特許第6803211号(P6803211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803211耐熱スチレン系樹脂組成物、押出シート、成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803211
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】耐熱スチレン系樹脂組成物、押出シート、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20201214BHJP
   C08F 212/06 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20201214BHJP
   C08J 9/12 20060101ALI20201214BHJP
   B29C 51/06 20060101ALI20201214BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08L25/08
   C08F212/06
   C08L33/06
   C08L33/12
   C08L51/04
   C08L53/00
   C08J9/12
   B29C51/06
   B29C51/14
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-237916(P2016-237916)
(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公開番号】特開2018-90753(P2018-90753A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智巳
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−012418(JP,A)
【文献】 特開平11−060747(JP,A)
【文献】 特開2014−169391(JP,A)
【文献】 特開2014−101403(JP,A)
【文献】 特開2014−201605(JP,A)
【文献】 特開平10−087929(JP,A)
【文献】 特開2012−207201(JP,A)
【文献】 特開昭61−163950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08K 3/00 −13/08
C08F 6/00 −246/00;301/00
C08J 9/12
B29C 51/06
B29C 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(a)、ブタジエン単量体単位を含むゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(b)、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(c)及びゴム変性スチレン系樹脂(d)を含有する耐熱スチレン系樹脂組成物であり、
前記共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、前記共重合樹脂(a)の含有量が85〜99質量%であり、前記MBS樹脂(b)の含有量が0.9〜12質量%であり、前記共重合樹脂(c)の含有量が0.1〜3.0質量%であり、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して30質量%以下の量で更に含有し、前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)がゴム粒子径0.5〜5.0μmを有し、
前記共重合樹脂(a)は、スチレン単量体単位及びメタクリル酸単量体単位の合計を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を84〜96質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を4〜16質量%含有し、
ビカット軟化温度が106℃以上であることを特徴とする、耐熱スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記共重合樹脂(a)は、二元共重合体である、請求項1に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記耐熱スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン単量体単位の合計含有量が80質量%以上である、請求項1又は2に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であり、且つスチレン単量体の残存量が700質量ppm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記共重合樹脂(a)の重量平均分子量が100,000〜350,000である、請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記MBS樹脂(b)中のブタジエン単量体単位含有量が50質量%以上であり、前記MBS樹脂(b)におけるメタクリル酸メチルとスチレンとの質量組成比が30/70〜70/30であり、且つ前記MBS樹脂(b)中のスチレン単量体単位含有量が3〜35質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された押出シート。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
【請求項9】
請求項に記載の押出シート又は請求項に記載の発泡押出シートを用いて形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、機械的強度、外観、押出成形性、真空成形時の深絞り性、及びラミネートフィルムの接着性に優れた耐熱スチレン系樹脂組成物、該耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡及び発泡の押出シート、該押出シートを用いて形成された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン−メタクリル酸系樹脂は、耐熱性に優れ、且つ比較的安価なことから、弁当、惣菜等の食品容器、包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板等に広く用いられている。近年、コンビニエンスストアー等の業務用に使用する電子レンジの普及、及び電子レンジの使用時間の短縮のため、より高出力(短時間で、より高温になり易い)の機器が使用されている。このために、より耐熱性が高く、成形性に優れた樹脂が望まれている。弁当、惣菜等の食品容器においては、意匠性の向上のためにポリスチレン製のフィルムを貼り合せたり、耐油性向上のためにポリプロピレンとポリスチレンのドライラミネートフィルムを貼り合せて用いることが多いが、電子レンジでの加熱時に前記のフィルムが食品容器から剥離する場合があるため、前記フィルムとの接着性に優れた樹脂が望まれている。また、食品容器では意匠性に伴う形状の複雑化、及び内容物の増加による容器の大型化(面積と深さ)等の理由から、従来製品に比し、脆性等の機械的強度、及び真空成形時の深絞り性を改良した樹脂が望まれている。
【0003】
一般に、スチレン−メタクリル酸系樹脂において、より耐熱性の高い樹脂を得るためにはメタクリル酸の含量を増やすことが必要である。この場合、メタクリル酸に起因するゲル化物が発生し易くなり、シート表面に外観不良が見られる場合がある。この現象は、非発泡シート押出時に、水分及び低分子の残留揮発分を除去するために押出機ベントから真空で脱揮する場合に特に見られる。また、メタクリル酸の増量は、同時に機械的強度の低下にもつながる。スチレン−メタクリル酸樹脂の製造方法に関しては、下記特許文献1には、重合原料液に2−エチル−ヘキシルアルコールを添加する方法が記載されており、そして下記特許文献2には、重合原料液にオクチルアルコールを添加する方法が記載されている。
【0004】
また、スチレン−メタクリル酸系樹脂において、脆性等の機械的強度を改良する目的で、ゴム質成分を含むスチレン系樹脂を添加する方法が実施されているが、機械的強度の改良が不十分である。例えば、下記特許文献3には、ゴム質成分を含むスチレン系共重合体として耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を添加してなる耐熱発泡シートが、記載されている。また、下記特許文献4、5には、ゴム質成分としてハイインパクトスチレンを、特許文献6には、MBS樹脂、及びマレイン化スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合樹脂の一方又は両方を添加した電子レンジ調理用容器成形用積層発泡シート及び耐熱スチレン系樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−87332号公報
【特許文献2】特開2006−282962号公報
【特許文献3】特開平02−58548号公報
【特許文献4】特開昭63−264335号公報
【特許文献5】特開2012−207201号公報
【特許文献6】特開2014−169391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来技術のスチレン−メタクリル酸系樹脂の製造方法では、得られた樹脂の機械的強度が不十分な場合がある。また、ゲル化抑制のためにスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合樹脂を用いた樹脂組成物においては、意匠性や耐油性の向上のために貼り合せるラミネートフィルムの接着性が低下する。従来技術においては、非発泡及び発泡の押出シートの真空成形時における深絞り性が十分ではなく、深さの深い形状の成形品を得ることが出来ない。
