(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プリント配線基板に用いられる絶縁層の要求特性はさらに高まっており、耐熱性、誘電特性および熱安定性を兼ね備えた絶縁性樹脂材料が求められている。
本発明者らの検討によれば、従来のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、得られる硬化物の誘電特性、耐熱性、および熱安定性をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることが明らかになった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、プリント配線基板に好適な高周波領域での誘電特性を満足しながら耐熱性および熱安定性にも優れた硬化物を得ることが可能なポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテルと、環状オレフィン(共)重合体とを特定の割合で混合することにより、耐熱性および熱安定性を満足しながら、高周波領域での誘電特性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は以下に示すとおりである。
【0010】
[1]
ポリフェニレンエーテル(A)と、環状オレフィン(共)重合体(B)と、を含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、
当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中の上記環状オレフィン(共)重合体(B)の含有量に対する上記ポリフェニレンエーテル(A)の含有量
(質量)の比((A)/(B))が5超過50以下であ
って、
上記ポリフェニレンエーテル(A)が、炭素−炭素不飽和結合を有する置換基により変性された変性ポリフェニレンエーテルを含む、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)が、
下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位(a)と、
下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、を含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(I)において、R
300は水素原子又は炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。)
【化2】
(上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)
【化3】
(上記一般式(III)において、xおよびdは0または1以上の整数であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【化4】
(上記一般式(IV)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。)
[3]
上記[2]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)中の上記環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)が、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[4]
上記[2]または[3]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)が、下記一般式(V)で表される繰り返し単位、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位および下記一般式(VII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)をさらに含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【化5】
(上記一般式(V)において、R
201からR
206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1〜20の直鎖または分岐状の炭化水素基で、二重結合及び/または三重結合を含んでいてもよい。)
【化6】
(上記一般式(VI)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
102とR
103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)
【化7】
(上記一般式(VII)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)
[5]
上記[4]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)中の上記非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)が、上記一般式(VII)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[6]
上記[4]または[5]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)中の上記非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)が5−ビニル−2−ノルボルネンおよび8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する繰り返し単位であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)の、135℃のデカリン中での極限粘度[η]が0.01dl/g以上1.0dl/g以下であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
8]
上記[1]乃至[
7]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
架橋助剤(D)をさらに含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
9]
上記[
8]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中の上記ポリフェニレンエーテル(A)の含有量を100質量部としたとき、
上記環状オレフィン(共)重合体(B)の含有量が2質量部以上20質量部未満であり、
上記架橋助剤(D)の含有量が5質量部以上50質量部以下であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
10]
上記[1]乃至[
9]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記ポリフェニレンエーテル(A)の数平均分子量が500以上7000以下であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
11]
上記[1]乃至[
10]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記ポリフェニレンエーテル(A)と上記環状オレフィン(共)重合体(B)とを相溶化させる相溶化剤(C)をさらに含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
12]
上記[
11]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記相溶化剤(C)が変性ポリオレフィンおよび変性エラストマーから選択される少なくとも一種を含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
13]
上記[
11]または[
12]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、
上記相溶化剤(C)の含有量が、当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中の上記ポリフェニレンエーテル(A)を100質量部としたとき、0.1質量部以上10質量部以下であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[
14]
上記[1]乃至[
13]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[
15]
上記[1]乃至[
13]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物からなるドライフィルム。
[
16]
上記[
15]に記載のドライフィルムを硬化してなるフィルム。
[
17]
上記[1]乃至[
13]のいずれか一つに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物とシート状繊維基材とを含むプリプレグ。
[
18]
上記[
15]に記載のドライフィルム、上記[
16]に記載のフィルム、および上記[
17]に記載のプリプレグから選択される少なくとも一種と、金属箔と、を積層してなる金属張積層板。
[
19]
上記[
15]に記載のドライフィルム、上記[
16]に記載のフィルム、および上記[
17]に記載のプリプレグから選択される少なくとも一種により形成された電気絶縁層と、上記電気絶縁層上に設けられた導体層とを備えるプリント配線基板。
[
20]
上記[
19]に記載のプリント配線基板を備えた電子機器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プリント配線基板に好適な高周波領域での誘電特性を満足しながら耐熱性および熱安定性にも優れた硬化物を得ることが可能なポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A〜B」はとくに断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0013】
[ポリフェニレンエーテル樹脂組成物]
