(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制動側摩擦機構は、前記制輪子マウントおよび前記制輪子用ピボットシャフトの一方に取り付けられ、前記制輪子マウントおよび前記制輪子用ピボットシャフトの他方に押し付けられる摩擦部材を備える、請求項8または9に記載のキャリパ装置。
前記制動側摩擦機構は、前記出力部および前記制輪子用ピボットシャフトの一方に取り付けられ、前記出力部および前記制輪子用ピボットシャフトの他方に押し付けられる摩擦部材を備える、請求項8〜11のいずれか一項に記載のキャリパ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄道車両の走行中に発生する振動は、キャリパ装置に伝播する。このため、従来のキャリパ装置では、制動用アームおよび制輪子マウントにも振動が伝達されることにより、制動用アームおよび制輪子マウントのそれぞれが揺動する場合がある。これにより、従来のキャリパ装置が車輪にブレーキ力を付与していない状態では、ディスクロータと制輪子とが離間しているはずであるにもかかわらず、キャリパ装置に伝播した振動により制輪子がディスクロータに繰り返し接触することがある。この接触は騒音の発生や制輪子の欠損を招く。
【0006】
特許文献1のキャリパ装置は、摩擦機構が制輪子マウントの揺動を抑制することによって、制輪子がディスクロータに接触する頻度を低下させる。
本発明の目的は、制輪子と回転体との接触の頻度を低下させる新規な構造を備えるキャリパ装置およびディスクブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、回転体の回転を制動するための制輪子とともに用いられるキャリパ装置を提供する。このキャリパ装置は、駆動機構によって装置本体に対して揺動させられ、前記制輪子を制動位置および非制動位置に移動させる制動用アームと、前記装置本体に対する前記制動用アームの揺動に対する摩擦を増加させる摩擦機構とを備える。
【0008】
このキャリパ装置によれば、摩擦機構によって増加された摩擦によって制動用アームの揺動が最小化または制限され、非制動時に制輪子を非制動位置に保持できる。例えば車両の振動に起因する振動によって、非制動時に制動用アームが揺動すること、ひいては非制動時に制輪子が回転体に接触することが抑制される。
【0009】
(2)前記摩擦機構は、前記装置本体に対する前記制動用アームの揺動を阻害するアーム拘束用摩擦力を発生する摩擦部材を含むことができる。
(3)前記摩擦機構は、前記アーム拘束用摩擦力の大きさを無段階でまたは段階的に調整できるように構成されてよい。
【0010】
(4)前記アーム拘束用摩擦力の大きさを調整すべく、前記摩擦部材の固定位置を調整する固定位置調整手段を有してよい。
(5)いくつかの例では、キャリパ装置は前記制動用アームと前記装置本体とを揺動可能に連結するアーム用ピボットシャフトを更に備え、前記摩擦機構の摩擦部材は、前記アーム用ピボットシャフト、前記装置本体、及び、前記制動用アームの一つに対して滑り接触することによって前記アーム拘束用摩擦力を発生する。
【0011】
(6)いくつかの例では、前記制輪子は、前記回転体を挟み込むための第1および第2の制輪子の一方であり、前記制動用アームは、前記第1および第2の制輪子と接続される第1および第2の制動用アームの一方であり、前記摩擦機構は、前記装置本体に対する前記一方の制御用アームの揺動に対する摩擦のみを増加させる。このキャリパ装置によれば、摩擦機構が一対の制動用アームの揺動を過度に制限することが抑制される。
【0012】
(7)いくつかの例では、前記装置本体に支持され、固定側構造体および可動側構造体を含む駆動機構を更に備え、前記一方の制動用アームは、前記駆動機構の前記固定側構造体に接続され、他方の制動用アームは、前記駆動機構の前記可動側構造体に接続される。このキャリパ装置によれば、摩擦機構が、可動側構造体よりも慣性力が大きい駆動機構の固定側構造体に接続された一方の制動用アームの揺動を制限することで、制動用アームの揺動を効率的に制限できる。
【0013】
(8)いくつかの例では、前記制動用アームは、前記装置本体に支持されるアーム用ピボットシャフトが挿入される挿入部、前記挿入部から延びる入力部、および、前記入力部が延びる方向とは別の方向に前記挿入部から延びる出力部を備え、前記駆動機構は、前記入力部に駆動力を与えるように前記入力部に接続され、前記出力部は、ピボットアクシスを有する制輪子用ピボットシャフトを介して、前記制輪子を取り付けるための制輪子マウントと接続されており、前記摩擦機構は、前記入力部、前記挿入部、前記出力部、前記装置本体、および、前記アーム用ピボットシャフトの少なくとも1つに摩擦力を与える駆動側摩擦機構であり、前記キャリパ装置は、前記駆動側摩擦機構とは異なる制動側摩擦機構であって、前記出力部、前記制輪子用ピボットシャフト、および、前記制輪子マウントの少なくとも1つに摩擦力を与える前記制動側摩擦機構を更に備える。
【0014】
このキャリパ装置によれば、制動側摩擦機構が与える摩擦力により制動用アームと制輪子マウントとの相対移動を制限することに加え、駆動側摩擦機構が与える摩擦力により制動用アームの揺動を制限する。これにより、車両の振動に起因して制動用アームに振動が伝播することにより、制動用アームがアーム用ピボットシャフトの前記ピボットアクシスまわりに揺動すること、および制輪子マウントが制輪子用ピボットシャフトの前記ピボットアクシスまわりに揺動することが抑制される。このため、車両の振動により制輪子がディスクロータに繰り返し接触することが抑制される。したがって、制輪子とディスクロータとが接触する頻度をより低減することができる。
【0015】
(9)いくつかの例では、前記摩擦機構は、前記アーム用ピボットシャフトに対して入力部側に配置される。
摩擦機構がアーム用ピボットシャフトよりも出力部側に配置された参考例では、摩擦機構とディスクロータとの干渉を避けるため、ディスクロータとアーム用ピボットシャフトとの間の距離が、摩擦機構用の配置スペース分だけ余計に必要となる。このため、キャリパ装置が大型化してしまう。
【0016】
対照的に、本開示のキャリパ装置によれば、摩擦機構がディスクロータとアーム用ピボットシャフトとの間に配置されていないため、ディスクロータとアーム用ピボットシャフトとの間の距離の増加が抑制される。したがって、キャリパ装置の大型化を抑制することができる。
【0017】
(10)いくつかの例では、前記摩擦部材は、前記装置本体に取り付けられ、前記制動用アームおよび前記アーム用ピボットシャフトの一方に押し付けられる摩擦面を含む。
このキャリパ装置によれば、摩擦部材がキャリパ装置の構成要素である装置本体に取り付けられるので、摩擦部材の取付のための専用部品を必要とせず、摩擦機構の部品点数を少なくすることができる。
【0018】
(11)いくつかの例では、前記摩擦部材は、前記制動用アームおよび前記アーム用ピボットシャフトの一方に取り付けられ、前記制動用アームおよび前記アーム用ピボットシャフトの他方に押し付けられる摩擦面を含む。
【0019】
このキャリパ装置によれば、摩擦部材がキャリパ装置の構成要素である制動用アームまたはアーム用ピボットシャフトに取り付けられるので、摩擦部材の取付のための専用部品を必要とせず、摩擦機構の部品点数を少なくすることができる。
【0020】
(12)いくつかの例では、前記摩擦部材は、前記制動用アームおよび前記アーム用ピボットシャフトの一方に取り付けられ、前記装置本体に押し付けられる摩擦面を含む。
このキャリパ装置によれば、摩擦部材がキャリパ装置の構成要素である制動用アームまたはアーム用ピボットシャフトに取り付けられるので、摩擦部材の取付のための専用部品を必要とせず、摩擦機構の部品点数を少なくすることができる。
【0021】
(13)いくつかの例では、前記摩擦部材は、前記アーム用ピボットシャフトに押し付けられる摩擦面を含む。