したがって、耐熱性、機械的強度、外観、押出成形性、真空成形時の深絞り性、及びラミネートフィルムの接着性等の諸特性に優れた樹脂組成物、押出シート、成形品が求められている。
【0007】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、機械的強度、外観、押出成形性、真空成形時の深絞り性、及びラミネートフィルムの接着性等の諸特性に優れた耐熱スチレン系樹脂組成物、該耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡及び発泡の押出シート、該押出シートを用いて形成された成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究し、実験を重ねた結果、従来のスチレン−メタクリル酸の特定組成の共重合樹脂(a)と、補強剤として特定の樹脂、すなわちブタジエン単量体単位を含むゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(b)、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合樹脂(c)、並びに、任意のゴム変性スチレン系樹脂(d)とを、特定の比率で混合した樹脂を用いて、高い耐熱性と機械的強度と外観を有し、従来技術の樹脂では達成することができなかった真空成形時の深絞り性に優れた耐熱スチレン系樹脂組成物が得られること、そして、該樹脂組成物に含まれるスチレンの比率を特定範囲にすることにより、ラミネートフィルムの高い接着性を有する耐熱スチレン系樹脂組成物が得られること、更に、該耐熱スチレン系樹脂組成物から優れた非発泡及び発泡の成形品が得られることも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0009】
[1]
スチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(a)、ブタジエン単量体単位を含むゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(b)、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(c)を含有する耐熱スチレン系樹脂組成物であり、
前記共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、前記共重合樹脂(a)の含有量が85〜99質量%であり、前記MBS樹脂(b)の含有量が0.9〜12質量%であり、前記共重合樹脂(c)の含有量が0.1〜3.0質量%であり、
前記共重合樹脂(a)は、スチレン単量体単位及びメタクリル酸単量体単位の合計を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を84〜96質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を4〜16質量%含有し、
ビカット軟化温度が106℃以上である
ことを特徴とする、耐熱スチレン系樹脂組成物。
[2]
前記耐熱スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン単量体単位の合計含有量が80質量%以上である、[1]に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[3]
前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であり、且つスチレン単量体の残存量が700質量ppm以下である、[1]又は[2]に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[4]
前記共重合樹脂(a)の重量平均分子量が100,000〜350,000である、[1]〜[3]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[5]
前記MBS樹脂(b)中のブタジエン単量体単位含有量が50質量%以上であり、前記MBS樹脂(b)におけるメタクリル酸メチルとスチレンとの質量組成比が30/70〜70/30であり、且つ前記MBS樹脂(b)中のスチレン単量体単位含有量が3〜35質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[6]
ゴム変性スチレン系樹脂(d)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して30質量%以下の量で更に含有し、前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)がゴム粒子径0.5〜5.0μmを有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[7]
炭素数が14以上であり、且つ凝固点が−10℃以下である脂肪族第1級アルコールを、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量部に対して0.02〜1.0質量部の量で更に含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された押出シート。
[9]
[1]〜[7]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
[10]
[8]に記載の非発泡押出シート又は[9]に記載の発泡押出シートを用いて形成された成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性、機械的強度、外観、押出成形性、真空成形時の深絞り性、及びラミネートフィルムの接着性等の諸特性に優れた耐熱スチレン系樹脂組成物、該耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡及び発泡の押出シート、該押出シートを用いて形成された成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
(耐熱スチレン系樹脂組成物)
本実施形態の耐熱スチレン系樹脂組成物は、スチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(a)、ブタジエン単量体単位を含むゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(b)、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(c)を含有する耐熱スチレン系樹脂組成物であり、該共重合樹脂(a)、該MBS樹脂(b)、及び該共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、該共重合樹脂(a)の含有量が85〜99質量%であり、該MBS樹脂(b)の含有量が0.9〜12質量%であり、該共重合樹脂(c)の含有量が0.1〜3.0質量%であり、共重合樹脂(a)が、スチレン単量体単位及びメタクリル酸単量体単位の合計を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を84〜96質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を4〜16質量%含有し、ビカット軟化温度が106℃以上である、耐熱スチレン系樹脂組成物(以下、単に「本実施形態の樹脂組成物」ということもある)である。
【0013】
<共重合樹脂(a)>
本実施形態の樹脂組成物において、スチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(a)の含有量は、共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、及び共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、85〜99質量%であり、好ましくは87〜98質量%、より好ましくは89〜97質量%である。
この含有量が86質量%未満では、MBS樹脂(b)及び共重合樹脂(c)の使用量が増加し、発泡成形時のガス抜け等で発泡が難しくなり、得られる発泡体の物性が低下する傾向がある。また得られる成形品の剛性が低下する傾向、及びシート等の外観が低下する傾向がある。更に耐熱スチレン系樹脂組成物に含有されるスチレン単量体単位の含有量が低下することにより、得られる成形品のラミネートフィルムとの接着性が低下する傾向がある。一方、99質量%を超えると、MBS樹脂(b)の使用量が減少し、機械的強度の向上効果が十分得られず、共重合樹脂(c)の使用量が減少し、得られる押出シートの真空成形時の深絞り性の向上効果が十分得られない。
【0014】
上記共重合樹脂(a)においては、スチレン単量体単位及びメタクリル酸単量体単位の合計を100質量%としたときに、スチレン単量体単位の含有量は84〜96質量%であり、好ましくは86〜94質量%、より好ましくは87〜91質量%の範囲である。この含有量が84質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、一方、96質量%を超えると、後述のメタクリル酸単量体単位を所望量存在させることができないため、メタクリル酸単量体単位による後述の効果を得ることができない。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物においては、メタクリル酸単量体単位は耐熱性を向上させる役割を果たす。共重合樹脂(a)のスチレン単量体単位及びメタクリル酸単量体単位の合計を100質量%としたときに、メタクリル酸単量体単位の含有量は4〜16質量%であり、好ましくは6〜14質量%、より好ましくは9〜13質量%の範囲である。この含有量が4質量%未満では耐熱性向上の効果が不十分であり、一方、16質量%を超える場合は、樹脂中のゲル化物が増加し、外観不良となり、また樹脂の流動性の低下と機械的物性の低下とを招来するため好ましくない。
