(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(I)および/または式(III)を有する化合物と前記酸性モリブデン化合物と前記サリチレート化合物の比がそれぞれ1:0.1:0.1〜1:2.5:2.5である、請求項11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
ある態様において、本発明は、モリブデン含有摩擦調整剤を提供する。ある実施形態において、本発明は、(a)アルキルジ−アルカノールアミド、アルキルジ−アルカノールアミンまたはこれらの混合物を含む窒素含有反応物と、(b)酸性モリブデン化合物と、(c)サリチレート化合物との反応生成物を含む組成物を提供する。
【0018】
1つの実施形態では、窒素含有反応物はアルキルジ−アルカノールアミドである。このようなアルキルジ−アルカノールアミドにはヤシ油由来のジ−エタノールアミドが含まれるが、これに限定されない。典型的には、ヤシ油中のアルキル基は、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチルステアリル、オレイルおよびリノレイルの混合物を含む。
【0019】
典型的には、アルキルジ−アルカノールアミドは、カルボン酸およびエステルをジ−アルカノールアミンと反応させることによって調製される。アルキルジ−アルカノールアミドは、個々のC
2−C
30カルボン酸−例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など−−またはそれらのメチルエステル、例えば、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸のものなど、あるいはアルキル、例えば、動物油脂または植物油、すなわち、獣脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、魚油などを由来とするものの混合物から調製されてもよい。これらは、さまざまなジ−アルカノールアミンと容易に反応して、所望のアルキルジ−アルカノールアミドを生成することができる。アルキルジ−アルカノールアミドは、米国特許第4085126号明細書;米国特許第4116986号明細書;および米国特許第8901328号明細書(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)に記載のプロセスを含むが、これらに限定されない当技術分野において周知の方法にしたがって調製されてもよい。
【0020】
1つの実施形態では、窒素含有反応物は、以下の式(I):
【化1】
(式中、Rは、1個〜30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは、6個〜22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは、約8個〜約18個の炭素原子を含み、Qは、C
1〜C
4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。)を有するアルキルジ−アルカノールアミドである。1つの実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
【0021】
1つの実施形態では、ジ−アルカノールアミドは、ビス−エトキシアルキルアミドを含む。例えば、ビス−エトキシアルキルアミドは、以下の式(II):
【化2】
(式中、Rは、1個〜30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは、6個〜22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは、約8個〜約18個の炭素原子を含む。)を有する。1つの実施形態では、Rは、17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは、11個の炭素原子を含む。
【0023】
1つの実施形態では、窒素含有反応物はアルキルジ−アルカノールアミンである。このようなアルキルジ−アルカノールアミンにはヤシ油由来のジ−エタノールアミンが含まれるが、これに限定されない。典型的には、ヤシ油中のアルキル基は、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチルステアリル、オレイルおよびリノレイルの混合物を含む。
【0024】
1つの実施形態では、窒素含有反応物は、以下の式(III):
【化3】
(式中、Rは、1個〜30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは、6個〜22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは、約8個〜約18個の炭素原子を含み、Qは、C
1〜C
4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。)を有するアルキルジ−アルカノールアミンである。1つの実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
【0025】
1つの実施形態では、ジ−アルカノールアミンは、ビス−エトキシアルキルアミンを含む。例えば、ビス−エトキシアルキルアミンは、以下の式(IV):
【化4】
(式中、Rは、1個〜30個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは、6個〜22個の炭素原子を含み;より好ましくは、Rは、約8個〜約18個の炭素原子を含む。)を有する。1つの実施形態では、Rは17個の炭素原子を含む。別の実施形態では、Rは11個の炭素原子を含む。
【0026】
ジ−アルカノールアミドおよびジ−アルカノールアミンのアルキル基は、さまざまなレベルの不飽和を有することができる。例えば、アルキル基は、二重結合および三重結合を含むことができる。
【0027】
典型的には、アルキルジ−アルカノールアミンは、Akzo Nobelから市販されている。例えば、Ethomeen(登録商標)C/12またはEthomeen(登録商標)O/12という商品名で販売されている製品が、本発明における使用に適したジ−アルカノールアミンである。
【0028】
アルキルアルカノールアミンの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:オレイルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、2−エチルヘキシルジエタノールアミン、ヤシ油由来のジエタノールアミンおよび牛脂由来のジエタノールアミンなど。
【0029】
窒素含有反応物は、当技術分野において周知の方法によって調製されてもよい。アルキルジ−アルカノールアミドおよびアルキルジ−アルカノールアミンは、米国特許第4085126号明細書;米国特許第7479473号明細書および当技術分野において周知の他の方法にしたがって調製されてもよく;または、これらは、Akzo Nobelから購入されてもよい。
【0031】
本発明の酸性モリブデン化合物またはその塩には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のモリブデン酸アルカリ金属、ならびに水素塩などの他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl
4、MoO
2Br
2、Mo
2O
3Cl
6または同様の酸性モリブデン化合物が含まれるが、これらに限定されない。一般に、これらのモリブデン化合物は六価である。1つの実施形態では、酸性モリブデン化合物は、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムおよびモリブデン酸アルカリ金属から選択される。別の実施形態では、酸性モリブデン化合物は三酸化モリブデンである。
【0033】
本発明のサリチレート化合物は、以下の式(V):
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、水素原子、C
1−C
40アルキル基、炭素環基、複素環基、ニトロ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、チオール基、アミド基、アミノ基、ケト基およびエステル基からなる群からそれぞれ独立して選択され;R
5は、水素原子またはC
1−C
18アルキル基である。)を有する。ある実施形態において、R
