(
図6参照)により着脱可能に固定されている。輪軸支え17は、軸受8と隙間をあけて下方から対向するカバー部17aと、カバー部17aに形成された開口17bとを有する。温度センサユニット20は、輪軸支え17のカバー部17aに形成された開口17bを下方から挿通している。
【0015】
図2及び3に示すように、温度センサユニット20は、ハウジング31と、熱伝導シート32と、温度センサ33と、センサ基板34と、無線通信ボード35と、電池36と、断熱材37とを備える。温度センサユニット20は、温度検出機能と、無線通信機能と、電源機能とを有する。ハウジング31は、熱伝導シート32と、温度センサ33と、センサ基板34と、無線通信ボード35と、電池36と、断熱材37とを収容するケースである。
【0016】
ハウジング31は、接触部材38と、熱伝導シート39と、ベースプレート40と、カバー41とを有する。接触部材38及びベースプレート40は、熱伝導性を有する金属からなり、例えば、アルミニウム合金からなる。熱伝導シート39は、弾性及び熱伝導性を有する材料からなり、例えば、熱伝導性シリコーンゴムからなる。カバー41は、非導電性を有する樹脂からなり、例えば、ガラス繊維強化樹脂からなる。
【0017】
接触部材38は、軸受8の外輪8aの外周面に面接触する円弧状の受熱面38c(上面)が形成された受熱部38aと、受熱部38aから側方に突出した取付部38bとを有する。熱伝導シート39は、接触部材38とベースプレート40とによって圧縮状態で挟まれる。
【0018】
ベースプレート40は、本体部40aと、本体部40aの周囲に設けられたカバー取付部40bと、カバー取付部40bから側方に突出した取付部40cとを有する。本体部40aは、熱伝導シート32と、温度センサ33と、センサ基板34と、無線通信ボード35と、電池36と、断熱材37とを保持する。接触部材38及びベースプレート40の取付部38b,40cは、弾性装置21を介して輪軸支え17に取り付けられる。
【0019】
カバー41は、断面凹形状の収容部41aと、収容部41aから側方に突出するフランジ部41bとを有する。収容部41aは、有底円筒状である。カバー41は、ベースプレート40のカバー取付部40bにネジ(図示せず)で取り付けられる。カバー41は、熱伝導シート32と、温度センサ33と、センサ基板34と、無線通信ボード35と、電池36と、断熱材37とを下方から覆う。
【0020】
熱伝導シート32は、絶縁性を有し、ベースプレート40と温度センサ33とによって圧縮状態で挟まれる。即ち、温度センサ33の検出部は、熱伝導シート32に押し付けられる。熱伝導シート32は、絶縁性、弾性及び熱伝導性を有する材料からなり、例えば、熱伝導性シリコーンゴムからなる。軸受8の外輪8aの熱は、接触部材38、熱伝導シート39、ベースプレート40、熱伝導シート32、及び、温度センサ33の順に伝達される。
【0021】
温度センサ33は、センサ基板34の上面に搭載される。センサ基板34は、温度センサ33で検出された外輪8aの温度情報をアナログ温度信号として後述する変換基板42に出力するセンサ回路を有する。無線通信ボード35は、変換基板42と、無線通信モジュール43(無線送信部)とを有する。変換基板42は、温度センサ33からのアナログ温度信号をデジタル温度信号に変換する変換回路を有する。変換基板42とセンサ基板34とは鉛直方向に延びるコネクタ47を介して接続される。無線通信モジュール43は、変換基板42に搭載され、変換基板42からのデジタル温度信号を無線信号として温度センサユニット20の外部(例えば、鉄道車両の無線受信装置)に無線送信する。
【0022】
電池36は、温度センサ33、センサ基板34及び無線通信ボード35に供給する電力を蓄える。無線通信ボード35の上面には、正極又は負極のいずれか一方である第1電極44と、正極又は負極のいずれか他方である第2電極45とが設けられている。第1電極44は、電池36の一方面の電極に接触し、第2電極45は、電池36の他方面の電極に接触する。第2電極45は、無線通信ボード35から突出する縦板部45aと、縦板部45aから電池36の他方面に沿って突出する横板部45bとを有する。電池36は、第2電極45の横板部45bと第1電極44とによって挟持される。
【0023】
電池36からの電力は、第1電極44及び第2電極45を介して無線通信ボード35に給電され、無線通信ボード35からセンサ基板34及び温度センサ33に給電される。断熱材37は、センサ基板34と電池36との間に介設され、電池36よりも面積が大きい。温度センサユニット20においては、接触部材38、熱伝導シート39、ベースプレート40、熱伝導シート32、温度センサ33、センサ基板34、断熱材37、電池36、及び、無線通信ボード35が、この順に上から下に並んで配置される。
【0024】
図4は、
図2に示す輪軸支え17の斜め上方から見た斜視図である。
図5は、
図2に示す温度センサユニット支持座22の斜め上方から見た斜視図である。
図6は、
図2に示す軸箱11等の底面図である。
図4に示すように、輪軸支え17は、カバー部17aと、開口17bと、一対の固定部17cと、一対の外輪支持部17dと、一対の側壁部17eと、4つの脚部17fとを有する。輪軸支え17は、金属製である。カバー部17aは、軸受8に対して隙間をあけて下方から対向し、側面視で円弧状に形成されている。開口17bは、カバー部17aの車幅方向中央かつ車両長手方向中央に形成され、車幅方向寸法よりも車両長手方向寸法が長い形状を有する。
