特許第6803388号(P6803388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803388内燃機関のバルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置の組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803388
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】内燃機関のバルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-532880(P2018-532880)
(86)(22)【出願日】2017年7月11日
(86)【国際出願番号】JP2017025197
(87)【国際公開番号】WO2018030056
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-157207(P2016-157207)
(32)【優先日】2016年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】浦川 真司
【審査官】 菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−190144(JP,A)
【文献】 特開2013−002418(JP,A)
【文献】 特開2013−002373(JP,A)
【文献】 特開2012−197777(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/114019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトとカムシャフトの相対回転位相を変更する内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
内周に複数のシューを有し、軸方向の少なくとも一端が開口形成された筒状のハウジング本体と、
該ハウジング本体の一端開口を閉塞するプレート部材と、
カムシャフトに固定されて、前記ハウジング本体の複数のシューの間を遅角作動室と進角作動室に分けるベーンを有するベーンロータと、
前記ハウジング本体の内底面あるいは前記プレート部材の内側面に形成され、内周面が円形状のロック凹部と、
前記ベーンロータの内部軸方向に沿って段差径状に形成され、内周面に大径孔部と小径孔部を有する摺動用孔と、
前記摺動用孔内に配置され、前記大径孔部の内周面に摺動するフランジ部と、前記フランジ部に設けられ、該フランジ部よりも小径に形成されて前記小径孔部の内周面に摺動する第1軸部と、該第1軸部に設けられ、第1軸部よりも小径に形成されて前記ロック凹部内に係脱可能な第2軸部と、を有するロックピンと、
前記ロックピンを前記ロック凹部方向へ付勢する付勢部材と、
を備え、
前記ロック凹部の開口縁から内底面までの深さよりも、前記第2軸部の軸方向長さの方が長く形成されていると共に、
前記ロックピンの第2軸部がロック凹部に係入し、かつ、前記ハウジング本体に対して前記ベーンロータが一方向へ最大に相対回転することによりベーンロータの周方向で前記第1軸部の外周面の径方向一方側が前記摺動用孔の内周面の径方向一方側に当接した状態において、
前記第1軸部の外周面の径方向他方側と前記摺動用孔の内周面の径方向他方側の対向端面との間に形成された第1クリアランスの幅長と、該第1クリアランス側の前記第2軸部の外周面と前記ロック凹部の内周面の径方向他方側との間に形成された第2クリアランスの幅長と、さらに前記第1軸部と第2軸部との結合部に形成された段差面の径方向の幅長と、の関係は、
前記段差面の幅長が、第1クリアランスの幅長よりも大きく形成されていると共に、前記第2クリアランスの幅長が、前記段差面の幅長とほぼ等しい大きさであり、
前記第1軸部と第2軸部は、同軸状に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記第1軸部の内部軸心方向に沿って形成された有底円柱状の内底面に、前記付勢部材の一端部が弾持されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
ルブタイミング制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記ロック凹部は、前記ハウジング本体の内底面またはプレート部材に形成された有底状の穴部と、該穴部の内周面に圧入固定された円環部材とによって構成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【請求項4】
クランクシャフトから回転力が伝達され、内周面に径方向内側に向かって突設された複数のシューを有する中空状のハウジング本体と、
該ハウジング本体の少なくとも軸方向の一端に形成された開口を閉塞するプレート部材と、
カムシャフトに固定され、前記複数のシューの間に形成された作動室を進角作動室と遅角作動室に分けるベーンを有すると共に、前記進角作動室と遅角作動室へ油圧を給排することによって前記ハウジング本体に対して相対回動するベーンロータと、
前記プレート部材の前記作動室側に設けられたロック穴と、
前記ベーンロータの内部にカムシャフト軸方向に沿って形成された摺動用孔と、
該摺動用孔の内部に摺動する第1軸部と、該第1軸部に設けられ、前記ロック穴に係入することによって前記ハウジング本体に対して前記ベーンロータを最進角または最遅角の相対回転位置に規制する前記第1軸部より小径な第2軸部と、を有するロックピンと、
を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
自由な回転が許容された前記プレート部材の上面に、前記ベーンロータが内部に収容された状態で前記ハウジング本体を載置する工程と、
前記摺動用孔とプレート部材のロック穴に渡って、前記ロックピンに相当するピン相当治具を挿入する工程と、
前記プレート部材を一方向へ回転させることによって前記ピン相当治具を介してベーンロータも同方向へ回転させて、前記ベーンの一側面を一つのシューの対向側面に当接させると共に、前記ピン相当治具の外周面の一方側の端縁を前記摺動用孔の内周面の一方側の対向端面に当接させる工程と、
