特許第6803346号(P6803346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803346
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】非爆発性ビススルホニルアジド類
(51)【国際特許分類】
   C07C 381/00 20060101AFI20201214BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C07C381/00CSP
   C08J3/24CES
【請求項の数】26
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-566209(P2017-566209)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公表番号】特表2018-513207(P2018-513207A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016055480
(87)【国際公開番号】WO2016146597
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/055345
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517316133
【氏名又は名称】ダイナマイト ノーベル ゲーエムベーハー エクスプローシブシュトフ−ウント システムテヒニク
【氏名又は名称原語表記】DYNAMIT NOBEL GMBH EXPLOSIVSTOFF−UND SYSTEMTECHNIK
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】デュラン,ティエリー
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03058957(US,A)
【文献】 米国特許第03562269(US,A)
【文献】 特表昭61−501395(JP,A)
【文献】 特開平06−289217(JP,A)
【文献】 特開昭61−180241(JP,A)
【文献】 特表2008−516074(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0130568(US,A1)
【文献】 特公昭53−005289(JP,B1)
【文献】 特表2012−504169(JP,A)
【文献】 Dubrovskaya, S. I.; Jurre, T.; El'tsov, A. V.,Photoinduced crosslinking of polymers by diazides which are derivatives of 1,3-diphenyl-1,3-diazetidine-2,4-dione,ZHURNAL PRIKLADNOI KHIMII (Sankt-Peterburg, Russian Federation),1978年,51(1),160-165
【文献】 ROSSBACH,V.,ADVANCES IN COLOUR SCIENCE AND TECHNOLOGY,2000年,Vol.3, No.4,81-89
【文献】 Ulrich, Henri; Stuber, F. A.; Tucker, B.; Sayigh, A. A. R.,New syntheses of functional arenesulfonyl azides,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1975年,40(6),802-804
【文献】 Sunthankar, S. V.; Patkar, G. G.,Reactive disperse dyes. Reactivity involving sulfonylnitrene intermediat from sulfonyl-azido group,INDIAN JOURNAL OF CHEMISTRY,1973年,11(4),402-403
【文献】 Kim, Hyunseok; Bang, Ki-Taek; Choi, Inho; Lee, Jin-Kyung; Choi, Tae-Lim,Diversity-Oriented Polymerization: One-Shot Synthesis of Library of Graft and Dendronized Polymers by Cu-Catalyzed Multicomponent Polymerization,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2016年,138(27),8612-8622
【文献】 Cremlyn, Richard J.; Swinbourne, Frederick J.; Shode, Olufemi,Some heterocyclic sulfonyl derivatives,JOURNAL OF HETEROCYCLIC CHEMISTRY,1985年,22(5),1211-1214
【文献】 Kandil, S. S.; Abdel-Hay, F. I.; Issa, R. M.,Thermal studies of cobalt(II), nickel(II) and copper(II) complexes of 4-(sulfonylazido phenylazo) pyrazolones,JOURNAL OF THERMAL ANALYSIS AND CALORIMETRY,2001年,63(1),173-180
【文献】 Kandil, Samir S.,Cobalt(II), nickel(II) and copper(II) complexes of4-(sulfonylazido)phenylazopyrazolones,TRANSITION METAL CHEMISTRY (London) ,1998年,23(4),461-465
【文献】 Shahrisa, Aziz; Zirak, Maryam; Torfeh, Neda; Saraei, Mahnaz,Synthesis of Mono- and Bis-chlorosulfonylarylpyrones and Related Sulfonates and Sulfonamides,PHOSPHORUS, SULFER, AND SILICON AND THE RELATED ELEMENTS,2011年,186(1),105-114
【文献】 Cremlyn, R. J.; Lewis, S. D.; Nunes, R. J.,Sulfonyl derivatives of succindianilide and glutardianilide,JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY OF PAKISTAN,1986年,8(4),491-496
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
(NS−Ar−Y)Sp’’ (I)

の化合物であって、
式中:
−Arが置換又は非置換の芳香族基であり、
−Sp’’が少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族鎖であり、ここで、前記鎖は直鎖状、分枝鎖状、又は環状であり、
−Yが、−O−、−C(=O)O−、及び−OC(=O)−から選択される。
【請求項2】
前記Sp’’が直鎖状の脂肪族鎖である。請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Sp’’が2〜20個の炭素原子を含む、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Yが−O−であり、Sp’’が少なくとも3個の炭素原子を含む脂肪族鎖である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
1,6−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
1,10−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−デカンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
1,2−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサデカンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
4,8−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンの異性体混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
1,4−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−シクロヘキサンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
1,6−ビス−(4−アジドスルホニル−3−ペンタデシルフェノキシ)ヘキサンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
一般式(II)の化合物であって、
【化1】
式中:
