(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定子コア、樹脂ボビン、固定子巻線および巻線絶縁部材を有する固定子の、前記固定子巻線に試験電圧を印加することによって、前記固定子巻線の絶縁状態を試験する固定子試験装置であって、
前記固定子コアは、軸方向に沿って延在するとともに、軸方向と直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨークと、前記ヨークから径方向中心側に延在するティース基部および当該ティース基部の径方向中心側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部を有する複数のティースと、前記複数のティースの内側に形成される固定子コア内側空間と、前記複数のティースのうちの周方向に隣接する2つのティースの間に形成され、スロット開口部を介して前記固定子コア内側空間に連通している複数のスロットとを有し、
前記樹脂ボビンは、前記固定子コアに対して軸方向両側に配置され、周方向および軸方向に沿って延在し、前記ヨークに対向する位置に配置される外壁部と、周方向および軸方向に沿って延在し、前記複数のティースの前記ティース先端部に対向する位置に配置される複数の内壁部と、前記外壁部と前記複数の内壁部との間に径方向に沿って延在し、前記複数のティースの前記ティース基部に対向する位置に配置される複数の連結部とを有し、
前記固定子巻線は、前記固定子コアに対して軸方向両側に前記樹脂ボビンが配置された状態で、前記複数のティースに巻き付けられ、
前記巻線絶縁部材は、絶縁性を有し、前記スロット開口部を塞ぐ位置に、軸方向および周方向に沿って延在するように配置されており、
導電性を有しているとともに、アースに接続される複数の板状部材と、
前記複数の板状部材を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、底面を有する基部と、前記基部から、前記底面の延在方向と交差する方向に沿って、前記底面と反対側に延在する軸部とを有し、
前記複数の板状部材は、前記軸部を中心とする周方向に沿って異なる位置に、前記軸部の延在方向および前記軸部の延在方向と交差する方向に沿って延在するように支持され、また、前記軸部を中心とする周方向に沿って連通しているとともに、前記軸部の延在方向に沿って延在し、前記底面と反対側が開口しているスリットを有し、
前記支持部材の前記軸部は、前記固定子コアの前記固定子コア内側空間内に、軸方向一方側から挿入可能に構成され、
前記複数の板状部材は、前記複数のスロット内において、各スロットを形成する2つの前記ティースの一方および他方に巻き付けられている前記固定子巻線の間に、当該固定子巻線と離間した状態および前記巻線絶縁部材が前記スリット内に挿入された状態で、軸方向および径方向に沿って延在するように、前記複数のスロット内に、前記スロット開口部を介して軸方向一方側から挿入可能に構成されていることを特徴とする固定子試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている固定子試験装置では、固定子巻線の絶縁不良を検出することができるが、検出精度は低い。なお、固定子コアを、アースに接続されている金属板の上に載置した状態で試験を行うことによって、あるいは、真空装置内で試験を行うことによって、固定子巻線の絶縁不良の検出精度を高めることができるが、限界がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、固定子の固定子巻線の絶縁不良の検出精度を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固定子を構成する固定子巻線の絶縁状態を試験する固定子試験装置に関する。
本発明の固定子試験装置は、固定子コア、樹脂ボビン、固定子巻線および巻線絶縁部材を有する固定子を試験対象とし、固定子巻線に試験電圧を印加することによって、固定子巻線の絶縁状態を試験(固定子巻線の絶縁不良を判別)する。
固定子コアは、好適には、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成され、軸方向に沿って延在するとともに、軸方向と直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨークと、ヨークから径方向中心側に延在する複数のティースと、複数のティースの内側に形成される固定子コア内側空間と、周方向に隣接する2つのティースの間に形成される複数のスロットを有している。ティースは、ヨークから径方向中心側に延在するティース基部と、ティース基部の径方向中心側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部を有している。固定子コア内側空間は、各ティースのティース先端部のティース先端部先端面によって形成され、回転子が挿入される回転子挿入空間を構成する。スロットは、当該スロットを形成する2つのティースのティース先端部の間に、固定子コア内側空間と連通するスロット開口部を有する。
