特許第6803350号(P6803350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803350
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】薬液散布車
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   A01M7/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-28018(P2018-28018)
(22)【出願日】2018年2月20日
(65)【公開番号】特開2019-140959(P2019-140959A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】八木 直
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−7626(JP,A)
【文献】 特開2004−59106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01C 15/00
A01C 21/00
A01C 23/00
B05B 12/16 − 16/80
B05B 17/00 − 17/08
B65D 88/00 − 90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク(5)内の薬液を散布する薬液散布車(100)であって、
前記タンク(5)は、
第1タンク部(51)と、
前記第1タンク部(51)の下部に隣接するとともに前記第1タンク部(51)と上下方向において連通し、かつ前記第1タンク部(51)よりも前記薬液散布車(100)の左右方向の幅が狭い第2タンク部(52)と、
を有し、
前記タンク(5)内には、前記第1タンク部(51)と前記第2タンク部(52)とにわたって設けられた仕切り板(60,80)が配置され、
前記仕切り板(60,80)は、前記仕切り板(60,80)の一方の面(61a)及び他方の面(61b)が前記薬液散布車(100)の左側方及び右側方をそれぞれ向くように配置され、
前記仕切り板(60,80)の上端部は、前記第1タンク部(51)に固定され、
前記仕切り板(60,80)の下端部は、前記第2タンク部(52)の内面のうち前記薬液散布車(100)の右側方を向く部位(52a)及び左側方を向く部位(52b)によって前記薬液散布車(100)の左右方向の両側から挟み込まれている、薬液散布車(100)。
【請求項2】
前記仕切り板(60,80)は、
前記一方の面(61a)及び前記他方の面(61b)を有する板本体部(61,81)と、
前記板本体部(61,81)の下端部に取り付けられ、前記第2タンク部(52)の内面に当接するブラケット部(62,82)と、
を有し、
前記ブラケット部(62,82)は、前記第2タンク部(52)の内面のうち前記薬液散布車(100)の右側方を向く部位(52a)及び左側方を向く部位(52b)によって前記薬液散布車(100)の左右方向の両側から挟み込まれている、請求項1に記載の薬液散布車(100)。
【請求項3】
前記タンク(5)内の前記薬液を攪拌するジェット撹拌機(70)をさらに備え、
前記ジェット撹拌機(70)は、前記仕切り板(60)に固定されている、請求項1又は2に記載の薬液散布車(100)。
【請求項4】
前記タンク(5)内の前記薬液を攪拌するジェット撹拌機(70)をさらに備え、
前記ブラケット部(62)は、前記第1タンク部(51)内に張り出す固定部(62d)を有し、
前記ジェット撹拌機(70)は、前記固定部(62d)に固定されている、請求項2に記載の薬液散布車(100)。
【請求項5】
タンク(5)内の薬液を散布する薬液散布車(100)であって、
前記タンク(5)は、
第1タンク部(51)と、
前記第1タンク部(51)の下部に隣接するとともに前記第1タンク部(51)と上下方向において連通し、かつ前記第1タンク部(51)よりも前記薬液散布車(100)の左右方向の幅が狭い第2タンク部(52)と、
を有し、
前記タンク(5)内には、前記第1タンク部(51)と前記第2タンク部(52)とにわたって設けられた仕切り板(60,80)が配置され、
前記仕切り板(60,80)は、前記仕切り板(60,80)の一方の面(61a)及び他方の面(61b)が前記薬液散布車(100)の左側方及び右側方をそれぞれ向くように配置され、
前記仕切り板(60,80)の上端部は、前記第1タンク部(51)に固定され、
前記仕切り板(60,80)の下端部は、前記第2タンク部(52)の内面のうち前記薬液散布車(100)の側方を向く部位(52a,52b)に当接し