このキャリパ装置によれば、装置本体や制動用アームは摩擦部材と接触するための専用の形状を有する必要がなくなるため、装置本体や制動用アームの形状の複雑化を抑制することができる。
【0022】
(14)いくつかの例では、前記摩擦機構は、前記摩擦部材を前記アーム用ピボットシャフトに向けて押し付ける押付部材を更に備える。
このキャリパ装置によれば、押付部材により摩擦部材がアーム用ピボットシャフトに押し付けられるため、摩擦部材がアーム用ピボットシャフトから離間する頻度が少なくなり、アーム用ピボットシャフトに安定して摩擦力を付与することができる。
【0023】
(15)いくつかの例では、前記摩擦部材及び前記押付部材は、前記装置本体または前記制動用アームに形成された収容部に収容及び支持され、前記摩擦機構は、前記収容部を閉塞するプラグを更に備える。
【0024】
このキャリパ装置によれば、摩擦部材及び押付部材がプラグにより密閉された空間に配置されるため、摩擦部材とこの摩擦部材に接触する部材との間に異物が介在することが抑制され、異物による摩擦力の変動が抑制される。したがって、摩擦機構の摩擦力が安定する。
【0025】
(16)いくつかの例では、前記プラグは、前記押付部材を取り付けるための取付部を備える。
例えば、押付部材として複数枚の皿ばねを積層する場合、作業者が摩擦機構をキャリパ装置に組み付ける際、皿ばねを収容部に挿入した後、プラグを収容部に取り付ける。しかしこの組付方法では、作業者は、プラグで収容部が閉塞されるため、収容部の外部から皿ばねの積層状態を視認しにくく、皿ばねの枚数を確認しにくい。対照的に、本開示のキャリパ装置によれば、プラグの取付部に押付部材を取り付けるため、作業者が取付部に複数枚の皿ばね(押付部材)を取り付けた状態で皿ばねの積層状態を視認しやすい。このため、作業者が皿ばねの枚数を確認しやすい。したがって、皿ばねの枚数が間違った状態で摩擦機構をキャリパ装置に組み付けることが抑制される。
【0026】
(17)いくつかの例では、前記収容部は、前記プラグの挿入方向に、前記プラグと接触する段差部を含む。
このキャリパ装置によれば、収容部の段差部にプラグが接触することにより収容部に対するプラグの位置が決められる。したがって、摩擦機構の組付効率が高くなる。
【0027】
(18)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記制輪子用ピボットシャフトに対して挿入部側に配置される。
このキャリパ装置によれば、制動側摩擦機構が制輪子用ピボットシャフトに対して挿入部側とは反対側に配置される参考例と比較して、制動側摩擦機構がキャリパ装置の内側に配置されやすい。このため、キャリパ装置の大型化が抑制される。
【0028】
(19)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記制輪子マウントおよび前記制輪子用ピボットシャフトの一方に取り付けられ、前記制輪子マウントおよび前記制輪子用ピボットシャフトの他方に押し付けられる摩擦部材を備える。
【0029】
このキャリパ装置によれば、摩擦部材がキャリパ装置の構成要素である制輪子マウントまたは制輪子用ピボットシャフトに取り付けられるので、摩擦部材の取付のための専用部品を必要とせず、制動側摩擦機構の部品点数を少なくすることができる。
【0030】
(20)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記制輪子マウントおよび前記出力部の一方に取り付けられ、前記制輪子マウントおよび前記出力部の他方に押し付けられる摩擦部材を備える。
【0031】
このキャリパ装置によれば、摩擦部材がキャリパ装置の構成要素である制輪子マウントまたは出力部に取り付けられるので、摩擦部材の取付のための専用部品を必要とせず、制動側摩擦機構の部品点数を少なくすることができる。
【0032】
(21)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記出力部および前記制輪子用ピボットシャフトの一方に取り付けられ、前記出力部および前記制輪子用ピボットシャフトの他方に押し付けられる摩擦部材を備える。
【0033】
このキャリパ装置によれば、摩擦部材がキャリパ装置の構成要素である出力部または制輪子用ピボットシャフトに取り付けられるので、摩擦部材の取付のための専用部品を必要とせず、制動側摩擦機構の部品点数を少なくすることができる。
【0034】
(22)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記制輪子用ピボットシャフトに押し付けられる摩擦部材を備える。
このキャリパ装置によれば、制輪子マウントや制動用アームに摩擦部材と接触するための専用の形状を形成する必要がなくなるため、制輪子マウントや制動用アームの形状の複雑化を抑制することができる。
【0035】
(23)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記制動側摩擦機構の前記摩擦部材を前記制輪子用ピボットシャフトに向けて押し付ける押付部材を更に備える。
このキャリパ装置によれば、押付部材により摩擦部材が制輪子用ピボットシャフトに押し付けられるため、摩擦部材が制輪子用ピボットシャフトから離間する頻度が少なくなり、制輪子用ピボットシャフトに安定して摩擦力を付与することができる。
【0036】
(24)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構の前記摩擦部材は、前記制輪子マウントまたは前記制動用アームに形成された収容部に収容及び支持され、前記制動側摩擦機構は、前記収容部を閉塞するプラグを更に備える。
【0037】
このキャリパ装置によれば、摩擦部材が密閉された空間に配置されるため、摩擦部材とこの摩擦部材に接触する部材との間に異物が介在することが抑制され、異物による摩擦力の変動が抑制される。したがって、摩擦機構の摩擦力が安定する。
【0038】
(25)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構は、前記制動側摩擦機構の前記摩擦部材を前記制輪子用ピボットシャフトに向けて押し付ける押付部材を更に備え、前記プラグは、前記制動側摩擦機構の前記押付部材を取り付けるための取付部を備える。
【0039】
例えば、押付部材として複数枚の皿ばねを積層する場合、作業者が制動側摩擦機構をキャリパ装置に組み付ける際、皿ばねを収容部に挿入した後、プラグを収容部に取り付ける。しかしこの組付方法では、作業者は、プラグで収容部が閉塞されるため、収容部の外部から皿ばねの積層状態を視認しにくく、皿ばねの枚数を確認しにくい。対照的に、本開示のキャリパ装置によれば、プラグの取付部に押付部材を取り付けるため、作業者が取付部に複数枚の皿ばね(押付部材)を取り付けた状態で皿ばねの積層状態を視認しやすい。このため、作業者が皿ばねの枚数を確認しやすい。したがって、皿ばねの枚数を間違った状態で制動側摩擦機構をキャリパ装置に組み付けることが抑制される。
【0040】
(26)いくつかの例では、前記制動側摩擦機構の前記収容部は、前記プラグの挿入方向に、前記プラグと接触する段差部を含む。
このキャリパ装置によれば、収容部の段差部にプラグが接触することにより収容部に対するプラグの位置が決められる。したがって、制動側摩擦機構の組付効率が高くなる。
【0041】
(27)本発明の一形態に従うディスクブレーキ装置は、流体系からの流体の供給によって回転体にブレーキ力を与えるように構成される、上記(1)〜(26)の少なくとも1つに記載のキャリパ装置を備える。
【0042】
