特許第6803368号(P6803368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロードの特許一覧

特許6803368アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体
<>
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000043
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000044
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000045
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000046
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000047
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000048
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000049
  • 特許6803368-アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体 図000050
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803368
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20201214BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20201214BHJP
   C07F 7/12 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   H01L21/316 X
   C23C16/42
   !C07F7/12 W
【請求項の数】11
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2018-500610(P2018-500610)
(86)(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公表番号】特表2018-523917(P2018-523917A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】US2016041435
(87)【国際公開番号】WO2017007986
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2019年6月24日
(31)【優先権主張番号】62/190,404
(32)【優先日】2015年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・ファファール
(72)【発明者】
【氏名】グレン・クーヘンバイザー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテシュワラ・アール・パレム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マルク・ジラード
(72)【発明者】
【氏名】野田 直人
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−096675(JP,A)
【文献】 特開2014−063860(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/103282(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/123792(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0319290(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0165891(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0051264(US,A1)
【文献】 特開2013−100262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/42
C07F 7/12
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、アルキル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物であって、
式:
【化1】
を有する、Si含有膜形成用組成物。
【請求項2】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、アルキル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物であって、
式:
【化3】
を有する、Si含有膜形成用組成物。
【請求項3】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、アルキル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物であって、
式:
【化4】
を有する、Si含有膜形成用組成物。
【請求項4】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、アルキル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物であって、
式:
【化5】
を有する、Si含有膜形成用組成物。
【請求項5】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、アルキル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、
C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物であって、
式:
【化7】
を有する、Si含有膜形成用組成物。
【請求項6】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、アルキル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物であって、
式:
【化8】
を有する、Si含有膜形成用組成物。
【請求項7】
基板上にケイ素含有膜を堆積させる方法であって、反応器であって、その中に配置された基板を有する反応器内に、請求項1〜6のいずれか一項に記載のSi含有膜形成用組成物の蒸気を導入する工程と、前記基板上に請求項1〜6のいずれか一項に記載のハロカルボシラン前駆体の少なくとも一部を堆積させてケイ素含有膜を形成する工程とを含む方法。
【請求項8】
前記反応器内に少なくとも1種の反応物を導入することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積は、プラズマにより強化される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
半導体デバイスを製造する方法であって、
反応器であって、その中に配置された基板を有する反応器内に、第1の触媒ガスと、請求項1〜6のいずれか一項に記載のSi含有膜形成用組成物の蒸気とを導入すること、及び前記反応器内に酸化ガスと第2の触媒ガスとを導入すること
を含む方法。
【請求項11】
前記触媒ガスは、ピリジン又はアミンである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月9日に出願された米国仮特許出願第62/190,404号明細書の利益を主張するものであり、この特許出願の全体はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物、それを合成する方法、及び蒸着法のためのその使用が開示される。
【背景技術】
【0003】
Si含有薄膜は、半導体、太陽光発電、LCD−TFT、フラットパネル型デバイス、耐火性材料、又は航空産業において広く使用されている。Si含有薄膜は、例えば絶縁し得る電気特性を有する誘電材料(SiO、SiN、SiC、SiCN、SiCOH、MSiO(式中、MはHf、Zr、Ti、Nb、Ta又はGeであり、xは0より大きい))として使用される場合がある。Si含有薄膜は、金属シリサイド又は金属ケイ素窒化物などの導電膜として使用される場合がある。電子デバイス構造のナノスケール(特に28nmノード未満)への小型化に伴って課せられる厳しい要件のため、速い堆積速度、製造される膜のコンフォーマル性及び一貫性に加えて、揮発性(気相プロセスについて)、適切な温度プロセスウインドウ、様々な酸化剤との反応性、及び低い膜汚染の要件を満たす、微調整された分子の前駆体が一層必要とされてきている。
【0004】
Fukazawaら(米国特許出願公開第2013/0224964号明細書)は、原子層堆積(ALD)によるSi−C結合を有する誘電膜の半導体基板上への形成方法を開示している。前駆体はその分子中にSi−C−Si結合を有しており、反応ガスは、酸素フリー且つハロゲンフリーであり、少なくとも希ガスによって構成される。
【0005】
Vrtisら(欧州特許第2048700号明細書)は、とりわけ、R(OR(NR3−n−pSi−R−Si−R(NR(OR3−m−q(式中、R及びRは、独立に、H又はC〜Cの直鎖又は分岐の、飽和であるか、単不飽和であるか、又は多重不飽和である、環状の、部分的に又は完全にフッ素化されている炭化水素であり;R、R、及びRは、独立に、C〜Cの直鎖又は分岐の、飽和であるか、単不飽和であるか、又は多重不飽和である、環状の、芳香族の、部分的に又は完全にフッ素化されている炭化水素であるか、或いはRは、アミン又は有機アミン基であり;R及びRは、独立に、H、C〜Cの直鎖又は分岐の、飽和であるか、単不飽和であるか、又は多重不飽和である、環状の、芳香族の、部分的に又は完全にフッ素化されている炭化水素であり;zは、1又は2であり;nは、0〜3であり;mは、0〜3であり;qは、0〜3であり;pは、0〜3であり、ただし、n+p≦3且つm+q≦3であることを条件とする)を使用する反射防止膜の形成を開示している。
【0006】
Ohhashiら(米国特許出願公開第2013/0206039号明細書)は、表面基板の疎水化処理で使用される、ジメチルアミノ基を有するモノシラン又はビスシラン化合物を開示している。ビスシラン化合物は、式R[N(CH3−bSi−R−SiR[N(CH3−c(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Rは、1〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、b及びcは、それぞれ独立に、0〜2の整数である)を有する。
【0007】
Machidaら(特開2002−158223号公報)は、式{R(R)N}Si−{C(R)R−Si{N(R)R(式中、R、Rは、H、炭化水素基C1〜3、又はX(ハロゲン原子)で置換されている炭化水素基(R及びRは同じでもよい)であり、nは、1〜5の整数であり、R、R、R、及びRは、H、炭化水素基C1〜3、又はX(ハロゲン原子)で置換されている炭化水素基(R、R、R、及びRは同じでもよい)である)のSi型の材料を使用する絶縁膜の形成を開示している。この絶縁膜は、CVDにより基板上に形成することができる。
【0008】
Jansenら(Z.Naturforsch.B.52,1997,707−710)は、多孔質酸素フリー固体の有力な前駆体としてのビス[トリス(メチルアミノ)シリル]メタン及びビス[トリス(フェニルアミノ)シリル]メタンの合成を開示している。
【0009】
Si含有膜堆積のために利用可能な選択肢は幅広いものの、製造工程の要件に合わせることができ、望ましい電気的特性及び物理的特性を有する膜を得ることができる能力をデバイス技術者に与えるために、追加的な前駆体が継続的に求められている。
【0010】
表記及び命名法
以降の記述及び請求項全体を通じて、特定の略語、記号、及び用語が使用されており、それらには次のものが含まれる。
【0011】
本明細書において、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味する。
【0012】
本明細書において、用語「ほぼ」又は「およそ」又は「約」は、述べられている値の±10%を意味する。
【0013】