−Ar及びAr’が置換又は非置換のフェニル基であり;
−L’が−O−であり;
−mが1であり、nが0であるか、又はmが0であり、nが1であり;
−Sp及びSp’が少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族鎖であり、且つSp及び/又はSp’が少なくとも3個の炭素原子を含む脂肪族鎖であり、ここで、前記鎖は直鎖状、分枝鎖状、又は環状である、化合物。
【請求項12】
Sp及び/又はSp’が直鎖状の脂肪族鎖である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Sp及び/又はSp’が2〜20個の炭素原子を含む、請求項11又は12に記載の化合物。
【請求項14】
4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−3−ペンタデシルジフェニルエーテルである、請求項1113のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−2−ヘキサデシルジフェニルエーテル及び/又は4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−2−オクタデシルジフェニルエーテルである、請求項1113のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
置換芳香族化合物である出発化合物A及びBを提供することを含み、A及びBを反応させる工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を製造する方法。
【請求項17】
前記出発化合物A及びBを、更なる化合物Z−Sp’’−Z’の存在下で反応させ、Sp’’が上記で定義した脂肪族鎖であり、Z及びZ’が2個の反応性基である、請求項1〜10の1項に記載の化合物を製造するための、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
A及びBを反応させる前記ステップの後に、得られた生成物をクロロスルホン化する工程と、次いで前記得られた生成物をアジ化ナトリウムと反応させる工程が後続する、請求項1115の1項に記載の化合物を製造するための、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載された化合物と、50%(w/w)以下の鈍化剤を含有する、組成物。
【請求項20】
一般式(I)又は一般式(II)の化合物の架橋剤としての使用:
(NS−Ar−Y)Sp’’ (I)
式中:
−Arが置換又は未置換のフェニル基であり;並びに
−Sp’’が少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族鎖であり、ここで、前記鎖は直鎖状、分枝鎖状、又は環状であり
【化2】
式中:
−Ar及びAr’が置換又は非置換のフェニル基であり;
−L’が−O−であり;
−mが1であり、nが0であるか、又はmが0であり、nが1であり;
−Sp及びSp’が少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族鎖であり、且つSp及び/又はSp’が少なくとも3個の炭素原子を含む脂肪族鎖であり、ここで、前記鎖は直鎖状、分枝鎖状、又は環状である
【請求項21】
前記化合物は、架橋剤としての請求項1〜15のいずれか1項に記載されている、請求項20に記載の化合物の使用。
【請求項22】
前記化合物が50%(w/w)以下の鈍化剤と共に使用される、請求項2021のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記化合物がいずれの鈍化剤も用いずに使用される、請求項2022のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
ポリマーの製造における架橋剤としての、請求項2023のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体、及びポリオレフィンのブレンドの製造における架橋剤としての、請求項2024のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
エラストマー、エラストマー共重合体、及びエラストマーのブレンドの製造における架橋剤としての、請求項2024のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋剤として使用され、非爆発性のスルホニルアジド化合物のクラスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機過酸化物及びシラン等の化学架橋剤は、3次元ポリマー網目を形成するようにポリマー鎖を連結することができる。架橋反応は、対応する非架橋原料ポリマーと比較して、ポリマーの優れた材料特性をもたらす。
【0003】
特に、熱可塑性ポリオレフィン及びエラストマーは、溶融強度等のそのレオロジー特性及びその一般的な加工性並びに/又はその最終的な機械特性を改善するために、架橋によって改質することが多いポリマーである。架橋ポリマーの物理的特性、例えば特定の分子量分布、引張強度及び引裂強度並びにスナップ性が一般に改善される。
【0004】
過酸化物系架橋プロセスは、制御が困難であり、分解副生成物を生成するラジカルプロセスである。シラン系プロセスは、ポリマーにシランをグラフトするラジカル過酸化物反応によっても開始される、2ステップのプロセスである。第2のステップは次いで、アルコキシ基の加水分解を含む架橋反応である。
【0005】
アジド化合物、より詳細にはビススルホニルアジド化合物は、当分野において有利な架橋剤として既知である。
【0006】
スルホニルアジドカップリングプロセスは、一重項状態で炭素−水素(C−H)が挿入されてスルホニルアミド結合を形成することが既知である、反応性ナイトレンを生成するスルホニルアジドの熱分解に依存する。このプロセスは、プロセス温度及びアジドの濃度によって制御することができる。ラジカル架橋に対するスルホニルアジド架橋の主な利点は、加工性がより良好であり(反応の制御、流速に対する悪影響なし)、副生成物がより少なく、ポリマーがより均質に架橋される(より良好な機械的性質をもたらす)ことである。
【0007】
例えば、特許文献1には、ビスアジド等の架橋剤の使用によるポリマー繊維の製造が記載されている。スルホニルアジド及びアジドホルメート、特に1,10−デカンビス(スルホンアジド)及び4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホンアジド)が挙げられている。
【0008】
特許文献2は、架橋剤としてスルホニルアジドを含む部分発泡ポリプロピレン組成物に関する。クロロ脂肪族ポリ(スルホニルアジド)の新規な合成が記載されているが、1,6−ビス(4−アジドスルホニルフェニル)ヘキサン等の非塩素化アルカンビス(スルホニルアジド)も挙げられている。
【0009】
特許文献3及び特許文献4は、広範囲のポリマー向けの架橋剤としての、ポリ(スルホニルアジド)の使用に関する。エーテル基を含むアラルキレン化合物及びいくつかのスルホニルアジド化合物が挙げられている。
【0010】
特許文献5、特許文献6、及び特許文献7は、上記の他の文献で挙げたものと同様のスルホニルアジド架橋剤又はアジドホルメート架橋剤を使用する、ポリプロピレンフォーム又は中空ポリプロピレンプラスチックの製造に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許第1129399号明細書
【特許文献2】米国特許第3,298,975号明細書
【特許文献3】米国特許第3,352,798号明細書
【特許文献4】英国特許第1080619号明細書
【特許文献5】ベルギー国特許第638643号明細書
【特許文献6】ベルギー国特許第638644号明細書
【特許文献7】ベルギー国特許第622066号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の化学的スルホニルアジド架橋系の大半の重大な欠点の1つは、架橋剤が爆発性であることである。従って、架橋剤を鈍化剤と共に使用する必要があり、架橋プロセスにより費用がかかる。加えて、鈍化剤は取扱いが容易ではなく、精密な工業上の調整を要し、あらゆる用途において望ましくない。
【0013】
例えば、DPO−BSA(4,4’−ジフェニルエーテル−ビス(スルホンアジド))は、ポリマー製造又は後処理のために当業界で現在使用されている、周知のビス−スルホニルアジド架橋剤である。しかしDPO−BSAは、国連試験基準マニュアル(UN−manual for tests and criteria)及び(ドイツ)爆発物法(ケーネン試験における部分封じ込め下、加熱時に衝撃感受性及び爆発性(shock sensitive and explosive at heating under partial confinement in the Koenen−test))の2種類の試験に従って、爆発性であるという欠点を有する。この化合物は、輸送、安全な取扱い及び例えば押出プロセスにおける技術的使用のために、不活性な非爆発性物質(鈍化剤)を用いて鈍化する必要がある。代表的な鈍化組成物は、67%(重量/重量)未満のDPO−BSA及び33%(重量/重量)を超える安定剤、例えば「イルガノックス」(登録商標)1010を含有する。鈍化剤は、プラスチック製造プロセスに合わせて調整する必要があり、各新規組合せの開発及び試験を要する。
【0014】
