(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエアゾール製品は、スプレーされた原液により毛髪を濡らして、毛髪の束(毛束)を乾燥させることで、原液中の樹脂による強力なセット力を実現している。したがって、原液によって濡れた状態とした後に毛髪の束を乾燥させると樹脂の被膜が表面に形成されるから、当該被膜によって光沢感が生じ、マットな質感を毛髪に付与することが困難であった。
そこで、本発明は、毛髪の質感を調整すること、特に毛髪にマットな質感を付与することができるエアゾール式の整髪用スプレーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エアゾール式の整髪用スプレーから噴射される原液の粒子径を調整することにより、毛髪にマットな質感を付与できるという知見に基づいており、以下の構成を備えている。
【0006】
[1]樹脂を含む原液と、噴射剤とが、アクチュエータを備えたエアゾール容器に封入されたエアゾール式の整髪用スプレーであって、前記
アクチュエータの噴射口から水平方向に噴射された原液の粒子径の中央値(D50)が、前記噴射口から水平方向に10cmの距離において、10μm以上24μm以下であ
り、前記樹脂が、アクリレーツコポリマーAMPおよび/またはアクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1−18)/アルキル(C1−8)アクリルアミド)コポリマーAMPであり、前記原液100質量部中における前記樹脂の含有量が、1〜20質量部であり、前記原液と前記噴射剤との合計100質量部中における前記噴射剤の含有量が、65質量部以上80質量部以下である、ことを特徴とする整髪用スプレー。
【0007】
[2]前記原液が、水を実質的に含有しない非水系の原液である、[1]に記載の整髪用スプレー。
【発明の効果】
【0011】
本発明の整髪用スプレーは、噴射された霧状の原液の粒子径を所定範囲とすることで、毛髪に付着する前に、原液中に含有される樹脂以外の揮発性の成分の揮発が進行する。したがって、毛髪の表面が原液で濡れて毛束が形成されることを抑制し、光沢を抑えたマットな質感を毛髪に付与するとともに、適度なセット力を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(エアゾール式の整髪用スプレー)
本発明に係る整髪用スプレーを実施するための形態について、以下に説明する。
本実施形態の整髪用スプレーは、樹脂を含む原液と、噴射剤とが、アクチュエータを備えたエアゾール容器に封入されたエアゾール式の整髪用スプレーであって、アクチュエータを押すと、容器内から噴射剤と原液とが霧状になって噴射(射出)されるエアゾール式の整髪用スプレー製剤として実施される。
【0013】
(原液)
本実施形態の整髪用スプレーの原液は、樹脂および溶剤を含有しており、水を実質的に含有していない非水系の原液である。ここで、原液が水を実質的に含有しないとは、原液中の水の含有量が十分に低く、水を含有させたことに基づく特性が整髪用スプレーに生じないことをいう。例えば、製造工程において微量成分として必然的に含有される水分を含有する原液や、使用特性に影響しない少量の水分を含有させた原液は、水を実質的に含有しない非水系の原液にあたる。使用特性に影響しない水分量は、原液中の成分によって異なるが、一般に、原液100質量部中に1質量部以下であれば、非水系の原液の使用特性に影響しない。
【0014】
樹脂としては、整髪用スプレー用のセット樹脂として、一般に用いられている樹脂を用いることができるが、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの酸の単純エステルと、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)との塩を形成したモノマー(単量体)成分を含む(共)重合体が好ましい。このような樹脂として、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1−18)/アルキル(C1−8)アクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP、アクリル酸アルキルコポリマーAMPなどのアクリル樹脂アルカノールアミンや、アクリレーツコポリマーAMPなどが挙げられる。
【0015】
樹脂の重量平均分子量は、通常、10000〜120000程度のものが用いられる。原液中に含有される他の成分の種類および含有量にもよるが、安定な噴射を実現しつつ、マットな質感を毛髪に付与するとともに、適度なセット力を実現する観点から、30000〜100000がより好ましく、50000〜80000がさらに好ましい。
【0016】
樹脂の含有量は、原液100質量部中に、通常、1〜20質量部であり、10〜18質量部が好ましい場合もある。原液と噴射剤との合計100質量部中に、通常、1〜20質量部であり、3〜6質量部が好ましい場合もある。
【0017】
原液は、樹脂を溶解する溶剤を含有している。当該溶剤として、たとえば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2〜3個の1価アルコール類やメチラール(ジメトキシメタン)などのエーテル類などを用いることができる。樹脂の溶解には、一種又は二種以上の一価アルコール類のみからなる溶剤、一種または二種以上のエーテル類のみからなる溶剤、あるいは、一価アルコール類とエーテル類とを混合した溶剤を用いてもよい。
【0018】
溶剤の含有量は、毛髪の質感を調整する観点から、原液100質量部中に、60〜95質量部であることが好ましく、70〜90質量部であることがより好ましく、75〜85質量部であることがさらに好ましい。