【0016】
一般に、スチレン−メタクリル酸系樹脂は、工業的規模ではほとんどの場合、ラジカル重合で生産されているが、前述の特許文献1及び特許文献2に記載されているように、脱揮工程のゲル化反応を抑制するために、種々のアルコールを重合系中に添加して重合を行う場合がある。
【0017】
本発明に係る共重合樹脂(a)中の、スチレン単量体単位、及びメタクリル酸単量体単位の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0018】
共重合樹脂(a)は、スチレン単量体単位、及びメタクリル酸単量体単位以外の単量体単位を、本発明の効果を損なわない範囲で、任意選択的に、例えば、共重合樹脂(a)を構成する全ての単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、好適には10質量%以下、更に好適には3質量%以下の範囲で、更に含有してよいが、典型的には、スチレン単量体単位、及びメタクリル酸単量体単位からなる。
【0019】
本実施形態において、共重合樹脂(a)のビカット軟化温度は、106〜135℃であることが好ましく、より好ましくは108〜130℃、更に好ましくは110〜125℃である。ビカット軟化温度が106〜135℃である場合、耐熱性と流動性とのバランスにおいて、より優れる樹脂が得られる。
【0020】
本実施形態において、共重合樹脂(a)の重量平均分子量は、100,000〜350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000〜300,000、更に好ましくは140,000〜250,000である。重量平均分子量が100,000〜350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。
なお本開示で、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスチレン換算で得られる値である。
【0021】
共重合樹脂(a)の200℃でのメルトマスフローレイトは、好ましくは0.3〜3.0g/10分、より好ましくは0.4〜2.5g/10分、更に好ましくは0.4〜2.0g/10分である。
上記メルトマスフローレイトが0.3g/10分以上である場合、流動性の観点で好ましく、3.0g/10分以下である場合、樹脂の機械的強度の観点で好ましい。
なお本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0022】
本発明に係る共重合樹脂(a)の重合方法については、特に制限はないが、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好ましく採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
以下、本発明に係る共重合樹脂(a)の重合方法について説明する。
【0023】
本発明に係る共重合樹脂(a)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
【0024】
重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0025】
連鎖移動剤としては、例えば、α−メチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0026】
重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。
用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。
これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5〜20質量部の割合で添加しておく方が、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0027】
本発明に係る共重合樹脂(a)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、スチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。
例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。
なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、190〜260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4.0kPa程度であり、好ましくは0.13〜3.0kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0028】
<MBS樹脂(b)>
本実施形態の樹脂組成物において、ブタジエン単量体単位を含むゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(b)の含有量は、共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、及び共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、0.9〜12質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜11質量%、更により好ましくは3〜10質量%である。
ここで、ブタジエン単量体単位を含むゴム状粒子にグラフトする共重合体がメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とするとは、グラフトする共重合体の全単量体単位に対するメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位との合計の割合が、92質量%以上であることを意味する。この割合は、好ましくは94質量%以上、より好ましくは96質量%以上である。メタクリル酸メチル単量体及びスチレン単量体以外の単量体単位を含む場合、かかる単量体単位としては、アクリル酸ブチル単量体等が挙げられる。アクリル酸ブチル単量体を含有する場合は、流動性を向上させ好ましいが、含有量が多すぎると耐熱性が低下する傾向が大きい。
MBS樹脂(b)を使用することで機械的強度の向上に優れる樹脂組成物が得られるが、使用量が1質量未満では、機械的強度の向上が低い傾向があり、一方、12質量%を超える場合は、樹脂組成物中のブタジエン単量体単位含有量が多くなり、発泡成形時のガス抜け等で発泡が難しくなり、得られる発泡体の物性が低下する傾向がある。また得られる成形品の剛性が低下する傾向、及びシート等の外観が低下する傾向がある。
【0029】
MBS樹脂(b)におけるブタジエン単量体単位の含有量は、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%、更により好ましくは65〜80質量%である。ブタジエン単量体単位の含有量が高いほど、少ない添加量で機械的強度の向上が大きく、且つ耐熱性の低下が少なくて好ましい。一方、ブタジエン単量体単位の含有量が高すぎると、メタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とするグラフト共重合体の含有量が少なくなり、共重合樹脂(a)との相溶性が低下して、シート外観が低下する傾向にある。
【0030】
MBS樹脂(b)において、メタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位との組成比は、好ましくは30/70〜70/30の範囲、より好ましくは35/65〜65/35の範囲である。上記組成比が30/70〜70/30の範囲であると、共重合樹脂(a)との相溶性が良好となり機械的強度、シート外観の観点で有利である。
【0031】
MBS樹脂(b)において、スチレン単量体単位の含有量は、好ましくは3〜35質量%であり、より好ましくは5〜30質量%であり、更により好ましくは7〜23質量%である。
【0032】
<共重合樹脂(c)>
本実施形態の樹脂組成物において、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(c)の含有量は、共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、及び共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、0.1〜3.0質量%であり、好ましくは0.3〜2.0質量%であり、より好ましくは0.3〜1.0質量%である。
共重合樹脂(c)を使用することで本実施形態の樹脂組成物の溶融張力が向上し、シートの押出成形時の成形安定性や押出シートの真空成形時の深絞り性が著しく向上する。この含有量が0.1質量%未満の場合では、溶融張力が向上しないために成形安定性や深絞り性向上の効果が得られず、3.0質量%を超える場合は、溶融張力が高すぎ、流動性が低下するため、押出成形が困難になる。
【0033】
共重合樹脂(c)は、メタクリル酸メチル単量体単位、及びアクリル酸ブチル単量体単位以外の単量体単位を、本発明の効果を損なわない範囲で、更に含有してよいが、典型的には、メタクリル酸メチル単量体単位、及びアクリル酸ブチル単量体単位とからなる。
【0034】