2および/またはR
4はC
1−C
40アルキル基である。一例として、R
1、R
2、R
3およびR
4はすべて水素原子である。別の例において、R
2およびR
4はいずれもイソプロピル基である。さらに別の例において、R
5はメチル基である。
【0034】
したがって、ある態様において本発明は、(a)多量の潤滑粘度の基油;ならびに(b)反応生成物、即ち(i)アルキルジ−アルカノールアミド、アルキルジ−アルカノールアミンまたはこれらの混合物を含む窒素含有反応物と、(ii)酸性モリブデン化合物と、(iii)サリチレート化合物との反応生成物を含む潤滑油組成物を提供する。
【0035】
ある態様において、本発明は、内燃機関を運転するための方法であって、(a)多量の潤滑粘度の基油;ならびに(b)反応生成物、即ち(i)アルキルジ−アルカノールアミド、アルキルジ−アルカノールアミンまたはこれらの混合物を含む窒素含有反応物と、(ii)酸性モリブデン化合物と、(iii)サリチレート化合物との反応生成物を含む潤滑油組成物を用いて前記内燃機関を潤滑する工程を含む方法を提供する。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、モリブデン含有摩擦調整剤を調製するための方法であって、
(a)式(I)および/または式(III)
【化6】
、
【化7】
(式中、各Rは個別に1個〜30個の炭素原子を含み、;好ましくは、Rは、6個〜22個の炭素原子を含み;好ましくは、Rは、約8個〜約18個の炭素原子を含み、Qは、直鎖または分岐鎖のC
1〜C
4アルキレン基である。)
を有する化合物を含む窒素含有反応物と、
(b)酸性モリブデン化合物と、
(c)式(V)
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、水素原子、C
1−C
40アルキル基、炭素環基、複素環基、ニトロ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、チオール基、アミド基、アミノ基、ケト基およびエステル基からなる群からそれぞれ独立して選択され;R
5は、水素原子またはC
1−C
18アルキル基である。)を有するサリチレート化合物と
を含む水性反応混合物を、前記モリブデン含有摩擦調整剤を生成するのに十分な時間と温度で生成する工程を含む方法を提供する。ある実施形態において、R
2および/またはR
4はC
1−C
40アルキル基である。一例として、R
1、R
2、R
3およびR
4はすべて水素原子である。別の例において、R
2およびR
4はいずれもイソプロピル基である。さらに別の例において、R
5はメチル基である。
【0037】
酸性モリブデン化合物は、全生成物あたり0.1〜20パーセント、好ましくは3.0〜9.0パーセント、最も適切には約4.0〜約6.0パーセントのモリブデンをもたらすのに十分な量で添加される。
【0038】
モリブデン含有摩擦調整剤は縮合反応により調製される。油溶性/分散性の窒素含有反応物およびサリチレート化合物は、適した反応容器内で水性条件下、酸性モリブデン化合物(例えば、三酸化モリブデン)を、油溶性/分散性の窒素含有反応物のうちの少なくとも1つに加えて、得られる反応混合物を加熱することでモリブデン化することができる。この反応は、反応を速め、反応物からの水の除去を容易にするために高温で行われる。この水の除去は、窒素などの不活性ガスを使用して反応混合物の表面に接触させるか、または減圧で反応を行うことによって容易になる。モリブデン化反応を行う温度は変化し得る。その温度は、例えば、用いられる反応物に基づいて変化し得る。例えば、温度は、約70℃〜約150℃、約70℃〜約140℃、約70℃〜約130℃、約90℃〜約130℃および約90℃〜約120℃の範囲であり得る。反応時間は、温度、反応圧力、溶媒が使用される場合には溶媒、または触媒が使用される場合には触媒に応じて、2〜4時間から最長24〜48時間またはそれ以上になり得る。典型的には、反応は大気圧下で行われる;しかし、反応が加圧下または真空下で行われてもよい。水性反応混合物は、任意選択で、モリブデン化反応の実施に適した溶媒を含むことができる。さらに、条件が許せば、溶媒が使用されてもよい。一般に、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび1,4−ジオキサンまたは鉱油など、比較的非極性の非反応性の任意の溶媒が使用されてもよい。他の炭化水素溶媒およびアルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール)ならびに混合物も使用されてもよい。一般に、水および窒素含有反応物は単独で反応混合物の溶媒として働く。
【0039】
窒素含有反応物と酸性モリブデン化合物とサリチレートの比は約1:0.1:約0.1〜約1:2.5:2.5である。1つの実施形態では、この比は約1:0.1:約0.1〜約1:1.5:1.5である。1つの実施形態では、この比は約1:0.15:約0.15〜約1:1:1である。1つの実施形態では、この比は約1:0.15:約0.15〜約1:0.75:0.75である。1つの実施形態では、この比は約1:0.15:約0.15〜約1:0.50:0.50である。1つの実施形態では、この比は約1:0.15:約0.15〜約1:0.40:0.40である。過剰な窒素含有反応物が使用される場合、酸性モリブデン化合物と反応しない残りの部分は、生成物の希釈剤として働く。混合物全体が潤滑油組成物に取り入れられてもよい。
【0040】
本発明のモリブデン含有摩擦調整剤は油溶性および/または油分散性である。したがって、モリブデン含有摩擦調整剤が潤滑油組成物中で有利に使用されてもよい。
【0041】
多くの例において、担体液中で本発明の潤滑油溶性添加剤組成物の濃縮物を生成することが有利なことがある。これらの添加剤濃縮物は、取り扱い、輸送し、最終的に潤滑油基油にブレンドして、完成した潤滑油を与える好都合な方法を提供する。
【0042】
一般に、本発明の潤滑油溶性添加剤濃縮物はさらに、別の潤滑油基油ストックおよび/または別の添加剤/添加剤濃縮物とブレンドされて完成した潤滑油を与える。担体液が本発明の潤滑添加剤を可溶化し、または分散させること、および別の潤滑油基油にブレンドすることができる添加剤濃縮物を与えることが望ましい。したがって、本発明はさらに、不活性な担体流体、および全濃縮物に基づいて、2.0重量%〜90重量%の本発明による潤滑油添加剤組成物を含む添加剤濃縮物組成物を提供する。不活性な担体流体は、潤滑油または適した炭化水素溶媒であってもよい。
【0043】
これらの濃縮物は通常、約2.0重量%〜約90重量%、好ましくは10重量%〜50重量%の本発明の添加剤組成物を含み、さらに、当技術分野において既知の以下で説明する1つまたは複数の他の添加剤を含んでもよい。濃縮物の残りの部分は、実質的に不活性な担体液または適した炭化水素溶媒である。
【0044】
完成した潤滑油については、典型的には、モリブデン含有摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約10重量%になる。好ましくは、モリブデン含有摩擦調整剤は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、0.05重量%〜約5重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%〜1.5重量%の量で使用される。
【0045】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全質量中、モリブデンの原子に基づいて、少なくとも10ppm、少なくとも20ppmまたは少なくとも40ppmまたはモリブデンを含む組成物を与える量のモリブデン含有摩擦調整剤を含んでもよい。本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全質量中、モリブデンの原子に基づいて、1000ppmを超えない、700ppmを超えない、または500ppmを超えないモリブデンを含む組成物を与える量のモリブデン化合物を含んでもよい。本発明の好ましい実施形態は、潤滑油組成物の全質量中、モリブデンの原子に基づいて、10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜700質量ppm、さらにより好ましくは10〜500質量ppmのモリブデンを含む組成物を与える量のモリブデン含有摩擦調整剤を含む。
【0046】