前記ピン相当治具を前記摺動用孔とロック穴から抜き取った後に、前記ロックピンを前記摺動用孔に挿入して、前記第1軸部を前記摺動用孔に位置させながら第2軸部をロック穴に係入させる工程と、
を備え、
前記ピン相当治具は、外径が前記ロックピンの第1軸部の外径とほぼ同一の円柱状に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法
【請求項5】
請求項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
前記ピン相当治具は、前記ロックピンの第1軸部に相当する円柱状の第1部位の外径が、前記第1軸部との外径とほぼ同じ大きさに形成されていると共に、前記ロックピンの第2軸部に相当する円柱状の第2部位の外径が、前記第2軸部の外径よりも大きく、前記第1軸部の外径よりも小さく形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法
【請求項6】
請求項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
前記ロック凹部の開口縁から内底面までの深さよりも、前記第2軸部の軸方向長さの方が長く形成されていると共に、
前記ロックピンの第2軸部がロック凹部に係入し、かつ、前記ベーンロータが一方向へ最大に相対回転することによりベーンロータの周方向で前記第1軸部の外周面の一方側の端縁が前記摺動用孔の内周面の一方側の対向端面に当接した状態において、
前記第1軸部の外周面の他方側の端縁と前記摺動用孔の内周面の他方側の対向端面との間に形成された第1クリアランスの幅長をAとし、
該第1クリアランス側の前記第2軸部の外周面の端縁と前記ロック凹部の内周面の他方側の端面との間に形成された第2クリアランスの幅長をBとし、
さらに前記第1軸部と第2軸部との結合部に形成された段差面の径方向の幅長をCとした場合に、
B≒Cの関係になるように形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法。
【請求項7】
請求項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
前記段差面の幅長Cと第1クリアランスの幅長Aの関係が、
C>Aとなるように形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法。
【請求項8】
請求項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
前記第2クリアランスの幅長であるBと前記摺動用孔の径方向で反対側に形成された第3クリアランスの幅長Dと前記段差面の幅長Cとの関係が、
D>Cとなるように形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気弁や排気弁の開閉タイミングを運転状態に応じて可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のバルブタイミング制御装置は、例えば機関始動時のベーンロータのベーンとハウジングの内周面に設けられたシューとの間の打音などの異音の発生を抑制するために、ハウジングに対するベーンロータの最進角、あるいは最遅角側の相対回転位置を規制するロックピンとロック穴との間の周方向のクリアランスを高精度に調整することが要求されている。
【0003】
以下の特許文献1に記載されたバルブタイミング制御装置は、ハウジングの底壁にロック穴が形成されていると共に、底壁を貫通する通孔が形成されている。この通孔は、各構成部品の組立時にロックピンとロック穴との間の周方向のクリアランスを視認により行うもので、前記クリアランスは一つのシューに設けられた偏心ボルトによって調整するようになっている。このように、前記ロックピンとロック穴のクリアランスを通孔により視認により適正に調整できるので、前記クリアランスの調整を高精度に行うことができる。
【0004】
なお、前記通孔は、クリアランスの調整後は、底壁の外側から挿入されるキャップによって閉塞されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−2418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のバルブタイミング制御装置は、ロックピンとロック穴の間のクリアランスを視認するために、ハウジングの底壁に通孔を形成するとか、該クリアランスを微調整するために、シューに偏心ボルトを設けるようになっている。さらには、組立作業の完了後には、通孔をキャップによって閉塞するようになっている。したがって、部品点数の大幅な増加が余儀なくされると共に、クリアランスの調整作業が繁雑で該調整作業能率の低下を招いている。
【0007】
本発明は、前記従来のバルブタイミング制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、前記ロックピンとロック穴のクリアランスの調整に伴う部品点数の増加の抑制とクリアランス調整作業能率の低下を抑制し得る内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、クランクシャフトとカムシャフトの相対回転位相を変更する内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
内周に複数のシューを有し、軸方向の少なくとも一端が開口形成された筒状のハウジング本体と、
該ハウジング本体の一端開口を閉塞するプレート部材と、
カムシャフトに固定されて、前記ハウジング本体の複数のシューの間を遅角作動室と進角作動室に分けるベーンを有するベーンロータと、
前記ハウジング本体の内底面あるいは前記プレート部材の内側面に形成され、内周面が円形状のロック凹部と、
前記ベーンロータの内部軸方向に沿って段差径状に形成され、内周面に大径孔部と小径孔部を有する摺動用孔と、
前記摺動用孔内に配置され、前記大径孔部の内周面に摺動するフランジ部と、前記フランジ部に設けられ、該フランジ部よりも小径に形成されて前記小径孔部の内周面に摺動する第1軸部と、該第1軸部に設けられ、第1軸部よりも小径に形成されて前記ロック凹部内に係脱可能な第2軸部と、を有するロックピンと、
