(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803276
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス成形方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20201214BHJP
H01B 13/26 20060101ALI20201214BHJP
H01B 7/00 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
H01B13/012 D
H01B13/26 Z
!H01B7/00 301
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-53960(P2017-53960)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-156878(P2018-156878A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 良
(72)【発明者】
【氏名】椿 章
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−174012(JP,A)
【文献】
実開平04−102514(JP,U)
【文献】
特開平05−062542(JP,A)
【文献】
特開2014−128173(JP,A)
【文献】
特開2014−154378(JP,A)
【文献】
特開平09−161546(JP,A)
【文献】
特開2002−330517(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2018−0076001(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0200040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
H01B 13/26
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線の外周に硬化性樹脂を含有するシートを巻き付けて電線束を形成する第1工程と、治具台上を移動可能に配置された複数の可動フォークに前記電線束を配置する第2工程と、前記治具台上で所望の前記可動フォークを移動させ前記電線束を所望の配索形状に形成する第3工程と、前記硬化性樹脂を硬化させ前記電線束の配索形状を保持してワイヤハーネスを形成する第4工程とを有することを特徴とするワイヤハーネス成形方法。
【請求項2】
請求項1記載のワイヤハーネス成形方法であって、
前記硬化性樹脂は、ホットメルトからなり、
前記ホットメルトは、前記第3工程の後に加熱されて溶融され、前記第4工程で硬化されることを特徴とするワイヤハーネス成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法に関する。詳細には、複数の電線を一体化し所定形状に固化させたワイヤハーネス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネス成形方法としては、一対のフラット整列部材に複数の電線の両端部を固定し、一方のフラット整列部材を移動させて複数の電線に張力を付与し、この張力状態の複数の電線をホットメルト接着剤が塗布されたシートで包み込み、上型と下型とでシートを挟み込んで加熱してホットメルト接着剤を溶融させ、溶融したホットメルト接着剤を硬化させてワイヤハーネスを形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このワイヤハーネス成形方法では、一対のフラット整列部材に固定された複数の電線の外周にシートが巻き付けられた電線束に張力を付与することにより、電線が相互に密着して高密度に配列されたワイヤハーネスを得ることができる。
【0004】
一方、他のワイヤハーネス成形方法としては、車体パネルの形状に合わせて配置された電線保持治具上に電線群を配置した状態で紫外線を照射することにより、電線群に巻き付けられた紫外線硬化樹脂を硬化させ、電線群を所定形状に成形するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−283857号公報
【特許文献2】特開2015−42073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のようなワイヤハーネス成形方法では、電線束が直線状に成形されているが、車両などへのワイヤハーネスの配置によっては電線束を所望の配索形状に屈曲させてワイヤハーネスを成形させる必要がある。
【0007】
このような所望の配索形状に屈曲されたワイヤハーネスを成形するには、所望の配索形状に成形された上型と下型とで電線束を挟み込んで加熱する必要があるが、その都度、所望の配索形状に合わせて型を成形しなければならなかった。
【0008】
一方、特許文献2のようなワイヤハーネス成形方法では、ワイヤハーネスの種類毎に、ワイヤハーネスの配索形状に合わせて治具台を設けなくてはならないと共に、複雑な配索形状のワイヤハーネスでは布線作業が繁雑になっていた。
【0009】