このディスクブレーキ装置によれば、上記(1)〜(26)で説明した効果と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、制輪子とディスクロータとの接触の頻度を低下させるキャリパ装置およびディスクブレーキ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、鉄道用のディスクブレーキ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示されるように、ディスクブレーキ装置10は、鉄道車両1の車体2を支持する台車3に取り付けられる。ディスクブレーキ装置10は、台車3の車輪4を回転させる車軸5と一体に回転するディスクロータ6に押し付けられることにより、ブレーキ力を車輪4に付与する。
【0046】
ディスクブレーキ装置10は、流体系としての空気給排部11と、その空気給排部11に流体的に接続される少なくとも一つのキャリパ装置20とを備える。空気給排部11は、例えば台車3に取り付けられ、圧縮空気をキャリパ装置20に供給する。キャリパ装置20は、例えば車軸5に取り付けられたディスクロータ6を圧縮空気により押し付ける。1つの空気給排部11が複数のキャリパ装置20と流体的に接続されてもよい。空気給排部11は、車輪4にブレーキ力を付与するとき、圧縮空気をキャリパ装置20に供給する一方、車輪4にブレーキ力を付与した状態から車輪4にブレーキ力を付与しない状態とするとき、圧縮空気をキャリパ装置20から排出する。なお、ディスクブレーキ装置10は、空気給排部11の圧縮空気に代えて、圧縮空気以外の気体、または圧油等の他の流体をキャリパ装置20に供給することにより、キャリパ装置20を動作させる構成であってもよい。
【0047】
図2に示されるように、キャリパ装置20は、台車3(
図1参照)に取り付けられる装置本体30と、装置本体30に対して揺動可能な第1制動用アーム40および第2制動用アーム50とを備える。
【0048】
装置本体30は、底部31Aと、底部31Aの両側から底部31Aと連続して延びる第1腕部31Bおよび第2腕部31Cとを有する略U字状のアーム支持部31を備える。底部31Aには、4本のボルト(図示略)により台車3に取り付けられるための取付部32が第1腕部31Bおよび第2腕部31Cとが配置される側とは反対側に延びる。なお、第1腕部31Bおよび第2腕部31Cは軸支持部に相当する。
【0049】
第1制動用アーム40は、ピボットアクシスCD1を有するアーム用ピボットシャフト21Aにより第1腕部31Bと接続される。アーム用ピボットシャフト21Aは、第1腕部31Bに対して回転可能であり、第1制動用アーム40に対して回転不能である。
【0050】
第1制動用アーム40の一対のアーム41は、アーム用ピボットシャフト21Aの軸方向において互いに離間し、かつ互いに対向するように延びる。各アーム41には、アーム用ピボットシャフト21Aが挿入される挿入部42が形成される。一方の挿入部42とアーム用ピボットシャフト21Aとの間には、キー部材27Aが挿入される。これにより、アーム用ピボットシャフト21Aと第1制動用アーム40との相対回転が制限される。アーム用ピボットシャフト21Aの軸方向の端面および挿入部42の端面を覆うワッシャ28Aがボルト29Aによりアーム用ピボットシャフト21Aに固定されることにより、キー部材27Aはアーム用ピボットシャフト21Aと挿入部42との間から脱落することが抑制される。
【0051】
各アーム41は、挿入部42から延びる出力部43と、挿入部42から出力部43とは異なる方向(本実施形態では反対方向)に延びる入力部44とを備える。出力部43の先端部分には、一対のアーム41を互いに連結する先端連結部45が形成される。
【0052】
出力部43の先端部分には、ピボットアクシスCB1を有する制輪子用ピボットシャフト22Aにより、第1制輪子マウント60が出力部43に対して揺動可能に接続される。制輪子用ピボットシャフト22Aは、第1制輪子マウント60の一対の支持部62および第1制動用アーム40の先端連結部45に挿入される。制輪子用ピボットシャフト22Aは、ボルト23Aにより先端連結部45に対する回転が不能な状態で先端連結部45に固定される一方、一対の支持部62に対して回転可能な状態で支持される。
【0053】
第2制動用アーム50は、ピボットアクシスCD2を有するアーム用ピボットシャフト21Bにより第2腕部31Cと接続される。アーム用ピボットシャフト21Bは、第2腕部31Cに対して回転可能であり、第2制動用アーム50に対して回転不能である。
【0054】
第2制動用アーム50の一対のアーム51は、第1制動用アーム40の一対のアーム41と同様の形状であり、第2制動用アーム50の各構成要素の符号は、第1制動用アーム40の各構成要素の符号の十の桁の数字を「4」から「5」に変更したものである。
【0055】
第1制動用アーム40とアーム用ピボットシャフト21Aとの関係と同様に、アーム用ピボットシャフト21Bと第2制動用アーム50の挿入部52との間にキー部材27Bが挿入されることにより、アーム用ピボットシャフト21Bと第2制動用アーム50との相対回転が制限される。ワッシャ28Bがボルト29Bによりアーム用ピボットシャフト21Bの軸方向の端部に固定されることにより、キー部材27Bはアーム用ピボットシャフト21Bと挿入部52との間からの脱落を抑制する。
【0056】
出力部53の先端部分には、ピボットアクシスCB2を有する制輪子用ピボットシャフト22Bにより、第2制輪子マウント70が出力部53に対して揺動可能に接続される。制輪子用ピボットシャフト22Bは、第2制輪子マウント70の一対の支持部72および第2制動用アーム50の先端連結部55に挿入される。制輪子用ピボットシャフト22Bは、ボルト23Bにより先端連結部55に対する回転が不能な状態で先端連結部55に固定される一方、一対の支持部72に対して回転可能な状態で支持される。
【0057】
図3に示されるように、第1制動用アーム40および第2制動用アーム50は、ディスクロータ6の板厚方向においてディスクロータ6の両側に配置され、第1制輪子マウント60と第2制輪子マウント70とは、ディスクロータ6の板厚方向において、ディスクロータ6と対向して配置される。各制輪子マウント60,70には、ディスクロータ6に押し付けられる制輪子61,71が取り付けられる。
【0058】
各制動用アーム40,50の入力部44,54の先端部分には、固定軸24A,24Bにより駆動機構80が取り付けられる。固定軸24A,24Bは、入力部44,54に固定されるが、駆動機構80に対して回転可能に接続される。したがって、制動用アーム40,50は駆動機構80に対して揺動可能である。
【0059】
駆動機構80は、空気給排部11(
図1参照)から供給される圧縮空気に基づいて、入力部44,54の先端部(固定軸24A,24B)が互いに離間するように入力部44,54に駆動力を与える。また駆動機構80は、制輪子61をディスクロータ6から離間させる力を入力部44,54に与えるためのリターンスプリング(図示略)を備える。制輪子61,71がディスクロータ6を挟み込んだ状態において空気給排部11が空気圧を排気したとき、リターンスプリングが入力部44に与える力が、駆動機構80が圧縮空気に基づいて入力部44に与える力よりも大きくなるため、制輪子61がディスクロータ6から離間する。
【0060】
図4(a)に示されるように、装置本体30において第2制動用アーム50側の第2腕部31Cに駆動側摩擦機構90が設けられる一方、
図4(b)に示されるように、装置本体30において第1制動用アーム40側の第1腕部31Bに駆動側摩擦機構90が設けられていない。
図4(a)に示される駆動側摩擦機構90は、アーム用ピボットシャフト21Bに摩擦力を付与することにより、装置本体30(アーム用ピボットシャフト21B)に対する第2制動用アーム50の揺動を制限する。駆動側摩擦機構90は、第2腕部31Cにおいてアーム用ピボットシャフト21Bに対して入力部54が配置される側(駆動機構側)、かつアーム用ピボットシャフト21Bの軸方向において一対のアーム51の間に配置される。
