(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物を有するイオン交換可能なガラスから製造された化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスであって、 前記組成物は、酸化物を基準とするモル%で、 約63.0〜68.0%のSiO2と、 約12.0〜16.0%のAl2O3と、 約10.0〜15.0%のNa2Oと、 約2.0〜6.0%のB2O3と、 約0〜6.0%のK2Oと、 約0〜3.0%のMgOと、 約0〜1.5%のCaOと、を備え、 Al2O3+B2O3+Na2Oは、32.6%であり、 (B2O3+Na2O+K2O)/Al2O3の値は、1よりも高く1.3以下であり、 (Na2O+K2O)/(Al2O3+MgO)の値は、1以上であり、 前記ガラスは、イオン交換され、表面圧縮応力層と中央引張りゾーンとを有し、 前記表面圧縮応力層は、951MPaの圧縮応力及び30.0μmの深さを有し、 前記中央張力ゾーンは、43MPaの引張応力を有し、 前記ガラスは、約0.1mm〜1.2mmの厚さを有することを特徴とする化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラス。
【背景技術】
【0002】
[0002] 化学的に強化されたガラスは、典型的には、ガラス組成物及びガラスを製造するために使用される化学強化プロセスにより、アニールされたガラスよりも著しく強く。このような化学的強化プロセスは、熱変形させることができない、薄い、小さい、複雑な形状のガラスサンプルの製造を可能にする光学歪みを生じることなく、あらゆるサイズと形状のガラスを強化するために使用することができる。これらの特性は、化学的に強化されたガラスを製造し、特に、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどの民生用電子機器に広く使用されている化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造する。
【0003】
[0003] 化学強化プロセスは、一般的に、イオン交換プロセスを含む。かかるイオン交換プロセスでは、ガラスに存在するより小さいイオンが加熱溶液からのより大きなイオンによって置換されるように、ガラスは、ガラス中に存在するイオンよりも大きなイオン半径を有するイオンを含む溶融塩において置かれる。一般的には、溶融塩におけるカリウムイオンは、ガラスに存在するより小さいナトリウムイオンを置換する。ガラスに存在するより小さいナトリウムイオンを加熱溶液からのより大きいカリウムイオンで置換すると、ガラスの両面に圧縮応力層が形成され、圧縮応力層の間に挟まれた中央張力ゾーンが形成される。中央張力ゾーン(典型的にはメガパスカル(MPa)で表される)の引張応力(「CT」)は、圧縮応力層の圧縮応力(「CS」)(通常、メガパスカルで表される)に関連し、圧縮応力層(「DOL」)の深さは、以下の式によって計算される。
CT = CS×DOL /(t-2DOL)
ここで、tはガラスの厚さである。
【0004】
[0004] 厚さ0.7mmのガラスの現在の仕様は、約40μmの層の深さ、650MPa以上の圧縮応力、及び60MPa未満の中央張力ゾーンの引張応力を有する。実際、良好な切削歩留まりを確保するためには、中央張力ゾーンの引張応力を約60〜70MPaに保つ必要がある。
【0005】
[0005] タッチディスプレイ用カバーガラスとして使用するために、ガラスの傷や耐衝撃損傷に対する耐性を高めることが望ましい。これは、圧縮応力及び圧縮応力層の深さを増加させることによって達成することができる。しかし、中央張力ゾーンの引張応力を許容範囲内に保つために、圧縮応力及び圧縮応力層の深さの増加は、ガラスの厚さの増加を招くため望ましくない。
【0006】
[0006] また、カバーガラスはできるだけ薄くすることが望ましい。しかし、ガラスの厚さが減少するにつれて中央張力ゾーンの引張応力が増加するので、中央張力ゾーンの許容引張応力を維持しつつ、高い圧縮応力及び圧縮応力層の高い深さを維持することは困難である 。そのような場合、一般に、層の深さに対する圧縮応力の比(CS/DOL)を可能な限り高くすることが望ましい。
【0007】
[0007] 化学強化プロセスの持続時間は、化学強化ガラスの製造コストに対する重要な要素である。一般には、圧縮応力層の深さを増加させるために、イオン交換プロセスの時間を延長する必要がある。しかし、より短いイオン交換時間が通常は望ましい。イオン交換時間が短ければ短いほど、生産ラインとプロセスの競争力が高まる。イオン交換時間は、反応温度及びイオン拡散速度によって制御される。温度を下げると反りを避けることができますが、イオン交換時間は長くなる。ガラスシートを高温に保つと、イオン拡散速度が増加することがあるが、反りや構造緩和が発生し、圧縮応力が低下する可能性がある。従って、より高い温度でイオン交換プロセスを行うことは、イオン交換時間を短くする可能性があるが、他の望ましくない結果をもたらす。
【0008】
[0008] 化学強化プロセスは、(1)ピースプロセス及び(2)一つのガラス溶液(OGS)プロセスの二つの方法で実行できる。ピースプロセスは、ガラスピースを使用のための最終サイズに切断し、次いでそれぞれのピースを穿孔、研削、面取り、及び研磨する。処理されたピースは、化学強化のために溶融カリウム塩において置かれる。より小さなサイズのピースは、温度と溶融塩濃度に対するより大きな制御を提供する。更に、ピースの両側の縁を化学的に強化することができる。 これにより、高強度で反りの発生率を低くすることができ、歩留まりが高くなる。