前記タンク(5)内の前記薬液を攪拌するジェット撹拌機(70)をさらに備え、
前記ジェット撹拌機(70)は、前記仕切り板(60)に固定されている、薬液散布車(100)。
【請求項6】
前記ジェット撹拌機(70)は、前記第1タンク部(51)内に設けられ、かつ前記第1タンク部(51)を形成する壁部のうち前記薬液散布車(100)の前後方向の前側の壁部(51a)及び後ろ側の壁部(51b)のそれぞれから離間した位置に設けられている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の薬液散布車(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液散布車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、以下の特許文献1に記載の自走式の薬液散布車が知られている。この薬液散布車は、作業者が後ろに付いて歩きながら畝間を走行する。そして、薬液散布車は、薬液を収容するタンクを備え、タンク内の薬液をノズル管に設けられた多数の噴霧ノズルへ圧送することによって、噴霧ノズルから薬液を散布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−7626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬液散布車は、細い畝間を走行しながら薬液を散布するため、薬液散布車の左右方向の幅(車幅)が狭くなっている。このため、薬液散布車は、多くの薬液がタンク内に収容されている状態で凹凸の大きい路地を走行する場合や旋回する場合等において、タンク内の薬液が揺れたときの反動によって左右方向に横転することが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、タンク内の薬液の揺れによる横転を抑制することが可能な薬液散布車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンク(5)内の薬液を散布する薬液散布車(100)であって、タンク(5)は、第1タンク部(51)と、第1タンク部(51)の下部に隣接するとともに第1タンク部(51)と上下方向において連通し、かつ第1タンク部(51)よりも薬液散布車(100)の左右方向の幅が狭い第2タンク部(52)と、を有し、タンク(5)内には、第1タンク部(51)と第2タンク部(52)とにわたって設けられた仕切り板(60,80)が配置され、仕切り板(60,80)は、仕切り板(60,80)の一方の面(61a)及び他方の面(61b)が薬液散布車(100)の左側方及び右側方をそれぞれ向くように配置され、仕切り板(60,80)の上端部は、第1タンク部(51)に固定され、仕切り板(60,80)の下端部は、第2タンク部(52)の内面のうち薬液散布車(100)の側方を向く部位(52a,52b)に当接している。
【0007】
この薬液散布車(100)では、仕切り板(60,80)の一方の面(61a)及び他方の面(61b)が、薬液散布車(100)の左側方及び右側方をそれぞれ向いている。そして、仕切り板(60,80)の上端部が第1タンク部(51)に固定され、仕切り板(60,80)の下端部が第2タンク部(52)の内面のうち薬液散布車(100)の側方を向く部位(52a,52b)に当接している。これにより、仕切り板(60,80)における薬液散布車(100)の左右方向の移動が規制される。このように、薬液散布車(100)は、仕切り板(60,80)の下端部を第2タンク部(52)の内面に当接させるだけで、仕切り板(60,80)における左右方向の移動を容易に規制することができる。そして、タンク(5)内の薬液が薬液散布車(100)の左右方向に揺れた場合、薬液の揺れが仕切り板(60,80)によって抑制される。このように、薬液散布車(100)は、仕切り板(60,80)によって薬液の左右方向の揺れを抑制できるため、タンク(5)内の薬液の揺れによる横転を抑制することができる。
【0008】
薬液散布車(100)において、仕切り板(60,80)は、一方の面(61a)及び他方の面(61b)を有する板本体部(61,81)と、板本体部(61,81)の下端部に取り付けられ、第2タンク部(52)の内面に当接するブラケット部(62,82)と、を有し、ブラケット部(62,82)は、第2タンク部(52)の内面のうち薬液散布車(100)の右側方を向く部位(52a)及び左側方を向く部位(52b)によって薬液散布車(100)の左右方向の両側から挟み込まれていてもよい。このように、ブラケット部(62,82)が第2タンク部(52)の内面によって左右方向の両側から挟み込まれることにより、ブラケット部(62,82)が第2タンク部(52)の内面に強固に固定される。これにより、仕切り板(60,80)は、タンク(5)内の薬液が薬液散布車(100)の左右方向に揺れた場合であっても、薬液の揺れをより確実に抑制できる。