【0061】
また
図4(a)に示されるように、第2制輪子マウント70における一対の支持部72の一方には、制動側摩擦機構100が設けられ、
図4(b)に示されるように、第1制輪子マウント60における一対の支持部62の一方には、制動側摩擦機構100が設けられる。
【0062】
図4(a)に示されるように、第2制輪子マウント70に設けられた制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22Bに摩擦力を付与することにより、制輪子用ピボットシャフト22B(出力部53)に対する第2制輪子マウント70の揺動を制限する。
図4(b)に示されるように、第1制輪子マウント60に設けられた制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22Aに摩擦力を付与することにより、制輪子用ピボットシャフト22A(出力部43)に対する第1制輪子マウント60の揺動を制限する。
図4(a)および(b)に示されるように、制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに対して各制動用アーム40,50の挿入部42,52が配置される側に配置される。また制動側摩擦機構100は、各制動用アーム40,50の一対のアーム41,51の外側に設けられる。
【0063】
次に、
図5〜
図8を参照して、駆動側摩擦機構90およびその周辺の詳細な構成と、制動側摩擦機構100およびその周辺の詳細な構成とについて説明する。なお、第1制輪子マウント60に設けられる制動側摩擦機構100の構成と第2制輪子マウント70に設けられる制動側摩擦機構100の構成とは同じであるため、第1制輪子マウント60に設けられる制動側摩擦機構100の構成について説明し、第2制輪子マウント70に設けられる制動側摩擦機構100の構成の説明を省略する。
【0064】
図5に示されるように、駆動側摩擦機構90は、装置本体30の第2腕部31Cに取り付けられるプラグ91を備える。プラグ91には、摩擦面を有する摩擦部材93および少なくとも1つの(例えば3個の)押付部材94が取り付けられる。摩擦部材93は、例えば有底円筒状である。押付部材94は、例えば皿ばねであり、プラグ91と摩擦部材93とにより挟み込まれる。押付部材94の個数は、1個、2個、または4個以上であってもよい。
【0065】
プラグ91には、円筒状のねじ部91A、円柱状の封止部91B、および、円柱状の取付部91Cが連続して形成される。
図5に示されるとおり、ねじ部91A、封止部91B、および、取付部91Cの順に外径が小さくなり、封止部91Bとねじ部91Aとの間に第1段差部91Dが形成され、封止部91Bと取付部91Cとの間に第2段差部91Eが形成される。ねじ部91Aの外周部分には、雄ねじが形成される(
図5では図示略)。封止部91Bの外周部分には、シール部材92が取り付けられる。シール部材92は例えばOリングである。
【0066】
図6に示されるように、装置本体30の第2腕部31Cには、アーム用ピボットシャフト21Bの径方向に沿って延び、アーム用ピボットシャフト21Bを収容する第1収容部34が形成される。アーム用ピボットシャフト21Bの軸方向における第1収容部34の中央には、第1収容部34からアーム用ピボットシャフト21Bに対して駆動機構側(
図4(a)参照)に延び、駆動側摩擦機構90を収容する第2収容部35が形成される。第1収容部34および第2収容部35は、互いに連通する内部空間を有する。
【0067】
第1収容部34に収容されたアーム用ピボットシャフト21Bにおける第2収容部35と対向する部分の両側には、一対のシール部材25が取り付けられる。シール部材25は例えばOリングである。アーム用ピボットシャフト21Bにおいて一対のシール部材25の間の部分には、潤滑剤の一例であるグリースが充填される。
【0068】
第2収容部35は、雌ねじが形成されたねじ部35Aと、ねじ部35Aの内径よりも小さい内径により形成される封止部35Bとを備える。ねじ部35Aと封止部35Bとの間には、段差部35Cが形成される。
【0069】
駆動側摩擦機構90が装置本体30の第2腕部31Cに組み付けられた状態において、プラグ91は、ねじ部91Aが第2収容部35のねじ部35Aにねじ込まれることにより、第2収容部35の開口部分を閉塞する。このとき、プラグ91の第1段差部91Dは、第2収容部35の段差部35Cと接触する。またプラグ91の封止部91Bは、第2収容部35の封止部35Bに挿入され、シール部材92により封止部91Bと封止部35Bとの間がシールされる。一方、第1収容部34は、一対のシール部材25により第1収容部34とアーム用ピボットシャフト21Bとの間がシールされるため、第1収容部34および第2収容部35において一対のシール部材25とプラグ91のシール部材92とにより形成される内部空間が密閉状態となる。この密閉状態の内部空間内に、摩擦部材93および押付部材94が配置される。摩擦部材93は、押付部材94よりもアーム用ピボットシャフト側に配置される。
【0070】
複数の押付部材94のうちの封止部91Bに最も近い押付部材は、第2段差部91Eと接触し、摩擦部材93に最も近い押付部材は、摩擦部材93の円筒部93Aの端面と接触する。
【0071】
図6に示されるとおり、プラグ91と摩擦部材93とにより複数の押付部材94が挟み込まれるため、複数の押付部材94が圧縮される。複数の押付部材94が摩擦部材93をアーム用ピボットシャフト21Bに向けて押すことにより、摩擦部材93がアーム用ピボットシャフト21Bに押し付けられる。摩擦部材93の摩擦面がアーム用ピボットシャフト21Bに滑り接触することによって発生する摩擦力をアーム拘束用摩擦力と呼ぶことがある。摩擦部材93の固定位置またはアーム拘束用摩擦力の大きさは、押付部材94の数、寸法、材質及び/またはプラグ91の挿入深さ等に応じて無段階でまたは段階的に調整可能であってよい。本実施形態では、プラグ91のねじ部91A及び/または押付部材94は、摩擦部材93の固定位置を調整する固定位置調整手段の一例である。
【0072】
図7に示されるように、制動側摩擦機構100は、駆動側摩擦機構90と同様に、プラグ101、摩擦部材103、および、少なくとも1つの(例えば3個の)押付部材104を備える。プラグ101、摩擦部材103、および、押付部材104は、駆動側摩擦機構90のプラグ91、摩擦部材93、および、押付部材94(ともに
図5参照)と同様の形状である。なお、押付部材104の個数は、1個、2個、または4個以上であってもよい。
【0073】
図8に示されるように、制輪子用ピボットシャフト22Aにおいて一対の支持部62に挿入される部分のそれぞれには、一対のシール部材26が取り付けられる。制輪子用ピボットシャフト22Aにおける一対のシール部材26の間の部分と、その部分に対応する支持部62との間には、潤滑剤の一例であるグリースが充填される。
【0074】
支持部62には、制動側摩擦機構100を収容するための収容部63が形成される。収容部63は、雌ねじが形成されたねじ部63Aと、ねじ部63Aの内径よりも小さい内径により形成される封止部63Bとを備える。ねじ部63Aと封止部63Bとの間には、段差部63Cが形成される。
【0075】
図8に示されるように、プラグ101には、ねじ部101A、封止部101B、および、取付部101Cが連続して形成される。プラグ101は、ねじ部101Aが収容部63のねじ部63Aにねじ込まれることにより、収容部63の開口部分を閉塞する。このとき、プラグ101の第1段差部101Dは、収容部63の段差部63Cと接触する。またプラグ101の封止部101Bは、収容部63の封止部63Bに挿入され、封止部101Bに取り付けられたシール部材102により封止部101Bと封止部63Bとの間がシールされる。一方、一対のシール部材26により支持部62と制輪子用ピボットシャフト22Aとの間がシールされるため、収容部63および支持部62において一対のシール部材26とプラグ101のシール部材102とにより形成される内部空間が密閉状態となる。この密閉状態の内部空間内に、摩擦部材103および押付部材104が配置される。摩擦部材103は、押付部材104よりも制輪子用ピボットシャフト22A側に配置される。