樹脂ボビンは、絶縁性を有する樹脂により形成され、外壁部と、外壁部より径方向中心側に配置される複数の内壁部と、外壁部と各内壁部を連結する複数の連結部を有する。外壁部は、周方向および軸方向に沿って延在し、ヨークに対向する位置に配置される。内壁部は、周方向および軸方向に沿って延在し、ティースのティース先端部に対向する位置に配置される。連結部は、外壁部と内壁部の間に径方向に沿って延在し、ティースのティース基部に対向する位置に配置される。
固定子巻線は、固定子コアの軸方向両側に樹脂ボビンが配置された状態で、樹脂ボビンの連結部および固定子コアのティース(ティース基部)に巻き付けられる。典型的には、固定子巻線は、巻線機のニードルを、スロット開口部を介してスロット内に挿入した状態で軸方向および径方向に沿って移動させるとともに、固定子コアの軸方向両側において、隣接するスロットの間を周方向に沿って移動させることによって、すなわち、集中巻き方式で固定子コアのティースに巻き付けられる。
巻線絶縁部材は、スロット開口部を塞ぐ位置に、軸方向および周方向沿って延在するように配置される。巻線絶縁部材によって、スロット内に挿入されている固定子巻線がスロット開口部から内側(中心線側)に飛び出すのが防止される。巻線絶縁部材としては、典型的には、長方形に形成された、樹脂製の絶縁シートが用いられるが、これに限定されない。例えば、楔(ウェッジ)を用いることもできる。
そして、本発明は、導電性を有しているとともに、アースに接続される複数の板状部材と、複数の板状部材を支持する支持部材を備えている。板状部材は、厚さ方向両側に表面を有している。板状部材は、好適には、支持部材と一体に形成されるが、別体に形成されてもよい。板状部材をアースに接続する態様としては、好適には、導電性を有する支持部材を介してアースに接続する態様が用いられるが、これに限定されない。例えば、板状部材を直接アースに接続する態様を用いることもできる。
支持部材は、底面を有する基部と、基部から、底面の延在方向と交差する方向に沿って、底面と反対側に延在する軸部とを有している。複数の板状部材は、軸部を中心とする周方向に沿って異なる位置に、軸部の延在方向および軸部の延在方向と交差する方向に沿って延在するように支持される。好適には、軸部は、底面の延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に沿って延在するように構成される。より好適には、軸部は、底面の延在方向と直角な方向に延在し、複数の板状部材は、軸部の延在方向および軸部の延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向(基部の底面の延在方向と平行(「略平行」を含む)な方向)に沿って延在するように構成される。
板状部材は、軸部を中心とする周方向、すなわち厚さ方向に沿って連通しているとともに、軸部の延在方向に沿って、好適には軸部の延在方向と平行(「略平行」を含む)な方向に延在し、基部の底面と反対側が開口しているスリットを有している。スリットは、板状部材が、スリット内を軸方向に沿って移動する際に、巻線絶縁部材が挿入可能な形状に設定される。
支持部材の軸部は、固定子コアの固定子コア内側空間内に、軸方向一方側から挿入可能に構成されている。また、各板状部材は、各スロット内において、各スロットを形成する2つのティースの一方および他方に巻き付けられている固定子巻線の間に、当該固定子巻線と離間した状態および巻線絶縁部材がスリット内に挿入された状態で、軸方向および径方向に沿って延在するように、各スロット内にスロット開口部を介して軸方向一方側から挿入可能に構成されている。なお、支持部材の軸部を固定子コア内側空間内に挿入する操作および各板状部材を各スロット内に挿入する操作は、好適には、支持部材に対して固定子コアを移動させることによって行われるが、固定子コアに対して支持部材を移動させることによって行ってもよい。
好適には、固定子(固定子コア、樹脂ボビン)は、固定子コアの軸方向が、支持部材の軸部の延在方向と平行(「略平行」を含む)になるように、支持部材の基部上に載置される。また、より好適には、支持部材の基部の、基部の底面と反対側に絶縁部材が配置され、絶縁部材の、基部と反対側に固定子が載置される。
なお、本発明の固定子試験装置は、固定子巻線に印加する試験電圧を発生する試験電圧発生装置や、固定子巻線の絶縁状態、すなわち、固定子巻線に絶縁不良が発生していることを判別する絶縁不良判別装置も備えている。試験電圧発生装置や絶縁不良判別装置としては、公知の種々の構成の試験電圧発生装置や絶縁不良判別装置が用いられる。
固定子巻線を集中巻き方式で固定子コアのティースに巻き付ける場合には、スロットを形成する2つのティースの一方および他方に巻き付けられた固定子巻線の間には、スロット開口部を介してスロット内に挿入されたニードルが軸方向および径方向に沿って移動可能な空間が形成される。このため、集中巻き方式の固定子(固定子コア)では、容易に、板状部材を、固定子巻線と離間した状態でスロット内に挿入することができる。