まず、本発明に係る実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(A)と、環状オレフィン(共)重合体(B)と、を含む。そして、当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中の環状オレフィン(共)重合体(B)の含有量に対するポリフェニレンエーテル(A)の含有量の比((A)/(B))が5超過50以下であり、好ましくは5.2以上20以下であり、より好ましくは5.2以上10以下である。
(A)/(B)が上記下限値以上または超過であることにより、得られる硬化物について、良好な誘電特性および耐熱性を満たしながら熱安定性を向上させることができる。また、(A)/(B)が上記上限値以下であることにより、得られる硬化物について、良好な熱安定性および耐熱性を満たしながら誘電特性を向上させることができる。
以上から、(A)/(B)が上記範囲内であることにより、プリント配線基板に好適な高周波領域での誘電特性を満足しながら耐熱性および熱安定性にも優れた硬化物を得ることが可能となる。
【0014】
また、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル(A)および環状オレフィン(共)重合体(B)の合計含有量は、得られる硬化物の誘電特性、耐熱性、および熱安定性の性能バランスをより向上させる観点から、当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは20質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上99質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上97質量%以下である。
以下、各成分について具体的に説明する。
【0015】
[ポリフェニレンエーテル(A)]
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル(A)としては、例えば、未変性ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルから選択される少なくとも一種を用いることができる。
変性ポリフェニレンエーテルは特に限定はされないが、例えば、国際公開第2014/203511号の段落0018〜0061に記載のものを用いることができる。
より具体的には、以下のとおりである。
【0016】
本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテルは特に限定されないが、炭素−炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテルであることが好ましい。
炭素−炭素不飽和結合を有する置換基としては、特に限定はされないが、例えば、下記式(1)で示される置換基が挙げられる。
【0017】
【化8】
上記式(1)中、nは0〜10の整数を示し、Zはアリーレン基を示し、R
1〜R
3は独立して水素原子またはアルキル基を示す。
ここで、上記式(1)においてn=0の場合は、Zがポリフェニレンエーテルの末端に直接結合しているものを示す。また、Zのアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等の単環芳香族基やナフタレン環等の多環芳香族基が挙げられ、芳香族環に結合する水素原子がアルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0018】
上記式(1)に示す官能基としては、例えば、ビニルベンジル基を含む官能基が挙げられる。より具体的には、下記式(2)または式(3)から選択される少なくとも1つの置換基等が挙げられる。
【0021】
上記炭素−炭素不飽和結合を有する他の置換基としては、例えば、下記式(4)で示される(メタ)アクリレート基が挙げられる。
【0022】
【化11】
上記式(4)中、R
4は水素原子またはアルキル基を示す。
【0023】
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル(A)の数平均分子量は特に限定されないが、得られる硬化物の誘電特性、接着性、耐熱性のバランスをより良好にできる観点から、500以上7000以下であることが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましく、1000以上3000以下であることがさらに好ましい。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した値である。
【0024】
また、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有しており、例えば、下記式(5)で表される繰り返し単位を分子中に有していることが好ましい。
【0025】
【化12】
上記式(5)において、mは1〜50を示す。また、R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立し、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R
5、R
6、R
7及びR
8は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。これらの中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0026】
上記アルキル基は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
アルケニル基は特に限定されないが、例えば、炭素数2〜18のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜10のアルケニル基がより好ましい。より具体的には、ビニル基、アリル基、及び3−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基は特に限定されないが、例えば、炭素数2〜18のアルキニル基が好ましく、炭素数2〜10のアルキニル基がより好ましい。より具体的には、エチニル基、及びプロパ−2−イン−1−イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0027】
アルキルカルボニル基はアルキル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数2〜18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2〜10のアルキルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
アルケニルカルボニル基はアルケニル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数3〜18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3〜10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
アルキニルカルボニル基はアルキニル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数3〜18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3〜10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0028】
また、変性ポリフェニレンエーテルが、上記式(5)で表される繰り返し単位を分子中に有している場合、mは変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が上述したような範囲内になるような数値であることが好ましい。具体的には1〜50であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテルの合成方法は、炭素−炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテルを合成することができれば特に限定されない。例えば、末端のフェノール性水酸基の水素原子をナトリウムやカリウム等のアルカリ金属原子で置換したポリフェニレンエーテルと、下記式(6)で示されるような化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0031】
上記式(6)中、上記式(1)と同様に、nは0〜10の整数を示し、Zはアリーレン基を示し、R
1〜R
3は独立して水素原子またはアルキル基を示す。また、Xは、ハロゲン原子を示し、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。この中でも、塩素原子が好ましい。
【0032】
また、上記式(6)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、p−クロロメチルスチレンやm−クロロメチルスチレンが好ましい。
【0033】
また、上記式(6)で表される化合物は、上記例示したものを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に、所定の変性ポリフェニレンエーテルを合成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリアリーレンエーテル共重合体やポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。このようなポリフェニレンエーテルは、より具体的には、例えば、下記式(7)に示す構造を有するポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0036】
上記式(7)中、s、tは、例えば、sとtとの合計値が、1〜30であることが好ましい。また、sが、0〜20であることが好ましく、tが、0〜20であることが好ましい。すなわち、sは、0〜20を示し、tは、0〜20を示し、sとtとの合計は、1〜30を示すことが好ましい。
【0037】
[環状オレフィン(共)重合体(B)]
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)は、環状オレフィンに由来する繰り返し単位を必須構成単位とする(共)重合体である。
