特許第6803217号(P6803217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803217
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20201214BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20201214BHJP
   F25D 21/06 20060101ALI20201214BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20201214BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F25D17/08 306
   F25D17/06 312
   F25D21/06 B
   F25D23/00 302D
   F25D11/00 101B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-243296(P2016-243296)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-96646(P2018-96646A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年3月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】松野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】岩本 智晴
(72)【発明者】
【氏名】清水 和生
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0086928(US,A1)
【文献】 米国特許第05904049(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0126207(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/120907(WO,A2)
【文献】 特開2011−038715(JP,A)
【文献】 特開平10−089829(JP,A)
【文献】 特開2016−035335(JP,A)
【文献】 特開2001−280784(JP,A)
【文献】 特開2012−057888(JP,A)
【文献】 特開平07−110184(JP,A)
【文献】 米国特許第05377498(US,A)
【文献】 特開2008−045847(JP,A)
【文献】 特開2005−030606(JP,A)
【文献】 特開平04−036576(JP,A)
【文献】 特開2016−050678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/08
F25D 21/06
F25D 23/00
F25B 1/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して循環させる圧縮機と、
前記圧縮機による冷媒の循環により冷気を生成する冷却器と、
冷凍温度帯の貯蔵室である第1の貯蔵室と、
前記第1の貯蔵室への風路である第1の風路と、
冷蔵温度帯の貯蔵室である第2の貯蔵室と、
前記第2の貯蔵室への風路である第2の風路と、
前記冷却器により生成された冷気を送風する冷却ファンと、
前記冷却ファンにより送風された冷気が前記第1の風路及び前記第2の風路の一方に交互に流入するように切り替える切替手段と、
前記冷却ファンにより送風された冷気が前記第1の風路に流入するように前記切替手段を制御した後、前記圧縮機を停止させ、かつ、前記冷却ファンを運転させ、その後、前記冷却器の温度が予め定めた温度になった場合、又は、予め定めた時間が経過した場合に、前記冷却ファンにより送風された冷気が前記第2の風路に流入するように前記切替手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
冷媒を圧縮して循環させる圧縮機と、
前記圧縮機による冷媒の循環により冷気を生成する冷却器と、
冷凍温度帯の貯蔵室である第1の貯蔵室と、
前記第1の貯蔵室への風路である第1の風路と、
冷蔵温度帯の貯蔵室である第2の貯蔵室と、
前記第2の貯蔵室への風路である第2の風路と、
前記冷却器により生成された冷気を送風する冷却ファンと、
