(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、及び(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量100重量部のうち、(A)ポリ乳酸を30重量部以上60重量部以下、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートを25重量部以上45重量部以下、(C)脂肪族芳香族ポリエステルを5重量部以上25重量部以下含有し、
更に(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量100重量部に対して、(D)ペンタエリスリトールを0.05重量部以上20重量部以下、(E)珪酸塩を10重量部以上40重量部以下、(F)エポキシ基を有する相容化剤を0重量部以上3重量部以下含有していることを特徴とする生分解性ポリエステル樹脂組成物。
前記(E)珪酸塩がタルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及びスメクタイトから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物。
前記(C)脂肪族芳香族ポリエステルが、100〜130℃の融点を有し、かつ、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート、及びポリブチレンサクシネートテレフタレートから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物。
前記(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、及びポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物の実施の一形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
[生分解性ポリエステル樹脂組成物]
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤を含有する生分解性ポリエステル樹脂組成物である。
【0020】
本発明の(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤を含有する生分解性ポリエステル樹脂組成物は、従来のポリヒドロキシアルカノエート樹脂を含む樹脂組成物では得られなかった、優れた加工性を有するので、成形体とする場合に、溶融時の樹脂温度や金型などの冷却温度や時間を幅広く設定できる。このような点で優れた加工特性を有している。
【0021】
以下に、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルと(D)ペンタエリスリトールと(E)珪酸塩と(F)エポキシ基を有する相容化剤について説明する。
【0022】
[(A)ポリ乳酸]
本開示のポリ乳酸は、下記一般式(1)
【化1】
で示される繰り返し単位を含むポリ乳酸から選択される1種以上である。
【0023】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物に用いられるポリ乳酸は、前記一般式(1)の繰り返し単位を、全繰り返し単位の50モル%以上有することが好ましく、その他の繰り返し構造を含んでいてもよい。
【0024】
ポリ乳酸は、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体であるステレオコンプレックスでも良い。
【0025】
本開示のポリ乳酸の分子量は、目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであれば、その分子量は特に制限されない。しかしながら、分子量が低いと得られる成形体の強度が低下する。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難になる。それらを勘案して本開示のポリ乳酸の重量平均分子量の範囲は、5万〜30万が好ましく、10万〜25万がより好ましい。
【0026】
なお、ポリ乳酸の重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0027】
本開示のポリ乳酸としては、市販のポリ乳酸を用いることができ、具体的には、例えばNatureWorks社「Ingeo」(登録商標)、浙江海正生物材料社「REVODE」(登録商標)、Corbion社品等を用いることが出来る。
【0028】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物におけるポリ乳酸の使用量(含有量)は、得られる成形体のバリ発生の抑制効果に優れる点で、その下限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部のうち、30重量部以上であり、好ましくは40重量部以上である。また、得られる成形体の耐熱性に優れる点で、その上限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部のうち、60重量部以下であり、好ましくは50重量部以下である。
【0029】
[(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート]
本開示のポリ−3−ヒドロキシアルカノエートは、下記一般式(2)
【化2】
(式中、RはC
nH
2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)
で示される繰り返し単位を含む、微生物から生産されるポリ−3−ヒドロキシアルカノエートから選択される1種以上であることが好ましい。
【0030】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物に用いられるポリ−3−ヒドロキシアルカノエートは、前記一般式(2)の繰り返し単位を、全繰り返し単位の50モル%以上含んでいればよく、その他の繰り返し構造を含んでいてもよい。
【0031】
ここで補足すると、一般的なポリヒドロキシアルカノエート(PHA)として、微生物から生産される微生物産生PHAの他に、化学合成により得られるPHAが存在する。微生物産生PHAは、その構造単位(モノマー構造単位)はD体(R体)のみであって、光学活性を有するのに対し、化学合成により得られるPHAは、D体(R体)及びL体(S体)から誘導された構造単位(モノマー構造単位)がランダムに結合しており、光学的に不活性である。
【0032】
ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートを生産する微生物としては、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート類生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(P3HB)生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)などの天然微生物が知られており、これらの微生物ではP3HBが菌体内に蓄積される。
