(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部材が、前記拡径端部が取り付けられる取付部を有し、前記拡径端部は、前記取付部に軸方向で係合して、前記第二筒状部材の軸方向の移動が規制される、請求項1記載のケーブル操作機構。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のケーブル操作機構を説明する。なお、以下の実施形態はあくまで一例であり、本発明のケーブル操作機構は、以下の実施形態に限定されるものではない。以下、ケーブル操作機構が昇降部材操作装置に適用された例をあげて説明する。しかし、本発明のケーブル操作機構は、昇降部材操作装置以外の装置に適用されてもよい。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態では、昇降部材操作装置Aは、昇降部材Wを備えた昇降機構Mと、昇降機構Mに接続されたケーブル操作機構1とを備えている。昇降部材操作装置Aは、ケーブル操作機構1により生じる駆動力によって、昇降部材Wを操作する。
【0012】
昇降部材操作装置Aにより操作される昇降部材Wは、本実施形態では遮蔽棹であるが、防護柵、防護ロープなど他の遮蔽体であってもよい。昇降部材Wは所定の軸周りに回転するように構成されている。本実施形態では、
図1に示されるように、昇降部材Wは長さ方向と直交する水平軸周りに回転するように構成されているが、鉛直軸周りに回転してもよい。また、昇降部材Wは、所定の軸周りに回転するものに限定されず、水平方向や鉛直方向に沿ってスライドするように構成されていてもよい。
【0013】
昇降機構Mは、ケーブル操作機構1により生じる駆動力によって、昇降部材Wを昇降する。昇降機構Mは、ケーブル操作機構1から出力された操作力を、昇降部材Wの昇降動作に変換して昇降部材Wを昇降する。本実施形態では、昇降機構Mは、ケーブル操作機構1から回転力が伝達されて、その回転力により昇降部材Wを昇降する。
【0014】
昇降機構Mは、
図1に示されるように、基体Fに設けられた昇降部材Wと、昇降部材Wを初期位置と作動終了位置とに移動させる作動部材M1と、ケーブル操作機構1により生じる駆動力を作動部材M1に伝達する伝達機構M2とを備えている。本実施形態では、昇降部材Wの初期位置は、
図1に実線で示されるように、昇降部材Wが基体(筐体)Fに設けられた上下方向に延びる開口から、基体Fの内側から外側へと水平方向に延びる位置である。昇降部材Wの作動終了位置は、
図1に二点鎖線で示されるように、昇降部材Wが基体Fの上側の所定の位置まで到達した位置である。昇降部材Wは、作動終了位置へと移動した後に初期位置へと再び移動して、降下位置である初期位置と上昇位置である作動終了位置との間で昇降する。なお、昇降部材Wの初期位置および作動終了位置は、昇降部材Wの作動範囲や作動方法に応じて適宜変更される。
【0015】
作動部材M1の構造は、伝達機構M2により伝達された駆動力を用いて、昇降部材Wを初期位置と作動終了位置との間で移動させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、作動部材M1は、
図1に示されるように、基体Fと昇降部材Wとの間に取り付けられた作動アームM11と、作動アームM11の回転軸となる軸部M13と、作動アームM11の先端側で操作対象Wと連結する連結部M12とを有している。なお、作動部材M1は、上述したようなアーム機構の他、リンク機構や伝達機構M2により出力される回転動作を直線動作に変換してスライドさせるなど、昇降部材Wを直線動作させるように構成してもよいし、伝達機構M2により出力される回転動作を昇降部材Wの回転軸周りの回転動作として伝達するように構成してもよい。また、伝達機構M2から直線動作による操作力が出力される場合、作動部材M1は、伝達機構M2からの直線動作による操作力を直線動作として伝達してもよいし、回転動作として伝達してもよい。
【0016】
伝達機構M2は、ケーブル操作機構1により生じる駆動力を作動部材M1に伝達する。本実施形態では、伝達機構M2は、ケーブル操作機構1により生じる回転力を作動部材M1に伝達する。なお、ケーブル操作機構1は、直線動作など回転動作以外による操作力を出力してもよく、その場合、伝達機構M2は回転動作以外の操作力を作動部材M1に伝達すればよい。
【0017】
伝達機構M2の構造は、ケーブル操作機構1により生じる駆動力を作動部材M1に伝達することができれば、特に限定されない。本実施形態では、伝達機構M2は、
図1に示されるように、作動部材M1に接続される第一伝達歯車M21と、第一伝達歯車M21と噛合する第二伝達歯車M22とを備えている。第二伝達歯車M22は、ケーブル操作機構1側に設けられた回転軸Ax1(
図1参照)に直接または間接的に接続される。本実施形態では、第一伝達歯車M21は作動アームM11に接続され、第一伝達歯車M21が回転することにより、接続された作動アームM11を動作させ、作動アームM11に接続された連結部M12を揺動させることで昇降部材Wを昇降させる。第二伝達歯車M22は、第一伝達歯車M21と噛み合って第一伝達歯車M21を回転させる。第二伝達歯車M22は、回転軸Ax1に接続され、回転軸Ax1の回転により回転する。本実施形態では、第一伝達歯車M21はセクタギヤであり、第二伝達歯車M22はウォームギヤとして示されている。第一伝達歯車M21および第二伝達歯車M22の形状や構造は、回転軸Ax1の回転によって、第二伝達歯車M22および第一伝達歯車M21を介して作動部材M1を移動させることができれば、特に限定されない。たとえば、第一伝達歯車M21および第二伝達歯車M22の組み合わせは、ウォームギヤ、平歯車、傘歯車等の各種歯車から適宜選択することができる。
【0018】
ケーブル操作機構1は昇降部材W等の操作対象を操作する装置である。ケーブル操作機構1による操作対象は、本実施形態では昇降部材Wであるが、昇降部材Wに限定されない。
【0019】
ケーブル操作機構1は、
図2および
図3に示されるように、第一作動対象と、第二作動対象と、第一作動対象に接続する一端2aと操作部Pを有する他端2bとを有するインナーケーブル2と、インナーケーブル2の外周を覆う第一筒状部材T1と、第一筒状部材T1の外周を覆う第二筒状部材T2と、第二筒状部材Tが保持される保持部材Chとを有している。
第一作動対象は、インナーケーブル2により作動される作動対象である。第一作動対象は、インナーケーブル2により作動される作動対象であれば、特に限定されない。本実施形態では、第一作動対象は、インナーケーブル2を巻取り繰り出しするドラム3である。第二作動対象は、第一筒状部材T1により作動される作動対象である。第二作動対象は、第一筒状部材T1により作動される作動対象であれば、特に限定されない。本実施形態では、第二作動対象は、後述する駆動係合部73(
図5および
図6参照)である。以下、ケーブル操作機構1について、第一作動対象としてドラム3を例にあげ、第二作動対象として駆動係合部73を例に挙げて説明する。
図2および
図3に示されるように、本実施形態では、ケーブル操作機構1はさらに、ドラム3の回転と共に回転する歯車6と、第一筒状部材T1の操作によって移動する従動部材7と、歯車6が直接または間接的に接続され、インナーケーブル2の操作に伴う、ドラム3および歯車6の回転によって第一方向D1に回転し、第一筒状部材T1の操作に伴う、従動部材7の移動によって第二方向D2に回転する回転軸Ax1とを備えている。また、本実施形態では、ケーブル操作機構1は、
図2に示されるように、ドラム3と同軸の駆動軸Ax2と、ドラム3を、インナーケーブル2を巻取り回転する方向に付勢するドラム付勢部材S1と、ドラム3の回転と共に同一方向に回転する回転部材4と、回転部材4の回転に対して負荷を与える負荷部材5と、回転部材4をドラム3側に付勢する回転部材付勢部材S2とを備えている。本実施形態においては、ドラム3と駆動軸Ax2は同軸として設けられている。駆動装置1は、インナーケーブル2を巻取り回転する方向に付勢するドラム付勢部材S1を備えている。
【0020】