本明細書において、用語「独立に」は、R基の記載に関連して使用される場合、対象のR基が、同じ又は異なる下付き又は上付きを有する他のR基とは独立に選択されるだけでなく、同じR基の任意の追加的な種からも独立して選択されることを意味すると理解すべきである。例えば、式MR(NR(4−x)(式中、xは2又は3である)において、2つ又は3つのR基は、互いに同じであってもよいが、同じである必要はなく、またR又はRと同じであってもよいが、同じである必要はない。更に、別段の記載がない限り、R基の値は、異なる化学式中で使用される場合、互いに独立であることが理解されるべきである。
【0014】
本明細書において、用語「ハロカルボシラン」は、交互のSi原子及びC原子、並びに少なくとも1つのSi−C−Si単位を有する主鎖及びSiに結合している少なくとも1つのハライドを有する直鎖又は分岐の分子を指す。
【0015】
本明細書において、用語「ヒドロカルビル基」は、炭素及び水素を含む官能基を指し、用語「アルキル基」は、炭素原子及び水素原子のみを含む飽和の官能基を指す。ヒドロカルビル基は飽和であっても不飽和であってもよい。いずれの用語も、直鎖、分岐、又は環状の基を指す。直鎖アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。分岐アルキル基の例としては、限定するものではないが、t−ブチルが挙げられる。環状アルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
本明細書において、用語「アリール」は、環から1つの水素原子が取り除かれた芳香環化合物を指す。本明細書において、用語「ヘテロ環」は、その環の要素として少なくとも2種の異なる元素の原子を有する環状化合物を指す。
【0017】
本明細書において、略語「Me」はメチル基を指し、略語「Et」はエチル基を指し、略語「Pr」は任意のプロピル基(すなわち、n−プロピル又はイソプロピル)を指し、略語「iPr」はイソプロピル基を指し、略語「Bu」は任意のブチル基(n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)を指し、略語「tBu」はtert−ブチル基を指し、略語「sBu」はsec−ブチル基を指し、略語「iBu」はイソ−ブチル基を指し、略語「Ph」はフェニル基を指し、略語「Am」は任意のアミル基(イソ−アミル、sec−アミル、tert−アミル)を指し、略語「Cy」は環状アルキル基(シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)を指し、略語「amd」はR−N−C(Me)−N−R(Rはアルキル基である)アミジナート配位子(例えば、iPramdはiPr−N−C(Me)−N−iPrである)を指す。
【0018】
本明細書において、頭字語「HCDS」はヘキサクロロジシランを表し、頭字語「PCDS」はペンタクロロジシランを表す。
【0019】
本明細書では、元素周期律表由来の元素の標準的な省略形が使用されている。元素はこれらの省略形(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指す等)によって言及される場合があることを理解すべきである。同様に、ハライドとは、周期律表の17族由来の陰性元素、すなわちF、Cl、Br、I、又はAtを指す。
【0020】
本明細書で列挙されている任意の及び全ての範囲は、「全てを含める」という用語が使用されているか否かに関わらず、それらの端点を含む(すなわち、x=1〜4又はxが1〜4の範囲であることは、x=1、x=4、x=これらの間の任意の数を含む)。
【0021】
ケイ素酸化物又はケイ素窒化物などの堆積される膜又は層は、それらの適切な化学量論量(すなわち、SiO、SiO、Si)への言及なしで本明細書及び請求項全体に列挙される場合があることに留意されたい。層は、純粋な(Si)層、カーバイド(Si)層、窒化物(Si)層、酸化物(Si)層、又はこれらの混合物を含んでいてもよく、k、l、m、n、o、及びpは1〜6(両端値を含む)の範囲である。例えば、ケイ素酸化物はSiであり、nは0.5〜1.5の範囲であり、mは1.5〜3.5の範囲である。より詳しくは、ケイ素酸化物層はSiO又はSiOである。これらの膜は、典型的には0at%〜15at%の水素も含み得る。しかし、通常は測定されないため、特段の明示的な記載がない限り、H含有率は無視して膜の組成が示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】Si含有膜形成用組成物移送装置1のある実施形態の側面図である。
図2】Si含有膜形成用組成物移送装置1の第2の実施形態の側面図である。
図3】重水素化ベンゼン溶媒中で取得した(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMeの400MHzのプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
図4】(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMeの温度の上昇に伴う重量損失のパーセンテージを示す熱重量分析(TGA)グラフである。
図5】(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)の温度の上昇に伴う重量損失のパーセンテージを示すTGAグラフである。
図6】室温又は80℃で1週間又は1か月後の、(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)の温度の上昇に伴う重量損失のパーセンテージを示すTGAグラフである。
図7】実施例4の試験で使用した蒸着装置の概略図である。
図8】Si源として(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)、酸素源として水(HO)、及び触媒としてピリジンを使用して、ALDにより堆積されたSiOC膜の膜組成を示すX線光電子分光(XPS)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライド、ヒドロカルビル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有するアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物が開示される。本開示の前駆体は、次の態様のうちの1つ以上を含み得る:
・少なくとも1つのRがFである;
・少なくとも1つのRがClである;
・少なくとも1つのRがIである;
・少なくとも1つのRがBrである;
・少なくとも1つのRがHである;
・少なくとも1つのRがヒドロカルビル基である;
・少なくとも1つのRがアルキル基である;
・少なくとも1つのRがMeである;
・少なくとも1つのRがEtである;
・少なくとも1つのRがPrである;
・少なくとも1つのRがBuである;
・各RがH、ハライド、又はアルキルアミノ基から選択される;
・各Rがハライド又はアルキルアミノ基から選択される;
・R及びRが、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmから選択される;
・R及びRが、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、又はiPrから選択される;
・RがHである;
・RがMeである;
・RがEtである;
・RがnPrである;
・RがiPrである;
・RがBuである;
・RがAmである;
・RがHである;
・RがMeである;
・RがEtである;
・RがnPrである;
・RがiPrである;
・RがBuである;
・RがAmである;
・RとRとが結合されて1つのN原子上又は隣接するN原子上に環状鎖を形成する;
・RとRとが1つのN原子上にピリジン、ピロール、ピロリジン、モルフィリン、又はイミダゾール環構造を形成する;
・RとRとが、隣接するN原子上にアミジナート配位子又はジケチミン配位子を形成する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0024】
【化1】
【0025】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0026】
【化2】
【0027】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0028】
【化3】
【0029】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0030】
【化4】
【0031】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0032】
【化5】
【0033】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0034】
【化6】
【0035】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0036】
【化7】
【0037】
を有する;
・アルキルアミジナート置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0038】
【化8】
【0039】
を有する;
・アルキルアミジナート置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0040】
【化9】
【0041】
を有する;
・アルキルアミジナート置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0042】
【化10】
【0043】
を有する;
・ジケチミナート置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0044】
【化11】
【0045】
を有する;
・ジケチミナート置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0046】
【化12】
を有する;
・ジケチミナート置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0047】
【化13】
【0048】
を有する;
・RがH、C1〜C6のアルキル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である;
・RがH、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである;
・RがH、Me、Et、nPr、又はiPrである;
・RがHである;
・RがMeである;
・RがEtである;
・RがnPrである;
・RがiPrである;
・RがBuである;
・RがAmである;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0049】
【化14】
【0050】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0051】
【化15】
【0052】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0053】
【化16】
【0054】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0055】
【化17】
【0056】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0057】
【化18】
【0058】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0059】
【化19】
【0060】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0061】
【化20】
【0062】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0063】
【化21】
【0064】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0065】
【化22】
【0066】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0067】
【化23】
【0068】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0069】
【化24】
【0070】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0071】
【化25】
【0072】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0073】
【化26】
【0074】
を有する;
・アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体が、式:
【0075】
【化27】
【0076】
を有する;