【0033】
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体生産菌としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)などが知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP−6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821−4830(1997))などがより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいポリ−3−ヒドロキシアルカノエートに合わせて、各種ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み替え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0034】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物で用いられるポリ−3−ヒドロキシアルカノエートの分子量は、目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであれば、その分子量は特に制限されない。しかしながら、分子量が低いと得られる成形体の強度が低下する。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難になる。それらを勘案して本開示のポリ−3−ヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量の範囲は、20万〜250万が好ましく、25万〜200万がより好ましく、30万〜100万がさらに好ましい。
【0035】
なお、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0036】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物で使用するポリ−3−ヒドロキシアルカノエートとしては、3−ヒドロキシブチレートが80モル%以上からなる重合樹脂であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上からなる重合樹脂であり、微生物によって生産された物が好ましい。具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)等が挙げられる。
【0037】
特に、加工性あるいは成形体の物性の観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)が好適に使用し得る。
【0038】
前記ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートにおいて、3−ヒドロキシブチレート(3HB)と、これと共重合しているコモノマー(例えば、3−ヒドロキシバレレート(3HV)、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)、4−ヒドロキシブチレート(4HB))との構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、加工性や生産性、あるいは成形体品質等の観点から、3−ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3〜80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95/5〜85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。
【0039】
ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート中の各モノマー比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号に記載の方法により求めることが出来る。
【0040】
ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートの使用量(含有量)は、得られる成形体の耐熱性に優れる点で、その下限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部のうち、25重量部以上であり、好ましくは30重量部以上である。また、得られる成形体のバリ発生の抑制効果に優れる点で、その上限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部のうち、45重量部以下であり、好ましくは40重量部以下である。
【0041】
[(C)脂肪族芳香族ポリエステル]
本開示の脂肪族芳香族ポリエステルは、脂肪族化合物及び芳香族化合物を繰り返し単位として含むポリエステルであれば特に限定されないが、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とからなるものが好ましい。脂肪族芳香族ポリエステルは、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
本開示の脂肪族芳香族ポリエステルのモノマーとしての脂肪族ジオールとしては、ブタンジオールなど、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及びコハク酸など、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸などが挙げられる。
【0043】
脂肪族芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート及びポリブチレンサクシネートテレフタレートなどが挙げられる。
【0044】
本開示の脂肪族芳香族ポリエステルの融点は100〜130℃であることが好ましく、110〜130℃であることがより好ましい。融点が100℃未満の場合、生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の耐熱性が低くなる場合がある。融点が130℃を超える場合、生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の延性や靭性が低くなる場合がある。
【0045】
本開示の脂肪族芳香族ポリエステルの分子量は、目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであれば、その分子量は特に制限されない。しかしながら、分子量が低いと得られる成形体の強度が低下する。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難になる。それらを勘案して本開示の脂肪族芳香族ポリエステルの重量平均分子量の範囲は、5万〜30万が好ましく、10万〜20万がより好ましい。
