(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投影レンズとこの投影レンズの後方側に配置された光源とを備え、上記光源からの出射光を上記投影レンズを透して前方へ照射することにより所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記投影レンズと上記光源との間に、上記投影レンズの光軸と交差する所要方向に移動し得るように構成された可動レンズが配置されており、
上記可動レンズが上記所要方向に移動することによって上記配光パターンの最高光度位置を変化させるように構成されており、
上記可動レンズに、該可動レンズへ向かう上記光源からの出射光の一部を遮光するためのシェードが固定されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具のように、投影レンズと光源との間に補助レンズが配置された構成とすれば、投影レンズからの照射光によって形成される配光パターンの形状自由度を高めることが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、補助レンズの位置が固定されているので、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができない。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、プロジェクタ型の車両用灯具において、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は所定の可動レンズを備えた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
投影レンズとこの投影レンズの後方側に配置された光源とを備え、上記光源からの出射光を上記投影レンズを透して前方へ照射することにより所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記投影レンズと上記光源との間に、上記投影レンズの光軸と交差する所要方向に移動し得るように構成された可動レンズが配置されており、
上記可動レンズが上記所要方向に移動することによって上記配光パターンの最高光度位置を変化させるように構成されて
おり、
上記可動レンズに、該可動レンズへ向かう上記光源からの出射光の一部を遮光するためのシェードが固定されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「所要の配光パターン」の具体的な形状は特に限定されるものではない。
【0011】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子あるいは光源バルブ等が採用可能である。
【0012】
上記「可動レンズ」は、投影レンズの光軸と交差する所要方向に移動し得るように構成されていれば、その移動の具体的な態様は特に限定されるものではなく、例えば直線往復運動による移動や回動運動による移動等が採用可能である。
【0013】
上記「所要方向」は、投影レンズの光軸と交差する方向であれば、その具体的な方向は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係る車両用灯具は、所要の配光パターンを形成するプロジェクタ型の車両用灯具として構成されているが、投影レンズと光源との間に配置された可動レンズが所要方向に移動することにより配光パターンの最高光度位置を変化させる構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、可動レンズの移動位置によって配光パターンの最高光度位置を変化させることができ、これに伴って配光パターンの形成位置やその配光分布も変化させることができるので、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0016】
このように本願発明によれば、プロジェクタ型の車両用灯具において、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0017】
上記構成において、所要の配光パターンとしてスポット状の配光パターンを形成する構成とすれば、この配光パターンによって遠方視認性を高めるようにした上で、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0018】
上記構成において、可動レンズの移動によって最高光度位置を左右方向に変化させる構成とすれば、直進走行時と曲進走行時とで配光パターンの形成位置を左右方向に変化させることができ、これにより道路形状等に適応した光照射を行うことができる。
【0019】
上記構成において、可動レンズに該可動レンズへ向かう光源からの出射光の一部を遮光するためのシェードが固定された構成とすれば、配光パターンの形状についても、車両走行状況に応じて変化させることができる。
【0020】
また、シェードの存在により、先行車ドライバや対向車ドライバあるいは横断歩行者等にグレアを与えてしまうおそれを小さくすることができる。
【0021】
その際、このシェードに縦長のスリットが形成された構成とすれば、車両前方路面に前方へ向けて直線状に延びる光の帯を形成することができ、これにより横断歩行者等に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0022】
上記構成において、光源からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えた構成とした上で、このリフレクタの構成として光源からの出射光を投影レンズの後側焦点近傍へ向けて反射させるものとすれば、所要の配光パターンとしてスポット状の配光パターンを形成することが容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す側断面図であり、