従って、鈍化の必要が全く又はあまりない、非爆発性又は低爆発性架橋剤に対する要求があり、このような架橋剤は、有利には容易に合成される。非爆発性又は低爆発性架橋剤ならば、合成、配合、及び輸送のコストも低減される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の目的は、一般式:
S−Ar−L−Ar’−SO (I)
の化合物であって、
式中:
−Ar及びAr’が芳香族構成ブロックであり、
−Lが少なくとも1個のヘテロ原子及びSp’’として示され、少なくとも2個の炭素原子を有する有機鎖を含む連結基である、化合物
を提供することであり、以下は該化合物に含まれない:
【0016】
【化1】
【0017】
一実施形態により、一般式:
S−(Ar−z)−R−Sp’’’−(R−(Ar−z)−SO
(III)
の化合物であって、
式中:
−Arが芳香族構成ブロックであり、
−Zが水素原子又は塩素原子であり、
−xが1以上であり、
−Rが−CO−NH−又は−NH−CO−又は−CO−N−CH等の連結基であり、
−Rが−CO−NH−又は−NH−CO−又は−CO−N−CH又は−CH=CH−等の連結基であり、
− Sp’’’が少なくとも1個の炭素原子又は共有結合を有する有機鎖である、
化合物は含まれない。
【0018】
一実施形態により、連結基L中の少なくとも1個のヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から選択される。
【0019】
一実施形態により、有機鎖Sp’’は脂肪族鎖であり、好ましくは直鎖状である。
【0020】
一実施形態により、有機鎖Sp’’は2〜20個の炭素原子、好ましくは6〜16個の炭素原子を含む。
【0021】
一実施形態により、Arはフェニル基であり、又はAr’はフェニル基であり、好ましくはAr及びAr’はいずれもフェニル基であり、前記フェニル基は置換されているか、又は非置換である。
【0022】
一実施形態により、LはY−Sp’’−Y’であり、
式中:
−Y及びY’はいずれも、−O−、−NH−、−NR−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)NR’−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NR’−、−NRC(=O)NH−、−NRC(=O)O−、−NRC(=O)NR’−、−S−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−、及び−NRC(=O)−から好ましくは独立して選択される、ヘテロ原子を含む官能基であり、R及びR’はアルキル基又はアリール基であり;並びに
−Sp’’は上で定義した通りである。
【0023】
一実施形態により、Ar及びAr’は、置換又は非置換フェニル基であり;LはO−Sp’’−Oであり、有機鎖Sp’’は、好ましくは少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、及び最も好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含む脂肪族鎖である。
【0024】
一実施形態により、化合物は、一般式:
(NS−Ar−Y)Sp’’ (I’’)
を有し、
式中、Ar、Y、及びSp’’は上記で定義した通りである。
【0025】
一実施形態により、化合物は1,6−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサンである。
【0026】
一実施形態により、化合物は1,10−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−デカンである。
【0027】
一実施形態により、化合物は1,2−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサデカンである。
【0028】
一実施形態により、化合物は4,8−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.0.2.6]デカンの異性体混合物である。
【0029】
一実施形態により、化合物は1,4−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−シクロヘキサンである。
【0030】
一実施形態により、化合物は、1,n−ビス−(4−アジドスルホニルフェニル)−ポリエチレングリコールエーテルである。
【0031】
本発明の第2の目的は、一般式(II)
【化2】

の化合物であって、
式中:
−Ar及びAr’が芳香族構成ブロックであり;
−L’が共有結合又は連結基であり;
−m及びnがいずれも0又は1であり、m及びnの少なくとも1つが1であり;
−Sp及びSp’が少なくとも2個の炭素原子を有する有機鎖である、化合物
を提供することであり
【化3】

は該化合物に含まれない。
【0032】
一実施形態により、L’は、好ましくは硫黄、窒素、及び酸素から選択される、少なくとも1個のヘテロ原子を含む。
【0033】
一実施形態により、mは1であり、nは0であり;又はmは0であり、nは1である。
【0034】
一実施形態により、Sp及び/又はSp’は脂肪族鎖であり、好ましくは直鎖状である。
【0035】
一実施形態により、Sp及び/又はSp’は、2〜20個の炭素原子、好ましくは6〜18個の炭素原子を含む。
【0036】
一実施形態により、L’は−O−、−NH−、−NR−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)NR’−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NR’−、−NRC(=O)NH−、−NRC(=O)O−、−NRC(=O)NR’−、−S−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−、及び−NRC(=O)であり、R及びR’はアルキル基又はアリール基である。
【0037】
一実施形態により、L’は−O−であり、Ar及びAr’はフェニル基であり、Sp及び/又はSp’は少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個及び最も好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含む脂肪族鎖である。
【0038】
一実施形態により、化合物は4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−3−ペンタデシルジフェニルエーテルである。
【0039】
本発明の別の目的は、出発化合物A及びBを提供すること、ここで、A及びBが置換芳香族化合物であり、並びにA及びBを反応させるステップを含む、上記の化合物のいずれかを製造する方法を提供することである。
【0040】
一実施形態により、本方法は、出発化合物A及びBを、更なる化合物Z−Sp’’−Z’の存在下で反応させる、本発明の第1の目的に従って化合物を製造する方法であり、Sp’’は上で定義した有機鎖であり、Z及びZ’は2個の反応性基であり;並びにA及びBは同一であることが好ましい。
【0041】
一実施形態により、本方法は、A及びBを反応させるステップの後に、得られた生成物をクロロスルホン化するステップ、次いで得られた生成物をアジ化ナトリウムと反応させるステップが後続する、本発明の第2の目的に従って化合物を製造する方法である。
【0042】
本発明の別の目的は、請求項1から20のいずれか一項に記載された化合物を含み、50%(w/w)以下、好ましくは40%(w/w)以下、より好ましくは30%(w/w)以下、またより好ましくは20%(w/w)以下、最も好ましくは10%(w/w)以下の鈍化剤を含有する、組成物を提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、一般式
S−Ar−L−Ar’−SO (I)
の化合物であって、
式中:
−Ar及びAr’が芳香族構成ブロックであり;
−Lが、少なくとも1個のヘテロ原子及びSp’’で示され、少なくとも2個の炭素原子を有する有機鎖を含む連結基である、化合物
又は一般式
【化4】

の化合物であって、
式中:
−Ar及びAr’が芳香族構成ブロックであり;
−L’が共有結合又は連結基であり;
−m及びnがいずれも0又は1であり、m及びnの少なくとも1つが1であり;
−Sp及びSp’が少なくとも2個の炭素原子を有する有機鎖である、化合物の、架橋剤としての使用を提供することである。
【0044】
一実施形態により、上の使用は、上記の態様による化合物を架橋剤として用いることが好ましい。
【0045】
一実施形態により、前記化合物は、50%(w/w)以下、好ましくは40%(w/w)以下、より好ましくは30%(w/w)以下、またより好ましくは20%(w/w)以下、最も好ましくは10%(w/w)以下の鈍化剤と共に使用される。
【0046】
一実施形態により、前記化合物は、いずれの鈍化剤もなしで使用される。
【0047】
一実施形態により、本使用は、ポリマーの製造における架橋剤としての使用である。
【0048】
一実施形態により、本使用は、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、及びポリオレフィンのブレンドの製造における、好ましくはポリプロピレン又はポリエチレンの製造における、架橋剤としての使用である。
【0049】