【0009】
[0009] 対照的に、OGSプロセスでは、まず、フルシートガラスを強化し、タッチセンサーとプリント回路をガラス表面に追加し、次にガラスをスクライビングし、最終的にガラスを切断する。ピースプロセスと比較して、OGSプロセスでは、一般に、より大きな炉が必要とされる。ガラスの処理方法は、ガラスの反りや破損の原因となる。OGSプロセスにおいて、化学的に強化されたガラス表面上のCSは、外部損傷に対する抵抗を容易にするが、切断の困難性を増大させる可能性がある。また、CTが高すぎると、切削中にCTゾーンに入ったときに、スクライブホイールがガラスに割れ、欠けや破損を引き起こすことがある。OGSプロセスではスクライブエッジと側面を完全に化学的に強化できないため、OGSプロセスで作成されたガラスの強度は、一般に、ピースプロセスで作成されたガラスよりも低くなる。OGSプロセスの難しさにもかかわらず、OGSプロセスの費用対効果と生産効率は、ピースプロセスよりも優れている。
【0010】
[0010] 化学的に強化されたガラスがより薄くて強くなるにつれて、CTを増加させることなく、高いDOL及び高いCSを維持することが課題となる。薄く、高いCS及び制御されたCTを有し、且つ短いイオン交換時間で製造される化学強化ガラスが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0011] 化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスが本明細書に提案される。
【0012】
[0012] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための組成物を有するイオン交換可能なガラスであって、前記組成物は、酸化物を基準とするモル%で、約63.0〜68.0%のSiO
2と、約12.0〜16.0%のAl
2O
3と、約10.0〜15.0%のNa
2Oと、約2.0〜6.0%のB
2O
3と、約0〜6.0%のK
2Oと、約0〜3.0%のMgOと、約0〜1.5%のCaOと、を備え、Al
2O
3+ B
2O
3+ Na
2Oは、28〜33%であり、(B
2O
3+Na
2O+K
2O)/Al
2O
3の値は、1よりも高く、
(Na
2O+K
2O)/(Al
2O
3+MgO)の値は、1以上である。
【0013】
[0013] 用語「約」は、単一の数を表すために使用される場合、±5%を含む範囲を示す。「約」という用語は、一つの範囲に適用される場合、下限が0でない限り、その範囲は、数値の下限の-5%及び数値の上限の+5%を含むことを示す。例えば、約100℃〜約200℃の範囲が、95℃〜210℃の範囲を含む。しかし、用語「約」でパーセンテージを変更する場合、下限が0%でない限り、この用語は数値又は数値境界の±1%を意味する。従って、5〜10%の範囲は、4〜11%を含み、0〜5%の範囲は、0〜6%を含む。
【0014】
[0014] 「酸化物を基準とするモルパーセントで」又は「酸化物を基準とするモル%で」という用語は、ガラス中の全モル数に対する酸化物のモル数のパーセントを指す。ガラス中の総モルパーセントは、常に100%まで増加し、且つ100%を超えないことが理解される。
【0015】
[0015] いくつかの例示的な実施形態によれば、本発明は、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスを提案する。前記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスは、高い圧縮応力(CS)、高い深さの層(DOL)及び制御された中央張力ゾーンの引張応力(CT)を有する圧縮応力層を有する。より高いCS、より高いDOL及び制御されたCTは、ガラス表面上にあるナトリウムイオンがより大きなカリウムイオンによって置換される化学強化プロセスによって得られる。より低いCTは、スクライビングプロセスの歩留まりが増加するので、ガラス仕上げに有益である。又、より高いCSを有するガラス表面は、より強いガラスを生じ、増加した外部衝撃力に耐えることができる。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたガラスは、750MPaを超えるCS、約45μmまでのDOL、70MPa以下のCT、及び約0.7mmまでの厚さを有する。
【0016】
[0016] いくつかの例示的な実施形態によれば、組成物を有するイオン交換可能なガラスから製造された化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスであって、前記組成物は、酸化物を基準とするモル%で、約63.0〜68.0%のSiO
2と、約12.0〜16.0%のAl
2O
3と、約10.0〜15.0%のNa
2Oと、約2.0〜6.0%のB
2O
3と、約0〜6.0%のK
2Oと、約0〜3.0%のMgOと、約0〜1.5%のCaOと、を備え、Al
2O
3+ B
2O
3+ Na
2Oは、28〜33%であり、(B
2O
3+Na
2O+K
2O)/Al
2O
3の値は、1よりも高く、(Na
2O+K
2O)/(Al
2O
3+MgO)の値は、1以上である
【0017】
[0017] いくつかの例示的な実施形態によれば、アルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、約63.0モル%〜約68.0モル%の二酸化ケイ素(SiO
