(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイヤのトレッド面視において、前記湾曲形状部分の曲率半径は、前記溝部のタイヤ幅方向の溝幅の3倍以上かつ10倍以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
前記突起部の前記溝底からのタイヤ径方向高さは、トレッド接地面の前記溝底からのタイヤ径方向高さよりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
前記突起部の前記溝底からのタイヤ径方向高さは、前記トレッド接地面の前記溝底からのタイヤ径方向高さの0.03倍よりも大きく、かつ0.4倍以下であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
前記タイヤ周方向における、前記第1端部と前記第1溝壁とを連結する位置、あるいは、前記第2端部と前記第2溝壁とを連結する位置に形成されたサイプは、前記タイヤ径方向の内側端が、前記複数のサイプの他のサイプの前記タイヤ径方向の内側端よりも、前記タイヤ径方向で外側に位置することを特徴とする請求項8に記載のタイヤ。
前記タイヤ周方向において、前記突起部の第1端部と前記第1溝壁とを連結する位置と、前記浅溝が前記第1溝壁に開口する位置とが異なる位置であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
(1)タイヤの概略構成
本発明に係るタイヤの第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態に係るタイヤ1の概略構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッドパターンを示す展開図である。
図2は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向TW及びタイヤ径方向TDに沿った断面図である。本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ赤道線CLを基準として左右非対称の形状を有する。なお、タイヤ1は、左右対称の形状を有していてもよい。
【0016】
本実施形態に係るタイヤ1は、正規リム5に組み付けられた後に空気を充填する空気入りタイヤを想定している。なお、正規リム5に組み付けられたタイヤ1に充填される気体は、空気に限らず、窒素ガスなどの不活性ガスを充填してもよい。さらに、冷却用の液体(クーラント)が充填されてもよい。
【0017】
タイヤ1は、トラック又はバス(TB)に装着される重荷重用タイヤ(TBRタイヤ)に好適に用いられる。タイヤ1は、乗用車などに装着される空気入りタイヤと比較して、トレッド部10のゴムゲージ(ゴム厚さ)が厚い。具体的には、タイヤ1は、タイヤ外径をOD、タイヤ赤道線CLの位置におけるトレッド部10のゴムゲージをDCとした場合に、DC/OD≧0.005を満たす。
【0018】
ここで、タイヤ外径OD(単位:mm)とは、タイヤ1の外径が最大となる部分(一般的には、タイヤ赤道線CL付近におけるトレッド部10)のタイヤ1の直径である。ゴムゲージDC(単位:mm)は、タイヤ赤道線CLの位置におけるトレッド部10のゴム厚さである。ゴムゲージDCには、ベルト層40の厚さは含まれない。なお、タイヤ赤道線CLを含む位置に溝部が形成されている場合には、溝部に隣接する位置におけるトレッド部10のゴム厚さとする。
【0019】
図2に示すように、タイヤ1は、路面と接するトレッド部10と、トレッド部10に連なり、トレッド部10よりもタイヤ径方向TD内側に位置するサイドウォール部20と、サイドウォール部20に連なり、サイドウォール部20よりもタイヤ径方向TD内側に位置するビード部30とを有する。
【0020】
トレッド部10は、タイヤ転動時に、路面に接地するトレッド接地面11を有する。トレッド部10には、タイヤ周方向TCに延びる溝部が形成されている。
【0021】
また、
図1に示すように、本実施形態では、トレッド部10は、溝部として、タイヤ赤道線CL側であるタイヤ幅方向TW内側に設けられる溝部60と、トレッド接地面11のトレッド端TE側であるタイヤ幅方向TW外側に設けられる溝部70とが形成されている。
【0022】
ここで、本実施形態に係るタイヤ1において、「トレッド端TE」とは、タイヤ1を正規リム5に組付けて、正規内圧を充填し、正規荷重を適用した状態において、タイヤ表面が路面(地面)と接触するトレッド接地面のタイヤ幅方向最外位置をいう。
【0023】
また、「正規リム」とは、タイヤのサイズに応じて下記の規格に規定された標準リムをいい、「正規内圧」とは、下記の規格に記載されている、適用サイズにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧をいい、「正規荷重」とは、下記の規格の適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)をいうものとする。そして規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格であって、たとえば、日本では「日本自動車タイヤ協会」の“JATMA YEAR BOOK”であり、アメリカ合衆国では“THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.”の“YEAR BOOK”であり、欧州では、“The European Tyre and Rim Technical Organisation”の“STANDARD MANUAL”である。