ケーブル操作機構1は、インナーケーブル2の操作によってドラム3を一方に回転させ、ドラム3の回転によって、ドラム3に直接または間接的に接続された伝動部材(回転部材4、歯車6等)を作動させ、昇降部材W等の操作対象を操作する。なお、本明細書において、インナーケーブル2が操作された際のドラム3の一方の回転方向を第一方向D1と呼ぶ。また、第一方向D1は、インナーケーブル2の操作によってドラム3が回転する際に、ドラム3の回転と連動して動作する各部材の回転方向または移動する方向にも用いられる。第一方向D1は、ドラム3と連動して回転する歯車等の回転する部材の回転方向だけでなく、後述する従動部材7等の直線的に移動する部材の移動方向にも用いられる。互いに噛み合う歯車は互いに回転方向が逆方向となるが、ドラム3の回転と連動して動作する各部材の回転方向または移動する方向を第一方向D1といい、絶対的な回転方向または移動方向をいうものではない。また、第二方向D2は、後述する第一筒状部材T1の操作に連動して動作する各部材の回転方向または移動する方向をいう。なお、本実施形態では、第一方向D1は、昇降部材Wが降下する際の各部材の回転方向または移動方向であり、第二方向D2は、昇降部材Wが上昇する際の各部材の回転方向または移動方向となる。
【0021】
ケーブル操作機構1は、本実施形態では、ドラム3の回転によって、ケーブル操作機構1の出力軸となる回転軸Ax1を回転させる。回転軸Ax1の回転は昇降機構Mに伝達され、昇降機構Mにより操作対象となる昇降部材Wが操作される。ケーブル操作機構1は、ドラム3およびケーブル操作機構1の各種部材を収容するケースC(
図1参照)を有している。本実施形態では、ケースCは、
図1に示されるように、基体Fなどの支持体にブラケット等の取付部材を介して取り付けられている。本実施形態では、ケースCは、
図2に示されるように、複数のケース部材を有している。しかし、ケースCの形状は、ケーブル操作機構1の各種部材を収容することができれば特に限定されず、ケーブル操作機構1を構成する部材の配置により、適宜変更することができる。本実施形態では、
図2に示されるように、ドラム収容部を有する第一ケース部材C1と板状の第二ケース部材C2との間の空間に、駆動軸Ax2、ドラム付勢部材S1、ドラム3、回転部材4、回転部材付勢部材S2、歯車6、従動部材7等が収容されている。また、第三ケース部材C3と第四ケース部材C4との間の空間には、後述する作動補助機構8の各部材が収容されている。作動補助機構8側の空間とドラム3側の空間とは、隔壁となる第二ケース部材C2により仕切られている。
【0022】
インナーケーブル2は、第一作動対象を作動する際に操作される。本実施形態では、インナーケーブル2は、第一作動対象であるドラム3に回転力を伝達する。インナーケーブル2は可撓性を有し、ドラム3への巻取りおよびドラム3からの繰り出しが可能である。インナーケーブル2は、
図3に示されるように、ドラム3に接続される一端2aと、操作部Pを有する他端2bとを有している。操作部Pが操作されて、インナーケーブル2が引き操作されることにより、ドラム3からインナーケーブル2が繰り出され、ドラム3が駆動軸Ax2周りに回転する。インナーケーブル2を用いてドラム3を回転させて操作対象を操作することにより、操作対象の遠隔操作が可能となる。したがって、駐車場の遮断装置のように離れた位置からの操作が望まれるような装置に好適に用いることができる。
【0023】
インナーケーブル2の構造は、可撓性を有し、ドラム3を操作することが可能であれば特に限定されない。また、操作部Pは、本実施形態では球状に形成されているが、インナーケーブル2を操作することができれば、操作部Pの形状は特に限定されない。本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、インナーケーブル2の軸方向に、インナーケーブル2の外周を覆う第一筒状部材T1が設けられている。また、第一筒状部材T1の外周にはさらに、第一筒状部材T1の外周を覆う第二筒状部材T2が設けられている。
【0024】
第一筒状部材T1は、インナーケーブル2の外周を覆っている。第一筒状部材T1は、第二作動対象を作動する際に操作される。本実施形態では、第一筒状部材T1は、第二作動対象である、従動部材7に設けられた駆動係合部73(
図5および
図6参照)を作動する際に操作される。本実施形態では、
図5および
図6に示されるように、第一筒状部材T1により駆動係合部73が作動されて、駆動係合部73が噛合部G1と係合することによって、回転軸Ax1を回転させる。第一筒状部材T1は、本実施形態では、アウターチューブであり、インナーケーブル2の軸方向に沿ってインナーケーブル2の外周を保護し、インナーケーブル2が露出することを抑制している。
図3に示されるように、第一筒状部材T1の一端T11からは、インナーケーブル2の一端2aが延出している。第一筒状部材T1の他端T12からは、インナーケーブル2の他端2bが延出している。
【0025】
本実施形態では、ケーブル操作機構1の操作対象の操作は、インナーケーブル2による第一作動対象の作動と、第一筒状部材T1による第二作動対象の作動を経由して行なわれる。インナーケーブル2は、操作対象を第一方向D1へ操作する際に操作される。一方、第一筒状部材T1は、インナーケーブル2による操作対象の動作方向とは反対方向(第二方向D2)への操作対象の操作時に操作される。本実施形態では、ケーブル操作機構1は、インナーケーブル2の操作により操作対象となる昇降部材Wを降下方向に操作し、第一筒状部材T1の操作により昇降部材Wを上昇方向に操作するように構成されている。ケーブル操作機構1は、インナーケーブル2の操作により昇降部材Wを上昇方向に操作し、第一筒状部材T1の操作により昇降部材Wを降下方向に操作するように構成されていてもよい。
【0026】
第一筒状部材T1は、
図3に示されるように、第二筒状部材T2の拡径端部T211から延出して第二作動対象(駆動係合部73)と接続する作動端部T111と、第二筒状部材T2の保護端部T221から延出する操作端部T121とを有している。本実施形態では、第一筒状部材T1の作動端部T111は、
図3に示されるように、従動部材7に接続され、従動部材7に設けられた駆動係合部73に間接的に接続されている。第一筒状部材T1の操作端部T121はインナーケーブル2の他端2b側に位置している。第一筒状部材T1の操作端部T121を操作することにより、第一筒状部材T1が第二筒状部材T2の内部で軸方向に移動して、第一筒状部材T1の作動端部T111が移動する。これにより、従動部材7が移動し、従動部材T1に設けられた駆動係合部73が移動する。第一筒状部材T1の作動端部T111の形状は、従動部材7に接続することができれば特に限定されない。本実施形態では、作動端部T111は、第一筒状部材T1の外径よりも大きい筒状のエンド部材として構成されている。操作端部T121の形状は、第一筒状部材T1を操作することができれば特に限定されない。本実施形態では、操作端部T121は、
図2および
図3に示されるように、インナーケーブル2の他端2b側(
図2および
図3における下側)が拡径したスカート状に形成されている。
【0027】
第一筒状部材T1は、両端が開口した筒状に形成され、インナーケーブル2が第一筒状部材T1に対して軸方向に移動できるようにインナーケーブル2を収容している。インナーケーブル2は、一端2aが第一筒状部材T1の作動端部T111から延出し、他端2bが第一筒状部材T1の操作端部T121から延出している。本実施形態では、第一筒状部材T1は、操作端部T121側から作動端部T111へ延びる螺旋状の金属部材TM(
図4(A)参照)を含んでいる。第一筒状部材T1は、たとえば、
図4(A)に示されるように、所定のピッチで平型の鋼線(金属部材TM)が螺旋状に巻かれて筒状に形成されたものとすることができる。第一筒状部材T1は、螺旋状の金属部材TMの外周には、樹脂層などの保護層は設けられていない。したがって、第一筒状部材T1を軽量化することができる。なお、第一筒状部材T1は、金属部材TMが含まれていればよく、金属部材TMのみにより構成されている必要はない。たとえば、第一筒状部材T1は、金属部材TMの内周に樹脂ライナーが設けられていてもよいし、樹脂ライナーの外周に複数の鋼線(金属部材)が撚られたものであってもよい。
螺旋状の金属部材TMは、
図4(A)に示されるように、金属部材TMが一方向に螺旋状に巻かれたものであってもよいし、たとえば、一対の金属部材TMが互いに異なる螺旋方向で編み込まれた編組構造を有していてもよい。本実施形態では、第一筒状部材T1は、鋼線からなる金属部材TMにより構成されているが、第一筒状部材T1は、たとえば、樹脂材料に金属が混入されたものなど、少なくとも部分的に金属部材TMを含むものであってもよい。第一筒状部材T1が螺旋状の金属部材TMを含むことにより、第一筒状部材T1の耐荷重性能が向上し、第一筒状部材T1による第二作動対象の繰り返しの操作に耐え得る耐久性を得ることができる。