図2は、そのII−II線断面図である。なお、これらの図において、Xで示す方向が灯具としての「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が「右方向」であり、Z示す方向が「上方向」である。それ以外の図においても同様である。
【0026】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、ヘッドランプの一部として組み込まれた状態で用いられるプロジェクタ型の灯具ユニットであって、投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置された光源ユニット14と、この光源ユニット14から出射した光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ16と、光源ユニット14と投影レンズ12との間に配置された可動レンズ20とを備えた構成となっている。
【0027】
投影レンズ12は、前面が凸面で後面が平面の平凸非球面レンズであって、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。この投影レンズ12は、その外周フランジ部においてレンズホルダ32に支持されており、このレンズホルダ32は左右1対のブラケット36を介してベース部材34に支持されている。
【0028】
光源ユニット14は、光源としてのレーザーダイオード14aから出射した光を集光レンズ14bによって蛍光体からなる発光部14cに集光させ、この発光部14cから白色の拡散光として出射させるように構成されている。その際、この光源ユニット14からの出射光は、発光部14cの中心位置からの出射光の強度が最も高いものとなっている。この光源ユニット14は、その発光部14cが円形状の表面形状を有しており、この表面を鉛直上方に対して後方側に傾斜した方向へ向けた状態でベース部材24に支持されている。
【0029】
リフレクタ16は、光源ユニット14を上方側から覆うように配置された状態で、左右1対のブラケット36に支持されている。このリフレクタ16の反射面16aは、光源ユニット14における発光部14cの発光中心を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする回転楕円面で構成されている。これにより、リフレクタ16は、光源ユニット14からの出射光を投影レンズ12の後側焦点F近傍に集光させるようになっている。
【0030】
可動レンズ20は、リフレクタ16からの反射光の向きを変えるための偏向レンズ28と、この偏向レンズ28を押え金具24を介して支持するレンズホルダ22とを備えている。
【0031】
レンズホルダ22は、回動ピン26を介してアクチュエータ(例えばソレノイド等)30に回動可能に支持されている。その際、回動ピン26は、光軸Axの下方でかつ後側焦点Fよりも前方において左右方向に延びるように配置されており、その両端部がアクチュエータ30および図示しない支持ブラケットに支持されている。これらアクチュエータ30および支持ブラケットは、ベース部材34に支持されている。
【0032】
この可動レンズ20は、アクチュエータ30の駆動により、光制御位置(
図1において実線で示す位置)と、この光制御位置から後方側に所定角度回動した退避位置(
図1において2点鎖線で示す位置)とを採り得るようになっている。このアクチュエータ30は、図示しないビーム切換えスイッチの操作が行われたときに駆動するようになっている。
【0033】
図3は、車両用灯具10の主要構成要素を示す、
図1の要部詳細図である。
【0034】
また、
図4および5は、これらを各要素に分解した状態で示す斜視図である。その際、
図4は、可動レンズ20を構成する偏向レンズ28ならびにレンズホルダ22および押え金具24を、斜め上前方から見て示す斜視図であり、
図5は、これらを斜め上後方から見て示す斜視図である。
【0035】
これらの図に示すように、レンズホルダ22は、ダイカスト成形品であって、回動ピン26を支持する回動ピン支持部22Aと、この回動ピン支持部22Aから後方へ向けて斜め上方へ延びる傾斜部22Bと、この傾斜部22Bの後端縁から鉛直上方へ延びる立壁部22Cと、回動ピン支持部22Aから下方へ延びるカウンターウェイト部22Dとを備えている。その際、傾斜部22Bは、平面視において光軸Axの下方位置から左右両側へ向けて前方側に湾曲して延びるように形成されている。また、立壁部22Cおよびカウンターウェイト部22Dは、回動ピン支持部22Aおよび傾斜部22Bよりも狭い左右幅で形成されている。
【0036】
そして、傾斜部22Bには、該傾斜部22Bを前後方向に貫通する開口部22Baが形成されており、また、立壁部22Cにも、該立壁部22Cを前後方向に貫通する開口部22Caが形成されている。その際、開口部22Baは、横長の略矩形状の開口形状で形成されている。一方、開口部22Caは、やや横長の略矩形状の開口形状で光軸Axを囲むように形成されている。
【0037】
立壁部22Cの下端部には、水平面に沿って前方へ向けて延びる水平部22C1が形成されており、この水平部22C1の下面における左右方向の中央部には、開口部22Baに臨むようにして下方へ突出する突起部22C1aが形成されている。
【0038】
立壁部22Cの後面には、開口部22Caから左右両側に拡がる矩形状凹部22Cbが形成されている。この矩形状凹部22Cbにおける左右両壁面および上面には、前後方向に延びるビード22Cb1が形成されている。
