特許第6803178号(P6803178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803178
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】車両用シート部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20201214BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20201214BHJP
   A47C 27/20 20060101ALI20201214BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60N2/68
   A47C7/02 A
   A47C27/20
   A47C27/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-167108(P2016-167108)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-34547(P2018-34547A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】福田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】榊原 有史
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069532(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/042759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
A47C 7/02
A47C 27/14、20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備えた車両用シート部材の製造方法であって、
前記フレーム材は、骨組み部と補強部とを含み、
前記発泡樹脂成形体は、前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように延在する延在部とを含み、前記発泡樹脂成形体の前記枠状部と前記延在部との間には肉抜き部が形成されており、
前記車両用シート部材の平面視での輪郭に沿って前記発泡樹脂成形体の前記枠状部に埋設される位置に前記骨組み部が配置され、前記発泡樹脂成形体の前記延在部の延在方向に沿って前記延在部に埋設される位置に前記補強部が配置されるように、前記フレーム材を成形型内に配置する配置工程と、
前記成形型内において、前記骨組み部を埋設する前記枠状部と、前記補強部を埋設する前記延在部とを含む前記発泡樹脂成形体を成形する成形工程と、
を含むことを特徴とする車両用シート部材の製造方法。
【請求項2】
前記フレーム材において、前記補強部は、両端がそれぞれ前記骨組み部に連結されている線状の補強部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フレーム材の前記骨組み部は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、
前記成形工程は、前記延在部が、前記補強部を埋設するとともに、前記対向部分の間に亘って延在するように成形することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記成形工程において成形される前記延在部が、前記補強部を埋設するとともに、前記枠状部の対向する部分に亘って、少なくとも前記長手方向に沿って延在した第1延在部分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用シート部材の製造方法。
【請求項5】
前記配置工程において、前記フレーム材の前記骨組み部を含む部分を、車両用シート部材の輪郭に沿って周回させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用シート部材の製造方法。
【請求項6】
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備えた車両用シート部材であって、
前記フレーム材は、骨組み部と補強部とを含み、
前記発泡樹脂成形体は、前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように延在する延在部とを含み、前記発泡樹脂成形体の前記枠状部と前記延在部との間には肉抜き部が形成されており、
前記フレーム材の前記骨組み部は、前記車両用シート部材の平面視での輪郭に沿って、前記発泡樹脂成形体の前記枠状部に埋設されるように、配置されており、
前記フレーム材の前記補強部は、前記発泡樹脂成形体の前記延在部の延在方向に沿って、前記延在部に埋設されるように、配置されていることを特徴とする車両用シート部材。
【請求項7】
前記フレーム材において、前記補強部は、両端がそれぞれ前記骨組み部に連結されている線状の補強部である、請求項6に記載の車両用シート部材。
【請求項8】
前記フレーム材の前記骨組み部は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、
前記発泡樹脂成形体の前記延在部は、前記補強部を埋設するとともに、前記対向部分の間に亘って延在する、請求項6又は7に記載の車両用シート部材。
【請求項9】
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記延在部は、前記補強部を埋設するとともに、前記枠状部の対向する部分に亘って、前記長手方向に沿って延在する第1延在部分を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の車両用シート部材。
【請求項10】