本発明の潤滑油組成物は、自動車用およびトラック用エンジン、2サイクル機関、ディーゼルエンジン、航空用ピストンエンジン、船舶用および鉄道用エンジンなどを含む実質的に任意の内燃機関の潤滑に使用することができる。同様に意図されるのは、ガス燃焼機関、アルコール(例えば、メタノール)燃料機関、定置燃料機関、汎用機関、タービン、油圧システム、トランスミッション、ギヤなどの潤滑油である。特に有用であるのは、燃料経済性を改善するために本発明の前記潤滑油組成物を使用することができて、モリブデン含有摩擦調整剤が、摩擦を調整する利益を潤滑油組成物にもたらし得る高負荷ディーゼルエンジンである。
【0047】
本明細書に開示の潤滑油組成物は、火花点火機関、あるいは圧縮点火ディーゼルエンジン、例えば、排気ガス再循環(EGR)システム;触媒コンバータ;および微粒子トラップのうちの少なくとも1つを備えた高負荷ディーゼルエンジンまたは圧縮点火ディーゼルエンジンなどの内燃機関を潤滑するために使用される。このようなモーター油組成物は、任意の往復動内燃機関、往復動圧縮機およびクランクケース設計の蒸気機関におけるすべての主要な可動部品を潤滑するために使用されてもよい。自動車用途では、モーター油組成物が、高温のエンジン部品を冷却し、エンジンにさびおよび付着物がないようにし、燃焼ガスの漏れを防ぐためにリングおよびバルブをシールするために使用されてもよい。
【0048】
希望するならば、当技術分野において既知の他の添加剤が潤滑油ベースストックに添加されてもよい。このような添加剤には、分散剤、洗浄剤、摩耗防止剤、極圧剤、酸化防止剤、さび止め剤、腐食抑制剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、他の摩擦調整剤などが含まれる。非限定的なこのような例は以下の通りである。
【0049】
潤滑粘度の油
本明細書に開示の潤滑油組成物は一般に、少なくとも1つの潤滑粘度の油を含む。当業者に既知の任意の基油を、本明細書に開示の潤滑粘度の油として使用することができる。潤滑油組成物の調製に適したいくつかの基油が、Mortierら、”Chemistry and Technology of Lubricants”、第3版、London、Springer、第1章および第2章、2011年;およびA.Sequeria,Jr.、”Lubricant Base Oil and Wax Processing”、New York、Marcel Decker、第6章、1994年;およびD.V.Brock、Lubrication Engineering、第43巻、1987年、p.184−5(これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されている。一般に、潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約70〜約99.5重量%であってもよい。いくつかの実施形態において、潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約75〜約99重量%、約80〜約98.5重量%または約80〜約98重量%である。
【0050】
特定の実施形態において、基油は、天然または合成の任意の潤滑基油分であるか、またはこれを含む。合成油のいくつかの非限定的な例には、エチレンなど、少なくとも1つのアルファ−オレフィンの重合により調製される、ポリアルファオレフィンまたはPAOなどの油;ならびにフィッシャー−トロプシュ法など、一酸化炭素および水素ガスを使用する炭化水素合成手順による油が含まれる。特定の実施形態において、基油は、基油の全重量に基づいて、約10重量%未満の1つまたは複数の重質分を含む。重質分は、100℃で少なくとも約20cStの粘度を有する潤滑油分を言う。特定の実施形態において、重質分は、100℃で少なくとも約25cStまたは少なくとも約30cStの粘度を有する。別の実施形態において、基油中の1つまたは複数の重質分の量は、基油の全重量に基づいて、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満または約0.1重量%未満である。さらに別の実施形態において、基油は重質分を含まない。
【0051】
特定の実施形態において、潤滑油組成物は、多量の潤滑粘度の基油を含む。いくつかの実施形態において、基油は、100℃で約2.5センチストーク(cSt)〜約20cStの動粘性率を有する。本明細書に開示の基油または潤滑油組成物の動粘性率は、ASTM D 445(これは、参照により本明細書に組み込まれる。)にしたがって測定することができる。
【0052】
他の実施形態において、基油は、ベースストックまたはベースストックのブレンドであるか、またはこれを含む。別の実施形態において、ベースストックは、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、これらに限定されないさまざまな異なるプロセスを利用して製造される。いくつかの実施形態において、ベースストックは再精製ストックを含む。別の実施形態において、再精製ストックは、製造、汚染または先の使用により導入される材料が実質的にないものとする。
【0053】
いくつかの実施形態において、基油は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509、第17版、2012年9月(すなわち、API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils)(これは、参照により本明細書に組み込まれる。)に指定のグループI〜Vのうちの1つまたは複数のベースストックのうちの1つまたは複数を含む。APIガイドラインは、さまざまな異なるプロセスを利用して製造されてもよい潤滑油成分としてベースストックを定義する。グループI、IIおよびIIIのベースストックは鉱油であり、それぞれ特定の範囲の量の飽和物、硫黄含有量および粘度指数を有する。グループIVのベースストックはポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、IIIまたはIVに含まれない他のすべてのベースストックが含まれる。
【0054】
グループI、IIおよびIIIのベースストックの飽和物レベル、硫黄レベルおよび粘度指数を以下の表1に一覧にした。
【表1】
【0055】
いくつかの実施形態において、基油は、グループI、II、III、IV、Vのベースストックのうちの1つまたは複数あるいはこれらの組み合わせを含む。他の実施形態において、基油は、グループII、III、IVのベースストックのうちの1つまたは複数あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0056】
基油は、潤滑粘度の天然油、潤滑粘度の合成油およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、基油には、合成蝋および軟蝋の異性化によって得られるベースストック、ならびに原油の芳香族成分および極性成分を(溶媒抽出に加えて、またはその代わりに)水素化分解することによって生成される水素化分解ベースストックが含まれる。他の実施形態において、潤滑粘度の基油には、動物油、植物油、鉱油、石炭または頁岩由来の油およびこれらの組み合わせなどの天然油が含まれる。動物油のいくつかの非限定的な例には、骨油、ラノリン、魚油、ラード油、イルカ油、アザラシ油、サメ油、タロー油および鯨油が含まれる。植物油のいくつかの非限定的な例には、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、菜種油、トウモロコシ油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、サフラワー油、大麻油、亜麻仁油、桐油、オイチシカ油、ホホバ油およびメドウフォーム油が含まれる。このような油が部分的または完全に水素化されてもよい。鉱油のいくつかの非限定的な例には、グループI、IIおよびIIIのベースストック、液化石油ならびにパラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン系−ナフテン系の溶媒処理または酸処理された鉱油が含まれる。いくつかの実施形態において、鉱油は、ニートまたは低粘度鉱油である。
【0057】