【0028】
第二筒状部材T2は、第一筒状部材T1が移動する際に第一筒状部材T1をガイドする。第二筒状部材T2は、
図3に示されるように、第一筒状部材T1の延在方向に沿って延びている。第二筒状部材T2は、ケースCから延出した第一筒状部材T1のうち、操作端部T121までの外周を覆っている。第二筒状部材T2の一端T21はケースCの保持部材Chに固定され(
図4(A)および
図5参照)、他端T22は操作端部T121の一端側(
図3における上側)に位置している。なお、ケースCの保持部材Chの構造は、第二筒状部材T2を保持することができればよい。本実施形態では、保持部材Chは、ケースCの一部であるが、保持部材Chは、ケースCとは別部材により構成されていてもよい。第二筒状部材T2の材料は、特に限定されないが、たとえば、第二筒状部材T2は、たとえば、ポリエチレンなど、摺動性の良い樹脂材料により構成することができる。
第二筒状部材T2は、
図3〜
図5に示されるように、端に向うにつれて拡径する拡径端部T211(
図4(A)参照)と拡径端部T211の反対側に設けられる保護端部T221とを有している。第二筒状部材T2は、拡径端部T211において保持部材Chにより保持されている。
拡径端部T211は、
図4(A)に示されるように、拡径端部T211から延出した第一筒状部材T1が、第一筒状部材T1の引き操作により、第二筒状部材T2内に導入される開口部Oを有している。拡径端部T211は、
図4(A)に示されるように、拡径端部T211の内周面が、端(開口部O)に向うにつれて拡径している。本実施形態では、
図4(A)に示されるように、拡径端部T211は、第二筒状部材T2の軸方向に切断した断面において、内周面が湾曲して拡径している。拡径端部T211は、端に向かうにつれて拡径していれば、第二筒状部材T2の軸方向に切断した断面において、内周面が直線的に拡径していてもよい。第一筒状部材T1は、操作端部T121を操作することにより作動端部T111が移動する。その際に、螺旋状の金属部材TMを含む第一筒状部材T1の外周は、第二筒状部材T2の拡径端部T211から第二筒状部材T2内に導入される。本実施形態では、拡径端部T211が端に向うにつれて拡径していることにより、第二筒状部材T2内に、螺旋状の金属部材TMが導入される際に、第二筒状部材T2の一端T21側における、第一筒状部材T1による第二筒状部材T2の削れや、第一筒状部材T1の引っ掛かりを抑制する。たとえば、第一筒状部材T1に何らかの外力が加わった場合に、
図4(B)に示されるように、可撓性を有する第一筒状部材T1が撓み、螺旋状に巻かれた金属部材TMの軸方向に段差が生じる場合がある。拡径端部T211が端に向うにつれて拡径することにより、第二筒状部材T2に第一筒状部材T1が導入時に、
図4(B)の二点鎖線に示されるように、第一筒状部材T1の段差が第二筒状部材T2の一端T21と引っ掛かりを生じることや、第二筒状部材T2の端面や内周面が段差により削られることが抑制される。
また、
図4(C)に示されるように、拡径端部T211の内周面が、端に向うにつれて拡径することにより、撓んだ第一筒状部材T1が、拡径端部T211と面接触する。これにより、拡径端部T211と螺旋状の金属部材TMを含む第一筒状部材T1の外周との接触部位で圧力が分散される。したがって、第一筒状部材T1は、第二筒状部材T2内に導入される際に、拡径端部T211において、第一筒状部材T1により削られたり、摩耗したりすることが抑制され、第一筒状部材T1の第二筒状部材T2内への円滑な導入を維持しやすくなる。
本実施形態では、保持部材Chは、拡径端部T211が取り付けられる取付部Ca(
図5参照)を有し、拡径端部T211は、取付部Caに軸方向に係合して第二筒状部材T2の軸方向の移動が規制される。これにより、第二筒状部材T2が取付部Caから離脱することが抑制され、第一筒状部材T1の軸方向での案内を円滑にすることができる。
また、第二筒状部材T2の拡径端部T211の反対側に設けられる他端T22は、保護端部T221を有している。保護端部T211は、第一筒状部材T1の操作が行われる手元側において、第一筒状部材T1の金属部材TMを覆って、操作者が金属部材TMに接触することを抑制する。保護端部T221は、たとえば、第一筒状部材T1の操作端部T121が引き操作されて、第一筒状部材T1が第二筒状部材T2に対して軸方向に移動した際に、第一筒状部材T1が外部に露出しないように構成することが好ましい。たとえば、
図5および
図6に破線で示されるように、保護端部T221が操作端部T121に対して相対移動できるように、保護端部T221の外周が操作端部T121により外周を覆われていてもよい。この場合、たとえば、保護端部T221は、第二筒状部材T2の他端T22側の端縁(
図5および
図6における下端)から、第一筒状部材T1の移動量に応じた長さで、操作端部T121により覆われていればよい。これにより、第一筒状部材T1の操作の前後に亘って、第一筒状部材T1の金属部材TMが外部に露出することが抑制される。第一筒状部材T1の移動量に応じた長さは、たとえば、第一筒状部材T1の移動量以上の長さとすることができる。
また、保護端部T221は、第一筒状部材T1の操作端部T121と第一筒状部材T1の軸方向で当接して、第一筒状部材T1の操作端部T121が所定の位置よりも作動端部T111側(
図3および
図5における上側)に移動しないように構成されていてもよい。この場合、操作端部T121の位置が所定の位置に保持される。
【0029】
従動部材7は、インナーケーブル2による操作対象の動作方向とは反対方向への操作対象の操作時に、第一筒状部材T1により操作される。従動部材7は、
図6に示されるように、第一筒状部材T1が操作されて移動することによって、噛合部G1を動作させて、回転軸Ax1を第二方向D2にわずかに回転させる。本実施形態では、ケーブル操作機構1は、従動部材7および噛合部G1を介して回転軸Ax1に初期の回転力を付与すると、昇降部材W等の操作対象が作動終了位置まで移動するように回転軸Ax1を継続的に回転させる作動補助機構8(
図2参照)を有している。作動補助機構8については後述する。
【0030】
従動部材7は、第一筒状部材T1の従動部材7側の端部(作動端部T111)に接続される。従動部材7は、本実施形態では、
図3に示されるように、第一筒状部材T1の一端T11(作動端部T111)が接続される接続部72を有している。従動部材7は第一筒状部材T1が操作されることによって、ケースC内を移動する。ケースCには、
図2および
図3に示されるように、従動部材7を案内する従動部材案内部Cgが設けられ、従動部材7は従動部材案内部Cgに沿って移動する。従動部材案内部Cgの構造は、従動部材7を所定の移動方向に案内することができれば特に限定されない。本実施形態では、従動部材案内部Cgは案内溝であり、従動部材7に設けられた案内突起71(
図5参照)が従動部材案内部Cgに沿って案内される。
【0031】
本実施形態では、従動部材7は、
図3に示されるように、バネ等の弾性部材S3により、第一筒状部材T1によって従動部材7が移動する方向とは反対方向(
図3における上側)に付勢されている。この場合、第一筒状部材T1の操作が完了した後、第一筒状部材T1の操作が解除されると弾性部材S3の弾性力により、従動部材7を初期位置(第一筒状部材T1により操作される前の位置)に戻すことができる。なお、弾性部材S3は従動部材7を初期位置に戻すように付勢することができればよく、弾性部材S3を設ける位置は特に限定されない。
【0032】
従動部材7は、
図2および
図3に示されるように、回転軸Ax1を回転させることが可能な噛合部G1と係合可能である。本実施形態では、従動部材7は駆動係合部73を備えている。本実施形態では、第一筒状部材T1により作動する第二作動対象は、従動部材7に設けられた、回転軸Ax1を回転させる噛合部G1に係合可能な駆動係合部73である。駆動係合部73は、従動部材7の移動によって噛合部G1と係合し、噛合部G1を移動させることによって、回転軸Ax1を第二方向D2に回転させる。噛合部G1は、従動部材7が移動することにより駆動係合部73と係合して、回転軸Ax1を回転させることができれば、回転軸Ax1の外周に設けられた歯部であってもよいし、回転軸Ax1を回転させるように回転軸Ax1に接続された部材であってもよい。本実施形態では、噛合部G1は回転軸Ax1に接続された駆動歯車G11(
