(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803239
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】手術トレーニングシステム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20201214BHJP
G09B 23/28 20060101ALI20201214BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B23/28
A61B5/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-2573(P2017-2573)
(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公開番号】特開2018-112646(P2018-112646A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】517010655
【氏名又は名称】村上 貴志
(73)【特許権者】
【識別番号】517010666
【氏名又は名称】安水 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴志
(72)【発明者】
【氏名】安水 大介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 治之
【審査官】
松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/151503(WO,A1)
【文献】
特開2011−113056(JP,A)
【文献】
特開2011−133830(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/013636(WO,A1)
【文献】
近藤大祐、後藤敏之ら,自由曲面への投影を用いたバーチャル解剖模型、[online],日本バーチャルリアリティ学会論文誌,日本バーチャルリアリティ学会,2005年 1月18日,10巻2号,pp.201-208,[2020年9月11日検索]、<DOI>https://doi.org/10.18974/tvrsj.10.2_201,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/tvrsj/10/2/10_KJ00007498889/_pdf/-char/ja
【文献】
黒田知宏、黒田嘉宏,応用3:医療分野におけるARの活用 臨床情報と臨床現場の接点,情報処理,社団法人情報処理学会,2010年 4月15日,51巻4号,pp.398-402,ISSN:0447−8053
【文献】
日置智也、粂直人ら,内視鏡手術訓練用MRシミュレータの施策,第16回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集,日本バーチャルリアリティ学会,2011年 9月22日,pp.358-361,ISSN:1349−5062
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00、23/00−23/34
A61B 5/00、17/00−17/94
G06T 1/00−1/60
G06D 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実で表現される胸郭モデルと、
前記胸郭モデルに対して移動可能な実体モデルである創傷開創器と、
前記胸郭モデル内に配設される心臓モデルと、を含み、
前記創傷開創器は、胸郭モデルの所定の位置に固定可能であり、
前記心臓モデルは、実体モデルである、手術トレーニングシステム。
【請求項2】
前記心臓モデルは、3次元プリンタによる造形である、請求項1記載の手術トレーニングシステム。
【請求項3】
前記胸郭モデルは、手術前の患者データに基づいて表現された、請求項1または2に記載の手術トレーニングシステム。
【請求項4】
前記創傷開創器は、前記胸郭モデルの肋骨と肋骨との間に固定可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の手術トレーニングシステム。
【請求項5】
撮像可能な撮像装置をさらに含み、
前記創傷開創器は、撮像装置を取り外し可能な取り付け部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の手術トレーニングシステム。
【請求項6】
前記胸郭モデルは、ヘッドマウントディスプレイ装置で表示される、請求項1から5のいずれか1項に記載の手術トレーニングシステム。
【請求項7】