【0025】
一対の固定部17cは、カバー部17aの車両長手方向両端から鍔状に突出し、ボルト孔17gが形成されている。一対の固定部17cは、ボルト孔17gを挿通するボルトB1により軸箱本体16に着脱可能に固定される。一対の外輪支持部17dは、カバー部17aの車両長手方向中央において開口17bの車幅方向両側から上方に突出している。外輪支持部17dは、通常時には外輪8aとは接触しないが、車軸6,7を持ち上げる際に軸受8の外輪8aを下方から支持する。一対の側壁部17eは、カバー部17aの車幅方向両側の底面から下方に突出する。4つの脚部17fは、一対の側壁部17eの車両長手方向両側の底面からそれぞれ下方に突出する。即ち、脚部17fの下端は、側壁部17eの下端よりも下方に位置する。
【0026】
図5に示すように、温度センサユニット支持座22は、基板部22aと、一対の側板部22bと、一対の固定部22cとを有する。温度センサユニット支持座22は、金属製である。基板部22aは、輪軸支え17のカバー部17aに隙間をあけて下方から対向する。基板部22aには、温度センサユニット20を挿通させる挿通孔22dが形成されている。基板部22aには、挿通孔22dの車両長手方向両側に一対の取付孔22eが形成されている。当該取付孔22eには、後述する弾性装置21を介して温度センサユニット20が取り付けられる。一対の側板部22bは、基板部22aの車両長手方向両側から軸箱11側に向けて突出して、温度センサユニット20を車両長手方向から覆う。
【0027】
図2に示すように、一対の弾性装置21は、受熱面38cを基準として外輪8aの周方向両側に配置されている。弾性装置21は、弾性体21aと、弾性体21aの上面に設けた金属製の上取付具21bと、弾性体21aの下面に設けた金属製の下取付具21cとを有する。上取付具21bと下取付具21cとは、弾性体21aの弾性変形によって互いに鉛直方向及び水平方向に相対変位可能である。
【0028】
上取付具21bは、温度センサユニット20に固定されている。具体的には、上取付具21bは、接触部材38及びベースプレート40の取付部38b,40c(
図3参照)に固定されている。上取付具21bは、上方に突出する上スタッドボルト21dを有し、接触部材38及びベースプレート40の取付部38b,40cが、上スタッドボルト21dにナットで固定されている。下取付具21cは、温度センサユニット支持座22の基板部22aに固定されている。下取付具21cは、下方に突出する下スタッドボルト21eを有し、温度センサユニット支持座22が、下スタッドボルト21eにナットで固定されている。弾性装置21は、弾性体21aが鉛直方向に圧縮された状態で設置され、温度センサユニット20が外輪8aに押し付けられるように温度センサユニット20を上方に付勢する。
【0029】
図2及び6に示すように、温度センサユニット20の接触部材38は、輪軸支え17の開口17bを通って軸受8の外輪8aに接触している。温度センサユニット支持座22の一対の側板部22bは、車両長手方向の外側から温度センサユニット20に隙間をあけて対向する。輪軸支え17の一対の側壁部17eは、車幅方向の外側から温度センサユニット20に隙間をあけて対向する。即ち、温度センサユニット20は、温度センサユニット支持座22の一対の側板部22bと輪軸支え17の一対の側壁部17eとによって囲まれている。温度センサユニット支持座22の固定部22cは、輪軸支え17の側壁部17eにボルトB2により着脱可能に固定されている。なお、温度センサユニット支持座22を輪軸支え17に固定するボルトB2は、輪軸支え17を軸箱本体16に固定するボルトB1よりも小さい。
【0030】
温度センサユニット20は、温度センサユニット支持座22の挿通孔22dを通って温度センサユニット支持座22よりも下方に突出し、温度センサユニット支持座22の外側に露出している。これにより、温度センサユニット20の無線通信モジュール43は、温度センサユニット支持座22の挿通孔22dを挿通することになる。温度センサユニット20の下端は、輪軸支え17の側壁部17eの下端よりも下方に位置するが、輪軸支え17の脚部17fの下端よりも上方に位置する。温度センサユニット20は、弾性体21aが弾性変形することによって、軸受8の回転軸線周りの所定範囲で軸箱11に対して変位可能である。温度センサユニット20が外輪8aに沿って変位したとき、温度センサユニット支持座22の側板部22bが、接触部材38の取付部38bに干渉して当該変位を所定範囲に規制する。以上のようにして、温度センサユニット20、弾性装置21、温度センサユニット支持座22及び輪軸支え17により、軸受温度検出装置10が構成される。
【0031】
以上に説明した構成によれば、温度センサユニット20が軸受8の外輪8aを押圧する向きに弾性体21aによって付勢されるので、台車1に振動等が生じても、温度センサユニット20は外輪8aの温度を安定して正確に検出できる。しかも、温度センサユニット20と弾性体21aと温度センサユニット支持座22とをセットで軸箱11に対して着脱できるため、軸箱11を分解することなく温度センサユニット20等のメンテナンスを行え、作業性も良好に保つことができる。