一実施形態により、本使用は、エラストマー、エラストマーコポリマー、及びエラストマーのブレンドの製造における、好ましくはEPM、EPDM、及びEPM−ポリオレフィンブレンドの製造における架橋剤としての使用である。
【0050】
本発明は、先行技術の欠点を克服する。本発明は、より詳細には、爆発性でないか、又は先行技術の化合物よりも爆発性が低く、このため鈍化剤が不要であるか、又は少なくとも少量の鈍化剤を必要とする、新規架橋剤を提供する。
【0051】
いずれの理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、新規架橋剤がビス(アリールスルホニルアジド)分子中にてスペーサ又は側鎖に追加の炭素原子を組み込むことにより実現されると考えている。スペーサ又は側鎖による分子量の増加は、爆発性の低下又は抑制をもたらすと考えられる。更に、本発明の化合物は結晶性が低下していると考えられ、また、製造プロセスにおいて大きな結晶が形成されないため、爆発性が低下又は抑制される。
【0052】
特に本発明の化合物は、当業界で現在使用されている重要なスルホニルアジド架橋剤の1つであるDPO−BSAと比較して、爆発性が低下している。
【0053】
スペーサは、2個のアリールスルホニルアジド基の間に位置することができるか、あるいはアリールスルホニルアジド基の一方又は両方に置換基又は側鎖として位置することができる。
【0054】
更に本発明の化合物は、特に1個以上のヘテロ原子が2個のアリールスルホニルアジド基の間のリンカー中に存在する場合、比較的容易に合成される。このことは、合成がより困難であると考えられる、1,6−ビス(4−アジドスルホニルフェニル)ヘキサン等の先行技術に記載された化合物とは対照的である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】HDPE中のPOHOP−SAの周波数(X軸、rad/s)に対する複素粘度(Y軸、Pa.s)の変化を示す。
図2】HDPE中のPOHOP−SAの種々のモル濃度での、より詳細には、HDPE中の0.329mmol/kg及び0.657mmol/kgのPOHOP−SAの、周波数(X軸、rad/s)に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率(Y軸、Pa)の変化を示す。
図3】HDPE中の2.629mmol/kgのPOHOP−SAについて、周波数(X軸、rad/s)に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率(Y軸、Pa)の変化を示す。
図4】HDPE中の2.629mmol/kgのPOHOP−SAについて、周波数(X軸、rad/s)に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率(Y軸、Pa)の変化を示す。
図5】HDPE中のPOHOP−SAの種々のモル濃度での、より詳細には、HDPE中の0.329mmol/kg及び0.657mmol/kgのPOHOP−SAの、周波数(X軸、rad/s)に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率(Y軸、Pa)の変化を示す。
図6】HDPE中の2.629mmol/kgのPODOP−SAについて、周波数(X軸、rad/s)に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率(Y軸、Pa)の変化を示す。
図7】PODOP−SA及びDPO−BSAの周波数(X軸、rad/s)に対する複素粘度(Y軸、Pa.s)の変化を示す。
図8】2.629mmol/kgのPODOP−SA及び2.629mmol/kgのDPO−BSAについて、周波数(X軸、rad/s)に対する貯蔵弾性率及び損失弾性率(Y軸、Pa)の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明をここで、以下の記載で限定されることなく、より詳細に説明する。
【0057】
本発明の化合物は2種類、即ち、1型及び2型に分類される。
【0058】
1型の本発明の化合物は、以下の一般式を有する。
S−Ar−L−Ar’−SO (I)
【0059】
2型の本発明の化合物は、以下の一般式を有する。
【化5】

上式において、Ar及びAr’は芳香族構成ブロックである。
【0060】
芳香族構成ブロックAr及びAr’はアリール部分であり、即ち、これらはそれぞれ芳香環であるか、又は芳香環を含む。これらの芳香環は置換することも、置換しないこともできる。置換基が存在する場合、置換基は特に、以下でより詳細に説明する側鎖Sp及びSp’と同様であることができる。この場合、Ar/Ar’芳香族構成ブロックの芳香環は、式(II)に示すものを含む、1個を超える側鎖Sp/Sp’に、例えば2個の側鎖Sp/Sp’に、又は3個の側鎖Sp/Sp’に、又は4個の側鎖Sp/Sp’に連結することができる。芳香環に連結した種々の側鎖Sp/Sp’は、同一であることも異なることもできる。
【0061】
Ar及びA’は、同一であることも異なることもでき、好ましくは同一である。なお好ましくは、Ar及びAr’はフェニル基である。あるいは、Ar及びAr’はナフチル基であることができる。
【0062】
式(I)において、Lは連結基又はリンカーである。
【0063】
連結基Lは、少なくとも1個のヘテロ原子及びSp’’で示すスペーサを含む。
【0064】
ヘテロ原子は好ましくは、硫黄、窒素、又は酸素である。
【0065】
式(II)中、L’は共有結合又は連結基のどちらかであり、m及びnは、それぞれ独立して0又は1であり;並びにSp及びSp’は側鎖であり、この出願の文脈においてスペーサと呼ぶこともできる。
【0066】
m=0の場合、Spは存在しないが、m=1の場合、Spが存在する。
【0067】
n=0の場合、Sp’は存在しないが、n=1の場合、Sp’が存在する。
【0068】
Sp及びSp’の少なくとも一方が存在する。これは、m及びnの少なくとも1つが1であることを意味する。一実施形態により、Sp及びSp’の一方のみが存在する。
代替的実施形態により、Sp及びSp’の両方が存在し、この場合、Sp及びSp’は同一であることも異なることもできる。
【0069】
上式の両方において、Sp、Sp’、及びSp’’は有機鎖である。特にSp、Sp’、及びSp’’はそれぞれ、芳香族鎖又は芳香族基含有鎖であることができる。しかし、好ましくは、Sp、Sp’、及びSp’’はそれぞれ脂肪族鎖である。Sp、Sp’、及びSp’’はそれぞれ、好ましくは少なくとも2個の炭素原子を含む。
【0070】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’又はSp’’は、2個の炭素原子を有する。
【0071】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、3個の炭素原子を有する。
【0072】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、4個の炭素原子を有する。
【0073】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、5個の炭素原子を有する。
【0074】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、6個の炭素原子を有する。
【0075】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、7個の炭素原子を有する。
【0076】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、8個の炭素原子を有する。
【0077】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、9個の炭素原子を有する。
【0078】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、10個の炭素原子を有する。
【0079】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、11個の炭素原子を有する。
【0080】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、12個の炭素原子を有する。
【0081】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、13個の炭素原子を有する。
【0082】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、14個の炭素原子を有する。
【0083】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、15個の炭素原子を有する。
【0084】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、16個の炭素原子を有する。
【0085】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、17個の炭素原子を有する。
【0086】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、18個の炭素原子を有する。
【0087】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、19個の炭素原子を有する。
【0088】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、20個の炭素原子を有する。