【0024】
溝部70は、タイヤ幅方向TW内側に位置する第1溝壁71と、タイヤ幅方向TWで第1溝壁71に対向する第2溝壁73と、第1溝壁71と第2溝壁73とに連なる溝底72とによって、構成される(
図4参照)。
【0025】
溝部70の溝底72には、タイヤ周方向TCに交差する方向に延在する突起部100が設けられている。なお、突起部100は、タイヤ幅方向TW内側の溝部60に設けてもよいが、少なくとも、後述するベルト層40のタイヤ幅方向TWの端部に最も近い溝部70に設けられることが好ましい。
【0026】
これは、次の理由による。すなわち、ベルト層40のタイヤ幅方向TWの端部は、タイヤ1の転動によって温度が上昇しやすいため、溝部に形成した突起部100によって、温度上昇を効果的に抑制するためには、少なくともベルト層40の端部に最も近い溝部70に突起部100を設けることが好ましい。なお、突起部100の詳細な構成については、後述する。
【0027】
図1に示すように、第1溝壁71と第2溝壁72との踏面11側のエッジ部分には、タイヤ幅方向TWに沿って延びる短いサイプ400が複数形成されている。本実施形態のように、サイプ400は、タイヤ周方向TCに所定間隔毎に形成されていてもよい。なお、サイプとは、タイヤ1の接地時に閉じるように溝幅が1mm以下に設計されている溝である。
【0028】
サイプ400は、タイヤ幅方向において、溝部70に開口し各陸部81,82内で終端されている。そして、サイプ400のタイヤ径方向の内側端は、タイヤ径方向において、後述する突起部100の、高さH100と同じか、高さH100よりも高い位置、即ちタイヤ径方向外側の位置で終端されている。また、本実施形態では、サイプ400のタイヤ径方向における深さが、3.5mm以上10mm以下の範囲となるように形成されている。
【0029】
また、
図3に示すように、タイヤ周方向における、後述する突起部100の第1端部100aと第1溝壁とを連結する位置、あるいは、第2端部と第2溝壁とを連結する位置に形成されたサイプ400のタイヤ径方向の内側端は、他のサイプ400の前記タイヤ径方向の内側端よりも、タイヤ径方向で外側に位置するように形成されていてもよい。
【0030】
トレッド部10には、溝部70が形成されることによって、複数の陸部80が区画形成される。具体的に、溝部70には、タイヤ幅方向TW内側に第1陸部81が形成され、タイヤ幅方向TW外側に第2陸部82が形成される。なお、本実施形態では、第1陸部81及び第2陸部82を、単に陸部80として適宜説明する。
【0031】
第1陸部81には、タイヤ径方向TDで溝部70より浅い溝深さを有し、タイヤ幅方向TWに対して傾斜して延びて溝部70に開口する浅溝300が設けられている。この浅溝300は、サイプ400よりもタイヤ径方向TDの深さが浅く形成されている。また、本実施形態では、浅溝300のタイヤ径方向における深さが1mm以上3.5mm未満の範囲となり、溝幅が2〜5mmとなるように形成されている。そして、浅溝300の延在方向とタイヤ周方向TCとのなす角度は、10〜60度の範囲内であることが好ましい。
【0032】
トレッド部10のタイヤ径方向TD内側には、複数枚のベルト41によって構成されるベルト層40が設けられている。ベルト41の端部41eのタイヤ径方向TD外側には、トレッド部10に形成される溝部70が配置されている。
【0033】
また、ベルト層40のタイヤ径方向TD内側には、左右一対のビードコア51に跨がり、タイヤ1の骨格を形成するカーカス層52が設けられている。なお、カーカス層52の端部は、ビードコア51を包むように折り返される。
【0034】
(2)突起部の構成
次に、突起部100の構成について、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る溝部の一部破断斜視図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係る溝部のトレッド面視における形状を示す平面図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係る突起部の拡大平面図である。
図6は、
図4のF1方向から見た溝部のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
図7は、
図4のVII−VII線とタイヤ径方向とに沿った突起部の断面図である。
【0035】
ここで、
図3〜4に示すように、本実施形態では、説明の便宜上、車両にタイヤ1を装着した場合に、車両の前進によってタイヤ1が回転する回転方向TRを規定する。なお、タイヤ1の車両装置時における回転方向TRは、特に指定されるものではない。
【0036】
図3〜4に示すように、溝部70には、複数の突起部100が設けられている。突起部100は、タイヤ周方向TCに所定間隔P毎に設けられている。