前記ロックピンを前記ロック凹部方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記ロック凹部の開口縁から内底面までの深さよりも、前記第2軸部の軸方向長さの方が長く形成されていると共に、前記ロックピンの第2軸部がロック凹部に係入し、かつ、前記ハウジング本体に対して前記ベーンロータが一方向へ最大に相対回転することによりベーンロータの周方向で前記第1軸部の外周面の径方向一方側が前記摺動用孔の内周面の径方向一方側に当接した状態において、
前記第1軸部の外周面の径方向他方側と前記摺動用孔の内周面の径方向他方側の対向端面との間に形成された第1クリアランスの幅長と、該第1クリアランス側の前記第2軸部の外周面と前記ロック凹部の内周面の径方向他方側との間に形成された第2クリアランスの幅長と、さらに前記第1軸部と第2軸部との結合部に形成された段差面の径方向の幅長と、の関係は、
前記段差面の幅長が、第1クリアランスの幅長よりも大きく形成されていると共に、前記第2クリアランスの幅長が、前記段差面の幅長とほぼ等しい大きさであり、
前記第1軸部と第2軸部は、同軸状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロックピンとロック穴のクリアランスの調整に伴う部品点数の増加を抑制できると共に、クリアランス調整作業能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るバルブタイミング制御装置の一部を断面して示す全体構成図である。
図2】本実施形態に係るバルブタイミング制御装置の分解斜視図である。
図3】フロントプレートを外してベーンロータが最遅角側に相対回転した作動状態を示す正面図である。
図4】フロントプレートを外してベーンロータが最進角側に相対回転した作動状態を示す正面図である。
図5図1に示すバルブタイミング制御装置の要部拡大断面図である。
図6】本実施形態におけるハウジングに対するベーンロータの組み付け手順を示し、Aはピン相当治具を摺動用孔とロック穴に挿入した状態を示し、Bはリアプレートとピン相当治具を介してベーンロータを最遅角方向へ相対回転させた状態を示し、Cはピン相当治具を抜いた後に、ロックピンを挿入する状態を示し、Dは摺動用孔に挿入されたロックピンの先端部をロック穴に係入した状態を示すそれぞれの断面図である。
図7】第2実施形態におけるハウジングに対するベーンロータの組み付け手順を示し、Aはピン相当治具を摺動用孔とロック穴に挿入した状態を示し、Bはリアプレートとピン相当治具を介してベーンロータを最遅角方向へ相対回転させた状態を示し、Cはピン相当治具を抜いた後に、ロックピンを挿入する状態を示し、Dは摺動用孔に挿入されたロックピンの先端部をロック穴に係入した状態を示すそれぞれの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置を吸気弁側に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
このバルブタイミング制御装置は、図1図3に示すように、機関の図外のクランクシャフトによってタイミングチェーンを介して回転駆動されるスプロケット1と、該スプロケット1に対して相対回動可能に設けられたカムシャフト2と、スプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、該両者1,2の相対回動位相を変換する位相変換機構3と、該位相変更機構3の作動をロックするロック機構4と、を備えている。
【0013】
前記スプロケット1は、後述するハウジング本体11の外周に一体に形成されており、図外のタイミングチェーンが巻回される複数の歯車部1aを一体に有している。
【0014】
前記カムシャフト2は、図外のシリンダヘッドにカム軸受を介して回転自在に支持され、外周面の所定位置に図外の吸気弁をバルブスプリングのばね力に抗して開作動させる複数の駆動カムが一体に設けられている。また、カムシャフト2は、一端部2aの内部軸方向に、後述するカムボルト6の軸部6bの外周面に形成された雄ねじ部6bが螺着する雌ねじ孔2bが形成されている。
【0015】
前記カムボルト6は、六角状の頭部6aと、該頭部6aの一端部にフランジ状の座部6dを介して一体に設けられた軸部6bと、該軸部6bの先端部外周に形成された前記雄ねじ部6cとから構成されている。
【0016】
前記位相変換機構3は、カムシャフト2の一端部2a側に配置されたハウジング5と、カムシャフト2の一端部2aにカムボルト6によって軸方向から固定されて、ハウジング5内に相対回転自在に収容されたベーンロータ7と、ハウジング5内に形成されて、後述するハウジング本体11の内周面に一体に突設された5つの第1〜第5シュー8a〜8eとベーンロータ7の後述する5枚のベーン22〜26とによって隔成されたそれぞれ5つの遅角作動室である遅角油室9及び進角作動室である進角油室10と、前記各遅角油室9と各進角油室10にそれぞれ油圧を給排する油圧回路と、を備えている。
【0017】
前記ハウジング5は、軸方向両端が開口されたほぼ円筒状のハウジング本体11と、該ハウジング本体11の軸方向前端開口と後端開口を閉塞するプレート部材であるフロントプレート12及びリアプレート13とを備え、該ハウジング本体11に対してフロントプレート12とリアプレート13が5本のボルト14によって軸方向から共締めにより一体的に結合されている。
【0018】
なお、前記ハウジング本体11は、例えば前端開口が円盤状の底壁で閉塞された有底円筒状に形成されて、後端開口のみをリアプレート13によって閉塞する構成とすることも可能である。
【0019】
前記ハウジング本体11は、焼結金属によって一体に形成され、前端側の外周に前記スプロケット1が一体に設けられていると共に、内周面の円周方向のほぼ等間隔位置に5つの第1〜第4シュー8a〜8eが内方へ一体に突設されている。
【0020】
この各シュー8a〜8eは、それぞれが側面視ほぼU字形状に形成されて、それぞれの先端部に軸方向に沿って形成されたシール溝内にほぼコ字形状のシール部材16がそれぞれ嵌着固定されている。また、各シュー8a〜8eの径方向外周側、つまりハウジング本体11の内周面に対する結合部である付け根部側の内部軸方向には、前記各ボルト14が挿通するボルト挿通孔17が貫通形成されている。
【0021】
前記フロントプレート12は、金属板をプレス成形によって比較的薄肉な円板状に形成され、中央に前記カムボルト6の頭部6cが所定隙間をもって挿通する挿通孔12aが穿設されていると共に、外周側の円周方向等間隔位置には、前記各ボルト14が挿通する5つのボルト孔12bが貫通形成されている。
