(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803188
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】工作機械及び工作機械における加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20201214BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20201214BHJP
B23Q 1/76 20060101ALI20201214BHJP
B23P 23/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B23Q3/155 H
B23Q11/00 A
B23Q1/76 R
B23P23/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-197413(P2016-197413)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-58163(P2018-58163A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】松村 篤志
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−200941(JP,A)
【文献】
特公昭57−028602(JP,B2)
【文献】
国際公開第2016/152475(WO,A1)
【文献】
米国特許第04344220(US,A)
【文献】
特開2015−044276(JP,A)
【文献】
特開昭61−103746(JP,A)
【文献】
特開昭61−121852(JP,A)
【文献】
特開昭61−260954(JP,A)
【文献】
特開2002−355729(JP,A)
【文献】
特開昭60−238248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
B23P 23/02
B23Q 1/76
B23Q 11/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の工具が装着される加工装置と、交換アームを備えており、前記交換アームの動作により前記加工装置に装着する工具を交換する工具交換装置と、前記加工装置及び前記工具交換装置の動作を制御する制御装置とを有しており、
前記工具交換装置は、所定の交換位置にある前記交換アームにより、前記加工装置の工具を交換する工作機械であって、
前記交換アームは、前記加工装置による加工を補助する補助具を保持可能であるとともに、
前記工具交換装置は、前記制御装置による制御のもと前記交換アームを移動させる移動装置を備えており、
前記交換アームが、前記交換位置とは別の位置であり、保持している前記補助具によって前記加工装置による加工を補助する補助位置まで移動可能であることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記交換アームは、前記補助具として、ワークの周面に当接して前記ワークを支える振れ止め具を保持可能であることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記交換アームは、前記補助具として、前記加工装置による加工と同時に、前記加工装置による加工とは別の加工を行う第2の工具を保持可能であることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
種々の工具が装着される加工装置と、交換アームを備えており、前記交換アームの動作により前記加工装置に装着する工具を交換する工具交換装置と、前記加工装置及び前記工具交換装置の動作を制御する制御装置とを有しており、
前記工具交換装置は、所定の交換位置にある前記交換アームにより、前記加工装置の工具を交換するとともに、
前記工具交換装置に、前記制御装置による制御のもと前記交換アームを移動させる移動装置が備えられた工作機械における加工方法であって、
前記交換アームに、前記加工装置による加工を補助する補助具を保持させる第1工程と、
前記交換アームを、前記交換位置とは別の位置である補助位置へ移動させ、保持させている前記補助具によって前記加工装置による加工を補助させる第2工程とを実行することを特徴とする工作機械における加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば主軸装置に装着する工具を交換するための工具交換装置を備えたマシニングセンタ等といった工作機械、及び当該工作機械における加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばマシニングセンタには、複数種類の工具を保管する工具マガジンと、所定方向を中心に回転可能に設けられた交換アームとを有する工具交換装置が備えられている。そして、主軸装置での加工中における所定のタイミングで、交換アームが回転する等して、工具マガジンに保管されている工具と主軸装置に装着されている工具とが交換されるようになっている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−5740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な工作機械において、工具交換装置は、上述したような工具交換にしか使用されない。しかしながら、工作機械の加工精度や加工効率の向上を考えると、工具交換装置の新たな形態での使用が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、工具交換装置の新たな使用形態により加工精度や加工効率の向上を図ることができる工作機械、及び工作機械における加工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、種々の工具が装着される加工装置と、交換アームを備えており、前記交換アームの動作により前記加工装置に装着する工具を交換する工具交換装置と、前記加工装置及び前記工具交換装置の動作を制御する制御装置とを有
しており、前記工具交換装置は、所定の交換位置にある前記交換アームにより、前記加工装置の工具を交換する工作機械であって、前記交換アームは、前記加工装置による加工を補助する補助具を保持可能であるとともに、前記工具交換装置は、前記制御装置による制御のも
と前記交換アーム
を移動させる移動装置を備えて
おり、前記交換アームが、前記交換位置とは別の位置であり、保持している前記補助具によって前記加工装置による加工を補助する補助位置まで移動可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記交換アームは、前記補助具として、ワークの周面に当接して前記ワークを支える振れ止め具を保持可能であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記交換アームは、前記補助具として、前記加工装置による加工と同時に、前記加工装置による加工とは別の加工を行う第2の工具を保持可能であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項4に記載の発明は、種々の工具が装着される加工装置と、交換アームを備えており、前記交換アームの動作により前記加工装置に装着する工具を交換する工具交換装置と、前記加工装置及び前記工具交換装置の動作を制御する制御装置とを有して