【0019】
光沢を抑えたマットな質感を毛髪に付与する観点から、エタノールとメチラールとの混合物を溶剤として用いることが好ましい。この場合、原液100質量部におけるエタノールの含有量は、60〜85質量部が好ましく、65〜80質量部がより好ましく、70〜75質量部がさらに好ましい。また、原液中に含有されるエタノール100質量部に対するメチラールの含有量は、1〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましく、10〜25質量部がさらに好ましい。
【0020】
(粒子径)
本実施形態の整髪用スプレーは、光沢を抑えたマットな質感を毛髪に付与するために、霧状に噴射される原液の粒子径を従来よりも小さくしている。アクチュエータの噴射口から水平方向の距離が10cmの位置における、水平方向に噴射された原液の粒子径の中央値(メディアン径、累積50%粒子径、D50、以下適宜「D50」とも記す。)を10μm以上24μm以下とし、毛髪に付着する原液の乾燥状態を制御することで、光沢を抑えたマットな質感を毛髪に付与している。
【0021】
噴射口からの距離10cmの位置における原液の粒子径の中央値(D50)は、従来、25〜50μm程度であった。この粒子径は、毛髪を濡らして束状にした状態で原液を乾燥させて、表面に樹脂膜を形成して、強いセット力を実現するために好適だが、樹脂の膜が毛髪表面に形成されることによって光沢感が生じる。このため、マットな質感を毛髪に付与することが困難であった。
【0022】
対して、本実施形態の整髪用スプレーは、噴射口から10cmの位置における原液の粒子径の中央値(D50)を従来よりも小さい10μm以上24μm以下としている。これにより、霧状に噴射された原液の同一容積(体積)当たりの表面積が従来よりも大きくなるから、原液に含まれる溶剤などの揮発成分が揮発する速度が速くなり、揮発成分の揮発が進んだ状態の原液が毛髪に付着する。したがって、毛髪が濡れて束状になって光沢感のある樹脂膜が形成されることを防止し、マットな質感を毛髪に付与できる。霧状の原液の粒子径の中央値(D50)の測定方法は実施例において説明する。
【0023】
霧状に噴射される原液の粒子径が小さくなりすぎると、毛髪に付着する前の時点において溶剤が揮発しすぎて、樹脂が析出した原液が毛髪に付着することによって白浮きが生じるおそれがある。このため、白浮きの発生を抑制する観点から、D50は、11μm以上がより好ましく、13μm以上がさらに好ましい。また、毛髪にマット感を付与する観点から、D50は、22μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましい。
【0024】
噴射口から水平方向の距離が10cmの位置における、水平方向に噴射された原液の粒子径の大きさを、上述したD50ではなく、体面積平均粒子径(SMD、Sauter Mean Diameter)を用いて特定した場合、上記と同様の観点から、噴射された原液の体面積平均粒子径は、8μm以上18μm以下が好ましい。原液の体面積平均粒子径の下限値は、9μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。原液の体面積平均粒子径の上限値は、16μmがより好ましく、14μmがさらに好ましい、
【0025】
(噴射剤)
原液と共に充填される噴射剤としては、一般に用いられている、液化ガス、圧縮ガスおよびこれらの混合物等を用いることができる。液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどが挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、圧縮空気などが挙げられる。また、HFC−152a、HFO−1234ze(E)などを用いることもできる。上述した成分を含有する原液とのなじみが良好であることから、ジメチルエーテル(DME)が好ましい。
【0026】
噴射剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。マットな質感を付与する観点から、整髪用スプレーの原液と噴射剤との合計100質量部中における噴射剤の含有量は、65質量部以上80質量部以下であることが好ましく、70質量部以上78質量部以下であることがより好ましく、71質量部以上76質量部以下であることがさらに好ましい。
【0027】
原液が溶剤としてメチラールを含有する場合、原液と噴射剤との合計100質量部中における噴射剤とメチラールとの含有量の合計は、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、65質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の整髪用スプレーの原液は、上述した成分以外に、医薬品や化粧品の分野において一般に用いられている成分を含有してもよい。このような成分としては、質感調整用のシリコーン油などの油剤、無機フィラー、香料などが挙げられる。これら成分の含有量は、本実施形態の整髪用スプレーの特性に悪い影響を与えない範囲とすればよい。
【0029】
(容器)
本実施形態の整髪用スプレーの原液および噴射剤を充填する容器としては、一般に用いられている耐圧容器を用いることができる。耐圧容器を構成する金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼等が挙げられる。また、耐圧容器のノズルに装着して、押し込むことにより、耐圧容器内の原液および噴射剤を噴射するアクチュエータは、一般に用いられているものを使用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[原液の調製]