本発明では、導電性を有し、アースに接続される板状部材を、スロット内に、固定子巻線と離間した状態で配置することにより、固定子巻線の絶縁不良の検出精度を大幅に向上させることができる。また、板状部材に、スロット開口部を塞ぐように軸方向および周方向に沿って配置されている巻線絶縁部材を挿入可能なスリットが形成されているため、容易に、各板状部材を各スロット内に配置することができる。
本発明の固定子試験装置は、スロット開口部を塞ぐ巻線絶縁部材が配置されていない固定子の固定子の試験も行うことができる。
本発明の他の形態では、複数の板状部材を、複数のスロットのスロット開口部に位置決めする板状部材位置決め機構を備えている。
本形態では、複数の板状部材を複数のスロットのスロット開口部に容易に位置合わせすることができるため、複数の板状部材を複数のスロット内に挿入する作業が容易となる。
本発明の他の形態では、板状部材位置決め機構は、少なくとも1つの位置決めピンと、少なくとも1つの位置決め嵌合部によって構成されている。
位置決めピンは、支持部材の基部から、基部の底面の延在方向と交差する方向、好適には、直角(「略直角」を含む)な方向に沿って、基部の底面と反対側に延在する。位置決めピンは、好適には、支持部材の基部と一体に形成されるが、別体に形成されてもよい。
位置決め嵌合部は、固定子コアに形成され、軸方向に沿って延在するとともに、位置決めピンが嵌合可能に構成されている。位置決め嵌合部としては、溝や孔が用いられる。好適には、固定子コアの外周面に形成され、軸方向に沿って延在する位置決め溝が用いられる。位置決めピンおよび位置決め嵌合部の数や配置位置は、適宜選択可能である。好適には、2つあるいは3つ設けられる。
位置決めピンは、好適には、導電性を有し、アースに接続される。この場合、固定子コアが、板状部材位置決め機構(位置決めピン、位置決め嵌合部)を介してアースに接続されるため、固定子巻線の絶縁不良をより確実に検出することができる。位置決めピンをアースに接続する態様としては、種々の態様を用いることができる。
本形態では、板状部材位置決め機構を簡単に構成することができる。
本発明の他の形態では、固定子コアの軸方向両側に配置される樹脂ボビンのうちの少なくとも一方の、固定子コアと反対側に配置され、導電性を有するとともに、アースに接続されるカバーを備えている。好適には、カバーは、樹脂ボビンの外壁部を覆うように取り付け可能であるとともに、固定子コアの固定子コア内側空間に対向する部分にカバー内側空間を有する環状に形成される。
カバーをアースに接続する態様としては、種々の態様を用いることができる。例えば、カバーを直接アースに接続する態様を用いることもできる。あるいは、板状部材をスロット開口部に位置決めする板状部材位置決め機構を構成する位置決めピンを介して、カバーをアースに接続する態様を用いることもできる。例えば、カバーの外周面に、軸方向に沿って延在するとともに、位置決めピンが嵌合可能な、少なくとも1つの位置決め溝を形成する。この場合、カバーが、支持部材(固定子コア)に対して位置決めされるとともに、位置決めピンおよび位置決め溝を介してアースに接続される。
固定子巻線を電源や中性点等に接続するための、固定子巻線の引き出し部は、樹脂ボビンの、外壁部、内壁部および連結部により形成される凹部内に引き回される。本実施形態では、樹脂ボビンの、固定子コアと反対側に、導電性を有し、アースに接続されるカバーが配置されるため、樹脂ボビンの凹部内に引き回されている固定子巻線の引き出し部の絶縁不良を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固定子試験装置を用いることにより、固定子巻線の絶縁不良の検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の固定子試験装置および固定子試験方法の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、本発明の固定子試験装置は、固定子の固定子巻線に試験電圧(「インパルス電圧」とも呼ばれる)を印加することによって、固定子巻線の絶縁状態を試験する。固定子巻線の絶縁状態は、固定子巻線に絶縁不良が発生しているか否かによって判別する。具体的には、本発明の固定子試験装置は、試験電圧を発生する試験電圧発生装置と、固定子巻線に絶縁不良が発生していることを判別する絶縁不良判別装置を備えている。試験電圧を発生する試験電圧発生装置としては、公知の種々の構成の試験電圧発生装置が用いられる。また、絶縁不良判別装置としては、公知の種々の構成の絶縁不良判別装置が用いられる。例えば、コロナ放電やグロー放電が発生していることによって絶縁不良が発生していることを判別する絶縁不良判別装置や、固定子巻線間の電圧波形を測定することによって絶縁不良が発生していることを判別する絶縁不良判別装置や、絶縁抵抗を測定することによって絶縁不良が発生していることを判別する絶縁不良判別装置が用いられる。これらの、試験電圧発生装置や絶縁不良位判別装置の構成は、公知であるため、本明細書では詳しい説明は省略する。
以下では、本発明の固定子試験装置あるいは本発明の固定子試験方法で用いられる試験補助具について説明する。
【0009】