共重合樹脂(c)の重量平均分子量は、1,000,000〜5,000,000が好ましく、より好ましくは2,000,000〜5,000,000、更により好ましくは4,000,000〜5,000,000である。
重量平均分子量が1,000,000未満の場合では、溶融張力が向上しないために成形安定性や深絞り性向上の効果が得られず、5,000,000を超える場合は、流動性が低下するため、押出成形が困難になる。
【0035】
また、共重合樹脂(c)において、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との組成比は、流動性の観点から、好ましくは90/10〜65/35、より好ましくは85/15〜70/30の範囲である。
【0036】
<ゴム変性スチレン系樹脂(d)>
本実施形態におけるゴム変性スチレン系樹脂(d)は、スチレン系樹脂のマトリックス中にゴム状重合体の粒子が分散されたものであり、ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。
本実施形態の樹脂組成物において、ゴム変性スチレン系樹脂(d)は、共重合樹脂(a)とブレンドして用いることができる。
【0037】
スチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt−ブチルスチレン又はブロモスチレン、クロロスチレン、及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種又は二種以上使用することができる。スチレン系樹脂は上記のスチレン系単量体単位以外の単量体単位を本発明の効果を損なわない範囲で更に含有することを排除しないが、典型的にはスチレン系単量体単位からなる。
【0038】
上記ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等を使用できるが、工業的観点から、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン−ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体は一種又は二種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0039】
ゴム変性スチレン系樹脂(d)の含有量は、樹脂組成物の全質量100質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは27質量%以下、更により好ましくは25質量%以下である。
樹脂組成物がゴム変性スチレン系樹脂(d)を含有することで樹脂組成物の機械的強度を向上させることができるが、含有量が30質量%以下である場合、樹脂組成物のブタジエン単量体単位含有量が多くなり過ぎず、発泡成形時のガス抜け等で発泡が難しくなることを防止でき、ブタジエン含有に起因する剛性低下が抑制され、得られる発泡体の物性の低下を防止できる。
一方、ゴム変性スチレン系樹脂(d)の含有量は、機械的強度向上の効果を良好に得る観点から、樹脂組成物の全質量100質量%に対して3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。
【0040】
ゴム変性スチレン系樹脂(d)中のゴム含有量は、7〜15質量%が好ましく、より好ましくは9〜14質量%である。ゴム含有量が7質量%以上である場合、共重合樹脂(a)とのブレンドにおいて機械的強度を向上させることができ、ゴム変性スチレン系樹脂(d)のブレンド比率を上げることで機械的強度が向上する一方で耐熱性は大きく低下しないため好ましい。一方、ゴム含有量が15質量%以下である場合、ゴム変性スチレン系樹脂(d)を製造する時に重合系の粘度が高くなり過ぎず、運転が難しくなることを防止できると共に、ゴム粒子径を容易に微細化できる。更には共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(d)とをブレンドする際、ゴム成分の分散不良等による、機械的強度の低下又は製品の外観不良を防止できる。
なお本開示で、ゴム含有量は、実施例の項に記載する手順又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される。
【0041】
ゴム変性スチレン系樹脂(d)中のゴム成分は、樹脂組成物中にゴム粒子として存在できる。この場合のゴム粒子径は、好ましくは0.5〜5.0μm、より好ましくは0.7〜4.0μm、更に好ましくは1.0〜3.0μmである。
ゴム粒子径が0.5μm以上である場合、樹脂組成物の機械的強度が良好である。また、ゴム粒子径が5.0μm以下である場合、樹脂組成物の外観が良好である。ゴム変性スチレン系樹脂(d)は、ゴム状重合体の存在下で撹拌機付きの反応器内でスチレン系単量体を重合させて得られるが、ゴム粒子径は、撹拌機の回転数、用いるゴム状重合体の分子量等で調整することができる。
なお本開示で、ゴム粒子径は、透過型電子顕微鏡による断面観察画像から計測される値である。
【0042】
ゴム変性スチレン系樹脂(d)の200℃でのメルトマスフローレイトは、好ましくは0.5〜18.0g/10分、より好ましくは1.0〜16.0g/10分、更に好ましくは1.0〜14.0g/10分であることができる。
上記メルトマスフローレイトが0.5〜18.0g/10分の範囲であれば、共重合樹脂(a)及びMBS(b)との混合性が良く、また機械的強度も良好である。
なお本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、温度200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0043】
ゴム変性スチレン系樹脂(d)の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状−懸濁重合、又はゴム状重合体ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体、スチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と、複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0044】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂(d)のトルエン不溶分の膨潤指数が、8.0〜14.0であることが好ましい。この膨潤指数は、より好ましくは9.0〜13.0、更に好ましくは9.5〜12.5である。
ゴム変性スチレン系樹脂(d)のトルエン不溶分の膨潤指数が8.0〜14.0である場合、機械的強度に優れる樹脂が得られる。
なお本開示で、トルエン不溶分の膨潤指数は、それぞれ実施例の項で説明する手順又はこれと同等であることが当業者に理解されるような手順で測定される値である。
【0045】
以下、本実施形態の樹脂組成物の特性について記載する。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物中に含まれるスチレン単量体単位の含有量は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは83質量%以上、更により好ましくは85質量%以上である。
スチレン単量体単位の含有量は80質量%以上であれば、シートや容器とラミネートフィルムの接着性が良好であり、シートや容器の使用時にラミネートフィルムの剥離を防止できる。スチレン単量体単位の含有量は、用いる共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)、ゴム変性スチレン樹脂(d)のスチレン単量体単位の含有量、並びにこれら樹脂の混合比を調整することにより達成できる。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、ビカット軟化温度が106〜130℃、好ましくは108〜125℃、より好ましくは110〜125℃である。
ビカット軟化温度が106℃以上であれば、沸騰水での浸漬や電子レンジの加熱でもシートや容器等の変形が小さく、良好である。一方、ビカット軟化温度が130℃を超えると押出成形時や真空成形時の成形性が低下する傾向にある。106℃以上のビカット軟化温度は、用いる共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)、ゴム変性スチレン樹脂(d)のビカット軟化温度、並びにこれらの樹脂の混合比を調整することにより達成できる。
なお本開示で、ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠して、荷重49Nで測定される値である。
【0048】
本実施形態の樹脂組成物は、メルトマスフローレイトが、0.6〜3.0g/10min、好ましくは0.8〜2.0g/10min、より好ましくは1.0〜1.5g/10minである。
メルトマスフローレイトが0.6g/10min以上であれば、押出成形時や真空成形時の成形性が良好である。一方、メルトマスフローレイトが3.0g/10minを超えると真空成形時の深絞り性や成形品の機械的強度が低下する傾向にある。0.6g/10minのメルトマスフローレイトは、用いる共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)、ゴム変性スチレン樹脂(d)のメルトマスフローレイト、並びにこれらの樹脂の混合比を調整することにより達成できる。
なお本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、温度200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0049】