前記冷却ファンにより送風された冷気が前記第1の風路及び前記第2の風路の一方に交互に流入するように切り替える切替手段と、
前記冷却ファンにより送風された冷気が前記第1の風路に流入するように前記切替手段を制御した後、前記圧縮機を停止させ、かつ、前記冷却ファンを運転させ、その後、前記冷却ファンにより送風された冷気が前記第2の風路に流入するように前記切替手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記第2の貯蔵室の温度が目標温度に達した場合であっても、継続して前記冷却ファンを運転させ、その際に、前記圧縮機により圧縮された高温の冷媒を前記冷却器に直接送るためのバイパス経路を開くことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御手段は、前記冷却器又は前記第2の貯蔵室の温度が予め定めた温度になった場合に、前記バイパス経路を閉じることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却器で生成した冷気はファンの送風力により冷却器前面板と冷凍室背面板とで形成する空間に送風され、一方では冷凍室背面板に設けた孔より冷凍室各部に吐出され、他方では冷気通路を経て温度調節装置に送風されると共に、温度調節装置により庫内に送風する冷気の量を調節され、量を調節された冷気は冷気配分用ダクトに導かれ、更に、冷気配分用ダクトの内部で冷気を適当量に分割され吐出孔より冷蔵室各部の後部に、直接、導かれる冷蔵庫は、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
冷蔵室及び冷凍室の後方には庫内の上下方向に延びる冷気通路が設けられ、冷気通路の内部には冷却器である蒸発器、冷凍庫送風機及び冷蔵室送風機が配置され、冷凍庫送風機の冷気流通方向上流側では、空気が蒸発器を通る間に冷却されて冷気となり、冷気通路を流通する冷気は冷凍庫送風機の下流側で吐出口を通じて冷凍室に吐出され、冷蔵室送風機の下流側で吐出口を通じて冷蔵室に吐出される冷蔵室も、知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−36576号公報
【特許文献2】特開2016−50678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、1つの冷却器で温度帯の異なる第1の貯蔵室及び第2の貯蔵室を冷却する際に、第1の貯蔵室の冷却時には第1の貯蔵室のみを冷却し、第2の貯蔵室の冷却時には第1の貯蔵室及び第2の貯蔵室を冷却する構成では、第2の貯蔵室の冷却時に、第1の貯蔵室の冷気が第2の貯蔵室内に侵入し、第1の貯蔵室の環境が第2の貯蔵室に影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、1つの冷却器で温度帯の異なる第1の貯蔵室及び第2の貯蔵室を冷却する際に、第1の貯蔵室の環境が第2の貯蔵室に影響を及ぼす可能性を低下させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、冷媒を圧縮して循環させる圧縮機と、圧縮機による冷媒の循環により冷気を生成する冷却器と、第1の温度帯の貯蔵室である第1の貯蔵室と、第1の貯蔵室への風路である第1の風路と、第1の温度帯とは異なる第2の温度帯の貯蔵室である第2の貯蔵室と、第2の貯蔵室への風路である第2の風路と、冷却器により生成された冷気が第1の風路及び第2の風路の一方に交互に流入するように切り替える切替手段とを備えた冷蔵庫を提供する。
【0008】
ここで、第1の風路及び第2の風路は、1つの風路に包含され、少なくとも1つの側壁を共有する、ものであってよい。
【0009】
また、第2の風路は、第1の風路よりも、第1の貯蔵室から離れた位置に設けられている、ものであってよい。
【0010】
更に、第1の温度帯は、冷凍温度帯であり、第2の温度帯は、冷蔵温度帯であってよい。
【0011】
この場合、冷蔵庫は、冷却器により生成された冷気が第1の風路に流入するように切替手段により切り替えられた場合には、冷却器を収納する冷却器室から第2の貯蔵室へ冷気が侵入しないように切り替え、冷却器により生成された冷気が第2の風路に流入するように切替手段により切り替えられた場合には、第2の貯蔵室から冷却器を収納する冷却器室へ冷気が侵入するように切り替える第2の切替手段を更に備えた、ものであってよい。
【0012】