【0089】
一実施形態により、鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、20個を超える炭素原子を有する。
【0090】
鎖Sp又はSp’ 又はSp’’は、直鎖、分枝鎖、又は環状であってよい。鎖Sp又はSp’又はSp’’は、飽和又は不飽和であることができ、最も好ましくは飽和である。鎖Sp又はSp’又はSp’’は、置換されているか、又はより好ましくは、非置換であることができる。置換されている場合、アルキル鎖置換基は、これらが爆発性傾向の低下に寄与するため好ましい。
【0091】
本発明の化合物は、同時に1型及び2型の両方であることができる。このような化合物は、Ar及びAr’の少なくとも一方が芳香環に連結した上記で定義したような各鎖Sp又はSp’を有する芳香環を含む、式(I)の化合物であることができる。このような化合物は、L’が上記で定義した式(I)の連結基Lに類似した連結基である、式(II)の化合物であることもできる。
【0092】
1型の好ましい化合物は、一般式:
S−Ar−Y−Sp’’−Y’−Ar’−SO (I’)
の化合物である。
【0093】
本式において、Sp’’は上記で定義した通りであり、Y及びY’は同一である又は異なることができる2個の官能基である。好ましくは、スペーサSp’’にそれぞれ連結された2個の基NS−Ar−Y−及びNS−Ar’−Y’−は同一である。このような化合物は、一般式:
(NS−Ar−Y)Sp’’ (I’’)
の化合物である。
【0094】
官能基Y及びY’は、有利には、好ましくは硫黄、酸素、及び窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む。
【0095】
これらはより好ましくは、以下の基:−O−、−NH−、−NR−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)NR’−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NR’−、−NRC(=O)NH−、−NRC(=O)O−、−NRC(=O)NR’−、−S−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR−、−C(=O)、−OC(=O)−、−NHC(=O)−、及び−NRC(=O)−から選択され、ここでR及びR’はアルキル基又はアリール基である。
【0096】
より好ましくは、R及びR’はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、及びフェニル基から選択される。
【0097】
1型の化合物の好ましい例は、
−以下の式を有する、POHOP−SAとも呼ばれる、1,6−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサン:
【化6】

−以下の式を有する、PODOP−SAとも呼ばれる1,10−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−デカン:
【化7】

−以下の式を有する、POTDE−SAとも呼ばれる1,2−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサデカン:
【化8】

−以下の式を有する、POTCOP−SAとも呼ばれる、4,8−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン(異性体混合物):
【化9】

−以下の式を有する、POMCMOP−SAとも呼ばれる1,4−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−シクロヘキサン:
【化10】

−以下の式を有する、POPEGOP−SAとも呼ばれる1,n−ビス−(4−アジドスルホニルフェニル)−ポリエチレングリコールエーテル:
【化11】

である。
【0098】
好ましくは、2型の本発明の化合物において、L’は、有利には、硫黄、窒素、又は酸素等のヘテロ原子を含む官能基である。より好ましくは、Y’’は、以下の基:−O−、−NH−、−NR−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)NR’−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NR’−、−NRC(=O)NH−、−NRC(=O)O−、−NRC(=O)NR’−、−S−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−、及び−NRC(=O)−から選択され、R及びR’はアルキル基又はアリール基である。
【0099】
より好ましくは、R及びR’はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、及びフェニル基から選択される。
【0100】
本発明の2型の化合物の好ましい例は:
−以下の式の、PBSAとも呼ばれる、4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−3−ペンタデシルジフェニルエーテル:
【化12】

−以下の式の、H/ODPO−BSAとも呼ばれる、2脂肪アルキル置換DPO−BSA(即ち、4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−2−ヘキサデシルジフェニルエーテル及び4,4’−ビス−(アジドスルホニル)−2−オクタデシルジフェニルエーテルの混合物):
【化13】

である。
【0101】
本発明の混合型の化合物(1型及び2型の両方)の好ましい例は:
−以下の式の、PDPOHOPDP−SAとも呼ばれる、1,6−ビス−(4−アジドスルホニル−3−ペンタデシルフェノキシ)ヘキサン:
【化14】

である。
【0102】
本発明の化合物は、場合により更なる化合物Cの存在下で、出発化合物A及びBを反応させることによって調製することができる。化合物A及びBは置換芳香族化合物である。これらは同一である又は異なることができる。これらはスルホニルアジド置換基を有することができる。あるいは、スルホニルアジド基は、1つ以上の後反応ステップで提供することができる。
【0103】
特に、上の式(I’’)を有する1型の化合物を製造するために、出発化合物A及びBは同一の化合物であり、追加化合物Cとしての、式Z−Sp’’−Z(式中、Sp’’は上記で定義した通りであり、Zは反応性官能基である。)の化合物を使用することができる。
【0104】
より詳細には、1型の化合物のいくつかは、以下の第1のステップを含む、いわゆる経路1に従って調製することができる:
【化15】
【0105】
上のスキームにおいて、Mは金属カチオン、例えばナトリウム又はカリウムを表す。Spはスペーサ(上でSp’’と示す。)であり、Lは式(I)とは異なる意味を有する。
【0106】
一実施形態により、LはO、NH、又はNRから選択され、ここでRは上記で定義したようなアルキル基又はアリール基であり、XはCl、Br、I、−NCO、−OC(=O)Cl、及び−NR’C(=O)Clから選択され、ここでR’は上記で定義したようなアルキル基又はアリール基である。
【0107】
別の実施形態により、LHはSH又はSであり、XはCl、Br、又はIである。
【0108】
本反応は、MOH、MCO等の無機塩基の存在下で、又は有機塩基の存在下で行うことができる。
【0109】
LがSである場合、次いで、例えば硫化物を過酸化水素で処理することによって、この連結基をSOに酸化することができる。
【0110】
次いで第1ステップの後に、得られた化合物を塩素化剤と反応させる第2のステップを行う。塩素化剤は、例えば塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化ホスホリル、ホスゲン、塩化オキサリルから選択することができ、好ましくは塩化チオニルである。
【0111】
次いで第2のステップの後に、得られた塩化スルホニル化合物をアジド源、好ましくはアジ化ナトリウムと反応させる第3のステップを行う。第2及び第3のステップは、以下のように説明することができる:
【化16】
【0112】
経路1によって式(I’’)の化合物を得ることができ、ここでYは、−O−、−NH−、−NR−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)NR’−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)NR’−、−NRC(=O)NH−、−NRC(=O)O−、−NRC(=O)NR’−、−S−、及び−SO−である。
【0113】
1型の化合物は、以下のステップを含む、いわゆる経路2に従って調製することができる:
【化17】
【0114】
上のスキームにおいて、LH、L、及びXは、経路1と同じ意味を有する。本反応は、MOH、MCO等の無機塩基の存在下で、又は有機塩基の存在下で行うことができる。
【0115】
経路2によって、いずれの後塩素化又はアジド化ステップも不要となる。
【0116】
1型の他の化合物は、以下の第1のステップを含む、いわゆる経路3に従って調製することができる:
【化18】
【0117】
上のスキームにおいて、XはO、NH、又はNRであり、Rは上記で定義したようなアルキル基又はアリール基である。
【0118】
本反応は、MOH、MCO等の無機塩基の存在下で、又は有機塩基の存在下で行うことができる。
【0119】