【0022】
前記リアプレート13は、全体が焼結合金によって形成されていると共に、中央に前記カムシャフト2の一端部2aが挿通して回転自在に支持される支持孔13aが貫通形成されていると共に、外周側の円周方向等間隔位置には、前記各ボルト14の先端部の雄ねじ部が螺着する5つの雌ねじ孔13bが形成されている。
【0023】
また、前記リアプレート13の内端面には、前記各進角油室10に連通する5つの進角側油溝18が前記支持孔13aの中心から放射状に形成されている。
【0024】
前記ベーンロータ7は、焼結金属によって一体に形成されており、中央に形成された挿通孔7a内に軸方向から挿通した前記カムボルト6によってカムシャフト2の一端部2aに軸方向から固定された円筒状のロータ部21と、該ロータ部21の外周面の円周方向のほぼ等間隔位置に放射状に突設された5枚の第1〜第5ベーン22〜26と、を備えている。
【0025】
前記ロータ部21は、外周面に前記各シュー8a〜8eの先端部上面に嵌着固定された前記シール部材16に摺動しつつ回転するようになっている。また、ロータ部21は、図3に示すように、前記各ベーン22〜26のそれぞれの両側の径方向に前記各遅角油室9に連通する5つの遅角側油孔19が径方向に沿ってそれぞれ貫通形成されている。また、ロータ部21のカムシャフト2側の端面中央には、図1に示すように、前記カムシャフト2の一端部2a先端が嵌合する嵌合溝21aが形成されている。
【0026】
前記各ベーン22〜26は、図3にも示すように、それぞれが各シュー8a〜8e間に配置されていると共に、各先端面に軸方向に形成されたシール溝内に前記ハウジング本体11の内周面11aに摺接するほぼコ字形状のシール部材20がそれぞれ嵌着固定されている。
【0027】
また、この各ベーン22〜26は、特定のベーンである第1ベーン22が最大幅に形成され、他の4枚の第2〜第5ベーン23〜26が第1ベーン22よりも十分に小さい幅でかつほぼ同一の幅に設定されている。このように、最大幅の第1ベーン22に対して他の4つのベーン23〜26の幅をそれぞれ小さくすることによってベーンロータ7全体の重量バランスを均一化するようになっている。
【0028】
前記第1ベーン22は、図3に示すように、ベーンロータ7が最大反時計方向へ回転した際に、一側面22aが前記第1シュー8aの対向側面8fに当接して前記ハウジング5に対する最大遅角側の相対回転位置が規制されている。また、図4に示すように、ベーンロータ7が最大時計方向へ回転した際には、他側面22bが前記第2シュー8bの対向側面8gに当接して最大進角側の相対回転位置が規制されるようになっている。
【0029】
なお、前記第1ベーン22の両側面22a、22bが、第1、第2シュー8a、8bの各対向側面8f、8gに当接した状態では、図3図4に示すように、他のベーン23〜25は円周方向で対向するいずれのシュー8a〜8eにも当接しないようになっている。
【0030】
前記ロック機構4は、図1及び図2に示すように、前記第1ベーン22の内部軸方向に貫通形成された摺動用孔29と、該摺動用孔29内に摺動自在に収容されて、リアプレート13側に対して進退自在が設けられたロック部材であるロックピン30と、前記リアプレート13の径方向のほぼ中央所定位置に形成され、前記ロックピン30の先端部30cが係合してベーンロータ7をロックするロック凹部であるロック穴31と、機関の始動状態に応じて前記ロックピン30の先端部30cをロック穴31に係合させ、あるいは係合を解除させる係脱機構と、から構成されている。
【0031】
前記摺動用孔29は、図1及び図5に示すように、内周面が段差径状に形成されて、フロントプレート12側の前端側の大径孔部29aと後端側の小径孔部29bとを有し、大径孔部29aと小径孔部29bとの間に環状の段差部29cが形成されている。
【0032】
前記ロックピン30は、図1図2及び図5に示すように、ロック穴31と摺動用孔29に対応して外周面が段差径状に形成されて、外周面が前記大径孔部29aの内周面に摺接するフランジ部30aと、外径が該フランジ部30aよりも小径に形成されて、前記小径孔部29bの内周面を摺接する第1軸部である大径部30bと、該大径部30bの先端側に一体に設けられて、前記ロック穴31に係脱する第2軸部である先端部30cと、から主として構成されている。
【0033】
前記フランジ部30aは、大径部30bとの結合部に外径差による円環状の受圧用段差面30dが形成されていると共に、外周面と前記大径孔部29aの内周面との間のクリアランスは約30μm程度に小さく形成されて、これによってロックピン30の傾きを抑制している。
【0034】
前記大径部30bは、前記フランジ部30aと連続した内部中空状の円筒状に形成されて、全体の外径が均一径に形成されていると共に、この外径が前記小径孔部29bの外径よりも僅かに小さく形成されて該小径孔部29bでの摺動が確保されている。
【0035】
前記先端部30cは、中実な円柱状に形成されて、全体の外径が均一径のストレート軸に形成されていると共に、この外径が前記大径部30bよりも小径に形成されている。また、前記大径部30bと先端部30cとの結合部には、外径差による段差面30eが形成されている。この段差面30eは、径方向の幅長Cが後述する各クリアランスとの関係で所定長さに設定されている。
【0036】
なお、前記先端部30cを円錐状に形成して、後述するロック穴31のスリーブ32内に係入し易くすることも可能である。
【0037】
前記ロック穴31は、リアプレート13の所定位置にほぼ真円状の有底溝状に穿設されていると共に、内周面には耐摩耗材からなる円環状のスリーブ32が圧入されている。つまり、このロック穴31は、ベーンロータ7が図3に示す最大遅角側に相対回転した場合に前記ロックピン30の先端部30cが軸方向から対向するリアプレート13の内側面位置に穿設されている。
【0038】
また、このロック穴31は、図5に示すように、開口端縁から内底面31aまでの深さL2が前記ロックピン30の先端部30cの軸方向の長さL1よりも小さく形成されている。したがって、ロックピン30がロック穴31に係入して、先端部30cの先端面がロック穴31の内底面31aに当接した状態では、先端部30cの全てがロック穴31内に係入することなく前記段差面30eが小径孔部29b内に位置している。
【0039】