前記胸郭モデルは、投影装置で表示される、請求項1から5のいずれか1項に記載の手術トレーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術トレーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手術トレーニングシステムにおいては、種々研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2004−347623号公報)には、骨部分や軟部組織を、形状、色、見た目の質感、柔らかさ、及び硬さなどを生体に近い物理特性で再現し、模型の一部分を、手術操作で破壊して手術操作の訓練が可能な人体模型及びその製造方法について開示されている。
【0004】
特許文献1(特開2004−347623号公報)記載の人体模型及びその製造方法においては、骨部分及び軟部組織が生体に近い物理特性で再現されている。人体模型の一部分は、不可逆的に破壊可能な破壊可能部分にすることができ、この破壊可能部分は、部品として交換可能となっており、模型の本体部分は繰り返し利用可能である。
【0005】
特許文献2(特表2007−528029号公報)には、腹腔鏡処置、放射線透視処置、および処置が実行される対応する解剖学的構造の構造および動的動作をシミュレートする精密な手術を実行する際に特に有用な訓練および/または評価装置について開示されている。
【0006】
特許文献2(特表2007−528029号公報)記載の装置は、体壁を真似るように設計することができ、一つ以上の器官が配置された外部ハウジングを含む。呼吸、肺の作用、循環、消化および生体内に存在する他の要因の結果としての器官の運動が、処置中の器官の正確な動的動作を提供するように装置内でシミュレートされる。
【0007】
特許文献3(特表2012−532333号公報)には、訓練システム及び方法について開示されている。
【0008】
特許文献3(特表2012−532333号公報)記載の訓練システム及び方法は、ディスプレイ上で可視化されることのできる対象者のファントムを含む。空間追跡システムは、対象者のファントムの空間の中の介入器具を追跡するように構成される。シミュレーションシステムは、前記ファントムの空間の画像の中のシミュレーションされた異常を生成し、さらに、該異常に対して関連する手順においてユーザを訓練することを目的として該ユーザにフィードバック情報及び評価情報を提供するために、該シミュレーションされた異常との相互作用をシミュレーションするよう構成される。
【0009】
特許文献4(特表2015−519596号公報)には、方法、システム、および非一時的なコンピュータプログラム製品について開示されている。
【0010】
特許文献4(特表2015−519596号公報)記載の方法、システム、および非一時的なコンピュータプログラム製品においては、手技の能力モデルを提供することを含むことができ、該能力モデルは、手技の1つ以上の以前の能力に少なくとも部分的に基づく。実施形態はさらに、手技が行われている間に能力データを取得することを含むことができ、該能力データは、1つ以上の運動感知デバイスから受け取るセンサデータに少なくとも部分的に基づく。実施形態はさらに、手技の能力計量を決定することを含むことができ、該能力計量は、能力データを能力モデルと比較することによって決定される。実施形態はさらに、結果を出力することを含むことができ、該結果は、能力計量に基づく。
【0011】
特許文献5(WO2009/151121号公報)には、感覚呈示システムについて開示されている。
【0012】
特許文献5(WO2009/151121号公報)記載の感覚呈示システムにおいては、触覚部によりユーザの身体所定部位に触覚刺激を与える触覚呈示手段と、前記身体所定部位に対応する身体疑似画像と、前記触覚部に対応する触覚部疑似画像とを仮想空間内に表示し、前記触覚部疑似画像が前記身体疑似画像に仮想触覚刺激を与えるような動作映像を呈示してユーザに対し視覚刺激を与える視覚呈示手段とを備え、前記視覚呈示手段は、前記触覚部によって前記身体所定部位に対し前記触覚刺激を与える動作とは異なる動作映像を呈示し、前記動作映像により与える前記視覚刺激と、前記触覚部により与える前記触覚刺激とに基づいて、前記仮想触覚刺激に相当する触覚刺激を前記ユーザに知覚させるとともに、前記触覚呈示手段は、前記身体所定部位に対して前記触覚部を接触させた状態で移動させることにより前記触覚刺激を与え、前記視覚呈示手段は、前記仮想空間内で前記身体疑似画像に対して前記触覚部疑似画像を重ねて表示した状態で、前記触覚部の移動距離とは異なる移動距離だけ前記触覚部疑似画像を移動させる動作映像を呈示して前記視覚刺激を与える。
【0013】
特許文献6(特開2015−100138号公報)には、仮想インタラクティブプレゼンスのシステムおよび方法について開示されている。
【0014】