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、回転子の回転中心を通る回転中心線P(
図1、
図2参照)の方向を示す。「固定子コアの周方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面(
図3参照)で見て、回転中心線Pを中心とする円周方向を示す。「固定子コアの径方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面で見て、回転中心線Pを通る方向を示す。「固定子コアの径方向中心側」という記載は、径方向に沿って回転中心線P側を示し、「固定子コアの径方向外周側」という記載は、径方向に沿って回転中心線Pと反対側を示す。
【0010】
本発明の固定子試験装置の一実施形態を
図1〜
図6を参照して説明する。前述したように、以下では、一実施形態の固定子試験装置を構成する試験補助具400について説明し、試験電圧発生装置や絶縁不良判別装置の説明は省略している。
図1は、固定子100に一実施形態の試験補助具400を取り付けた状態を示している。
図2は、固定子100に一実施形態の試験補助具400を取り付ける動作を説明する図である。
図3は、固定子100の部分断面図である。
図4は、一実施形態の試験補助具400のフィンを示す図であり、
図5は、一実施形態の試験補助具400の断面図である。
図6は、固定子100に一実施形態の試験補助具400を取り付けた状態の部分拡大図である。
【0011】
固定子100は、一実施形態の固定子試験装置の試験対象の一例であり、
図2および
図3に示されているように、固定子コア200と樹脂ボビン300を有している。
【0012】
固定子コア200は、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成され、軸方向に沿って延在する筒状を有している。固定子コア200は、
図3に示されているように、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク210と、ヨーク210から径方向中心側に延在する複数のティース220を有している。ティース220は、ヨーク210から径方向中心側に延在するティース基部221と、ティース基部221の軸方向中心側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部222を有している。
ヨーク210は、ヨーク内周面211とヨーク外周面212を有している。ヨーク内周面211は、スロット215の外周面であり、ヨーク外周面212は、固定子コア200の固定子コア外周面である。ティース基部221は、周方向一方側のティース基部側面221aおよび周方向他方側のティース基部側面221bを有している。ティース先端部222は、ティース先端部先端面222a、周方向一方側のティース先端部側面222bおよび周方向他方側のティース先端部側面222c、周方向一方側のティース先端部後端面222dおよび周方向他方側のティース先端部後端面222eを有している。
ティース先端部先端面222aによって、ティース220の内側(中心線P側)に固定子コア内側空間200aが形成される。固定子コア内側空間200aは、回転子(図示省略)が回転可能に挿入される回転子挿入空間を構成する。
また、周方向に隣接する2つのティース220の間に、ヨーク内周面211、ティース基部側面221aおよび221b、ティース先端部後端面222dおよび222eによってスロット215が形成されている。スロット215は、周方向に隣接する2つのティース220の間(詳しくは、周方向一方側のティース220の、周方向他方側のティース先端部側面222cと、周方向他方側のティース220の、周方向一方側のティース先端部側面222bとの間)に、固定子コア内側空間200aに連通するスロット開口部215aを有している。
固定子コア外周面212に形成されている位置決め溝216a、216bについては後述する。
【0013】
樹脂ボビン300は、絶縁性を有する樹脂により形成され、固定子コア200の軸方向両側に配置される。
樹脂ボビン300は、外壁部310、複数の連結部320および複数の内壁部330を有している。外壁部310は、周方向および軸方向に沿って延在している。内壁部330は、外壁部310より径方向中心側に配置され、周方向および軸方向に沿って延在している。連結部320は、外壁部310と各内壁部とを連結するように径方向に沿って延在している。
外壁部310は、外壁部内周面311と外壁部外周面312を有している。連結部320は、周方向一方側の連結部側面321および周方向他方側の連結部側面322を有している。内壁部330は、内壁部先端面331、内壁部後端面332、周方向一方側の内壁部側面333および周方向他方側の内壁部側面334を有している。また、内壁部先端面331と周方向一方側の内壁部側面333との間に周方向一方側の切欠部330aを形成する内壁部切欠面335と336を有し、内壁部先端面331と周方向他方側の内壁部側面334との間に周方向他方側の切欠部330bを形成する内壁部切欠面337と338を有している。