【0037】
また、
図4に示すように、タイヤ1のトレッド面視において、溝部70の中央を通る溝中央線CL70に沿った突起部100の長さをLとし、突起部100を設けるタイヤ周方向TCの所定間隔をPとした場合、所定間隔Pは、長さLの0.75倍以上かつ10倍以下であることが好ましい。すなわち、所定間隔Pと長さLとは、0.75L≦P≦10Lの関係を満たすことが好ましい。
【0038】
なお、溝中央線CL70は、溝部70の延在方向に直交する溝幅方向の中央を通る仮想線であり、本実施形態では、タイヤ周方向TCと平行である。また、長さLは、溝中央線CL70に沿った突起部100の一端から他端までの長さである。間隔Pは、隣接する2つの突起部100間の距離であり、突起部100と溝中央線CL70とが交差する突起部100の中心間の距離である。
【0039】
本実施形態では、突起部100は、溝部70を形成する第1溝壁71から溝部70を形成する第2溝壁73まで連なる。具体的に、突起部100の第1端部100aが第1溝壁71に連結し、突起部100の第2端部100bが第2溝壁73に連結する。
【0040】
なお、本実施形態において、第1溝壁71は、溝部70のタイヤ幅方向TW内側の第1陸部81に形成され、第2溝壁73は、溝部70のタイヤ幅方向TW外側の第2陸部82に形成される。
【0041】
また、本実施形態では、タイヤ周方向TCにおいて、突起部100の第1端部100aと第1溝壁71とを連結する位置と、浅溝300が第1溝壁71に開口する位置とが異なる位置であるように形成されている。
【0042】
また、突起部100には、突起部100を横断するスリット200が形成される。スリット200は、第1溝壁71に連結する突起部100Aの第1端部100aと、第2溝壁73に連結する突起部100Aの第2端部100bとの少なくとも一方に形成されている。スリット200は、タイヤ径方向TD内側に凹む凹状に形成される。スリット200の底面は、溝部70の溝底72まで到達せず、溝部70の溝底72よりもタイヤ径方向TD外側に位置する。よって、スリット200が、突起部100の第1端部100aに形成される場合には、スリット200の底面において突起部100と第1溝壁71とが連結する。
【0043】
本実施形態では、スリット200が、第1溝壁71に連結する突起部100の第1端部100aに形成される場合を例に挙げて説明する。なお、スリット200の詳細な構成は、後述する(
図6参照)。
【0044】
また、
図5に示すように、タイヤ1のトレッド面視において、突起部100は、直線形状部分110と、少なくとも一つの湾曲形状部分120とを備える。
【0045】
直線形状部分110は、溝部70の中央において、タイヤ周方向TCに傾斜する方向に直線状に延びる。ここで、溝部70の中央とは、溝部70の溝幅方向中央を通る溝中央線CL70上を示す。なお、換言すれば、直線形状部分110の中心線CL110は、溝中央線CL70と交差するように配置される。
【0046】
湾曲形状部分120は、直線形状部分110に連なり、タイヤ周方向TCに向かって湾曲する。また、突起部100には、複数の湾曲形状部分120が設けられている。
【0047】
具体的に、突起部100は、湾曲形状部分120として、タイヤ周方向TCの一方に湾曲する第1湾曲形状部分121と、タイヤ周方向TCの他方に第2湾曲形状部分122とを備える。
【0048】
第1湾曲形状部分121は、直線形状部分110の一方の端部110aと、第1溝壁71とに連結する。第2湾曲形状部分122は、直線形状部分110の他方の端部110bと、第2溝壁73とに連結する。なお、以下において、第1湾曲形状部分121と第2湾曲形状部分122とを、単に、湾曲形状部分120として適宜説明する。
【0049】
また、溝部70の幅を溝幅Wとした場合、タイヤ1のトレッド面視において、湾曲形状部分120の曲率半径Rは、溝幅Wの3倍以上かつ10倍以下の範囲内であることが好ましい。具体的に、第1湾曲形状部分121の曲率半径R1と、第2湾曲形状部分122の曲率半径R2とは、いずれも、溝幅Wの3倍以上かつ10倍以下であり、3W≦R1(及びR2)≦10Wの関係を満たすことが好ましい。
【0050】
なお、溝幅Wは、溝部70の延在方向に直交する溝幅方向における溝部70の幅である。本実施形態では、溝部70の延在方向が、タイヤ周方向TCであるため、溝幅Wは、タイヤ周方向TCに直交するタイヤ幅方向TWにおける溝部70の幅である。
【0051】
本実施形態では、第1湾曲形状部分121の曲率半径R1と、第2湾曲形状部分122の曲率半径R2とは、同一である。但し、第1湾曲形状部分121の曲率半径R1と、第2湾曲形状部分122の曲率半径R2とは、必ずしも同一でなくてもよい。すなわち、複数の湾曲形状部分120のそれぞれの曲率半径が、異なっていてもよい。例えば、第1溝壁71が第2溝壁73よりも変形量が大きい場合、第1湾曲形状部分121の曲率半径R1と、第2湾曲形状部分122の曲率半径R2とは、R2>R1の関係を満たしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、直線形状部分110の延在方向とタイヤ周方向TCとのなす角度θ1は、10〜60度の範囲内であることが好ましい。具体的に、直線形状部分110の延在方向に沿った中心線CL110と、タイヤ周方向TCに沿った溝中央線CL70とのなす角度θ1は、10〜60度の範囲内であることが好ましい。また、タイヤ周方向TCに対する傾斜の向きは、浅溝300が傾斜する向きと同じ向きである。なお、直線形状部分110と浅溝300との傾斜角度は、