前記スリーブ32は、ロック穴31の一部を構成し、ほぼ真円状の内周面32aの内径が前記ロックピン30の大径部30bの外径とほぼ等しくかつ先端部30cの外周面の外径よりも大きく形成されている。したがって、先端部30cが係入された状態では、図5に示すように、内周面32aと前記先端部30cの外周面との間に円環状のクリアランスが形成されるようになっている。
【0040】
そして、同じく図5に示すように、第1ベーン22の一側面22aが第1シュー8aの対向側面8fに当接して、前記ロックピン30の先端部30cがロック穴31(スリーブ32)内に係入した場合には、ハウジング5に対するベーンロータ7の相対回転角度が機関始動に最適な最遅角の変換角度となるように設定されている。
【0041】
また、このように、前記ベーンロータ7の相対回転角度が最遅角の変換角度となっている状態においては、前記第1ベーン22と第1シュー8aが当接した側と周方向で反対側のロックピン30の大径部30bと摺動用孔29の小径孔部29bとの間に、第1クリアランスS1が形成されていると共に、ロックピン30の先端部30cとスリーブ32の内周面32aの対向端面32bとの間に第2クリアランスS2が形成されている。
【0042】
そして、これらの各クリアランスS1,S2のそれぞれの幅長A,Bや前記大径部30bと先端部30cとの間の段差面30eの幅長Cとの具体的な関係については、後述する各構成部品の組立方法の中で図5に基づいて説明する。
【0043】
前記摺動用孔29の段差部29cとロックピン30の受圧用段差部30dとの間に、円環状の第1受圧室33aが形成されていると共に、前記ロックピン30の先端部30cとロック穴31との間、つまりロック穴31の内底面31a側に第2受圧室33bが形成されている。これら第1、第2受圧室33a、33bは、後述する解除用油圧回路の一部を構成している。
【0044】
また、前記摺動用孔29の後端部側のベーンロータ7の後面には、図1及び図2に示すように、連通溝35が切欠形成されている。この連通溝35は、ロック穴31の孔縁から前記挿通孔7aの孔縁まで径方向に沿った長溝状に形成されていると共に、フロントプレート13の挿通孔12aの内周面とカムボルト6の座部6dの外周面との間に形成された環状隙間Sを介して大気に連通している。このように、摺動用孔29を大気に連通させることによって、ベーンロータ7の回転範囲内で常にロックピン30の摺動用孔29内での良好な摺動性を確保するようになっている。
【0045】
前記係脱機構は、前記ロックピン30の大径部30bの内底面とフロントプレート12の内端面との間に弾装されて、ロックピン30を進出方向(ロック穴31方向)へ付勢するコイルスプリング34と、前記第1、第2受圧室33a、33b内に油圧を供給してロックピン30をコイルスプリング34のばね力に抗して後退移動させる解除用油圧回路と、から構成されている。
【0046】
前記コイルスプリング34は、前記ベーンロータ7が最大遅角位相位置に相対回転した際に、そのばね力によって前記ロックピン30を進出移動させて、先端部30cをロック穴31(スリーブ32)内に係入させることによりハウジング5に対してベーンロータ7をロックさせるようになっている。
【0047】
この解除用油圧回路は、図3及び図4に示すように、前記遅角油室9と進角油室10にそれぞれ供給された油圧を、第1ベーン22の他側面22bから内部周方向及び軸方向の一端面に形成された第1油孔41aと第2油孔41bを介して前記第1受圧室33aと第2受圧室33bにそれぞれ供給するようになっている。
【0048】
この第1、第2受圧室33a、33bに供給された油圧によって、前記ロックピン30を、前記コイルスプリング34のばね力に抗して係合解除方向、つまり後退移動させて、先端部30cと前記ロック穴31との係合を解除することにより、ハウジング5に対するベーンロータ7の自由な相対回転を許容するようになっている。
【0049】
前記第1油孔41aは、第1ベーン22の他側面22b(遅角油室9側)に形成された一端開口からベーンの巾方向に沿って内部に形成されて、他端開口が前記第1受圧室33aに臨んでいる。一方、第2油孔41bは、第1ベーン22の軸方向一端面に径方向に沿って溝状に形成されて、一端が一つの進角側油溝18に連通し、他端が第2受圧室33bに臨んでいる。
【0050】
前記油圧回路は、前記各遅角、進角油室9,10に対して油圧を選択的に供給するか、あるいは各遅角、進角油室9,10内の油を選択的に排出するもので、図1に示すように、前記各遅角側油孔19に連通する遅角側通路36と、前記各進角側油溝18に連通する進角側通路37と、該各通路36,37間に設けられた電磁切換弁38と、各通路36,37に電磁切換弁38を介して油圧を供給するオイルポンプ39と、前記各遅角側、進角側通路36,37に電磁切換弁38を介して選択的に連通するドレン通路40と、を備えている。なお、前記オイルポンプ39の吸入通路39bとドレン通路40はオイルパン42に連通している。
【0051】
前記遅角側、進角側通路36、37は、一端部がカムシャフト一端部2aの径方向や内部軸方向に沿って形成された油通路孔36a、37a及び外周側のグルーブ溝36b、37b介して前記各油溝18及び各油孔19に連通している。
【0052】
前記電磁切換弁38は、3ポート2位置弁であって、図外のコントローラかからの出力信号によって各通路36,37とオイルポンプ39の吐出通路39aとドレン通路40とを選択的に切り換え制御するようになっている。
【0053】
前記コントローラは、内部のコンピュータが図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、スロットルバルブ開度センサなどの各種センサ類からの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出すると共に、かかる機関運転状態に応じて前記電磁切換弁38のコイルに制御電流を出力するようになっている。
〔組立方法〕
以下、図6に基づいてハウジング5に対するベーンロータ7などの組立方法について説明する。
【0054】
図6Aに示すように、まず、基台50の上面に、前記リアプレート13を載置するが、このとき、リアプレート13は、何ら固定されずに前記挿通孔12aに挿入された図外の円柱状の突部を中心として回転自在になっている。なお、このリアプレート13の内側面の所定の位置には、内周面に予めスリーブ32が圧入されたロック穴31が形成されている。
【0055】