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)を構成する環状オレフィン化合物は特に限定はされないが、例えば、国際公開第2006/0118261号の段落0037〜0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
【0038】
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)を含有することが好ましく、得られる硬化物やプリプレグ、プリント配線基板の耐熱性および熱安定性を良好に保ちつつ誘電特性をさらに向上できたり、プリプレグを作製する際のシート状繊維基材等へのポリフェニレンエーテル樹脂組成物の含浸性を向上できたりする観点から、下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位(a)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、を含有することがより好ましい。
【0039】
【化15】
上記一般式(I)において、R
300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。
【0040】
【化16】
上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0041】
【化17】
上記一般式(III)において、xおよびdは0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0042】
【化18】
上記一般式(IV)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0043】
また、本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)は、得られる硬化物やプリプレグ、プリント配線基板の誘電特性および熱安定性を良好に保ちつつ耐熱性(特にはんだ耐熱性)およびシート状繊維基材への含浸性をさらに向上させる観点から、下記一般式(V)で表される繰り返し単位、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位および下記一般式(VII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)をさらに含有することが好ましく、下記一般式(VII)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位を含むことが特に好ましい。
【0044】
【化19】
上記一般式(V)において、R
201からR
206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1〜20の直鎖または分岐状の炭化水素基で、二重結合及び/または三重結合を含んでいてもよい。
【0045】
【化20】
上記一般式(VI)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
102とR
103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0046】
【化21】
上記一般式(VII)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0047】
(オレフィンモノマー)
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは付加共重合して上記一般式(I)で表される構成単位を形成するものである。具体的には上記一般式(I)に対応する下記一般式(Ia)で表されたオレフィンモノマーが用いられる。
【0048】
【化22】
上記一般式(Ia)において、R
300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。上記一般式(Ia)で表されたオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、および透明性を有する硬化物を得る観点から、これらのなかでも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは2種類以上を用いてもよい。
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)中に含まれる、オレフィンモノマー由来の繰り返し単位(a)と、環状オレフィンモノマー(b)由来の繰り返し単位(b)と、側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の繰り返し単位(c)との合計モル数を100モル%としたとき、オレフィン由来の繰り返し単位(a)の割合が、好ましくは40モル%以上90モル%以下、より好ましくは45モル%以上85モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上80モル%以下である。
【0049】
(環状オレフィンモノマー(b))
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)の共重合原料の一つである環状オレフィンモノマー(b)は付加共重合して上記一般式(II)、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)を形成するものである。具体的には、上記一般式(II)、上記一般式(III)、および上記一般式(IV)にそれぞれ対応する一般式(IIa)、(IIIa)、および(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)が用いられる。
【0050】
【化23】
上記一般式(IIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0051】
【化24】
上記一般式(IIIa)において、xおよびdは0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0052】
【化25】
上記一般式(IVa)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0053】
共重合成分として、上述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)を用いることにより、環状オレフィン(共)重合体(B)の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
【0054】
一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)の具体例については国際公開第2006/0118261号の段落0037〜0063に記載の化合物を用いることができる。
【0055】
具体的には、ビシクロ−2−ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト−2−エン誘導体)、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3〜20のシクロアルキレン誘導体が挙げられる。
【0056】
一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)の中でも、一般式(IIa)で表される環状オレフィンが好ましい。
【0057】
上記一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマー(b)として、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネンとも呼ぶ。)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)を用いることが好ましく、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンを用いることがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および硬化物の弾性率が保持され易く、また異種二重結合構造を含まないため架橋の制御をし易くなる利点がある。
【0058】
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)中に含まれる、オレフィンモノマー由来の繰り返し単位(a)と環状オレフィンモノマー(b)由来の繰り返し単位(b)と側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の繰り返し単位(c)との合計モル数を100モル%としたとき、環状オレフィンモノマー(b)由来の繰り返し単位(b)の割合が、好ましくは1モル%以上50モル%以下、より好ましくは3モル%以上45モル%以下、さらに好ましくは5モル%以上40モル%以下である。
【0059】
(側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c))
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)の共重合原料の一つである側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)は付加共重合して上記一般式(V)、上記一般式(VI)、または上記一般式(VII)の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)を形成するものである。具体的には、上記一般式(V)、上記一般式(VI)、上記一般式(VII)にそれぞれ対応する一般式(Va)、(VIa)、(VIIa)で表される側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)が用いられる。
【0061】
上記一般式(Va)において、R
201からR
206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1〜20の直鎖または分岐状の炭化水素基で、二重結合及び/または三重結合を含んでいてもよい。
【0062】
上記一般式(Va)で表される直鎖状ポリエンとして、特に限定されるものではないが、例えば、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、DMDT、1,3−ブタジエン,1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。また1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン等のポリエンから環化した環化性のポリエンを用いてもよい。