【0039】
立壁部22Cの上端面は水平面に沿って延びており、その左右方向の中央部には突起部22Ccが形成されており、その左右方向の両端近傍部位には突起部22Cdがそれぞれ形成されている。
【0040】
立壁部22Cの後面には、その左右方向の中央部における開口部22Caの下方近傍部位に、後方へ向けて突出する円柱状のピン22Ceが形成されている。
【0041】
押え金具24は、バネ性を有する金属板を加工することにより形成された部材であって、光軸Axに関して左右対称の形状を有している。
【0042】
この押え金具24は、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる鉛直面部24Aと、この鉛直面部24Aの上端縁から前方へ延びる上面部24Bと、鉛直面部24Aの左右両側において上面部24Bの後端縁から下方へ延びる板バネ部24Cと、鉛直面部24Aの下端縁から前方へ延びる下面部24Dとを備えている。
【0043】
鉛直面部24Aは、レンズホルダ22の立壁部22Cと略同じ上下幅で形成されており、その開口部22Caと略同じ左右幅で形成されている。
【0044】
この鉛直面部24Aにおける左右方向の中央部には、正方形に近い形状の開口部24Aaが形成されている。この開口部24Aaは、偏向レンズ28の上下幅と略同じ高さで形成されている。
【0045】
鉛直面部24Aにおける開口部24Aaの下方近傍には、上下方向にやや長い長孔24Abが形成されている。
【0046】
上面部24Bは、水平面に沿って延びており、その左右方向の中央部には矩形状の切欠き部24Baが形成されており、その左右方向の両端近傍部位には矩形状の開口部24Bbがそれぞれ形成されている。
【0047】
各板バネ部24Cは、下方へ向けて後方側に湾曲して延びており、その下端近傍部位には左右方向に延びる半円筒形状で前方側へ突出する半円筒部24Caが形成されている。
【0048】
下面部24Dは、水平面に沿って延びており、その前端近傍部位には矩形状の開口部24Daが形成されている。
【0049】
偏向レンズ28は、樹脂製レンズであって、レンズ本体部28Aと、このレンズ本体部28Aから左右両側に延びる1対のフランジ部28Bとを備えており、光軸Axに関して左右対称の形状を有している。
【0050】
左右1対のフランジ部28Bは、光軸Axと直交する鉛直面に沿って平板状に延びるように形成されており、レンズ本体部28Aは、両フランジ部28Bから前方へ突出するように形成されている。
【0051】
レンズ本体部28Aは、その前面28Aaが凸曲面状に形成されるとともに、その後面28Abが凹曲面状に形成されている。その際、後面28Abは、光軸Axのやや上方に位置する点を中心とする縦長楕円面に略沿った曲面で構成されており、前面28Aaは、光軸Axよりも右側の領域が前方へ大きく膨らむ曲面で構成されている。
【0052】
すなわち、このレンズ本体部28Aは、鉛直断面内においては一定の肉厚で形成されているが、水平断面内においては左端縁から右端縁へ向けて徐々に肉厚が増大するように形成されている。
【0053】
そしてこれにより、偏向レンズ28は、リフレクタ16からの反射光を一定の角度分だけ右方向へ偏向させるようになっている。その際の右方偏向量は、2〜4°程度(例えば3°程度)に設定されている。
【0054】
押え金具24および偏向レンズ28は、レンズホルダ22の立壁部22Cに取り付けられている。この取付けは、次のようにして行われるようになっている。
【0055】
すなわち、まず、偏向レンズ28を、レンズホルダ22の立壁部22Cに対して、その後方側から開口部22Caに挿入して、両フランジ部28Bを矩形状凹部22Cbに当接させることにより、レンズ本体部28Aを立壁部22Cの開口部22Caから前方へ突出させる。
【0056】
次に、押え金具24の上面部24Bに形成された切欠き部24Baを立壁部22Cの上端面に形成された突起部22Ccに係合させて左右方向の位置決めを行うとともに、その上面部24Bに形成された左右1対の開口部24Bbを立壁部22Cの上端面に形成された左右1対の突起部22Cdに係合させる。
【0057】
次に、左右1対の板バネ部24Cの半円筒部24Caを偏向レンズ28のフランジ部28Bに押し当てて、各板バネ部24Cを弾性変形させる。
【0058】
そして、押え金具24の下面部24Dに形成された開口部24Daを、立壁部22Cの水平部22C1の下面に形成された突起部22C1aに係合させることにより、押え金具24をレンズホルダ22に固定し、これにより偏向レンズ28を押え金具24とレンズホルダ22とによって前後両側から挟持して位置決めするようになっている。
【0059】
可動レンズ20は、光制御位置にあるとき、その押え金具24の鉛直面部24Aが光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びるように配置され、このとき、開口部24Aaの中心位置が投影レンズ12の後側焦点Fのやや下方に位置するようになっている。
【0060】
そして、可動レンズ20が光制御位置にあるときには、リフレクタ16からの反射光は、偏向レンズ28によって右向きに偏向された後、投影レンズ12に到達するようになっている。一方、可動レンズ20が退避位置にあるときには、リフレクタ16からの反射光はそのまま投影レンズ12に到達するようになっている。
【0061】
図6は、車両用灯具10から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0062】
その際、
図6(a)に示す配光パターンPA1は、可動レンズ20が退避位置にあるときにハイビーム用配光パターンPHの一部として形成される第1の配光パターンであり、