樹脂ボビン300は、外壁部310、複数の連結部320および複数の内壁部330が、固定子コア200のヨーク210、複数のティース220のティース基部221およびティース先端部222に対向する位置に配置されるように、固定子コア200の軸方向両側に配置される。
なお、内壁部330の内壁部先端面331によって、内壁部330より内側(中心線P側)にボビン内側空間300aが形成され、周方向に隣接する2つの連結部320の間に、部分空間300bが形成される。樹脂ボビン300のボビン内側空間300aおよび部分空間300bは、固定子コア200の固定子コア内側空間200aおよびスロット215に対向する位置に配置される。
また、樹脂ボビン300が固定子コア200の軸方向両側に配置された時、
図3に示されているように、固定子コア200のティース先端部222と樹脂ボビン300の内壁部330との間に空隙S1およびS2が形成される。すなわち、固定子コア200のティース220のティース先端部222の、周方向一方側のティース先端部後端面222dと、樹脂ボビン300の内壁部330の、周方向一方側の切欠部330aを形成する内壁部切欠面335および336との間に周方向一方側の空間S1が形成される。また、固定子コア200のティース220のティース先端部222の、周方向他方側のティース先端部後端面222eと、樹脂ボビン300の内壁部330の、周方向他方側の切欠部330bを形成する内壁部切欠面337および338との間に周方向他方側の空間S2が形成される。
【0014】
固定子コア200のスロット215内には、スロット絶縁部材230が挿入される。
図3では、スロット絶縁部材230は、樹脂製の絶縁シートを折り返すことによって形成されている。
そして、固定子コア200の軸方向両側に樹脂ボビン300が配置された状態で、ティース220に固定子巻線250が巻き付けられる。
図1〜
図3に示されている固定子100では、巻線機の、コイルを送り出すニードル(図示省略)を、スロット開口部215aを介してスロット215内に挿入した状態で軸方向および径方向に移動させるとともに、固定子コア200の軸方向両側において、ティース220の両側のスロット215の間を周方向に移動させることによって、固定子コア200のティース220(詳しくはティース基部221)および樹脂ボビン300の連結部320に固定子巻線250を巻き付けている。すなわち、集中巻き方式で固定子巻線250を固定子コア200のティース220に巻き付けている。
集中巻き方式で固定子巻線250を固定子コア200のティース220に巻き付ける場合、スロット215内には、スロット215を形成する、周方向に隣接する2つのティース220の一方および他方に巻き付けられた固定子巻線250の間に、ニードルを移動させるための、軸方向および径方向に沿った空間が形成される。
なお、樹脂ボビン300には、外壁部310、内壁部330および連結部320により凹部が形成されている。また、固定子巻線250を電源や中性点等に接続するために、固定子巻線250に引き出し部が設けられる。固定子巻線250の引き出し部は、他の部品との接触を防止するために、樹脂ボビン300の凹部内で引き回される。
【0015】
次に、スロット215内に挿入された固定子巻線250が、スロット開口部215aから飛び出るのを防止する巻線絶縁部材240を配置する。巻線絶縁部材240としては、スロット開口部215aを塞ぐことができる種々の部材を用いることができる。例えば、樹脂製の絶縁シートや楔等が用いられる。本実施形態では、長方形に形成された、樹脂製の絶縁シートが用いられている。そして、巻線絶縁部材240の、短辺方向両側の縁部を、周方向一方側の空間S1と周方向他方側の空間S2に挿入した状態で、軸方向に沿って移動させる。これにより、巻線絶縁部材220は、スロット開口部215aの位置に、軸方向および周方向に沿って延在するように配置される。
【0016】
次に、本実施形態の固定子試験装置で用いられる試験補助具400について説明する。前述したように、集中巻き方式で固定子巻線250を固定子コア200のティース220に巻き付ける場合には、スロット215内の、周方向に隣接するティース220に巻き付けられる固定子巻線250の間に、巻線機のニードルの移動に必要な空間が形成される。本実施形態の試験補助具400は、このスロット215内の固定子巻線250間の空間に、導電性を有し、アースに接続されるフィン413を配置可能に構成されている。
【0017】
本実施形態の試験補助具400は、
図2〜
図3に示されているように、本体部材410、絶縁部材420およびカバー430を有している。
【0018】
本体部材410は、導電性を有する材料により形成され、基部411、軸部412および複数のフィン413を有している。本実施形態では、基部411、軸部412および複数のフィン413は、一体に形成されている。
基部411は、平ら(「略平ら」を含む)な底面411aを有している。
本実施形態では、試験補助具400は、基部411の底面411aを水平面上に載置することにより、水平面上に起立した状態を保持するように構成されている。