2)を含む組成物を有する。二酸化ケイ素は、アルカリアルミノシリケートガラスの最大の単一成分であり、ガラスのマトリックスを形成する。二酸化ケイ素は、ガラスの構造調整剤としても機能し、ガラスに対する成形性、剛性及び化学的耐久性を助ける。ガラスの粘度は、二酸化ケイ素が上記の範囲内にあるときに増強される。68.0モル%を超える濃度では、二酸化ケイ素はガラス組成物の溶融温度を上昇させ、高いアルカリまたはアルカリ金属酸化物濃度を有するガラスにおいて実質的に液相線温度をに不利益に上昇させる可能性がある。
【0018】
[0018] いくつかの例示的な実施形態によれば、アルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、約12.0モル%〜約16.0モル%の酸化アルミニウム(Al
2O
3)を含む組成物を有する。酸化アルミニウムがこれらの量で存在すると、ガラスの粘度が高まる。酸化アルミニウムの濃度が16.0モル%を超えると、ガラスの粘度が非常に高くなり、ガラスを失透させる傾向がある。また、液相温度が高すぎて連続シート形成プロセスを実施することができない。従って、ガラス組成物中のフラックス酸化物(例えば、ナトリウム、カリウム、ホウ素、マグネシウム及びカルシウムの酸化物)の全含有量は、酸化アルミニウムの含有量よりも多い必要がある。ガラス組成物の溶融温度は、フラックス酸化物の添加によって減少させることもできる。いくつかの例示的な実施形態によれば、ガラスの溶融温度は1690℃未満に維持される。
【0019】
[0019] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、約2.0モル%〜約6.0モル%の三酸化ホウ素(B
2O
3)を含む組成を有する。三酸化ホウ素は、フラックス酸化物及びガラスコーディネーターとして機能する。三価ホウ素は、ケイ素と一緒にネットワーク形成元素として作用し、ガラス成形性を高める。B-O結合は、通常、高い電界強度及び3と4の配位数を有する酸化物ガラス中に生じ、B-O結合が非常に強いことを示す。しかしながら、酸化ホウ素基間の結合は、一般に、酸化ケイ素とは異なる高温では非常に弱い。高温での三酸化ホウ素の粘度は、シリカの粘度よりもはるかに低いので、三酸化ホウ素は非常に効率的なフラックス酸化物として作用することができる。
【0020】
[0020] アルカリ金属酸化物は、低い液相線温度及び低い溶融温度を達成するために助ける。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、アルカリ金属酸化物、すなわち酸化ナトリウム(Na
2O)及び酸化カリウム(K
2O)を含む組成を有する。十分な強度を確保し、過剰なアルカリ金属酸化物によって引き起こされる副作用を避けるために、酸化ナトリウム及び酸化カリウムは、下記の量でガラス組成物中に存在する。いくつかの例示的な実施形態によれば、有効な溶融を達成するために、ガラス組成物中の三酸化ホウ素、酸化ナトリウム及び酸化カリウムの合計含有量は、酸化アルミニウムの含有量よりも多い。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、酸化アルミニウムの全含有量に対する三酸化ホウ素、酸化ナトリウム及び酸化カリウムの総合計含有量の比が1を超える。
【0021】
[0021] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、約10.0モル%〜約15.0モル%の酸化ナトリウムを含む組成を有する。イオン交換を成功させるために酸化ナトリウムが使用される。実質的に強化されたガラス強度を生じさせるのに十分なイオン交換を可能にするために、酸化ナトリウムは、上記の濃度でガラス組成物に含まれる。
【0022】
[0022] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、0モル%〜約6.0モル%の酸化カリウムを含む組成物を有する。酸化カリウムは、イオン交換層の深さを増加させる。アルカリ金属イオン(特にカリウムイオン)の半径は、他の酸化物の半径よりも大きく、ガラス強度を低下させ、膨張係数を増加させる可能性がある。
【0023】
[0023] 酸化マグネシウム(MgO)及び酸化カルシウム(CaO)はともに、フラックス酸化物として機能できるアルカリ土類金属酸化物である。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、0モル%〜約3.0モル%の酸化マグネシウムを含む組成を有する。ガラス組成物は、約12.0モル%〜約16.0モル%の酸化アルミニウムを含有するので、ガラス組成物中のアルカリ土類金属酸化物の量は、液相線温度及び高温での粘度を不利益に増加させないように制御される。従って、酸化マグネシウムは、約3.0モル%以下でガラス組成物に存在する。酸化マグネシウムによって引き起こされる副作用を避けるために、酸化ホウ素及び酸化カルシウムを添加して、液相線温度及び粘度の増加を制御することができる。いくつかの例示的な実施形態によれば、ガラス組成物中の三酸化ホウ素及び酸化カルシウムの総含有量は、酸化マグネシウムの含有量よりも多い。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、酸化マグネシウムの全含有量に対する三酸化ホウ素と酸化カルシウムの総合計含有量の比が1より大きい組成を有する。
【0024】
[0024] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、0モル%〜約1.5モル%の酸化カルシウムを含む組成を有する。過剰な酸化カルシウムは、イオン交換速度を低下させ、イオン交換層の深い深さを達成するためにより多くのイオン交換時間又はより高い温度を必要とする。