【0046】
なお、脂肪族芳香族ポリエステルの重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0047】
本開示の脂肪族芳香族ポリエステルとしては、市販の脂肪族芳香族ポリエステルを用いることができ、具体的には、例えばBASF社「Ecoflex」(登録商標)、NOVAMONT社品、イーストマンケミカル社品等を用いることが出来る。
【0048】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物における脂肪族芳香族ポリエステルの使用量(含有量)は、得られる成形体の耐熱性と延性と靭性に優れる点で、その下限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部のうち、5重量部以上であり、好ましくは10重量部以上である。また、加工性に優れる点で、その上限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量100重量部のうち、25重量部以下であり、好ましくは20重量部以下である。
【0049】
[(D)ペンタエリスリトール]
本開示において、ペンタエリスリトールとは、多価アルコール類の一種であり、融点260.5℃の白色結晶の有機化合物である。ペンタエリスリトールは糖アルコールに分類されるが、天然物由来ではなく、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドを塩基性条件下で縮合して合成することができる。
【0050】
本開示のペンタエリスリトールとしては通常、一般に入手可能であるものであれば特に制限されず、試薬品あるいは工業品などを使用し得る。試薬品としては、和光純薬工業株式会社品、シグマ・アルドリッチ社品、東京化成工業株式会社品やメルク社品などが挙げられ、工業品であれば、広栄化学工業株式会社品(商品名:ペンタリット)、日本合成化学工業社品(商品名:ノイライザーP)や東洋ケミカルズ株式会社品やPerstorp社品などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
一般に入手できる試薬や商品の中には不純物として、ペンタエリスリトールが脱水縮合して生成するジペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトールなどのオリゴマーが含まれているものがある。上記オリゴマーはポリヒドロキシアルカノエートの結晶化には効果を有しないが、ペンタエリスリトールの結晶化効果を阻害しない。従い、オリゴマーが含まれていても構わない。
【0052】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物におけるペンタエリスリトールの使用量(含有量)は、ペンタエリスリトールの結晶化核剤としての効果を得られやすく、加工性を向上させることができ、得られる成形体のバリ発生の抑制効果に優れる点で、その下限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部に対して、0.05重量部以上であり、好ましくは0.1重量部以上であり、更に好ましくは0.5重量部以上である。また、成形加工時の樹脂の流動特性に優れる点で、その上限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部に対して、20重量部以下であり、好ましくは12重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、更に好ましくは8重量部以下である。
【0053】
[(E)珪酸塩]
本開示の珪酸塩は、耐熱性の向上や加工性の改善効果等が得られる事ができれば、特に限定されないが、汎用性が高く、機械的強度向上効果が高く、また粒径分布が小さく表面平滑性や金型転写性を阻害しにくいため、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト及びスメクタイト等を好適に用いることが出来る。
【0054】
また、珪酸塩は、1種のみならず2種以上混合してもよく、(A)ポリ乳酸や(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートや(C)脂肪族芳香族ポリエステルの種類や目的とする効果に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0055】
本開示の珪酸塩は、生分解性ポリエステル樹脂組成物中での分散性を上げるために表面処理してもよい。表面処理としては、珪酸塩の少なくとも一部の表面を表面処理剤で覆う処理が挙げられる。表面処理剤としては、高級脂肪酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ゾル−ゲルコーティング剤、樹脂コーティング剤等が挙げられる。
【0056】
本開示の珪酸塩の水分率は、(A)ポリ乳酸や(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートや(C)脂肪族芳香族ポリエステルの加水分解を抑制しやすい点で0.01〜10%が好ましく、0.01〜5%がより好ましく、0.01〜1%が更に好ましい。尚、前記水分量は、JIS−K5101に準拠して求められる。
【0057】
本開示の珪酸塩の平均粒子径は、生分解性ポリエステル樹脂組成物の特性や加工性に優れる点で、0.1〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましく、0.1〜5μmが更に好ましい。尚、前記平均粒子径は、日機装社製「マイクロトラックMT3100II」などのレーザー回折・散乱式の装置を用いることで求められる。
【0058】
なお、本開示の珪酸塩は、(D)ペンタエリスルトールと共に結晶化核剤としての機能も有している場合があるため、この場合は、(D)ペンタエリスルトールと共存させることによって、生分解性ポリエステル樹脂組成物の結晶化を更に促進させ、加工性を向上させることができる。
【0059】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物に用いられる珪酸塩を以下に例示する。珪酸塩として、タルクを用いる場合は、汎用のタルク、表面処理タルクなどが挙げられ、具体的には、日本タルク社の「ミクロエース」(登録商標)、林化成社の「タルカンパウダー」(登録商標)、竹原化学工業社や丸尾カルシウム社などのタルクが例示される。
【0060】
マイカを用いる場合は、湿式粉砕マイカ、乾式粉砕マイカなどが挙げられ、具体的には、ヤマグチマイカ社や啓和炉材社などのマイカが例示される。
【0061】
カオリナイトを用いる場合は、乾式カオリン、焼成カオリン、湿式カオリンなどが挙げられ、具体的には、林化成社「TRANSLINK」(登録商標)、「ASP」(登録商標)、「SANTINTONE」(登録商標)、「ULTREX」(登録商標)や啓和炉材社などのカオリナイトが例示される。