また、この場合、冷蔵庫は、冷却器により生成された冷気を送風する冷却ファンを更に備え、切替手段は、冷却ファンにより送風された冷気が第1の風路及び第2の風路の一方に交互に流入するように切り替える、ものであってよい。
【0013】
また、冷蔵庫は、冷却ファンにより送風された冷気が第1の風路に流入するように切替手段を制御した後、圧縮機を停止させ、かつ、冷却ファンを運転させ、その後、冷却ファンにより送風された冷気が第2の風路に流入するように切替手段を制御する制御手段を更に備えた、ものであってよい。
【0014】
この場合、制御手段は、冷却器の温度が予め定めた温度になった場合、又は、予め定めた時間が経過した場合に、冷却ファンにより送風された冷気が第2の風路に流入するように切替手段を制御する、ものであってよい。
【0015】
また、この場合、制御手段は、冷却ファンにより送風された冷気が第2の風路に流入するように切替手段を制御した後、第2の貯蔵室の温度もしくは冷却器の温度が予め定めた温度以上になった場合、又は、第2の貯蔵室の冷却に予め定めた時間以上を要した場合に、圧縮機を再び運転させる、ものであってよい。そして、制御手段は、圧縮機を再び運転させる際に、2つ以上の異なる径を有する膨張機構における径を切り替えることによって冷媒の流量を変化させる、ものであってよい。
【0016】
また、この場合、制御手段は、冷却ファンにより送風された冷気が第2の風路に流入するように切替手段を制御した後、第2の貯蔵室もしくは冷却器の温度の温度が予め定めた温度以上になった場合、又は、第2の貯蔵室の冷却に予め定めた時間以上を要した場合に、冷却ファンを停止させる、ものであってよい。そして、制御手段は、冷却ファンを停止させた後、冷却器の温度が予め定めた温度になった場合、又は、予め定めた時間が経過した場合に、冷却ファンを再び運転させる、ものであってよい。
【0017】
また、この場合、制御手段は、第2の貯蔵庫の温度が目標温度に達した場合であっても、継続して冷却ファンを運転させる、ものであってよい。そして、制御手段は、継続して冷却ファンを運転させる際に、圧縮機により圧縮された高温の冷媒を冷却器に直接送るためのバイパス経路を開く、ものであってよい。そして、制御手段は、冷却器又は第2の貯蔵室の温度が予め定めた温度になった場合に、バイパス経路を閉じる、ものであってよい。
【0018】
また、冷蔵庫は、冷却器に付着した霜を除去する除霜運転を実施する際に、冷却ファンを運転させ、冷却ファンにより送風された冷気が第2の風路に流入するように切替手段を制御する制御手段を更に備えた、ものであってよい。
【0019】
この場合、制御手段は、冷却器又は第2の貯蔵室の温度が予め定めた温度になった場合、又は、予め定めた時間が経過した場合に、冷却ファンを停止させる、ものであってよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1つの冷却器で温度帯の異なる第1の貯蔵室及び第2の貯蔵室を冷却する際に、第1の貯蔵室の環境が第2の貯蔵室に影響を及ぼす可能性を低下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態における冷蔵庫の全体図である。
図2】本発明の第1の実施の形態における冷凍室ダクトカバー及び冷却器カバーを外した状態の冷凍室の全体図である。
図3】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態における冷凍室ダクトの構成を示した図である。
図4】(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態で用いるダンパーの構成を示した図である。
図5】(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態における冷凍室の冷却中における冷気の流れを示した図である。
図6】(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態における冷蔵室の冷却中における冷気の流れを示した図である。
図7】本発明の第1の実施の形態における冷蔵室内を高湿化するための運転制御のタイムチャートである。
図8】本発明の第1の実施の形態における冷蔵室内を高湿化するための運転制御で用いるのに好適な冷却サイクルを示した図である。
図9】(a),(b)は、本発明の第2の実施の形態における冷凍室ダクト壁を前面から見たときの図である。