次いで第1ステップの後に、得られた化合物をアジ化ナトリウムと反応させる第2のステップを行う。第2のステップは、以下のように説明することができる。
【化19】
【0120】
経路3によって、Yが−C(=O)O−、−C(=O)NH−又は−C(=O)NR−である、式(I’’)の化合物を得ることができる。
【0121】
1型の他の化合物は、以下の第1のステップを含む、いわゆる経路4に従って調製することができる:
【化20】
【0122】
上のスキームにおいて、ALKは、例えばメチル基等のアルキル鎖である。
【0123】
本反応は、AlCl又はいずれかのルイス酸の存在下で行うことができる。
【0124】
次いで第1のステップの後に、得られた化合物をCl及びHOの混合物と反応させる第2のステップ、次いで、得られた塩化スルホニルをアジ化ナトリウム等のアジド源と反応させる第3のステップを行う。第2及び第3のステップは、以下のように説明することができる:
【化21】
【0125】
経路4によって、Yが−C(=O)−である、式(I’’)の化合物を得ることができる。
【0126】
2型の化合物のいくつかは、以下の第1のステップを含む、いわゆる経路5に従って調製することができる:
【化22】
【0127】
本スキームにおいて、Xは、Cl又はBr又はIである。R及びR’は、上記で定義したように、アルキル基又はアリール基である。R及びR’の一方は省略することができる。R及びR’の少なくとも一方は、上記で定義したスペーサSp若しくはSp’であるか、又はスペーサSp若しくはSp’を含有する。好ましくは、−Rが−Sp−Hであり、又は−R’が−Sp’−Hである。
【0128】
本反応ステップは、好ましくは、例えば銅又はパラジウムを主成分とする遷移金属触媒によって触媒される。
【0129】
次いで第1ステップの後に、得られた化合物をクロロスルホン化剤と反応させる第2のステップを行う。例えば、直接クロロスルホン化のための少なくとも4当量のクロロスルホン酸、又は少なくとも2当量のクロロスルホン酸若しくは硫酸と後続する経路1に記載したような塩素化、又は塩化スルフリル等が使用され得る。
【0130】
次いで第2のステップの後に、得られた化合物をアジ化ナトリウム等のアジド源と反応させる第3のステップを行う。第2及び第3のステップは、以下のように説明することができる:
【化23】
【0131】
このため経路5によって、L’が−O−である、2型の化合物を調製することができる。
【0132】
2型の化合物のいくつかは、以下の第1及び第2のステップを含む、いわゆる経路6に従って調製することができる:
【化24】
【0133】
本スキームにおいて、R及びR’は、上記で定義したようなアルキル基又はアリール基である。R及びR’の一方は省略することができる。R及びR’の少なくとも一方は、上記で定義したスペーサSp若しくはSp’であるか、又はスペーサSp若しくはSp’を含有する。Lは、本スキームにおいて上記とは異なる意味を有する。
【0134】
第1のステップにおいて、LHはOH、NH、又は−NR’’Hであり、R’’は、R及びR’と同じ一般的定義を有するアルキル基又はアリール基である。
【0135】
第2のステップにおいて、LXは、−OC(=O)Cl、−N=C=O、又は−NR’C(=O)Clであり、R’’は上記で定義した通りであり、L’Hは、OH、NH、又は−NR’’’Hであり、ここでR’’’は、R及びR’と同じ一般的定義を有するアルキル基又はアリール基である。
【0136】
第2のステップで得た化合物において、Lは異なる意味を有し、−OC(=O)O−、−OC(=O)NH−、−OC(=O)NR’’’−、−NHC(=O)O−、−NR’’C(=O)O−、−NHC(=O)NH−、−NHC(=O)NR’’’−、−NR’’C(=O)NH−又は−NR’’C(=O)NR’’’−であることができ、R’’及びR’’’は上記で定義した通りである。
【0137】
第2のステップの後に、経路5の第2のステップ及び第3のステップと同様である、クロロスルホン化の第3のステップ及びアジ化ナトリウムと反応させる第4ステップを行う。
【0138】
2型の化合物のいくつかは、以下の第1のステップを含む、いわゆる経路7に従って調製することができる:
【化25】
【0139】
本スキームにおいて、Xは、Cl又はBr又はIであり、R及びR’は、上記で定義したようなアルキル基又はアリール基である。R及びR’の一方は省略することができる。R及びR’の少なくとも一方は、上記で定義したスペーサSp若しくはSp’であるか、又はスペーサSp若しくはSp’を含有する。本反応ステップは、好ましくは、例えば銅又はパラジウムを主成分とする遷移金属触媒によって触媒される。
【0140】
本第1のステップの後に、経路5の第2のステップ及び第3のステップと同様である、クロロスルホン化の第2のステップ及びアジ化ナトリウム等のアジド源と反応させる第3のステップを行う。
【0141】
経路7によって、式(II)中のL’が共有結合である、2型の化合物を得ることができる。
【0142】
2型の化合物のいくつかは、以下の第1のステップを含む、いわゆる経路8に従って調製することができる:
【化26】
【0143】
本スキームにおいて、Xは、Cl又はBr又はIであり、R及びR’は、上記で定義したようなアルキル基又はアリール基であり、Lは、−S−又は−SO−である。反応は、Mが金属元素(例えば、ナトリウム又はカリウム)である化合物MSの存在下及び触媒、好ましくは、例えば銅を主成分とする遷移金属触媒の存在下で行う。
【0144】
次いで、−SO−連結基が望ましい場合には、例えば硫化物を過酸化水素で処理することによって、酸化ステップを行う。
【0145】
次いで、経路5と同様に、クロロスルホン化の第2のステップ及びアジ化ナトリウム等のアジド源との反応の第3のステップを行う。
【0146】
経路8によって、式(II)のL’が−S−又は−SO−である、2型の化合物を得ることができる。
【0147】
1型の化合物のいくつかは、以下の第1のステップ:後続の求核置換のためのジオールの活性化を含む、いわゆる経路9に従って、例えばメシラート又はトシラート等のスルホネートとして調製することができる。
【0148】
次いで第1のステップの後に、活性化ジオールを2当量のヒドロキシアレーンスルホン酸、例えば4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸によって置換する第2のステップを行う。
【0149】
次いで第2のステップの後に、スルホン酸を塩化チオニルで処理することによって、例えば塩化スルホニルとして、アジド化のためのスルホン酸基の活性化の第3のステップを行う。
【0150】
次いで第3のステップの後に、活性化スルホン酸をアジド、例えばアジ化ナトリウムと反応させることによって、スルホニルアジド形成の第4のステップを行う。
【0151】
経路9によって、YがPOTCOP−SAを形成する4,8−ビスヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン又はPOMCMOP−SAを形成する1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等のジオールである、式(I’’)の化合物を得ることができる。
【0152】
芳香族構成ブロックAr及びAr’がフェニル基ではなく、むしろ異なるアリール基を主成分とする本発明の化合物を調製するために、同様の反応経路が類推によって用いられ得る。
【0153】
本発明の1つ以上の化合物は、架橋剤組成物中に配合することができる。一実施形態により、本架橋剤組成物は、いずれの鈍化剤も含まない。代替的な実施形態により、本架橋剤組成物は、鈍化剤を含む。鈍化剤は、国連試験基準マニュアルに定義された試験に従って、ビススルホニルアジド化合物の爆発性を低下させる不活性化合物として定義される。
【0154】
鈍化剤は、有機化合物又は無機化合物であることができる。有機化合物は、溶媒又は例えば「イルガノックス」(登録商標)1010等の固体であることができる。無機化合物は、例えば珪藻土又はシリカゲルであることができる。
【0155】
本発明で使用する鈍化剤の量は、本発明の化合物を確実に安全に取扱い及び使用するために、並びに非爆発性物質として輸送分類されるために必要とされる鈍化剤の量に応じて、広範囲に変化させることができる。特に、本発明の組成物中の鈍化剤の量は、0〜50%(w/w)、好ましくは0〜40%(w/w)、より好ましくは0〜30%(w/w)、またより好ましくは0〜20%(w/w)、及び最も好ましくは0〜10%(w/w)である。
【0156】
本発明の化合物及び組成物は、ポリオレフィン(特にポリプロピレン及びポリエチレン)等のポリマーの製造、ポリマーの架橋及び合成ゴムの製造において有用である。
【実施例】
【0157】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【0158】
実施例1:POHOP−SAの合成
【化27】
【0159】
ステップ1:1,6−ビス−(4−スルホフェノキシ)−ヘキサン二ナトリウム塩(POHOP−SONa)
【化28】
【0160】
水480g中の水酸化ナトリウム320の溶液を、水3120g中の4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム1858g及び臭化テトラブチルアンモニウム12.8gの溶液に、25℃にてゆっくり添加した。本混合物に1,6−ジブロモヘキサン976gを1時間以内に添加した。混合物を100℃まで加熱し、15時間撹拌した。濃厚スラリーを水400mlで希釈し、100℃にてさらに7時間撹拌した。懸濁液を水11.6Lで希釈し、100℃で8時間撹拌し、次いで濾過するために室温まで冷却した。固体を水4L、続いてアセトン4Lで洗浄し、50℃にて乾燥させた。アッセイにより92.5%(w/w、HPLC)の白色固体1599gを単離し、化学収率は80%であった。