おり、前記工具交換装置は、所定の交換位置にある前記交換アームにより、前記加工装置の工具を交換するとともに、前記工具交換装置に、前記制御装置による制御のも
と前記交換アーム
を移動させる移動装置が備えられた工作機械における加工方法であって、前記交換アームに、前記加工装置による加工を補助する補助具を保持させる第1工程と、前記交換アーム
を、前記交換位置とは別の位置である補助位置へ移動させ、
保持させている前記補助具によって前記加工装置による加工を補助させる第2工程とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交換アームに、加工装置による加工を補助する補助具を保持可能となっているとともに、工具交換装置に、制御装置による制御のも
と交換アーム
を移動させる移動装置を備えており、交換アーム
を、交換位置とは別の位置である補助位置へ移動させ、
当該補助位置において、保持させている補助具によって加工装置による加工を補助させるようになっている。したがって、たとえば振れ止め具を保持させたり(請求項2)、第2の工具を保持させたり(請求項3)といったように、工具交換装置が、工具交換のみならず、加工装置による加工の補助もを行うため、工作機械の加工精度や加工効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】マシニングセンタでの加工を示した説明図である。
【
図2】マシニングセンタでの工具交換を示した説明図である。
【
図3】補助具として振れ止め具を採用した場合の加工を示した説明図である。
【
図4】補助具として旋削工具を採用した場合の加工を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となるマシニングセンタについて、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、マシニングセンタ1での加工を示した説明図であり、
図2は、マシニングセンタ1での工具交換を示した説明図である。
マシニングセンタ1は、工具T1、T2・・を装着可能な主軸装置2と、主軸装置2と対向するように設けられたトラニオン3と、トラニオン3上で回転可能に設けられ、ワークWが載置されるテーブル4と、主軸装置2に装着する工具を交換する工具交換装置5と、図示しないNC装置とを備えてなる。主軸装置2は、
図1に示すような加工位置と、
図2に示すような交換位置との間を移動可能となっている。また、工具交換装置5は、工具T1、T2・・を保管する工具マガジン7と、主軸装置2と工具マガジン7との間で工具を交換する交換アーム6とを備えている。さらに、交換アーム6は、所定方向を中心とした回転動作、及び工具T1、T2・・の軸方向へのスライド動作可能となっている。そして、マシニングセンタ1では、NC装置による制御のもと、従来周知の態様で工具が交換される。すなわち、簡略に記すと、主軸装置2を交換位置へ移動させ、交換アーム6を90度回転させて現在主軸装置2に装着されている工具T1と工具マガジン7に保管されている工具T4とを把持させた後、交換アーム6をスライドさせて工具T1を主軸装置2から引き抜く。さらに、交換アーム6を180度回転させてから交換アーム6をスライドさせて新たな工具T4を主軸装置2へ装着するとともに、前の工具T1を工具マガジン7に保管させた後、交換アーム6を再び90度回転させ、交換アーム6から両工具T1、T4を離すようにすればよい。なお、主軸装置2の工具交換時、交換アーム6は加工空間S外の交換位置に位置している(ただ、交換アーム6の一部は加工空間S内へ進入している)。
【0011】
ここで、本発明の要部となる工具交換装置5による主軸装置2での加工の補助について、
図3及び
図4をもとに説明する。
図3は、補助具として振れ止め具T6を採用した場合の加工を示した説明図であり、
図4は、補助具として旋削工具T7を採用した場合の加工を示した説明図である。
工具交換装置5は、NC装置による制御のもと加工空間Sの内外にわたって移動する移動装置8を有しており、当該移動装置8に交換アーム6が備えられている。そして、交換アーム6に補助具を保持させるとともに、移動装置8を可動させ、加工空間S内となる所定の補助位置に交換アーム6を位置させることで、主軸装置2によるワークWへの加工を補助することができる。たとえば、
図3に示すように、補助具として、ワークWの周面に当接してワークWを支えることにより、回転するワークWの振れ止めを図ることができる振れ止め具T6を保持させてもよい。そして、当該振れ止め具T6を保持した交換アーム6を加工空間S内の補助位置に位置させ、振れ止め具T6によりワークWを支えつつ主軸装置2に装着された工具T1での加工を行うことで、マシニングセンタ1での加工精度の向上を図ることができる。また、
図4に示すように、補助具として、ワークWを旋削する旋削工具T7を保持させてもよい。そして、この旋削工具T7を保持した交換アーム6を加工空間S内の補助位置に位置させ、主軸装置2に装着されている工具T1による加工と同時に、交換アーム6が保持する旋削工具T7による補助的な加工を行うことで、マシニングセンタ1での加工効率の向上を図ることができる。なお、主軸装置1の加工を補助する際、交換アーム6の旋回機構は、内蔵されたロック機構(たとえばギアをロックする機構であって、図示せず)によりロックされている。また、移動装置8における移動機構としては、たとえばモータとボールねじとの組み合わせ、電動及び油圧アクチュエーター等、従来周知の様々な機構を採用することができる。
【0012】
以上のような構成を有する工作機械1によれば、工具交換装置5に、NC装置による制御のもと加工空間Sの内外にわたって移動する移動装置8を設け、当該移動装置8に交換アーム6を備えた。そして、交換アーム6に補助具を保持させるとともに、移動装置8を可動させ、加工空間S内となる所定の補助位置に交換アーム6を位置させることで、主軸装置2によるワークWへの加工を補助するようになっている。たとえば、振れ止め具T6を保持させ、振れ止め具T6によりワークWを支えつつ主軸装置2に装着された工具T1での加工を行ったり、旋削工具T7を保持させ、主軸装置2に装着されている工具T1による加工と同時に、交換アーム6が保持する旋削工具T7による補助的な加工を行ったりする。このように、工具交換装置5が、工具交換のみならず、主軸装置2による加工の補助もを行うようにしたことで、マシニングセンタ1の加工精度や加工効率の向上を図ることができる。
【0013】
なお、本発明の工作機械に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、工作機械全体の構成は勿論、工具交換装置による加工の補助等に係る構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更可能である。
【0014】
たとえば、実施形態では工作機械の一例である立形マシニングセンタについて説明しているが、工具交換装置を備えていれば、横形マシニングセンタ等の他の工作機械であっても何ら問題はない。
また、加工装置による加工に関しても、ワークWを回転させない加工であってもよいし、工具側を回転させるような加工であっても当然よい。
【符号の説明】
【0015】
1・・マシニングセンタ(工作機械)、2・・主軸装置(加工装置)、5・・工具交換装置、6・・交換アーム、8・・移動装置、T1〜T5・・工具、T6・・振れ止め具(補助具)、T7・・旋削工具(補助具、第2の工具)。