いくつかの実施形態において、潤滑粘度の合成油には、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば、重合および共重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィドならびにこれらの誘導体、類似体および同族体などが含まれる。他の実施形態において、合成油には、末端ヒドロキシル基をエステル化、エーテル化などによって修飾することができるアルキレンオキシド重合体、共重合体(interpolymer)、共重合体(copolymer)およびこれらの誘導体が含まれる。別の実施形態において、合成油には、ジカルボン酸とさまざまなアルコールとのエステルが含まれる。特定の実施形態において、合成油には、C
5〜C
12モノカルボン酸およびポリオールおよびポリオールエーテルから調製されるエステルが含まれる。別の実施形態において、合成油には、リン酸トリ−n−ブチルおよびリン酸トリイソブチルなどのトリ−アルキルリン酸エステル油が含まれる。
【0058】
いくつかの実施形態において、潤滑粘度の合成油には、ケイ素ベースの油(ポリアルキル油、ポリアリール油、ポリアルコキシ油、ポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油など)が含まれる。他の実施形態において、合成油には、リン含有酸の液体エステル、テトラヒドロフラン重合体、ポリアルファオレフィンなどが含まれる。
【0059】
蝋の水素異性化から誘導される基油が、単独で、あるいは前記の天然および/または合成基油と組み合わせて使用されてもよい。このような蝋異性化油は、天然蝋または合成蝋あるいはこれらの混合物の水素異性化触媒による水素異性化によって生成される。
【0060】
別の実施形態において、基油は、ポリ−アルファ−オレフィン(PAO)を含む。一般に、ポリ−アルファ−オレフィンは、約2個〜約30個、約4個〜約20個または約6個〜約16個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンから誘導されてもよい。適したポリ−アルファ−オレフィンの非限定的な例には、オクテン、デセン、これらの混合物などから誘導されるものが含まれる。これらのポリ−アルファ−オレフィンは、100℃で約2〜約15センチストーク、約3〜約12センチストークまたは約4〜約8センチストークの粘度を有してもよい。場合によっては、ポリ−アルファ−オレフィンは、鉱油などの他の基油と共に使用されてもよい。
【0061】
別の実施形態において、基油は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体を含み、ここで、ポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基が、エステル化、エーテル化、アセチル化などによって修飾されてもよい。適したポリアルキレングリコールの非限定的な例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピレングリコールおよびこれらの組み合わせが含まれる。適したポリアルキレングリコール誘導体の非限定的な例には、ポリアルキレングリコールのエーテル(例えば、ポリイソプロピレングリコールのメチルエーテル、ポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、ポリアルキレングリコールのモノおよびポリカルボン酸エステルならびにこれらの組み合わせが含まれる。場合によっては、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体は、ポリ−アルファ−オレフィンおよび鉱油などの他の基油と共に使用されてもよい。
【0062】
別の実施形態において、基油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、さまざまなアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルのいずれかを含む。これらのエステルの非限定的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステルなどが含まれる。
【0063】
別の実施形態において、基油は、フィッシャー−トロプシュプロセスにより調製される炭化水素を含む。フィッシャー−トロプシュプロセスは、フィッシャー−トロプシュ触媒を使用して、水素および一酸化炭素を含むガスから炭化水素を調製する。これらの炭化水素は、基油として有用にするために、さらに処理を必要とする場合がある。例えば、炭化水素は、当業者に既知のプロセスを利用して、脱蝋、水素異性化および/または水素化分解されてもよい。
【0064】
別の実施形態において、基油は、未精製油、精製油、再精製油またはこれらの混合物を含む。未精製油は、天然または合成の源からさらに精製処理することなく直接得られる油である。未精製油の非限定的な例には、レトルト採収操作により直接得られるシェール油、一次蒸留により直接得られる石油およびエステル化プロセスにより直接得られ、さらに処理することなく使用されるエステル油が含まれる。精製油は未精製油と類似しているが、前者は、1つまたは複数の特性を改善するために1つまたは複数の精製プロセスによりさらに処理されていることを除く。多くのこのような精製プロセスは、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸出など、当業者に既知である。再精製油は、精製油を得るために使用されるものと同様の精製油プロセスに適用することによって得られる。このような再精製油は再生油または再処理油としても知られ、使用済み添加剤および油分解生成物の除去向けプロセスによってさらに処理されることが多い。
【0065】
別の潤滑油添加剤
本発明の潤滑油組成物はまた、分散または溶解される潤滑油組成物の任意の望ましい特性を与えるか、または改善することができる他の従来の添加剤を含んでもよい。当業者に既知の任意の添加剤が、本明細書に開示の潤滑油組成物において使用されてもよい。いくつかの適した添加剤が、Mortierら、”Chemistry and Technology of Lubricants”、第2版、London、Springer、1996年;およびLeslie R.Rudnick、”Lubricant Additives:Chemistry and Applications”、New York、Marcel Dekker、2003年(これらのいずれも参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されている。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、摩耗防止剤、洗浄剤、例えば、金属洗浄剤、さび止め剤、曇り止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤、腐食抑制剤、無灰分散剤、染料、極圧剤など、およびこれらの混合物とブレンドすることができる。さまざまな添加剤が既知であり、市販されている。これらの添加剤またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順による本発明の潤滑油組成物の調製のために使用することができる。
【0066】
一般に、使用されるとき、潤滑油組成物中の添加剤のそれぞれの濃度は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約20重量%、約0.01重量%〜約15重量%または約0.1重量%〜約10重量%の範囲であってもよい。
【0067】
無灰分散剤
潤滑油組成物は、1個または複数の塩基性窒素原子を含む1つまたは複数の無灰分散剤を含むことができる。本明細書における使用のための塩基性窒素化合物は、例えば、ASTM D664試験またはD2896により測定される塩基性窒素を含まなければならない。塩基性窒素化合物は、スクシンイミド、ポリスクシンイミド、カルボン酸アミド、ヒドロカルビルモノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、ホスホルアミド、チオホスホルアミド、ホスホンアミド、分散性粘度指数向上剤およびこれらの混合物からなる群から選択される。これらの塩基性窒素含有化合物については、(それぞれが少なくとも1個の塩基性窒素を持たなければならない制限に留意して)以下で説明する。窒素含有組成物のいずれかが、この組成物が塩基性窒素を含み続ける限り、例えば、当技術分野において周知の手順を用いてホウ素または炭酸エチレンで後処理されてもよい。
【0068】