続いて、予めベーンロータ7全体を、前記ハウジング本体11の各シュー8a〜8e間の各空間内にこれらに対応する各ベーン18a〜18eを位置決めしながらハウジング本体11の内部に軸方向から収容して組み付けておく。この組み付けユニット全体を、前記突部にロータ21の嵌合溝21aを上方から嵌合させながらリアプレート13の上面に載置する(第1工程)。
【0056】
その後、図外のクランプ機構によって、前記ハウジング本体11の外周面の約120°の位置を3点支持して、ハウジング本体11の自由な回転と上下移動を規制する(第2工程)。
【0057】
次に、図6Aに示すように、第1ベーン22の摺動用孔29内にロックピン30に相当するロッド状のピン相当治具51を上方から挿入して該ピン相当治具51の先端部51aを、大径孔部29a及び小径孔部29bから前記スリーブ32の内部に挿入する。これにより、前記摺動用孔29の内周面とスリーブ32の内周面32aとの相対的な位置決めが行われる(第3工程)。
【0058】
前記ピン相当治具51は、外径全体が均一径に形成されてストレート軸になっていると共に、この外径が前記ロックピン30の大径部30bの外径とほぼ同一に形成されている。
【0059】
続いて、図6Bに示すように、前記リアプレート13を矢印で示した左方向(時計方向方向)へ回転させると、先端部51aがスリーブ32内に係入された状態にある前記ピン相当治具51が、ベーンロータ7を、同方向へ押し出して回転させる。そうすると、第1ベーン22の一側面22aが第1シュー8aの対向側面8fに当接して両側面8f、22a間のクリアランスが消失する(第4工程)。この所定の押し付け力によって、前記両側面8f、22a間の零タッチの平面度(馴らし)を出して、両側面8f、22a間の加工誤差や傾きなどを修正する。また、この段階で前記当接された両側面8f、22a側に位置する前記ピン相当治具51の外周面の径方向一方側と小径孔部29bの径方向一方側の対向端面29dとは、ロックピンの軸径方向から当接している。また、この段階で前記当接された両側面8f、22aに対して反対側に位置する前記ピン相当治具51の外周面の径方向一方側とこれに径方向から対向するスリーブ32の内周面32aの対向端面32bが径方向から当接している。この第4工程によって、ピン相当治具51の第1ベーン22の一側面22a側のクリアランスを消すと共に、第1ベーン22の一側面22aと径方向反対側のスリーブ32の内周面との間のクリアランスを小さくすることができる。
【0060】
その後、第1シュー8aの対向側面8fに対する第1ベーン22の一側面22aの押し付け力を解除した後、図6Cに示すように、前記ピン相当治具51をスリーブ31の内部及び摺動用孔29から抜き取る。その後、ピン相当治具51に代わって通常使用する前記ロックピン30を摺動用孔29及びロック穴31(スリーブ32)内に挿入する(第5工程)。
【0061】
このロックピン30の挿入後は、図5及び図6Dに示すように、ロックピン30の後端部とフロントプレート12との間に前記コイルスプリング34を弾装させて、このコイルスプリング34のばね力によって前記ロックピン30の先端部30cの先端面をロック穴31の内底面31aに弾接させる。また、この状態で前記フロントプレート12とハウジング本体11及びリアプレート13を前記各ボルト14によって共締め固定する。これによって、組立作業が完了する。
【0062】
このように、前記ロックピン30がロック穴31内に係入した状態では、図6Dに示すように、ロックピン30の先端部30cは、その外径が前記ピン相当治具51の外径よりも小さいことから、先端部30cの外周面とスリーブ32の内周面32aとの間のクリアランスはピン相当治具51の場合よりも大きくなる。
【0063】
また、このときは、図5及び図6Dに示すように、前記当接された両側面8f、22a側に位置する前記大径部30bの外周面の一方側の端縁30fとこれに径方向から対向する小径孔部29bの一方の対向端面29dとは、径方向から当接して両者間にはクリアランスが形成されておらず消失している。
【0064】
しかし、この当接状態にある前記一方側の端縁30fと対向端面29dとベーンロータ7周方向(ロックピン30の径方向)で反対側に位置する大径部30bの他方側の端縁30gと、小径孔部29bの他方の対向端面29eとの間には、第1クリアランスS1が形成されている。また、同じ第1クリアランスS1の形成位置側にある前記ロックピン30の先端部30cの他方側の端縁30hとこれに径方向から対向する前記スリーブ32の内周面32aの他方側の対向端面32bとの間には、第2クリアランスS2が形成されている。さらに、前記ロックピン30の大径部29bと先端部29cとの結合部には、前述のように、互いの外径の差によって円環状の段差面30eが形成されている。
【0065】
第1クリアランスS1は、その径方向の最大幅長がAに設定され、第2クリアランスS2は、径方向の最大幅長がBに設定され、さらに前記段差面30eは、径方向の幅長がCに設定されている。
【0066】
これら第1クリアランスS1の幅長Aと第2クリアランスS2の幅長B及び段差面30eの半径方向の長さである幅長Cとの関係は、
B≒C>Aの関係となる。つまり、このような組付け方であれば、第2クリアランスS2の幅長Bが段差面30eの幅長Cにほぼ等しくなり、段差面30eの幅長Cの設定だけで第2クリアランスS2の幅長Bを設定することができる。換言すれば、この第2クリアランスS2はロックピン30の先端30cがスリーブ32内で移動できる範囲であって、部品の組み合わせによる誤差の積み上げに関係なく、段差面30eの幅長Cの設定によってロックピン30の先端30cがスリーブ32内に挿入した状態における可動範囲を精密に設定することができる。
【0067】
ここで、B≒Cのほぼ等しい大きさとは、製造誤差等を考慮して寸法差が±50μm以内を想定している。つまり、目標とするクリアランス(ガタ量)に対して±50μm程度の公差で設定することができる。換言すれば、ロックピン30の先端30cがベーンロータ7の回転軸心を中心として周方向に移動可能であるガタ量が段差面30eの幅長Cの設定によって決定することができる。
【0068】
なお、この状態での第2クリアランスBと径方向で反対側に形成された第3クリアランスS3の幅長Dは、第2クリアランスS2の幅長Bや、第1クリアランスS1の幅長A、段差面30eの幅長Cの値よりも大きく形成されている。つまり、D>B≒C>Aの関係となる。
【0069】