【0161】
分析データ:
融点345℃超;H−NMR(300MHz in DO):7.65ppm(d,4H),6.97ppm(d,4H),4.02ppm(t,4H),1.70ppm(broad quintet,4H),1.40ppm(broad,4H)。
【0162】
ステップ2:1,6−ビス−(4−クロロスルホニルフェノキシ)−ヘキサン(POHOP−SC)
【化29】
【0163】
POHOP−SONa 1471g、塩化チオニル7kg及びジメチルホルムアミド(DMF)7gの混合物を75℃にて17時間加熱した。塩化チオニル3.5kgを50℃及び100ミリバールにおける蒸留によって除去し、それぞれトルエン2Lを3回添加した後、蒸留を続けて、蒸留残留物2.3kgを得た。残留物をトルエン1.5Lで希釈し、17℃まで冷却した。固体を濾別し、トルエン1.5Lで洗浄した。湿潤濾過ケーキを水2.5L中でスラリー化して、塩及び極微量の残留塩化チオニルを除去した。固体を濾過し、水2.5Lで洗浄して、40℃にて乾燥させた。白色固体1329gを得た。生成物の質量に基づく化学収率は99%である。
【0164】
分析データ:
融点:126〜128℃;H−NMR(300MHz in CDCl):7.97ppm(d,4H),7.05ppm(d,4H),4.11ppm(t,4H),1.90ppm(broad quintet,4H),1.60ppm(broad,4H)。
【0165】
ステップ3:1,6−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−ヘキサン(POHOP−SA)
【化30】
【0166】
水3.25L中のアジ化ナトリウム406gの溶液を16.25Lアセトン中のPOHOP−SC 1328gの溶液に、15分以内に添加した。混合物を室温にて53時間撹拌し、次いで水14.8Lで希釈して塩を溶解させた。固体を濾過により回収し、水9Lで洗浄した。40℃にて2日間乾燥した後、白色固体1301gを単離した。化学収率は、NMRによる96.6%重量/重量のアッセイ測定に基づいて98%であった。
【0167】
分析データ:
融点:93〜95℃;H−NMR(300MHz in CDCl):7.91ppm(d,4H),7.10ppm(d,4H),4.12ppm(t,4H),1.90ppm(broad quintet,4H),1.60ppm(broad,4H)。
【0168】
実施例2:DPO−BSAと比較したPOHOP−SAの安全性試験:
未希釈POHOP−SAは、衝撃エネルギー40JのBAMドロップハンマー試験にて衝撃感受性でなく、摩擦力360NのBAM摩擦装置にて摩擦感受性でもない。
【0169】
未希釈POHOP−SAは、国連試験基準マニュアル、パートI、第V版、国連、2009、p.33 ff(セクション11.5.1)に従う、ボアホール径2mmでのケーネン試験によると、爆発性である。
【0170】
5%「イルガノックス」(登録商標)1010を含むPOHOP−SAは、ボアホール径2mmでのケーネン試験で、なお爆発性であるが、10%「イルガノックス」(登録商標)1010を含有する混合物中では、もはや爆発性ではない。
【0171】
比較のために、安全性試験により、POHOP−SAは、十分な鈍化のためにわずか10%の「イルガノックス」(登録商標)1010を必要とするのに対して、比較例のDPO−BSAでは、33%を超える「イルガノックス」(登録商標)1010が必要である。
【0172】
実施例3:PODOP−SAの合成
【化31】
【0173】
ステップ1:1,10−ビス−(4−スルホフェノキシ)−デカン二ナトリウム塩(PODOP−SONa)
【化32】
【0174】
水60g中の水酸化ナトリウム40gの溶液を、水198g及びDMSO 218gの混合物中の4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム232.2gの希薄懸濁液に25℃にてゆっくり添加した。本混合物に1,10−ジブロモデカン150gを20分以内に添加した。混合物を113℃にて24時間還流させ、次いで室温まで冷却して濾過した。固体を水0.9L、続いてアセトン1Lで洗浄して、50℃にて乾燥させた。純度94.1面積%(HPLC)の白色固体244.6gを単離し、化学収率は87%であった。
【0175】
分析データ:
融点350℃超;H−NMR(300MHz in DMSO):7.49ppm(d,4H),6.84ppm(d,4H),3,95ppm(t,4H),1.70ppm(m,4H),1.25−1.45ppm(broad,12H)。
【0176】
ステップ2:1,10−ビス−(4−クロロスルホニルフェノキシ)−デカン(PODOP−SC)
【化33】
【0177】
PODOP−SONa 244.1g、塩化チオニル821g及びDMF 2.4gの混合物を75℃にて7時間加熱した。塩化チオニル330gを、50℃及び100ミリバールにおいて蒸留によって除去した。残渣を石油エーテル30/50 900mLで25℃にて希釈した。24時間後に固体を濾別し、石油エーテル30/50 500mlによって洗浄した。湿潤濾過ケーキを水910mL中でスラリー化して、塩及び極微量の残留塩化チオニルを除去した。固体を濾過し、水0.5l水で洗浄して、40℃にて乾燥させた。淡褐色固体228.3gを得た。生成物の質量に基づく化学収率は98%であった。
【0178】
分析データ:
融点:63〜65℃;1H−NMR(300MHz in CDCl3):7.98ppm(d,4H),7.05ppm(d,4H),4.08ppm(t,4H),1.85ppm(broad quintet,4H),1.30−1.60ppm(broad,12H)。
【0179】
ステップ3:1,10−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシ)−デカン(PODOP−SA)
【化34】
【0180】
水609mL中のアジ化ナトリウム69.7gの溶液を、アセトン3.04L中のPODOP−SC 227.7gの溶液に30分以内に添加した。混合物を室温にて24時間撹拌し、次いで水2.53Lの水で希釈して塩を溶解させた。固体を濾過により回収し、水0.6Lで洗浄した。40℃にて2日間乾燥した後、淡褐色固体210gを単離した。粗生成物208gをアセトン330gに溶解させた。活性炭1g及び珪藻土2gを添加し、混合物を55℃にて濾過した。濾液を26℃まで冷却して結晶化が始まると、温度が29℃まで上昇した。この温度にて、水208mLを混合物に添加し、固体を濾過により回収して、水208mLで洗浄した。40℃にて乾燥させると、純度98.4面積%のオフホワイト色PDOOP−SA 204.7gを得た。化学収率は88%であった。
【0181】
分析データ:
融点:89〜91℃;H−NMR(300MHz in DMSO):7.93ppm(d,4H),7.23ppm(d,4H),4.11ppm(t,4H),1.74ppm(broad quintet,4H),1.25−1.45ppm(broad,12H)。
【0182】
実施例4:DPO−BSAと比較したPODOP−SAの安全性試験
未希釈PODOP−SAは、衝撃エネルギー40JのBAMドロップハンマー試験にて衝撃感受性でなく、摩擦力360NのBAM摩擦装置にて摩擦感受性でもない。
【0183】
未希釈PODOP−SAは、ボアホール径2mmでのケーネン試験によって、爆発性ではない。
【0184】
時間/圧力試験により、未希釈PODOP−SAは迅速に爆燃することはない。
【0185】
これらの安全性試験により、PODOP−SAは爆発性ではなく、輸送規制に従ってクラス1に含める必要がないため、鈍化する必要は一切ない。
【0186】
実施例5:POMCMOP−SAの合成
【化35】
【0187】
ステップ1:1,4−ビス−(メタンスルホニルオキシメチル)−シクロヘキサン(MCM−OMs)
【化36】
【0188】
1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン(シス及びトランス異性体の混合物)46.9g、トリエチルアミン79.3g、及びTHF 350mlの冷混合物に、塩化メタンスルホニル84.1gを最高25℃にてゆっくり添加した。THF 200ml及び塩化メタンスルホニル10mlを添加し、水400mlによって混合物を反応停止させた。固体を濾過により回収し、40℃にて乾燥させて、白色固体78.2gを得た(化学収率80%;2種の異性体の混合物)。第2の回収分8.5g(化学収率9%)を、一晩放置時に生成した結晶として母液から単離した。この少量の生成物をX線結晶学によってシス異性体であると判定した。主な画分の主要な化合物は、トランス異性体(82:18)であった。
【0189】
分析データ:
H−NMR(300MHz in CDCN):4.14/4.04ppm(d,4H),3,02ppm(s,6H),1.1−2.2ppm(several signals,10H)。
【0190】
ステップ2:1,4−ビス−(4−スルホフェノキシメチル)−シクロヘキサン二ナトリウム塩(POMCMOP−SONa)
【化37】
【0191】