特許文献6(特開2015−100138号公報)記載の仮想インタラクティブプレゼンスの方法においては、仮想インタラクティブプレゼンス用の方法であって、前記方法は、リモートユーザおよびローカルオブジェクトのリアルタイムの表示である共通関心領域をレンダリングするステップであって、前記リモートユーザおよび前記ローカルオブジェクトの前記表示は、ローカルユーザに物理的に近接している前記ローカルオブジェクトの表示および前記リモートユーザの身体の一部分を含む、ステップと、前記リモートユーザと前記ローカルオブジェクトとが物理的に近接しかつリアルタイムで物理的に相互作用しているように、前記共通関心領域における前記リモートユーザと前記ローカルオブジェクトとの間の相互作用をレンダリングするステップと、前記リモートユーザの表示がリアルタイムでローカルユーザのディスプレイにレンダリングされ、前記ローカルオブジェクトの表示がリアルタイムで前記リモートユーザのディスプレイにレンダリングされるように、前記共通関心領域を更新するステップと、前記ローカルユーザおよび前記リモートユーザが前記リモートユーザのリアルタイムの移動および前記リモートユーザと前記ローカルオブジェクトとの間の仮想相互作用を認識できるように、前記共通関心領域を前記ローカルユーザの視点から前記ローカルユーザのディスプレイに出力し、前記共通関心領域を前記リモートユーザの視点から前記リモートユーザのディスプレイに出力するステップであって、前記リモートユーザの前記身体の前記一部分は、前記ローカルユーザのディスプレイには仮想的に存在するものとして表示され、前記リモートユーザのディスプレイには物理的に存在するものとして表示され、前記ローカルオブジェクトの物理的プレゼンスは、前記リモートユーザのディスプレイには仮想的に存在するものとして表示され、前記ローカルユーザのディスプレイには物理的に存在するものとして表示される、ステップとを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−347623号公報
【特許文献2】特表2007−528029号号公報
【特許文献3】特表2012−532333号公報
【特許文献4】特表2015−519596号公報
【特許文献5】WO2009/151121号公報
【特許文献6】特開2015−100138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のように、種々の研究開発が行われている。実体モデルで、全てを製作することが最も手術トレーニングに適切である。さらに、術前の患者データに基づいて製作出来れば、最も適切である。しかしながら、製作時間が長くなり、製作コストが、高額になるという問題が生じる。
【0017】
本発明の目的は、安価および短時間で製作でき、かつ実際の手術と差異が少ない、手術トレーニングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)
一局面に従う手術トレーニングシステムであって、拡張現実で表現される胸郭モデルと、胸郭モデルに対して移動可能な実体モデルである創傷開創器と、胸郭モデル内に配設される心臓モデルと、を含み、創傷開創器は、胸郭モデルの所定の位置に固定可能であり、心臓モデルは、実体モデルである。
【0019】
この場合、拡張現実で表現される胸郭モデルに対して、創傷開創器が所定の位置に固定可能であり、実体モデルからなる心臓モデルが配置される。
【0020】
その結果、実体モデルからなる心臓モデルに対して、創傷開創器を通して手術トレーニングを行うことができる。また、胸郭モデルが拡張現実で表現されるので、容易に再現することができる。特に、患者に応じて容易に胸郭モデルを形成することができる。したがって、容易に実体の心臓モデルを用いて手術トレーニングを行うことができる。
【0021】
特に、胸郭モデルを実体モデルで形成する場合と比較して安価でかつ短時間で形成することができる
【0022】
(2)
第2の発明にかかる手術トレーニングシステムは、一局面に従う手術トレーニングシステムにおいて、心臓モデルは、3次元プリンタによる造形からなってもよい。
【0023】
この場合、心臓モデルは、3次元プリンタによる造形で形成されるので、手術の際に感じる実体との差異を最小限にすることができる
【0024】
(3)
第3の発明にかかる手術トレーニングシステムは、一局面または第2の発明にかかる手術トレーニングシステムにおいて、胸郭モデルは、手術前の患者データに基づいて表現されてもよい。
【0025】
この場合、胸郭モデルは、手術前の患者データに基づいて表現されるので、患者と差異の無い状況を形成することができる
【0026】
(4)
第4の発明にかかる手術トレーニングシステムは、一局面から第3の発明にかかる手術トレーニングシステムにおいて、創傷開創器は、胸郭モデルの肋骨と肋骨との間に固定可能であってもよい。
【0027】
この場合、実際の手術のように、創傷開創器が胸郭モデルの肋骨と肋骨との間に固定されたように、位置を固定することができるので、当該創傷開創器の内部から実体モデルの手術トレーニングをすることができる
【0028】
(5)
第5の発明にかかる手術トレーニングシステムは、一局面から第4の発明にかかる手術トレーニングシステムにおいて、撮像可能な撮像装置をさらに含み、
創傷開創器は、撮像装置を取り外し可能な保持部を有してもよい。
【0029】
この場合、創傷開創器の保持部において撮像装置を取り付けることができるので、創傷開創器を取り付ける位置を確認しつつ、心臓モデルを手術するのに最適な位置に創傷開創器を保持することができる
【0030】
(6)
第6の発明にかかる手術トレーニングシステムは、一局面から第5の発明にかかる手術トレーニングシステムにおいて、胸郭モデルは、ヘッドマウントディスプレイ装置で表示されてもよい。