【0009】
薬液散布車(100)は、タンク(5)内の薬液を攪拌するジェット撹拌機(70)をさらに備え、ジェット撹拌機(70)は、仕切り板(60)に固定されていてもよい。この場合、薬液散布車(100)は、仕切り板(60)をジェット撹拌機(70)を固定するための部材として用いることができる。
【0010】
薬液散布車(100)は、タンク(5)内の薬液を攪拌するジェット撹拌機(70)をさらに備え、ブラケット部(62)は、第1タンク部(51)内に張り出す固定部(62d)を有し、ジェット撹拌機(70)は、固定部(62d)に固定されていてもよい。この場合、薬液散布車(100)は、ブラケット部(62)を、ジェット撹拌機(70)を固定するための部材、及び仕切り板(60)の下端部を第2タンク部(52)に固定するための部材として用いることができる。
【0011】
ジェット撹拌機(70)は、第1タンク部(51)内に設けられ、かつ第1タンク部(51)を形成する壁部のうち薬液散布車(100)の前後方向の前側の壁部(51a)及び後ろ側の壁部(51b)のそれぞれから離間した位置に設けられていてもよい。この場合、ジェット撹拌機(70)は、第1タンク部(51)における薬液散布車(100)の前後方向の中程の位置に設置される。これにより、ジェット撹拌機(70)は、タンク部(5)内の全体にわたって薬液を効率よく攪拌できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タンク内の薬液の揺れによる横転を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る自走薬液散布車を右上方且つ後方から見た斜視図である。
図2図1に示す自走薬液散布車の右側面図である。
図3図1に示す自走薬液散布車のタンクを前後方向に沿って切った縦断面図である。
図4図1に示す自走薬液散布車のタンクを左右方向に沿って切った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る薬液散布車の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、薬液散布車を、自走薬液散布車として説明する。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、自走薬液散布車(薬液散布車)100は、走行車両部1と、走行車両部1から薬液を噴霧する薬液噴霧装置2と、を備えている。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」は、自走薬液散布車100を基準とした方向とする。
【0016】
走行車両部1は、前後方向に長い略矩形状の機体3を備える。機体3の前後方向に直交する左右方向の両側下方には、機体3を走行可能とする走行装置4が設けられている。また、機体3上の前部には、薬液タンク(タンク)5が搭載されている。走行車両部1の後部には、図2に示されるように、エンジン6が搭載されている。さらに、図1に示されるように、走行車両部1の後部において、エンジン6の上方には動力噴霧機7が搭載されている。図2に示されるように、エンジン6の下方で走行装置4の後方には、静油圧式無段変速機(Hydraulic Static Transmission、以下、HSTという)19が装備されている。
【0017】
これらのエンジン6、動力噴霧機7、HST19等は、機体3や薬液タンク5側に、ブラケットやパイプ等を介して固定されている。また、走行装置4の後述する駆動輪16に、エンジン6の駆動による回転を伝達する回転伝達機構20が、エンジン6とHST19との間に配置されている。なお、図1においては、エンジン6、回転伝達機構20、HST19を外側から覆う保護カバー24が描かれているが、図2においては、当該保護カバー24は取り外されている。
【0018】
薬液噴霧装置2は、機体3の前端部に設けられている。薬液噴霧装置2は、機体3の前端部に立設された支柱8と、支柱8に沿って延びるように支柱8に取り付けられたノズル管9と、を備えている。ノズル管9には、上下方向に沿って多数の連結管9aが互いに離間して配置されている。連結管9aは、左右外方へそれぞれ向けてU字状を成して延びている。連結管9aは、その先端に噴霧ノズル10が装着され、左右方向にそれぞれ薬液を噴霧可能になっている。