図10】(a),(b)は、本発明の第3の実施の形態における冷凍室ダクト壁を前面から見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[本実施の形態の概要]
本実施の形態は、1つの冷却器で温度帯の異なる第1の貯蔵室及び第2の貯蔵室を冷却する冷蔵庫において、第1の貯蔵室の冷気が第2の貯蔵室内に侵入することにより第1の貯蔵室の環境が第2の貯蔵室に影響を及ぼすことを抑制するものである。例えば、第1の貯蔵室を冷凍室、第2の貯蔵室を冷蔵室とした場合に、冷凍室の冷気が冷蔵室に侵入することにより冷蔵室内の湿度が低下することを抑制し、冷蔵室の湿度を、低コストで、2つ以上の冷却器を備えた冷蔵庫の冷蔵室内の湿度と同等以上の高湿度とするものである。
【0023】
具体的には、冷凍室及び冷蔵室のそれぞれに適した蒸発温度で冷却を実現するダクト構造を備える。即ち、1つのダクト内に冷凍室専用の冷却用風路と冷蔵室専用の冷却用風路を個別に設け、これらの冷却用風路の切り替えをダクト内に設けた1つのダンパーで制御する。また、冷凍室及び冷蔵室の冷却の切り替えを最適化するために冷却ファン及びダンパーを制御する。
【0024】
更に、膨張弁及びキャピラリチューブにより蒸発温度を制御する。即ち、冷蔵室を冷却する際の蒸発温度を最適化することにより、冷蔵室内の湿度を制御する。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における冷蔵庫1の全体図である。図示するように、冷蔵庫1は、第1の貯蔵室の一例としての冷凍室10と、第2の貯蔵室の一例としての冷蔵室20とを備える。また、仕切り30と、上側冷気通路40と、下側冷気通路50と、圧縮機60とを備える。図1は、冷蔵庫1を前面から見たときの図であるので、冷凍室10内には、冷凍室ダクトカバー11と、冷却器カバー12とが見えており、冷蔵室20内には、冷蔵室ダクトカバー21が見えている。仕切り30は、冷凍室10と冷蔵室20とを仕切る。上側冷気通路40は、仕切り30の上部に設けられた冷気の通路であり、下側冷気通路50は、仕切り30の下部に設けられた冷気の通路であるが、詳細は詳述する。圧縮機60は、冷媒を圧縮して、冷凍サイクル内に冷媒を循環させる。
【0026】
図2は、第1の実施の形態における冷凍室ダクトカバー11及び冷却器カバー12を外した状態の冷凍室10の全体図である。図示するように、冷凍室10は、冷凍室ダクト壁13と、ダンパー14と、冷却ファン15と、冷却器16とを備える。冷凍室ダクト壁13は、冷凍室ダクト内に設けられた壁面である。ダンパー14は、切替手段の一例であり、冷凍室ダクト内に設けられ、冷却ファン15により送風された冷気の風路を切り替えるものであるが、詳細は後述する。冷却ファン15は、冷却器16により生成された冷気を冷蔵庫1内に送風するファンである。冷却器16は、冷媒を蒸発させることにより、冷蔵庫1内を冷却するための冷気を生成する。
【0027】
また、図示しないが、図1で冷蔵室ダクトカバー21を外すと、冷蔵室ダクトが存在する。一方で、冷蔵室20内には冷却器は存在しない。即ち、図1の冷蔵庫1は、1つの冷却器16で冷凍室10及び冷蔵室20を冷却するものである。
【0028】
図3(a)〜(c)は、第1の実施の形態における冷凍室ダクトの構成を示した図である。
【0029】
図3(a)は、冷凍室ダクトカバー11を示す。図示するように、冷凍室ダクトカバー11には、開口111〜113が設けられている。尚、ここでは3つの開口111〜113を設けたが、開口の数はこれには限らない。
【0030】
図3(b)は、冷凍室ダクト壁13を前面から見たときの図であり、図3(c)は、冷凍室ダクト壁13を側面から見たときの図である。図3(b)に矢印101で示すように、冷凍室ダクト壁13の前面には、冷凍室10を冷却するために使用される第1の風路の一例としての冷凍室冷却用風路131が形成される。また、図3(c)に矢印102で、図3(b)に矢印103で示すように、冷凍室ダクト壁13の背面には、冷蔵室20を冷却するために使用される第2の風路の一例としての冷蔵室冷却用風路132が形成される。ここで、2系統の風路である冷凍室冷却用風路131及び冷蔵室冷却用風路132は、1つの風路に包含される形で形成される。また、冷凍室冷却用風路131の1つの側壁と、冷蔵室冷却用風路132の1つの側壁とは、共有側壁133となっている。更に、冷凍室冷却用風路131及び冷蔵室冷却用風路132は、仕切り134によって個別に形成される。更にまた、冷凍室ダクト壁13には、冷凍室冷却用風路131及び冷蔵室冷却用風路132を切り替えるためのダンパー14と、冷気を送風するための冷却ファン15とが設置される。