【0025】
[0025] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、約28.0モル%〜約33.0モル%の酸化アルミニウム、三酸化ホウ素及び酸化ナトリウムの合計含有量を含む組成を有する。
【0026】
[0026] 上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換性ガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは少なくとも約950℃の液相線温度(結晶が最初に観察される温度)を有する。上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは少なくとも約980℃の液相線温度を有する。上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約1000℃の液相線温度を有する。上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約1100℃までの液相線温度を有する。上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約950℃〜約1100℃の液相線温度を有する。
【0027】
[0027] いくつかの例示的な実施形態によれば、本発明は、アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法を提案する。いくつかの例示的な実施形態によれば、この方法は、ガラス原料成分を混合及び溶融して、均質なガラス溶融組成物を形成するステップと、オーバーフローダウンドロー法、フローティング法及びそれらの組み合わせから選択された方法を用いて、前記ガラスを成形するステップと、前記ガラスをアニールするステップと、約390℃〜約450℃の温度で約2時間〜約6時間のイオン交換によって前記ガラスを化学的に強化するステップと、を含む。
【0028】
[0028] いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造は、当業者が周知の従来のオーバーフローダウンドロー法を用いて実施することができ、慣習的に、清澄(リファイナ)によって気泡含有量を低下させる装置、冷却及び熱均質化のための装置、分配装置及び他の装置からなる直接または間接的に加熱された貴金属系を含む。フローティング法は、溶融金属床上(一般的にはスズ)に溶融ガラスを浮遊させて、非常に平らで均一な厚さを有するガラスを得ることを含む。
【0029】
[0029] 上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換可能なガラス組成物は、約1690℃で約12時間まで溶融される。上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換可能なガラス組成物は、約1690℃で約6時間まで溶融される。上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換可能なガラス組成物は、約1690℃で約4時間まで溶融される。上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換可能なガラス組成物は、約1690℃で約2時間まで溶融される。
【0030】
[0030] 上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの実施形態によれば、前記イオン交換ガラス組成物は、570℃に達するまで約1℃/時間の速度でアニールされる。次いで、前記イオン交換可能なガラス組成物は、室温(又は約21℃)に達するまで自然冷却される。
【0031】
[0031] いくつかの例示的な実施形態によれば、上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、従来のイオン交換条件に従って化学的に強化される。上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換プロセスは、溶融塩浴中で行われる。いくつかの例示的な実施形態によれば、溶融塩は硝酸カリウム(KNO
3)である。
【0032】
[0032] 上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換処理は、約390℃〜約450℃の温度範囲で行われる。上記化学的に強化アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの実施形態によれば、前記イオン交換処理は、約420℃で行われる。上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換処理は、少なくとも約420℃の温度で行われる。上記化学的に強化アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記イオン交換処理は、約420℃までの温度で行われる。
【0033】