前記フレーム材の前記骨組み部を含む部分は、車両用シート部材の輪郭に沿って周回している、請求項6〜9のいずれか1項に記載の車両用シート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用シートとして、たとえばフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形された車両用シート部材が知られている(たとえば特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献3では、車両への固定のための掛け止め具とそれを連結する連結部材をフレーム材として、これを発泡粒子成形体内に埋め込み一体成形する車両用シート部材の製造方法が開示されている。連結部材は車両用シート部材の長手方向に沿って発泡粒子成形体の前方側に埋設される。特許文献3では、掛け止め具の柱部が埋設されている発泡粒子成形体部分の、車両用シート部材の長手方向外方に、柱部から長手方向外方に向かう切り込みを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−161508号公報
【特許文献2】国際公開WO2015/159691号公報
【特許文献3】国際公開WO2016/042759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1〜3に記載される形態の車両用シートは、車両用シート部材を構成する発泡樹脂成形体の内部にフレーム材が一体成形されている。フレーム材と、発泡樹脂成形体とは材料が異なるため熱膨張係数は異なる。このため、発泡樹脂成形体のうちフレーム材が存在しない発泡樹脂の部分と、フレーム材が埋設された発泡樹脂の部分とでは、熱膨張および熱収縮の程度が異なる。
【0006】
したがって、例えば、成形後の発泡樹脂成形体の脱型時の放熱、または車両用シート部材への入熱などにより、発泡樹脂成形体のうちフレーム材が存在しない発泡樹脂の部分が、所定の形状から僅かに変形することが想定される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく本明細書で開示する本発明に係る車両用シート部材の製造方法は、
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備える車両用シート部材の製造方法であって、
前記フレーム材は、骨組み部と補強部とを含み、
前記発泡樹脂成形体は、前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように延在する延在部とを含み、
前記車両用シート部材の平面視での輪郭に沿って前記発泡樹脂成形体の前記枠状部に埋設される位置に前記骨組み部が配置され、前記発泡樹脂成形体の前記延在部の延在方向に沿って前記延在部に埋設される位置に前記補強部が配置されるように、前記フレーム材を成形型内に配置する配置工程と、
前記成形型内において、前記骨組み部を埋設する前記枠状部と、前記補強部を埋設する前記延在部とを含む前記発泡樹脂成形体を成形する成形工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
車両用シート部材の製造方法において、発泡樹脂成形体のうち、車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部にフレーム材の骨組み部を埋設し、枠状部に囲われた内部に延在する延在部にフレーム材の一部を埋設しない場合には、成形時又は成形後に、発泡樹脂成形体の枠状部と延在部とで見かけ上の熱収縮量が異なる。これにより、枠状部に囲まれた延在部には、熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部が変形し易い。
【0009】
そこで本発明では、発泡樹脂成形体の枠状部にフレーム材の骨組み部が埋設されるとともに、発泡樹脂成形体の延在部に、該延在部の延在方向に沿って、フレーム材の補強部が埋設されるように、発泡樹脂成形体を型内発泡成形により成形することにより、延在部に作用する応力による延在部の変形を抑える。これにより、成形時又は成形後に、枠状部及び延在部を備える発泡樹脂成形体が熱収縮しても、延在部の変形を抑えることができる。この結果、寸法精度の高い車両用シート部材を製造することができる。
【0010】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法の好ましい態様では、
前記フレーム材において、前記補強部は、両端がそれぞれ前記骨組み部に連結されている線状の補強部である。
【0011】
本態様では、前記フレーム材において前記骨組み部が前記補強部により補強されることで、前記骨組み部の剛性が向上し、前記フレーム材が全体として撓み難い構造となる。この結果、前記配置工程において、前記フレーム材を成形型内に配置することが容易となる。特にロボットを使用して前記フレーム材を前記成形型内に配置する場合に、前記フレーム材が撓み難いため配置が容易である。
【0012】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法のより好ましい態様では、
前記フレーム材の前記骨組み部は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、
前記成形工程は、前記延在部が、前記補強部を埋設するとともに、前記対向部分の間に亘って延在するように成形することを含む。
【0013】
フレーム材の骨組み部が前記連続部分を有することにより、前記連続部分を埋設する枠状部の部分に、延在部の両側が拘束される。この構造において延在部は熱収縮により特に変形し易いところ、本発明のこの態様では、フレーム材の補強部を埋設するように延在部を成形することにより、延在部の変形を抑えることができる。
【0014】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法の更に好ましい態様では、
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記成形工程において成形される前記延在部が、前記補強部を埋設するとともに、前記枠状部の対向する部分に亘って、少なくとも前記長手方向に沿って延在した第1延在部分を含む。