そこで、この発明は、汎用性の高い治具台で、所望の配索形状のワイヤハーネスを得ることができるワイヤハーネス成形方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、複数の電線の外周に硬化性樹脂を含有するシートを巻き付けて電線束を形成する第1工程と、治具台上を移動可能に配置された複数の可動フォークに前記電線束を配置する第2工程と、前記治具台上で所望の前記可動フォークを移動させ前記電線束を所望の配索形状に形成する第3工程と、前記硬化性樹脂を硬化させ前記電線束の配索形状を保持してワイヤハーネスを形成する第4工程とを有することを特徴とする。
【0011】
このワイヤハーネス成形方法では、第2工程において、治具台上を移動可能に配置された複数の可動フォークに電線束を配置するので、第3工程において、治具台上で所望の可動フォークを移動させることにより、電線束を所望の配索形状に形成することができる。
【0012】
このため、第3工程では、所望の配索形状に合わせた型や所望の配索形状に合わせて移動不能なフォークが配置された治具台を設ける必要がなく、1つの治具台で、電線束を所望の配索形状に配置することができる。
【0013】
従って、このようなワイヤハーネス成形方法では、1つの治具台上に移動可能に配置された複数の可動フォークの移動によって、電線束を所望の配索形状に形成することができるので、汎用性の高い治具台で、所望の配索形状のワイヤハーネスを得ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のワイヤハーネス成形方法であって、前記硬化性樹脂は、ホットメルトからなり、前記ホットメルトは、前記第3工程の後に加熱されて溶融され、前記第4工程で硬化されることを特徴とする。
【0015】
このワイヤハーネス成形方法では、硬化性樹脂が、ホットメルトからなるので、第3工程で所望の配索形状に配置された電線束を加熱してホットメルトを溶融させればよく、容易に所望の配索形状に形成されたワイヤハーネスを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汎用性の高い治具台で、所望の配索形状のワイヤハーネスを得ることができるワイヤハーネス成形方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法における電線束の断面図である。
【
図2】(a)は本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法における編み込み式のシートの斜視図である。(b)は本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法におけるトッピング式のシートの斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法における成形治具に電線束を配置したときの斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法における成形治具の可動フォークを作動させたときの斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法における成形治具の加熱手段で電線束を加熱したときの斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法により成形したワイヤハーネスの斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図7を用いて本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法について説明する。
【0019】
本実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法は、複数の電線3の外周に硬化性樹脂を含有するシート5を巻き付けて電線束7を形成する第1工程と、治具台15上を移動可能に配置された複数の可動フォーク9に電線束7を配置する第2工程と、治具台15上で所望の可動フォーク9を移動させ電線束7を所望の配索形状に形成する第3工程と、硬化性樹脂を硬化させ前記電線束の配索形状を保持してワイヤハーネス1を形成する第4工程とを有する。
【0020】
また、硬化性樹脂は、ホットメルトからなり、ホットメルトは、第3工程の後に加熱されて溶融され、第4工程で硬化される。
【0021】
図1〜
図7に示すように、ワイヤハーネス1は、複数の電線3と、この複数の電線3の外周に巻き付けられるシート5とを備えている。
【0022】
複数の電線3は、それぞれ複数の心線の外周を、絶縁材料からなる絶縁被覆で被覆された被覆電線からなる。
【0023】
この電線3は、例えば、車両に搭載された電源と機器との間、或いは機器と機器との間に配置され、電源と機器との間、或いは機器と機器との間を電気的に接続する。
【0024】
このような電線3は、複数が束ねられた状態で、外周にシート5が巻き付けられ、電線束7を構成する。
【0025】
シート5は、硬化性樹脂としてのホットメルトを編み込んだ編み込み式(
図2(a)参照)、或いはホットメルトを埋め込んだトッピング式(
図2(b)参照)のホットメルトを含有したシートからなる。
【0026】
このシート5は、複数の電線3の外周に巻き付けられ、電線束7を構成し、加熱されることによってホットメルトが溶融し、複数の電線3間やシート5を構成する繊維内に流入される。
【0027】
この溶融したホットメルトは、空冷されることによって硬化し、電線束7における所望の断面形状や所望の配索形状を保持し、ワイヤハーネス1を形成する。