【0031】
このような風路構成により、2系統の風路を完全に分離した場合と比較して、スペース的にもコンパクト化が図れる。また、側壁を共有しているので、冷気漏れを抑制でき、材料費の低減にもつながる。
【0032】
更に、上述したように、2系統の風路は、冷蔵室冷却用風路132が冷凍室冷却用風路131より庫外側(冷凍室ダクトカバー11とは反対側)となるように設置される。言い換えれば、冷凍室10に近い側に冷凍室冷却用風路131が設置され、冷凍室10から遠い側に冷蔵室冷却用風路132が設置される。
【0033】
図4(a),(b)は、ダンパー14の構成を示した図である。図示するように、ダンパー14は、冷凍室冷却用風路131の方向への冷凍室冷却用風路開口141と、冷蔵室冷却用風路132の方向への冷蔵室冷却用風路開口142と、開閉板143とを有する。例えば、図4(a)に示すように、開閉板143を鉛直方向へ向けると、冷凍室冷却用風路開口141は全開となり、冷蔵室冷却用風路開口142は全閉となる。また、図4(b)に示すように、開閉板143を水平方向へ向けると、冷凍室冷却用風路開口141は全閉となり、冷蔵室冷却用風路開口142は全開となる。
【0034】
或いは、図示しないが、冷凍室冷却用風路開口141及び冷蔵室冷却用風路開口142の何れかを半開にすることによって、冷凍室冷却用風路131及び冷蔵室冷却用風路132の両方に冷気を送風することも可能である。
【0035】
続いて、冷凍室10の冷却中及び冷蔵室20の冷却中における冷気の流れについて説明する。
【0036】
図5(a),(b)は、冷凍室10の冷却中における冷気の流れを示したものである。
【0037】
図5(b)において、冷却器16を通過した冷気は、矢印181で示すように、冷凍室ダクト壁13の背面にあるファン吸込み口より、冷却ファン15によって吸い込まれ、矢印182で示すように、ダンパー14の方向へ吹き出される。
【0038】
図5(b)において、ダンパー14は、冷凍室冷却用風路開口141が全開(冷蔵室冷却用風路開口142は全閉)となっているため、冷気は、矢印183で示すように、冷凍室冷却用風路131のみを通過する。
【0039】
その後、図5(a)において、冷気は、矢印184〜186で示すように、冷凍室ダクトカバー11に設けられた開口111〜113から冷凍室10内のみに吹き出され、冷凍室10のみが冷却される。即ち、冷蔵室20内への冷気の吹出しはない。
【0040】
また、冷凍室冷却用風路131の1つの側壁と、冷蔵室冷却用風路132の1つの側壁とが、共有側壁133(図3(b)参照)となっているため、冷凍室10の冷却中に、共有側壁133を介して冷蔵室冷却用風路132内への熱伝達により、その空気温度を下げることが可能となり、冷蔵室20の冷却時における冷却スピードを速め、ひいては省エネに寄与することになる。
【0041】
図6(a),(b)は、冷蔵室20の冷却中における冷気の流れを示したものである。
【0042】
図6(a)において、冷却器16を通過した冷気は、矢印191で示すように、冷凍室ダクトカバー11の背面にあるファン吸込み口より、冷却ファン15によって吸い込まれ、矢印192で示すように、ダンパー14の方向へ吹き出される。
【0043】
図6(a),(b)において、ダンパー14は、冷蔵室冷却用風路開口142が全開(冷凍室冷却用風路開口141は全閉)となっているため、冷気は、矢印193,194で示すように、冷蔵室冷却用風路132のみを通過する。
【0044】
その後、図6(a)において、冷気は、矢印195で示すように、上側冷気通路40を経由して冷蔵室ダクトに導かれ、冷蔵室ダクトカバー21に設けられた数個の開口から冷蔵室20内のみに吹き出され、冷蔵室20のみが冷却される。即ち、冷凍室10内への冷気の吹出しはない。
【0045】
冷蔵室20の冷却中は、より低温で低湿度の冷凍室10の冷却温度帯の冷気の侵入がなく、冷蔵室20内の湿度低下を防止できる。
【0046】
また、冷蔵室冷却用風路132が冷凍室冷却用風路131より庫外側(冷凍室ダクトカバー11とは反対側)にあるため、冷蔵室20の冷却中に冷蔵室冷却用風路132を通過する、冷凍室10の冷却温度帯に比較して高い温度帯の冷気が、冷凍室ダクトカバー11へ直接伝達することを阻害し、冷凍室10内の温度上昇を抑制することができ、省エネに寄与する。
【0047】