【0076】
図8に示されるとおり、プラグ101と摩擦部材103とにより3個の押付部材104が挟み込まれるため、3個の押付部材104が圧縮される。そして押付部材104が摩擦部材103を制輪子用ピボットシャフト22Aに向けて押すことにより、摩擦部材103が制輪子用ピボットシャフト22Aに押し付けられる。
【0077】
図9を参照して、駆動側摩擦機構90の装置本体30への組付方法について説明する。なお、制動側摩擦機構100の各制輪子マウント60,70への組付方法は、駆動側摩擦機構90の装置本体30への組付方法と同様であるため、その説明を省略する。なお、
図9では、便宜上、第2収容部35のねじ部35Aを模式的に示している。
【0078】
駆動側摩擦機構90の装置本体30への組み付けは、装置本体30と第2制動用アーム50(
図2参照)とがアーム用ピボットシャフト21Bを介して組み付けられた後に行われる。この組付方法は、摩擦部材配置工程、押付部材取付工程、および、プラグ組付工程を備える。
【0079】
図9(a)に示されるように、摩擦部材配置工程では、摩擦部材93が装置本体30の第2収容部35における封止部35Bに挿入される。
次に、
図9(b)に示されるように、押付部材取付工程では、プラグ91の取付部91Cに3個の押付部材94が取り付けられる。このとき、駆動側摩擦機構90の装置本体30への組み付け作業を行う作業者は、プラグ91に取り付けられた押付部材94の個数を確認する。また取付部91Cに3個の押付部材94が取り付けられた状態において、取付部91Cは、3個の押付部材94から突出する。これにより、取付部91Cから押付部材94が脱落することが抑制される。
【0080】
最後に、
図9(c)に示されるように、プラグ組付工程では、押付部材94が取り付けられたプラグ91のねじ部91Aが第2収容部35のねじ部35Aにねじ込まれる。このため、
図9(c)の白抜き矢印により示される挿入方向において、プラグ91が第2収容部35に挿入される。ねじ部91Aがねじ部35Aにねじ込まれる過程において、プラグ91の取付部91Cの先端部分が摩擦部材93の円筒部93Aに挿入されて、押付部材94が摩擦部材93の円筒部93Aに接触する。これにより、摩擦部材93は、プラグ91とともにアーム用ピボットシャフト21Bに向けて移動する。そして、摩擦部材93がアーム用ピボットシャフト21Bに接触してアーム用ピボットシャフト21Bへの移動が制限される一方、プラグ91がアーム用ピボットシャフト21Bに向けて移動するため、3個の押付部材94が圧縮される。そして、
図9(d)に示されるように、作業者は、プラグ91の第1段差部91Dが第2収容部35の段差部35Cに接触したとき、プラグ91の第2収容部35へのねじ込みを終了する。なお、第2収容部35へのプラグ91の組付方法は、ねじ込みに限られず、圧入、接着、または、溶接であってもよい。要するに、プラグ91が第2収容部35に組み付けられる工法であれば、ねじ込み以外の工法であってもよい。また収容部63へのプラグ101の組付方法についても同様にねじ込みに限られない。
【0081】
次に、キャリパ装置20の作用について
図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、各制輪子マウント60,70がディスクロータ6に接近するときの各制動用アーム40,50の揺動方向を「揺動方向R1」とし、各制輪子マウント60,70がディスクロータ6から離間するときの各制動用アーム40,50の揺動方向を「揺動方向R2」とする。図示した例では、駆動機構80は、ピストンロッドであり得る可動側構造体と、シリンダであり得る固定側構造体とを含む。制動用アーム40は、駆動機構80の可動側構造体に接続されており、制動用アーム50は、駆動機構80の固定側構造体に接続されている。駆動機構80の固定側構造体(例えばシリンダ)は可動側構造体(例えばピストンロッド)よりも質量が大きく慣性力が大きい。
【0082】
図10(a)に示されるように、駆動機構80が駆動することにより第1制動用アーム40がアーム用ピボットシャフト21AのピボットアクシスCD1まわりで揺動方向R1に揺動するとともに、駆動機構80が矢印Y1に移動するため、第2制動用アーム50がアーム用ピボットシャフト21BのピボットアクシスCD2まわりで揺動方向R1に揺動する。これにより、入力部44の先端部と入力部54の先端部との間の距離(固定軸24Aと固定軸24Bとの間の距離)が大きくなる。これにより、第1制輪子マウント60および第2制輪子マウント70がディスクロータ6に接近して制輪子61,71がディスクロータ6に押し付けられる。
【0083】
一方、
図10(b)に示されるように、駆動機構80の駆動が停止し、圧縮空気が駆動機構80から排出されたとき、リターンスプリング(図示略)により第1制動用アーム40は、アーム用ピボットシャフト21AのピボットアクシスCD1まわりで揺動方向R2に揺動し、駆動機構80が第1制動用アーム40を駆動させる前の位置に戻る。これにより、第1制輪子マウント60がディスクロータ6から離間するため、制輪子61がディスクロータ6から離間する。一方、第2制動用アーム50は、駆動側摩擦機構90によりアーム用ピボットシャフト21BのピボットアクシスCD2まわりで揺動方向R2に揺動しない。このため、第2制輪子マウント70の制輪子71は、ディスクロータ6と接触した状態に維持される。
【0084】
また、鉄道車両1(
図1参照)の走行中においては、鉄道車両1の走行に起因する振動に基づいて、車輪4と台車3(ともに
図1参照)とが車軸方向(ディスクロータ6の板厚方向)、上下方向、および、前後方向に相対移動する。特に車輪4と台車3とが車軸方向に相対移動するとき、台車3に取り付けられた装置本体30に支持された各制動用アーム40,50がディスクロータ6に対して接近および離間するため、各制輪子マウント60,70がディスクロータ6に対して接近および離間する。
【0085】
そこで、例えば
図10(c)に示されるように、鉄道車両1の走行に起因する振動によりディスクロータ6が矢印方向Y2に移動したとき、第2制輪子マウント70の制輪子71がディスクロータ6に押される。そして第2制動用アーム50は、第2制輪子マウント70が制輪子71を介して受けるディスクロータ6からの力によりアーム用ピボットシャフト21BのピボットアクシスCD2まわりで揺動方向R2に揺動する。
【0086】
また、第2制動用アーム50は、駆動側摩擦機構90によりアーム用ピボットシャフト21BのピボットアクシスCD2まわりの揺動が制限される。このため、鉄道車両1の走行に起因する振動が発生しても第2制動用アーム50は
図10(c)に示される状態が維持される。
【0087】
そして例えば
図10(d)に示されるように、鉄道車両1の走行に起因する振動によりディスクロータ6が矢印方向Y3に移動して
図10(a)のディスクロータ6の位置に戻ったとき、第2制輪子マウント70の制輪子71がディスクロータ6から離間する。一方、第1制輪子マウント60の制輪子61はディスクロータ6に接近するが、接触はしない。これにより、各制輪子71,61がディスクロータ6に接触しなくなる。