本発明において使用される分散剤の調製に有用な別のクラスの窒素含有組成物には、いわゆる分散性粘度指数向上剤(VI向上剤)が含まれる。これらのVI向上剤は一般に、炭化水素ポリマー、特に、脂環式または脂肪族のオレフィンまたはジオレフィンなどの1つまたは複数のコモノマーから誘導される別の単位を任意選択で含む、エチレンおよび/またはプロピレンから誘導されるポリマーを官能化することによって調製される。官能基化は、反応部位、または通常少なくとも1個の酸素原子をポリマー上に有する部位を導入するさまざまなプロセスによって行われてもよい。次いで、ポリマーを窒素含有源と接触させて、ポリマー骨格上に窒素含有官能基を導入する。一般に使用される窒素源には、任意の塩基性窒素化合物、特に窒素含有化合物および本明細書に記載の組成物が含まれる。好ましい窒素源は、エチレンアミン、アルキルアミンおよびマンニッヒ塩基などのアルキレンアミンである。
【0069】
1つの実施形態では、分散剤の調製に使用するための塩基性窒素化合物は、スクシンイミド、カルボン酸アミドおよびマンニッヒ塩基である。別の好ましい実施形態において、分散剤の調製に使用するための塩基性窒素化合物は、約1000または約1300または約2300の平均分子量を有するスクシンイミドおよびこれらの混合物である。このようなスクシンイミドは、当技術分野において既知の通り、ホウ素または炭酸エチレンで後処理することができる。
【0070】
一般に、潤滑油組成物中の1つまたは複数の分散剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.05から約15重量%まで変化する。別の実施形態では、1つまたは複数の分散剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.1から約10重量%まで変化する。
【0071】
酸化防止剤
潤滑油組成物は、基油の酸化を低減または防止することができる1つまたは複数の酸化防止剤を含むことができる。当業者に既知の任意の酸化防止剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した酸化防止剤の非限定的な例には、アミンベースの酸化防止剤(例えば、ビス−ノニル化ジフェニルアミン、ビス−オクチル化ジフェニルアミンおよびオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンなどのアルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルまたはアリールアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチルジアミノジフェニルアミンなど)、フェノール系酸化防止剤(例えば、2−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−ジ−tert−ブチル−o−クレゾール)など)、硫黄ベースの酸化防止剤(例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、硫化フェノール系酸化防止剤など)、リンベースの酸化防止剤(例えば、亜リン酸塩など)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物およびこれらの組み合わせが含まれる。酸化防止剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約10重量%、約0.05重量%〜約5重量%または約0.1重量%〜約3重量%に変更してもよい。
【0072】
洗浄剤
本発明の潤滑油組成物は、洗浄剤を含むことができる。金属含有または灰生成洗浄剤は、いずれも付着物を低減または除去する洗浄剤として、かつ酸中和剤またはさび止め剤として機能し、それによって摩耗および腐食を低減し、エンジンの寿命を延ばす。洗浄剤は一般に、極性頭部および長い疎水性尾部を含む。極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。この塩は、正塩または中性塩として通常記載される場合、実質的に化学量論量の金属を含んでもよい。過剰な金属化合物(例えば、酸化物または水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることによって、大量の金属塩基が取り込まれてもよい。
【0073】
使用されてもよい洗浄剤には、金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウムの中性および過塩基性の油溶性スルホン酸塩、ホウ素化スルホン酸塩、フェノール塩、硫化フェノール塩、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩およびナフテン酸塩ならびに他の油溶性カルボン酸塩が含まれる。最も一般に使用される金属はカルシウムおよびマグネシウム(これらはいずれも、潤滑油に使用される洗浄剤中に存在してもよい。)ならびにカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物である。
一般に、別の洗浄剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約25重量%、約0.05重量%〜約20重量%または約0.1重量%〜約15重量%にすることができる。
【0074】
摩擦調整剤
本発明の摩擦調整剤に加えて、本発明の潤滑油組成物は、可動部品間の摩擦を低減することができる別の摩擦調整剤を含むことができる。当業者に既知の任意の摩擦調整剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した摩擦調整剤の非限定的な例には、脂肪族カルボン酸;脂肪族カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ素化エステル、アミド、金属塩など);モノ−、ジ−またはトリ−アルキル置換リン酸またはホスホン酸;モノ−、ジ−またはトリ−アルキル置換リン酸またはホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩など);モノ−、ジ−またはトリ−アルキル置換アミン;モノ−またはジ−アルキル置換アミドならびにこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、摩擦調整剤の例には、アルコキシル化脂肪族アミン;ホウ素化脂肪族エポキシド;脂肪族ホスファイト、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、ホウ素化アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪族酸アミド、グリセロールエステル、ホウ素化グリセロールエステル;および米国特許第6372696号明細書(この内容は、参照により本明細書に取り込まれる。)に開示の脂肪族イミダゾリン;C
4〜C
75またはC
6〜C
24またはC
6〜C
20脂肪族酸エステルと、アンモニアおよびアルカノールアミンなどからなる群から選択される窒素含有化合物との反応生成物から得られる摩擦調整剤ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約10重量%、約0.05重量%〜約5重量%または約0.1重量%〜約3重量%に変更してもよい。
【0075】
摩耗防止化合物
本発明の潤滑油組成物は、摩擦および過度の摩耗を低減することができる1つまたは複数の摩耗防止剤を含むことができる。当業者に既知の任意の摩耗防止剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した摩耗防止剤の非限定的な例には、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸の金属(例えば、Pb、Sb、Moなど)塩、ジチオカルバミド酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sb、Moなど)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sbなど)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエンとチオリン酸との反応生成物ならびにこれらの組み合わせが含まれる。摩耗防止剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約5重量%、約0.05重量%〜約3重量%または約0.1重量%〜約1重量%に変更してもよい。