【0019】
動力噴霧機7は、エンジン6の駆動により作動し、薬液タンク5内の薬液をノズル管9へ圧送する。
【0020】
走行装置4は、走行ホイールとクローラ15と、を備える。走行ホイールは、機体3の後部より斜め下方且つ後方の位置で、左右方向両側にそれぞれ配置された駆動輪16、機体3の前部の下方且つ左右方向両側にそれぞれ配置された遊動輪17、及び、地面側の複数(ここでは2個)の走行転輪18を有する。これらの駆動輪16、遊動輪17、走行転輪18は、機体3側に回転可能に支持され、駆動輪16、遊動輪17、走行転輪18にクローラ15が掛け渡される。
【0021】
図2に示されるように、回転伝達機構20は、エンジン6の回転力をHST19へ伝達する。HST19は、油圧ポンプ21及び油圧モータ22を備える。油圧ポンプ21は、エンジン6の駆動による回転力が入力される入力軸を備え、入力軸の回転及び可変斜板の角度を変えることにより、調節自在に油圧作動油に発生させた油圧を油圧モータ22へ供給する。油圧モータ22は、油圧ポンプ21からの油圧を回転力に変換して出力軸を回転させる。油圧モータ22の出力軸の回転速度は、可変斜板の角度を変えることによって無段変速が可能とされている。油圧モータ22の出力軸の回転は、図2に示されるミッション23を介して、駆動輪16に伝達される。
【0022】
図1及び図2に示されるように、走行車両部1の後部の上部には、作業者が、エンジン6、走行装置4及び動力噴霧機7等を操作するためのスイッチ11やレバー12等を有する操縦部13が設けられている。操縦部13の後部には、作業者が握るための略U字状のハンドル14が装備されている。
【0023】
このような自走薬液散布車100によれば、作業者によりエンジン6が駆動されると、エンジン6の回転力が、回転伝達機構20を介して、HST19を構成する油圧ポンプ21に伝達される。そして、HST19が作動することによって、油圧モータ22の出力軸の回転がミッション23を介して駆動輪16に伝達され、駆動輪16が回転駆動される。これにより、自走薬液散布車100は、走行装置4による前進走行が可能となる。また、エンジン6の駆動により動力噴霧機7が作動し、薬液タンク5内の薬液がノズル管9、連結管9aを介して噴霧ノズル10へ圧送される。作業者は、走行車両部1の後方に立ってハンドル14を握り、自走薬液散布車100の走行に付いて歩きながら、噴霧ノズル10から左右方向へ薬液を効果的に散布する。
【0024】
次に、薬液タンク5周りの詳細について説明する。図3及び図4に示されるように、薬液タンク5は、箱状のタンク本体部50、タンク蓋53、及びストレーナ54を備えている。タンク蓋53は、タンク本体部50の上部に設けられた開口部を封止する。作業者は、タンク蓋53を開け、タンク本体部50の上部に設けられた開口部から薬液等を薬液タンク5(タンク本体部50)内に投入する。ストレーナ54は、タンク本体部50の上部に設けられた開口部の縁部に取り付けられている。ストレーナ54は、薬液タンク5内に薬液等が投入されたときに、薬液等に含まれるゴミ等を取り除く。
【0025】
タンク本体部50は、第1タンク部51、及び第2タンク部52を有している。第2タンク部52は、第1タンク部51の下部に隣接するとともに、第1タンク部51と上下方向において連通している。第2タンク部52は、第1タンク部51よりも左右方向(自走薬液散布車100の車幅方向)の幅が狭い。図4に示されるように、第2タンク部52は、第1タンク部51の下部において、第1タンク部51の左右方向の略中央に位置している。第2タンク部52は、タンク本体部50内の薬液が少なくなったときに、タンク本体部50内に薬液が残らないように薬液を第2タンク部52内に集める。
【0026】
図3及び図4に示されるように、タンク本体部50内には、仕切り板60が配置されている。仕切り板60は、タンク本体部50内において、タンク本体部50における自走薬液散布車100の前後方向の略中央に配置されている。仕切り板60は、第1タンク部51と第2タンク部52とにわたって設けられている。仕切り板60の下端部は、第2タンク部52の内面のうち自走薬液散布車100の側方を向く部位(後述の第1内面部52a及び第2内面部52b)に当接している。
【0027】
より詳細には、仕切り板60は、板本体部61、及びブラケット部62を有している。板本体部61は、上下方向に延在する板状の部材である。板本体部61は、板本体部61の一方の面61a及び他方の面61bが自走薬液散布車100の左側方及び右側方をそれぞれ向くように配置されている。なお、板本体部61の他方の面61bとは、板本体部61の一方の面61aに対して反対側の面である。本実施形態において、板本体部61の一方の面61aは、自走薬液散布車100の左側方を向いている。板本体部61の他方の面61bは、自走薬液散布車100の右側方を向いている。すなわち、板本体部61は、自走薬液散布車100の前後方向に対して平行に配置されている。