前述した第1クリアランスS1の幅長Aと、第2クリアランスS2の幅長B及び段差面30eの幅長Cのそれぞれの大きさは、前記各構成部品の組み立て前に予め機械的に設定されている。換言すれば、前述したB≒C>Aの関係となるように、第1クリアランスS1の幅長Aと第2クリアランスS2の幅長B及び段差面30eの幅長Cが予め設定されている。
【0070】
ここで、一方側の端縁30fとは、第1シュー8aの対向側面8fに対する第1ベーン22の一側面22aを押し付け、ロックピン30の大径部30bを小径孔部29bの対向側面8f側に押し付けた状態において、ロックピン30の大径部30bと小径孔部29bの接触している部分であり、ロックピン30の大径部30bの径方向一方側である。
【0071】
他方側の端縁30gとは、当接状態にある前記一方側の端縁30fと対向端面29dとベーンロータ7周方向(ロックピン30の径方向)で反対側に位置し、前記一方側の端縁30fとロックピン30の軸心を繋いで定義する断面において、前記一方側の端縁30fと反対側の端縁であり、大径部30bの径方向他方側である。
【0072】
対向端面32bとは、前記断面において、前記ロックピン30の先端部30cの他方側の端縁30hとこれに径方向から対向する前記スリーブ32の内周面32aであって、ロック凹部の内周面の径方向他方側である。
〔本実施形態の作用〕
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、機関停止時には、オイルポンプ39のポンプ作用が停止されて前記各油室9,10への作動油の供給が停止される。これによって、ベーンロータ7は、図3に示すように、カムシャフト2に作用する交番トルクによって図示のように左回転して最遅角位置に相対回転する。この位置でコイルスプリング34のばね力によってロックピン30の先端部30cがロック穴31(スリーブ32)内に係入して、ベーンロータ7を機関始動に最適な最遅角側の位置にロックする。
【0073】
次に、イグニッションスイッチをオン操作して始動が開始されると、つまり、クランキング初期の段階において、コントローラが電磁切換弁38の電磁コイルへの非通電状態が維持される。これによって、オイルポンプ39の吐出通路39aと遅角側通路36を連通させると同時に、進角側通路37とドレン通路40を連通させる。
【0074】
このため、オイルポンプ39から吐出された作動油は、電磁切換弁38や遅角側通路36などを経て各遅角油室9内に流入して、該遅角油室9が高圧になる。一方、各進角油室10内の作動油は、進角側通路37を通ってドレン通路40からオイルパン42内に排出されて該各進角油室10内が低圧になる。
【0075】
このとき、前記各遅角油室9に供給された油圧は、前記第1油孔41aを通って円環状の第1受圧室33a内に流入するが、この初期の時点では油圧が低いためロックピン30は後退移動することなく、コイルスプリング34のばね力によって先端部30cがロック穴31(スリーブ32)内に係合している。
【0076】
このため、ベーンロータ7は、かかる機関始動のクランキン初期の時点ではロック状態が維持されて、最遅角の相対回転位置になっていることから、スムーズなクランキングによって良好な始動性が得られることは勿論のこと、ばたつきが抑制されると共に、各ベーン22〜26と各シュー8a〜8eとの間の干渉が抑制される。この結果、特に、前記第1ベーン22と各シュー8a、8bとの間の干渉打音の発生を十分に抑制できる。
【0077】
その後、前記ポンプ吐出圧が高くなって前記各遅角油室9に供給された油圧も高くなり、この油圧が第1受圧室33a内にも流入して高圧となる。これにより、ロックピン30が後退動して先端部30cがロック穴31から抜け出して、ハウジング5に対するベーンロータ7の自由な相対回転が確保される。
【0078】
したがって、各遅角油室9の容積の拡大状態が維持させることに伴い、ベーンロータ7が、図3に示すように、反時計方向へ回転した状態となって、第1ベーン22の一側面22aが第1シュー8aの対向側面8fに当接して、それ以上の反時計方向の回転が規制される。これにより、ベーンロータ7、つまりカムシャフト2は、ハウジング本体11(スプロケット1)に対して相対回転角度が最遅角側に維持される。
【0079】
次に、機関が例えばアイドリング運転などの所定の機関運転状態に移行した場合は、コントローラから電磁切換弁38に制御電流が出力されて作動が開始され、吐出通路39aと進角側通路37を連通させ、同時に、遅角側通路36とドレン通路40を連通させる。これにより、各遅角油室9内の作動油が排出されて低圧になると共に、各進角油室10に作動油が供給されて内部が高圧になる。このとき、一つの進角油室10aから第2連通孔41bを介して第2受圧室33bに油圧が供給されることから、この油圧によってロックピン30はロック穴31(スリーブ32)内から抜け出した状態が維持される。
【0080】
このため、ベーンロータ7は、図4に示すように、ハウジング本体11に対して時計方向へ回転して、第1ベーン22の他側面が第2シュー8bの対向側面に当接して、それ以上の時計方向の回転が規制される。これによって、カムシャフト2のスプロケット1に対する相対回動位相が最進角側に変換される。この結果、吸気弁の開閉タイミングが最進角側に制御されて、かかる運転域における機関の性能を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、前述したように、予め前記第1クリアランスS1の幅長Aと第2クリアランスS2の幅長B及び段差面30eの幅長Cとの寸法関係を、B≒C>Aの関係となるように設定し、この特異な構成に基づいて各構成部品を組み立てるようにしたから、ロックピン30の先端部30cとロック穴31(スリーブ32)との周方向のクリアランスの調整を高精度に行うことが可能になる。
【0082】
すなわち、ベーンロータ7の周方向におけるロックピン30の外周面とロック穴32との間のクリアランスは、例えば、ロックピン30の先端部30cのロック穴32への円滑な係脱性の確保と、機関始動初期などにおいて、カムシャフト2に発生する正負の交番トルクに起因して第1ベーン22の一方の側端面22aと第1シュー8aの対向側面8fとの間に発生する打音を抑制する必要から高い精度が要求されていることは前述した通りである。
【0083】
そこで、本実施形態では、ロックピン30の先端部30cの軸長さL1がロック穴31の溝深さL2よりも大きく形成されていると共に、ロックピン30の先端部30cの外径が、大径部30bよりも小さく形成されていることを前提構成としている。