【0064】
上記一般式(VIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
102とR
103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0065】
上記一般式(VIa)で表される側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)としては、特に限定されるものではないが、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−n−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−6−メチル−2−ノルボルネン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン等が挙げられる。このうち5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0067】
上記一般式(VIIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0068】
上記一般式(VIIa)で表される側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式で表される側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)を挙げることができる。これらのうち5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンが好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0071】
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)は、上記側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の繰り返し単位(c)を含むことによって、側鎖部分、すなわち共重合の主鎖以外の部分に二重結合を有することできる。
【0072】
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)中に含まれる、上記オレフィンモノマー由来の繰り返し単位(a)と、上記環状オレフィンモノマー(b)由来の繰り返し単位(b)と、上記側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の繰り返し単位(c)との合計モル数を100モル%としたとき、側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の繰り返し単位(c)の割合が、好ましくは1モル%以上50モル%以下、より好ましくは3モル%以上45モル%以下、さらに好ましくは5モル%以上40モル%以下である。
【0073】
特に、上記側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の繰り返し単位(c)の割合が上記範囲内であると、得られる硬化物は、誘電特性の経時的安定性がより一層優れるとともに耐熱性にも優れる。さらに、機械特性、誘電特性、および透明性にも優れた硬化物を得ることができる。言い換えればこれらの物性のバランスに優れた硬化物を得ることができる。
側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の構成単位(c)の割合を上記上限値以下とすることにより、環状オレフィン(共)重合体(B)の成形性や溶解性を向上させつつ、硬化物の誘電特性の経時的安定性をより一層向上させることができる。また、側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)由来の構成単位(c)の割合を上記下限値以上とすることにより、硬化物の耐熱性、機械的特性をより一層向上させることができる。
【0074】
繰り返し単位(c)あたりの二重結合の数は用途により適宜設定することができるが、その由来となる側鎖部分に架橋性二重結合を有するモノマー(c)としては、反応制御等の観点から5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、ジシクロペンタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジエン化合物が好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、ジシクロペンタジエンがより好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンがさらに好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0075】
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)は目的とする用途に応じて、モノマーの仕込み比により、そのコモノマー含有量、およびガラス転移温度(Tg)をコントロールできる。本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)のTgは、通常は50℃以上300℃以下であり、好ましくは60℃以上250℃以下であり、とくに好ましくは70℃以上200℃以下である。Tgが上記上限値以下であると、環状オレフィン(共)重合体(B)の成形性をより一層向上させることができる。また、Tgが上記下限値以上であると、得られる硬化物の耐熱性や機械的特性が向上する。
【0076】
プリプレグを作製する際のシート状繊維基材等へのポリフェニレンエーテル樹脂組成物の含浸性を向上させる観点から、本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)の、135℃中デカリン中で測定した極限粘度[η]は、例えば、0.01〜1.0dl/gであり、好ましくは0.05〜0.7dl/gであり、より好ましくは0.10〜0.5dl/gである。
なお、環状オレフィン(共)重合体(B)の極限粘度[η]は、重合触媒、助触媒、H
2添加量、重合温度等の重合条件により制御することが可能である。
【0077】
ここで、環状オレフィンの開環重合体としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。
【0078】
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体、等が挙げられる。
これらの誘導体の環に置換される置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。なお、置換基は、1個または2個以上を有することができる。このような環に置換基を有する誘導体としては、例えば、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0079】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、またはノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。
開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウム等の金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒;等を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体等を挙げることができる。
【0080】
ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物や、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体の水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0081】
(環状オレフィン(共)重合体(B)の製造方法)
本実施形態に係る環状オレフィン(共)重合体(B)は、例えば、国際公開第2012/046443号の段落0075〜0219に記載の環状オレフィン(共)重合体の製造方法や国際公開第2006/118261号の段落0095〜0234に記載の環状オレフィン(共)重合体の製造方法にしたがって製造することができる。ここでは詳細は省略する。
【0082】
[相溶化剤(C)]
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(A)と環状オレフィン(共)重合体(B)との相溶性を向上させ、誘電特性、耐熱性、および熱安定性等の性能バランスにより一層優れた硬化物を得る観点から、ポリフェニレンエーテル(A)と環状オレフィン(共)重合体(B)とを相溶化させる相溶化剤(C)をさらに含有することが好ましい。
相溶化剤(C)としては、例えば、変性ポリオレフィン、変性エラストマー、分子内に極性基と重合反応に寄与することのできる不飽和炭素結合とを備えた化合物等が挙げられる。
【0083】
変性ポリオレフィンとしては、極性基を有する単量体をグラフトまたはグラフト重合させたポリオレフィン、オレフィンと極性基を有する単量体との共重合体等が挙げられる。
これらの中でも極性基を有する単量体をグラフトさせたポリオレフィンが好ましい。ここで、「グラフト」とは、主鎖である幹ポリマーに、極性基を有する化合物を導入することをいう。「グラフト重合させた」とは、主鎖である幹ポリマーに、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することをいう。
【0084】
極性基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミド基、エステル基、酸無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上の組み合わせで用いられる。これらの中でも、得られる硬化物の機械的強度をより一層向上できる観点から、カルボキシル基および酸無水物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0085】