図6(b)に示す配光パターンPA2は、可動レンズ20が光制御位置にあるときにハイビーム用配光パターンPHの一部として形成される第2の配光パターンである。
【0063】
図6(a)に示すハイビーム用配光パターンPHは、他の車両用灯具(図示せず)からの照射光によって形成される基本配光パターンPH0と配光パターンPA1との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0064】
基本配光パターンPH0は、H−V(灯具正面方向の消点)を中心として左右方向に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0065】
一方、配光パターンPA1は、H−Vを中心とするやや横長のスポット状の配光パターンとして形成されており、これによりハイビーム用配光パターンPHの中心に高光度領域を形成するようになっている。この配光パターンPA1は、その中心部の光度はかなり高いが、その周縁部の光度は比較的低いものとなっている。
【0066】
図6(b)に示すハイビーム用配光パターンPHは、上記基本配光パターンPH0と配光パターンPA2との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0067】
配光パターンPA2は、配光パターンPA1を右方向に変位させた配光パターンとして形成されている。その際、配光パターンPA1に対する配光パターンPA2の右方変位量は2〜4°程度(例えば3°程度)である。すなわち、配光パターンPA2は、配光パターンPA1に対して最高光度位置が右方向に変化している。
【0068】
ハイビーム用配光パターンPHにおいてこのような配光パターンPA2を形成することにより、車両前方走行路が右方向にカーブしているような場合における遠方視認性を高めるようになっている。
【0069】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0070】
本実施形態に係る車両用灯具10は、所要の配光パターンとして灯具正面方向を照射する配光パターンPA1を形成するプロジェクタ型の車両用灯具として構成されているが、投影レンズ12と光源ユニット14との間に配置された可動レンズ20が光制御位置から退避位置へ回動することにより、配光パターンPA1に対して右方向に変位した配光パターンPA2を形成する(すなわち配光パターンの最高光度位置を変化させる)構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0071】
すなわち、可動レンズ20の移動位置によって配光パターンPA1、PA2の最高光度位置を変化させることができ、これに伴って配光パターンPA1、PA2の形成位置やその配光分布も変化させることができるので、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0072】
このように本実施形態によれば、プロジェクタ型の車両用灯具10において、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0073】
その際、本実施形態においては、配光パターンPA1を直進走行時に適した配光パターンとするとともに配光パターンPA2を右方向への曲進走行時に適した配光パターンとすることができる。
【0074】
しかも本実施形態においては、各配光パターンPA1、PA2としてスポット状の配光パターンを形成するように構成されているので、各配光パターンPA1、PA2によって遠方視認性を高めるようにした上で、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0075】
また本実施形態に係る車両用灯具10は、光源ユニット14からの出射光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ14を備えており、このリフレクタ14は光源ユニット14からの出射光を投影レンズ12の後側焦点F近傍へ向けて反射させる構成となっているので、各配光パターンPA1、PA2としてスポット状の配光パターンを形成することが容易に可能となる。
【0076】
なお、一般に、車両には左右1対の車両用灯具が取り付けられているので、例えば、右側の車両用灯具によって配光パターンPA2を形成する一方、左側の車両用灯具を右側の車両用灯具と左右対称な構成とすることによってV−V線に関して配光パターンPA2と左右対称な配光パターンを形成する構成とすることも可能である。そして、これら左右1対の配光パターンを選択的に形成することにより、車両前方走行路が左右いずれの方向にカーブしている場合であっても遠方視認性を高めることが可能となる。
【0077】
上記実施形態においては、偏向レンズ28が押え金具24を介してレンズホルダ22に支持されているものとして説明したが、偏向レンズ28が接着等によってレンズホルダ22に直接支持された構成とすることも可能である。
【0078】
上記実施形態においては、可動レンズ20が、前後方向の回動運動によって光制御位置と退避位置とを採り得るように構成されているものとして説明したが、左右方向の回動運動や、回動運動の代わりに上下方向や左右方向の直線往復運動等を採用することも可能である。
【0079】
上記実施形態においては、可動レンズ20が退避位置から光制御位置へ移動することによって、配光パターンPA1に対して右方向に変位した配光パターンPA2を形成する構成について説明したが、レンズ本体部28Aの前面28Aaの曲面形状を適宜変更することにより、配光パターンPA2を、配光パターンPA1を右方向に変位させただけの配光パターンではなく、その大きさや形状を変化させた配光パターンとして形成する構成とすることも可能である。