次に、再び図1を参照して、上側冷気通路40及び下側冷気通路50について説明する。
【0048】
上側冷気通路40は、上述の通り、冷却器16を通過した冷気を冷蔵室ダクトに導くための通路として使用される。
【0049】
一方、下側冷気通路50は、冷蔵室20内の冷却に利用した冷気を冷凍室10内に設置された冷却器16に戻すための戻り風路として使用される通路である。
【0050】
この下側冷気通路50の内部に第2の切替手段の一例としてのダンパー(図示せず)を設け、冷蔵室20の冷却中にはダンパーを開き、戻り風路の役割を果たすようにする。一方、冷凍室10の冷却中にはダンパーを閉じ、冷凍室10と冷蔵室20との冷気の往来がないようにして、冷凍室10内の低温、低湿の冷気が冷蔵室20内へ侵入するのを防止し、冷蔵室20内の湿度低下を抑制することができる。
【0051】
以下、冷蔵室20内を高湿化するための運転制御について説明する。
【0052】
図7は、このような運転制御のタイムチャートを示したものである。
【0053】
タイムチャート71に示すように、冷蔵室20内の湿度は、冷蔵室20の冷却時に、即ち、ダンパー14が冷蔵室20の側に開く際に低下するため、冷蔵室20の冷却時の湿度低下を抑制することが必要となる。冷蔵室20の冷却時の湿度低下は、主に、冷却器16の温度が低いことにより除湿されることが原因であるため、冷蔵室20の冷却時における冷却器16の温度を上昇させることが必要となる。
【0054】
タイムチャート73の時刻t1、タイムチャート74の時刻t11、及び、タイムチャート75の時刻t1は、冷蔵室20の冷却開始時の制御を示している。即ち、図4(a),(b)に示したダンパー14により時刻t11で風路を切り替える前に、時刻t1で、圧縮機60を停止させ、冷却ファン15を運転させることで、冷蔵室20内へ風を送る前に、予め冷却器16の温度を上げておく。ここで、時刻t11は、冷却器16の温度によって決定してもよいし、圧縮機60の停止からの時間によって決定してもよい。例えば、冷却器16の温度が予め定めた温度以上になったと判断した場合や、圧縮機60の停止から予め定めた時間が経過したと判断した場合に、ダンパー14を切り替えて冷蔵室20内へ風を送ることにより冷却を開始するとよい。
【0055】
ところで、冷蔵室20の冷却中は、冷蔵室20内の空気が循環するため、冷却器16の温度が上昇し、やがて、冷蔵室20内の温度が冷却できない温度に達する可能性がある。そのため、冷蔵室20内の温度又は冷却器16の温度が予め定めた温度以上になった場合、即ち、冷蔵室20内の温度の下降勾配が予め定めた勾配以下になった場合に、圧縮機60を再起動することで、不冷却を回避するようにする。或いは、冷蔵室20内の冷却に予め定めた時間以上を要した場合に、圧縮機60を再起動することで、不冷却を回避するようにしてもよい。タイムチャート73では、このような圧縮機60の再起動のタイミングを時刻t12で示している。
【0056】
また、同様の場合に、冷却ファン15を停止させることで、不冷却を回避するようにしてもよい。タイムチャート75では、このような冷却ファン15の停止のタイミングを時刻t13で示している。そして、この場合には、時刻t14で、冷却ファン15を再び運転させることで、冷却器16の温度を上げる。ここで、時刻t14は、冷却器16の温度によって決定してもよいし、冷却ファン15の停止からの時間によって決定してもよい。例えば、冷却器16の温度が予め定めた温度以上になったと判断した場合や、冷却ファン15の停止から予め定めた時間が経過したと判断した場合に、冷却ファン15を再び運転させるとよい。
【0057】
その後、時刻t2で冷蔵室20内の温度が目標温度に達したとすると、冷蔵室20の冷却は終了し、停止モードとなる。この停止モードでは、タイムチャート75に示すように、冷却器16の温度を上昇させるため、冷却ファン15を継続して運転する。そうすることで、冷却器16の温度を0℃よりも高くすることができ、冷蔵室20内の湿度を上昇させると共に、冷却器16についた霜を除去することも可能となる。
【0058】
尚、図7のタイムチャートには示していないが、冷蔵庫1は冷却器16に付着した霜を除去する除霜運転を周期的に実施しているので、その除霜運転中に、ダンパー14を冷蔵室20の側に開き、冷却ファン15を運転させるようにしてもよい。そうすることで、除霜によって出た水分を冷蔵室20内に送ることができ、図7に示したサイクル以外の工程でも冷蔵室20内の湿度を上昇させることが可能となる。また、冷却ファン15の停止は、冷却器16又は冷蔵室20の温度を検知する温度センサの値が予め定めた値に達した場合、又は、冷却ファン15の運転開始から予め定めた時間が経過した場合に行い、冷蔵室20内の温度が予め定めた温度以上にならないようにするとよい。