このような極性基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、オキサゾリン等が挙げられる。上記化合物は、単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0086】
また、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、ポリ−4−メチルペンテン、ポリブテン、等のポリオレフィン類またはオリゴマー類、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、クロロスルフィン化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩素化ポリエチレン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらの単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0087】
このような極性基を有する単量体をグラフトさせたポリオレフィンとしては、例えば、極性基を有する単量体をグラフトしたプロピレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。
【0088】
変性エラストマーとしては、極性基を有する単量体をグラフトまたはグラフト重合させたエラストマー等が挙げられる。
極性基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミド基、エステル基、酸無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上の組み合わせで用いられる。これらの中でも、得られる硬化物の機械的強度をより一層向上できる観点から、カルボキシル基および酸無水物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0089】
このような極性基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、オキサゾリン等が挙げられる。上記化合物は、単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0090】
また、エラストマーとしては、例えば、スチレン・共役ジエンブロック共重合樹脂(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)、スチレン・共役ジエンブロック共重合樹脂の水素添加物(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)、スチレン・共役ジエン・スチレンのトリブロック共重合樹脂(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)、スチレン・共役ジエン・スチレンのトリブロック共重合樹脂の水素添加物(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)等のスチレン系エラストマー;天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム等の合成ゴム;ポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー等が挙げられる。これらの単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0091】
このような極性基を有する単量体をグラフトさせたエラストマーとしては、例えば、無水マレイン酸をグラフトしたスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物等のマレイン酸変性エラストマー等が挙げられる。
【0092】
さらに、相溶化剤(C)としては上述のような変性ポリオレフィンや変性エラストマーに代表される高分子化合物には限定されず、繰り返し単位を有さない低分子化合物を用いることができる。
【0093】
このような低分子化合物としては、分子内に極性基と重合反応に寄与することのできる不飽和炭素結合とを備えた化合物が好ましい。ここで示した、極性基としてはアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミド基、エステル基、グリシジル基等が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の機械的強度をより一層向上できる観点から、エポキシ基、グリシジル基が好ましい。
【0094】
分子内に極性基と重合反応に寄与することのできる不飽和炭素結合とを備えた化合物としては、入手容易性等の観点から、アクリル酸やメタクリル酸、あるいはこれらの誘導体を用いることが好ましい。
【0095】
アクリル酸誘導体の例としてはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
また、メタクリル酸誘導体の例としてはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、メタクリロニトリル等が挙げられる。
これらの中でも、得られる硬化物の機械的強度をより一層向上できる観点から、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
【0096】
上記に相溶化剤(C)として用いることのできる化合物の例を列挙したが、これらは単独で用いることもできるし、複数種類を組み合わせて使用することもできる。
相溶化剤(C)の含有量は、当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル(A)を100質量部としたとき、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは1量部以上5質量部以下であり、特に好ましくは2質量部以上5質量部以下である。
【0097】
[ワニス]
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、溶媒と混合することによりワニスとすることができる。上記ワニスを調整するための溶媒としては、ポリフェニレンエーテル(A)および環状オレフィン(共)重合体(B)に対して溶解性または親和性を損なわないものであれば特に限定されない。溶媒として好ましく用いられるものは、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。より好ましくはトルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンである。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
本実施形態において、ワニスを作製する方法としては、いかなる方法で実施してもよいが、通常はポリフェニレンエーテル樹脂組成物と溶媒とを混合する工程を含む。各成分の混合については、その順序に制限はなく、一括または分割等のいかなる方式でも実施することができる。ワニスを調製する装置としても、制限はなく、撹拌、混合が可能な、バッチ式、もしくは連続式の、いかなる装置で実施してもよい。ワニスを調製する際の温度は、室温から溶媒の沸点までの範囲で任意に選択することができる。
なお、環状オレフィン(共)重合体(B)が得られた際の反応溶液をそのまま溶媒として用い、そこへポリフェニレンエーテル(A)を溶解させることによりワニスを調製してもよい。また、環状オレフィン(共)重合体(B)を精製した後、別途ポリフェニレンエーテル(A)および溶媒を添加することによりワニスを調製してもよい。
【0099】
[硬化物]
本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物の硬化物であり、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を硬化することにより得られる。ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の硬化方法としては特に制限はないが、ラジカル重合開始剤や、電子線や他の放射線を用いて、任意の形に成形しながら、または成形後に硬化する方法等が挙げられる。
【0100】
ラジカル重合開始剤による硬化は、ポリオレフィンで適用されている通常のラジカル重合開始剤による硬化方法をそのまま適用できる。すなわち本実施形態に係るポリフェニレンエーテル(A)および環状オレフィン(共)重合体(B)にジクミルパーオキシドのようなラジカル重合開始剤を配合し、加熱、硬化する。ラジカル重合開始剤の配合割合は特に制限がないものの、ポリフェニレンエーテル(A)および環状オレフィン(共)重合体(B)の合計100質量部あたり通常は0.02〜20質量部であり、好ましくは0.05〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。ラジカル重合開始剤の配合割合が上記上限値以下であると、硬化物の誘電特性が向上し、上記下限値以上であると、硬化物の耐熱性および機械的特性を向上させることができる。
【0101】
上記ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤およびこれらを併用することができる。これらのラジカル重合開始剤のうち、熱ラジカル重合開始剤を使用する場合は、保存安定性の観点から10時間半減期温度が通常80℃以上、好ましくは120℃以上のものである。このような開始剤として、例えば、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)2,5−ジメチルヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキシド、イソプロピルクミル−t−ブチルパーオキシド、ビス(α−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、エチル−3,3−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキシシクロノナン等のパーオキシケタール類;ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル類;t−ブチルハイドロパーオキシド、t−ヘキシルハイドロパーオキシド、クミンハイドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のビベンジル化合物類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン等が挙げられる。