【0032】
また、温度センサユニット支持座22の基板部22aには、温度センサユニット20の無線通信モジュール43を挿通させる挿通孔22dが形成されているので、無線通信モジュール43の電波が温度センサユニット支持座22に阻害されず、通信安定性に優れている。また、温度センサユニット支持座22の側板部22bが、温度センサユニット20のハウジング31(接触部材38の取付部38b)に車両長手方向の外側から隙間をあけて対向するので、温度センサユニット20の車両長手方向の変位を側板部22bにより規制できる。また、温度センサユニット20に走行風が当たるのを側板部22bが阻止することができ、温度センサユニット20の温度検出精度の低下を防止できる。
【0033】
また、温度センサユニット20が挿通する開口17bは輪軸支え17に形成されているので、軸箱11のうち軸箱本体16は、軸受温度検出装置の搭載されていない台車のものと同じでよく、台車部品を共通化できるとともに、既存台車への軸受温度検出装置の追加搭載も容易に行うことができる。
【0034】
また、輪軸支え17には、開口17bの車幅方向両側に一対の外輪支持部17dが設けられているので、輪軸支え17の車両長手方向中央に開口17bを形成しながらも、車軸6,7を持ち上げる際に適切に軸受8を支持することができる。また、輪軸支え17は、温度センサユニット20に隙間をあけて車幅方向両側から対向する一対の側壁部17eを有し、側壁部17eに温度センサユニット支持座22が固定されるので、温度センサユニット20に走行風が当たることが抑制され、温度センサユニット20の温度検出精度の低下を更に防止できる。また、車輪削正作業のために、持ち上げ装置(図示せず)により脚部17fの下端を押し上げて軸箱11と共に車輪7を持ち上げる際、輪軸支え17の脚部17fの下端が、温度センサユニット20の下端よりも下方に位置するので、温度センサユニット20を取り外す必要もなく、また、持ち上げ装置による温度センサユニット20の損傷も防止できる。
【0035】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る台車の要部を一部断面化した側面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。第1実施形態では、輪軸支え17と軸箱本体16とは、それぞれ別部材としたが、第2実施形態では、それらを一体構造としている。
図7に示すように、第2実施形態の軸箱111は、一体に成形された筒状体であり、軸梁12も軸箱111に一体化されている。軸受温度検出装置110は、温度センサユニット20、弾性装置21、温度センサユニット支持座22及び軸箱111を備える。軸箱111は、軸受8の外輪8aの外周面の上領域を覆う軸箱上部116と、軸受8の外輪8aの外周面の下領域を覆う軸箱下部117とを有する。
【0036】
軸箱下部117は、開口17bと、一対の外輪支持部(
図4の符号17d参照)と、一対の側壁部17eと、4つの脚部17fとを有する。開口17bは、軸箱下部117の車幅方向中央かつ車両長手方向中央に形成されている。一対の外輪支持部(
図4の符号17d参照)は、軸箱下部117の車両長手方向中央において開口17bの車幅方向両側から上方に突出している。一対の側壁部17eは、軸箱下部117の車幅方向両側の底面から下方に突出する。4つの脚部17fは、一対の側壁部17eの車両長手方向両側の底面からそれぞれ下方に突出する。温度センサユニット20の接触部材38は、軸箱下部117の開口17bを通って軸受8の外輪8aに接触している。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0037】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。台車1は、側梁4及びコイルバネ14の代わりに、板バネを用いた構成としてもよい。即ち、前後一対の軸箱が板バネの長手方向両側の端部を夫々支持し、板バネの長手方向の中央部が横梁を支持する構成としてもよい。また、温度センサユニット20の車幅方向両側に側壁部17eを設け、温度センサユニット20の車両長手方向両側に温度センサユニット支持座22の側板部22bを設ける構成の代わりに、温度センサユニット20の車両長手方向両側に側壁部を設け、温度センサユニット20の車幅方向両側に温度センサユニット支持座の側板部を設ける構成としてもよい。温度センサユニット20は、軸受8の真下に配置せずに斜め下方に配置してもよい。また、実施形態において、軸箱支持装置は軸梁式を一例として示したが、この形式に限られるものではなく、種々の軸箱支持装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 台車
6 車軸
8 軸受
8a 外輪
10,110 軸受温度検出装置
11,111 軸箱
17 輪軸支え(軸箱下部)
117 軸箱下部
17a カバー部
17b 開口
17d 外輪支持部
17e 側壁部
17f 脚部
20 温度センサユニット
21a 弾性体
22 温度センサユニット支持座
22a 基板部
22b 側板部
22d 挿通孔
43 無線通信モジュール(無線送信部)