【0059】
図8は、冷蔵室20内を高湿化するための運転制御で用いるのに好適な冷却サイクルを示したものである。図示するように、この冷却サイクルは、冷却器16、圧縮機60、三路切替弁61、凝縮器62、可変式膨張弁63、キャピラリチューブ64等を配管で連結することにより構成されている。また、この冷却サイクルは、バイパス経路65も備えている。
【0060】
即ち、この冷却サイクルでは、2つ以上の異なる径を有する膨張機構を、可変式膨張弁63で実現している。上述したように冷蔵室20の冷却中に圧縮機60を再起動した場合、冷却器16の温度が低下するため、冷蔵室20内の湿度低下の要因となる。そのため、冷蔵室20の冷却時のみ、可変式膨張弁63にて冷媒流量を変化させ、冷却器16の温度を高い状態にして冷却することで、冷蔵室20の湿度の低下を抑制する。
【0061】
また、この冷却サイクルでは、上述したように、圧縮機60で圧縮された高温の冷媒を冷却器16に直接送るためのバイパス経路65を設けている。ここで、バイパス経路65への冷媒の流路の切替えは、三路切替弁61で行う。冷凍室10及び冷蔵室20の冷却完了時に、三路切替弁61にてバイパス経路65に高温の冷媒を流すと共に冷却ファン15を運転させることにより、冷却器16の温度を0℃よりも高くすることができ、冷蔵室20内の湿度を上昇させると共に、冷却器16についた霜を除去することも可能となる。また、バイパス経路65の閉鎖は、冷却器16又は冷蔵室20の温度を検知する温度センサの値が予め定めた値に達した場合に行い、冷蔵室20内の温度が予め定めた温度以上にならないようにするとよい。
【0062】
本実施の形態によれば、1つの冷却器で温度帯の異なる第1の貯蔵室及び第2の貯蔵室を冷却する冷蔵庫において、第1の貯蔵室の環境が第2の貯蔵室に影響を及ぼすことを低コストで抑制することができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における冷蔵庫1は、冷凍室ダクトの内部以外は第1の実施の形態で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0064】
図9(a),(b)は、第2の実施の形態における冷凍室ダクト壁83を前面から見たときの図である。図9(a)に矢印801〜803で示すように、冷凍室ダクト壁83の前面左側に、冷凍室10を冷却するために使用される第1の風路の一例としての冷凍室冷却用風路831が形成される。また、図9(b)に矢印804〜806で示すように、冷凍室ダクト壁83の前面右側に、冷蔵室20を冷却するために使用される第2の風路の一例としての冷蔵室冷却用風路832が形成される。また、図9(a),(b)に示すように、冷凍室冷却用風路831及び冷蔵室冷却用風路832は、仕切り834によって個別に形成される。更に、冷凍室ダクト壁83には、冷凍室冷却用風路831及び冷蔵室冷却用風路832を切り替える切替手段の一例としてのダンパー84と、冷気を送風する冷却ファン15とが設置される。ここで、ダンパー84は、駆動部840と、冷凍室冷却用風路開口841と、冷蔵室冷却用風路開口842と、開閉板843,844とを有し、冷凍室冷却用風路開口841及び冷蔵室冷却用風路開口842を独立して開閉可能になっている。例えば、図9(a)に示すように、開閉板843を倒して開閉板844を立てると、冷凍室冷却用風路開口841は全開となり、冷蔵室冷却用風路開口842は全閉となる。また、図9(b)に示すように、開閉板843を立てて開閉板844を倒すと、冷凍室冷却用風路開口841は全閉となり、冷蔵室冷却用風路開口842は全開となる。
【0065】
そして、このようなダンパー84を使用することにより、冷凍室冷却用風路831及び冷蔵室冷却用風路832は、同一平面上の1つの風路に包含される形で形成される。これにより、第2の実施の形態では、冷凍室ダクト全体の厚みを薄くすることが可能となる。
【0066】
また、このような構成であっても、冷凍室冷却用風路831及び冷蔵室冷却用風路832が仕切り834によって確実に分離されていれば、第1の実施の形態と同等の高湿化効果は得られる。
【0067】
更に、第1の実施の形態で図7及び図8を参照して説明した冷蔵室20内を高湿化するための運転制御は、第2の実施の形態においても適用可能である。