【0031】
この場合、胸郭モデルは、ヘッドマウントディスプレイ装置に表示されているので、容易に手術トレーニングを行うことができる
【0032】
(7)
第7の発明にかかる手術トレーニングシステムは、一局面から第5の発明にかかる手術トレーニングシステムにおいて、胸郭モデルは、投影装置で表示されてもよい。
【0033】
この場合、胸郭モデルは、投影装置で投影されるので、容易に手術トレーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施の形態にかかる手術トレーニングシステムの一例を示すための模式図である。
【
図2】本実施の形態にかかる手術トレーニングシステムの一例を示すための模式図である。
【
図3】手術トレーニングシステムの具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0036】
以下、本発明に係る一実施の形態について図面を用いて説明する。
図1および
図2は、本実施の形態にかかる手術トレーニングシステム100の一例を示すための模式図であり、
図3は、手術トレーニングシステム100の具体例を示す説明図である。
【0037】
図1および
図2に示すように、手術トレーニングシステム100は、主に心臓モデル200、胸郭モデル300、および創傷開創器400からなる。
【0038】
図1に示すように、胸郭モデル300は、投影機器510により空間内に投影されてもよく、
図2に示すように、手術トレーニングを受ける人物が、ヘッドマウントディスプレイ520を装着することにより胸郭モデル300が表示される。
【0039】
このように、胸郭モデル300は、拡張現実で形成される。
【0040】
次に、
図1および
図2の心臓モデル200は、3次元プリンタ等により実体モデルとして造形されたものである。すなわち、心臓モデルは、手術トレーニングにおいて切断、開放、縫合等の感触が重要課題となるため、実体モデルにより形成される。ここで言う実体モデルとは、実在する固体または半固体、液状体等を含むものである。
【0041】
以上の心臓モデル200および胸郭モデル300は、手術を行う患者自身のCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像法)、超音波検査、レントゲン撮影等による患者データに基づいて形成されたものである。
【0042】
次に、
図4は、創傷開創器400の一例を示す模式図である。
創傷開創器400は、実際に用いられている創傷開創器と同じサイズおよび同じ材質の部位410と、撮像装置450を取り付け可能な取り付け部420および、創傷開創器400を所定の位置で保持することが可能な保持部430とを含む。
【0043】
図4に示すように、創傷開創器400の部位410は、円形状または楕円形状からなる。また、部位410は、胸郭モデル300により表示された肋骨310、320、330、340、350のそれぞれの間に配置可能に形成されている。
【0044】
実際に、
図3に示すように、部位410は、胸郭モデル300の肋骨310および肋骨320の間、または、胸郭モデル300の肋骨320および肋骨330の間に配置させることができる。
【0045】
この場合、手術トレーニングを行う者は、創傷開創器400の取り付け部420に取り付けられた撮像装置450の撮像画像を確認することで、心臓モデル300に対して手術を行い易いか、否かの判定を行うことが可能となる。
【0046】
ここで、撮像装置450からの撮像画像を、撮像装置450の代わりにヘッドマウントディスプレイ520により表示してもよく、投影機器510から胸郭モデル300の側面側に投影させてもよい。
【0047】
手術トレーニングを行う者は、撮像装置450からの撮像画像を確認しながら、肋骨310、320の間または肋骨320、330の間が良いのか、または、肋骨330、340の間が良いのか、その他の位置が良いのか確認を行うことができる。
【0048】
その結果、実際に手術を行う際に、手術トレーニングシステム100の体験と同様に、手術を行うことができる。
【0049】
なお、撮像装置を取り付けることができる取り付け部420は、撮像装置を取り外し可能に設けられている。
【0050】
例えば、部位410の固定位置をセッティングするまでは、撮像装置を取り付けておき、部位410の固定位置が決定した後、撮像装置を取り外すようにしてもよい。
特に、部位410に対して撮像装置は、部位410の円形または楕円形状の中心部近くに配置されることが望ましい。
その理由は、部位410を通して心臓モデル200を視認し、手術を行うため、部位410の最適位置を明確に決定するためである。
さらに、本実施の形態においては、胸郭モデル300との相対的な位置を明確にするために撮像装置を用いている。
すなわち、撮像装置を含む創傷開創器400が胸郭モデル300の外側、胸郭モデル300が表現されている位置と同じ位置に存在する場合、手術を行う者は、撮像装置により撮像された胸郭モデル300を視認することができる。
一方、撮像装置を含む創傷開創器400が、または胸郭モデル300の内部存在する場合、胸郭モデル300を視認することができない。