軸部412は、基部411から、基部411の底面411aの延在方向と交差する方向に沿って、底面411aと反対側に延在している。本実施形態では、軸部412は、底面411aの延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に延在している。また、軸部412の延在方向(軸部412の中心線Kの延在方向)と直角な断面でみて、軸部412の外周面は円形を有している。
フィン413は、厚さ方向両側に第1の面と第2の面を有する板状に形成されている。フィン413が、本発明の「板状部材」に対応する。
フィン413は、軸部412の中心線Kを中心とする周方向に沿って異なる位置に、軸部412の延在方向および軸部412の延在方向と交差する方向に沿って延在するように構成されている。本実施形態では、フィン413は、軸部412の延在方向および軸部412の延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に沿って延在している。すなわち、複数のフィン413は、軸部412の中心線Kを中心に放射状に延在している。
図5では、基部411の底面411aは、直交するA軸(紙面の左右方向)とB軸(紙面に対して垂直方向)に沿って(A軸−B軸平面の延在方向と平行に)延在している。また、軸部412は、底面411aの延在方向と直角な方向、すなわち、A軸およびB軸と直交するC軸(紙面の上下方向)に沿って延在している。また、複数のフィン413は、軸部412の延在方向と軸部412の延在方向と直角な方向、すなわち、C軸の延在方向およびA軸−B軸平面の延在方向と平行(「略平行」を含む)な方向に沿って延在している。
また、各フィン413には、スリット414が形成されている。スリット414は、フィン413を、固定子コア200のスロット215内に、スロット開口部215aを介して軸方向一方側(
図2では、紙面の下方側)から挿入する際に、巻線絶縁部材240が挿入可能に構成されている。具体的には、スリット214は、フィン413の厚さ方向(軸部412の中心線Kを中心とする周方向)に連通し、軸部412の延在方向に平行に延在しているとともに、底面411aと反対側が開口している。
なお、各フィン413の、軸部412の中心線Kを中心とする周方向に沿った位置は、各フィン413が、固定子コア200の各スロット215内に、スロット開口部215aを介して、軸方向に沿って挿入可能な位置に設定される。
位置決めピン415a、415bについては後述する。
本体部材410の基部411と軸部412により、本発明の「支持部材」が構成される。
なお、基部411、軸部412および複数のフィン413を別体に形成することもできる。この場合、少なくともフィン413は、導電性を有し、薄くて強度がある(剛性を有する)材料により形成される。例えば、鉄、NAK80(登録商標)、炭素鋼45Cにより形成される。基部411および軸部412を、フィン413と同じ材料で形成することもできる。
【0019】
絶縁部材420は、絶縁性を有する樹脂により形成され、絶縁部材基部421、絶縁部材軸部422および複数の絶縁部材壁部423を有している。
絶縁部材基部421は、本体部材410の基部411の、底面411aと反対側に配置され、基部411と反対側に、平ら(「略平ら」を含む)な載置面421aを有している。
絶縁部材軸部422は、本体部材410の軸部412を覆った状態で、軸部412の延在方向に平行(「略平行」を含む)に延在している。また、絶縁部材軸部422の延在方向と直角な断面でみて、絶縁部材軸部422の外周面は円形を有している。なお、本体部材410の複数のフィン413は、絶縁部材軸部422の外周面から飛び出るように構成されている。
各絶縁部材壁部423は、絶縁部材軸部422の外周面の、周方向に隣接する2つのフィン413の間の位置から、絶縁部材軸部422の延在方向および絶縁部材軸部422の延在方向と交差する方向に沿って延在するように形成されている。なお、絶縁部材壁部423は、固定子コア200の固定子コア内側空間200a内に挿入可能に形成されている。
絶縁部材420(絶縁部材基部421、絶縁部材軸部422、絶縁部材壁部423)によって、フィン413が他の部材と接触するのが防止される。
【0020】
カバー430は、導電性を有するカバー本体部材431により構成されている。カバー本体部材431は、内側にカバー内側空間431aを有する筒状(リング状)に形成されている。カバー本体部材431は、樹脂ボビン300の外壁部310の、固定子コア200と反対側に、カバー内側空間431aが固定子コア内側空間200aと対向する状態で、外壁部310を覆うように外壁部310に取り付け可能に構成されている。
位置決め溝432a、432bについては後述する。
【0021】
次に、一実施形態の固定子試験装置を用いて固定子100の固定子巻線250の絶縁状態を試験する動作を説明する。
先ず、固定子100と試験補助具400を組み付ける。例えば、固定子100を、試験補助具400の本体部材410の基部411と反対側から基部411の方向に、軸部412(絶縁部材軸部422)の延在方向に沿って移動させる。この時、試験補助具400の本体部材410の軸部412、絶縁部材420の絶縁部材軸部422および絶縁部材壁部423が、固定子コア200の固定子コア内側空間200a内に軸方向一方側(