【0028】
なお、板本体部61の一方の面61aが自走薬液散布車100の左側方を向くこととは、一方の面61aに対して垂直な線が自走薬液散布車100の左右方向に完全に一致していることに限定されず、一方の面61aに対して垂直な線が自走薬液散布車100の左右方向に対してわずかにずれていることも含む。後述のように、仕切り板60によって薬液タンク5内の薬液の左右方向の揺れを抑制できる範囲で、一方の面61aに対して垂直な線が自走薬液散布車100の左右方向に対してわずかにずれていてもよい。同様に、板本体部61の他方の面61bが自走薬液散布車100の右側方を向くこととは、他方の面61bに対して垂直な線が自走薬液散布車100の左右方向に完全に一致していることに限定されず、他方の面61bに対して垂直な線が自走薬液散布車100の左右方向に対してわずかにずれていることも含む。
【0029】
板本体部61は、第1タンク部51内に配置されている。板本体部61の下端部は、第1タンク部51と第2タンク部52との境界部近傍まで延びている。板本体部61(仕切り板60)の上端部は、ボルトBによって第1タンク部51の内面に固定されている(図3参照)。
【0030】
図3及び図4に示されるように、ブラケット部62は、板本体部61の下端部に固定されている。ブラケット部62は、第2タンク部52の内面に当接している。ブラケット部62は、第1対向板62a、第2対向板62b、連結板62c、及び固定板(固定部)62dを有している。第1対向板62aと第2対向板62bとは、左右方向において互いに対向している。連結板62cは、第1対向板62aの下側端部と第2対向板62bの下側端部とを連結する。第2対向板62bには、板本体部61の下端部が固定されている。
【0031】
ここで、図4に示されるように、第2タンク部52の内面のうち、自走薬液散布車100の右側方を向く部位を第1内面部52aとし、自走薬液散布車100の左側方を向く部位を第2内面部52bとする。第1内面部52aと第2内面部52bとは、左右方向において互いに対向している。
【0032】
ブラケット部62は、第2タンク部52の内面によって自走薬液散布車100の左右方向の両側から挟み込まれている。より詳細には、第1対向板62aは、第2タンク部52の第1内面部52aに当接している。第2対向板62bは、第2タンク部52の第2内面部52bに当接している。このように、第1対向板62aと第2対向板62bとの間隔は、ブラケット部62の下側(連結板62c側)の端部が第2タンク部52内に差し込まれたときに、第1内面部52a及び第2内面部52bにそれぞれ当接する長さとなっている。これにより、ブラケット部62が第2タンク部52内に差し込まれたときに、ブラケット部62における自走薬液散布車100の左右方向の位置が固定される。
【0033】
固定板62dは、連結板62cに連結され、連結板62cから上方に向かって延びている。固定板62dの上部は、第1タンク部51内に張り出している。
【0034】
さらに、図3及び図4に示されるように、薬液タンク5内には、ジェット攪拌機70が配置されている。ジェット攪拌機70は、薬液タンク5内の薬液を攪拌する。本実施形態において、ジェット攪拌機70の基端部70aには、図示しない薬液供給配管が接続される。ノズル管9へ薬液を圧送する動力噴霧機7は、薬液供給配管を介してジェット攪拌機70へも薬液を圧送する。ジェット攪拌機70は、圧送された薬液を先端部70bから噴射することによって、薬液タンク5内の薬液を攪拌する。
【0035】
ジェット攪拌機70は、仕切り板60に固定されている。本実施形態において、ジェット攪拌機70は、ブラケット部62の固定板62dの上端部に固定されている。ジェット攪拌機70は、固定板62dの上端部に設けられた孔を利用して固定板62dに固定されている。すなわち、ジェット攪拌機70は、第1タンク部51内の下部に設けられている。
【0036】
ここで、第1タンク部51を形成する壁部のうち、自走薬液散布車100の前後方向の前側の壁部を前側壁部51aとし、後ろ側の壁部を後側壁部51bとする。ジェット攪拌機70は、自走薬液散布車100の前後方向において、第1タンク部51の前側壁部51a及び後側壁部51bから離間した位置に配置されている。すなわち、ジェット攪拌機70は、薬液タンク5内において、薬液タンク5における自走薬液散布車100の前後方向の略中央に配置されている。