[0033] 上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、単一ガラス溶液プロセスが使用される。従って、いくつかの例示的な実施形態によれば、化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラスは、切断される前に化学的に強化される。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノケイ酸ガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換処理は約6時間まで行われる。上記化学的に強化アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換処理は約4時間まで行われる。上記化学的に強化アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換処理は約2時間までが行われる。上記化学的に強化アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの実施形態によれば、イオン交換処理は約2時間〜約6時間で行われる。上記化学的に強化アルカリアルミノシリケートガラスの製造方法のいくつかの実施形態によれば、イオン交換処理は約2時間〜約4時間で行われる。
【0034】
[0034] 上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約750MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約850MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約950MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約1050MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約1200MPaまでの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、約750MPa〜約1200MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。
【0035】
[0035] 上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約30.0μmの深さを有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約35.0μmの深さを有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約40.0μmの深さを有する表面圧縮応力層を有する。上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約45.0μmの深さを有する表面圧縮応力層を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、約30.0μm〜約45.0μmの深さを有する表面圧縮応力層を有する。
【0036】
[0036] 上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約40MPaまでの中央張力を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約50MPaまでの中央張力を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約60MPaまでの中央張力を有する。上記の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約70MPaまでの中央張力を有する。上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、約40MPa〜約70MPaの中央張力を有する。
【0037】
[0037] 上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約390℃〜約450℃の温度で約2〜約6時間のイオン交換処理によって化学的に強化され、前記ガラスは、(1)少なくとも約750MPaの圧縮応力を有し、表面圧縮応力層の深さが少なくとも約30μmであり、(2)約40MPa〜約70MPaの引張応力を有する中央張力ゾーンを有し、及び(3)約0.1mm〜約1.2mmの厚さを有する。上記化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは約390℃〜約450℃の温度で約2~約4時間イオン交換処理によって化学的に強化され、前記ガラスは、(1)約750MPa〜約1200MPaの圧縮応力を有し、表面圧縮応力層の深さが約30μm〜約45μmであり、(2)約60MPa〜約70MPaの引張応力を有する中央張力ゾーンを有し、及び(3)約0.4mm〜約0.7mmの厚さを有する。
【0038】
[0038] 上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、約2.5g/cm
3までの密度及び約90.0〜 約105.0の線膨張係数(α
25-300×10
-7/℃)を有する。
【0039】
[0039] 上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、ソーラーパネル、冷蔵庫ドア及び他の家庭用製品などの用途において保護ガラスとして使用することができる。上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、テレビの保護ガラス、現金自動預け払い機の安全ガラス及び他の電子製品として使用することができる。上述の化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、スマートフォン、タブレット、ノートパッドなどの消費者向けモバイル電子デバイス用のカバーガラスとして使用することができる。前記ガラスは、自動車のフロントガラスとして使用し、建築用スマートウインドウのための基材として使用することもできる。上述した化学的に強化されたアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、その高い強度のため、タッチスクリーン又はタッチパネルとして使用することもできる。