【0062】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物における(E)珪酸塩の使用量(含有量)は、得られる成形体が耐熱性に優れる点で、その下限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部に対して、10重量部以上であり、15重量部以上が好ましく、20重量部以上であることがより好ましい。また、加工性に優れる点で、その上限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部に対して、40重量部以下であり、35重量部以下が好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。
【0063】
[(F)エポキシ基を有する相容化剤]
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物で用いられるエポキシ基を有する相容化剤としては、グリシジル(メタ)アクリレート化合物、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物及び脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0064】
本開示のエポキシ基を有する相容化剤のエポキシ当量は、本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物を成形して成る成形体の靭性や延性を向上させ易い点で100〜1000g/molであり、200〜500g/molが好ましい。尚、エポキシ当量は、JIS−K7236に準拠して求められる。
【0065】
本開示のエポキシ基を有する相容化剤としては、市販のエポキシ基を有する相容化剤を用いることができ、具体的には、例えばBASF社「JONCRYL」(登録商標)、東亞合成社「レゼダ」(登録商標)、「アルフォン」(登録商標)、DuPont社「BIOMAX」(登録商標)、ARKEMA社「LOTADER」(登録商標)等を用いることが出来る。
【0066】
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物におけるエポキシ基を有する相容化剤の使用量(含有量)は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部に対して、0〜3重量部であることが好ましく、0.5〜2重量部であることがより好ましい。相容化剤は0重量部でも構わないが相容化剤を併用する方が延性と靭性に優れる場合がある。また、延性と靭性に優れる点で、エポキシ基を有する相容化剤量の上限値は、(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの三成分の全量(A+B+C)100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましく、1重量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ基を有する相容化剤の使用量が3重量部を超える場合、相容化剤のエポキシ基同士が反応し、延性と靭性を向上させる効果が低下する場合がある。
【0067】
[任意成分]
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、上記(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤の他に、酸化防止剤;紫外線吸収剤;染料、顔料などの着色剤;可塑剤;滑剤;無機充填剤;有機充填剤;または帯電防止剤などの他の成分を含有してもよい。これらの他の成分の添加量としては、本発明の効果を損なわない程度であればよく、特に限定はない。
【0068】
[生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法]
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、本開示の(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルの融点以上にまで加熱し、混練できる装置であれば公知の混練機により容易に製造できる。例えば、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤や他の任意成分とを押出機、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサーなどにより溶融混練してペレット状とする方法、並びに(D)ペンタエリスリトールや(E)珪酸塩の高濃度のマスターバッチを予め調製しておき、これを(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと(C)脂肪族芳香族ポリエステルと、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤や他の任意成分に所望の割合で配合し、溶融混練する方法、などが利用できる。
【0069】
また、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤を混練機に同時に添加してもよいし、あるいは先に(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤を溶融させた後に(D)ペンタエリスリトールや(E)珪酸塩を添加してもかまわない。
【0070】
得られる樹脂組成物あるいは成形体の特性を低下させない点で、(E)珪酸塩は、最後に添加することが好ましい。即ち、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤を所望の割合で溶融混練した樹脂組成物に(E)珪酸塩を添加することが好ましい。一般的に、(E)珪酸塩のうちタルクやマイカなどは、水分を含んでいたり、アルカリ性を示すため、高温下で(A)ポリ乳酸や(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートや(C)脂肪族芳香族ポリエステルと共存させると、ポリエステルの分解を促進させて生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の機械物性が低下する場合がある。
【0071】
具体的には、例えば、同方向噛合型二軸押出機で樹脂組成物を作製する場合、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤はスクリュ根元から添加し、(E)珪酸塩は前記押出機の下流からサイドフィードなどで添加することが好ましい。
【0072】