【0015】
長手方向に沿って形成された第1延在部分は熱収縮により変形し易いところ、この態様によれば、第1延在部分にフレーム材の補強部を埋設させることにより、第1延在部分の変形を抑えることができる。
【0016】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法の更に好ましい態様では、
前記配置工程において、前記フレーム材の前記骨組み部を含む部分を、車両用シート部材の輪郭に沿って周回させる。
【0017】
この態様によれば、フレーム材が車両用シート部材の輪郭に沿って周回するので、車両用シート部材の強度を高めることができる。しかも、フレーム材を車両用シート部材の輪郭に沿って周回させると、延在部の両側が拘束され、熱収縮により変形し易いところ、この態様によれば、延在部にフレーム材の補強部を埋設させることにより、延在部の変形を抑えることができる。
【0018】
本発明は更に車両用シート部材に関する。
本発明に係る車両用シート部材は、
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備え、
前記フレーム材は、骨組み部と補強部とを含み、
前記発泡樹脂成形体は、前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように延在する延在部とを含み、
前記フレーム材の前記骨組み部は、前記車両用シート部材の平面視での輪郭に沿って、前記発泡樹脂成形体の前記枠状部に埋設されるように、配置されており、
前記フレーム材の前記補強部は、前記発泡樹脂成形体の前記延在部の延在方向に沿って、前記延在部に埋設されるように、配置されていることを特徴とする。
【0019】
車両用シート部材において、発泡樹脂成形体のうち、車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部にフレーム材の骨組み部が埋設され、枠状部に囲われた内部に延在する延在部にフレーム材の一部が埋設されていない場合には、車両用シート部材に入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)に、発泡樹脂成形体のうち枠状部と延在部とで、見かけ上の熱膨張量(熱収縮量)が異なる。これにより、フレーム材の骨組み部が埋設された枠状部に囲まれた延在部には、熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部が変形し易いところ、本発明では、延在部の延在方向に沿って該延在部にフレーム材の補強部を埋設させることにより、延在部の変形を抑えることができる。
【0020】
本発明に係る車両用シート部材の好ましい態様では、
前記フレーム材において、前記補強部は、両端がそれぞれ前記骨組み部に連結されている線状の補強部である。
【0021】
本態様では、前記フレーム材において前記骨組み部が前記補強部により補強されることで、前記骨組み部の剛性が向上し、前記フレーム材が全体として撓み難い構造となる。本態様の車両用シート部材は、入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)に前記発泡樹脂成形体と前記フレーム材とが、互いに異なる程度で、熱膨張又は熱収縮する場合であっても、前記発泡樹脂成形体及び前記フレーム材が特に変形し難い。
【0022】
本発明に係る車両用シート部材のより好ましい態様では、
前記フレーム材の前記骨組み部は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、
前記発泡樹脂成形体の前記延在部は、前記補強部を埋設するとともに、前記対向部分の間に亘って延在する。
【0023】
フレーム材の骨組み部が前記連続部分を有することにより、前記連続部分を埋設する枠状部の部分に、延在部の両側が拘束される。この構造の車両用シート部材に入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)、延在部は熱収縮又は熱膨張により特に変形し易いところ、本発明のこの態様では、延在部にフレーム材の補強部が埋設されているため、延在部が変形し難い。
【0024】
本発明に係る車両用シート部材のより好ましい態様では、
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記延在部は、前記補強部を埋設するとともに、前記枠状部の対向する部分に亘って、前記長手方向に沿って延在する第1延在部分を含む。
【0025】
長手方向に沿って形成された第1延在部分は熱収縮又は熱膨張により変形し易いところ、この態様によれば、第1延在部分にフレーム材の補強部が埋設されているため、第1延在部分が変形し難い。
【0026】
本発明に係る車両用シート部材のより好ましい態様では、
前記フレーム材の前記骨組み部を含む部分は、車両用シート部材の輪郭に沿って周回している。
【0027】
この態様によれば、フレーム材が車両用シート部材の輪郭に沿って周回するので、車両用シート部材の強度が高い。しかも、フレーム材を車両用シート部材の輪郭に沿って周回させると、延在部の両側が拘束され、熱収縮又は熱膨張により変形し易いところ、この態様によれば、延在部にフレーム材の補強部が埋設されているため、延在部の変形が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法によれば、寸法精度の高い車両用シート部材を得ることができる。また、本発明に係る車両用シート部材によれば、車両用シート部材に入熱された時または入熱された熱が放熱する時であっても、車両用シート部材の寸法精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、フレーム材の構造を説明するための模式的斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、発泡樹脂成形体の構造を説明するための模式的斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材を上面から見たときの平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材の左側面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材の製造方法を説明するための、図4に示すI−I線矢視断面図に対応した位置における模式的断面図である。(A)は、成形型内に予備発泡粒子を充填した状態の模式的断面図である。(B)は、(A)に示す状態から、予備発泡粒子を発泡させて、発泡樹脂成形体を成形した状態の模式的断面図である。(C)は、(B)に示す状態から、発泡樹脂成形体を成形型から脱型した状態を示す模式的断面図である。