図2の下方側)から挿入され、また、試験補助具400の本体部材410の各フィン413が、固定子コア200の各スロット215内にスロット開口部215aを介して軸方向一方側(
図2の下方側)から挿入されるように、試験補助具400を固定子100に対して位置合わせする。
なお、
図2に示されているように、フィン413は、スロット215内に、スロット215を形成する2つのティース220の一方および他方に巻き付けられている固定子巻線250aおよび250bとの間で、両固定子巻線250aおよび250bと接触しないように(離間した状態で)挿入される。
集中巻き方式で固定子巻線250を固定子コア200のティース220に巻き付ける場合には、スロット215内の、固定子巻線250aと固定子巻線250bとの間に、ニードルを移動させるための、軸方向および径方向に沿った空間が形成される。このため、フィン413をスロット開口部215aに対して適切に位置合わせすることにより、フィン413を、固定子巻線250aと固定子巻線250bとの間に、両固定子巻線250aおよび250bと離間した状態で挿入することができる。
【0022】
本実施形態では、試験補助具400の各フィン413を固定子コア200の各スロット215のスロット開口部215aに対する位置合わせを容易にするために、各フィン413を各スロット開口部215aに位置決めするフィン位置決め機構が設けられている。フィン位置決め機構は、本発明の「板状部材位置決め機構」に対応する。
フィン位置決め機構は、試験補助具400の本体部材410に設けられている、軸部412の延在方向と平行(略平行)を含む)な方向に延在する少なくとも1つの位置決めピンと、固定子コア200に設けられ、軸方向に沿って延在するとともに、位置決めピンが嵌合可能な少なくとも1つの位置決め嵌合部により構成される。
本実施形態の試験補助具400では、本体部材410の基部411から、基部411の底面411aの延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に沿って、底面411aと反対側に延在している位置決めピン415a、415b、415c(位置決めピン415cは図示されていない)が、不等間隔で設けられている。また、固定子コア200の固定子コア外周面212に、軸方向に沿って延在し、位置決めピン415a、415b、415cは嵌合可能(係合可能)な位置決め溝216a、216b、216c(位置決め溝216cが図示されていない)が形成されている。
位置決めピン415a〜415cの、軸部412の中心線Kを中心とする周方向に沿った配置位置および位置決め溝216a〜216cの回転中心線Pを中心とする周方向に沿った配置位置は、位置決めピン415a〜415cが位置決め溝216a〜216cに嵌合(係合)されることによって、各フィン413が各スロット215のスロット開口部215aと対向する位置に配置されるように設定される。
なお、本実施形態では、位置決めピン415a〜415cは、本体部材410の、導電性を有する基部411と一体に形成されている。このため、基部411がアースに接続されると、固定子コア200は、位置決め溝216a〜216c、位置決めピン415a〜415cおよび基部411を介してアースに接続される。
【0023】
なお、試験補助具400の本体部材410の軸部412、絶縁部材420の絶縁部材軸部422および絶縁部材壁部423が、固定子コア200の固定子コア内側空間200a内に軸方向に沿って、軸方向一方側から挿入されるとともに、試験補助具400の本体部材410の各フィン413が、固定子コア200の各スロット215内にスロット開口部215aを介して、軸方向に沿って、軸方向一方側から挿入される時、固定子コア200のスロット開口部215aに設けられている巻線絶縁部材240は、試験補助具400の各フィン413に形成されているスリット414内に挿入される。これにより、スロット開口部215aに、軸方向および周方向に沿って延在する巻線絶縁部材240が設けられていても、フィン413を、スロット開口部215aを介してスロット215内に、軸方向および径方向に沿って延在するように配置することができる。
【0024】
次に、樹脂ボビン300の一方にカバー430を組み付ける。
本実施形態では、
図2に示されているように、試験補助具400の本体部材410の軸部412が固定子コア内側空間200aに挿入される側と反対側に配置されている樹脂ボビン300の外壁部310にカバー430が組み付けられる。
また、本実施形態では、カバー430を固定子コア200に対して位置決めするカバー位置決め機構が設けられている。