共重合樹脂(a)とMBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)、並びに、任意のゴム変性スチレン系樹脂(d)の混合方法としては、特に限定しないが、押出機等で混合・ペレタイズした後、得られたペレットを用いて、シート押出若しくは発泡押出でシート若しくは発泡体を製造するか、又は直接シート押出機若しくは発泡押出機に共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)、並びに任意のゴム変性スチレン系樹脂(d)を所定の比率で送り込み、シート又は発泡体を直接製造する方法等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂組成物の全質量を100質量%としたときに、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量の合計は、0.6質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。
スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であれば、例えば、射出成形においては、金型へのスチレンの二量体及びスチレン三量体の付着が大幅に低減され、これらスチレン二量体及びスチレン三量体の成形品への転写が大幅に低減され、外観不良が大幅に改善され、また、シート等の押出成形においては、ダイスに析出するスチレン二量体及びスチレン三量体の量が大幅に低減され、シートへの転写が大幅に低減され、外観不良が大幅に改善され、さらに金型及びダイス出口の清掃の必要性を低減できるため生産性も向上する。
なお本開示で、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物では、樹脂組成物の全質量を100質量%としたときに、スチレン単量体の残存量は700質量ppm以下が好ましく、より好ましくは600質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下である。スチレン単量体の残存量が700質量ppm以下であれば、シート押出時のダイス出口周りの臭気が改善され、樹脂の色調も改良される。
なお本開示で、スチレン単量体の残存量はガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0052】
<脂肪族第1級アルコール>
本実施形態の樹脂組成物は、脂肪族第1級アルコールを含んでいてもよく、炭素数が14以上であるものが好ましく、中でも、凝固点が−10℃以下であるものが好ましい。
脂肪族第1級アルコールの配合は、前述の特許文献1又は2に記載されるようにメタクリル酸の脱水反応によるゲル化反応を抑制するために有効であり、特に共重合樹脂(a)製造時に脂肪族第1級アルコールを系中に添加することが望ましい。
【0053】
特に、炭素数が14未満のアルコールは、共重合樹脂(a)製造時、シートの押出時等に、残留モノマー又は水分等の低揮発成分を除去する目的で高真空にした場合、揮発し易く、ゲル化反応の抑制効果が薄れる傾向があり、炭素数が大きい脂肪族第1級アルコールほど好ましい。
【0054】
また、炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールの中でも、凝固点が−10℃以下の脂肪族第1級アルコールは、水分、残留モノマー等の低揮発成分除去の目的で高真空にした場合、該アルコールが凝縮器等に析出しにくく、真空度を低下させにくいため、好ましい。
炭素数が14以上であり、且つ凝固点が−10℃以下である脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数が14以上であるイソ型の脂肪族第1級アルコールが挙げられる(後述)。
【0055】
なお本開示で、脂肪族第1級アルコールの含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0056】
以下、本実施形態で用いられる脂肪族第1級アルコールの具体例について記載する。
炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数14のn−ミリスチン酸アルコール、炭素数16のn−パルミチン酸アルコール、炭素数18のn−ステアリルアルコール等が挙げられる。
更に、凝固点10℃以下となり得る炭素数が14以上であるイソ型の脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数14のイソテトラデカノール、炭素数16のイソヘキサデカノール、炭素数18のイソオクタデカノール、炭素数20のイソエイコサノールが挙げられ、例えば、具体的には、7−メチル−2−(3−メチルブチル)−1−オクタノール、5−メチル−2−(1−メチルブチル)−1−オクタノール、5−メチル−2−(3−メチルブチル)−1−オクタノール、2−ヘキシル−1−デカノール、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−1−オクタノール、8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)−1−デカノール、2−ヘプチル1−ウンデカノール、2−ヘプチル−4−メチル−1−デカノール、2−(1,5−ジメチルヘキシル)−(5,9−ジメチル)−1−デカノール等が挙げられ、この中でも、工業的観点から、特に炭素数18のイソオクタデカノールが好ましい。
【0057】
上記凝固点が−10℃以下であり、且つ炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを用いる場合、かかる脂肪族第1級アルコールの添加量は、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは0.02〜1.0質量部であり、より好ましくは0.04〜0.8質量部、更に好ましくは0.06〜0.6質量部である。
上記添加量が0.02質量部以上となるようなアルコール添加条件では、共重合樹脂(a)製造時の脱揮工程又はシートの押出時に、ゲル化反応の抑制効果が良好である。一方、上記添加量が1.0質量部以下となるような添加条件では、ゲル化反応の抑制効果を良好に得る一方で、樹脂組成物中の脂肪族第1級アルコールの残存量が多くなりすぎず、樹脂の耐熱性の大きな低下が少なく、また、成形時にモールドデポジットが発生しにくいため好ましい。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤をさらに含んでいてもよい。
一般的な安定剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール等のヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工熱安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。
添加時期については、特に制限はなく、例えば、樹脂の重合工程又は脱揮工程で添加したり、またシート押出機又は発泡押出機で樹脂の押出し時に添加したりすることができる。
【0059】
安定剤の含有量は、樹脂組成物の全質量100質量部に対して、例えば、好ましくは0.01〜0.6質量部、より好ましくは0.05〜0.4質量部である。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物は、追加の樹脂をさらに含んでいてもよい。
追加の樹脂としては、例えば、一般のポリスチレン、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合樹脂、スチレン−ブタジエンのランダム共重合エラストマー、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0061】
また、本実施形態の樹脂組成物は、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、流動パラフィン等の可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を含有することができる。このような添加剤を含有する樹脂組成物は、各種成形に用いることが可能となる。
上記添加剤は、共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)の製造時に予め添加されていてもよい。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物では、共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)の合計含有量は、これら樹脂による前述の効果を良好に得る観点から、樹脂組成物の全質量100質量%に対して、好ましくは96質量%以上、より好ましくは97質量%以上、更に好ましくは98質量%以上である。一方、共重合樹脂(a)、MBS樹脂(b)、共重合樹脂(c)の合計含有量は、例えば、前述で例示したような他の成分による所望の効果を得る観点から、樹脂組成物の全質量100質量%に対して、好ましくは99.8質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99.0質量%以下である。
【0063】
(押出シート)
本実施形態の押出シートは、上述した本実施形態の樹脂組成物を含むものであり、上述した本実施形態の樹脂組成物を用いて形成された押出シートであり、非発泡押出シート、発泡押出シートのいずれでもよい。
押出シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。
【0064】