図2および
図3参照)である。駆動歯車G11は、本実施形態では、回転軸Ax1に接続されるとともに、伝動歯車G12(
図2参照)と噛み合い、伝動歯車G12を介して歯車6に接続されている。伝動歯車G12と歯車6とのうちの一方が回転すると、他方も回転するように構成されている。本実施形態では、駆動係合部73は、
図2および
図5に示されるように、駆動歯車G11とともにラチェット機構を構成している。駆動係合部73は、従動部材7に対して駆動歯車G11側に向かって突出する突出位置(
図5における実線参照)と、駆動歯車G11と係合しない位置へと退避する退避位置(
図5における二点鎖線参照)との間で移動可能に設けられている。本実施形態では、駆動係合部73は突出位置に向かって、トーションバネなどの弾性部材S4(
図2参照)により付勢されている。
【0033】
本実施形態では、駆動係合部73は、
図2および
図5に示されるように、従動部材本体74に対して、駆動歯車G11の回転軸と平行に延びる軸周りに回転可能に取り付けられている。なお、従動部材本体74は、
図3に示されるように、第一筒状部材T1の操作により従動部材案内部Cgに沿って移動する移動部材である。駆動係合部73は、
図2、
図3および
図5に示されるように、軸が設けられた軸部73aと、軸部73aから駆動歯車G11に向かって延び、先端が駆動歯車G11の歯と係合する爪部73bとを有している。本実施形態では、
図5および
図6に示されるように、駆動係合部73が駆動歯車G11を第二方向D2(
図6における反時計方向)に回転させる際に、駆動係合部73の軸部73aを中心とした回転が規制されるように構成されている。本実施形態では、弾性部材S4により付勢された爪部73bが従動部材本体74に設けられた当接部74a(
図5参照)に当接することにより、駆動係合部73の爪部73aは、当接部74aを越えた回転が規制され、駆動係合部73が突出位置で保持される。本実施形態では、弾性部材S4は、駆動係合部73の爪部73bと従動部材本体74との間に設けられる。なお、弾性部材S4は、駆動係合部73の爪部73bが突出位置に位置するように付勢することが可能であれば、弾性部材S4を設ける位置は特に限定されない。また、駆動係合部73は、軸部73aを中心に回転するものに限定されず、直線的に突出位置と退避位置との間を往復するものであってもよい。
【0034】
本実施形態では、従動部材7が第一筒状部材T1により操作されていない初期位置においては、
図3に示されるように、駆動係合部73が突出位置にある従動部材7は、駆動歯車G11と係合しない位置に位置付けられている。従動部材7は、第一筒状部材T1が操作され、第二方向D2へと作動位置(
図6参照)に向かって移動した際に、駆動係合部73が、駆動歯車G11と係合し、駆動歯車G11を第二方向D2に回転させる。これにより、ケーブル操作機構1は、昇降部材W等の操作対象を操作する。第一筒状部材T1の操作により作動位置に移動した従動部材7(
図6参照)は、第一筒状部材T1の操作が解除されると、弾性部材S3により初期位置に向かって移動する。その際には、駆動係合部73が軸部73aを中心に退避位置へと回転しながら、駆動歯車G11の歯を乗り越えることにより、駆動歯車G11を第一方向D1に回転させることなく、従動部材7の初期位置に戻ることができる。
【0035】
なお、噛合部G1は、駆動歯車G11を有するものに限定されず、従動部材7の駆動係合部73と係合して、回転軸Ax1を回転させる力を伝動するものであればよい。また、駆動歯車G11は、本実施形態では、
図2に示されるように、回転軸Ax1に直接接続されているが、回転軸Ax1に他の歯車等、他部材を介して回転軸Ax1に間接的に接続されていてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、
図3および
図5に示されるように、第一筒状部材T1の端部には、歯車6に設けられた歯部62と係合する係止部75が設けられている。係止部75は、本実施形態では、従動部材7に設けられ、従動部材7を介して間接的に第一筒状部材T1の端部に設けられている。ただし、係止部75は、たとえば、第一筒状部材T1の一端T11に設けられた作動端部T111などに設けられていてもよい。
【0037】
係止部75は、歯車6の歯部62と係合して、歯車6が第二方向D2へ回転することを規制する。本実施形態では、係止部75は、第一筒状部材T1を操作することにより、歯車6を回転規制する規制位置(
図3参照)と歯車6の回転を許容する許容位置(
図6参照)との間を移動可能である。本実施形態では、従動部材7は、係止部75と歯車6とが係合する係合位置(
図3参照)と、従動部材7がケースCに設けられた従動部材案内部Cgに沿って移動することにより、係止部75と歯車6との係合が解除される解除位置(
図6参照)との間を移動することにより、係止部75が規制位置および許容位置との間を移動する。係止部75は、第一筒状部材T1の非操作時など、規制位置に位置するとき(従動部材7が係合位置に位置するとき)に、歯車6の歯部62と係合して、歯車6の第二方向D2への回転を規制している。詳細は後述するが、本実施形態では、歯車6の第二方向D2への回転が規制されると、回転軸Ax1の第二方向D2への回転が規制され、昇降部材Wの上昇方向への移動が規制される。
【0038】
一方、第一筒状部材T1を移動操作することにより、係止部75が許容位置(従動部材7の解除位置)へと移動すると、
図6に示されるように、係止部75と歯車6との係合が解除される。これにより、歯車6の第二方向D2への回転が可能になり、回転軸Ax1の第二方向D2への回転が許容される。回転軸Ax1の第二方向D2への回転が可能になると、昇降部材Wの上昇方向への移動が可能になり、第一筒状部材T1を操作している間は、昇降部材Wが上昇する。第一筒状部材T1の操作を解除し、従動部材7が解除位置に戻ると、
図3および
図5に示されるように、係止部75により歯車6の第二方向D2への回転が規制され、歯車6に接続された回転軸Ax1の回転が規制され、昇降部材Wの上昇動作は途中で停止される。
【0039】
係止部75は、
図2に示されるように、渦巻きバネS6によって回転する方向(第二方向D2)への歯車6の回転を抑制し、インナーケーブル2の繰り出しによって回転する方向(第一方向D1)への歯車6の回転を許容する移動機構MMを有している。移動機構MMは、係止部75が従動部材本体74から歯車6の歯部62側に向かって突出する突出位置(
図5における実線参照)と、係止部75が歯車6の歯部62と係合しない位置へと退避する退避位置(
図5における二点鎖線参照)との間で移動可能となるように構成されている。たとえば、係止部75は、本実施形態では、
図2および
図5に示されるように、ラッチ部材であり、係止部75が突出位置に向かって、トーションバネなどの弾性部材S5(
図2参照)により付勢されている。
【0040】
係止部75は、移動機構MMを有することにより、係止部75と歯車6とが係合して、渦巻きバネS6の付勢力によって歯車6が第二方向D2に回転することが抑制される。そのため、渦巻きバネS6は付勢力が蓄積された状態で維持されるとともに、第一筒状部材T1の非操作時に、歯車6が第二方向D2に回転してケーブル操作機構1の操作対象が移動することが抑制される。また、移動機構MMを有することにより、インナーケーブル2の操作時に従動部材7が係合位置に位置していても、ドラム3の第一方向D1への回転による歯車6の第一方向D1への回転が許容される。すなわち、歯車6の歯部62と係合する突出位置にある係止部75は、歯車6の第一方向D1への回転時に、
図5における二点鎖線に示されるように、退避位置へと移動可能であり、歯車6の第一方向D1への回転を妨げない。そのため、インナーケーブル2による操作時には、渦巻きバネS6の付勢力を維持した状態で、回転軸Ax1の第一方向D1への回転を可能にしている。
【0041】
移動機構MMは、歯車6に第二方向D2への回転力が加わった際に、係止部75が歯車6と係合して歯車6の回転を抑制し、歯車6に第一方向D1への回転力が加わった際に、歯車6を回転させることができれば、その構造は特に限定されない。本実施形態では、移動機構MMは、