【0076】
特定の実施形態において、摩耗防止剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩であるか、またはこれを含む。ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩の金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、あるいはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であってもよい。いくつかの実施形態において、金属は亜鉛である。他の実施形態において、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩のアルキル基は、約3個〜約22個の炭素原子、約3個〜約18個の炭素原子、約3個〜約12個の炭素原子または約3個〜約8個の炭素原子を有する。別の実施形態において、アルキル基は直鎖または分岐鎖である。
【0077】
本明細書に開示の潤滑油組成物中にジアルキルジチオリン酸亜鉛塩を含むジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩の量は、そのリン含有量によって測定される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の潤滑油組成物のリン含有量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約0.14重量%である。
【0078】
発泡防止剤
本発明の潤滑油組成物は、油中の泡を崩壊することができる1つまたは複数の発泡防止剤または消泡剤を含むことができる。当業者に既知の任意の発泡防止剤または消泡剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した発泡防止剤または消泡剤の非限定的な例には、シリコーンオイルまたはポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシル化脂肪酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分岐鎖ポリビニルエーテル、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ポリアルコキシアミンおよびこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、発泡防止剤または消泡剤には、グリセロールモノステアレート、ポリグリコールパルミテート、トリアルキルモノチオホスフェート、硫酸化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、サリチル酸メチル、グリセロールモノオレエートまたはグリセロールジオレエートが含まれる。発泡防止剤または消泡剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約5重量%、約0.05重量%〜約3重量%または約0.1重量%〜約1重量%に変更してもよい。
【0079】
流動点降下剤
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の流動点を降下させることができる1つまたは複数の流動点降下剤を含むことができる。当業者に既知の任意の流動点降下剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した流動点降下剤の非限定的な例には、ポリメタクリレート、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタレート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物およびこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、流動点降下剤には、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリアルキルスチレンなどが含まれる。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約10重量%、約0.05重量%〜約5重量%または約0.1重量%〜約3重量%に変更してもよい。
【0080】
抗乳化剤
1つの実施形態では、本発明の潤滑油組成物は、1つまたは複数の抗乳化剤を含まない。別の実施形態では、本発明の潤滑油組成物は、水または蒸気にさらした潤滑油組成物中の油水分離を促進することができる1つまたは複数の抗乳化剤を含むことができる。当業者に既知の任意の抗乳化剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した抗乳化剤の非限定的な例には、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキル−ナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩など)、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのブロック共重合体)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよびこれらの組み合わせが含まれる。抗乳化剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約10重量%、約0.05重量%〜約5重量%または約0.1重量%〜約3重量%に変更してもよい。
【0081】
腐食抑制剤
本発明の潤滑油組成物は、腐食を低減することができる1つまたは複数の腐食抑制剤を含むことができる。当業者に既知の任意の腐食抑制剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適した腐食抑制剤の非限定的な例には、ドデシルコハク酸の半エステルまたはアミド、リン酸エステル、チオホスフェート、アルキルイミダゾリン、サルコシンおよびこれらの組み合わせが含まれる。腐食抑制剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約5重量%、約0.05重量%〜約3重量%または約0.1重量%〜約1重量%に変更してもよい。
【0082】
極圧剤
本発明の潤滑油組成物は、極圧条件下で金属摺動面の焼き付きを防止することができる1つまたは複数の極圧(EP)剤を含むことができる。当業者に既知の任意の極圧剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。一般に、極圧剤は、高荷重下で金属と化学的に組み合わさって、対向する金属表面の凹凸の溶接を防ぐ表面膜を形成することができる化合物である。適した極圧剤の非限定的な例には、動物性または植物性の硫化油脂または油、動物性または植物性の硫化脂肪酸エステル、リンの三価または五価の酸の完全または部分的にエステル化されたエステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビル多硫化物、硫化ディールス・アルダー付加体、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルおよびモノ不飽和オレフィンの硫化または共硫化混合物、脂肪酸の共硫化ブレンド、脂肪酸エステルおよびアルファ−オレフィン、官能基置換ジヒドロカルビル多硫化物、チア−アルデヒド、チア−ケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペンおよび非環状オレフィンの共硫化ブレンド、および多硫化物オレフィン生成物、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルのアミン塩ならびにこれらの組み合わせが含まれる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約5重量%、約0.05重量%〜約3重量%または約0.1重量%〜約1重量%に変更してもよい。
【0083】
さび止め剤