図6】比較例となる車両用シート部材の製造方法を説明するための模式的断面図である。(A)は、予備発泡粒子を発泡させて、発泡樹脂成形体を成形した状態の模式的断面図である。(B)は、(A)に示す状態から、発泡樹脂成形体を成形型から脱型した状態を示した模式的断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、フレーム材の構造を説明するための模式的斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、発泡樹脂成形体の構造を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明による車両用シート部材および車両用シートのいくつかの実施形態を、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明の範囲は個別の実施形態には限定されない。
【0031】
<第1実施形態>
1.車両用シート部材10について
図1〜5に基づいて車両用シート部材及びその製造方法の第1実施形態を説明する。
図1および図2に示すように、車両用シート部材10は、基本構成として、フレーム材20と、フレーム材20の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体30とを備えている。
【0032】
車両用シート部材10の全体形状に特に制限はないが、図3に示すように、平面視で矩形である形状が一般的である。本明細書において矩形とは長方形、正方形等の四角形を指し、長方形及び正方形に限らず、台形や、平行四辺形の形状であってもよい。本明細書において矩形は概略矩形である場合も含み、例えば、隅部が丸みを帯びていてもよいし、矩形を構成する辺の一部又は全部が曲がった辺であってもよい。
【0033】
本実施形態では、図3に示すように、車両用シート部材10の平面視における輪郭Sは、短辺および長辺を有した矩形であり、短手方向と長手方向とを有した形状である。輪郭Sは、4つの辺として、短辺を構成する右方縁部sRおよび左方縁部sLと、長辺を構成する前方縁部sFおよび後方縁部sBと、4隅を構成する隅部sCと、を含んでいる。なお、本実施形態でいう、前後左右とは、車両内に搭乗者が着座した状態で、車両から車両の進行(前方)方向を見たときの方向のことをいう。
【0034】
本実施形態の車両用シート部材10は、例えば、図4に示すように、車両用シート部材10の(発泡樹脂成形体30)上面11(上面31)の側から適宜クッション材等の上部シート部材50を積層配置して、車両用シート1とすることができる。また、適当な外装材により、車両用シート部材10をクッション材等とともに被覆して車両用シート1としてもよい。
【0035】
2.フレーム材20について
図1〜3に示すように、フレーム材20は、発泡樹脂成形体30に所要の保形性と強度を付与するために埋め込まれるものである。フレーム材20は、発泡樹脂成形体30を成形する条件下において発泡樹脂成形体30と比較して寸法が実質的に変化しない材料、例えば鋼、アルミニウム等の金属材料、により構成することが通常である。
【0036】
フレーム材20は、車両用シート部材10の平面視における輪郭Sに沿って、発泡樹脂成形体30の内部に延在した第1および第2骨組み部21,22と、第1および第2骨組み部21,22の端部に連結された一対の台座部23,23と、補強部26とを備えている。第2骨組み部22は、対向する一対の対向部分22a,22a同士が連続した構造を有し、本明細書では、第2骨組み部22を、フレーム材20の「連続部分」と呼ぶ場合がある。
【0037】
図示する実施形態では、補強部26は、第2骨組み部22の一対の対向部分22a,22aの、対向方向に沿うように配置されており、且つ、補強部26の両端はそれぞれ、第2骨組み部22の一対の対向部分22a,22aのそれぞれに連結されている。第2骨組み部22の一対の対向部分22a,22aと、補強部26の両端との連結は、溶接、接着などの手段で行うことができる。また、第2骨組み部22の一対の対向部分22a,22aと、補強部26とは、一体の部材により構成してもよい。なお、フレーム材20の補強部26は、後述する発泡樹脂成形体30の延在部36が延在する方向の少なくとも1つに沿うように延在し、延在部36に埋設されていればよく、図示するようにフレーム材20の骨組み部と連結されている必要はない。ただし、フレーム材20において第2骨組み部22と補強部26とが連結されている構成では、後述する、延在部36の変形を抑制する効果が特に高いため好ましい。また、フレーム材20において第2骨組み部22と補強部26が連結されていることにより、第2骨組み部22の剛性が向上し、フレーム20が全体として撓み難い構造となるため、後述する配置工程において、フレーム材20を成形型7内に配置することが容易であり、特に、ロボットを使用してフレーム材20を成形型7内に組み付けて設置することが容易である。
【0038】
図示する実施形態では、フレーム材20の補強部26は、後述するように、発泡樹脂成形体30の延在部36の延在部分の1つである第1延在部分36Aの全体、すなわち、第1延在部分36Aの、枠状部35に接続された一端から他端に至るまでの全体に亘って埋設されるように延在する1つの部材から構成されている。しかしこの実施形態には限らず、フレーム材20の補強部26は、発泡樹脂成形体30の延在部36の延在する方向に沿って配置され、該方向に沿って延在する、複数の部材から構成されていてもよい。