非発泡押出シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた短軸又は二軸押出機で押し出しし、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る方法等を挙げることができ、発泡押出シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を挙げることができる。
【0065】
発泡押出シートを形成する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては、通常用いられるものを使用してよい。発泡剤としては、ブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好ましい。また、発泡核剤としては、タルク等を使用することができる。
【0066】
発泡押出シートにおいては、厚みは0.5〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度は50〜300g/Lであることが好ましく、坪量は80〜300g/mであることが好ましい。
【0067】
発泡押出シートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリブタジエン等のゴム成分からなるハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)等と多層化して用いてもよい。
また、発泡押出シートは、更に該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、ポリプロピレン(PP)樹脂、PP/ポリスチレン(PS)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0068】
一方、非発泡押出シートにおいては、厚みは、例えば、0.1〜5.0mm程度であることが、剛性及び熱成形サイクルの観点から、好ましい。
また、非発泡押出シートは、通常の低倍率のロール延伸のみで形成したシートとしてもよいが、特に、ロールで1.3倍〜7倍程度延伸した後、テンターで1.3〜7倍程度延伸したシートが、強度の観点から、好ましい。
【0069】
非発泡押出シートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はポリブタジエン等のゴム成分からなるハイインパクトポリスチレン等と多層化して用いてもよい。
非発泡押出シートは、更に該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PP樹脂、PP/PS系樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0070】
(成形品)
本実施形態の成形品は、上述した本実施形態の非発泡押出シート又は発泡押出シートを含むものであり、上述した本実施形態の非発泡押出シート又は発泡押出シートを用いて形成された成形品である。
本実施形態では、発泡押出シート又はこれを含む多層体を、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形等により成形して、トレー等の容器を作製することができる。また、本実施形態では、非発泡押出シート又はこれを含む多層体を、例えば、真空成形により成形して、弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器を作製することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
なお、実施例及び比較例における、樹脂組成物、押出シート、成形品等は、以下の分析方法及び測定方法で評価した。
【0073】
(1)共重合樹脂(a)のスチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位の含有量(質量%)の測定、樹脂組成物のスチレン単量体単位の含有量(質量%)の算出
共重合樹脂(a)の樹脂組成を、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比に基づいて、定量した。また、樹脂組成物におけるスチレン単量体単位の含有量(質量%)を、かかる定量の結果から算出した。詳細な条件や手順は下記のとおりとした。
・試料調製:樹脂ペレット30mgをd−DMSO 0.75mLに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
・測定機器:日本電子(株)製 JNM ECA−500
・測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒。
・スペクトルの帰属
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属について、0.5〜1.5ppmのピークは、メタクリル酸、及び六員環酸無水物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークは、ポリマー主鎖のメチレン基の水素、12.4ppmのピークは、メタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5〜7.5ppmのピークは、スチレンの芳香族環の水素である。なお、本実施例及び比較例の樹脂では六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定方法では通常定量化は難しい。
【0074】
(2)ビカット軟化温度(℃)の測定
樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)を、ISO 306に準拠して、荷重49Nで測定した。
【0075】
(3)重量平均分子量の測定
樹脂及び樹脂組成物の重量平均分子量を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:テトラヒドロフランに樹脂を約0.05質量%で溶解させた。
・測定条件
機器:TOSOH HLC−8220GPC(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム:super HZM−H
温度:40℃
キャリア:THF 0.35mL/min
検出器:RI、UV:254nm
検量線:TOSOH製の標準PSを使用して作成。
【0076】
(4)ゴム粒子径(μm)の測定
ゴム変性スチレン系樹脂(d)のゴム粒子径(μm)の測定は、超薄切片法により透過型電子顕微鏡で写真を撮影し、写真中の粒子1000個の粒子径を測定し、次の式から求めた。
ゴム粒子径=Σni×Di/Σni×Di
(式中、niは、粒子径Diを有するゴム粒子の個数であり、ここで、Diは、粒子の長径と短径との平均値である。)
【0077】
(5)トルエン不溶分の膨潤指数の測定
沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂(d)1gを精秤し(この質量をW1とする)、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて、10℃以下、45100G(20000rpm)で、60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。不溶分(これはトルエンを伴った状態である)を、相対湿度20〜60%のシリカゲルを封入したデシケータ内で5分間状態調整をした後の質量を精秤し(この質量をW2とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤した(この質量をW3とする)。そして、下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数を求めた。
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
【0078】
(6)ゴム含有量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂(d)0.25gをクロロホルム50mLに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合を反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定した(一塩化ヨウ素法)。この方法により、ゴム変性スチレン系樹脂(d)中に含まれるゴムの質量(この質量をW4とする)を測定し、この値とゴム変性スチレン系樹脂(d)の質量(この質量をW1とする)とから、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム含有量(質量%)を、次式により求めた。
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム含有量=W1×W4/100
【0079】
(7)スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量(質量%)の測定
樹脂組成物(100質量%)中におけるスチレン二量体及びスチレン三量体の残存量(質量%)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:樹脂組成物2.0gをメチルエチルケトン20mLに溶解後、更に標準物質(トリフェニルメタン)入りのメタノール5mLを加え溶解した。
・測定条件
機器:島津製製作所製 ガスクロマトグラフィー GC−17Apf
カラム:DB−1(100%ジメチルポリシロキサン)30m、膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度:100℃で2分保持→5℃/分で260℃まで昇温→260℃で5分保持
注入口温度:200℃
検出器温度:200℃
キャリアガス:窒素
【0080】
(8)スチレン単量体の残存量(質量ppm)の測定