【0102】
ラジカル重合開始剤のうち、光ラジカル重合開始剤は具体的には、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントンおよびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。また、これらの光ラジカル重合開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤の例としては、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p'−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2−ニトロフルオレン等のニトロ化合物、アントラセン、クリセン等の芳香族炭化水素、ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン、テトラシアノエチレン等の窒素化合物等を挙げることができる。
【0103】
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物をラジカル重合開始剤硬化する場合、硬化する温度は通常は100〜350℃、好ましくは120〜300℃、さらに好ましくは120〜250℃の温度で行い、温度を段階的に変化させて硬化を行ってもよい。上記下限値以上であると、硬化を十分に進行させることができる。また、上記上限値以下であると、得られる硬化物の着色が抑制できたり、プロセスを簡略化できたりする。
【0104】
電子線や他の放射線を用いて硬化する方法は、成形時の温度、流動性の制限を伴わないという利点があり、放射線としては、電子線の他、γ線、UV等を挙げることができる。
【0105】
ラジカル重合開始剤を用いる方法、放射線を用いて硬化する方法のいずれの場合も、架橋助剤(D)の併用下に硬化することができる。
【0106】
架橋助剤(D)としては特に制限はないが、例えば、p−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等のアクリレートもしくはメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物類;N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、N,N'−(4,4'−メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類;ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン類;ポリブタジエン等が挙げられる。これらの架橋助剤(D)は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
これらの中でも、ジビニルベンゼンおよびポリブタジエンから選択される少なくとも一種が好ましい。
本実施形態に係るポリブタジエンとしては特に限定はされないが、例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、末端アクリレート変性ポリブタジエン、末端ウレタンメタクリレート変性ポリブタジエン等が挙げられる。
【0107】
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物が架橋助剤(D)を含む場合、得られる硬化物について、良好な熱安定性および誘電特性を満たしながら耐熱性をより向上させる観点から、当該ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル(A)の含有量を100質量部としたとき、環状オレフィン(共)重合体(B)の含有量が2質量部以上20質量部未満であり、架橋助剤(D)の含有量が5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
【0108】
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物または硬化物には、必要に応じて、難燃剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤、ポリフェニレンエーテル(A)および環状オレフィン(共)重合体(B)以外の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。任意成分として配合される安定剤として、具体的には、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2′−オキザミドビス〔エチル−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)〕プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステル等を挙げることができる。これらは単独で配合してもよいし、組合せて配合してもよく、例えば、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンとステアリン酸亜鉛およびグリセリンモノステアレートとの組合せ等を例示できる。
【0109】
上記難燃剤としては、例えば、アンチモン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤を使用することができる。
アンチモン系難燃剤としては、酸化アンチモン、五酸化アンチモン、四酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。
上記ハロゲン系難燃剤としては、塩素系および臭素系の種々の難燃剤が使用可能であるが、難燃化効果、成形時の耐熱性、樹脂への分散性、樹脂の物性への影響等の面から、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモエチルベンゼン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモジフェニル、ヘキサブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、デカブロモジフェニルオキサイド、ペンタブロモシクロヘキサン、テトラブロモビスフェノールA、およびその誘導体[例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)等]、テトラブロモビスフェノールS、およびその誘導体[例えば、テトラブロモビスフェノールS−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等]、テトラブロモ無水フタル酸、およびその誘導体[例えば、テトラブロモフタルイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド等]、エチレンビス(5,6−ジブロモノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)、トリス−(2,3−ジブロモプロピル−1)−イソシアヌレート、ヘキサクロロシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応の付加物、トリブロモフェニルグリシジルエーテル、トリブロモフェニルアクリレート、エチレンビストリブロモフェニルエーテル、エチレンビスペンタブロモフェニルエーテル、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキサイド、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、オクタブロモナフタレン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン等の臭素系難燃剤;塩素化パラフィン等の塩素系難燃剤を使用するのが好ましい。
【0110】
上記リン系難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等の含ハロゲン系リン酸エステル難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルフホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリ(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリ(t―ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル等のノンハロゲン系リン酸エステル難燃剤等が挙げられる。
【0111】
有機または無機の充填剤としては、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が挙げられる。
【0112】
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物または硬化物と各種添加剤を混合するには、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物と各種添加剤を押出機等で溶融ブレンドする方法、またはポリフェニレンエーテル樹脂組成物と各種添加剤を適当な溶媒、例えばヘプタン、ヘキサン、デカン、シクロヘキサンのような飽和炭化水素;トルエン、ベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素等に溶解、分散させて行う溶液ブレンド法等を採用することができる。
【0113】
硬化反応は、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、上記したラジカル重合開始剤の如き硬化に与る化合物との混合物の溶融状態で行うこともできる。また、該混合物を溶媒に溶解、または分散させた溶液状態で行うこともできるし、溶媒に溶解した溶液状態から溶媒を揮発させフィルム、コーティング等任意の形に成形した後にさらに硬化反応を進行させることもできる。
【0114】
溶融状態で反応を行う場合はミキシングロール、バンバリーミキサー、押出機、ニーダ、連続ミキサー等の混練装置を用いて、原料の混合物を溶融混練して反応させる。また、任意の手法で成形した後に、さらに硬化反応を進行させることもできる。
【0115】
溶液状態で反応を行う場合に使用する溶媒としては上記溶液ブレンド法で用いた溶媒と同様の溶媒が使用できる。
【0116】