【0088】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)キャリパ装置20は、制動用アーム40、50の揺動が摩擦機構90によって増加された摩擦によって最小化または制限され、非制動時に制輪子61、71を非制動位置に保持できる。例えば車両の振動に起因する振動によって、非制動時に制動用アーム40、50が揺動すること、ひいては非制動時に制輪子61、71がディスクロータ6または車輪4に接触することが抑制される。キャリパ装置20は、駆動側摩擦機構90および制動側摩擦機構100を備えることが好ましい。制動側摩擦機構100が与える摩擦力により各制動用アーム40,50と各制輪子マウント60,70との相対移動を制限することに加え、駆動側摩擦機構90が与える摩擦力により第2制動用アーム50の揺動を制限する。これにより、鉄道車両1の走行の振動に起因して第2制動用アーム50がアーム用ピボットシャフト21BのピボットアクシスCD2まわりに揺動すること、および各制輪子マウント60,70が制輪子用ピボットシャフト22A,22BのピボットアクシスCB1,CB2まわりに揺動することが抑制される。このため、鉄道車両1の走行の振動により制輪子61,71がディスクロータ6に繰り返し接触することが抑制される。したがって、制輪子61,71とディスクロータ6とが接触する頻度を低減することができる。
【0089】
(2)キャリパ装置20は、第2制動用アーム50に駆動側摩擦機構90が設けられ、第1制動用アーム40に駆動側摩擦機構90が設けられていない。これにより、駆動側摩擦機構90が第1制動用アーム40およびアーム用ピボットシャフト21Aのそれぞれに摩擦力を与えないため、第1制動用アーム40の揺動を制限しない。これにより、駆動側摩擦機構90が第1制動用アーム40に摩擦力を与えないため、駆動側摩擦機構90が第1制動用アーム40および第2制動用アーム50の、アーム用ピボットシャフト21A,21Bを中心とする揺動を過度に制限することが抑制される。したがって、例えば各制輪子61,71がディスクロータ6に接触した状態から各制輪子61,71がディスクロータ6から離間する状態に円滑に変更することができる。
【0090】
(3)駆動側摩擦機構90がアーム用ピボットシャフト21Bよりも出力部側に配置された参考例では、駆動側摩擦機構90とディスクロータ6との干渉を避けるため、ディスクロータ6とアーム用ピボットシャフト21Bとの間の距離が、駆動側摩擦機構90が配置されるスペース分だけ余計に必要となる。このため、キャリパ装置が大型化してしまう。
【0091】
この点、本実施形態の駆動側摩擦機構90は、アーム用ピボットシャフト21Bよりも第2制動用アーム50の入力部側に配置される。これにより、ディスクロータ6とアーム用ピボットシャフト21Bとの間の距離が大きくなることが抑制される。したがって、キャリパ装置20の大型化を抑制することができる。
【0092】
(4)特許文献1に記載の摩擦機構は、一対のアームに取り付けられた支持軸により支持される。このため、キャリパ装置の機能とは関係のない、摩擦機構を支持するための専用の部品が必要となるため、摩擦機構に関する部品点数が多くなってしまう。
【0093】
この点、本実施形態のキャリパ装置20は、駆動側摩擦機構90が装置本体30に形成された第2収容部35により支持され、制動側摩擦機構100が各制輪子マウント60,70の支持部62,72により支持される。このため、駆動側摩擦機構90および制動側摩擦機構100を支持するための専用の部品が必要なくなるため、駆動側摩擦機構90および制動側摩擦機構100に関する部品点数が多くなることが抑制される。
【0094】
(5)駆動側摩擦機構90の摩擦部材93は、アーム用ピボットシャフト21Bに押し付けられる。このため、摩擦部材93が装置本体30や第2制動用アーム50に押し付けられる参考例と比較して、摩擦部材93が押し付けられるための専用の形状を形成しなくてもよい。したがって、装置本体30や第2制動用アーム50の形状の複雑化を抑制することができる。
【0095】
(6)摩擦部材93は、押付部材94によりアーム用ピボットシャフト21Bに押し付けられる。このため、摩擦部材93がアーム用ピボットシャフト21Bから離間する頻度が少なくなり、アーム用ピボットシャフト21Bに安定して摩擦力を付与することができる。なお、制動側摩擦機構100の摩擦部材103も押付部材104により制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに押し付けられるため、駆動側摩擦機構90と同様の効果が得られる。
【0096】
(7)摩擦部材93とアーム用ピボットシャフト21Bとの間に異物が介在したとき、摩擦部材93との間で発生する摩擦力が安定しなくなる。
この点、駆動側摩擦機構90は、摩擦部材93が装置本体30の第1収容部34および第2収容部35において密閉された内部空間に配置されるため、摩擦部材93とアーム用ピボットシャフト21Bとの間に異物が介在することが抑制される。したがって、摩擦部材93との間で発生する摩擦力が安定する。なお、制動側摩擦機構100の摩擦部材103も各制輪子マウント60,70の支持部62,72と収容部63,73とにおいて密閉された内部空間に配置されるため、駆動側摩擦機構90と同様の効果が得られる。
【0097】
(8)駆動側摩擦機構90の組付方法において、プラグ91の取付部91Cに3個の押付部材94が取り付けられた後、プラグ91が第2収容部35にねじ込まれる。このため、作業者が3個の押付部材94の個数を確認しやすい。したがって、押付部材94の個数が間違った状態で駆動側摩擦機構90を第2収容部35に組み付けることが抑制される。なお、制動側摩擦機構100も同様の組付方法のため、駆動側摩擦機構90の組付方法と同様の効果が得られる。
【0098】
(9)プラグ91の第1段差部91Dが第2収容部35の段差部35Cに接触したとき、第2収容部35に対するプラグ91の位置が決められる。このため、作業者が第2収容部35に対するプラグ91の位置を調整する作業を行う必要がなくなるため、駆動側摩擦機構90の組付効率が高くなる。なお、制動側摩擦機構100のプラグ101と収容部63との関係も駆動側摩擦機構90のプラグ91と第2収容部35との関係と同様のため、同様の効果が得られる。
【0099】
(10)制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに対して各制動用アーム40,50の挿入部側に配置される。このため、制動側摩擦機構100が制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに対して挿入部側とは反対側に配置される参考例と比較して、各制動側摩擦機構100がキャリパ装置20の内側に配置されやすい。このため、キャリパ装置20の大型化を抑制することができる。
【0100】
(11)制動側摩擦機構100の摩擦部材103は、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに押し付けられる。このため、摩擦部材103が各制輪子マウント60,70や第1制動用アーム40に押し付けられる参考例と比較して、摩擦部材103が押し付けられるための専用の形状を形成しなくてもよいため、各制輪子マウント60,70や第1制動用アーム40の形状の複雑化を抑制することができる。
【0101】
(12)第1制動用アーム40は、駆動機構80によりアーム用ピボットシャフト21Aを中心に揺動する。第2制動用アーム50は、駆動機構80の移動にともないアーム用ピボットシャフト21Bを中心に揺動する。駆動側摩擦機構90は、第2制動用アーム50に設けられている。この構成によれば、第2制動用アーム50と比較して揺動しやすい第1制動用アーム40に駆動側摩擦機構90が設けられていないため、第1制動用アーム40が円滑に揺動する。したがって、制輪子61,71がディスクロータ6を挟み込む状態および制輪子61,71がディスクロータ6から離間する状態を円滑に変更することができる。
【0102】
(13)駆動側摩擦機構90は、一対のアーム51の間に設けられる。このため、一対のアーム51の外側に駆動側摩擦機構90が設けられる参考例と比較して、キャリパ装置20の大型化を抑制することができる。