前記において、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤等を溶融混練する温度は、使用する(A)ポリ乳酸や(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートや(C)脂肪族芳香族ポリエステルの融点や溶融粘度等によるため一概には規定できないが、溶融混練物のダイス出口での樹脂温度が160〜200℃であることが好ましく、165〜195℃であることがより好ましく、170〜190℃がさらに好ましい。溶融混練物の樹脂温度が160℃未満であると、(A)ポリ乳酸または(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートまたは(C)脂肪族芳香族ポリエステルが未溶融となる場合があり、200℃を超えると(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートが著しく熱分解する場合がある。
【0073】
[生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の製造方法]
本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の製造方法を以下に例示する。まず、(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤や他の任意成分を添加し、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融混練して、生分解性ポリエステル樹脂組成物を作製し、それをストランド状に押し出してからカットして、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの粒子形状の生分解性ポリエステル樹脂組成物からなるペレットを得る。
【0074】
前記方法によって作製したペレットを、40〜80℃で十分に乾燥させて水分を除去した後、公知の成形加工方法で成形加工でき、任意の成形体を得ることができる。
【0075】
成形時の成形温度について述べる。着色しにくいなどの外観に優れる点で、本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物の溶融樹脂温度は、160〜200℃が好ましく、170〜190℃がより好ましい。本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物が溶融した後の冷却温度は25〜55℃で成形することが好ましく、30〜50℃がより好ましく、30〜40℃が更に好ましい。冷却温度が25℃未満の場合、生分解性ポリエステル樹脂組成物中の(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート成分の結晶化が遅くなるため生産性が低下する場合がある。冷却温度が55℃を超える場合、生分解性ポリエステル樹脂組成物中の(A)ポリ乳酸成分のガラス転移点以上となるため弾性率が低くなり離型し難くなる場合があり、更に(C)脂肪族芳香族ポリエステル成分の結晶化が遅くなるため生産性が低下する場合がある。
【0076】
成形加工方法としては、例えば、射出成形、押出成形、フィルム成形、シート成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡等が挙げられる。
【0077】
射出成形体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、その他目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH−PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、射出成形法はこれらに限定されるものではない。
【0078】
射出成形用の成形金型のキャビティ部のあわせ部(例えば、パーティングライン部、インサート部、スライドコア摺動部など)には、隙間があるため、従来、射出成形時に、その隙間に溶融した樹脂が入り込んでできる「バリ」が成形品に付着してしまう。特にポリ−3−ヒドロキシアルカノエートは、結晶化の進行が遅く樹脂が流動性を有する時間が長いため、バリが発生し易く、成形品の後処理に多大な労力を要する。ところが、本発明の(A)ポリ乳酸、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート、(C)脂肪族芳香族ポリエステル、(D)ペンタエリスリトール、(E)珪酸塩、更に必要に応じて(F)エポキシ基を有する相容化剤を含有する生分解性ポリエステル樹脂組成物は、固化が早いのでバリが発生し難く、成形品の後処理の労力を低減できるため、実用上好ましい。
【0079】
フィルム成形体の製造方法としては、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形等のフィルム成形法が挙げられる。ただし、フィルム成形法はこれらに限定されるものではない。また、本開示の生分解性ポリエステル樹脂組成物から得られたフィルムは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。
【0080】
本発明にかかる生分解性ポリエステル樹脂組成物は、耐熱性と延性と靭性と加工性に優れ、且つ短時間で加工が行え、例えば、食器類、農業用資材、海洋資材、OA用部品、家電部品、自動車用部材、日用雑貨類、文房具類、各種ボトル成形品、押出シートや異型押出製品、などの基材として好適に使用され得る。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0082】
(A)ポリ乳酸:以下の製品を用いた。
PLA−1:NatureWorks社製Ingeo 3251D
PLA−2:NatureWorks社製Ingeo 10361D
【0083】
(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート:以下の製造例で得られたものおよび製品を用いた。
P3HA−1:製造例1で得られたものを用いた。
【0084】
<製造例1>
国際公開第2013/147139号に記載の方法に準じ、KNK−005株および炭素源としてパーム油を用いて、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成が5.6モル%、3−ヒドロキシブチレート(3HB)組成が94.4モル%のP3HB3HHを得た。GPCで測定した重量平均分子量は60万であった。
P3HA−2:製造例2で得られたものを用いた。
【0085】
<製造例2>
国際公開第2013/147139号に記載の方法に準じ、KNK−631株および炭素源としてパーム核油を用いて、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート原料A2、P3HB3HHを得た。重量平均分子量は65万、3HH組成は11.4モル%、3HB組成は88.6モル%であった。
P3HA−3:製造例3で得られたものを用いた。
【0086】
<製造例3>