【0037】
また、図3に示されるように、タンク本体部50内には、仕切り板80が配置されている。仕切り板80は、タンク本体部50内において、仕切り板60よりも自走薬液散布車100の前後方向の前側の位置に配置されている。仕切り板80の下端部は、第2タンク部52の内面のうち自走薬液散布車100の側方を向く部位(第1内面部52a及び第2内面部52b)に当接している。仕切り板80(板本体部81)の上端部は、ボルトによって第1タンク部51の内面に固定されている。仕切り板80は、仕切り板60と同様に、板本体部81、及びブラケット部82を有している。板本体部81は、板本体部61と同様に、一方の面及び他方の面を有している。板本体部81及びブラケット部82は、仕切り板60における板本体部61及びブラケット部62とそれぞれ同様の構成を有しており、詳細な説明を省略する。なお、本実施形態において、仕切り板80には、仕切り板60とは異なりジェット攪拌機70が取り付けられていない。
【0038】
以上のように、この自走薬液散布車100では、仕切り板60(板本体部61)の一方の面61a及び他方の面61bが、自走薬液散布車100の左側方及び右側方をそれぞれ向いている。仕切り板80も、仕切り板60と同様に、両面が自走薬液散布車100の左側方及び右側方をそれぞれ向いている。そして、仕切り板60及び80の上端部が第1タンク部51に固定され、仕切り板60及び80の下端部が第2タンク部52の内面のうち自走薬液散布車100の側方を向く面(第1内面部52a、第2内面部52b)に当接している。これにより、仕切り板60及び80における自走薬液散布車100の左右方向の移動が規制される。このように、自走薬液散布車100は、仕切り板60及び80の下端部を第2タンク部52の内面に当接させるだけで、仕切り板60及び80における左右方向の移動を容易に規制することができる。そして、薬液タンク5内の薬液が自走薬液散布車100の左右方向に揺れた場合、薬液の揺れが仕切り板60及び80によって抑制される。このように、自走薬液散布車100は、仕切り板60及び80によって薬液の左右方向の揺れを抑制できるため、薬液タンク5内の薬液の揺れによる横転を抑制することができる。
【0039】
ブラケット部62及び82は、第2タンク部52の第1内面部52a及び第2内面部52bによって左右方向の両側から挟み込まれている。これにより、ブラケット部62及び82は、第2タンク部52の内面に強固に固定される。従って、仕切り板60及び80は、薬液タンク5内の薬液が自走薬液散布車100の左右方向に揺れた場合であっても、薬液の揺れをより確実に抑制できる。
【0040】
ジェット攪拌機70は、仕切り板60のブラケット部62に固定されている。これにより、自走薬液散布車100は、ブラケット部62を、ジェット攪拌機70を固定するための部材、及び仕切り板60の下端部を第2タンク部52に固定するための部材として用いることができる。
【0041】
ジェット攪拌機70は、第1タンク部51の前側壁部51a及び後側壁部51bから前後方向において離間した位置に配置されている。この場合、ジェット攪拌機70は、第1タンク部51における自走薬液散布車100の前後方向の中程の位置に設置される。これにより、ジェット攪拌機70は、薬液タンク5内の全体にわたって薬液を効率よく攪拌できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ジェット攪拌機70は、ブラケット部62の固定板62dに固定されていることに限定されない。例えば、ブラケット部62の第1対向板62a(または第2対向板62b)が、ジェット攪拌機70を固定する固定部として機能してもよい。また、ジェット攪拌機70は、ブラケット部62に固定されることに限定されず、板本体部61に固定されていてもよい。この場合であっても、自走薬液散布車100は、仕切り板60を、ジェット攪拌機70を固定するための部材として用いることができる。
【0043】
上記実施形態では、薬液散布車をクローラを用いて走行する自走薬液散布車100として説明したが、薬液散布車は、クローラを用いて走行する薬液散布車でなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
5…薬液タンク(タンク)、51…第1タンク部、51a…前側壁部(前側の壁部)、51b…後側壁部(後ろ側の壁部)、52…第2タンク部、52a…第1内面部(右側方を向く部位)、52b…第2内面部(左側方を向く部位)、60,80…仕切り板、61a…一方の面、61b…他方の面、62d…固定板(固定部)、70…ジェット攪拌機、100…自走薬液散布車(薬液散布車)。
図1
図2
図3
図4