水230ml中の水酸化ナトリウム10.8gの溶液による4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム69.3gの懸濁液を、DMSO 220ml中のMCM−OMs 38.7gの溶液に25℃にて添加した。混合物を120℃まで加熱して、合計28時間撹拌した。スラリーを5℃まで冷却して濾過した。固体をアセトンで洗浄し、水2lから再結晶した。35℃での濾過によって第1の回収分27.4g(化学収率43%)を単離して、5℃にて第2の回収分6.4g(化学収率10%)を単離した。単離した生成物は、大半がトランス異性体である、出発物質異性体混合物の82:18組成物と比較して、収率のために、1種の異性体のみを含有していた。
【0192】
分析データ:
H−NMR(300MHz in DO):7.66ppm(d,4H),7.00ppm(d,4H),3.89ppm(d,4H),1.85ppm(d,4H),1.73(broad,2H),1.60ppm(quintet,4H)。
【0193】
ステップ3:1,4−ビス−(4−クロロスルホニルフェノキシメチル)−シクロヘキサン(POMCMOP−SC)
【化38】
【0194】
POMCMOP−SONa 27.4g、塩化チオニル588g、及びジメチルホルムアミド(DMF)0.8gの混合物を50℃にて6時間加熱して、室温にて60時間撹拌した。過剰量の塩化チオニルを50℃にて真空蒸留することによって除去した。残りの固体をジクロロメタンと氷水の混合物中で撹拌した。濾過によって、白色固体17.3g(化学収率64%)を得た。有機相を沸騰濃縮して懸濁液とし、固体が溶解するまで加熱し、冷却して、第2の回収分3.1g(化学収率11%)生成物を結晶化させた。
【0195】
分析データ:
H−NMR(300MHz in CDCl):8.00ppm(d,4H),7.09ppm(d,4H),3.95ppm(d,4H),2.03ppm(d,4H),1.91(broad,2H),1.22ppm(quintet,4H)。
【0196】
ステップ4:1,4−ビス−(4−アジドスルホニルフェノキシメチル)−シクロヘキサン(POMCMOP−SA)
【化39】
【0197】
水11ml中のアジ化ナトリウム1gの溶液を、アセトン20ml中のPOMCMOP−SC 3.1gの溶液に添加した。混合物をアセトン20mlで希釈して、室温にて24時間撹拌した。アジ化ナトリウム0.1gを添加した後、混合物をさらに12時間撹拌した。固体を濾過により回収し、水で洗浄して、20ミリバールにて乾燥させた。生成物を定量的収率で単離した。
【0198】
分析データ:
融点:144℃(DSC)。H−NMR(300MHz in CDCl):7.91ppm(d,4H),7.10ppm(d,4H),3.94ppm(d,4H),2.03ppm(d,4H),1.90(broad,2H),1.23ppm(quintet,4H)。
【0199】
実施例6:DPO−BSAと比較したPOMCMOP−SAの限定安全性試験
未希釈POMCMOP−SAは、DSC測定で168℃にて開始すると1306J/gのエネルギーを放出する。未希釈POMCMOP−SAは、衝撃エネルギー40JのBAMドロップハンマー試験にて衝撃感受性でなく、摩擦力360NのBAM摩擦装置にて摩擦感受性でもない。
【0200】
比較例:DPO−BSAの爆発特性
【化40】
【0201】
未希釈DPO−BSAは、衝撃エネルギー15JのBAMドロップハンマー試験にて衝撃感受性である(市販の爆発性TNTと同様)が、摩擦力360NのBAM摩擦装置では摩擦感受性でない。
【0202】
未希釈DPO−BSAは、ボアホール径2mmでのケーネン試験によって、爆発性である。
【0203】
安全性試験により、DPO−BSAは、十分な鈍化のために、33%を超える「イルガノックス」(登録商標)1010を必要とする。
【0204】
実施例7:ポリプロピレン架橋へのPOHOP−SA及びPODOP−SAの利用
ポリプロピレン(「モプレン」(登録商標)HP 500N)をPOHOP−SA又はPODOP−SAによって部分架橋させた。このために、質量比90:10のPOHOP−SA及び「イルガノックス」(登録商標)1010又はPODOP−SAのドライブレンドを、鈍化剤粉末を用いずにポリプロピレンを用いて調製した。比較実験では、質量比24:76のDPO−BSAの「イルガノックス」(登録商標)1010との混合物を、ポリプロピレン(「モプレン」(登録商標)HF 500)を含むPOHOP−SA及びPODOP−SAと比較して、等モル量のDPO−BSAにおいて使用した。ポリプロピレンとドライブレンドとの混合物を二軸押出機に100〜230℃にて通過させた。押出したポリマーを水浴中で冷却し、細断して小片とした。
【0205】
改質ポリプロピレンの機械特性データ(引張弾性率、引張応力、引張歪)は、Zwick社の試験機UPM1455を用いて測定した。表1及び表2に示す結果から、新規架橋剤POHOP−SA及びPODOP−SAは、比較例のDPO−BSAと同様の性能を示すことが明らかである。引張弾性率の上昇は、非架橋ポリプロピレンと架橋ポリプロピレンとの間で測定する。引張弾性率、引張応力、及び引張歪みは、周波数0.04rad/sで測定する。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2】
【0208】
ポリプロピレン及びPOHOP−SA又はPODOP−SAで改質したポリプロピレンについて、DIN−EN ISO 179に従ってシャルピーノッチ衝撃強さの試験を行った(表3参照)。いずれの架橋剤によっても、非架橋ポリプロピレンに対するノッチ衝撃強さが上昇し、ポリプロピレンに対して架橋剤比が高くなると、結果としてノッチ衝撃強さが上昇する。架橋。該効果は、POHOP−SAよりもPODOP−SAでより顕著である。
【0209】
【表3】
【0210】
実施例8:高密度ポリエチレンの架橋でのPOHOP−SA及びPODOP−SAの利用
高密度ポリエチレン(「ルポレン」(登録商標)5031 L Q 449 K−HDPE)をPOHOP−SA又はPODOP−SAによって部分架橋した。このために、質量比90:10のPOHOP−SA及び「イルガノックス」(登録商標)1010又はPODOP−SAのドライブレンドを、鈍化剤を用いずにHDPE粉末を用いて調製した。比較実験では、質量比24:76のDPO−BSAの「イルガノックス」(登録商標)1010との混合物を、HDPEを含むPOHOP−SA及びPODOP−SAと比較して、等モル量のDPO−BSAにおいて使用した。HDPE及びドライブレンドの混合物を100〜200℃にて二軸押出機に通過させた。押出したポリマーを水浴中で冷却し、細断して小片とした。
【0211】
ポリプロピレンについては、表4に示す結果から、新規架橋剤POHOP−SA及びPODOP−SAは、比較例のDPO−BSAと同様の性能を示すことが明らかである。
【0212】
【表4】
【0213】
部分架橋したHDPEのレオロジー特性は、Rheometrics社のプレートレオメータ(プレート直径25mm;プレート距離1mm)を用いて、窒素雰囲気中、150℃にて測定した。
【0214】
非架橋HDPEと比較して、複素粘度は、HDPE 1kg当たりのPOHOP−SAのモル量が増加すると上昇する(図1参照)。非架橋HDPEと比較して、複素粘度は、HDPE 1kg当たり2.629mmolのPOHOP−SAで、0.04rad/sの周波数にてほぼ7倍上昇した。
【0215】
図2及び図3を参照すると、HDPE 1kgに対して低レベルの0.329mmol及び0.657mmolのPOHOP−SAでは、損失弾性率(G’’)は緩やかに上昇したのに対して、貯蔵弾性率(G’)は著しく上昇した(図2)。この上昇は、HDPE 1kgでは2.629mmolのPOHOP−SAで極めて著しい(図3)。
【0216】
PODOP−SAによる結果は、POHOP−SAと非常によく似ていた(図4図5、及び図6を参照)。
【0217】
複素粘度に対するPODOP−SAの効果は、HDPE 1kgについて2.629mmolの架橋剤での参照架橋剤DPO−BSAの効果より大きかった(図7)。
【0218】
損失及び貯蔵弾性率に対するPODOP−SAの効果は、HDPE 1kgについて2.629mmolの架橋剤での参照架橋剤DPO−BSAの効果よりも大きかった(図8)。
【0219】
DPO−BSAと比較して、HDPEに対する同モル量の新規アジドによって、より高い損失弾性率及び/又は貯蔵弾性率の値が得られる。損失弾性率及び/又は貯蔵弾性率の所与の目標値のためには、DPO−BSAと比較して、新規アジドは、より低いモル量で十分である。
【0220】
HDPE及び部分架橋HDPEの溶融強度を、どちらもGottfert社製である、「Rheograph」(登録商標)2000型高圧毛細管レオメータと併用した「Rheotens」(登録商標)型の伸張試験機によって測定した。溶融ストランドを、11.3mm/秒の一定速度にてノズルを通して押出した。伸張は、ノズルから125mmの距離に設置した「Rheotens」(登録商標)装置を用いて測定した。溶融ストランドが剥ぎ取られるまで、引離し(pull−off)ロールを2.4mm/sで加速した。
【0221】
非架橋HDPEは0.013Nの引離し力を有し、溶融強度の相対的な尺度としての引離し速度は320〜360m/秒である。
【0222】
2.629mmol/kg POHOP−SA及びPODOP−SAのどちらによっても、引離し力が3倍に上昇して0.04Nとなる。
【0223】
POHOP−SAでは、引離し速度は2倍に上昇する。PODOP−SAでは、引離し速度は非架橋の場合と同レベルに留まる。
【0224】
POHOP−SAは、HDPEの処理を有意により高い速度に改善できるという、更なる利点を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8