図1に示すように異なるものであってもよく、また、同じ角度であってもよい。
【0053】
また、
図6に示すように、タイヤ幅方向TWにおいて、直線形状部分110の長さL110は、溝幅Wの40%以上かつ90%以下であることが好ましい。
【0054】
また、突起部100の溝底72からの高さをHとし、トレッド接地面11の溝底72からの高さ、つまり溝部70のトレッド接地面11から溝底72(最深部)までの深さをDとした場合、高さHは、深さDの0.03倍よりも大きく、かつ0.4倍以下であることが好ましい。すなわち、高さHと深さDとは、0.03D<H≦0.4Dの関係を満たすことが好ましい。
【0055】
また、タイヤ径方向TDに沿ったスリット200の深さD200は、突起部100の高さH100よりも小さい。スリット200の深さD200は、突起部100の高さH100の19%〜90%であることが好ましい。スリット200の深さD200が、突起部100の高さH100の19%以上であると、突起部100に発生する歪みを抑制する効果を確実に得られる。一方で、スリット200の深さD200が、突起部100の高さH100の90%以下であると、乱流により溝底72の熱伝導率を高める効果を確実に得られる。
【0056】
溝部70の幅を溝幅Wとした場合、スリット200のタイヤ幅方向TWにおける長さL200は、溝幅Wの4%〜20%であることが好ましい。スリット200の長さL200が、溝幅Wの4%以上であると、突起部100に発生する歪みを抑制する効果を確実に得られる。一方で、スリット200の長さL200が、溝幅Wの20%以下であると、乱流により溝底72の熱伝導率を高める効果を確実に得られる。
【0057】
また、
図7に示すように、本実施形態では、突起部100の幅W100は、1mm以上かつ4mm以下であることが好ましい。突起部100の幅W100は、突起部100の中心線に直交する方向における長さである。例えば、突起部100の幅W100は、突起部100の直線形状部分110の中心線CL110に直交する方向における長さとしてもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、突起部100の幅W100は、直線形状部分110と第1湾曲形状部分121と第2湾曲形状部分122とで同一である。但し、直線形状部分110の幅と第1湾曲形状部分121の幅と第2湾曲形状部分122の幅とは、必ずしも同一でなくてもよい。例えば、第1溝壁71が第2溝壁73よりも変形量が大きい場合、第1溝壁71から延在する第1湾曲形状部分121の幅が、直線形状部分110の幅や第2湾曲形状部分122の幅よりも大きくてもよい。
【0059】
(3)作用・効果
本実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ周方向TCに延在する溝部70の溝底72において、突起部100が形成されているため、タイヤ1の回転によって回転方向TRとは反対向きの空気の流れAR1、AR2(相対風)が、溝部70に発生する(
図5参照)。
【0060】
具体的に、溝部70の第2溝壁73に沿った一部の空気の流れAR1は、進行方向に突起部100が位置するため、溝部70に沿って進めずに、突起部100を乗り越える。このとき、空気の流れAR1は、螺旋状(スワール状)の流れに変化する。また、空気の流れAR1は、周囲の空気を巻き込んで進むため、空気の流量が増大するとともに、空気の流れAR1の速度が上昇する。これにより、トレッド部10からの放熱が促進される。
【0061】
また、溝部70の第1溝壁71に沿った一部の空気の流れAR2は、突起部100の延在方向に沿って進む。その後、空気の流れAR2は、溝部70の第2溝壁73側で、溝部70の外部へ流れ出る。これにより、溝部70の内部を通過することにより熱を蓄えた空気が外部へ流れるため、トレッド部10からの放熱が促進される。
【0062】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、突起部100は、直線状に延びる直線形状部分110と、タイヤ幅方向TWに湾曲する湾曲形状部分120(第1湾曲形状部分121及び第2湾曲形状部分122)とを備える。
【0063】
ここで、従来技術のように、直線形状部分のみによって構成される突起部が、両側の陸部80から圧縮力を受けた場合、突起部のタイヤ幅方向の中央部(溝中央線CL70近傍)において、圧縮力に伴う歪み(変形)が集中するため、クラックが発生する。
【0064】
一方、本実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ転動時において、溝部70の両側の陸部80の変形によって、突起部100が両側の陸部80から圧縮力を受けると、湾曲形状部分120が撓むように変形する。つまり、湾曲形状部分120が、圧縮力を突起部100の中央部に集中させずに分散できる。従って、両側の陸部80から受ける圧縮力に伴う歪み(変形)が、突起部100の中央部に局所的に集中することを防止できる。