【0040】
[0040] 以下の実施例は、上記の組成物及び方法の説明である。
【0041】
[0041] 実施例:
以下の表1に示す成分を含むイオン交換可能なガラス組成物を以下のように調製する。
【表1】
【0042】
[0042] 表2に示すバッチ材料を秤量して混合した後、2リットルのプラスチック容器に添加する。使用されたバッチ材料は、化学試薬級品質を有する。
【表2】
【0043】
[0043] 砂の粒径は0.045〜0.25mmである。タンブラーを用いて原料を混合して均質なバッチを作製し、軟凝集体を粉砕する。ガラス溶融のために、混合したバッチをプラスチック容器から800mlの白金ロジウム合金るつぼに移す。白金ロジウムるつぼをアルミナバッカーに入れ、900℃の温度で動作するMoSi発熱体を備えた高温炉に装填する。炉の温度を徐々に1690℃まで上昇させ、そのバッカーを有する白金ロジウム合金るつぼをこの温度で4時間保持する。次いで、白金ロジウムるつぼからの溶融したバッチ材料をステンレス鋼のプレート上に注ぎ、ガラスパテを形成することによってガラスサンプルを形成する。ガラスパテがまだ熱いうちに、アニール装置に移して630℃の温度で2時間保持し、次いで1℃/分の速度で570℃の温度まで冷却する。その後、サンプルを室温(21℃)まで自然冷却する。
【0044】
[0044] 次に、ガラスサンプルは、溶融塩浴槽に入れることによって化学的に強化する。前記溶融塩浴槽においては、ガラスにおける構成成分のナトリウムイオンを、未満の420℃の温度(ガラスの歪み点よりも低い)で外部から供給されたカリウムイオンと4時間に交換する。この方法により、イオン交換によってガラスサンプルを強化し、処理表面に圧縮応力層を生成させる。
【0045】
[0045] ガラスの表面における圧縮応力の測定及び(複屈折に基づく)圧縮応力層の深さは、ガラスのセクションに偏光顕微鏡(ベレク(Berek)補償器)を使用することによって決定される。ガラスの表面の圧縮応力は、0.26(nm*cm/N)の応力光学定数を仮定して、測定された二重屈折から計算する(Scholze, H., Nature, Structure and Properties, Springer-Verlag, 1988, p.260)。
【0046】
[0046] 上記の表1に示す組成物の結果は、以下の表3に「Ex. 1」として示す欄に示す。表3と4に示し、「Ex. 2」〜「Ex. 14」と記載した他の組成物は、前記「Ex. 1」と同様の方法で調製する。
ただし、「Ex. 1」〜
「Ex. 5」、「Ex. 7」〜「Ex. 14」は参考例である。
【0048】
[0047] 表3と表4に示す記号の定義は以下の通りである。
・d:アルキメデス法 (ASTM C693)で測定した密度(g/cm
3)。
・n
D:屈折率測定法によって測定される屈折率。
・α:熱膨張係数(CTE)は、膨張計で測定した25〜300℃の線形寸法変化量である。
・T
10e2.5:高温円筒形粘度計で測定した粘度10
2.5ポイズの温度である。
・T
w:高温円筒形粘度計による粘度10
4ポイズでのガラス加工温度である。
・T
liq:液相線温度であり、温度勾配炉(ASTM C829-81)内でボートに第一結晶が観察される液相温度であり、通常、結晶化試験は72時間がかかる。
・T
soft:繊維伸長法により測定した粘度10
7.6ポアズでのガラス軟化温度である。
・T
a:繊維伸長法により測定した粘度10
13ポアズでのガラスアニール温度である。
・T
s:繊維伸長法により測定した粘度10
14.5ポアズでのガラスひずみ温度である。
・VH:ビッカース硬度である。
・VHcs:化学的に強化された後のビッカース硬度である。
・CS:圧縮応力(表面の原子を圧縮する傾向のある面内応力)である。
・DOL:最も近いゼロ応力平面までの表面下の圧縮の深さを表す層の深さである。
・CT:中央張力である。
【0049】
[0048] 本発明を特定の実施形態に関して説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内で本発明を修正して実施できることを認識するであろう。
【0050】
[0049] 「上」、「下」、「上」、「下」、「間」、「下」、「縦」、「水平」、「角度」、「上方」、「下方」、 「左右」、「左」、「右」、「右から左」、「上から下」、「下から上」、「上から下」、 「トップ」、「ボトム」、「ボトムアップ」、「トップダウン」などは、説明の目的のみのものであり、上述の構造の特定の向きまたは位置を限定するものではない。
【0051】
[0050] 本開示は、特定の実施形態に関して記載されている。本開示を読んだ後にのみ、当業者に明らかになる改良または改変は、本出願の精神及び範囲内であるとみなされる。いくつかの例において、本発明のいくつかの特徴は、他の特徴の対応する使用なしに採用されることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲が広く解釈され、本発明の範囲に一致するように解釈されることが適切である。