電子線またはその他の放射線、UVを用いて硬化反応を行う場合には、任意の方法で付形した後に、反応を行うことができる。
【0117】
本実施形態に係る硬化物は、耐溶剤性、耐熱性、機械的強度に優れるので、当該硬化物を含む成形体は、有機EL用コーティング材料、航空宇宙分野における太陽電池のベースフィルム基材、太陽電池や熱制御システムのコーティング材、半導体素子、発光ダイオード、各種メモリー類等の電子素子、ハイブリッドIC、MCM、プリント配線基板、プリント配線基板の絶縁層を形成するために用いられるプリプレグや積層体、表示部品等のオーバコート材料あるいは層間絶縁材料、液晶ディスプレイや太陽電池の基板といった用途で使用することができる。
特に、誘電特性、耐熱性および熱安定性だけでなく、機械的特性等にも優れるので、高周波プリント配線基板、該高周波プリント配線基板の絶縁層を形成するために用いられるフィルムやシート、プリプレグ、積層体等に好適に用いることができる。
【0118】
[ドライフィルム、フィルムまたはシート]
本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物はドライフィルム、フィルムまたはシートに成形して各種用途に用いることができる。本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて、ドライフィルム、フィルムまたはシートを形成する方法としては、各種公知の方法が適用可能である。例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の支持基材上に上述したワニスを塗布して乾燥後、加熱処理等してポリフェニレンエーテル樹脂組成物を硬化することにより形成する方法が挙げられる。ワニスの支持基材への塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーターを用いた塗布、スプレーコーターを用いた塗布、バーコーターを用いた塗布等を挙げることができる。
また、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を溶融成形して、ドライフィルム、フィルムまたはシートを得る方法も挙げることができる。
【0119】
[積層体]
本実施形態の上記フィルムは基材に積層することにより積層体として各種用途に用いることができる。本実施形態の積層体を形成する方法は各種公知の方法が適用可能である。
例えば、導体層に対し、上述の方法により製造したドライフィルム、フィルムまたはシートを積層し、必要に応じてプレス等により加熱硬化することにより積層体を作製することができる。
また、表面に導体層を有する基板に対して、本実施形態に係る硬化物を含む電気絶縁層を積層することにより積層体を作製することもできる。
【0120】
[プリプレグ]
また、本実施形態に係るプリプレグは、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物とシート状繊維基材とを複合して形成されたものである。
プリプレグの製造方法としては特に限定されず、各種公知の方法が適用可能である。例えば、上述したワニスをシート状繊維基材に含浸し含浸体を得る工程と、得られた含浸体を加熱し上記ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程とを含む方法が挙げられる。
上記ワニスのシート状繊維基材への含浸は、例えば、所定量のワニスを、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法によりシート状繊維基材に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラー等で押圧することにより行うことができる。
また、上記含浸体を加熱し上記ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程はとくに限定されないが、例えば、バッチ式で送風乾燥機により空気中あるいは窒素中で乾燥する、あるいは、連続工程で加熱炉を通すことによって乾燥する、等の方法を挙げることができる。
本実施形態においては、ワニスをシート状繊維基材に含浸させた後、得られた含浸体を所定温度に加熱することにより、上記ワニスに含まれる溶媒が蒸発し、プリプレグが得られる。
【0121】
本実施形態に係るシート状繊維基材を構成する繊維としては特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維等の無機繊維:等を挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス、Tガラス等の繊維が好適に用いることができる。
シート状繊維基材へのワニスの含浸は、例えば、浸漬および塗布によって実施される。含浸は必要に応じて複数回繰り返してもよい。
これらのシート状繊維基材は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、所望により適宜選択されるが、プリプレグあるいは積層体中の、通常、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械強度が高度にバランスされ、好適である。
【0122】
本実施形態に係るプリプレグの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は0.001〜10mmであり、好ましくは0.005〜1mmであり、より好ましくは0.01〜0.5mmである。この範囲にあれば、積層時の賦形性、また、硬化して得られる積層体の機械強度や靭性等の特性が充分に発揮され好適である。
【0123】
本実施形態に係るドライフィルム、フィルムまたはプリプレグは、少なくとも一方の面に金属箔を積層して積層プレス等により加熱硬化することにより金属張積層板としてもよい。
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、ステンレス箔等が挙げられる。
【0124】
[プリント配線基板]
上述したように、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、誘電特性、耐熱性および熱安定性の性能バランスに優れることから、プリント配線基板に好適に用いることができる。
プリント配線基板製造方法としては一般的に公知の方法を採用でき特に限定されないが、例えば、前述の方法により製造したドライフィルム、フィルム、シートまたはプリプレグを積層プレス等により加熱硬化し、電気絶縁層を形成する。次いで、得られた電気絶縁層に導体層を公知の方法で積層し、積層体を作製する。その後、該積層体中の導体層を回路加工等することにより、プリント配線基板を得ることができる。
【0125】
導体層となる金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀、ステンレス等の金属を用いることができる。導体層の形成方法としては、該金属類を箔等にして硬化物に熱融着させる方法以外にも、接着剤を用いて張り合わせる方法、もしくはスパッタ、蒸着、めっき等の方法で積層して形成する方法で作製することができる。積層体の態様としては、片面板、両面板のいずれでもよい。
【0126】
このようなプリント配線基板は、例えば、半導体素子等の電子部品を搭載することにより、電子機器として使用することができる。電子機器は公知の情報に基づいて作製することができる。
このような電子機器としては、例えば、サーバ、ルータ、スーパーコンピューター、メインフレーム、ワークステーション等のICTインフラ機器;GPSアンテナ、無線基地局用アンテナ、ミリ波アンテナ、RFIDアンテナ等のアンテナ類;携帯電話、スマートフォン、PHS、PDA、タブレット端末等の通信機器;パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、POS端末、ウェアラブル端末、デジタルメディアプレーヤー等のデジタル機器;電子制御システム装置、車載通信機器、カーナビゲーション機器、ミリ波レーダー、車載カメラモジュール等の車載電子機器;半導体試験装置、高周波計測装置等;等が挙げられる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を合成例、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0129】
なお、合成例、実施例および比較例で用いた環状オレフィン(共)重合体(B)の組成および極限粘度[η]は、次に述べる方法で測定した。
【0130】
組成;
1H−NMR測定を行い、二重結合炭素に直接結合している水素由来のピークとそれ以外の水素のピークの強度により環状非共役ジエン含量を算出した。
【0131】
極限粘度[η];135℃デカリン中で測定した。
【0132】
実験には以下の原材料を用いた。
【0133】
遷移金属化合物(1):
特開2004−331965号公報に記載の方法により合成した。
【0134】
【化31】
【0135】
遷移金属化合物(2):CpTiCl
2(N=C
tBu
2)
J.Am.Chem.Soc.2000,122,5499−5509.の記載に基づき合成した。
【0136】
(ポリフェニレンエーテル(A))
ポリフェニレンエーテル(A−1):以下の合成例1に従って合成した変性ポリフェニレンエーテル
ポリフェニレンエーテル(A−2):上記式(7)のポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製SA9000)
【0137】
(環状オレフィン(共)重合体(B))
環状オレフィン(共)重合体(B−1):以下の合成例2に従って合成した環状オレフィン共重合体([η]=0.40dl/g)
環状オレフィン(共)重合体(B−2):以下の合成例3に従って合成した環状オレフィン共重合体([η]=0.17dl/g)
環状オレフィン(共)重合体(B−3): エチレンとビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンとからなる共重合体(製品名:トパス6013S−04、ポリプラスチック社製、[η]=0.58dl/g)
環状オレフィン(共)重合体(B−4):環状オレフィンの開環重合体(製品名:ゼオネックス480、日本ゼオン社製、[η]=0.42dl/g)
【0138】
(相溶化剤(C))
相溶化剤(C−1):以下の合成例4に従って合成した。
【0139】
(その他)
MMAO(東ソー・ファインケム社製)
MAO(日本アルキルアルミ株式会社製)
5−ビニル−2−ノルボルネン(東京化成工業株式会社製)
テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(三井化学株式会社製)
ジクミルパーオキシド(日油社製、パークミルD)
ジビニルベンゼン(東京化成工業社製)
ポリブタジエン(日本曹達社製、B−3000)
【0140】
〔合成例1:ポリフェニレンエーテル(A−1)の合成〕
国際公報第2014/203511号の変性ポリフェニレンエーテル1(変性PPE1)の合成に準じて合成した。具体的には以下のとおりである。
トルエン200gを装入したガラス製反応器に、ポリフェニレンエーテルオリゴマー(SABIC社製SA90)100g、クロロメチルスチレン15g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.6gを加え、撹拌しながら75℃に加熱し溶解させた。次いで50wt%の水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し75℃で4時間撹拌した。その後、塩酸で中和し、メタノールを投入して生成物を析出させた。析出した生成物を、メタノールと水を重量比80:20で混合した溶液で洗浄した後、80℃、減圧下で10時間乾燥させ、末端ビニル変性ポリフェニレンエーテル(数平均分子量Mn=2300)を得た。
【0141】
〔合成例2:環状オレフィン(共)重合体(B−1)の合成〕
十分に窒素置換した内容積4LのSUS製オートクレーブに、キシレン1670ml、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)212ml、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(TD)120ml、MMAO(東ソーファインケム社製)のトルエン溶液をAl換算で4mmol、水素1984mlを投入した後、系中にエチレンを全圧0.6MPaになるまで導入した。遷移金属化合物(1)0.04mmolをトルエン10mlに溶解させて添加し、重合を開始した。エチレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、25℃で60分間重合を行った後、5mlのメタノールを圧入することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を、20mlの濃塩酸を加えたアセトン15Lとメタノール5Lの混合溶媒に投入してポリマーを全量析出させ、撹拌後濾紙でろ過した。本操作を反応物がなくなるまで繰り返して得られた全ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン/TD/VNB共重合体を得た。極限粘度[η]は0.40(dL/g)、NMRにより決定したポリマー中のVNB由来構造の組成比は25.7mol%、TD由来構造の組成比は10.6mol%であった。
【0142】
〔合成例3:環状オレフィン(共)重合体(B−2)の合成〕
十分に窒素置換したガラス製反応器にトルエン40mLを装入し、液相及び気相を30L/hの流量の窒素で飽和させた。つづいて、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(TD)20.0mL、1−ヘキセン28.2mL、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で10mmolを添加した。トルエンに溶解させた遷移金属化合物(2)0.010mmolをさらに添加し、重合を開始した。25℃で15分間重合を継続した後、イソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。反応物を0.5mLの濃塩酸を加えたアセトン/メタノール(それぞれ500ml)混合溶媒に投入してポリマーを全量析出し、撹拌後グラスフィルターでろ過した。ポリマーを130℃、10時間で減圧乾燥した後、TD/1−ヘキセン共重合体を得た。NMR分析法により決定したポリマー中のモノマー組成は、TD35mol%、1−ヘキセン65mol%、DSCで測定したガラス転移温度は188℃であった。
ここで、NMR分析法はMacromolecules 2016,49,59−70.に記載の方法に従った。
【0143】
〔合成例4:無水マレイン酸変性ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレントリブロック共重合体(相溶化剤(C−1))の合成〕
撹拌翼を備えた容量1.0Lのガラス製オートクレーブに、ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(シェル化学社製、クレイトンG1652、数平均分子量:8.5×10
4、スチレン含量:30質量%)105g、および脱水トルエン340mlを入れ、165℃に加熱して溶解させた。つづいて、無水マレイン酸3.46gを脱水トルエン40mlに溶解させた溶液、およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.31gを脱水トルエン40mlに溶解させた溶液を調製し、両溶液を4時間かけて逐次滴下した。滴下終了後、165℃で2時間後反応を行った。
得られた変性共重合体の無水マレイン酸グラフト量を酸素分析により測定したところ、3.5質量%であった。
【0144】
[実施例1〜13および比較例1〜6]
まず、各成分を表1および2に記載の配合割合で(表中の数値は質量部を示す)、トルエンに添加し、混合することによりワニス状のポリフェニレンエーテル樹脂組成物(樹脂ワニス)をそれぞれ調製した。
【0145】
得られた樹脂ワニスを、離形処理されたPETフィルム上に10mm/秒の速度で塗工した後、窒素気流下送風乾燥機中で、120℃、10分間乾燥した。次いで、200℃に昇温して2時間加熱して架橋体からなるフィルムをそれぞれ得た。次いで、得られたフィルムをPETフィルムから剥がし、以下の誘電正接、耐熱性および熱安定性の評価をそれぞれ行った。得られた結果を表1および2にそれぞれ示す。
【0146】
(1)耐熱性
耐熱性の指標として、250℃における貯蔵弾性率(E')を測定した。測定はRSA−III(TA−Instruments社製)を用いて窒素下、周波数1Hz、ひずみ0.1、25℃から300℃の範囲を3℃/minの昇温速度で走査して行った。測定には得られたフィルムから、長さ50mm、幅5mmに切り出した試験片を使用した。以下の基準でポリフェニレンエーテル樹脂組成物の耐熱性を評価した。
◎ : 250℃における貯蔵弾性率(E')が1×10
7Pa以上
〇 : 250℃における貯蔵弾性率(E')が1×10
6Pa以上1×10
7Pa未満
× : 250℃における貯蔵弾性率(E')が1×10
6Pa未満
ここで、貯蔵弾性率(E')が1×10
6Pa以上であれば、はんだ耐熱試験で外観異常が起こらないことを確認している。
【0147】
(2)誘電正接
円筒空洞共振器法により、12GHzにおけるフィルムの誘電正接を測定した。具体的には、ネットワーク・アナライザー(YHP社製の8510B)、シンセサイズドスイーパー(YHP社製の8340B)、テストセット(8515A)を用い、12GHzにおけるフィルムの誘電正接を測定した。
【0148】
(3)熱安定性
得られたフィルムを温度200℃のオーブンに投入し、100時間後に取り出した。取り出したフィルムの状態から熱安定性を評価した。
以下の基準でポリフェニレンエーテル樹脂組成物の熱安定性を評価した。
○ : 異常なし
× : フィルムにクラックが入ったもの
【0149】
[実施例14および比較例7]
(樹脂ワニスの調製)
まず、ポリフェニレンエーテル(A)、環状オレフィン(共)重合体(B)、相溶化剤(C)、ラジカル重合開始剤、架橋助剤(D)を表3に記載の配合割合で(表中の数値は質量部を示す)、トルエンに添加し、混合することによりワニス状のポリフェニレンエーテル樹脂組成物(樹脂ワニス)をそれぞれ調製した。
【0150】
(プリプレグの作製)
次いで、得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物ワニスをガラスクロス(有沢製作所社製、1031NT S640)に含浸し、送風乾燥機中120℃で10分間乾燥することにより、厚さ0.1mmのプリプレグをそれぞれ作製した。
【0151】
(積層体の作製)
150mm角に切り出したプリプレグを8枚重ね、真空プレス機にて圧力3.5MPa、200℃で2時間加熱することで積層体をそれぞれ作製した。
得られた積層体に対して、以下の誘電正接の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表3にそれぞれ示す。
【0152】
(銅張積層板の作製)
150mm角に切り出したプリプレグを8枚重ね、さらにその両側に銅箔(古川電気工業社製、F1−WS)を重ね、真空プレス機にて圧力3.5MPa、200℃で2時間加熱することで銅箔が接着された銅張積層板をそれぞれ作製した。
得られた銅張積層板に対して、以下のはんだ耐熱性およびピール強度の評価をおこなった。得られた結果を表3にそれぞれ示す。
【0153】
(1)誘電正接
円筒空洞共振器法により、12GHzにおける積層体の誘電正接を測定した。具体的には、ネットワーク・アナライザー(YHP社製の8510B)、シンセサイズドスイーパー(YHP社製の8340B)、テストセット(8515A)を用い、12GHzにおける積層体の誘電正接を測定した。
【0154】
(2)はんだ耐熱性
銅張積層板を288℃の半田槽中に20秒間浸漬した後の状態を観察した。
○ : 変形および膨れの両方が発生しなかった
× : 変形および膨れの少なくとも一方が発生した
【0155】
(3)ピール強度
JIS C6481に基づいて、銅張積層板から銅箔を剥離し、その時の引き剥がし強度を測定した。
強度が0.4kN/m以上となるものを○、0.4kN/m未満のものを×とした。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
表1からわかるように、実施例1〜13のフィルムは、プリント配線基板に好適な高周波領域での誘電特性を満足しながら耐熱性および熱安定性にも優れていることがわかった。また、実施例14の積層体および銅張積層板は、プリント配線基板に好適な高周波領域での誘電特性を満足しながら耐熱性および接着性にも優れていることがわかった。
これに対し、環状オレフィン(共)重合体(B)を含まない比較例1、2、7は誘電正接が高く誘電特性に劣り、環状オレフィン(共)重合体(B)の割合が多い比較例3〜6は誘電正接が低く誘電特性は優れているものの熱安定性に劣っていた。