【0103】
(14)駆動側摩擦機構90の組付方法の押付部材取付工程によれば、3個の押付部材94が取付部91Cに取り付けられた状態において、取付部91Cが3個の押付部材94から突出する。このため、取付部91Cに3個の押付部材94が支持されやすくなるため、プラグ組付工程において3個の押付部材94を作業者が保持しながら、プラグ91を第2収容部35に組み付けるような作業を行う必要がなくなる。このため、駆動側摩擦機構90の組付効率が高くなる。なお、制動側摩擦機構100の構成および組付方法についても駆動側摩擦機構90の構成および組付方法と同様であるため、駆動側摩擦機構90と同様の効果が得られる。
【0104】
(15)駆動側摩擦機構90が第2収容部35に組み付けられた状態において、取付部91Cが摩擦部材93の円筒部93Aに挿入される。このため、プラグ91と摩擦部材93とにより3個の押付部材94を好適に圧縮することができる。なお、制動側摩擦機構100の構成についても駆動側摩擦機構90と同様であるため、駆動側摩擦機構90と同様の効果が得られる。
【0105】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従うキャリパ装置およびこの装置を備えるディスクブレーキ装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うキャリパ装置およびこの装置を備えるディスクブレーキ装置は、上記実施形態以外に例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0106】
(変形例1)
上記実施形態の駆動側摩擦機構90は、第2制動用アーム50の挿入部52に対して入力部側に配置されたが、駆動側摩擦機構90の配置位置はこれに限られない。例えば、駆動側摩擦機構90は、挿入部52に対して第2制輪子マウント70(ディスクロータ6)側、第1腕部31B側、または、第1腕部31Bとは反対側に配置されてもよい。また、駆動側摩擦機構90は、アーム用ピボットシャフト21Bの軸方向において、一対のアーム51の外側に配置されてもよい。
【0107】
(変形例2)
上記実施形態の駆動側摩擦機構90は、装置本体30の第2腕部31Cに1個設けられたが、駆動側摩擦機構90を第2腕部31Cに複数個設けてもよい。
【0108】
また上記実施形態の制動側摩擦機構100は、各制輪子マウント60,70の一対の支持部62,72の一方に設けられたが、これに限られず、一対の支持部62,72の他方、または、一対の支持部62,72の両方に制動側摩擦機構100が設けられてもよい。また、制動側摩擦機構100は、先端連結部45,55に設けられてもよい。
【0109】
(変形例3)
上記実施形態の制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに対して各制動用アーム40,50の挿入部側に配置されたが、制動側摩擦機構100の配置位置はこれに限られない。例えば、制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに対して各制動用アーム40,50の挿入部側とは反対側、または、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに対して制輪子側とは反対側に配置されてもよい。また、制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bの軸方向において、一対のアーム41,51の間に配置されてもよい。
【0110】
(変形例4)
上記実施形態の制動側摩擦機構100は、各制輪子マウント60,70に1個設けられたが、制動側摩擦機構100を各制輪子マウント60,70に複数個設けてもよい。
【0111】
(変形例5)
上記実施形態の押付部材94,104は皿ばねであったが、摩擦部材93,103を押す力を付与することができるものであれば、皿ばね以外であってもよい。例えば、押付部材94,104は、コイルばね等の他の種類のばね、Oリング等の弾性部材であってもよい。また、押付部材94,104として、プラグ91,101の取付部91C,101Cに取り付けられた第1永久磁石と、摩擦部材93,103に取り付けられ、第1永久磁石と対向する部分の磁極が第1永久磁石の磁極と同じとなる第2永久磁石とにより構成されてもよい。この場合、第1永久磁石と第2永久磁石との間に発生する斥力により摩擦部材93,103が押される。
【0112】
(変形例6)
実施形態では、摩擦機構の摩擦力の大きさは、制輪子の位置(すなわち制動位置および非制動位置)と関係なく常に増加される。上記実施形態の駆動側摩擦機構90および制動側摩擦機構100は、押付部材94,104に代えて、アクチュエータにより摩擦部材93,103を押し付ける構成であってもよい。アクチュエータの一例は、電動モータと、電動モータの出力軸の回転を出力軸の軸方向の移動に変換するボールねじとにより構成されたボールねじ機構である。このアクチュエータをコントローラが制御することにより、摩擦部材93,103が付与する摩擦力の大きさを動的に制御してもよい。例えば、制輪子の非制動位置のみで、摩擦機構の摩擦力の大きさを増加させて制輪子を非制動位置に保持させてもよく、及び/または、制輪子が非制動位置から外れたときに摩擦力を増加させて制輪子を非制動位置に保持または復帰させてもよい。この動的制御によっても、非制動時に制輪子が制動位置に達すること、及び/または、非制動時に制輪子が制動位置に向かって移動することが低減または防止できる。この変形例6のアクチュエータ及び/またはコントローラは、摩擦部材の固定位置を調整する固定位置調整手段の一例である。なお、摩擦部材の摩擦面が押し付けられる側の面について、部分的に摩擦係数を変化させる、または一部を切り欠いて摩擦部材との相対的な距離を変化させることで、摩擦力を増減することもできる。
【0113】
(変形例7)
上記実施形態の駆動側摩擦機構90は、装置本体30の第2腕部31Cに組み付けられ、アーム用ピボットシャフト21Bに摩擦力を付与する構成であるが、駆動側摩擦機構90が組み付けられる箇所と駆動側摩擦機構90が摩擦力を付与する部材との関係はこれに限られない。例えば、以下の(A)〜(E)に示す関係であってもよい。そして、(A)〜(E)に示す関係を互いに組み合わせてもよい。
【0114】
(A)
図11に示されるように、第1の駆動側摩擦機構としての駆動側摩擦機構90は、装置本体30の第2腕部31Cの第2収容部35(
図6参照)に代えて、アーム用ピボットシャフト21Bの軸方向における第1収容部34の端部において、第1収容部34の長手方向と平行して形成された第3収容部36に組み付けられる。第3収容部36の内部空間の形状は、第2収容部35(
図6参照)の内部空間と同様の形状である。この場合、駆動側摩擦機構90の摩擦部材93は、第2制動用アーム50の入力部54に押し付けられる。
【0115】
なお、駆動側摩擦機構90は、アーム用ピボットシャフト21Bに対して入力部側とは反対側(ディスクロータ6側(
図3参照))に配置されてもよい。この場合、駆動側摩擦機構90の摩擦部材93は、第2制動用アーム50の出力部53(
図3参照)に押し付けられる。摩擦部材93の摩擦面が制動用アーム50の一部(例えば入力部54または出力部53)に滑り接触することによって発生する摩擦力をアーム拘束用摩擦力と呼ぶことがある。
【0116】
(B)
図12に示されるように、第2の駆動側摩擦機構としての駆動側摩擦機構90は、アーム用ピボットシャフト21Bの軸方向の端部に形成された収容部110に組み付けられる。収容部110の内部空間の形状は、第2収容部35(
図6参照)の内部空間と同様の形状である。アーム用ピボットシャフト21Bにおいて収容部110の軸方向の両側の部分には、シール部材111が取り付けられる。シール部材111は例えばOリングである。これにより、収容部110の内部空間が密閉状態となる。また、アーム用ピボットシャフト21Bは、第2腕部31C(