図5に示されるように、歯車6の歯部62と係合する突出位置と、歯部62と係合しない退避位置へと移動可能な爪部75bと、爪部75bを突出位置に向かって付勢する弾性部材S5と、弾性部材S5に付勢された爪部75bと当接する当接部74bとを備えている。本実施形態では、係止部75は、従動部材本体74に対して、歯車6の回転軸(以下、軸Xという。
図2参照)と平行に延びる軸周りに回転可能に取り付けられている。係止部75は、
図2、
図3および
図5に示されるように、軸が設けられた軸部75aと、軸部75aから歯車6の歯部62に向かって延び、先端が歯車6の歯部62と係合する爪部75bとを有している。本実施形態では、弾性部材S5により付勢された爪部75bが従動部材本体74に設けられた当接部74b(
図5参照)に当接することにより、係止部75が突出位置で保持される。なお、弾性部材S5は、係止部75の爪部75bが突出位置に位置するように付勢することが可能であれば、弾性部材S5を設ける位置は特に限定されない。また、係止部75は、軸部75aを中心に回転するものに限定されず、直線的に突出位置と退避位置との間を往復するものであってもよい。
【0042】
上述したように、ケーブル操作機構1は、
図2に示されるように、インナーケーブル2の一端が接続されたドラム3と、ドラム3を、インナーケーブル2を巻取り回転する方向に付勢するドラム付勢部材S1と、ドラム3の回転と共に同一方向に回転する回転部材4と、回転部材4の回転に対して負荷を与える負荷部材5と、回転部材4と係合離脱可能な係合離脱部61が設けられた歯車6と、回転部材4をドラム3側に付勢する回転部材付勢部材S2とを備えている。
【0043】
詳細は後述するが、インナーケーブル2を操作することにより、ドラム3が第一方向D1に回転する。ドラム3が第一方向D1に回転すると、回転部材4がドラム3に対して軸X方向に離間し、回転部材4がドラム3と同方向(第一方向D1)に回転する。回転部材4は、ドラム3から離間することにより、歯車6と係合して、歯車6を回転部材4と同方向(第一方向D1)に回転させる。歯車6が第一方向D1に回転すると、噛合部G1を介して回転軸Ax1が第一方向D1に回転し、伝達機構M2および作動部材M1を介して昇降部材Wが降下する。
【0044】
ドラム3は、インナーケーブル2の一端2aが接続され、インナーケーブル2が引き操作されることにより第一方向D1に回転する。インナーケーブル2が引き操作されると、ドラム3に巻回されたインナーケーブル2がドラム3から繰り出される。インナーケーブル2の操作が解除されると、ドラム付勢部材S1によりドラム3が第一方向D1とは逆方向に回転し、ドラム3にインナーケーブル2が巻き取られる。
【0045】
ドラム3は、ケースCに対して回転可能に設けられている。ドラム3は、
図2および
図3に示されるように、ケースCに設けられた駆動軸Ax2周りに回転するように設けられている。本実施形態では、ドラム3は、
図2および
図3に示されるように、ドラム3の外周に設けられた、インナーケーブル2が巻回される巻回溝31と、ドラム付勢部材S1を収容する収容部32とを有している。
【0046】
ドラム付勢部材S1は、ドラム3がインナーケーブル2を巻き取る方向へとドラム3を付勢する。ドラム付勢部材S1は、インナーケーブル2が引き操作され、インナーケーブル2がドラム3から繰り出されるようにドラム3が第一方向D1に回転すると、ドラム付勢部材S1に付勢力が蓄積される。インナーケーブル2の操作が解除されると、ドラム付勢部材S1の蓄積された付勢力によりドラム3がインナーケーブル2を巻き取る方向に回転し、インナーケーブル2が初期位置に戻る。
【0047】
ドラム付勢部材S1の構造は、インナーケーブル2を巻き取る方向にドラム3が回転するようにドラム3を付勢することができれば、特に限定されない。本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、ドラム付勢部材S1は渦巻きバネである。渦巻きバネであるドラム付勢部材S1は、ドラム3の一方の端面に設けられた凹部としての収容部32に収容され、一端が駆動軸Ax2に取り付けられ、他端がドラム3に取り付けられている。なお、ドラム付勢部材S1は、インナーケーブル2を巻き取る方向にドラム3が回転するように付勢することができれば、他のバネ等の付勢部材であってもよい。
【0048】
回転部材4は、ドラム3の回転に応じて、ドラム3と同一方向(第一方向D1)に回転するように構成されている。本実施形態では、回転部材4は、
図2に示されるように、ドラム3と同軸上に配置され、駆動軸Ax2周りに回転可能に設けられている。回転部材4は、後述するように、ドラム3に対して所定の角度で相対回転可能であり、所定の角度で相対回転した後は、ドラム3とともに回転するように構成されている。
【0049】
回転部材4はドラム3に対して軸X方向に近接および離間するように取り付けられている。回転部材4は、
図2に示されるように、回転部材付勢部材S2によって、ドラム3側に付勢されている。回転部材4は、インナーケーブル2が操作されていない初期状態において、回転部材付勢部材S2の付勢力によって、軸X方向でドラム3側に近接した近接位置に位置している(
図7参照)。回転部材4は、後述する離間機構Sおよび遊嵌機構Lによって、
図7〜
図10に示されるように、ドラム3が回転部材4に対して相対回転しながら、回転部材付勢部材S2の付勢力に抗してドラム3に対して軸X方向に離間するように移動する。回転部材4がドラム3に対して軸X方向に離間するように移動すると、回転部材4はドラム3と共に回転し、歯車6と係合して歯車6を回転部材4と同方向に回転させる。なお、ドラム3と回転部材4の相対回転は、ドラム3が回転する際に、回転部材4がドラム3の回転速度よりも低い速度で回転するものだけでなく、回転部材4が回転せずにドラム3のみが回転するものも含まれる。
【0050】
回転部材4は、図示する構造に限定されないが、本実施形態では、外周に歯部41を有する歯車であり、後述するように、ドラム3側の端面から突出する突部PR(
図2参照)を有し、歯車6側の端面には、回転部材側係合離脱部42(
図7〜
図10参照)を有している。
【0051】
回転部材付勢部材S2は、本実施形態では、
図2に示されるように、互いに対向する歯車6の端面と回転部材4の端面との間に設けられている。回転部材付勢部材S2は、回転部材4をドラム3側に付勢することができれば、設置される位置は特に限定されない。たとえば、回転部材付勢部材S2は、互いに対向する回転部材4の端面とドラム3の端面との間に設けられて、回転部材4をドラム3側に付勢してもよいし、それ以外の位置に設けられていてもよい。本実施形態では、回転部材付勢部材S2としてコイルバネが用いられているが、回転部材付勢部材S2の構造は特に限定されない。
【0052】
負荷部材5は、回転部材4の回転方向にその回転方向への回転を抑制する負荷を与える部材である。負荷部材5は、回転部材4に対して負荷を与えることにより、ドラム3が回転を開始しだしたときに、回転部材4がドラム3と同じ速度で回転することを抑制する。負荷部材5は、回転部材4の回転に対して、回転するのに必要な駆動力を増加させる作用を回転部材4に与える部材であってもよく、回転部材4の回転方向に対して逆方向の力を与える部材であってもよい。
【0053】
負荷部材5は直接または間接的に回転部材4に接続される。本実施形態では、
図2に示されるように、回転部材4の歯部41と噛み合う負荷歯車G2を介して負荷部材5が回転部材4に接続されている。負荷部材5の構造は、回転部材4の回転方向に対して逆方向への負荷を与えることができれば、特に限定されない。本実施形態では、負荷部材5は、回転に対するブレーキ力を付与するロータリーダンパーであり、負荷歯車G2の回転に対するブレーキ力を付与することにより、回転部材4の回転方向に対して逆方向への負荷を加えている。なお、負荷歯車G2の歯部は、
図2および
図7〜
図10に示されるように、回転部材4の軸X方向への移動を考慮して、回転部材4の軸X方向への移動範囲において、回転部材4の歯部41と噛み合うことができる軸X方向の長さを有している。
【0054】
回転部材4とドラム3との間には、
図7〜
図10に示されるように、回転部材4をドラム3に対して軸X方向に離間させる離間機構Sと、回転部材4とドラム3とが係合状態と相対移動許容状態とを遷移可能な遊嵌機構Lとが設けられている。
【0055】
離間機構Sは、回転部材4を歯車6に係合させるために、回転部材4をドラム3に対して軸X方向に離間させる。離間機構Sには、
図7〜