【0068】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態における冷蔵庫1も、冷凍室ダクトの内部以外は第1の実施の形態で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0069】
図10(a),(b)は、第3の実施の形態における冷凍室ダクト壁93を前面から見たときの図である。図10(a)に矢印901〜903で示すように、冷凍室ダクト壁93の前面左側に、冷凍室10を冷却するために使用される第1の風路の一例としての冷凍室冷却用風路931が形成される。また、図10(b)に矢印904〜906で示すように、冷凍室ダクト壁93の前面右側に、冷蔵室20を冷却するために使用される第2の風路の一例としての冷蔵室冷却用風路932が形成される。また、図10(a),(b)に示すように、冷凍室冷却用風路931及び冷蔵室冷却用風路932は、仕切り934によって個別に形成される。更に、冷凍室ダクト壁93には、冷凍室冷却用風路931及び冷蔵室冷却用風路932を切り替える切替手段の一例としてのダンパー94と、冷気を送風する冷却ファン15とが設置される。ここで、ダンパー94は、駆動部940と、冷凍室冷却用風路開口941と、冷蔵室冷却用風路開口942と、開閉板943とを有し、駆動部940を中心として内角約90°の扇型の範囲内で開閉板943が回転するように設置される。例えば、図10(a)に示すように、開閉板943を扇型の最も右側まで回転させると、冷凍室冷却用風路開口941は全開となり、冷蔵室冷却用風路開口942は全閉となる。また、図10(b)に示すように、開閉板943を扇型の最も左側まで回転させると、冷凍室冷却用風路開口941は全閉となり、冷蔵室冷却用風路開口942は全開となる。
【0070】
そして、このようなダンパー94を使用することによっても、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができ、また、第1の実施の形態と同等の高湿化効果を得ることも可能である。
【0071】
更に、第1の実施の形態で図7及び図8を参照して説明した冷蔵室20内を高湿化するための運転制御は、第3の実施の形態においても適用可能である。
【0072】
[第4の実施の形態]
第1乃至第3の実施の形態では、冷凍室及び冷蔵室のそれぞれに冷気を送風する2系統の風路の何れか一方を、ダンパーでの切り替え制御により選択することとしたが、これには限らない。2系統の風路の何れか一方を選択することが可能であれば、例えば、開閉機構を持つ一方弁やソレノイド式開閉弁等を、それぞれの風路に1つずつ設けるようにしてもよく、このような構成によっても第1乃至第3の実施の形態と同様の効果は得られる。
【0073】
或いは、第1乃至第3の実施の形態では、1つの冷却ファン15を設け、この冷却ファン15が送風した冷気をダンパーでの切り替え制御により、冷凍室及び冷蔵室への2系統の風路の何れか一方に送るようにしたが、これには限らない。2つの冷却ファンを設け、これらの冷却ファンのオン/オフ制御により、冷凍室及び冷蔵室への2系統の風路の何れか一方に冷気を送るようにしてもよい。具体的には、冷凍室への風路に対応する冷凍室用ファンと、冷蔵室への風路に対応する冷蔵室用ファンとを設け、冷凍室への風路のみに冷気を送る際には、冷凍室用ファンをオンにして冷蔵室用ファンをオフにし、冷蔵室への風路のみに冷気を送る際には、冷凍室用ファンをオフにして冷蔵室用ファンをオンにすればよい。尚、この場合の冷凍室用ファン及び冷蔵室用ファンは、切替手段の一例である。
【符号の説明】
【0074】
1…冷蔵庫、10…冷凍室、11…冷凍室ダクトカバー、111,112,113…開口、12…冷却器カバー、13,83,93…冷凍室ダクト壁、131,831,931…冷凍室冷却用風路、132,832,932…冷蔵室冷却用風路、133…共有側壁、134,834,934…仕切り、14,84,94…ダンパー、840,940…駆動部、141,841,941…冷凍室冷却用風路開口、142,842,942…冷蔵室冷却用風路開口、143,843,844,943…開閉板、15…冷却ファン、16…冷却器、20…冷蔵室、21…冷蔵室ダクトカバー、30…仕切り、40…上側冷気通路、50…下側冷気通路、60…圧縮機
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