生産菌株としてC.necatorH16株(ATCC17699)を用い、国際公開第09/145164号に準拠して、重量平均分子量が85万のP3HBを作製した。
P3HA−4:P3HB4HB(Ecomann社製EM5400)
その他、実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
【0087】
(C)脂肪族芳香族ポリエステル:以下の製品を用いた。
BASF社製Ecoflex C1200
【0088】
(D)ペンタエリスリトール:以下の製品を用いた。
日本合成化学社製ノイライザーP
【0089】
(E)珪酸塩:以下の製品を用いた。
珪酸塩−1:タルク(日本タルク社製ミクロエースK−1)
珪酸塩−2:マイカ(ヤマグチマイカ社製A−21S)
【0090】
(F)エポキシ基を有する相容化剤:以下の製品を用いた。
BASF社製JONCRYL ADR−4368
【0091】
<実施例1>
(生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造)
(A)ポリ乳酸としてPLA−1、(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートとしてP3HA−1、(C)脂肪族芳香族ポリエステルとしてEcoflex C1200、(D)ペンタエリスリトールとしてノイライザーP、(E)珪酸塩として珪酸塩−1(タルク)を、表1に示した配合比率(以下、表中の配合比は、重量部を示す。)で、同方向噛合型2軸押出機(東芝機械社製:TEM−26SS)を用いて、設定温度160〜180℃、スクリュ回転数100rpmで溶融混練し、生分解性ポリエステル樹脂組成物を得た。この際、タルクは押出機の下流からサイドフィーダーを用いて投入した。また樹脂温度(ダイスから出てくる溶融した樹脂を直接K型熱電対で測定)は189℃であった。溶融した樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。得られたペレットを80℃で除湿乾燥し、水分を除去した。
【0092】
(生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の製造)
得られたペレットを原料として、射出成形機(東洋機械金属社製:PLASTAR Si−100IV)を用いて射出成形を行ない、ISO 3167 Type Aに準拠した多目的試験片に成形した。成形機のシリンダー設定温度は160〜190℃、金型の設定温度は30℃とした。得られた多目的試験片を用いて、以下の評価を行なった。結果を表1に示した。
【0093】
(荷重たわみ温度)
多目的試験片を23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、ISO 75に準拠し、所定のサイズに切削して荷重たわみ温度測定を行い、荷重たわみ温度を測定した。
【0094】
(引張破断伸び)
多目的試験片を23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、ISO 527に準拠し、引張破断測定を行い、引張破断伸びを測定した。
【0095】
(衝撃強度)
多目的試験片を23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、ISO 179に準拠し、ノッチ無しシャルピー衝撃試験を行い、衝撃強度(シャルピー衝撃強度)を測定した。
【0096】
(バリの評価)
上記生分解性ポリエステル樹脂組成物から成る成形体の製造で得られた試験片を目視で観察し、バリが無い場合を○、バリがある場合を×とした。
【0097】
<実施例2〜9、比較例1〜8>
表1に示すような配合比で、実施例1と同様の方法で、生分解性ポリエステル樹脂組成物のペレットおよび多目的試験片を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。結果は表1に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、ポリ乳酸のみの比較例1は、荷重たわみ温度が低く、引張破断伸びも低く、衝撃強度も低いのに対し、実施例1〜9は、荷重たわみ温度と引張破断伸びおよび衝撃強度に優れ、また試験片にバリが発生していない。
【0100】
ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートと脂肪族芳香族ポリエステルを含有しない比較例2は、荷重たわみ温度が低く、引張破断伸びも低く、衝撃強度も低い。脂肪族芳香族ポリエステルを含有しない比較例3は、引張破断伸びが低く、衝撃強度も低い。ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートを含有しない比較例4は、荷重たわみ温度が低く、ポリ乳酸を含有しない比較例5は、成形体にバリが発生している。ペンタエリスリトールを含まない比較例6は、成形体にバリが発生しており、珪酸塩を含有しない比較例7は、荷重たわみ温度が低い。(A)ポリ乳酸と(B)ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートおよび(C)脂肪族芳香族ポリエステルの比率が本発明の範囲外である比較例8は、荷重たわみ温度が低く、引張破断伸びも低く、衝撃強度も低い。
【0101】
<実施例10>
表2に示すような配合比で、実施例1と同様の方法で、生分解性ポリエステル樹脂組成物のペレットを作製した。得られたペレットを原料として、横幅が150mm、リップ幅が1.5mmのT型ダイスを装着した単軸押出機(東洋精機製作所製:20C200型ラボプラストミル)を用いて、厚み1mmのシートを得た。シリンダー設定温度は160〜180℃、チルロールの設定温度は45℃とした。得られたシートのヒートサグを評価し、その結果を表2に示した。
【0102】
(ヒートサグの評価)
押出成形で得られたシートを23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、シートから幅12.7mm、長さ75mmの短冊形を打ち抜き、厚みと長さ以外はJIS K 7195に準拠し、ヒートサグ試験を行い、試験温度60℃でシートの撓みが10mm以内の場合を○、10mmを超える場合を×とした。
【0103】
<比較例9〜11>
表2に示すような配合比で、実施例10と同様の方法で、生分解性ポリエステル樹脂組成物のペレットおよびシートを作製し、ヒートサグ試験を行った。結果は表2に示した。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示すように、ポリ乳酸のみの比較例9や、ポリ−3−ヒドロキシアルカノエートを含有しない比較例10および11では、シートが撓んでしまうのに対し、実施例10は、シートが撓んでおらず耐熱性が良好である。
【0106】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸から成る成形体の欠点である耐熱性と延性と靭性が改善されるとともに、射出成形や押出成形などの加工性が改善され、またバリなどの成形不良も生じにくいことがわかる。