【0065】
更に、突起部100が、両側の陸部80から引張力を受ける場合には、湾曲形状部分120が、伸びるように変形することもできるため、引張力に伴う歪み(変形)が、突起部100の中央部に局所的に集中することも防止できる。
【0066】
なお、従来技術のように、直線形状部分のみによって構成される突起部が、両側の陸部80から圧縮力を受けた場合、突起部に歪み(変形)が発生し、結果として、突起部100の一部が湾曲形状部分120のように歪む場合がある。つまり、換言すれば、本実施形態に係る突起部100は、圧縮力を受けて歪んだ状態の突起部の形状に予め構成しておくことによって、歪みが突起部100の中央部に局所的に集中することを防止しているとも言い換えることができる。
【0067】
特に、本実施形態に係るタイヤ1では、突起部100の第1端部100aには、スリット200が形成されている。これにより、第1溝壁71を構成する陸部80が変形しても、陸部80の変形部分がスリット200によって吸収されるため、突起部100が陸部80から受ける圧縮力を抑制できる。この結果、突起部100に発生する歪みを抑制できる。
【0068】
このようにして、本実施形態に係るタイヤ1では、突起部100に発生する歪みを抑制し、かつ、分散させることで、突起部100にクラックが発生することを抑制できるため、突起部100によって意図した乱流を確実に発生させることができる。また、突起部100は、直線形状部分110を有することによって、突起部100を湾曲形状部分120のみで構成する場合に比べて、意図した乱流を確実に発生させることができるので、温度上昇をより確実に抑制できる。すなわち、本実施形態では、突起部100のクラックの発生を抑制することによって突起部100の耐久性を高めつつ、トレッド部10の温度上昇を確実に抑制することができる。
【0069】
なお、スリット200は、突起部100Aの第1端部100aと第2端部100bとのうち、タイヤ幅方向TW内側に位置する突起部100の第1端部100aに形成されることが好ましい。これは、次の理由による。すなわち、溝部70のタイヤ幅方向TW内側の第1陸部81の方が、溝部70のタイヤ幅方向TW外側の第2陸部82よりも、タイヤ赤道線CLに近いため、高い接地圧を受けて変形量も大きくなる。このため、スリット200が、タイヤ幅方向TW内側に位置する突起部100の第1端部100aに形成されることにより、タイヤ幅方向TW内側の第1陸部81の変形部分を確実に吸収して、突起部100が陸部80から受ける圧縮力を確実に抑制できる。この結果、突起部100に発生する歪みをより確実に抑制できる。
【0070】
また、両側の陸部80から受ける圧縮力を湾曲形状部分120に確実に吸収させるという観点から、突起部100では、湾曲形状部分120を両側の陸部80に連結するように配置することが好ましい。つまり、直線形状部分110の一方の端部110aと第1溝壁71との間、及び、直線形状部分110の他方の端部110bと第2溝壁73との間に、湾曲形状部分120を配置することが好ましい。
【0071】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、突起部100は、溝部70を形成する第1溝壁71から溝部70を形成する第2溝壁73まで連なる。これにより、溝部70を流れる空気が、突起部100に確実に衝突するため、突起部100によって乱流を確実に発生させることができる。
【0072】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、第1陸部81が、タイヤ径方向TDで溝部70より浅い溝深さを有し、タイヤ幅方向TWに対して傾斜して延びて溝部70に開口する浅溝300を有する。このため、タイヤ1の回転によって回転方向TRとは反対向きの空気の流れ(相対風)が浅溝300内に発生し、ゴムゲージDCが厚くゴムのボリュームが多いタイヤ1の摩耗初期におけるトレッド部10の放熱が促進される。また、浅溝300をサイプ400よりも浅く形成する場合、陸部80の剛性低下による圧縮変形の増大と、これによって生じるトレッド部の温度上昇を抑制することができる。
【0073】
さらに本実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ周方向TCに対する傾斜の向きが、浅溝300が傾斜する向きと同じ向きである。高い接地圧を受けて変形量が大きくなるタイヤ幅方向TW内側の第1陸部81と同じ向きに突起部100が傾斜しているため、歪みが突起部100の中央部に局所的に集中することを防止することができる。
【0074】
本実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ周方向TCにおいて、突起部100の第1端部100aと第1溝壁71とを連結する位置と、浅溝300が第1溝壁71に開口する位置とが異なる位置であるように形成されている。このため、浅溝300が形成される第1陸部81のタイヤ周方向位置において、膨出変形が大きくなった場合であっても突起部におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、直線形状部分110の延在方向に沿った中心線CL110とタイヤ周方向TCとのなす角度θ1は、10〜60度の範囲内であることが好ましい。