【0039】
フレーム材20は、各台座部23に取付けられた前方係止部24と、第2骨組み部22に取付けられた後方係止部25をさらに備えている。本実施形態では、第1および第2骨組み部21,22、前方および後方係止部24,25、補強部26としては、例えば直径が3〜6mm程度の鋼またはアルミニウム製の線材(ワイヤー)等が用いられるが、例えば金属製の帯状または管状の鋼材であってもよい。さらに、フレーム材20を、鋼板から打ち抜き成形およびプレス成形により、製造してもよい。本発明では、骨組み部及び補強部は、それぞれ、図示するように、線状の骨組み部及び線状の補強部であることが好ましい。ここで「線状」とは、ワイヤーなどの線材に限定されるものではなく、例えば、上述した帯状、管状等であってもよく、概ね1つの線上に沿って延在しているものであれば、特に限定されるものではない。
【0040】
フレーム材20の第1骨組み部21は、前方縁部sFの中央の一部に沿ってその近傍に配置されており、第2骨組み部22は、前方縁部sFの両側の一部と、右方縁部sR、左方縁部sL、後方縁部sB、および各隅部sCに沿って、これらの近傍に配置されている。フレーム材20は、車両用シート部材10の輪郭Sに沿うように、輪郭Sを形成する発泡樹脂成形体30の外周面33から少し内側に入った個所に埋設されている。
【0041】
このようにして、フレーム材20の第1および第2骨組み部21,22は、これらを連結する一対の台座部23,23とともに、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回している。なお、本実施形態では、フレーム材20の第1および第2骨組み部21,22を含む部分は、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回しているが、例えば、フレーム材20の第1および第2骨組み部21,22が、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って断続的に周回していてもよい。すなわち、この形態には限らず、輪郭Sに沿う一部の部分のみに骨組み部が配置されていてもよい。例えば、第2骨組み部22が、台座部23,23に連結されず、後方縁部sBに沿って配置されてもよい。また、フレーム材20を構成する骨組み部の個数も2つに限定されるものではなく、その個数は1つまたは3つ以上であってもよい。
【0042】
フレーム材20を構成する前方係止部24と後方係止部25は、車両用シート部材10を車両に係止する部分である。前方係止部24は、例えば溶接または接着等により、台座部23に連結されており、台座部23から下方に突出している。前方係止部24の先端部分24aは、略U字状の湾曲しており、発泡樹脂成形体30から露出し、基端部分24bは、台座部23と共に発泡樹脂成形体30に埋設されている。より具体的には、基端部分24bは、その周囲の全体が発泡樹脂成形体30に包埋される。これにより、本実施形態の車両用シート部材10を前方係止部24の先端部分24aを介して車両に係止する際に引き抜き方向の力が加わった場合であっても、前方係止部24は発泡樹脂成形体30に保持され、引き抜き方向の力に対する耐性を高めることができる。
【0043】
さらに、後方係止部25は、第2骨組み部22のうち、後方縁部sBに沿った中央から、後方に突出している。後方係止部25の先端部分25aは、略U字状の湾曲しており、発泡樹脂成形体30から露出し、基端部分25bは、発泡樹脂成形体30に埋設されている。
【0044】
本実施形態では、前方係止部24及び後方係止部25の先端部分24a,25aはそれぞれ線材を略U字状に曲げて形成しているが、この構造には限定されず、車両側の構造に応じて係止が可能な構造とすればよい。
【0045】
本実施形態では、前方係止部24は、台座部23を介して第1および第2骨組み部21,22の双方に連結されている。しかしながら、前方係止部24は、この形態には限定されず、後方係止部25のように、台座部23を介さず直接に第1または第2骨組み部21,22の双方に連結されていてもよい。また、前方係止部24の数は特に限定されず、1つであってもよいし3つ以上であってもよい。前方係止部24と後方係止部25のうち一方が存在していなくてもよい。
【0046】
3.発泡樹脂成形体30について
図1および図2に示すように、発泡樹脂成形体30は、発泡樹脂の型内発泡成形体である。発泡樹脂としては、特に限定されないが、通常は、発泡された熱可塑性樹脂が用いられ、例えば、発泡ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む発泡複合樹脂、発泡ポリオレフィン系樹脂等が好適に用いられる。発泡倍率は、発泡樹脂の種類に応じて適宜調整することができるが、一般的には10〜50倍程度、典型的には20〜40倍程度である。
【0047】
発泡樹脂成形体30には、車両の搭乗者が座る側となる上面31と、車両に締結される側となる底面32が形成されている。発泡樹脂成形体30は、フレーム材20を埋設するとともに、車両用シート部材10の平面視において、車両用シート部材10の輪郭Sを形成する枠状部35を備えている。枠状部35は、車両用シート部材10を取り付けた状態で、座席の前方に位置する前方部分35aと、前方部分35aと一体的に形成され、座席の左右側方に位置し、前方部分の両端部から35aから後方に延び、後方端の近傍が傾斜した一対の側方部分35c,35cと、側方部分35c,35cと一体的に形成され、一対の側方部分35c,35cの後方端を接続する後方部分35bと、から構成されている。車両用シート部材10が車両に組み込まれたとき、枠状部35のうち、前方部分35aは搭乗者の上腿部を支持し、後方部分35bは搭乗者の臀部を支持する。
【0048】
具体的には、図4に示すように、発泡樹脂成形体30の上面31は、下方に窪んだ曲面であることで、上部シート部材50を介し、搭乗者の上腿部及び臀部を保持するよう形成されている。ただし、発泡樹脂成形体30の形状および厚みは、車両用シート部材10が取り付けられる車両本体側の形状によって種々変化し得るものであり、図示する実施形態には限定されない。例えば発泡樹脂成形体30の上面31は概ね平坦な形状であってもよい。