図10に示されるように、回転部材4を軸X方向においてドラム3から相対的に離間する方向に案内する案内部Saと、案内部Saと接続して相対移動する接続部Sbとが設けられている。
【0056】
案内部Saは、ドラム3の第一方向D1への回転時に接続部Sbと接続されて、ドラム3の第一方向D1への回転時に案内部Saと接続部Sbとの間に作用する力を、回転部材4がドラム3から軸X方向に離間させる力に変換して回転部材4をドラム3から離間させる。
図7〜
図10に示されるように、ドラム3が回転して、接続部Sbが案内部Saに接触して接続した後、接続部Sbが案内部Saに沿って案内されながら、ドラム3と回転部材4とが相対回転して、回転部材4をドラム3から離間させる。
【0057】
本実施形態では、離間機構Sの案内部Saは、回転部材4に設けられている。具体的には、案内部Saは、ドラム3に向かって突出する突部PRに設けられている。なお、案内部Saは、ドラム3に設けられていてもよい。たとえば、ドラム3から回転部材4に向かって突出する、案内部を有する突部を設けてもよい。突部PRは、本実施形態では、
図7〜
図10に示されるように、案内部Saを有する軸方向突部PR1と、後述する遊嵌機構開口部に嵌合する嵌合突部PR2とを有している。なお、軸方向突部PR1と嵌合突部PR2とは、本実施形態では、回転部材4の周方向で隣接して一体的に設けられているが、周方向で離間して別々に設けられていてもよい。
【0058】
本実施形態では、離間機構Sの案内部Saは、軸方向突部PR1の傾斜面Sa1である。軸方向突部PR1の傾斜面Sa1は、たとえば、ドラム3が回転部材4よりも相対的に速く回転することによってドラム3が回転部材4に対して相対回転したときに、接続部Sbが傾斜面Sa1に案内されることにより、回転部材4がドラム3に対して軸X方向で離間するように傾斜していればよい。本実施形態では、回転部材4から突出する軸方向突部PR1に設けられた傾斜面Sa1は、インナーケーブル2の操作により第一方向D1に回転するドラム3および回転部材4の回転方向(第一方向D1)に進むに従って、回転部材4の端面からの高さ(軸X方向での端面からの離間距離)が高くなるように傾斜している(
図2参照)。なお、ドラム3側に案内部(傾斜面)が設けられる場合、たとえば、傾斜面は、インナーケーブル2の操作により回転するドラム3および回転部材4の回転方向とは反対側に進むに従って、ドラム3の端面からの高さ(軸X方向での端面からの離間距離)が高くなるように傾斜していればよい。
【0059】
なお、案内部Saの軸X方向における高さは、回転部材4と歯車6とが係合できる軸X方向の移動が実現できるように構成されていればよい。
【0060】
接続部Sbは、案内部Saに接触して接続され、ドラム3の第一方向D1への回転時に接続部Sbが案内部Saに沿って相対移動することにより、回転部材4をドラム3から軸X方向で離間させて、回転部材4を歯車6に近付ける。これにより、回転部材4は、歯車6と係合して、回転部材4の回転を歯車6に伝達する。
【0061】
接続部Sbは、案内部Saが回転部材4に設けられている場合は、ドラム3に設けられ、案内部Saがドラム3に設けられている場合は、回転部材4に設けられる。本実施形態では、接続部Sbは、ドラム3に設けられている。本実施形態では、
図7〜
図10に示されるように、案内部Saと接続する接続部Sbは、軸方向突部PR1が挿入される開口部33の縁部33aである。なお、接続部が回転部材4側に設けられる場合、接続部は、ドラム3から突出する軸方向突部PR1が挿入される、回転部材4に設けられた開口部の縁部とすることができる。接続部Sbの構造は、案内部Saと接触してドラム3の第一方向D1への回転により案内部Saに沿って接続部Sbが相対移動することができれば、特に限定されない。たとえば、ドラム3および回転部材4の互いに対向する両方の端面に、互いに周方向で係合する突部を設け、いずれか一方の突部に案内部Saを設け、他方の突部に接続部Sbを設けてもよい。
【0062】
遊嵌機構Lは、ドラム3と回転部材4とを係合状態と相対移動許容状態とで遷移可能にする機構である。相対移動許容状態は、
図7および
図8に示されるように、ドラム3と回転部材4との間の回転速度の差によって、ドラム3と回転部材4とが互いに対して相対回転する状態である。また、係合状態は、
図8および
図9に示されるように、ドラム3と回転部材4とが回転方向で係合することにより、ドラム3と回転部材4との間の相対回転が抑制され、ドラム3と回転部材4とが連動して同方向に回転する状態である。
【0063】
遊嵌機構Lは、ドラム3と回転部材4とが相対移動許容状態のときに、
図7および
図8に示されるように、離間機構Sにより接続部Sbが案内部Saに案内される。離間機構Sにより、回転部材4がドラム3に対して軸X方向に離間して、回転部材4が歯車6に係合した際に、遊嵌機構Lにおいて、ドラム3と回転部材4とが係合状態となる。これにより、回転部材4と係合した歯車6はドラム3の回転に連動して第一方向D1に回転することができる。本実施形態では、歯車6を回転させることにより、噛合部G1、回転軸Ax1、昇降機構M等を介して、昇降部材Wの操作が行われる。
【0064】
遊嵌機構Lは、本実施形態では、軸X方向に突出する嵌合突部PR2と、嵌合突部PR2を空間内に収容する遊嵌機構開口部とを有している。遊嵌機構開口部は、本実施形態では、軸方向突部PR1が挿入される開口部33と一体的に形成されている。
【0065】
嵌合突部PR2は、
図7および
図8に示されるように、ドラム3が所定の回転角度で回転する間、回転部材4とドラム3とが相対回転可能なように、遊嵌機構開口部内の空間で遊嵌状態とされる。また、嵌合突部PR2は、ドラム3と回転部材4とが相対移動許容状態で、ドラム3が所定の角度回転した後は、
図9および
図10に示されるように、遊嵌機構開口部の少なくとも一部と回転方向で係合する。嵌合突部PR2と遊嵌機構開口部の少なくとも一部が回転方向で係合すると、ドラム3と回転部材4との間の相対回転が抑制され、ドラム3と回転部材4とが連動して共に回転する。
【0066】
本実施形態では、嵌合突部PR2と遊嵌機構開口部内の内壁とは、係合状態において面接触して係合している(
図9および
図10参照)。しかし、嵌合突部PR2と遊嵌機構開口部内の係合部位とは、ドラム3と回転部材4との間の相対回転が抑制されて連動して回転することができるように係合すればよい。
【0067】
本実施形態では、嵌合突部PR2は回転部材4に設けられ、遊嵌機構開口部はドラム3に設けられている。なお、嵌合突部PR2がドラム3に設けられ、遊嵌機構開口部が回転部材4に設けられていてもよい。嵌合突部PR2の形状は、遊嵌機構開口部の少なくとも一部と係合することができれば、特に限定されない。本実施形態では、嵌合突部PR2は、
図2に示されるように、略矩形板状の突部として設けられている。また、本実施形態では、嵌合突部PR2は軸方向突部PR1と一体的に突部PRに設けられている。突部PRは、回転部材4が回転部材付勢部材S2によりドラム3側に押圧されることにより、ドラム3に設けられた開口部33に収容されるように挿入される。なお、軸方向突部PR1および嵌合突部PR2は、本実施形態では、
図2に示されるように、周方向に離間してそれぞれ2つ設けられている。しかし、軸方向突部PR1および嵌合突部PR2の数は特に限定されず、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0068】
遊嵌機構開口部の形状は、嵌合突部PR2を収容することができ、ドラム3と回転部材4とを係合状態と相対移動許容状態とで遷移可能とすることができれば、特に限定されない。本実施形態では、遊嵌機構開口部は、軸方向突部PR1を収容する離間機構開口部と一体的に開口部33として形成されている。本実施形態では、開口部33は、ドラム3の端面において、回転部材4側に開口した開口部である。開口部33は、ドラム3の周方向に所定の長さおよび所定の軸方向深さを有している。開口部33は、本実施形態では、周方向で間隔をあけて2つ設けられている。開口部33の数は特に限定されず、1つであっても複数であってもよい。また、嵌合突部PR2を空間内に収容する遊嵌機構開口部と、軸方向突部PR1が挿入される開口部(離間機構開口部)とは、別々に設けられていてもよい。
【0069】
歯車6は、歯車6の回転が規制された状態において、歯車6が接続された部材の所定の方向の動作を規制する。本実施形態では、