【0076】
ここで、
図8には、タイヤ周方向TCに対する直線形状部分110の角度と溝部70における熱伝達率(指数表示)との関係を測定した測定結果を示すグラフ図が示されている。なお、
図8のグラフ図において、熱伝達率の値「100」は、突起部100を設けていないタイヤの熱伝達率(基準値)を示す。
【0077】
図8に示すように、角度θ1が、10度以上であることにより、突起部100の直線形状部分110に沿って流れる空気の流れAR1及びAR2が弱くなることを抑制できる。また、溝部70に突起部100を容易に製造することができるため、製造する上での利便性が高まる。
【0078】
一方で、角度θ1が、60度以下であることにより、溝部70を流れる空気の流れAR2を螺旋状の流れに効率よく変化させることができる。このため、溝底72を通過する風量が増加し、トレッド部10から効率的に熱を放熱できる。
【0079】
なお、角度θ1は、15度以上40度以下であることがより好ましい。これにより、
図8に示すように、実装時に確実に効果を発揮する熱伝達率の値「103」を上回ることができるため、トレッド部10の温度上昇を抑制する効果の確実性が高まる。
【0080】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ1のトレッド面視において、溝部70の中央を通る溝中央線CL70に沿った突起部100の長さをLとし、タイヤ周方向TCにおける突起部100の所定間隔をPとした場合、0.75L≦P≦10Lの関係を満たすことが好ましい。
【0081】
ここで、
図9には、所定間隔Pを規定する突起部100の長さLに掛ける係数と、溝部70における熱伝達率との関係を測定した測定結果を示すグラフ図が示されている。なお、
図8のグラフ図において、熱伝達率の値「100」は、突起部100を設けていないタイヤの熱伝達率(基準値)を示す。また、係数は、長さLに対する所定間隔Pの比P/Lとも言い換えることができる。
【0082】
図9に示すように、突起部100は、0.75L≦Pの関係を満たすことにより、溝部70に設けられる突起部100の数が多くなりすぎず、溝部70を流れる空気の速度が低下することを抑制できる。突起部100は、P≦10Lの関係を満たすことにより、溝部70に設けられる突起部100の数が少なくなりすぎず、効率的に空気の流れAR1,AR2が、螺旋状(スワール状)の流れに変化する。
【0083】
また、1.25L<Pの関係を満たすことが好ましく、1.5L<Pの関係を満たすことがより好ましく、2.0L<Pの関係を満たすことがさらに好ましい。これらの関係を満たすことによって、溝部70に設けられる突起部100がより適切な数となる。また、空気の流れAR1,AR2が通過する溝底72の面積が小さくなりすぎないため、溝底72から熱が効率よく放熱される。これにより、
図9に示すように、実装時に確実に効果を発揮する熱伝達率の値「103」を上回ることができるため、トレッド部10の温度上昇を抑制する効果の確実性が高まる。
【0084】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、突起部100の溝底72からの高さをHとし、溝部70のトレッド接地面11から溝底72までの深さをDとした場合、0.03D<H≦0.4Dの関係を満たすことが好ましい。
【0085】
ここで、
図10には、高さHを規定する溝深さDに掛ける係数と、溝部70における熱伝達率との関係を測定した測定結果を示すグラフ図が示されている。なお、
図10のグラフ図において、熱伝達率の値「100」は、突起部100を設けていないタイヤの熱伝達率(基準値)を示す。また、係数は、溝深さDに対する高さHの比H/Dとも言い換えることができる。
【0086】
図10に示すように、0.03D<Hの関係を満たすことにより、突起部100の高さHが所定の高さ以上となるため、溝部70を流れる空気の流れAR1,AR2を螺旋状の流れに効率よく変化させることができる。このため、溝底72を通過する風量が増加し、トレッド部10から効率的に熱が放熱される。H≦0.4Dの関係を満たすことにより、螺旋状の流れに変化した空気の流れAR1,AR2が溝底72に到達しやすくなるため、溝底72から熱が効率よく放熱される。
【0087】
さらに、0.05D≦Hの関係を満たし、H≦0.35Dの関係を満たすことにより、
図10に示すように、実装時に確実に効果を発揮する熱伝達率の値「103」を上回ることができるため、トレッド部10の温度上昇を抑制する効果の確実性が高まる。
【0088】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、溝部70の幅を溝幅Wとした場合、タイヤ1のトレッド面視において、湾曲形状部分120の曲率半径Rは、溝幅Wの3倍以上かつ10倍以下であることが好ましい。具体的に、第1湾曲形状部分121の曲率半径R1と、第2湾曲形状部分122の曲率半径R2とは、いずれも、溝幅Wの3倍以上かつ10倍以下であることが好ましい。
【0089】
ここで、
図11は、曲率半径Rと、歪みとの関係を測定した測定結果を示すグラフ図である。