【0049】
発泡樹脂成形体30は、枠状部35の内側において枠状部35をわたすように枠状部35からその内側に延在する延在部36を備えている。本実施形態では、延在部36は、長手方向に延在する第1延在部分36Aと、短手方向に延在する第2延在部分36Bとにより構成されている。第1延在部分36Aと第2延在部分36Bとは、連結部36Cにより連結されている。本実施形態では、延在部36は複数の延在部分36A,36Bから構成されているが、これには限定されず、1つの延在部分のみからなっていてもよい。例えば延在部36が、第1延在部分36Aのみから構成されていてもよいし、第2延在部分36Bのみから構成されていてもよい。延在部36が枠状部35をわたすように延在する複数の延在部分を含む場合、複数の延在部分の各々は任意の方向に沿って設けることができる。
【0050】
本実施形態では、フレーム材20は、枠状部35の内側の空間を挟んで対向する対向部分22a,22a同士が連続した第2骨組み部22(連続部分)を有している。延在部36のうち第1延在部分36Aが、対向部分22a、22aの間に亘って延在するように形成されている。
【0051】
発泡樹脂成形体30において延在部36は車両用シート部材10の形状を保持する部分である。発泡樹脂成形体30において枠状部35の内側に空間に延在部36を形成することにより、枠状部35と延在部36との間には肉抜き部38aが形成されている。肉抜き部38aは発泡樹脂成形体30を軽量化することや、車両用シートを構成する他の部材(例えば、発泡樹脂成形体30よりも弾性変形しやすいクッション材、コンソールボックスの部材等)を収容することを目的として設けられる。図示する本実施形態では発泡樹脂成形体30に肉抜き部38aは6か所形成されているが、肉抜き部38aの数は限定されない。
【0052】
図1〜3に示すように、発泡樹脂成形体30の延在部36には、第1延在部分36Aの延在方向Lに沿って延在するフレーム材20の補強部26が埋設されている。より具体的には、延在部36のうち第1延在部分36Aの延在する延在方向Lは、車両用シート部材10の長手方向に一致しており、フレーム材20の補強部26は、長手方向である延在方向Lに延在する第1延在部分36Aに沿って延在し、埋設される。図示する実施形態のように、延在部36に複数の延在部分が存在する場合は、延在部分の少なくとも1つに、その延在方向に沿って延在する補強部が埋設されていればよい。
【0053】
ここで仮に、発泡樹脂成形体30のうち枠状部35にフレーム材20の第1及び第2の骨組み部21,22が埋設され、延在部36にフレーム材20の補強部26が埋設されていない場合には、車両用シート部材10に入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)、発泡樹脂成形体30のうちフレーム材20の第1及び第2の骨組み部21,22が埋設された状態の枠状部35と、枠状部35の内部に延在してフレーム材20が存在しない延在部36とでは、見かけ上の熱膨張量(熱収縮量)が異なる。これにより、枠状部35に囲まれた延在部36には、熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部36の中央が例えば上側に湾曲するように変形し易い。特に、延在部36のうち、長手方向に沿って形成された第1延在部分36Aでは、このような現象が顕著である。
【0054】
本実施形態では、フレーム材20が第1骨組み部21及び第2骨組み部22だけでなく更に補強部26を備え、この補強部26を、枠状部35の内側に延在する延在部36のうち長手方向に沿って延在する第1延在部分36Aに埋設させることにより、延在部36を補強する。これにより、延在部36が熱膨張または熱収縮しても、熱応力による延在部36の変形を抑えることができ、車両用シート部材10の寸法精度を確保することができる。
【0055】
特に、本実施形態では、対向する一対の対向部分22a,22a同士が連続した構造を有する第2骨組み部22が枠状部35に埋設されており、延在部36の第1延在部分36Aは、対向部分22a、22aの間に亘って延在するように形成されている。この構成では、延在部36の第1延在部分36Aの両側が拘束されるため、仮に、補強部26を設けない場合は、第1延在部分36Aを含む延在部36は熱膨張および熱収縮により特に変形し易い。本実施形態では、第1延在部分36Aに補強部26を埋設することにより、第1延在部分36Aを含む延在部36の変形をより効果的に抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態のように、フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部22を含む部分が、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回している場合は、枠状部35の全周にわたって、熱応力による変形が抑制される。このため、補強部26を設けない場合は、枠状部35の内側に形成される延在部36がさらに変形し易い。このような場合であっても、本実施形態では、上述したように、延在部36に補強部26を埋設させることで、延在部36の変形をより効果的に抑えることができる。
【0057】
4.車両用シート部材10の製造方法について
以下に図5を参照しながら車両用シート部材10の製造方法について説明する。図5では、製造方法の各工程を、図4に示すI−I線矢視断面図に対応した位置における模式的断面図により説明する。
【0058】
本実施形態の車両用シート部材10の製造方法の概略は次の通りである。図5(A)に示すように、フレーム材20を成形型7のキャビティ73に位置するように配置し、次に、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子30Aを充填する。次に、図5(B)に示すように、成形型7内に蒸気を供給することにより予備発泡樹脂粒子30Aを発泡させ、発泡樹脂成形体30を成形する。その後、図5(C)に示すように、フレーム材20と共に発泡樹脂成形体30を成形型7から脱型し、放冷等で冷却する。