本発明の潤滑油組成物は、鉄金属表面の腐食を抑制することができる1つまたは複数のさび止め剤を含むことができる。当業者に既知の任意のさび止め剤が、潤滑油組成物において使用されてもよい。適したさび止め剤の非限定的な例には、非イオン性ポリオキシアルキレン剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリエチレングリコールモノオレエート;ステアリン酸および他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属石けん;脂肪酸アミン塩;重スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分的なカルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;これらの部分エステルおよびこれらの窒素含有誘導体;合成アルカリルスルホン酸塩、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩;など、ならびにこれらの混合物が含まれる。さび止め剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約10重量%、約0.05重量%〜約5重量%または約0.1重量%〜約3重量%に変更してもよい。
【0084】
多機能性添加剤
本発明の潤滑油組成物は、1つまたは複数の多機能性添加剤を含むことができる。適した多機能性添加剤の非限定的な例には、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチラートアミド、アミン−モリブデン錯化合物および硫黄含有モリブデン錯化合物が含まれる。
【0085】
粘度指数向上剤
本発明の潤滑油組成物は、1つまたは複数の粘度指数向上剤を含むことができる。適した粘度指数向上剤の非限定的な例には、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、含水スチレン−イソプレン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、ビニルピロリドンおよびメタクリレート共重合体などのオレフィン共重合体ならびに分散タイプ粘度指数向上剤が含まれるが、これらに限定されない。これらの粘度調整剤は任意選択で、例えば、マレイン酸無水物などのグラフト化材料でグラフト化することができて、グラフト化された材料は、例えば、アミン、アミド、窒素含有複素環化合物またはアルコールと反応して、多機能性粘度調整剤(分散性粘度調整剤)を生成することができる。粘度調整剤の他の例には、星形高分子(例えば、イソプレン/スチレン/イソプレントリブロックを含む星形高分子)が含まれる。粘度調整剤のさらに別の例には、低ブルックフィールド粘度および高せん断安定性のポリアルキル(メタ)アクリレート、高ブルックフィールド粘度および高せん断安定性の分散特性を有する官能化ポリアルキル(メタ)アクリレート、700〜2,500ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するポリイソブチレンならびにこれらの混合物が含まれる。粘度指数向上剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%〜約25重量%、約0.05重量%〜約20重量%または約0.3重量%〜約15重量%に変更してもよい。
【0086】
金属不活性化剤
本発明の潤滑油組成物は、1つまたは複数の金属不活性化剤を含むことができる。適した金属不活性化剤の非限定的な例には、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体およびメルカプトベンゾイミダゾールが含まれる。
【0087】
前述の添加剤のそれぞれは、使用されるとき、所望の特性を潤滑油に与える機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的に有効な量は、所望の摩擦調整特性を潤滑油に与えるのに十分な量であろう。一般に、使用されるとき、これらの添加剤のそれぞれの濃度は、別段の指定がない限り、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約10重量%、1つの実施形態では約0.005重量%〜約5重量%、または1つの実施形態では約0.1重量%〜約2.5重量%の範囲であってもよい。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約20重量%、約0.01重量%〜約10重量%または約0.1重量%〜約5重量%の範囲であってもよい。
【0088】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されているが、記載の特定の実施形態に本発明を限定するものではない。そうではないことが示されていない限り、すべての部およびパーセントは重量による。すべての数値はおおよそである。数値的範囲が記載されるとき、記載の範囲外の実施形態も依然として本発明の範囲内に入ってもよいものと理解されるべきである。各実施例に記載の特定の詳細は、本発明の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0089】
本明細書に開示の実施形態に対してさまざまな修正が行われてもよいことが理解されるであろう。したがって、上述の説明は、限定するものと解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。例えば、本発明を実施するための最良の形態として実施される上述の機能は、例示のみを目的とする。他の配置および方法が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者により実施されてもよい。さらに、ここに添付する特許請求の範囲の範囲内および趣旨内の他の修正を当業者なら想定するであろう。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定しない。
【0091】
(実施例1)
実施例の手順(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)
4.4グラム(30.5mmol)のMoO
3および4.21グラムのサリチル酸(30.5mmol)を10.5グラムの水と共にフラスコに入れた。混合物を穏やかな窒素雰囲気下、95℃で30分間撹拌した。次いで、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド(52.3グラム、171.4mmol)を反応フラスコに加え、混合物を同じ条件下で1時間撹拌し続けた。次いで、温度を110℃まで上げ、建屋内真空を用いて水を除去した。上述の条件で2時間後、生成物は均質な低粘度の液体であり、性能試験のために注ぎ出される。モリブデン含有量は5.26重量%と測定された。
【0092】
(実施例2)
(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)。
代替の手順:
4.4グラム(30.5mmol)のMoO
3および4.21グラムのサリチル酸(30.5mmol)を10.5グラムの水およびN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド(52.3グラム、171.4mmol)と共にフラスコに入れた。混合物を穏やかな窒素雰囲気下、95℃で30分間撹拌した。次いで、温度を110℃まで上げ、建屋内真空を用いて水を除去した。上述の条件で2時間後、生成物は均質な低粘度の液体であり、性能試験のために注ぎ出される。モリブデン含有量は5.0重量%と測定された。
【0093】
(実施例3)
(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)。
代替の手順:
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、100g(330mmol、1.0当量)のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド、16.97g(118mmol、0.357当量)の三酸化モリブデン、8.97g(118mmol、0.357当量)のサリチル酸および40mL(2.23mol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げて生成物を得た。モリブデン含有量は8.89重量%と測定された。
【0094】
(実施例4)
(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)。
代替の手順:
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、100g(330mmol、1.0当量)のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド、8.48g(59.0mmol、0.18当量)の三酸化モリブデン、6.12g(44.3mmol、0.13当量)のサリチル酸および20mL(1.12mol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げて生成物を得た。モリブデン含有量は4.65重量%と測定された。
【0095】
(比較例A(ベースライン))
無灰分散剤、アルカリ土類金属のカルボン酸塩、スルホン酸塩およびフェノール塩洗浄剤、ジチオリン酸亜鉛、非分散性粘度指数向上剤、酸化防止剤、発泡防止剤ならびに流動点降下剤を含むベースライン潤滑油配合物を生成した。
【0096】
(実施例5)
実施例1の潤滑油添加剤の500ppmのモリブデンを比較例Aの潤滑油配合物に加えて潤滑油組成物を調製した。
【0097】
(実施例6)
(2,2’−(ドデシルアザンジイル)ジエタノールのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、71.6g(262mmol、1.0当量)の2,2’−(ドデシルアザンジイル)ジエタノール(Ethomeen C/12)、6.80g(47.2mmol、0.180当量)の三酸化モリブデン、6.52g(47.2mmol、0.180当量)のサリチル酸および16.0mL(891mmol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げた。生成物は、薄い液体として得られる。モリブデン含有量は5.4重量%と測定された。
【0098】
(実施例7)
((Z)−2,2’−(オクタデカ−9−エン−1−イルアザンジイル)ジエタノールのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、93.2g(262mmol、1.0当量)の(Z)−2,2’−(オクタデカ−9−エン−1−イルアザンジイル)ジエタノール(Ethomeen O/12)、6.80g(47.2mmol、0.180当量)の三酸化モリブデン、6.52g(47.2mmol、0.180当量)のサリチル酸および16.0mL(891mmol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げた。生成物は、薄い液体として得られる。モリブデン含有量は4.2重量%と測定された。
【0099】
(実施例8)
(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オレアミドのサリチル酸との混合モリブデン酸塩)
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、96.8g(262mmol、1.0当量)のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オレアミド、6.80g(47.2mmol、0.180当量)の三酸化モリブデン、6.52g(47.2mmol、0.180当量)のサリチル酸および16.0mL(891mmol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げた。生成物は、薄い液体として得られる。モリブデン含有量は3.46重量%と測定された。
【0100】
(実施例9)
(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドのサリチル酸メチルとの混合モリブデン酸塩)
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、100g(330mmol、1.0当量)のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド、8.48g(59.0mmol、0.180当量)の三酸化モリブデン、8.97g(59.0mmol、0.180当量)のサリチル酸メチルおよび20.1mL(1.12mol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げた。生成物は、薄い液体として得られる。モリブデン含有量は4.19重量%と測定された。
【0101】
(実施例10)
実施例9の潤滑油添加剤の500ppmのモリブデンを比較例Aの潤滑油配合物に加えて潤滑油組成物を調製した。
【0102】
(実施例11)
(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドの3,5−ジイソプロピル−2−ヒドロキシ安息香酸との混合モリブデン酸塩)
冷却器、バブラー、温度プローブおよび撹拌羽根を備えた四つ口の250mL丸底フラスコに、100g(330mmol、1.0当量)のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド、8.48g(59.0mmol、0.180当量)の三酸化モリブデン、13.12g(59.0mmol、0.180当量)の3,5−ジイソプロピル−2−ヒドロキシ安息香酸および20.1mL(1.12mol)の水を加えた。反応混合物を弱い窒素流下で撹拌しながら、95℃で1時間加熱した後、真空で温度を110℃〜115℃まで2〜3時間上げた。生成物は、粘液として得られる。モリブデン含有量は3.6重量%と測定された。
【0103】
(比較例B)
AdekaUSA Corporation(ニュージャージー州サドル・リバー))から入手できるジチオカルバミド酸モリブデン(MoDTC)として500ppmのモリブデンを比較例Aの潤滑油配合物に加えて潤滑油組成物を調製した。
【0104】
(比較例C)
Ruheら、米国特許第6962896号明細書に記載の通り、(平均分子量1000を有する)ポリイソブテニルスクシンイミドから誘導されるモリブデンオキシスルフィドスクシンイミド錯体500ppmを比較例Aの潤滑油配合物に加えて潤滑油組成物を調製した。
【0105】
(比較例D)
Kingら、米国特許第4263152号明細書に記載の通り、(平均分子量1000を有する)ポリイソブテニルスクシンイミドから誘導されるモリブデンオキシスルフィドスクシンイミド錯体500ppmを比較例Aの潤滑油配合物に加えて潤滑油組成物を調製した。
【0106】
摩擦性能
高周波往復動リグ(HFRR)評価
上述の組成物を、120℃〜180℃のHFRRベンチテストにおいて摩擦性能について試験した。
【0107】
実施例5および実施例10の潤滑油組成物の摩擦性能を、高周波往復動リグ(HFRR)を用いて評価し、比較例A(ベースライン)、比較例B、比較例Cおよび比較例Dの潤滑油組成物の摩擦性能と比較した。
【0108】
HFRR試験装置は、業界で認められた、潤滑油性能を測定するための摩擦計である。PCS装置は、電磁振動器を利用して微小振幅で試験片(球)を固定された試験片(平坦な円板)に押しつけながら振動させる。振動の振幅および周波数ならびに荷重は変えられる。球と平面の間の摩擦力および接触電気抵抗(ECR)が測定される。平坦な固定された試験片は、潤滑油を入れた浴内に保持され、加熱することができる。この試験では、52100鋼の平坦な試験片上で6mmの球を使用して、20Hzで20分間試験するよう摩擦計を設定した。荷重は1kgで、温度は120℃、140℃、160℃および180℃で行った。潤滑油は、ディーゼルエンジン排気から集めた、潤滑油の全重量に基づいて、約6重量%のディーゼルエンジンのすすで前処理した。すすを油中で撹拌して湿らせ、次いで、試験前に15分間均質化させた。この試験において、より小さい摩擦係数は、より効果的な潤滑摩擦調整添加剤に対応する。HFRR摩擦性能データを表2に示す。
【表2】
【0109】
表2の実施例5および実施例10は、本開示の潤滑油組成物の摩擦係数(COF)(COFが小さいほど、摩擦低減特性に優れる。)が、120℃〜180℃の温度において、周知の摩擦低減剤であるジチオカルバミド酸モリブデン(比較例B)の摩擦係数よりも優れていることを示す。実施例5および実施例9も、ポリイソブテニル基が約1000分子量当量の炭素原子(比較例CおよびD)を有するポリイソブテニルスクシンイミドから合成されたモリブデンスクシンイミド錯体と比べて、優れた摩擦低減特性を示す。表2のデータから明らかなように、ジアルカノールアミド/アミンのモリブデン酸塩とサリチレートが使用されるとき、摩擦低減特性は改善される。