そのため、手術をする者は、創傷開創器400の実際の位置、すなわち、心臓モデル200と創傷開創器400との距離感を手術トレーニングシステム100により認識することができる。
【0051】
また、部位410と固定位置において保持する保持部430は、蛇腹タイプの固定部材からなることが好ましい。その結果、部位410の位置を移動させつつ、所定の固定位置が決定した場合に、当該固定位置で部位410を保持することができる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、部位410と胸郭モデル300の肋骨との位置の相関性は、肋骨モデル300において表示を変えることで位置を決定させてもよい。すなわち、部位410が胸郭モデル300の肋骨の間に位置した場合にのみ、保持部430の保持を固定できるようにしてもよい。
【0053】
また、保持部430に位置解除ボタンを設けて、位置解除ボタンを押下操作することで、保持部430を動かし部位410を他の位置に移動させるようにしてもよい。
【0054】
また、保持部430と胸郭モデル300の肋骨位置とを連携させて、保持部430は、胸郭モデル300の肋骨の間において、所定の時間停止した場合にのみ、保持部430が保持を固定するように設けても良い。
すなわち、胸郭モデル300の肋骨の間において部位410から心臓モデル200を確認し、手術ができる位置を探す動作を行う。その結果、手術が最も適切にできる位置に部位410を配置した場合、部位410は、当該位置で、所定時間停止することとなる。その結果、保持部430が部位410の位置を自動的に固定させることとなる。なお、この場合、所定の時間は、15秒、30秒、その他の任意の時間であることが好ましい。
【0055】
なお、上記の説明においては、保持部430が蛇腹タイプ(フレキシブル固定具)であることとしているが、イージーアーム、3Dアーム、その他の任意の固定保持部材を用いても良い。
【0056】
また、取り付け部420は、撮像装置を取り付け可能であると説明しているが、取り付け部420は、複数の撮像装置を取り付け可能であってもよい。
【0057】
また、撮像装置は、カメラ、立体カメラ、通常のカメラに3Dレンズ(ロレオ社)、スマートフォン内蔵カメラ、GoPro、リコーTHETA等であってもよい。
【0058】
以上のように、本発明にかかる手術トレーニングシステム100においては、拡張現実で表現される胸郭モデル300に対して、創傷開創器400が所定の位置に固定可能であり、実体モデルからなる心臓モデル200が配置される。
【0059】
その結果、実体モデルからなる心臓モデル200に対して、創傷開創器400を通して鉗子、メス等を用いて手術トレーニングを行うことができる。また、胸郭モデル300が拡張現実で表示されるので、容易に再現することができる。特に、患者に応じて容易に胸郭モデル300を形成することができる。したがって、容易に実体の心臓モデル200を用いて手術トレーニングを行うことができる。
【0060】
特に、胸郭モデル300を実体モデルで形成する場合と比較して安価でかつ短時間で形成することができる。すなわち、心臓モデル200のみの実体モデルの造形で対応をすることができる。
【0061】
また、心臓モデル200は、3次元プリンタによる造形で形成されるので、手術の際に感じる実体との差異を最小限にすることができる。その結果、実際に限りなく近い手術トレーニングを実施することができる。
【0062】
また、胸郭モデル300は、手術前の患者データに基づいて表現されるので、患者と差異の無い状況を形成することができる。
【0063】
さらに、実際の手術のように、創傷開創器400が、胸郭モデル300の肋骨310と肋骨320との間に固定されたように、位置を固定することができるので、当該創傷開創器400の内部から実体モデルの手術トレーニングすることができる。
【0064】
さらに、創傷開創器400の取り付け部420において撮像装置を取り付けることができるので、創傷開創器400を取り付ける位置を確認しつつ、心臓モデル200を手術するのに最適な位置に創傷開創器400を保持することができる。
【0065】
この場合、胸郭モデル300は、ヘッドマウントディスプレイ520に表示されてもよく、投影装置510で投影されてもよい。いずれにおいても、安価で容易に手術トレーニングを行うことができる。
【0066】
本発明においては、手術トレーニングシステム100が手術トレーニングシステムに相当し、胸郭モデル300が胸郭モデルに相当し、創傷開創器400が創傷開創器に相当し、心臓モデル200が心臓モデルに相当し、保持部430が保持部に相当し、ヘッドマウントディスプレイ520がヘッドマウントディスプレイ装置に相当し、投影装置510が投影装置に相当する。
【0067】
また、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0068】
100 手術トレーニングシステム
200 心臓モデル
300 胸郭モデル
400 創傷開創器
410 部位
420 取り付け部
430 固定部
510 投影装置
520 ヘッドマウントディスプレイ