図5に示されるように、歯車6の歯部62と係止部75とが係合することにより、歯車6の第二方向D2への回転が規制されている。本実施形態では、
図2および
図5に示されるように、歯車6は、ケースC内で回転可能に支持され、ドラム3および回転部材4と同軸上に設けられている。歯車6は、第一筒状部材T1が操作されていない初期状態においては、回転部材4と軸X方向に離間して配置されている(
図7参照)。
【0070】
本実施形態では、
図5に示されるように、第一筒状部材T1の非操作時に、係止部75は歯車6を回転規制する規制位置にあり、歯車6の歯部62と係合している。これにより、第一筒状部材T1の非操作時に、歯車6の第二方向D2への回転が規制される。この場合、歯車6と直接または間接的に接続された回転軸Ax1等の回転が規制され、ケーブル操作機構1の操作対象が所定の状態で保持される。本実施形態では、歯車6の回転が規制されることにより、ケーブル操作機構1の操作対象となる昇降部材Wは、インナーケーブル2または第一筒状部材T1の非操作時において、所定の上昇状態または降下状態で保持される。そのため、たとえば、後述するように、回転軸Ax1を回転させる付勢力を生じる作動補助機構8の渦巻きバネS6の付勢力によって、回転軸Ax1が回転することが抑制される。
【0071】
また、歯車6は、離間機構Sにより軸X方向に移動した回転部材4と周方向に係合することにより、ドラム3および回転部材4と共に回転する。歯車6は、回転部材4と係合離脱可能な係合離脱部61を有している。係合離脱部61は、本実施形態では、
図2に示されるように、歯車6の回転部材4に対向する端面に設けられている。係合離脱部61は、回転部材4の回転部材側係合離脱部42(
図7〜
図10参照)と係合する。係合離脱部61は、本実施形態では、回転部材4と対向する歯車6の端面において周方向に離間して配置された複数の突起により構成されている。なお、係合離脱部61は、歯車6と回転部材4とが近接したときに係合して、回転部材4の回転力を歯車6に伝達することができれば、その構造は特に限定されない。
【0072】
歯車6は、本実施形態では、図示しない軸を介して噛合部G1と接続されている。本実施形態では、歯車6は、
図2および
図5に示されるように、噛合部G1の伝動歯車G12に接続されている。インナーケーブル2の操作によるドラム3の第一方向D1への回転に応じて、歯車6が第一方向D1に回転すると、伝動歯車G12が回転し、伝動歯車G12と噛み合う駆動歯車G11が回転して、回転軸Ax1が第一方向D1に回転する。
【0073】
上述したように、本実施形態では、ケーブル操作機構1は、インナーケーブル2と、ドラム3と、ドラム付勢部材S1と、回転部材4と、負荷部材5と、歯車6と、回転部材付勢部材S2とを備え、回転部材4とドラム3との間には、離間機構Sと、遊嵌機構Lとが設けられている。本実施形態では、
図7および
図8に示されるように、ドラム3がインナーケーブル2の繰り出し操作によって一方(第一方向D1)へ回転する際に、回転部材4は、遊嵌機構Lの相対移動許容状態において、回転部材4とドラム3との一方(第一方向D1)への回転における回転速度の差によって案内部Saが接続部Sbを相対的に離間する方向に案内する。これにより、回転部材4は、ドラム3側から離間する方向に移動して、係合離脱部61が回転部材4と係合し、且つ遊嵌機構Lが係合状態となることでドラム3の相対回転が抑制される。したがって、インナーケーブル2の操作をすると、ドラム3が回転するとともに、回転部材4および歯車6が第一方向D1に回転して、歯車6から伝達される回転力により、ケーブル操作機構1の操作対象の作動が可能となる。
【0074】
また、インナーケーブル2の繰り出し操作が解除された際に、回転部材付勢部材S2の付勢によって回転部材4がドラム3側に移動して歯車6の係合離脱部61との係合が解除されて、ドラム3がドラム付勢部材S1の付勢力によってドラム3が他方に回転し、ドラム3が回転部材4と共に回転してインナーケーブル2を巻き取る。これにより、ケーブル操作機構1の操作対象を作動させる際に、インナーケーブル2を操作した後、操作を解除すると、ドラム付勢部材S1の付勢力によりドラム3がインナーケーブル2の操作時とは逆方向に回転して、インナーケーブル2は元の位置に戻る。一方、インナーケーブル2の操作を解除した際には、
図7および
図8に示されるように、ケーブル操作機構1の操作対象と直接または間接的に接続された歯車6と回転部材4とが離間機構Sにより離間するため、歯車6と回転部材4との間では回転力は伝達されなくなる。したがって、インナーケーブル2を巻き取る際にドラム3が回転しても、ドラム3の回転は歯車6側には伝達されないため、ケーブル操作機構1の操作対象がインナーケーブル2により操作した後の所定の位置で保持される。そのため、操作対象の初期位置から作動終了位置まで移動させる際に、インナーケーブル2の操作を複数回に分けて行うことができ、複数回のインナーケーブル2の操作を開始する際に、インナーケーブル2は毎回初期位置に戻る。そのため、操作性が良好であり、インナーケーブル2の引き操作の長さも短くて済む。そのため、一度の操作で操作対象の初期位置から作動終了位置まで移動させる場合と比較してインナーケーブル2を長く引き出す必要がないので、たとえば、操作部Pのようなインナーケーブル2の操作時に把持される部分が、操作前と操作完了後とで、近い位置となるため、インナーケーブル2の引き操作が容易となる。また、大型の昇降部材の場合、初期位置から作動終了位置まで移動させる場合には、比較的大きな力が必要となるが、インナーケーブル2が巻き取られるように構成して、1回の操作力を小さくしてインナーケーブル2を複数回に分けて操作することにより、大型の昇降部材Wの昇降時においても、容易に操作することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、ケーブル操作機構1は、
図2に示されるように、作動補助機構8を有している。作動補助機構8は、回転軸Ax1を第二方向D2に回転させる力を付与する。本実施形態では、作動補助機構8は、渦巻きバネS6を有している。回転軸Ax1には、インナーケーブル2が繰り出されることにより回転する方向とは反対方向(第二方向D2)に回転軸Ax1を回転させる渦巻きバネS6が直接または間接的に接続される。本実施形態では、第二作動対象である駆動係合部73が、従動部材7の移動によって、噛合部G1と係合して回転軸Ax1を所定の角度回転させることにより、渦巻きバネS6の付勢力により回転軸Ax1を回転させる。本実施形態では、駆動係合部73が噛合部G1と係合して回転軸Ax1を回転させる際に、歯車等の伝動部材の噛合いにより生じる自己拘束を解除するのに必要な力が、第一筒状部材T1に加えられる。自己拘束を解除するのに必要な力は、第一筒状部材T1により、従動部材7および駆動係合部73のみを単に移動させる力よりも大きな力が必要となる。本実施形態では、第一筒状部材T1は、螺旋状の金属部材TMを含むことにより、上述した自己拘束を解除するのに必要な荷重に耐えることができる。したがって、第一筒状部材T1が繰り返しの引き操作に耐えることができ、ケーブル操作機構1の長寿命化を図ることができる。
【0076】
本実施形態では、作動補助機構8は、
図2に示されるように、回転軸Ax1に接続された第一補助歯車81と、第一補助歯車81と噛み合う第二補助歯車82と、第二補助歯車82に接続された渦巻きバネS6とを有している。第一筒状部材T1を移動操作させることにより渦巻きバネS6によって回転軸Ax1の回転をさせる。具体的には、第一筒状部材T1が操作され、従動部材7に設けられた駆動係合部73により、噛合部G1(駆動歯車G11)が第二方向D2に回転すると、
図2に示されるように、噛合部G1(駆動歯車G11)と接続された回転軸Ax1、第一補助歯車81および第二補助歯車82がわずかに第二方向D2に回転する。このときに、第一補助歯車81と第二補助歯車82との間の自己拘束が解除され、付勢力が蓄積された渦巻きバネS6の付勢力により、第一補助歯車81および第二補助歯車82は第二方向D2に回転を継続する。これにより、回転軸Ax1が第二方向D2へ回転し、昇降部材Wが上昇する。なお、自己拘束は、第一補助歯車81および第二補助歯車82の間のみに生じるものではなく、回転軸Ax1に直接または間接的に接続された他の部材との間にも生じ得る。
【0077】
一方、インナーケーブル2が操作されると、ドラム3、回転部材4、歯車6等を介して回転軸Ax1が第一方向D1に回転すると、