図11に示すように、湾曲形状部分120の曲率半径Rが溝幅Wの3倍以上であることにより、突起部100が圧縮力を受けても、突起部100の中央部において、歪みが集中することを抑制する。一方、湾曲形状部分120の曲率半径Rが、溝幅Wの10倍以下であることにより、湾曲形状部分120が直線に近い形状となることを防止できる。これにより、圧縮力によるせん断変形が、湾曲形状部分120(第1湾曲形状部分121及び第2湾曲形状部分122)に分散できるので、クラックの発生を確実に抑制できる。
【0090】
なお、湾曲形状部分120の曲率半径Rは、溝幅Wの3.5倍以上かつ8倍以下であることがより好ましい。これにより、クラックの発生をより確実に抑制しつつ、温度上昇を抑制できる。
【0091】
また、本実施形態に係るタイヤ1では、突起部100の幅W100は、1mm以上かつ4mm以下であることが好ましい。突起部100の幅W100は、1mm以上であることにより、乱流を安定的に発生させるための突起部分自体の剛性を保つことができるため、乱流を発生させることによる熱伝達率を確保でき、温度上昇をより確実に抑制できる。また、タイヤ製造時にモールド欠けなどの成形不良の発生を抑制することもできる。
【0092】
一方で、突起部100の幅W100は、4mm以下であることにより、突起部100以外の溝底72の領域面積をより広く確保できるため、空気の流れAR1,AR2によって、溝底72を冷却する効果を高めることができる。
【0093】
本実施形態に係るタイヤ1では、第1溝壁71と第2溝壁72との踏面11側のエッジ部分には、タイヤ幅方向TWに沿って延びる短いサイプ400が複数形成されている。
【0094】
この複数のサイプ400のタイヤ径方向TDの内側端は、突起部100の高さ位置H100と同じか、タイヤ径方向TD外側に位置する。このため、サイプ400形成による陸部81、82の剛性低下が抑制され、タイヤ転動時に路面に接地する際に生じる圧縮変形が低減される。これによって、突起部100にクラックが発生することを抑制することができる。
【0095】
さらに、本実施形態に係るタイヤ1では、タイヤ周方向TCにおける、第1端部100aと第1溝壁71とを連結する位置、あるいは、第2端部100bと第2溝壁73とを連結する位置に形成されたサイプ400のタイヤ径方向内側端が、複数のサイプ400の他のサイプ400のタイヤ径方向TD内側端よりも、タイヤ径方向TDで外側に位置するものであってもよい。この場合、サイプ400形成による陸部81、82の剛性の低下の影響はさらに低減されるため、突起部100にクラックが発生することをさらに抑制することができる。
【0096】
[変形例1]
次に、第1実施形態の変形例1に係るタイヤ1について説明する。なお、本実施形態に係るタイヤ1は、上述の第1実施形態に係るタイヤ1に比べて、突起部の構成が異なる。従って、以下において、突起部の構成に着目して、説明する。
【0097】
ここで、
図12は、第1実施形態の変形例1に係る突起部100Aの拡大平面図である。
図13は、
図12のF2方向から見た溝部70のタイヤ幅方向TW及びタイヤ径方向Tdに沿った断面図である。
【0098】
本実施形態に係る突起部100Aでは、スリット200が、第1溝壁71に連結する突起部100Aの第1端部100aと、第2溝壁73に連結する突起部100Aの第2端部100bとの両方に形成される。具体的に、突起部100Aの第1端部100aにスリット200aが形成され、突起部100Aの第2端部100bにスリット200bが形成される。
【0099】
本実施形態に係るスリット200a及び200bの形状は、第1実施形態に係るスリット200の形状と同一である。具体的に、
図13に示すように、スリット200aのタイヤ幅方向TWにおける長さL200aと、スリット200bのタイヤ幅方向TWにおける長さL200bとは、第1実施形態に係るスリット200の長さL200と同一である。また、スリット200aのタイヤ径方向TDにおける深さD200aと、スリット200bのタイヤ径方向TDにおける深さD200bとは、第1実施形態に係るスリット200の深さD200と同一である。
【0100】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、タイヤ転動時において、第1溝壁71と第2溝壁73との両側の陸部80が変形しても、陸部80の変形部分がスリット200aとスリット200bによって吸収されるため、突起部100が陸部80から受ける圧縮力を抑制できる。これにより、突起部100Aが、スリット200a及び200bを備えていない場合に比べて、陸部80から受ける圧縮力を大幅に抑制できるため、突起部100Aにおけるクラックの発生を抑制することができる。
【0101】
なお、スリット200aの長さL200aと、スリット200bの長さL200bとは、異なっていてもよい。例えば、第1溝壁71の変形量が第2溝壁73の変形量よりも小さい場合には、長さL200aを長さL200bよりも短くしてもよい。また、スリット200aの深さD200aと、スリット200bの深さD200bとは、異なっていてもよい。例えば、第1溝壁71の変形量が第2溝壁73の変形量よりも小さい場合には、深さD200aを深さD200bよりも浅くしてもよい。
【0102】
これにより、スリット200a及び200bにより突起部100Aの形成範囲が低減してしまうことを抑制できるため、突起部100Aにおけるクラックの発生を抑制しつつ、乱流を確実に発生させて、トレッド部10の温度上昇を抑制することができる。