表1は、整髪用スプレーに用いた各原液100質量部中の各成分の含有量(質量部)を示したものである。表1に示した各成分および含有量により原液1〜3を調製した。
【0031】
【表1】
※樹脂1:アクリレーツコポリマーAMP
※※樹脂2:アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1−18)/アルキル(C1−8)アクリルアミド)コポリマーAMP
【0032】
[
実施例1〜5、比較例1〜2、参考例1]
表1に示す原液1、2または3と、噴射剤としてのジメチルエーテル(DME)または液化石油ガス(LPG)とを、以下の表2に示す割合で、エアゾール容器に充填し、後述する基準を用いて評価した結果を表2に示す。溶解性は、原液と噴射剤との合計が30gとなるように、100mlの透明なエアゾール容器に充填して評価した。それ以外の項目は、両者の合計が50gとなるように、40φ×118のアルミ製エアゾール容器に充填して評価した。バルブおよびアクチュエータは、ステム孔径0.4mm、ハウジングのアンダータップ径0.6mm、ベーパータップ径0.3mmのバルブおよび噴口径0.5mmのメカニカルブレークアップ機構を有するアクチュエータを用いた。
【0033】
【表2】
【0034】
[評価方法]
実施例1〜5、比較例1〜2および参考例1の整髪用スプレーを評価する際に用いた方法および基準を以下に示す。
<溶解性:エアゾール容器中における整髪用スプレーの外観>
○:エアゾール中で樹脂が溶解している。
×: エアゾール中で樹脂が析出している。
<セット力:整髪用スプレーから原液を頭髪に噴射>
○: セット力有り。
×: セット力無し。
<毛束のできにくさ(濡れにくさ):整髪用スプレーから原液を頭髪に噴射>
○:スプレー後に濡れにくく、毛束になりにくい。
△:スプレー後にやや濡れて、少し毛束になる。
×:スプレー後に濡れて、毛束になる。
<マット感:整髪用スプレーから原液を頭髪に噴射>
○:ツヤが少なく、マットな質感となる。
×:ツヤが出て、マットな質感とならない。
<白浮き:整髪用スプレーから原液を頭髪に噴射>
○:スプレー後に白浮きしない。
×:スプレー後に白浮きする。
【0035】
[粒子径の測定方法]
レーザー光に対して直角に、噴射した霧の中心をレーザー光が通過するように水平方向に噴射し、噴射開始後に測定を開始して、粒子径の中央値(D50)および体面積平均粒子径(SMD)を求めた。なお、メディアン径(D50)とは、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたときに、その累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。体面積平均粒子径とは、表面積で重みづけされた平均粒子径をいう。測定機器および測定条件は以下のとおりである。
測定機器:LDSA−3500A(日機装株式会社製)
レンズ焦点距離:300mm
バックグラウンド取込み時間:0.3秒
測定方法:オート・スタート平均
測定回数:20回
測定間隔:0.20ミリ秒(ms)
計算方法:ロージン・ラムラー
ベースライン補正:ON
検体温度:25°C
測定距離:10cm
気温:15〜25°C
【0036】
表2に示した結果から以下のことが分かった。
原液の溶解性の観点から、原液と噴射剤の合計100質量部中における噴射剤の含有量は、85質量部未満であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
原液と噴射剤との比を変化させることによって、D50およびSMDを調整することができる。
【0037】
霧状に噴射される原液の粒子のD50は、毛束の発生を抑える観点から、22μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましい。同様の観点から、原液の粒子のD50は、16μm以下が好ましく、13μm以下がより好ましい。
【0038】
マット感は、毛束の発生と関係しており、毛束の発生を抑えることで、毛髪にマット感を付与できる。毛髪にマット感を付与するためには、原液の粒子のD50は、22μm以下が好ましく、原液の粒子のSMDは、16μm以下が好ましい。
【0039】
セット力を付与し白浮きを抑制する観点から、整髪用スプレー中の原液と噴射剤との合計100質量部中の噴射剤の含有量は、75質量部以下であることが好ましい。なお、白浮きは、噴射された原液中の溶剤の揮発が進み、溶剤中に溶解していた樹脂成分が析出して固体の状態で毛髪に付着したことが原因と考えられる。すなわち、樹脂成分が固体粒子となって毛髪表面に付着することにより、毛髪表面から樹脂の皮膜が剥離して白くなるフレーキング同様の状態が噴射した直後に生じたものと考えられる。
【0040】
セット力、毛束のできにくさ、マット感および白浮き抑制の観点から、噴射された原液により形成される粒子径のD50が11μm以上22μm以下であることが好ましい。D50をこの範囲にするには、整髪用スプレーの原液と噴射剤との合計100質量部中における噴射剤の含有量が65質量部以上80質量部未満であることが好ましく、70質量部以上75質量部以下であることがさらに好ましい。
【0041】
実施例5の結果から、エタノールとメチラールとを混合した溶剤を用いても、エタノールのみを溶剤として用いた場合と同様の性質を備えた整髪用スプレーが得られることが分かった。
また、噴射剤としてLPGを用いた
参考例1の整髪用スプレーも、噴射剤としてDMEを用いた整髪用スプレー同様、所望の良好な性質を備えたものであった。