【0059】
ところで、発泡樹脂成形体30は、通常、成形後、発泡成形時の残熱が放熱する際に、わずかに収縮する性質を有する。一方、金属等の材料により構成されたフレーム材20は、発泡樹脂成形体30の成形の前後で、発泡樹脂成形体30に比べて実質的な寸法変化がない。したがって、延在部36に、フレーム材20の補強部26を埋設しない場合には、図6(A)に示すように、発泡樹脂成形体30を、第1型71および第2型72からなる成形型7で成形し、図6(B)に示すように、成形直後から成形型7から発泡樹脂成形体30を脱型して発泡樹脂成形体30が放熱するまでの間、発泡樹脂成形体30は熱収縮する。このとき、フレーム材20が存在しない延在部36の両側は、フレーム材20の第2骨組み部22が存在する枠状部35で拘束されているため、延在部36には熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部36は中央から上側に湾曲するように変形し易い。
【0060】
このような点を鑑みて、本実施形態では、以下のようにして、車両用シート部材10を製造する。まず、フレーム材20を準備する。フレーム材20の構造および材質は、上述した通りである。次に、図5(A)に示すように、車両用シート部材10の平面視での輪郭Sに沿って、発泡樹脂成形体30の枠状部35に埋設される位置に第1骨組み部21及び第2骨組み部22が配置され、発泡樹脂成形体30の延在部36が延在する延在方向Lに沿って、延在部36に埋設される位置に補強部26が配置されるように、フレーム材20を成形型7内に配置する(配置工程)。このとき、ロボットを用いて、フレーム材20を成形型7内に配置してもよい。
【0061】
図5(A)に示すように、成形型7は、第1型71および第2型72からなり、第1型71および第2型72を型締めした際に、成形型7内に、発泡樹脂成形体30に応じたキャビティ73が形成されるように構成されている。
【0062】
次に、図5(A)に示すように、フレーム材20が内部に配置された第1型71および第2型72を仮型締め(クラッキング)した後に、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子30Aを充填し、型締めする。
【0063】
次に、図5(B)に示すように、蒸気等で成形型7のキャビティ73内を加熱して予備発泡樹脂粒子30Aを二次発泡させ、予備発泡樹脂粒子30A間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子30Aを相互に融着させることにより一体化し、発泡樹脂成形体30を成形する(成形工程)。
【0064】
これにより、成形型7内において、枠状部35と、延在部36とを含む発泡樹脂成形体30を成形することができる。成形された枠状部35は、フレーム材20のうち第1骨組み部21及び第2骨組み部22を埋設するとともに、車両用シート部材10の輪郭Sを形成する。成形された延在部36は、第1延在部分36Aが、枠状部35の一対の側方部分35c,35cの間をわたすように延在し、第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の前方部分35aと後方部分35bとの間をわたすように延在する。延在部36の第1延在部分36Aは、その延在方向Lに沿って配置された、フレーム材20の補強部26を埋設する。
【0065】
次に、発泡樹脂成形体30を成形型7から脱型し、発泡樹脂成形体30とフレーム材20とが一体化された本実施形態の車両用シート部材10を得ることができる。ここで、発泡樹脂成形体30を成形型7から脱型する途中から脱型後に、成形時の残熱が放熱することにより、発泡樹脂成形体30が収縮する。
【0066】
実施形態では、延在部36が熱収縮しても、補強部26が埋設されているため、延在部36の熱応力による変形を抑えることができる。この結果、寸法精度の高い車両用シート部材10を製造することができる。
【0067】
本実施形態では、フレーム材20は、第2骨組み部22を有しており、第2骨組み部22は、枠状部35の内側の空間を挟んで対向する対向部分22a,22a同士が連続した連続部分を有している。発泡樹脂成形体30を成形する際には、対向部分22a,22aの間に亘って延在する第1延在部分36Aを有するように延在部36を成形している。したがって、フレーム材20の第2骨組み部22の対向部分22a,22aが埋設された枠状部35の側方部分35c,35cに、延在部36の第1延在部分36Aの両側が拘束されるため、図6に示すようにフレーム材20の補強部26を設けない場合は、延在部36が、熱収縮により変形し易い。特に、フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部21を含む部分を、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回させているため、このような変形は生じ易い。本実施形態では、成形工程時に、延在部分の1つである第1延在部分36Aにフレーム材20の補強部26を埋設するように延在部36を成形することにより、このような変形を抑制することができる。
【0068】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態に係る車両用シート部材10およびその製造方法を図7および図8を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に係る車両用シート部材10が第1実施形態に係る車両用シート部材10と相違する点は、延在部36のうち、車両用シート部材10の輪郭Sの長手方向に延在する第1延在部36Aではなく、短手方向に延在する第2延在部36B,36Bに、それに沿って延在する補強部26,26を埋設する点である。第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、2本の補強部26,26を、それぞれ、枠状部35の内側に延在する延在部36のうち短手方向に沿って延在する2本の第2延在部分36B,36Bに埋設させることにより、延在部36を補強する。これにより、延在部36が熱膨張または熱収縮しても、熱応力による延在部36の変形を抑えることができ、車両用シート部材10の寸法精度を確保することができる。