【0103】
[実施例]
次に、本発明の実施形態に係るタイヤの効果を確認するために実施した実施例について説明する。まず、下記に示す比較例1〜2と、実施例1〜3とを準備した。
【0104】
比較例1〜2に係るタイヤは、溝部に形成される突起部が一方の溝壁から他方の溝壁まで直線状に連なる構成のものを用いた。また、比較例2に係るタイヤは、突起部において一方の端部にスリットを備えるものを用いた。
【0105】
実施例1〜3に係るタイヤは、上述の第1実施形態に係るタイヤを用いた。つまり、実施例1〜3に係るタイヤは、突起部が一方の溝壁から他方の溝壁に連なる構成であり、湾曲形状部分を備えるものを用いた。具体的に、実施例1〜3に係るタイヤでは、突起部が、中央に直線形状部分を備え、直線形状部分の両端に第1〜第2湾曲形状部分を備える構成のものを用いた。また、実施例1〜3に係るタイヤでは、突起部において一方の端部にスリットを備えるものを用いた。なお、実施例1〜3に係るタイヤでは、第1湾曲形状部分の曲率半径と第2湾曲形状部分の曲率半径とは、いずれも60mmとした。
【0106】
また、比較例1〜2及び実施例1〜3に係るタイヤでは、いずれも、突起部100の幅W100は、2mmとした。なお、比較例1〜2及び実施例1〜3のタイヤサイズとリム幅は、何れも下記の通りである。また、比較例1〜2及び実施例1〜3に係るタイヤの詳細な構成は、表1に示す通りである。
【0107】
・タイヤサイズ:11R22.5
・リム幅:8.25×22.5
そして、上述の比較例1〜2及び実施例1〜3に、内圧700kPa(正規内圧)及び荷重3000kg(約110%load)を与えて、ドラム径1.7mのドラム試験装置を用いた転動試験を行った。また、転動試験では、速度65km/hr.によって転動させた後、突起部に発生するクラックの長さを測定した。なお、クラックの長さは、2万km転動させて陸部を摩耗させた初期と、5万km転動させて陸部を摩耗させた中期とで測定した。
【0108】
また、比較例1〜2及び実施例1〜3による放熱性を評価した。具体的に、それぞれの熱伝導率を測定する試験を行うことによって得られた測定結果に基づいて、放熱性を評価した。
【0109】
表1には、転動試験後の測定結果と、熱伝導率の測定結果が示されている。なお、表1に示すクラック長さは、比較例1を基準(100)とした指数によって示されており、値が大きいほど、クラックを抑制する効果が高いことを示す。表1に示す熱伝導率は、比較例1を基準(100)とした指数によって示されており、値が大きいほど、熱伝導率が高いことを示す。
【0111】
表1に示すように、実施例1〜3に係るタイヤは、比較例1〜2に係るタイヤに比べて、突起部に発生するクラックの長さが抑制されていることが確認された。すなわち、実施例1〜3に係るタイヤは、突起部にクラックが発生することを抑制できることが確認された。
【0112】
また、実施例1〜3に係るタイヤは、比較例1〜2に係るタイヤと同等に熱伝導率を確保でき、トレッド部の温度上昇を十分に抑制できることも確認された。
【0113】
[その他の実施形態]
次に、本発明のその他の実施形態について説明する。タイヤ1は、トラック又はバス(TB)に装着される重荷重用タイヤ(TBRタイヤ)に好適に用いられるが、タイヤ1は、例えば、砕石・鉱山・ダム現場を走行するダンプトラックやアーティキュレートダンプなどの建設車両用タイヤ(ORRタイヤ)に用いてもよいし、乗用車用タイヤに用いてもよい。
【0114】
上述した実施形態では、溝部70がタイヤ周方向TCに沿って平行に延びる場合を例に挙げて説明したが、溝部70は、タイヤ周方向TCに対して数度(例えば10度以下)傾斜していてもよい。
【0115】
上述した実施形態では、突起部100は、湾曲形状部分120として、タイヤ周方向TCの一方に湾曲する第1湾曲形状部分121と、タイヤ周方向TCの他方に第2湾曲形状部分122との2つを備えていたが、これに限定されない。突起部100は、1つの湾曲形状部分120を備えていてもよいし、3つ以上の湾曲形状部分120を備えていてもよい。すなわち、突起部100は、少なくとも一つの湾曲形状部分120を備えていればよい。
【0116】
また、例えば、第1溝壁71が第2溝壁73よりも変形量が大きい場合、直線形状部分110の第1溝壁71側に配置される湾曲形状部分120の数が、直線形状部分110の第2溝壁73に配置される湾曲形状部分120の数よりも多くしてもよい。更に、突起部100では、直線形状部分110と湾曲形状部分120とを交互に配置してもよい。
【0117】
上述した実施形態では、突起部100の直線形状部分110の延在方向とタイヤ周方向TCとのなす角度θ1は、10〜60度の範囲内である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。角度θ1は、10〜60度の範囲外であってもよい。
【0118】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0119】
本出願は、2016年3月28日に出願された日本国特許出願第2016−063787号に基づく優先権を主張しており、この出願の全内容が参照により本願明細書に組み込まれる。