・Si含有膜形成用組成物が、約0.1モル%〜約50モル%のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体を含む;
・Si含有膜形成用組成物が、約93%w/w〜約100%w/wのアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体を含む;
・Si含有膜形成用組成物が、約99%w/w〜約100%w/wのアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体を含む;
・Si含有膜形成用組成物が、約0%w/w〜約5%w/wのヘキサン、置換ヘキサン、ペンタン、置換ペンタン、ジメチルエーテル、又はアニソールを含む;
・更に溶媒を含む;
・溶媒が、C1〜C16の炭化水素、THF、DMO、エーテル、ピリジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される;
・溶媒がC1〜C16の炭化水素である;
・溶媒がテトラヒドロフラン(THF)である;
・溶媒がジメチルオキサレート(DMO)である;
・溶媒がエーテルである;
・溶媒がピリジンである;
・溶媒がエタノールである;又は
・溶媒がイソプロパノールである。
【0077】
入口管と出口管とを有し、上に開示したSi含有膜形成用組成物のいずれかが入っているキャニスターを含む、Si含有膜形成用組成物の移送装置も開示される。本開示の装置は、次の態様のうちの1つ以上を含み得る:
・Si含有膜形成用組成物が10ppmw未満の金属汚染物質の総濃度を有する;
・入口管末端の端部がSi含有膜形成用組成物の表面の上方に位置し、出口管の端部がSi含有膜形成用組成物の表面の下方に位置する;
・入口管末端の端部がSi含有膜形成用組成物の表面の下方に位置し、出口管の端部がSi含有膜形成用組成物の表面の上方に位置する;
・入口及び出口にダイアフラムバルブを更に含む;
・Si含有膜形成用組成物が(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMeである;及び
・Si含有膜形成用組成物が(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)である。
【0078】
基板上にケイ素含有膜を堆積させる方法も開示される。上で開示したいずれかのアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体の蒸気は、反応器であって、その中に配置された基板を有する反応器内に導入される。アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体の少なくとも一部は、基板上に堆積されてケイ素含有膜を形成する。本開示の方法は、次の態様のうちの1つ以上を含む:
・反応物を反応器内に導入すること;
・反応物がプラズマ処理される;
・反応物がリモートプラズマ処理される;
・反応物がプラズマ処理されない;
・反応物が、H、NH、(SiHN、ヒドロシラン(SiH、Si、Si、Si10、Si10、Si12等)、クロロシラン及びクロロポリシラン(SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiHCl、SiCl等)、アルキルシラン(MeSiH、EtSiH、MeSiH、EtSiH等)、ヒドラジン(N、MeHNNH、MeHNNHMe等)、有機アミン(NMeH、NEtH、NMeH、NEtH、NMe、NEt、(SiMeNH等)、ジアミン(エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン等)、アミノアルコール(エタノールアミン[HO−CH−CH−NH]、ビスエタノールアミン[HN(COH)]、又はトリスエタノールアミン[N(COH)]等)、ピラゾリン、ピリジン、B−含有分子(B、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノン、トリメチルボロン、トリエチルボロン、ボラジン、置換ボラジン、ジアルキルアミノボラン等)、アルキル金属(トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等)、これらのラジカル種、及びこれらの混合物からなる群から選択される;
・反応物が、H、HCON、NH、SiH、Si、Si、SiHMe、SiHEt、N(SiH、これらの水素ラジカル種、及びこれらの混合物からなる群から選択される;
・反応物が、SiH、Si、Si、Si10、Si10、Si12、これらのラジカル種、及びこれらの混合物から選択される;
・反応物が、MeSiH、EtSiH、MeSiH、EtSiH、これらのラジカル種、及びこれらの混合物から選択される;
・反応物が、NMeH、NEtH、NMeH、NEtH、NMe、NEt、(SiMeNH、これらのラジカル種、及びこれらの混合物から選択される;
・反応物が、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、これらのラジカル種、及びこれらの混合物から選択される;
・反応物が、エタノールアミン[HO−CH−CH−NH]、ビスエタノールアミン[HN(COH)]、トリスエタノールアミン[N(COH)]、これらのラジカル種、及びこれらの混合物から選択される;
・反応物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、これらのラジカル種、及びこれらの混合物から選択される;
・反応物がHである;
・反応物がNHである;
・反応物が、O、O、HO、H、NO、NO、NO、ジオール(エチレングリコール又はヘキサフルオロアセトン水和物等)、これらの酸素ラジカル種、及びこれらの混合物からなる群から選択される;
・反応物がHOである;
・反応物がプラズマ処理されたOである;
・反応物がOである;
・Si含有膜形成用組成物と反応物とが反応器内に同時に導入される;
・反応器が化学蒸着用に構成される;
・Si含有膜形成用組成物と反応物とがチャンバー内に逐次的に導入される;
・反応器が原子層堆積用に構成される;
・堆積がプラズマにより強化される。
【0079】
本発明の特性及び目的を更に理解するために、添付の図面と併せて以降の詳細な説明を参照すべきであり、図面中の同様の要素には同じ又は類似の参照番号が与えられている。
【0080】
アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体を含むSi含有膜形成用組成物、それを合成する方法、及び半導体製造用のケイ素含有膜を堆積するためにそれを使用する方法が開示される。
【0081】
本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体は、式RSi−CH−SiR(式中、各Rは、独立に、H、ハライドX、ヒドロカルビル基、又はアルキルアミノ基であり、ただし、少なくとも1つのRは、ハライドXであり、及び少なくとも1つのRは、式NR(式中、各Rは、独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である)を有するアルキルアミノ基であることを条件とする)を有する。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである。RとRとが結合されて1つのN原子上又は隣接するN原子上に環状鎖を形成してもよい。例えば、RとRとが1つのN原子上にピリジン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、又はイミダゾール環構造を形成してもよく、又は隣接するN原子上にアミジン配位子又はジケチミン配位子を形成してもよい。
【0082】
好ましくは、少なくとも1つのRはハライドであり、特にALDについて、より具体的にはClである。ハライドはこれらの高い反応性について知られている。本出願人らは、本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体上の少なくとも1つのハライドが、ハライド配位子を有さないアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体と比較して堆積速度を改善すると考えている。ハライドは揮発性も改善し得る。
【0083】
Si原子に結合している水素は、前駆体の揮発性の向上に役立ち得ることから、好ましくは少なくとも1つのRはHである。更に、ALD法では、本開示の前駆体のSi−H結合は、H原子がより少ない表面積を占めることで基板表面により多くの分子が得られることから、類似のハロカルボシラン前駆体と比較した場合により大きい1サイクル当たりの成長速度を得るのに役立ち得る。
【0084】
N原子に結合している水素は、前駆体の揮発性を増加させるのに役立ち得ることから、好ましくは少なくともR又はRはHである。更に、ALD法では、本開示の前駆体のN−H結合は、H原子がより少ない表面積を占めることで基板表面により多くの分子が得られることから、類似のハロカルボシラン前駆体と比較した場合により大きい1サイクル当たりの成長速度を得るのに役立ち得る。NHは、NR分子と比較した場合に改善された反応性も与える。
【0085】
更に好ましくは、上で記載したのと同じ理由のため、少なくとも1つのRがH且つRであるか、又はRがHである。
【0086】
当業者は、少量の炭素を有する堆積膜が望まれる場合、少なくとも1つのRがMe、Et、Pr、又はBuなどのアルキル基を含み得ることを認識するであろう。しかし、アルキル基は前駆体の揮発性に悪影響をもたらす場合がある。
【0087】
例示的な1つのアルキルアミノ基を有するアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体としては、
【0088】
【化28】
【0089】
が挙げられ、式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである。RとRとが結合されてN原子に環状鎖を形成してもよい。例えば、NRは、ピリジン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、又はイミダゾール環構造を形成してもよい。
【0090】
例示的なモノアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMe)ClSi−CH−SiCl、(NMe)BrSi−CH−SiBr、(NMe)ISi−CH−SiI、(NMe)FSi−CH−SiF、(NEt)ClSi−CH−SiCl、(NEt)BrSi−CH−SiBr、(NEt)ISi−CH−SiI、(NEt)FSi−CH−SiF、(NMeEt)ClSi−CH−SiCl、(NMeEt)BrSi−CH−SiBr、(NMeEt)ISi−CH−SiI、(NMeEt)FSi−CH−SiF、(NEtH)ClSi−CH−SiCl、(NEtH)BrSi−CH−SiBr、(NEtH)ISi−CH−SiI、(NEtH)FSi−CH−SiF、(NiPrH)ClSi−CH−SiCl、(NiPrH)BrSi−CH−SiBr、(NiPrH)ISi−CH−SiI、又は(NiPrH)FSi−CH−SiFが挙げられる。
【0091】
モノアルキルアミノ−1,1,3,3,3−ペンタクロロ−1,3−ジシラプロパンは、過剰のアミン及び非極性溶媒を混合又は溶解させることにより、約−78℃〜約室温(約25℃)で合成することができる。1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンを混合物にゆっくり添加することで目的の化合物が形成される。反応物は市販されており、又はJ.Organomet.Chem.92,1975 163−168に従って合成することができる。
【0092】
2−エチルアミノ−2,4−ジシラペンタン(HC−(NHEt)HSi−CH−SiH−CH)及び2−4−ビス(エチルアミノ)−2,4−ジシラペンタン(HC−(NHEt)HSi−CH−SiH−(NHEt)−CH)は、それぞれHC−ClHSi−CH−SiH−CH及びHC−ClHSi−CH−SiHCl−CHを出発物質として使用して同様の条件で合成することができる。
【0093】
或いは、エーテル又は任意の他の極性溶媒などの溶媒中、約−78℃〜約室温(約25℃)でアルキルリチウムを1級アミン又は2級アミン(NHR又はNHR)と混ぜ合わせることでリチウムアミドを形成する。リチウムアミドを単離して、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンと反応させることで目的化合物を形成することができる。或いは、リチウムアミド溶液を1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンに添加することで目的化合物を形成することができる。
【0094】
2つのアルキルアミノ基を有する例示的なアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体としては、式:
【0095】
【化29】
【0096】
の対称分子、又は式:
【0097】
【化30】
【0098】
の非対称分子が挙げられ、式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである。RとRとが結合されて1つのN原子上に、又は非対称化合物上で隣接するN原子上に環状鎖を形成してもよい。例えば、NRは、ピリジン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、又はイミダゾール環構造を形成してもよく、又は非対称化合物上でR−N−Si−N−Rがアミジナート又はジケチミナート構造を形成してもよい。
【0099】
例示的な非対称ジアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMeClSi−CH−SiCl、(NMeBrSi−CH−SiBr、(NMeISi−CH−SiI、(NMeFSi−CH−SiF、(NEtClSi−CH−SiCl、(NEtBrSi−CH−SiBr、(NEtISi−CH−SiI、(NEtFSi−CH−SiF、(NMeEt)ClSi−CH−SiCl、(NMeEt)BrSi−CH−SiBr、(NMeEt)ISi−CH−SiI、(NMeEt)FSi−CH−SiF、(NEtH)ClSi−CH−SiCl、(NEtH)BrSi−CH−SiBr、(NEtH)ISi−CH−SiI、(NEtH)FSi−CH−SiF、(NiPrH)ClSi−CH−SiCl、(NiPrH)BrSi−CH−SiBr、(NiPrH)ISi−CH−SiI、又は(NiPrH)FSi−CH−SiFが挙げられる。
【0100】
例示的な対称ジアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMe)ClSi−CH−SiCl(NMe)、(NMe)BrSi−CH−SiBr(NMe)、(NMe)ISi−CH−SiI(NMe)、(NMe)FSi−CH−SiF(NMe)、(NEt)ClSi−CH−SiCl(NEt)、(NEt)BrSi−CH−SiBr(NEt)、(NEt)ISi−CH−SiI(NEt)、(NEt)FSi−CH−SiF(NEt)、(NMeEt)ClSi−CH−SiCl(NMeEt)、(NMeEt)BrSi−CH−SiBr(NMeEt)、(NMeEt)ISi−CH−SiI(NMeEt)、(NMeEt)FSi−CH−SiF(NMeEt)、(NEtH)ClSi−CH−SiCl(NEtH)、(NEtH)BrSi−CH−SiBr(NEtH)、(NEtH)ISi−CH−SiI(NEtH)、(NEtH)FSi−CH−SiF(NEtH)、(NiPrH)ClSi−CH−SiCl(NiPrH)、(NiPrH)BrSi−CH−SiBr(NiPrH)、(NiPrH)ISi−CH−SiI(NiPrH)、又は(NiPrH)FSi−CH−SiF(NiPrH)が挙げられる。
【0101】
約−78℃〜約室温(約25℃)で2当量のアミンを非極性溶媒と混合するか又はその中に溶解する。1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンをゆっくり添加することで目的の化合物が形成される。反応物は市販されており、又はJ.Organomet.Chem.92,1975 163−168に従って合成することができる。
【0102】
或いは、エーテル又は任意の他の極性溶媒などの溶媒中、約−78℃〜約室温(約25℃)でアルキルリチウムを1級アミン又は2級アミン(NHR又はNHR)と混ぜ合わせることでリチウムアミドを形成する。リチウムアミドを単離して、1当量を1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンと反応させることで目的化合物を形成することができる。或いは、1当量のリチウムアミド溶液を1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンに添加することで目的化合物を形成することができる。
【0103】
アミジナート配位子を形成するために不飽和アルキル鎖によって結合している隣接するNR原子を有する2つのアルキルアミノ基を有する例示的なアミジナート置換ハロカルボシラン前駆体としては、
【0104】
【化31】
【0105】
が挙げられ、式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である。R及びR並びに/又はR及びRは、結合されて環状鎖を形成してもよい。
【0106】
例示的なアミジナート置換ハロカルボシラン前駆体としては、(Meamd)SiCl−CH−SiCl、(Etamd)SiCl−CH−SiCl、(iPramd)SiCl−CH−SiCl、(tBuamd)SiCl−CH−SiCl、(Meamd)SiBr−CH−SiBr、(Etamd)SiBr−CH−SiBr、(iPramd)SiBr−CH−SiBr、(tBuamd)SiBr−CH−SiBr、(Meamd)SiF−CH−SiF、(Etamd)SiF−CH−SiF、(iPramd)SiF−CH−SiF、(tBuamd)SiF−CH−SiF、(Meamd)SiI−CH−SiI、(Etamd)SiI−CH−SiI、(iPramd)SiI−CH−SiI、又は(tBuamd)SiI−CH−SiIが挙げられる。
【0107】
約0℃〜約室温(約25℃)でエーテル又は任意の他の有機溶媒などの溶媒中、アルキルリチウムをカルボジイミドと混ぜ合わせてリチウムアミジナートを形成する。反応は発熱的である。リチウムアミジナートを単離して、1当量を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンと反応させることで目的化合物を形成することができる。或いは、1当量のリチウムアミジナート溶液を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンに添加することで目的化合物を形成することができる。
【0108】
3つのアルキルアミノ基を有する例示的なアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体は全て非対称であり、
【0109】
【化32】
【0110】
が挙げられ、式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである。RとRとが結合されて1つのN原子上又は隣接するN原子上に環状鎖を形成してもよい。例えば、NRは、ピリジン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、又はイミダゾール環構造を形成してもよく、又はR−N−Si−N−Rがアミジナート又はジケチミナート構造を形成してもよい。
【0111】
例示的なトリアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMeSi−CH−SiCl、(NMeSi−CH−SiBr、(NMeSi−CH−SiI、(NMeSi−CH−SiF、(NEtSi−CH−SiCl、(NEtSi−CH−SiBr、(NEtSi−CH−SiI、(NEtSi−CH−SiF、(NMeEt)Si−CH−SiCl、(NMeEt)Si−CH−SiBr、(NMet)Si−CH−SiI、(NMeEt)Si−CH−SiF、(NEtH)Si−CH−SiCl、(NEtH)rSi−CH−SiBr、(NEtH)Si−CH−SiI、(NEtH)Si−CH−SiF、(NiPrH)Si−CH−SiCl、(NiPrH)Si−CH−SiBr、(NiPrH)Si−CH−SiI、又は(NiPrH)Si−CH−SiFが挙げられる。
【0112】
或いは、例示的なトリアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMeClSi−CH−SiCl(NMe)、(NMeBrSi−CH−SiBr(NMe)、(NMeISi−CH−SiI(NMe)、(NMeFSi−CH−SiF(NMe)、(NEtClSi−CH−SiCl(NEt)、(NEtBrSi−CH−SiBr(NEt)、(NEtISi−CH−SiI(NEt)、(NEtFSi−CH−SiF(NEt)、(NMeEt)ClSi−CH−SiCl(NMeEt)、(NMeEt)BrSi−CH−SiBr(NMeEt)、(NMeEt)ISi−CH−SiI(NMeEt)、(NMeEt)FSi−CH−SiF(NMeEt)、(NEtH)ClSi−CH−SiCl(NEtH)、(NEtH)BrSi−CH−SiBr(NEtH)、(NEtH)ISi−CH−SiI(NEtH)、(NEtH)FSi−CH−SiF(NEtH)、(NiPrH)ClSi−CH−SiCl(NiPrH)、(NiPrH)BrSi−CH−SiBr(NiPrH)、(NiPrH)ISi−CH−SiI(NiPrH)、又は(NiPrH)FSi−CH−SiF(NiPrH)が挙げられる。
【0113】
約−78℃〜約室温(約25℃)で6当量のアミンを非極性溶媒と混合するか又はその中に溶解する。1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンをゆっくり添加することで目的の化合物が形成される。反応物は市販されており、又はJ.Organomet.Chem.92,1975 163−168に従って合成することができる。
【0114】
或いは、エーテル又は任意の他の極性溶媒などの溶媒中、約−78℃〜約室温(約25℃)でアルキルリチウムを1級アミン又は2級アミン(NHR又はNHR)と混ぜ合わせることでリチウムアミドを形成する。リチウムアミドを単離して、3当量を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンと反応させることで目的化合物を形成することができる。或いは、3当量のリチウムアミド溶液を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンに添加することで目的化合物を形成することができる。
【0115】
4つのアルキルアミノ基を有する例示的なアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体としては、式:
【0116】
【化33】
【0117】
の対称分子、又は式:
【0118】
【化34】
【0119】
の非対称分子が挙げられ、式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである。RとRとが結合されて1つのN原子上又は隣接するN原子上に環状鎖を形成してもよい。例えば、NRは、ピリジン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、又はイミダゾール環構造を形成してもよく、又はR−N−Si−N−Rがアミジナート又はジケチミナート構造を形成してもよい。
【0120】
例示的な非対称テトラアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMeSi−CH−SiCl(NMe)、(NMeSi−CH−SiBr(NMe)、(NMeSi−CH−SiI(NMe)、(NMeSi−CH−SiF(NMe)、(NEtSi−CH−SiCl(NEt)、(NEtSi−CH−SiBr(NEt)、(NEtSi−CH−SiI(NEt)、(NEtSi−CH−SiF(NEt)、(NMeEt)Si−CH−SiCl(NMeEt)、(NMeEt)Si−CH−SiBr(NMeEt)、(NMet)Si−CH−SiI(NMeEt)、(NMeEt)Si−CH−SiF(NMeEt)、(NEtH)Si−CH−SiCl(NEtH)、(NEtH)rSi−CH−SiBr(NEtH)、(NEtH)Si−CH−SiI(NEtH)、(NEtH)Si−CH−SiF(NEtH)、(NiPrH)Si−CH−SiCl(NiPrH)、(NiPrH)Si−CH−SiBr(NiPrH)、(NiPrH)Si−CH−SiI(NiPrH)、又は(NiPrH)Si−CH−SiF(NiPrH)が挙げられる。
【0121】
例示的な対称テトラアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMeClSi−CH−SiCl(NMe、(NMeBrSi−CH−SiBr(NMe、(NMeISi−CH−SiI(NMe、(NMeFSi−CH−SiF(NMe、(NEtClSi−CH−SiCl(NEt、(NEtBrSi−CH−SiBr(NEt、(NEtISi−CH−SiI(NEt、(NEtFSi−CH−SiF(NEt、(NMeEt)ClSi−CH−SiCl(NMeEt)、(NMeEt)BrSi−CH−SiBr(NMeEt)、(NMeEt)ISi−CH−SiI(NMeEt)、(NMeEt)FSi−CH−SiF(NMeEt)、(NEtH)ClSi−CH−SiCl(NEtH)、(NEtH)BrSi−CH−SiBr(NEtH)、(NEtH)ISi−CH−SiI(NEtH)、(NEtH)FSi−CH−SiF(NEtH)、(NiPrH)ClSi−CH−SiCl(NiPrH)、(NiPrH)BrSi−CH−SiBr(NiPrH)、(NiPrH)ISi−CH−SiI(NiPrH)、又は(NiPrH)FSi−CH−SiF(NiPrH)が挙げられる。