図2に示されるように、第一補助歯車81および第二補助歯車82が第一方向D1に回転して、渦巻きバネS6に付勢力が蓄積される。これにより、昇降部材Wの降下時など、インナーケーブル2による操作対象の一方向への操作時に、昇降部材Wの上昇などの操作対象の他方向への操作のための付勢力の蓄積が可能となる。
【0078】
また、渦巻きバネS6に蓄積された付勢力により回転軸Ax1は第二方向D2に回転する方向に力を受けるが、第一補助歯車81および第二補助歯車82の自己拘束に加えて、歯車6の歯部62が係止部75と係合することにより、インナーケーブル2または第一筒状部材T1の非操作時において、回転軸Ax1は回転せずに保持される。
【0079】
渦巻きバネS6の構造は、第一筒状部材T1を操作することにより、回転軸Ax1を回転させる付勢力を付与することができれば、特に限定されない。本実施形態では、渦巻きバネS6は、一端がケースC(第四ケース部材C4)に取り付けられ、他端が第二補助歯車82に取付けられている。
【0080】
つぎに、昇降部材操作装置Aを例にあげて、本実施形態の動作を説明する。なお、以下の動作はあくまで一例であり、以下の説明により、本発明が限定されるものではない。
【0081】
<昇降部材の上昇動作>
昇降部材Wが降下した状態から、昇降部材Wを上昇する場合、第一筒状部材であるアウターチューブ(以下、単にアウターチューブT1と呼ぶ)が操作される。
図3に示される状態から、アウターチューブT1の他端T12側に位置する操作端部T121を下方に向かって引き操作すると、アウターチューブT1は第二筒状部材T2の内部を摺動して、アウターチューブT1全体が下方へスライドする。アウターチューブT1が下方へスライドすると、アウターチューブT1の一端T11と接続部72で接続された従動部材7が、ケースC内で従動部材案内部Cgに沿って移動する(
図6参照)。なお、アウターチューブT1に挿通されているインナーケーブル2は、アウターチューブT1の移動によっては移動せず、ドラム3は回転しない。
【0082】
アウターチューブT1の引き操作により従動部材7が
図3および
図5に示される係合位置から
図6に示される解除位置へと移動すると、従動部材7に設けられた係止部75は、歯車6の移動を規制する規制位置から歯車6の回転を許容する許容位置に移動し、歯車6の回転が可能になる。また、従動部材7が解除位置へと移動することにより、
図6に示されるように、従動部材7に設けられた駆動係合部73が駆動歯車G11と係合して、駆動歯車G11を第二方向D2に回転させる。駆動歯車G11が回転すると、駆動歯車G11と接続された回転軸Ax1、第一補助歯車81および第二補助歯車82が第二方向D2にわずかに回転する。このときに、第一補助歯車81および第二補助歯車82における自己拘束が解除され、渦巻きバネS6の付勢力により、回転軸Ax1が第二方向D2に回転を継続する。回転軸Ax1が第二方向D2に回転すると、伝達機構M2、作動部材M1を介して、昇降部材Wが上昇する。
【0083】
なお、従動部材7が
図6に示されるように下方に移動して、係止部75と歯車6の歯部62とが係合していない場合、回転軸Ax1が渦巻きバネS6の付勢力により回転をしている間は、駆動歯車G11、伝動歯車G12および歯車6は、回転軸Ax1の回転に伴って第二方向D2に回転する。
【0084】
アウターチューブT1の操作を解除すると、従動部材7に設けられた弾性部材S3により、従動部材7は、
図6に示される解除位置から、
図3および
図5に示される係合位置へ向かって移動する。従動部材7が係合位置に戻る際に、駆動係合部73は駆動歯車G11の歯と干渉するが、駆動係合部73は、軸部73a(
図5参照)周りに回転可能であるため、軸部73aを中心に
図6において時計回りに回転して退避位置へと移動することにより、駆動歯車G11を乗り越えて初期位置へと復帰する。
【0085】
従動部材7が
図3に示される初期位置に移動すると、係止部75が歯車6の歯部62と係合して、歯車6の回転が規制される。これにより、歯車6と間接的に接続されている回転軸Ax1の回転も規制される。したがって、昇降部材Wは所定の上昇状態で維持される。
【0086】
昇降部材Wは、アウターチューブT1が引き操作されている間は、渦巻きバネS6の付勢力により昇降部材Wの上昇状態(上昇が完了した状態)まで上昇が可能である。昇降部材Wを上昇状態の手前で停止させたい場合は、昇降部材Wの上昇途中でアウターチューブT1の操作を解除すると、係止部75が歯車6と係合することにより、昇降部材Wは上昇途中で停止する。
【0087】
<昇降部材の降下動作>
昇降部材Wが上昇した状態から、昇降部材Wを降下する場合、インナーケーブル2が操作される。
図3に示される状態から、インナーケーブル2の他端2b側に位置する操作部Pを下方に向かって引き操作すると、インナーケーブル2は、アウターチューブT1の内部を摺動して、ドラム3から繰り出されるとともに、ドラム3を第一方向D1に回転させる。このとき、ドラム付勢部材S1の付勢力が蓄積される。
【0088】
ドラム3が第一方向D1に回転すると、
図7および
図8に示されるように、負荷部材5により回転が抑制された回転部材4に対して、ドラム3が相対回転する。このとき、接続部Sbとなる開口部33の縁部33aが、回転部材4の端面から突出した突部PRの傾斜面Sa1に案内されながら、ドラム3が回転部材4に対して相対回転する。ドラム3は軸X方向で移動せず、回転部材4は軸X方向で移動可能に設けられており、傾斜面Sa1に開口部33の縁部33aから回転方向に力が加わると、傾斜面Sa1を介して、回転部材4に軸X方向でドラム3から離間させる方向の力が生じる。そのため、開口部33の縁部33aが傾斜面Sa1に案内され、軸X方向に移動可能な回転部材4は、回転部材付勢部材S2の付勢力に抗しながら、軸X方向でドラム3の端面から離間する方向へ歯車6に向かって移動する。これにより、
図9に示されるように、回転部材4が、歯車6の係合離脱部61と、回転部材4の回転部材側係合離脱部42とが係合可能な位置まで移動する。
【0089】
さらにドラム3が第一方向D1に回転すると、
図9および
図10に示されるように、突部PRの軸方向突部PR1が開口部33内の壁部と係合して、ドラム3と回転部材4とがともに連動して回転可能な状態となる。さらにドラム3が第一方向D1に回転すると、ドラム3と回転部材4とが係合した状態で連動して第一方向D1に回転し、回転部材4と係合する歯車6も第一方向D1に回転する。このとき、係止部75は、
図5に示されるように、歯車6の歯部62と係合しているが、係止部75は、軸部75a周りに回転可能であり、軸部75aを中心に
図5において二点鎖線で示されるように回転して退避位置へ移動する。これにより、歯車6の回転は妨げられない。
【0090】
歯車6が第一方向D1に回転すると、歯車6に接続された、伝動歯車G12、駆動歯車G11が第一方向D1に回転して、駆動歯車G11に接続された回転軸Ax1が第一方向D1に回転する。回転軸Ax1が第一方向D1に回転すると、伝達機構M2、作動部材M1が昇降部材Wの上昇時とは逆方向に動作して、昇降部材Wが降下される。
【0091】
回転軸Ax1が第一方向D1に回転したとき、回転軸Ax1に接続された第一補助歯車81および第二補助歯車82が第一方向D1に回転して、昇降部材Wの上昇のための付勢力が渦巻きバネS6に蓄積される。
【0092】
インナーケーブル2の引き操作を解除すると、ドラム3の第一方向D1での回転時に付勢力が蓄積されたドラム付勢部材S1により、ドラム3はインナーケーブル2の引き操作時とは逆方向に回転する。ドラム3がインナーケーブル2の引き操作時とは逆方向に回転することにより、インナーケーブル2はインナーケーブル2の初期位置まで自動で復帰する。また、本実施形態では、インナーケーブル2の一度の操作による引き操作量が、昇降部材Wの上昇状態(上昇が完了した状態)から降下状態までの回転軸Ax1の回転量のうちの一部に対応している。そのため、昇降部材Wの上昇状態(上昇が完了した状態)から降下状態まで、インナーケーブル2を複数回操作する。その際に、インナーケーブル2および操作部Pが、昇降部材Wの上昇状態にかかわらず、初期位置に戻っているため、複数回の操作を行うのが非常に容易である。また、インナーケーブル2を引き操作する一回分の引き操作量が短いため、インナーケーブル2がアウターチューブT1から長く引き出されることがなく、操作性が良好である。