【0080】
上記実施形態においては、光源ユニット14からの出射光をリフレクタ14で反射させて投影レンズ12に入射させるように構成されているものとして説明したが、光源ユニット14からの直射光を投影レンズ12に入射させる構成とすることも可能である。
【0081】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0082】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0083】
図7は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、
図5と同様の図である。
【0084】
図7に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、可動レンズ120の押え金具124および偏向レンズ128の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0085】
本変形例の押え金具124も、基本的な構成は上記実施形態の押え金具24と同様であるが、その鉛直面部124Aに形成された開口部124Aaの形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0086】
すなわち、上記実施形態の押え金具24においては、開口部24Aaが正方形に近い形状を有しているのに対して、本変形例の押え金具124における開口部124Aaの形状は、押え金具124の開口部124Aaの左側の半分近くの領域が塞がれた略台形状に形成されている。その際、鉛直面部124Aにおいて開口部124Aaの左側に位置する側端面124Aa1は、鉛直方向に対して多少左側に傾斜して延びるように形成されている。
【0087】
また、本変形例の偏向レンズ128は、その基本的な構成は上記実施形態の偏向レンズ28と同様であるが、そのレンズ本体部128Aの水平断面形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0088】
すなわち、本変形例のレンズ本体部128Aも、その前面128Aaが凸曲面状に形成されるとともに、その後面128Abが凹曲面状に形成されている。その際、後面128Abは、光軸Axのやや上方に位置する点を中心とする縦長楕円面に略沿った曲面で構成されており、前面128Aaは、光軸Axよりも左側の領域が前方へ大きく膨らむ曲面で構成されている。
【0089】
これにより、本変形例のレンズ本体部128Aは、上記実施形態のレンズ本体部28Aとは逆に、右端縁から左端縁へ向けて徐々に肉厚が増大するように形成されている。ただし、その偏肉の程度は、本変形例のレンズ本体部128Aの方が上記実施形態のレンズ本体部28Aよりも小さいものとなっている。
【0090】
そして、本変形例においては、可動レンズ120が光制御位置にあるときには、リフレクタ16からの反射光は、その一部が押え金具124によって遮光され、開口部124Aaを通過した光のみが、偏向レンズ128によって左向きに1〜3°程度(例えば2°程度)偏向された後、投影レンズ12に到達するようになっている。
【0091】
すなわち、押え金具124は、可動レンズ120へ向かう光源ユニット14からの出射光の一部を遮光するためのシェードとして機能するようになっている。
【0092】
図8(b)は、本変形例において、可動レンズ120が光制御位置にあるときに形成される配光パターンPA3を透視的に示す図である。
【0093】
なお、
図8(a)は、
図6(a)と同様の図(すなわち可動レンズ120が退避位置にあるときに形成される配光パターンPA1を示す図)である。
【0094】
図8(b)に示すように、配光パターンPA3は、ロービーム用配光パターンPLの一部として形成されている。
【0095】
すなわち、ロービーム用配光パターンPLは、他の車両用灯具(図示せず)からの照射光によって形成される基本配光パターンPL0と配光パターンPA3との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0096】
基本配光パターンPL0は、左配光のロービーム用配光パターンであって、H−Vを中心として左右方向に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されており、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、H−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0097】
一方、配光パターンPA3は、配光パターンPA1に対して左方向へ1〜3°程度(例えば2°程度)変位した状態で、配光パターンPA1の右側領域が半分近く切除された配光パターンとして形成されている。すなわち、配光パターンPA3は、配光パターンPA1に対して最高光度位置が左方向に変化している。
【0098】
この配光パターンPA3には、V−V線の左側1〜2°程度(例えば1.5°程度)の位置において鉛直方向に対して多少左側に傾斜して延びるカットオフラインCL3が形成されている。
【0099】
ロービーム用配光パターンPLにおいてこのような配光パターンPA3を形成することにより、先行車2のドライバにグレアを与えてしまうことなく、自車線側の車両前方路面や路肩等を明るく照射するようになっている。
【0100】
本変形例の構成を採用した場合にも、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0101】