【0028】
このようなワイヤハーネス1の断面形状や配索形状は、成形治具11によって成形される。
【0029】
成形治具11は、治具台15と、複数(ここでは5つ)の可動フォーク9と、加熱手段13とを備えている。
【0030】
治具台15は、平面を有する筐体状に形成され、内部に複数の可動フォーク9を移動可能に駆動する駆動源(不図示)が収容されている。
【0031】
複数の可動フォーク9は、それぞれ治具台15の平面に対して平面方向に移動可能に設けられ、治具台15と反対側の端部に保持部17が設けられている。
【0032】
保持部17は、電線束7を収容可能に設けられた凹状の収容部と、この収容部にヒンジなどを介して開閉可能に設けられた蓋部とを有している。
【0033】
この保持部17は、収容部に電線束7を収容することにより電線束7の断面形状を成形し、蓋部で収容部を閉塞することにより電線束7の断面形状を保持する。
【0034】
このような複数の可動フォーク9は、保持部17で電線束7を保持した状態で、ワイヤハーネス1の所望の配索形状に合わせて、例えば、
図4の矢印で示すように、治具台15上を移動する。
【0035】
このように電線束7を保持する複数の可動フォーク9を治具台15上で平面方向に移動させてワイヤハーネス1の所望の配索形状を得ることにより、配索形状が形成された型や配索形状に合わせて移動不能なフォークが配置された治具台を用いる必要がなく、1つの治具台15で様々な配索形状のワイヤハーネス1に対応することができる。
【0036】
このような治具台15上を移動する複数の可動フォーク9によって所望の配索形状に形成された電線束7は、加熱手段13によって加熱される。
【0037】
加熱手段13は、複数の可動フォーク9の近傍に配置され、複数の可動フォーク9を作動させ、所望の配索形状に形成された電線束7に対して熱を照射し、シート5に含有されたホットメルトを溶融させる。
【0038】
この加熱手段13によって溶融されたホットメルトは、複数の電線3間の隙間やシート5を構成する繊維に含浸され、空冷されることによって硬化し、所望の断面形状や所望の配索形状に成形されたワイヤハーネス1を得ることができる。
【0039】
このような成形治具11におけるワイヤハーネス1の成形方法は、
図7のフローチャートに示すように、まず、複数の電線3の外周にシート5を巻き付けて電線束7を形成する(第1工程(S1))。
【0040】
次に、電線束7を複数の可動フォーク9の保持部17で保持し、電線束7を治具台15上で複数の可動フォーク9に配置させる(第2工程(S2))。
【0041】
次に、所望の配索形状に合わせて、治具台15上で複数の可動フォーク9を移動させ、電線束7を所望の配索形状に形成する(第3工程(S3))。
【0042】
次に、所望の配索形状に形成された電線束7に対して、加熱手段13によって熱を照射し、シート5に含有されたホットメルトを溶融させる(S4)。
【0043】
そして、加熱手段13による加熱を停止し、電線束7を空冷させて溶融したホットメルトを硬化させ、所望の断面形状や所望の配索形状となったワイヤハーネス1を形成する(第4工程(S5))。
【0044】
このようなワイヤハーネス成形方法では、第2工程において、治具台15上を移動可能に配置された複数の可動フォーク9に電線束7を配置するので、第3工程において、治具台15上で所望の可動フォーク9を移動させることにより、電線束5を所望の配索形状に形成することができる。
【0045】
このため、第3工程では、所望の配索形状に合わせた型や所望の配索形状に合わせて移動不能なフォークが配置された治具台を設ける必要がなく、1つの治具台15で、電線束9を所望の配索形状に配置することができる。
【0046】
従って、このようなワイヤハーネス成形方法では、1つの治具台15上に移動可能に配置された複数の可動フォーク9の移動によって、電線束7を所望の配索形状に形成することができるので、汎用性の高い治具台15で、所望の配索形状のワイヤハーネス1を得ることができる。
【0047】
また、硬化性樹脂は、ホットメルトからなるので、第3工程で所望の配索形状に配置された電線束7を加熱してホットメルトを溶融させればよく、容易に所望の配索形状に形成されたワイヤハーネス1を得ることができる。
【0048】
なお、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス成形方法では、治具台上を移動可能に配置された複数の可動フォークが5つとなっているが、これに限らず、複数の可動フォークを4つ以下、或いは6つ以上としてもよく、得たいワイヤハーネスに合わせて可動フォークの数を適宜設定すればよい。
【0049】
また、硬化性樹脂は、ホットメルトとなっているが、これに限らず、紫外線硬化樹脂などであってもよい。
【0050】
硬化性樹脂を紫外線硬化樹脂とした場合には、加熱手段を紫外線照射手段とし、可動フォークの移動によって所望の配索形状に形成された電線束に対して、紫外線照射手段によって紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させればよい。
【0051】
さらに、可動フォークは、治具台上を平面方向に移動可能としているが、これに限らず、可動フォークを、平面方向の移動に加えて、治具台の高さ方向(上下方向)に移動可能に配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…ワイヤハーネス
3…電線
5…シート
7…電線束
9…可動フォーク
15…治具台