カバー位置決め機構は、固定子コアに設けられ、軸方向に沿って延在する少なくとも1つの位置決めピンと、カバーに設けられ、軸方向に沿って延在するとともに、位置決めピンが嵌合可能な少なくとも1つの位置決め嵌合部により構成される。本実施形態では、フィン位置決め機構を構成する位置決めピン415a〜415cが、カバー位置決め機構を構成する位置決めピンとして用いられている。また、カバー430を構成するカバー本体部材431の外周面に、軸方向に沿って延在するとともに、位置決めピン415a〜415cが嵌合可能な位置決め溝432a、432b、432cが形成されている。なお、本体部材410の基部411に設けられている位置決めピン415a〜415cは、本体部材410(フィン413)が固定子100に組み付けられると、固定子コア200の固定子コア外周面212に形成されている位置決め溝216a〜216cに嵌合され、固定子コア200の軸方向に沿って延在する。
カバー430(カバー本体部材431)は、位置決めピン415a〜415cが位置決め溝432a〜432cに嵌合(係合)されるように、樹脂ボビン300の外壁部310に取り付けられる。
なお、本実施形態では、位置決めピン415a〜415cは、本体部材410の、導電性を有する基部411と一体に形成されている。このため、基部411がアースに接続されると、カバー430(カバー本体部材431)は、位置決め溝432a〜432c、位置決めピン415a〜415cおよび基部411を介してアースに接続される。
カバー430をアースに接続する態様としては、カバー430を直接アースに接続する態様を用いることもできる。この場合、カバー位置決め機構を省略することもできる。
【0025】
そして、試験補助具400(本体部材410、絶縁部材420、カバー430)を固定子100に組み付けるとともに、各フィン413およびカバー430(カバー本体部材431)をアースに接続した状態で、試験電圧発生装置から発生する試験電圧を固定子巻線250に印加し、絶縁不良判別装置により、固定子巻線250に絶縁不良が発生しているか否かを判別する。
本実施形態では、導電性を有し、アースに接続されるフィン413を、固定子コア200の各スロット215内の、固定子巻線250の間で、当該固定子巻線250と離間した位置に、軸方向および径方向に沿って延在するように配置した状態で、固定子巻線に試験電圧を印加している。これにより、スロット215内に挿入されている固定子巻線250の絶縁不良の検出精度を高めることができる。
また、導電性を有し、アースに接続されるカバー430(カバー本体部材431)を、樹脂ボビン300の外壁部310を覆うように配置した状態で、固定子巻線に試験電圧を印加している。これにより、樹脂ボビン300の凹部内で引き回されている、固定子巻線250の引き出し部の絶縁不良の検出精度を高めることができる。
また、各フィンに、巻線絶縁部材を挿入可能なスリットを設けているため、巻線絶縁部材が配置されている固定子の試験を容易に行うことができる。
【0026】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
フィン(板状部材)をアースに接続する態様としては、フィンを支持する支持部材を介してアースに接続する態様に限定されず、フィンを直接アースに接続する態様等の種々の態様を用いることができる。
カバーをアースに接続する態様としては、カバーを固定子コアに対して位置決めするカバー位置決め機構(位置決めピン、位置決め嵌合部)および支持部材を介してアースに接続する態様に限定されず、カバーを直接アースに接続する態様等の種々の態様を用いることができる。
フィン位置決め機構(板状部材位置決め機構)やカバー位置決め機構を構成する位置決めピンおよび位置決め嵌合部の数や配置位置は、適宜設定可能である。
フィン位置決め機構やカバー位置決め機構を構成する、位置決めピンが嵌合(係合)可能な位置決め嵌合部としては、位置決め溝に限定されず、位置決め孔を用いることもできる。
スロット開口部を塞ぐ巻線絶縁部材としては、絶縁シートに限定されず、楔(ウェッジ)を用いることもできる。
樹脂ボビンとして、巻線絶縁部材の縁部を挿入するための切欠部が形成された内壁部を有する樹脂ボビンを用いたが、樹脂ボビンとしては、種々の構成の樹脂ボビンを用いることができる。
試験補助具のフィン(板状部材)を固定子コアのスロット開口部に対して位置決めするフィン位置決め機構(板状部材位置決め機構)は、省略することもできる。
複数のフィンを、基部および軸部と一体に形成したが、別体に形成することもできる。
カバーを固定子コアに対して位置決めするカバー位置決め機構は、省略することもできる。
試験補助具の絶縁部材あるいは絶縁部材の各部は、適宜省略することもできる。
スロット開口部に巻線絶縁部材が配置されている固定子の試験に好適な実施形態の固定子試験装置は、スロット開口部に巻線絶縁部材が配置されていない固定子の試験に用いることもできる。
固定子巻線が集中巻き方式で巻き付けられる固定子を試験する場合について説明したが、本発明の固定子試験装置および固定子試験方法は、種々の構成の固定子を試験する場合に用いることができる。
本発明は、固定子の固定子巻線に試験電圧を印加することによって固定子巻線の絶縁状態を試験する固定子試験装置で用いられる試験補助具として構成することもできる。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。