なお、一般に、車両には左右1対の車両用灯具が取り付けられているので、例えば、左側の車両用灯具によって配光パターンPA3を形成する一方、右側の車両用灯具を左側の車両用灯具と左右対称な構成とすることによってV−V線に関して配光パターンPA3と左右対称な配光パターンを形成する構成とすることも可能である。そして、これら左右1対の配光パターンを選択的に形成することにより、先行車2のドライバや対向車のドライバにグレアを与えてしまうことなく車両前方の視認性を高めることが可能となる。
【0102】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0103】
図9および10は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、
図3および5と同様の図である。また、
これらの図に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、可動レンズ220の押え金具224および偏向レンズ228の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0104】
本変形例の押え金具224も、基本的な構成は上記実施形態の押え金具24と同様であるが、その鉛直面部224Aには、上記実施形態の開口部24Aaの代わりにスリット224Aaが形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0105】
スリット224Aaは、鉛直面部224Aにおける左右方向の中央部に上下方向に延びるように形成されており、縦長矩形状の開口形状を有している。
【0106】
このスリット224Aaは、偏向レンズ228の上下幅と略同じ高さで形成されており、光軸Axに対して上方側の領域よりも下方側の領域の方がやや長くなっている。このスリット224Aaの左右幅は、1〜3mm程度(例えば2mm程度)に設定されている。
【0107】
また、本変形例の偏向レンズ228は、その基本的な構成は上記実施形態の偏向レンズ28と同様であるが、そのレンズ本体部228Aの形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0108】
すなわち、本変形例のレンズ本体部228Aも、その前面228Aaが凸曲面状に形成されるとともに、その後面228Abが凹曲面状に形成されている。その際、後面228Abは、光軸Axのやや上方に位置する点を中心とする縦長楕円面に略沿った曲面で構成されており、前面228Aaは、光軸Axよりも下方側の領域が前方へ大きく膨らむ曲面で構成されている。
【0109】
ただし、このレンズ本体部228Aは、水平断面内においては一定の肉厚で形成されており、一方、鉛直断面内においては上端縁から下端縁へ向けて徐々に肉厚が増大するように形成されている。
【0110】
そしてこれにより、偏向レンズ228は、リフレクタ16からの反射光を一定の角度分だけ下方側へ偏向させるようになっている。その際の下方偏向量は、1〜3°程度(例えば2°程度)に設定されている。
【0111】
本変形例においては、可動レンズ220が光制御位置にあるときには、リフレクタ16からの反射光は、その大半が押え金具224によって遮光され、スリット224Aaを通過した光のみが偏向レンズ28によって下向きに偏向された後、投影レンズ12に到達するようになっている。
【0112】
すなわち、押え金具224は、可動レンズ220へ向かう光源ユニット14からの出射光の一部を遮光するためのシェードとして機能するようになっている。
【0113】
図11(b)は、本変形例において、可動レンズ220が光制御位置にあるときに形成される配光パターンPA4を透視的に示す図である。
【0114】
なお、
図11(a)は、
図6(a)と同様の図(すなわち可動レンズ220が退避位置にあるときに形成される配光パターンPA1を示す図)である。
【0115】
図11(b)に示すように、配光パターンPA4は、ロービーム用配光パターンPLの一部として形成されている。
【0116】
ロービーム用配光パターンPLは、上記基本配光パターンPL0と配光パターンPA4との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0117】
第2の配光パターンPA2は、配光パターンPA1の左右両側部分を切除して縦長帯状の配光パターンとした上で、これを下方側へ変位させた配光パターンとして形成されている。その際、配光パターンPA1に対する配光パターンPA2の下方変位量は1〜3°程度(例えば2°程度)であり、配光パターンPA2の左右幅は1〜3°程度(例えば2°程度)である。すなわち、配光パターンPA4は、配光パターンPA1に対して最高光度位置が下方向に変化している。
【0118】
ロービーム用配光パターンPLにおいてこのような配光パターンPA2を形成することにより、車両前方路面に前方へ向けて直線状に延びる光の帯を路面描画として(すなわち路面に意図的に形成された光の模様として)生成し、これにより周囲への注意喚起機能を高めるようになっている。
【0119】
この配光パターンPA4は、その上端部がカットオフラインCL1、CL2からはみ出してH−Vのやや上方の位置まで延びるように形成されているが、上述したように配光パターンPA1の周縁部の光度は比較的低いものとなり、配光パターンPA4の上下両端部の光度も比較的低いものとなるので、先行車のドライバ等に有害なグレアを与えてしまうことはない。
【0120】
本変形例の構成を採用した場合にも、車両走行状況に応じた木目細かい配光制御を行うことができる。
【0121】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0122】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。