【0122】
約−78℃〜約室温(約25℃)で8当量のアミンを非極性溶媒と混合するか又はその中に溶解する。1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンをゆっくり添加することで目的の化合物が形成される。反応物は市販されており、又はJ.Organomet.Chem.92,1975 163−168に従って合成することができる。
【0123】
或いは、エーテル又は任意の他の極性溶媒などの溶媒中、約−78℃〜約室温(約25℃)でアルキルリチウムを1級アミン又は2級アミン(NHR又はNHR)と混ぜ合わせることでリチウムアミドを形成する。リチウムアミドを単離して、4当量を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンと反応させることで目的化合物を形成することができる。或いは、4当量のリチウムアミド溶液を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンに添加することで目的化合物を形成することができる。
【0124】
5つのアルキルアミノ基を有する例示的なアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体は全て対称であり、
【0125】
【化35】
【0126】
が挙げられ、式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルケニル基、又はC3〜C10のアリール基若しくはヘテロ環基である。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、H、Me、Et、nPr、iPr、Bu、又はAmである。RとRとが結合されて1つのN原子上又は隣接するN原子上に環状鎖を形成してもよい。例えば、NRは、ピリジン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、又はイミダゾール環構造を形成してもよく、又はR−N−Si−N−Rがアミジナート又はジケチミナート構造を形成してもよい。
【0127】
例示的なペンタアルキルアミノ置換前駆体としては、(NMeSi−CH−SiCl(NMe、(NMeSi−CH−SiBr(NMe、(NMeSi−CH−SiI(NMe、(NMeSi−CH−SiF(NMe、(NEtSi−CH−SiCl(NEt、(NEtSi−CH−SiBr(NEt、(NEtSi−CH−SiI(NEt、(NEtSi−CH−SiF(NEt、(NMeEt)Si−CH−SiCl(NMeEt)、(NMeEt)Si−CH−SiBr(NMeEt)、(NMet)Si−CH−SiI(NMeEt)、(NMeEt)Si−CH−SiF(NMeEt)、(NEtH)Si−CH−SiCl(NEtH)、(NEtH)rSi−CH−SiBr(NEtH)、(NEtH)Si−CH−SiI(NEtH)、(NEtH)Si−CH−SiF(NEtH)、(NiPrH)Si−CH−SiCl(NiPrH)、(NiPrH)Si−CH−SiBr(NiPrH)、(NiPrH)Si−CH−SiI(NiPrH)、又は(NiPrH)Si−CH−SiF(NiPrH)が挙げられる。
【0128】
約−78℃〜約室温(約25℃)で10当量のアミンを非極性溶媒と混合するか又はその中に溶解する。1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンをゆっくり添加することで目的の化合物が形成される。反応物は市販されており、又はJ.Organomet.Chem.92,1975 163−168に従って合成することができる。
【0129】
或いは、エーテル又は任意の他の極性溶媒などの溶媒中、約−78℃〜約室温(約25℃)でアルキルリチウムを1級アミン又は2級アミン(NHR又はNHR)と混ぜ合わせることでリチウムアミドを形成する。リチウムアミドを単離して、5当量を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンと反応させることで目的化合物を形成することができる。或いは、5当量のリチウムアミド溶液を1当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−1,3−ジシラプロパンに添加することで目的化合物を形成することができる。
【0130】
全ての合成方法について、当業者は、ケイ素のアミノ化に使用される反応物によってSi−C結合が影響を受けないこと、及びジシラプロパン主鎖を有する分子中のSi原子上のアルキル基の付加が、ケイ素上の選択されたアルキル配位子を有する出発物質のジシラプロパンハライドを選択することによって行われ得ることを認識するであろう。例えば、Me(NMe)ClSi−CH−SiCl(NMe)Meの合成は、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロジシラプロパンの代わりの1,1,3,3−テトラクロロ−1,3−ジメチルジシラプロパンと、半分の量のアミンとを使用して、(NMeClSi−CH−SiCl(NMeの合成と同様の条件で進行するであろう。
【0131】
工程の信頼性を確実にするために、ケイ素含有膜形成用組成物は、使用前に約93%w/w〜約100%w/wの範囲、好ましくは約99%w/w〜約100%w/wの範囲の純度まで連続蒸留、分別バッチ式蒸留、又は昇華によって精製されてもよい。ケイ素含有膜形成用組成物は、望ましくない同族種;溶媒;塩化金属化合物;又は他の反応生成物である不純物のうちのいずれかを含んでいる場合がある。ある代替形態では、これらの不純物の総量は0.1%w/w未満である。
【0132】
精製されたケイ素含有膜形成用組成物中のヘキサン、置換ヘキサン、ペンタン、置換ペンタン、ジメチルエーテル、又はアニソールのそれぞれの濃度は、約0%w/w〜約5%w/w、好ましくは約0%w/w〜約0.1%w/wの範囲とすることができる。溶媒は組成物の合成で使用される場合がある。前駆体からの溶媒の分離は、その両方が同程度の沸点を有する場合に困難であり得る。混合物を冷却すると液体溶媒中で固体の前駆体が生成する場合があり、これは濾過によって分離することができる。前駆体生成物をそのおよその分解点を超えて加熱しないという条件で真空蒸留を用いることもできる。
【0133】
ある代替形態では、本開示のSi含有膜形成用組成物は、5%v/v未満、好ましくは1%v/v未満、より好ましくは0.1%v/v未満、更に好ましくは0.01%v/v未満の任意のその望ましくない同族種、反応物、又は他の反応生成物を含む。この代替形態は、より優れた工程再現性を付与することができる。この代替形態は、ハロカルボシラン前駆体の蒸留によって製造することができる。
【0134】
別の代替形態では、本開示のSi含有膜形成用組成物は、特に混合物が改善された工程パラメーターを与える場合、又は目的とする化合物の単離が難しすぎるか又は費用がかかりすぎる場合、5%v/v〜50%v/vの1種以上のその同族種、反応物、又は他の反応生成物を含んでいてもよい。例えば、反応生成物の混合物が、スピンオン又は蒸着に好適である安定な液体混合物をもたらす場合がある。
【0135】
精製されたケイ素含有分子中の微量金属及び半金属の濃度は、それぞれ約0ppb〜約100ppb、より好ましくは約0ppb〜約10ppbの範囲とすることができる。
【0136】
本開示のSi含有膜形成用組成物は、本開示のSi含有膜形成用組成物の移送装置によって半導体処理ツールに送ることができる。図1及び2は、本開示の移送装置1の2つの実施形態を示す。
【0137】
図1は、Si含有膜形成用組成物移送装置1のある実施形態の側面図である。図1において、本開示のSi含有膜形成用組成物10は、2つの導管である入口管30及び出口管40を有する容器20内に入っている。前駆体の技術分野の当業者は、容器20、入口管30、及び出口管40が、高温高圧であっても気体形態のSi含有膜形成用組成物10の漏れを防ぐように製造されることを認識するであろう。
【0138】
好適なバルブとしては、ばね式バルブ又はタイドダイヤフラムバルブが挙げられる。バルブは、制限流量オリフィス(RFO)を更に含んでいてもよい。移送装置1は、ガスマニホールドと接続され、筐体内に入れられている必要がある。ガスマニホールドは、何らかの残存量の自然発火性材料が反応しないように移送装置1を置換する際、空気に曝露され得る配管の安全な排気及びパージを可能にする必要がある。筐体は、SiHなどの発火性材料が放出される場合の火災を抑止するためのセンサー及び防火能力を備えている必要がある。ガスマニホールドは、隔離弁、真空発生装置も備えている必要があり、最小限でバージガスを導入できる必要もある。
【0139】
移送装置1は、漏れがなく、微量の材料さえも逃さないバルブを備えていなければならない。移送装置1は、上で開示したガスキャビネットなどの半導体処理ツールの他の構成要素と、バルブ35及び45を介して流体が流通できるように接続される。好ましくは、容器20、入口管30、バルブ35、出口管40、及びバルブ45は、316L EP又は304ステンレス鋼製である。しかし、当業者は本明細書中の教示において他の非反応性材料も使用され得ること、及び全ての腐食性Si含有膜形成用組成物10がHastelloy又はInconelなどのより耐腐食性の材料の使用を必要とし得ることを認識するであろう。
【0140】
図1において、入口管30の端部31はSi含有膜形成用組成物10の表面の上方に位置している一方、出口管40の端部41はSi含有膜形成用組成物10の表面の下方に位置している。この実施形態では、Si含有膜形成用組成物10は、好ましくは液体形態である。不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない)が入口管30内に導入されてもよい。不活性ガスは容器20を加圧し、その結果、液体のSi含有膜形成用組成物10が出口管40を通って半導体処理ツールの構成要素(図示せず)へと押し出される。リペアされるウエハーが置かれて気相での処理が行われるチャンバーに蒸気を運ぶために、半導体処理ツールは、ヘリウム、アルゴン、窒素、又はこれらの混合物などのキャリアガスの使用あり又はなしで液体のSi含有膜形成用組成物10を蒸気へと変換する気化器を含んでいてもよい。或いは、液体のSi含有膜形成用組成物10は、噴流又はエアロゾルとしてウエハー表面に直接運ばれてもよい。
【0141】
図2は、Si含有膜形成用組成物移送装置1の第2の実施形態の側面図である。図2では、入口管30の端部31はSi含有膜形成用組成物10の表面の下方に位置している一方、出口管40の端部41はSi含有膜形成用組成物10の表面の上方に位置している。図2は、任意選択的な加熱要素25も含んでおり、これはSi含有膜形成用組成物10の温度を上昇させることができる。Si含有膜形成用組成物10は、固体形態であっても液体形態であってもよい。入口管30内に不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない)が導入される。不活性ガスはSi含有膜形成用組成物10を通って流れ、不活性ガスと気化したSi含有膜形成用組成物10との混合物を出口管40及び半導体処理ツールの構成要素へと運ぶ。
【0142】
図1及び2は共にバルブ35及び45を含む。当業者は、流れがそれぞれ導管30及び40を通ることができるように、バルブ35及び45が開放位置又は閉鎖位置に設定されてもよいことを認識するであろう。Si含有膜形成用組成物10が蒸気の形態の場合、又は十分な蒸気圧が固体相/液体相の上方に存在する場合、図1又は2のいずれかの移送装置1、又は存在するあらゆる固体若しくは液体の表面の上方で終端している単一の導管を有するより単純な移送装置が使用されてもよい。この場合、Si含有膜形成用組成物10は、図1におけるバルブ35又は図2におけるバルブ45をそれぞれ単に開放することにより、導管30又は40を通って蒸気の形態で運ばれる。移送装置1は、蒸気の形態で運ぶべきSi含有膜形成用組成物10に十分な蒸気圧を与えるために、例えば任意選択的な加熱要素25を使用することによって適切な温度に維持されてもよい。
【0143】
図1及び2は、Si含有膜形成用組成物移送装置1の2つの実施形態を開示しているが、当業者は、本明細書の開示から逸脱することなしに、入口管30及び出口管40がSi含有膜形成用組成物10の表面の上方又は下方の両方に位置していてもよいことを認識するであろう。更に、入口管30は充填口であってもよい。最後に、当業者は、本明細書の開示から逸脱することなしに、Jurcikらの国際公開第2006/059187号パンフレットに開示されるアンプルなどの他の移送装置を使用して、本開示のSi含有膜形成用組成物10を半導体処理ツールに移送できることを認識するであろう。
【0144】