樹脂組成物(100質量%)中におけるスチレン単量体の含有量(質量ppm)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:樹脂組成物1.0gを標準物質(シクロペンタノール)入りジメチルホルアミド25mLに溶解させた。
・測定条件
機器:島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−14Bpf
カラム:SUS 3mmφ×3m(パックドカラム)
充填剤:液相→PEG−20M 25%、担体→Chromosorb W(AW) 60〜80メッシュ
カラム温度:110℃
注入口温度:220℃
検出器温度:220℃
キャリアガス:窒素
【0081】
(9)脂肪族第1級アルコール含有量(質量部)の測定
樹脂組成物に含まれる脂肪族第1級アルコール含有量(質量部)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:樹脂組成物0.5gをメチルエチルケトン20mLに溶解させた。
・測定条件
機器:島津製作所製ガスクロマトグラフィー GC2010
カラム:DB−WAX 30m、0.25mmφ、df=0.5μm
温度:100℃→5℃/分で130℃まで昇温→10℃/分で180℃まで昇温→180℃で12分保持→20℃/分で220℃まで昇温→220℃で20分保持
【0082】
(10)メルトマスフローレイト(MFR)(g/10min)の測定
樹脂及び樹脂組成物を、射出成形機(EC60N、東芝機械(株)社製)により、シリンダー温度230℃、金型温度45℃、射出圧力80MPa、射出速度26mm/sで成形して、ISO金型タイプAの試験片を得た。
得られた試験片のランナー部を切断したものについて、メルトマスフローレイト(g/10分)を、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定した。
【0083】
(11)シャルピー衝撃強さ(kJ/m)の測定
上記(10)において得られた試験片について、シャルピー衝撃強さ(kJ/m)を、ISO179に準拠して、ノッチ無しで測定した。
【0084】
(12)曲げ強さ(MPa)の測定
上記(10)において得られた試験片について、曲げ強さ(MPa)を、ISO 178に準拠して、測定した。
【0085】
(13)曲げたわみ(mm)の測定
上記(10)において得られた試験片について、曲げたわみ(mm)を、上記(12)の曲げ強さの測定時の最大のたわみ量を測定することによって、測定した。
【0086】
(14)金型汚れの判定
樹脂組成物を、150×150×2.5mmの短冊型の金型を使用して、充填5.0秒で、射出成形のショートショットを行った。70ショット終了後、15分間射出成形を停止し、金型を冷却した。冷却後の金型の成形体先端部に相当する金型面を目視で観察し、金型の汚れの程度を確認した。そして、上記のとおり金型の汚れの程度を確認しながら、700ショットまで射出成形を繰り返した。成形は、金型温度20℃、樹脂温度260℃で行った。そして、以下の評価基準で金型汚れを判定した。
◎:700ショットで金型汚れなし。
○:420〜630ショットで金型汚れ発生。
なお、金型汚れの付着物の成分を前述の手順にてガスクロマトグラフィーで測定したところ、スチレン二量体及びスチレン三量体が大部分であり、樹脂に練り込んだアルコールは僅かであった。
【0087】
(15)非発泡押出シートのインパクト強度(kgf・cm)の測定
樹脂組成物を用いて以下のように所定厚の非発泡の延伸シートを調製した。創研社製の30mmφ単軸シート押出機を用い、押出機の樹脂溶融ゾーンの設定温度:220〜230℃、Tダイ温度設定:240℃、吐出量:7kg/時にて、樹脂組成物の押出しを行い、厚み0.5mm、0.7mmのシートを作製した。更に、0.7mm厚のシートについては、東洋精機社製の二軸延伸装置 EX6−S1を用い、150℃で10分間加熱した後、シートの押出方向に5倍、シートの押出方向に直交する方向に1.5倍延伸して、約0.1mmのシートを作製した。
上記のとおり作製した0.1mm厚の非発泡の延伸シートにつき、東洋精機社製のフィルムインパクトテスター A121807502で、インパクト強度(kgf・cm)を測定した。
【0088】
(16)非発泡押出シートの耐熱性の評価
上記(15)に記載の方法で得られた0.1mm厚の非発泡の延伸シートを、105℃のシリコーン油のバスに30分間浸漬させたときのシート押出方向の5倍延伸の収縮率(%)を測定し、収縮率を以下の評価基準で判定した。収縮率が大きくなると、成形品の変形が大きくなるため、収縮率3%未満が実用上好ましい。
◎:収縮率3%未満
○:収縮率3%以上6%未満
×:収縮率6%以上
【0089】
(17)非発泡押出シートの外観の評価
上記(15)に記載の方法で得られた0.1mm厚の非発泡の延伸シートから、8cm×20cmの大きさのシートを3枚切り出した。そして、シート3枚の表面において、[長径+短径]/2で表される平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、外観を以下の評価基準で判定した。
◎:ゲル物の個数が2個以下
○:ゲル物の個数が3〜5個
×:ゲル物の個数が6個以上
【0090】
(18)非発泡押出シートのラミネートフィルムでの接着性の評価
上記(15)に記載の方法で得られた0.5mm厚の非発泡の延伸シートから、5cm×10cmの大きさのシートを切り出した。そして、そのシートの上に、5cm×13cmの大きさに切り出した、厚さ40μmの延伸ポリスチレンフィルム(旭化成株式会社製、OPS(登録商標))を配置し、金型を130℃に加熱した圧縮成形機で5秒間加圧した後、40℃に温調した金型で15秒冷却し、ラミネートフィルム試験片を得た。得られたラミネートフィルム試験片に、延伸ポリスチレンフィルムを引き剥がせるだけの荷重を加えた際の破壊の様子を観察し、ラミネートフィルムでの接着性を以下の評価基準で判定した。
◎:OPSが強固に接着し、OPSが破断
○:OPSの破断が支配的だが、一部押出シートからOPSが剥離
×:OPSは破断せず、押出シートから完全に剥離
【0091】
(19)非発泡押出シートの真空成形時の深絞り性評価:
開口部の直径8cm、底面部の直径4cm、深さ10cmのコップ形状の金型を用い、上記(15)に記載の方法で得られた0.5mm厚の非発泡の延伸シートを、加熱ゾーンのヒーター温度250℃、加熱時間27秒で予熱した後に、真空成形を行い、深絞り性を以下の評価基準で判定した。
◎:金型の形状通りに成形可能
○:金型の形状通りに成形可能だが、一部白化した
×:金型形状を再現しなかった、又は真空成形時に破れた
【0092】
(20)ダイス出口の臭気の評価
上記(15)に記載の方法で所定厚の非発泡の延伸シートを押し出しした際に、ダイス出口の臭気を確認し、ダイス出口の臭気を以下の評価基準で判定した。なお、臭気が大きいと、食品包装容器としての使用が忌避される恐れが示唆される。
◎:臭いを殆ど感じない
○:臭いをわずかに感じた
【0093】
(21)発泡押出シートのインパクト強度(kgf・cm)の測定
樹脂組成物を用いて以下のように所定厚の非発泡の延伸シートを調製した。創研社製の圧縮成形機を用い、厚み0.18mmのシートを作製した。シートにオートクレーブ中で液化炭酸ガスを10mPaで30分間含浸させ、その後、117℃で適宜調整した時間加熱を行って、約10倍の発泡押出シートを作製した。
上記のとおり作製した厚さ0.4mmの発泡押出シートにつき、東洋精機社製のフィルムインパクトテスター A121807502で、インパクト強度(kgf・cm)を測定した。
【0094】
[共重合樹脂(a)の製造]
[樹脂D]
スチレン71.0質量部、メタクリル酸7.5質量部、メタクリル酸メチル6.5質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで、2リットルの層流型反応器からなる重合装置に、次いで、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に、連続的に順次供給し、樹脂を調製した。
重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度125℃、層流型反応器は重合温度120〜142℃とした。脱揮された未反応ガスは、−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。
最終重合液中のポリマー分は、重合液を215℃、2.5kPaの減圧下で30分間乾燥後、式[(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量)×100%]により測定したところ、65.3質量%であった。重量平均分子量は、210,000(21.0万)であった。
得られた樹脂の組成比、特性等を表1に示す。
【0095】
[樹脂A〜C]
表1に示す樹脂の性状になるように、組成や重合温度条件等を調整し、樹脂Dと同様の方法で共重合樹脂(a)を得た。
得られた樹脂の組成比、特性等を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
[MBS樹脂(b)]
ブタジエン単量体単位からなるゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位と少量のアクリル酸ブチルの共重合体とがグラフトしてなるMBS樹脂(b)として、三菱レイヨン社製のメタブレンC−223A(ブタジエン単量体単位含有量:70質量%、メタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位の合計含有量:29質量%、メタクリル酸メチル単量体/スチレン単量体の組成比=1/1、アクリル酸ブチル単量体単位:1%)を用いた。
【0098】
[共重合樹脂(c)]
メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である共重合樹脂(e)として、三菱レイヨン社製のメタブレンP−501A(重量平均分子量:700,000)、P−551A(重量平均分子量:1,500,000)、P−531A(重量平均分子量:4,500,000)を用いた。
【0099】
[ゴム変性スチレン系樹脂(d)の製造]
[樹脂E]
攪拌機を備えた層流型反応器3基(1.5リットル)を直列に連結し、その後に二段ベント付き押出機を配置した重合装置を用いて、ゴム変性スチレン系樹脂を製造した。撹拌機付き原料タンクにスチレン82質量部、エチルベンゼン12質量部、ゴム成分として旭化成株式会社製ジエン(登録商標)55を6.7質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部を投入し、撹拌機でゴム成分を溶解させた。その後、この原料溶液を反応器に0.75リットル/hrの容量で供給し、第1段の反応機の温度を110〜120℃、第2段の反応機の温度を120〜130℃、第3段の反応機の温度140〜150℃で、重合を行った。また、押出機温度は210〜240℃、真空度は3kPa、最終反応器から出た重合液中の全固形分は77.9質量%であった。ゴム粒子径は、第1段層流型反応機の撹拌機の回転数を115rpmに調整することで制御した。
得られた樹脂の組成、特性を表3に示す。
【0100】
[樹脂F、G]
表2に示す樹脂の性状になるように、諸条件を調整し、樹脂Eと同様の方法でゴム変性スチレン系樹脂(d)を得た。
なお、表2に示すゴム粒子径を得るために、樹脂F及び樹脂Gでは第1段層流型反応機の撹拌機の回転数をそれぞれ200rpm及び250rpmに調整した。
【0101】
[脂肪族第1級アルコール]
イソ脂肪族第1級アルコールであるファインオキソコール180(凝固点:−30℃以下)(日産化学社製)を用いた。
【0102】
【表2】
【0103】
[実施例1]
以下の表3に示すように、共重合樹脂(a)として樹脂Aの96.5質量%に対し、MBS(b)を3質量%、共重合樹脂(c)としてメタブレンP−531A(三菱レイヨン社製)を0.5質量%の割合で混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールとしてファインオキソコール180を、前記共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した。
なお、以下の表3に示す樹脂組成物中のアルコール含有量(質量%)は、押出後の樹脂組成物について、ガスクロマトグラフィーで定量した値である。
【0104】
[実施例2〜6]
以下の表3に示す組成比とした点以外は実施例1と同様に、共重合樹脂(a)、MBS(b)、共重合樹脂(c)、必要に応じてゴム変性スチレン系樹脂(d)を混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールを添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した。評価結果を以下の表3に示す。
なお、シートの延伸温度、及び液化炭酸ガス含有シートの発泡温度は、実施例1とのビカット軟化温度の差の分だけ、増減した。
【0105】
[比較例1]
共重合樹脂(a)としての樹脂A:99.5質量%と、MBS樹脂(b):0質量%(無添加とした)と、共重合樹脂(c)としてメタブレンP−531A(三菱レイヨン社製):0.5質量%とを混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールを、前記共重合樹脂(a)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した以外は実施例1と同様にし、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。
比較例1では、MBS樹脂(b)を無添加としたことにより、実施例1に比較して、非発泡シートおよび発泡シートのインパクト強度が大きく低下する結果となった。
【0106】
[比較例2]
共重合樹脂(a)としての樹脂D:83質量%と、MBS(b):5質量%と、共重合樹脂(c)としてメタブレンP−531A(三菱レイヨン社製):2質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(d)としての樹脂Fと10質量%とを混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールを、前記共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、前記共重合樹脂(c)、及び前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した以外は実施例1と同様にし、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。
比較例2では、共重合樹脂(a)中のスチレン単量体単位の含有量を84質量%未満にしたことで、実施例1〜6に比較して、ラミネートフィルムの接着性が劣るものとなった。
【0107】
[比較例3]
共重合樹脂(a)としての樹脂C:90質量%と、MBS樹脂(b):5質量%と、共重合樹脂(c)としてメタブレンP−531A:5質量%とを混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールとしてファインオキソコール180(凝固点:−30℃以下)(日産化学社製)を、共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加したこと以外は実施例1と同様にし、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。
比較例3では、共重合樹脂(c)を5質量%用いたことにより、溶融張力が高すぎる結果となり、非発泡押出シートの成形時に厚さが均一な押出シートを安定して成形することができなかった。
【0108】
[比較例4]
共重合樹脂(a)としての樹脂C:49質量%と、MBS樹脂(b):9質量%と、共重合樹脂(c)としてメタブレンP−551A:2質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(d)として樹脂G:40質量%とを混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールとしてファインオキソコール180(凝固点:−30℃以下)(日産化学社製)を、共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、前記共重合樹脂(c)、及び前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加したこと以外は実施例1と同様にし、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。
比較例4では、(a)成分〜(c)成分の含有量が好適範囲を外れており、また、ゴム変性スチレン系樹脂(d)として樹脂Gを40質量%を混ぜたことで、実施例1に比較して、樹脂組成物のビカット軟化温度が低下し、更には非発泡シートの耐熱性評価において収縮率が6%以上となる結果となった。
【0109】
[比較例5]
共重合樹脂(a)として樹脂B:83質量%と、MBS樹脂(b):5質量%と、共重合樹脂(c)としてメタブレンP−501A:2質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(d)として樹脂F:10質量%とを混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールとしてファインオキソコール180(凝固点:−30℃以下)(日産化学社製)を、共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、前記共重合樹脂(c)、及び前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加したこと以外は実施例1と同様にし、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。
比較例5では共重合樹脂(c)に重量平均分子量が1,000,000未満のメタブレンP−501Aを使用した。実施例1に比較して、非発泡シートの真空成形時にシートが裂け、真空成形品が得られない結果となった。
【0110】
[比較例6]
共重合樹脂(a)としての樹脂C:85質量%と、MBS樹脂(b):5質量%と、共重合樹脂(c):0質量%(無添加とした)と、ゴム変性スチレン系樹脂(d)として樹脂Fを10質量%とを混ぜ、更に、イソ脂肪族第1級アルコールとしてファインオキソコール180(凝固点:−30℃以下)(日産化学社製)を、共重合樹脂(a)、前記MBS樹脂(b)、及び前記ゴム変性スチレン系樹脂(d)の合計質量100質量部に対して2質量部だけ添加したこと以外は実施例1と同様にし、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。
比較例6では、共重合樹脂(c)を無添加としたことにより、実施例1に比較して、非発泡シートの真空成形時にシートが裂け、真空成形品が得られない結果となった。
【0111】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いた、非発泡及び発泡の押出板、押出シート、更にはこれらの二次加工による食品容器、包装材等の成形品は、耐熱性、機械的強度、外観、押出成形性、真空成形時の深絞り性、及びラミネートフィルムの接着性に優れている。更に、本発明の耐熱スチレン系樹脂組成物は、射出成形等による成形品の原材料として、電気製品部品、玩具、雑貨、日用品及び各種工業部品等の用途にも幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。