図6参照)に対して回転不能に取り付けられ、第2制動用アーム50の挿入部52に対して回転可能に取り付けられる。また摩擦部材93は、第2制動用アーム50の挿入部52に押し付けられる。
【0117】
(C)
図13(a)に示されるように、第2の駆動側摩擦機構としての駆動側摩擦機構90は、第2制動用アーム50の挿入部52に形成された収容部56に組み付けられる。収容部56は、アーム用ピボットシャフト21Bよりもキャリパ装置20の外側に配置される。
図13(b)に示されるように、アーム用ピボットシャフト21Bには、シール部材111が取り付けられる。シール部材111は、アーム用ピボットシャフト21Bにおいて摩擦部材93の両側に配置される。収容部56の内部空間の形状は、第2収容部35(
図6参照)の内部空間と同様の形状である。アーム用ピボットシャフト21Bは、第2腕部31C(
図6参照)に対して回転不能に取り付けられ、第2制動用アーム50の挿入部52に対して回転可能に取り付けられる。また摩擦部材93は、アーム用ピボットシャフト21Bに押し付けられる。
【0118】
(D)
図14に示されるように、第3の駆動側摩擦機構としての駆動側摩擦機構90は、第2制動用アーム50の入力部54に形成された収容部57に組み付けられる。収容部57は、アーム用ピボットシャフト21Bの軸方向に沿う方向において入力部54を貫通するように形成される。収容部57の内部空間の形状は、第2収容部35(
図6参照)の内部空間と同様の形状である。また装置本体30の第2腕部31Cには、収容部57に向けて延びる対向部分37が形成される。対向部分37は、収容部57と接触する。そして摩擦部材93は、第2腕部31Cの対向部分37に押し付けられる。なお、収容部57は、出力部53(
図2参照)に形成されてもよい。この場合、装置本体30の対向部分37は、出力部53に向けて延びるとともに収容部57と接触する。
【0119】
(E)
図15に示されるように、第3の駆動側摩擦機構としての駆動側摩擦機構90は、アーム用ピボットシャフト21Bの軸方向の中間部分(
図15ではアーム用ピボットシャフト21Bの軸方向の中央部)に形成された収容部112に組み付けられる。収容部112の内部空間の形状は、収容部110(
図12参照)の内部空間と同様の形状である。また摩擦部材93は、装置本体30の第2腕部31Cに押し付けられる。アーム用ピボットシャフト21Bは、装置本体30の第2腕部31Cに対して回転可能であり、第2制動用アーム50に対して回転不能である。
【0120】
(変形例8)
上記実施形態の制動側摩擦機構100は、各制輪子マウント60,70に組み付けられ、制輪子用ピボットシャフト22A,22Bに摩擦力を付与する構成であるが、制動側摩擦機構100が組み付けられる箇所と制動側摩擦機構100が摩擦力を付与する部材との関係はこれに限られない。例えば、以下の(A)〜(E)に示す関係であってもよい。そして、(A)〜(E)に示す関係を互いに組み合わせてもよい。
【0121】
なお、以下の説明において、第1制輪子マウント60に設けられる制動側摩擦機構100と、第2制輪子マウント70に設けられる制動側摩擦機構100とは、同様の構成であるため、第1制輪子マウント60に設けられる制動側摩擦機構100について説明し、第2制輪子マウント70に設けられる制動側摩擦機構100の説明を省略する。また以下の説明に用いられる図面において、便宜上、制輪子マウント60の一部を省略して示す場合もある。
【0122】
(A)
図16に示されるように、第1の制動側摩擦機構としての制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22Aの軸方向の端部に形成された収容部120に組み付けられる。収容部120の内部空間の形状は、収容部63(
図8参照)の内部空間と同様の形状である。この場合、制動側摩擦機構100の摩擦部材103は、第1制輪子マウント60の支持部62に押し付けられる。
【0123】
(B)
図17に示されるように、第2の制動側摩擦機構としての制動側摩擦機構100は、第1制輪子マウント60の支持部62において制輪子用ピボットシャフト22Aの軸方向に延びる収容部64に組み付けられる。収容部64は、第1制動用アーム40の出力部43に接触する。収容部64は、制輪子用ピボットシャフト22Aの軸方向に沿う方向に形成され、その形状は、収容部63(
図8参照)と同様の形状である。この場合、制動側摩擦機構100の摩擦部材103は、第1制動用アーム40の出力部43に押し付けられる。
【0124】
(C)
図18に示されるように、第2の制動側摩擦機構としての制動側摩擦機構100は、第1制動用アーム40の出力部43に形成された収容部48に組み付けられる。収容部48は、制輪子用ピボットシャフト22Aの軸方向に沿う方向において出力部43を貫通し、その形状は収容部63(
図8参照)と同様である。また支持部62は、出力部43に向けて延びる対向部分65が形成される。対向部分65は、出力部43に接触する。この場合、制動側摩擦機構100の摩擦部材103は、対向部分65に押し付けられる。
【0125】
(D)
図19に示されるように、第3の制動側摩擦機構としての制動側摩擦機構100は、第1制動用アーム40の出力部43に形成された収容部49に組み付けられる。収容部49の内部空間の形状は、収容部63(
図8参照)の内部空間と同様の形状である。この場合、制輪子用ピボットシャフト22Aは、支持部62に対して回転不能に取り付けられ、出力部43に対して回転可能に取り付けられる。この場合、制動側摩擦機構100の摩擦部材103は、制輪子用ピボットシャフト22Aに押し付けられる。
【0126】
(E)
図20に示されるように、第3の制動側摩擦機構としての制動側摩擦機構100は、制輪子用ピボットシャフト22Aにおいて出力部43と対向する部分に形成された収容部121に組み付けられる。収容部121の形状は、収容部120(
図16参照)と同様の形状である。この場合、制輪子用ピボットシャフト22Aは、支持部62に対して回転不能に取り付けられ、出力部43に対して回転可能に取り付けられる。また摩擦部材103は、出力部43に押し付けられる。なお、収容部121は、制輪子用ピボットシャフト22Aにおいて第1制動用アーム40の先端連結部45と対向する部分に形成されてもよい。この場合、摩擦部材103は、先端連結部45に押し付けられる。
【0127】
(変形例9)
上記実施形態の駆動側摩擦機構90および制動側摩擦機構100の構成に代えて、特許文献1に記載の摩擦機構を装置本体30の第2腕部31Cおよび各制輪子マウント60,70に設けてもよい。この場合、第2制動用アーム50の入力部54には、摩擦機構を支持するための駆動側支持軸がアーム用ピボットシャフト21Bと平行し、一対のアーム51を互いに連結するように設けられる。また各制動用アーム40,50の出力部43,53には、摩擦機構を支持するための制動側支持軸が制輪子用ピボットシャフト22A,22Bと平行し、一対のアーム41,51を互いに連結するように設けられる。
【0128】
(変形例10)
上記実施形態の駆動側摩擦機構90および制動側摩擦機構100において、押付部材94,104を省略してもよい。この場合、プラグ91,101と摩擦部材93,103とが互いに接触する。
【0129】
(変形例11)
上記実施形態ならびに変形例1〜7および変形例9の駆動側摩擦機構90は、第2制動用アーム50に代えて、第1制動用アーム40に設けられてもよい。
【0130】
(変形例12)
制動側摩擦機構100を省略してもよい。
(変形例13)
制動用アーム40は、回転体の回転を制動するための制輪子61を回転体に押圧することによってブレーキ力を発生する。回転体は、ディスクロータ6でもよく、車輪4でもよい。制動用アーム50についても同様である。