Si含有膜形成用組成物中の本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体は、カルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーの合成のためのモノマーとして有用なものとなり得る。カルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーは、本開示のSi含有膜形成用組成物の部分的な加水分解又はアンモノリシスによって形成することができる。カルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーは、溶媒、pH調整剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。カルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーは、スピンオン誘電膜配合物を形成するために使用することができる。スピンオン誘電膜配合物は、絶縁膜、パターン形成膜、ハードマスク、リソグラフィー転写層などの、又は反射防止膜のための様々なケイ素含有膜を製造するために使用することができる。例えば、カルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーは、基板に塗布されて膜を形成することができる。典型的には、基板は、カルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーが基板全体に均一に分布するように回転される。当業者は、基板の回転の必要性の有無に関してカルボシランを主体とするオリゴマー又はポリマーの粘度が一因となることを認識するであろう。平均的な膜組成の改良を行うために、得られる膜は、アルゴン、ヘリウム、若しくは窒素などの不活性ガス下で、又はH、O、O、蒸気、NH、又はこれらの混合物のような反応性ガス下で加熱されてもよい。膜の加熱は、1つ、又は好ましくは異なる温度での2つの連続的な工程で行われてもよい。加熱工程に加えて又はその代わりに、得られる膜への電子線又は紫外線の適用など、結合性を向上させる他の手段を使用してもよい。本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体の反応性基(すなわち、中央の炭素原子への結合以外の直接的なSi−C結合なし)は、シロキサンブリッジを形成するための加水分解及び中間体分子の縮合により、又はシラザンブリッジを形成するためのアンモノリシス及び中間体分子の縮合により、得られるオリゴマー又はポリマーの結合性を増加させることができる。
【0145】
Si含有膜形成用組成物は、蒸着法のために使用されてもよい。本開示の方法は、ケイ素含有膜堆積のためのSi含有膜形成用組成物の使用も提供する。本開示の方法は、半導体、太陽電池、LCD−TFT、又はフラットパネル型デバイスの製造において有用な場合がある。方法は、反応器であって、その中に配置された少なくとも1枚の基板を有する反応器内に、本開示のSi含有膜形成用組成物の蒸気を導入することと、蒸着法を使用して本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体の少なくとも一部を基板上に堆積させてSi含有層を形成することとを含む。
【0146】
本開示の方法は、蒸着法を使用する基板上へのバイメタル含有層の形成、より詳しくは、SiMO膜(式中、xは0〜4であってもよく、MはTa、Hf、Zr、Ti、Nb、B、P、Mg、Al、Sr、Y、Ba、As、Sb、Bi、ランタノイド(Erなど)、又はこれらの組み合わせである)の堆積も提供する。
【0147】
本開示の基板上へのケイ素含有層の形成方法は、半導体、太陽電池、LCD−TFT、又はフラットパネル型デバイスの製造において有用な場合がある。本開示のSi含有膜形成用組成物は、当該技術分野で公知の任意の蒸着法を使用してSi含有膜を堆積させることができる。適切な蒸着法の例としては、化学蒸着(CVD)又は原子層堆積(ALD)が挙げられる。例示的なCVD法としては、熱CVD、プラズマ強化CVD(PECVD)、パルスCVD(PCVD)、低圧CVD(LPCVD)、減圧CVD(SACVD)、又は大気圧CVD(APCVD)、ホットワイヤーCVD(HWCVD、cat−CVDとしても知られており、ホットワイヤーが堆積プロセスのためのエネルギー源として機能する)、ラジカル組み込みCVD、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例示的なALD法としては、熱ALD、プラズマ強化ALD(PEALD)、空間的ALD、ホットワイヤーALD(HWALD)、ラジカル組み込みALD、及びこれらの組み合わせが挙げられる。超臨界流体堆積も使用することができる。本開示の方法は、Applied Materials,Incの米国特許出願公開第2014/0051264号明細書(この内容全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている流動性PECVD堆積法において使用することもできる。堆積方法は、好ましくはALD、空間的ALD、又はPE−ALDである。
【0148】
Si含有膜形成用組成物の蒸気は、少なくとも1枚の基板が入っている反応チャンバー内に導入される。反応チャンバー内部の温度及び圧力並びに基板の温度は、少なくとも一部のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体の少なくとも一部を基板上に蒸着するのに適切な条件に保持される。すなわち、気化したSi含有膜形成用組成物をチャンバーに導入した後、チャンバー内の条件は、アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体の少なくとも一部が基板上に堆積してケイ素含有膜を形成するようにされる。Si含有層の形成を補助するために共反応物も使用することができる。
【0149】
反応チャンバーは、限定するものではないが、平行板型反応器、コールドウォール型反応器、ホットウォール型反応器、シングルウエハー反応器、マルチウエハー反応器、又は他のこのようなタイプの堆積システムなど、堆積法が中で行われる装置の任意の筐体又はチャンバーであってもよい。これらの例示的な反応チャンバーの全てがALD反応チャンバーとして機能することができる。反応チャンバーは、約0.5mTorr〜約20Torrの範囲の圧力に維持されてもよい。更に、反応チャンバー内の温度は約20℃〜約600℃の範囲であってもよい。当業者は、各アルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体のための最適な堆積温度範囲が望ましい結果を得るために実験によって決定できることを認識するであろう。
【0150】
反応器の温度は、基板ホルダーの温度を制御する及び/又は反応器壁の温度を制御することによって制御することができる。基板を加熱するために使用される装置は当該技術分野で公知である。反応器壁は、十分な成長速度で、望ましい物理的状態及び組成の望ましい膜を得るために十分な温度まで加熱される。反応器壁が加熱され得る非限定的な例示的な温度範囲には、約20℃〜約600℃が含まれる。プラズマ堆積法が利用される場合、堆積温度は約20℃〜約550℃の範囲であってもよい。或いは、熱的方法が行われる場合、堆積温度は約300℃〜約600℃の範囲であってもよい。
【0151】
或いは、十分な成長速度で、望ましい物理的状態及び組成の望ましいケイ素含有膜を得るために十分な温度まで基板が加熱されてもよい。基板が加熱され得る非限定的な例示的な温度範囲には150℃〜600℃が含まれる。好ましくは、基板の温度は500℃以下に保たれる。
【0152】
ケイ素含有膜がその上に堆積される基板の種類は、意図される最終用途に応じて変わるであろう。基板は、その上でプロセスが行われる材料として通常定義される。基板は、半導体、太陽電池、フラットパネル、又はLCD−TFT型デバイスの製造において使用される任意の適切な基板であってもよい。適切な基板の例としては、シリコン、シリカ、ガラス、プラスチック、Ge、又はGaAsウエハーなどのウエハーが挙げられる。ウエハーは、前の製造工程と異なる材料がその上に堆積された1層以上の層を有していてもよい。例えば、ウエハーは、シリコン層(結晶、アモルファス、多孔質等)、ケイ素酸化物層、ケイ素窒化物層、ケイ素酸窒化物層、炭素でドープされたケイ素酸化物(SiCOH)層、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。更に、ウエハーは、銅層、タングステン層、又は金属層(例えば、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、又は金)を含んでいてもよい。ウエハーは、マンガン、酸化マンガン、タンタル、窒化タンタル等のバリア層を含んでいてもよい。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)[PEDOT:PSS]などのプラスチック層も使用されてよい。層は平面状であってもよく、又はパターン化されていてもよい。いくつかの実施形態では、基板は、例えばCH(式中、xは0より大きい(例えば、x≦4))などの水素化炭素製のパターン化されたフォトレジスト膜であってもよい。いくつかの実施形態では、基板は、MIM、DRAM、又はFeRam技術における誘電材料として使用される酸化物の層(例えば、ZrO系材料、HfO系材料、TiO系材料、希土類酸化物系材料、三元酸化物系材料等)、又は銅とlow−k層との間の酸素バリア層として使用される窒化物系膜(例えば、TaN)を含んでいてもよい。本開示の方法は、ウエハー上に直接、又はウエハー上面の1つ又は2つ以上の層(パターン化された層が基板を形成する場合)の上に直接、ケイ素含有層を堆積させることができる。更に、当業者は、本明細書で使用される用語である「膜」又は「層」が、表面の上に重ねられるか表面全体に広げられる何らかの材料の厚さを意味し、表面は溝又は線であってもよいことを認識するであろう。本明細書及び請求項全体を通じて、ウエハー及びその上の任意の関連する層は基板と呼ばれる。利用される実際の基板は、利用される具体的な前駆体の実施形態にも依存し得る。しかし、多くの場合、利用される好ましい基板は、水素化炭素、TiN、Ru、及びポリシリコン又は結晶シリコン基板などのSi型の基板から選択されるであろう。
【0153】
本開示のSi含有膜形成用組成物は、純粋な形態で供給されてもよく、又はトルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカン、ドデカン、オクタン、ヘキサン、ペンタン、第3級アミン、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、エチルメチルケトン、1,4−ジオキサン、又は他のものなどの好適な溶媒とのブレンド物として供給されてもよい。本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体は、溶媒中に様々な濃度で存在していてもよい。例えば、結果として得られる濃度は、約0.05M〜約2Mの範囲であってもよい。
【0154】
純粋な又はブレンドされたSi含有膜形成用組成物は、配管及び/又は流量計などの従来の手段によって蒸気の形態で反応器に導入される。蒸気の形態の組成物は、直接気化や蒸留などの従来の気化工程により、吹き込みにより、又はXuらの国際公開第2009/087609号パンフレットに開示されているもののような昇華装置を使用することにより、純粋な又はブレンドされた組成物を気化させることで製造することができる。純粋な又はブレンドされた組成物は液体状態で気化装置に供給され、そこで気化した後、それが反応器に導入されてもよい。或いは、純粋な又はブレンドされた組成物は、組成物が入った容器内にキャリアガスを通すことにより、又は組成物中にキャリアガスを吹き込むことにより気化させることができる。キャリアガスとしては、これらに限定するものではないが、Ar、He、又はN、及びこれらの混合物を挙げることができる。キャリアガスを用いた吹き込みは、純粋な又はブレンドされた組成物中に存在する全ての溶存酸素を除去することもできる。その後、キャリアガス及び組成物は蒸気として反応器内に導入される。
【0155】
必要に応じて、Si含有膜形成用組成物をその液相とし、且つ十分な蒸気圧を有するようにすることが可能な温度まで容器を加熱してもよい。容器は、例えば0〜150℃の範囲の温度に維持することができる。気化したSi含有膜形成用組成物の量を制御するために、容器の温度を公知の方法で調整してもよいことが当業者に認識される。
【0156】