【0070】
本実施形態では、フレーム材20が、第1骨組み部21と、それに対向する、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとが連続した構造を有する。そして、第1骨組み部21と、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとが、枠状部35に埋設されており、延在部36の第2延在部分36B,36Bは、それぞれ、第1骨組み部21と、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとの間に亘って延在するように形成されている。この構成では、延在部36の第2延在部分36B,36Bの両側がそれぞれ拘束されるため、仮に、補強部26を設けない場合は、第2延在部分36B,36Bを含む延在部36は熱膨張および熱収縮により特に変形し易い。本実施形態では、第2延在部分36B,36Bに補強部26,26を埋設することにより、第2延在部分36B,36Bを含む延在部36の変形をより効果的に抑えることができる。
【0071】
第2実施形態に係る車両用シート部材10の製造は、第1実施形態と同様と同様の手順で行うことができる。
まず、車両用シート部材10の平面視での輪郭Sに沿って、発泡樹脂成形体30の枠状部35に埋設される位置に第1骨組み部21及び第2骨組み部22が配置され、発泡樹脂成形体30の延在部36のうち第2延在部分36B,36Bに埋設される位置に補強部26,26が配置されるように、フレーム材20を成形型内に配置する(配置工程)。ここで、成形型は第1型および第2型からなり、第1型および第2型を型締めした際に、成形型内に、発泡樹脂成形体30に応じたキャビティが形成されるように構成されている。
【0072】
次に、フレーム材20が内部に配置された第1型および第2型を仮型締め(クラッキング)した後に、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填し、型締めする。
【0073】
次に、蒸気等で成形型のキャビティ内を加熱して予備発泡樹脂粒子を二次発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化し、発泡樹脂成形体30を成形する(成形工程)。
【0074】
これにより、成形型内において、枠状部35と延在部36とを含む発泡樹脂成形体30を成形することができる。成形された枠状部35は、フレーム材20のうち第1骨組み部21及び第2骨組み部22を埋設するとともに、車両用シート部材10の輪郭Sを形成する。成形された延在部36は、第1延在部分36Aが、枠状部35の一対の側方部分35c,35cの間をわたすように延在し、第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の前方部分35aと後方部分35bとの間をわたすように延在する。延在部36の第2延在部分36B,36Bは、その延在方向に沿って配置された、フレーム材20の補強部26,26を埋設する。
【0075】
次に、発泡樹脂成形体30を成形型から脱型し、発泡樹脂成形体30とフレーム材20とが一体化された本実施形態の車両用シート部材10を得ることができる。ここで、発泡樹脂成形体30を成形型から脱型する途中から脱型後に、成形時の残熱が放熱することにより、発泡樹脂成形体30が収縮する。
【0076】
本実施形態では、延在部36が熱収縮しても、第2延在部分36B,36Bに補強部26が埋設されているため、延在部36の熱応力による変形を抑えることができる。この結果、寸法精度の高い車両用シート部材10を製造することができる。
【0077】
本実施形態では、フレーム材20が、一対の対向する部分である、第1骨組み部21と、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとが連続する連続構造を有するように形成されている。そしてこの連続構造を有するフレーム材20が枠状部35に埋設されており、延在部36の第2延在部分36B,36Bは、それぞれ、第1骨組み部21と、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとの間に亘って延在するように形成されている。このため延在部36の第2延在部分36B,36Bの一方の末端は、フレーム材20の第1骨組み部21が埋設された、枠状部35の前方部分35aに拘束され、延在部36の第2延在部分36B,36Bの他方の末端は、フレーム材20の第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bが埋設された、枠状部35の後方部分35bに拘束されるため、仮に、フレーム材20の補強部26,26を設けない場合は、延在部36が、熱収縮により変形し易い。しかも本実施形態では、フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部22を含む部分を、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回させているため、このような変形が特に生じ易い。本実施形態では、成形工程時に、延在部分の1つである第2延在部分36B,36Bに、それぞれ、フレーム材20の補強部26,26を埋設するように延在部36を成形することにより、このような変形を抑制することができる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0079】
1:車両用シート、7:成形型、10:車両用シート部材、20:フレーム材、21:第1骨組み部、22:第2骨組み部、26:補強部、30:発泡樹脂成形体、35:枠状部、36:延在部、36A:第1延在部分、36B:第2延在部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8