本開示のSi含有膜形成用組成物に加えて、反応ガスも反応器内に導入されてよい。反応ガスは、O;O;HO;H;O・又はOH・などの酸素含有ラジカル;NO;NO;ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;NO、NO、又はカルボン酸のラジカル種;パラホルムアルデヒド;及びこれらの混合物のうちの1つなどの酸化剤であってもよい。好ましくは、酸化剤は、O、O、HO、H、NO、NO、NO、ジオール(エチレングリコール又はヘキサフルオロアセトン水和物など)、O・又はOH・などのこれらの酸素含有ラジカル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ALD法が行われる場合、共反応物はプラズマ処理された酸素、オゾン、又はこれらの組み合わせである。酸化ガスが使用される場合、得られるケイ素含有膜も酸素を含むであろう。
【0157】
或いは、反応ガスとしては、H、HCO、NH、(SiHN、ヒドロシラン(SiH、Si、Si、Si10、Si10、Si12等)、クロロシラン及びクロロポリシラン(SiHCl、SiHCl、SIHCl、SiCl、SiHCl、SiCl等)、アルキルシラン((CHSiH、(CSiH、(CH)SiH、(C)SiH等)、ヒドラジン(N、MeHNNH、MeHNNHMe等)、有機アミン(N(CH)H、N(C)H、N(CHH、N(CH、N(CH、N(C、(SiMeNH等)、ジアミン(エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等)、アミノアルコール(エタノールアミン[HO−CH−CH−NH]、ビスエタノールアミン[HN(COH)]、又はトリスエタノールアミン[N(COH)]等)、ピラゾリン、ピリジン、B含有分子(B、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノン、トリメチルボロン、トリエチルボロン、ボラジン、置換ボラジン、ジアルキルアミノボラジン等)、アルキル金属(トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等)、これらのラジカル種、並びにこれらの混合物のうちの1つなどを選択することができる。
【0158】
反応ガスをそのラジカル形態に分解するために、反応ガスをプラズマによって処理してもよい。プラズマで処理する場合、還元剤としてNを使用することもできる。例えば、プラズマは、約50W〜約500W、好ましくは約100W〜約200Wの範囲の出力で発生させてもよい。プラズマは反応器自体内で発生させてもよく、又はその中に存在させてもよい。或いは、プラズマは、例えば遠くに配置されたプラズマシステム中など、反応器から離れた位置に通常存在していてもよい。当業者は、そのようなプラズマ処理に適切な方法及び装置を認識するであろう。
【0159】
必要とされるケイ素含有膜が、例えばTa、Hf、Zr、Ti、Nb、P、B、Mg、Al、Sr、Y、Ba、As、Sb、Bi、ランタニド(Er等)、又はこれらの組み合わせなど(これらに限定されない)の別の元素も含む場合、共反応物は、これらに限定するものではないが、Ln(RCp)などの元素含有アルキル、Nb(Cp)(NtBu)(NMeなどの元素含有アミン、及びこれらの任意の組み合わせから選択される元素含有前駆体を含んでいてもよい。
【0160】
本開示のSi含有膜形成用組成物は、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン、テトラクロロジシラン、又はオクタクロロトリシランなどのハロシラン又はポリハロジシラン、及び国際公開第2011/123792号パンフレット(この内容全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているようなSiN膜又はSiCN膜を形成するための1種以上の共反応物ガスと共に使用してもよい。
【0161】
Si含有膜形成用組成物及び1種以上の共反応物は、反応チャンバー内へ同時に(化学蒸着)、逐次的に(原子層堆積)、又は他の組み合わせで導入されてもよい。例えば、Si含有膜形成用組成物が1つのパルスで導入され、2種類の追加的な元素源が別のパルスで一緒に導入されてもよい[改良型原子層堆積]。或いは、Si含有膜形成用組成物の導入前に既に反応チャンバーが共反応物を含んでいてもよい。共反応物は、反応チャンバーに局在するかこれから離れて位置するプラズマシステムを通過し、ラジカルへと分解することができる。或いは、他の元素源がパルスによって導入される一方、Si含有膜形成用組成物が連続的に反応チャンバー内へ導入されてもよい(パルス化学蒸着)。各例において、導入される過剰量の構成要素を取り除くためにパルス後にパージ工程又は排気工程が行われてもよい。各例において、パルスは約0.01秒〜約10秒、或いは約0.3秒〜約3秒、或いは約0.5秒〜約2秒の範囲の時間にわたり継続されてもよい。別の選択肢では、Si含有膜形成用組成物及び1種以上の共反応物はシャワーヘッドから同時に噴霧されてもよく、その下で複数のウエハーを保持しているサセプターが回転される(空間的ALD)。
【0162】
ある非限定的な例示的な化学蒸着型のプロセスでは、Si含有膜形成用組成物の気相と、Hなどの反応ガスとは同時に反応チャンバーへ導入され、ここで、これらは反応して基板上に目的のSiC膜を堆積させる。
【0163】
ある非限定的な例示的な原子層堆積型のプロセスでは、Si含有膜形成用組成物の気相は反応チャンバーへ導入され、ここで、アルキルアミノ置換ハロカルボシランの少なくとも一部が基板上に化学吸着又は物理吸着される。その後、過剰のSi含有膜形成用組成物は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することにより、反応チャンバーから取り除くことができる。酸素源は、化学吸着又は物理吸着されたアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体と自己制限的にこれが反応する場所である、反応チャンバー内に導入される。全ての過剰の酸素源は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することにより、反応チャンバーから取り除かれる。目的とする膜がケイ素酸化物膜である場合、この2工程プロセスによって望ましい膜厚を得ることができ、又は必要な厚さを有する膜が得られるまで繰り返すことができる。
【0164】
或いは、目的とする膜がケイ素金属/半金属酸化物膜(すなわち、SiMO(式中、xは0〜4であってもよく、MはTa、Hf、Zr、Ti、Nb、P、B、Mg、Al、Sr、Y、Ba、As、Sb、Bi、ランタニド(Er等)、又はこれらの組み合わせ))である場合、上述の2工程プロセス後、元素含有前駆体の第2の蒸気を反応チャンバー内に導入することができる。元素含有前駆体は、堆積させるケイ素元素酸化物膜(すなわち、元素はTa、Hf、Zr、Ti、Nb、P、B、Mg、Al、Sr、Y、Ba、As、Sb、Bi、又はランタニドであってもよい)の性質に基づいて選択されるであろう。反応チャンバー内への導入後、元素含有前駆体はケイ素酸化物基板上に化学吸着又は物理吸着する。全ての過剰な元素含有前駆体は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することにより、反応チャンバーから取り除かれる。ここでも酸素源を反応チャンバー内に導入して化学吸着又は物理吸着した元素含有前駆体と反応させてもよい。過剰の酸素源は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することにより、反応チャンバーから取り除かれる。必要とされる膜厚が得られた場合、プロセスを終了することができる。しかし、より厚い膜が望まれる場合、4工程プロセス全体を繰り返してもよい。Si含有膜形成用組成物、元素含有前駆体、及び酸素源の供給を交代で行うことで、望ましい組成及び厚さの膜を堆積させることができる。
【0165】
更に、パルスの数を変化させることにより、望ましい化学量論のM:Si比を有する膜を得ることができる。例えば、SiMO膜は、Si含有膜形成用組成物の1回のパルスと元素含有前駆体の1回のパルスとを用い、各パルス後に酸素源のパルスを行うことによって得ることができる。しかし、望ましい膜を得るために必要とされるパルスの数は、得られる膜の化学量論比と一致しない場合があることが当業者に認識されるであろう。
【0166】
別の選択肢では、Si膜又は緻密なSiCN膜は、本開示のSi含有膜形成用組成物と、式Si2a+2−b(式中、XはF、Cl、Br、又はIであり、a=1〜6であり、b=1〜(2a+2)である)のハロシラン化合物又は式−Si2c−d−(式中、XはF、Cl、Br、又はIであり、c=3〜8であり、d=1〜2cである)の環状ハロシラン化合物とを用いて、ALD法又は改良型ALD法によって堆積させることができる。好ましくは、ハロシラン化合物は、トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン(HCDS)、ペンタクロロジシラン(PCDS)、テトラクロロジシラン、又はヘキサクロロシクロヘキサシランである。Si−X結合中のより低い結合エネルギーのため、低い堆積温度が必要とされる場合、これらの化合物中のClは、Br又はIで置換されてもよいことを当業者は認識するであろう(すなわち、Si−Cl=456kJ/mol;Si−Br=343kJ/mol;Si−I=339kJ/mol)。必要に応じて、堆積のためにNHなどのN含有共反応物を更に利用してもよい。本開示のSi含有膜形成用組成物及びハロシラン化合物の蒸気は、最終的な膜に必要とされる濃度に応じて、反応器内に逐次的に導入されてもよく、又は同時に導入されてもよい。前駆体注入のための選択される順序は、目標とされる望ましい膜組成に基づいて決定されるであろう。前駆体導入工程は、堆積された層が適切な厚さになるまで繰り返されてもよい。当業者は、空間的ALD装置を使用する場合、導入パルスが同時であってもよいことを認識するであろう。国際公開第2011/123792号パンフレットに記載のように、SiCN膜中の炭素と窒素の量を調整するために、前駆体導入の順序を変更してもよく、また堆積はNH共反応物ありで行ってもなしで行ってもよい。
【0167】
また更に別の選択肢では、ケイ素含有膜は、本開示のSi含有膜形成用組成物と、ラジカル窒素含有共反応物又はラジカル酸素含有共反応物とを使用して、米国特許出願公開第2014/0051264号明細書に開示されている流動性PECVD法によって堆積させてもよい。それぞれNH又はHOなどのラジカル窒素含有共反応物又はラジカル酸素含有共反応物は、リモートプラズマシステム中で発生させられる。ラジカル共反応物及び本開示の組成物の気相は、反応チャンバー内に導入され、ここで、これらは反応して基板上に最初は流動性である膜を堆積する。本出願人らは、本開示のアルキルアミノ置換ハロカルボシラン前駆体のアルキルアミノ基の2つのSi原子間の炭素原子及び窒素原子が堆積膜の流動性を更に改善し、その結果、膜のボイドがより少なくなると考えている。
【0168】
また別の代替形態では、ケイ素、酸素、及び炭素を含有する薄膜は、株式会社日立国際電気の米国特許出願公開第2014/287596号明細書、及びL’Air Liquide,Societe Anonyme pour l’Etude et l’Exploitation des Procedes Georges Claudes(この内容全体が本明細書に組み込まれる)に開示のように、所定の回数のサイクル行うことによりALDによって基板上に堆積させることができ、サイクルは、本開示のSi含有膜形成用組成物及び第1の触媒ガスを基板に供給することと、酸化ガス及び第2の触媒ガスを基板に供給することとを含む。例えば、本開示のSi含有膜形成用組成物で第0095段落〜第0151段落中のBTCSMと置き換え、本開示のSi含有膜形成用組成物及びピリジンガスを供給し、残留ガスを除去し、HO及びピリジンガスを供給し、残留ガスを除去し、所定の回数繰り返すことで、望ましい厚さのSiOC層を得ることができる。本出願人らは、本開示のSi含有膜形成用組成物が、得られるSi含有膜中のSi−C−Si主鎖を保持するのに役立ち得ると考えており、これは得られる膜のフーリエ変換赤外スペクトルによって示され得る。更に、HO酸化ガスは、膜からの本開示のSi含有膜形成用組成物由来の任意の存在し得るハライド不純物の除去に役立つ。
【0169】
また別の代替形態では、ケイ素、酸素、及び炭素を含有する薄膜は、2サイクルの所定の回数を行うことにより基板上に堆積させることができ、1回目のサイクルは、上述の通りに、本開示のSi含有膜形成用組成物及び第1の触媒ガスを基板に供給することと、酸化ガス及び第2の触媒ガスを基板に供給することとを含み、これに続く第2のサイクルは、非ハロゲン化シラン及び第1の触媒ガスを基板に供給することと、酸化ガス及び第2の触媒ガスを基板に供給することとを含む。非ハロゲン化シランとしては、SiH、Si、HSi(NEtなどのHSi(NR4−x(式中、xは1〜3であり、Rはアルキル基である)、又はRSi−CH−SiR(式中、Rは、独立に、H又はアルキルアミノ基であるが、ハライドではない)が挙げられる。例えば、方法は、本開示のSi含有膜形成用組成物及びピリジンガスを供給し、残留ガスを除去し、HO及びピリジンガスを供給し、残留ガスを除去し、(MeN)Si−CH−Si(NMeなどの非ハロゲン化シラン及びピリジンガスを供給し、残留ガスを除去し、HO及びピリジンガスを供給し、残留ガスを除去し、所定の回数繰り返すことで、望ましい厚さのSiOC層を得ることを含んでいてもよい。2回目のサイクルはハライドフリーであり、より少ないHCl副生成物のみを生成するようにすることができ、これによって得られるSi含有膜中のSi−C−Si主鎖をより維持することができる。
【0170】
上で論じた方法により得られるケイ素含有膜は、Si、SiO、SiN、SiON、SiC、SiOC、SiCN、SiCOH、又はMSiO(式中、MはHf、Zr、Ti、Nb、Ta又はGeなどの元素であり、xは、当然のことながら、Mの酸化状態に応じて4であってもよい)を含み得る。当業者は、適切なハロカルボシラン前駆体及び共反応物の妥当な選択によって望ましい膜組成が得られ得ることを認識するであろう。
【0171】
目的の膜厚が得られた後、膜に対し、熱アニーリング、炉アニーリング、急速熱アニーリング、UV硬化、電子線硬化、及び/又はプラズマガス曝露などの更なる処理を行ってもよい。当業者は、これらの追加的な処理工程を行うために利用されるシステム及び方法を認識している。例えば、ケイ素含有膜は、不活性雰囲気下、H含有雰囲気下、N含有雰囲気下、O含有雰囲気下、又はこれらの組み合わせの下、約0.1秒〜約7200秒の範囲の時間、約200℃〜約1000℃の範囲の温度に曝露してもよい。最も好ましくは、温度は、H含有雰囲気下、3600秒未満で600℃である。得られる膜は、より少ない不純物のみを含む場合があり、その結果、向上した性能特性を有し得る。アニーリング工程は、堆積プロセスが行われるのと同じ反応チャンバー内で行ってもよい。或いは、基板を反応チャンバーから取り出し、アニーリング/フラッシュアニーリング工程を別の装置内で行ってもよい。上述の後処理方法のいずれも、特に熱アニーリングがケイ素含有膜の炭素汚染及び窒素汚染を低減するのに効果的であることが見出された。
【実施例】
【0172】
以降の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を更に詳しく説明するために与えられる。しかし、実施例は全てを網羅することを意図しておらず、また本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0173】
実施例1:(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMeの合成
ClSi−CH−SiCl+(MeN)Si−CH−Si(NMe→(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe
【0174】
還流冷却器を備えた200mLのシュレンクフラスコに1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ジメチルアミノ)−1,3−ジシラプロパン(39.1g、0.123mol)を入れ、引き続き撹拌しながらビス(トリクロロシリル)メタン(17.4g、0.062mol)をゆっくり添加することで無色の液体を得る。最初に若干の発煙が観察された。添加が完了した後、反応温度を7時間60℃に上げる。作業時間の終わりに加熱を取り外し、反応を室温で終夜(14時間)撹拌した。翌日、反応を再び60℃で7時間加熱して無色の液体を得る。GCMC分析から、反応が約84%の目的生成物を含み、完了していることが示される。
【0175】
得られた混合物を、300mmのVigreauxカラム(50〜58℃@20mTorr)を使用して減圧下で蒸留することで無色液体を得る。明確な終了点は観察されない。GCMSによる分析から93%(44.7g、単離収率81.3%)の改善された純度が示される。
【0176】
400MHzの装置で取得した最終生成物のNMRは図3に示されている。(MeN)ClSiCHSiCl(NMe、C中:H NMR:δ0.61(s,2H,−CH−)、2.43(s,24H,−(CH)。
【0177】
オープンカップ条件での熱重量分析(TGA)により1%w/w未満の残留物が生じる。図4を参照されたい。
【0178】
実施例2:(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)の一段階合成
ClSi−CH−SiCl+2LiNMe→(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)+2LiCl
【0179】
2つの還流冷却器とメカニカルスターラーとを備えた1Lの四口丸底フラスコ中、ヘキサン(500mL)をドライアイス/IPA浴中で−78℃に冷却した。小さいMeNHシリンダーを秤の上においてゼロに設定した。シリンダーを、バブラー及び逆流安全弁を介してシュレンクライン(パージのため)及び反応フラスコの1つの還流冷却器に繋いだ。シュレンクラインの排気は、30%のHSO水溶液が入った洗浄瓶及び水が入った洗浄瓶と繋いだ後にドラフトチャンバーへ放出した。還流冷却器は−20℃に冷却した。シリンダーバルブをゆっくり開き、約22g(0.48mol、1.2当量)のMeNHをヘキサン中に凝縮させた。バルブを閉じた後、ラインを窒素でパージし、シリンダーを外し、還流冷却器上の接続を閉じた。グローブボックス中で滴下漏斗に250mL(0.40mol、1.0当量)のnBuLi溶液(1.6Mのヘキサン溶液)を入れた。窒素を流しながら滴下漏斗を反応フラスコに繋いだ。nBuLiを1時間かけてゆっくり添加した。滴下漏斗を約40mLのヘキサンで洗い流した。混合物を1.5時間、室温に温まるまで放置し、その後、40℃で1時間撹拌してから次の工程で懸濁液を使用した。
【0180】
調製したばかりのMeNLi懸濁液(0.40mol、2.0当量)をドライアイス/IPA浴中で−78℃に冷却した。グローブボックス中で滴下漏斗にClSi−CH−SiCl(56.58g、0.20mol、1.0当量)のヘキサン(50mL)溶液を入れた。窒素を流しながら滴下漏斗を反応フラスコに取り付けた。懸濁液にClSi−CH−SiCl溶液を30分かけてゆっくり添加した。反応混合物を室温に温まるまで放置し、終夜撹拌した。生成物の溶液を、窒素下でのカニューレ濾過又はグラスウールフィルターを通した濾過により、磁気撹拌子を備えた1Lの丸底フラスコに移すことでLiClと分離した。揮発性物質を減圧下で除去した。充填カラムを使用して粗生成物を蒸留した(Tbath=130℃、Tvap=42℃、p=50〜200mTorr)。残留物には主に(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)、(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe、及び(MeN)Si−CH−SiCl(NMeが含まれていた。蒸留されたフラクションには42.14g(0.14mol、70%)の生成物が含まれていた。
【0181】
実施例3:(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)の2段階合成
ClSi−CH−SiCl+6LiNMe→(MeN)Si−CH−Si(NMe+6LiCl
(MeN)Si−CH−Si(NMe+2ClSi−CH−SiCl→3(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe
【0182】
(MeN)Si−CH−Si(NMeの調製:調製したばかりのMeNLi懸濁液(0.40mol、6.6当量)をドライアイス/IPA浴中で−78℃に冷却した。グローブボックス中で滴下漏斗にClSi−CH−SiCl(16.98g、0.06mol、1.0当量)のヘキサン(50mL)溶液を入れた。窒素を流しながら滴下漏斗を反応フラスコに取り付けた。懸濁液にClSi−CH−SiCl溶液を30分かけてゆっくり添加した。反応混合物を室温に温まるまで放置し、終夜撹拌した。生成物の溶液を、窒素下でのカニューレ濾過又はグラスウールフィルターを通した濾過により、磁気撹拌子を備えた1Lの丸底フラスコに移すことでLiClと分離した。揮発性物質を減圧下で除去した。カラムなしで粗生成物を蒸留した(Tbath=130℃、Tvap=98〜107℃、p=260mTorr)。蒸留されたフラクションには19.14g(0.057mol、95%)の生成物が含まれていた。
【0183】
(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)の調製:グローブボックス中、(MeN)Si−CH−Si(NMe(54.95g、0.164mol、1.0当量)とClSi−CH−SiCl(92.91g、0.328mol、2.0当量)とをSchott瓶内において室温で混合した。発熱は観察されなかった。混合物を数分にわたり慎重に混合した後、室温でグローブボックス中に貯蔵することで147.68g(0.492mol、100%)の生成物を得た。H−NMR分析から、90%の(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)、5%の(MeN)ClSi−CH−SiCl、及び5%の(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)が示された。この比率は80℃で96時間加熱した後でも変化しなかった。
【0184】
オープンカップ条件での熱重量分析(TGA)により、0.5%w/w未満の残留物が生じる。図5を参照されたい。
【0185】
安定性試験は、室温及び80℃において1週間及び1か月間にわたって行った。使用温度での前駆体の安定性は重要である。前駆体が使用される際、その容器は十分な蒸気圧及び膜成長速度を得るために加熱される場合がある。そのため、前駆体は高温で安定である必要がある。いずれの試料も色が変化しなかった。同様に、図6は試料についてのTGAが変化しなかったことを示す。
【0186】
実施例4:原子層堆積
図7は、以降の試験で使用される堆積装置の概略図である。装置は、基板試験片105が入ったホットウォール管型反応器100を含む。ポンプ110は、ホットウォール管型反応器100から内容物を取り除く。
【0187】
本開示のSi含有膜形成用組成物の蒸気は、ライン201を介して移送装置200からホットウォール管型反応器100へ導入される。Nなどの不活性ガス205は、ライン206を介して移送装置200へ運ばれる。不活性ガス205もライン207を介して反応器100へ運ばれ得る。
【0188】
酸化ガスは、ライン301を介して移送装置300からホットウォール管型反応器100へと導入することができる。酸化ガスがオゾンの場合、ライン301はオゾン発生装置303及びオゾンモニター304を含んでいてもよい。酸化ガスは排気口311へも運ばれ得る。
【0189】
窒素含有ガスは、ライン401を介して移送装置400からホットウォール管型反応器100へと導入することができる。
【0190】
当業者は、ライン201、206、207、301、及び401が多数の圧力ゲージ、チェックバルブ、バルブ、及び圧力調整装置を含み得ることと、圧力調整用又はバイパス流用の追加的なラインが図面の簡略化のために含まれなかったこととを認識するであろう。
【0191】
SiOC膜は、Si源200としての(MeN)ClSi−CH−SiCl(NMe)、酸素源300としての水(HO)、及び触媒400としてのピリジンを使用したALDにより、自然酸化物105を有するSi(100)基板上に堆積された。図7の反応炉100中の圧力は1Torrに調節され、温度は50℃であり、100sccmのN 205が連続的に流された。堆積プロセスは、次の工程を含む:1)3sccmのSi源200及びピリジン400のパルスを反応炉100に10秒間導入する工程、2)1slmのN 205を使用して反応炉100を30秒間パージする工程、3)56sccmのHO 300及び33sccmのピリジン400のパルスを反応炉100に20秒間導入する工程、及び4)1slmのN 205により反応炉100を40秒間パージする工程。1)〜4)の手順は150回繰り返された。堆積された層は、1.4Å/サイクルの成長速度基準で19.7nmの厚さを達成した。
【0192】
図8は、得られたSiOC膜(37.4原子%のSi、45.8原子%のO、12.7原子%のC、1.6原子%のCl、及び1.4原子%のNを含む)のXPS深さ方向分析を示すグラフである。
【0193】
添付の請求項で表現される本発明の趣旨及び範囲の範囲内で、本発明の特性を説明するために本明細書で説明及び図示してきた詳細、材料、工程、及び部品の構成に対する多くの追加的な変更形態が当業者によってなされ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明を上に示した実施例中の特定の実施形態及び/又は添付の図面に限定することは意図されていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8