【0084】
さらに、第1ベーン22の一側面22aが第1シュー8aの対向側面8fに周方向から当接した状態において、前記当接側と周方向で反対側の前記第1クリアランスS1の幅長Aと、第2クリアランスS2の幅長B及び大径部30bと小径部30cの外径差による段差面30eの幅長Cとの関係を、前述のB≒C>Aに設定した。
【0085】
前記各幅長A〜Cは、本願発明者による多くの実験結果によって得られたものである。これによって、前述したロックピン30のロック穴31(スリーブ32)対する良好な係脱性の確保や、機関始動時の第1ベーン22と第1シュー8aの対向する両側面22a、8fとの間の打音の抑制効果を得ることができる。
【0086】
特に、本実施形態では、従来技術のように、視認によりクリアランス調整を行うのではなく、予め寸法設定された各クリアランス幅長A,Bや段差幅長Cに基づいて組立てすることにより、前記周方向のクリアランスを自動的に調整することができる。このため、部品点数の大幅な削減が図れると共に、クリアランスの調整作業が容易になり、該調整作業能率の向上が図れる。
【0087】
換言すれば、径方向のクリアランスは、ロックピン30の大径部30bと先端部30cの外径寸法の差や摺動用孔29の内径寸法のみで管理できることから、前述した部品点数の大幅な削減と、クリアランスの調整作業能率の向上といった作用効果が得られる。
【0088】
また、前記ロックピン30の先端部30cを、外径が均一なストレート軸に形成したことから、ここを基準とする前記第2クリアランスS2の幅長Bや段差面30eの幅長Cを精度良く設定することができる。
【0089】
さらに、先端部30cが係入するスリーブ32の内周面32aは、ほぼ真円状に形成されていることから、前記第1クリアランスS1も精度良く設定することが可能になる。
【0090】
このように、各クリアランスS1、S2の各幅長A,Bや段差面30eの幅長Cを精度良く設定できるので、先端部30cとロック穴31(スリーブ32)との周方向の前記クリアランスの調整をさらに高精度に行うことが可能になる。
【0091】
また、前記第3クリアランスS3の幅長Dは、第2クリアランスS2の幅長Bや、第1クリアランスS1の幅長A、段差面30eの幅長Cの値よりも大きく形成されている。このため、ロックピン30の先端部30cをロック穴31(スリーブ32)に対して常時円滑な係入、解除を行うことができる。
〔第2実施形態〕
図7A〜Dは第2実施形態における組立工程を示し、この実施形態ではピン相当治具52の構造を変更したものある。つまり、ピン相当治具52は、基本的に外径が前記ロックピン30の大径部30bと同じ寸法であるが、先端部に、前記ロックピン30の先端部30cに相当する先端部相当部52aが形成されている。この先端部相当部52aは、外径が前記先端部30cよりも大きく形成されている。
【0092】
なお、前記ロックピン30の大径部30bや先端部30cの各外径やスリーブ32の内径などは、第1実施形態のものと同一の大きさに設定されている。
【0093】
各構成部品の組立工程は、図6に示す第1実施形態と同じであるから、簡単に説明する。
【0094】
前述した第1、第2工程は同じであるから省略し、第3工程では、図7Aに示すように、第1ベーン22の摺動用孔29内にロックピン30に相当するロッド状のピン相当治具52を上方から挿入して該ピン相当治具52の先端部52aを、大径孔部29aから前記スリーブ32のスリーブ孔31aの内部に挿入する。これにより、前記摺動用孔29とスリーブ孔31aとの相対的な位置決めが行われる。
【0095】
続いて、第4工程では、図7Bに示すように、リアプレート13を矢印で示した左方向(時計方向方向)へ回転させると、先端部相当部52aがスリーブ32の内周面32aに係入された状態にあるピン相当治具51が、ベーンロータ7を、同方向へ押し出して回転させる。そうすると、第1ベーン22の一側面22aが第1シュー8aの対向側面8fに当接して両側面8f、22a間のクリアランスが消失する。このとき、スリーブ32の内周面32aの図中右側の部位(他方側の対向端面32b)が、ピン相当治具52の先端部相当部52aの外周面に当接している。
【0096】
その後、第1シュー8aの一側面8fに対する第1ベーン22の一側面22aの押し付け力を解除した後、図7Cに示すように、前記ピン相当治具52をロック穴31(スリーブ32)及び摺動用孔29から抜き取る。その後、代わって摺動用孔29及びロック穴31(スリーブ32)内に通常使用する前記ロックピン30を挿入する。
【0097】
このロックピン30の挿入後は、図7Dに示すように、ロックピン30の後端部とフロントプレート12との間にコイルスプリング34を弾装させる。このコイルスプリング34のばね力によって前記ロックピン30の先端部30cの先端面をロック穴31の内底面31aに弾接させる。また、この状態でフロントプレート12とハウジング本体11及びリアプレート13を各ボルト14によって共締め固定する。これによって、組立作業が完了する。
【0098】
そして、この実施形態では、ピン相当治具52の先端部52aの外径が、第1実施形態のものに比較して小さく形成されていることから、組立時における第2クリアランスS2の幅長Eが第1実施形態とは異なる。すなわち、各構成部品の組立時において、最終的にロックピン30を摺動用孔29内に挿入して先端部30cをロック穴31(スリーブ32)の内部に係入させると、第1クリアランスS1と、大径部30bと先端部30cとの間の段差面30eの各幅長A,Cは第1実施形態と同じであるが、第2クリアランスS2の幅長Eが第1実施形態の幅長Bよりも小さく形成されることになる。
【0099】
したがって、第1クリアランスS1の幅長Aと第2クリアランスS2の幅長E及び段差面30eの幅長Cとの関係は、E≒C>Aの関係となるように設定されている。
【0100】
このように、幅長Eが小さくなった分だけ、ロックピン30の先端部30cの外周面とスリーブ32の内周面との間のクリアランスの精度にやや影響を及ぼす。しかし、第1ベーン22と第1シュー8a間での打音が発生するなどの精度が悪化するような大きな影響ではなく、よって、この実施形態も前述した第1実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0101】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、スリーブ32を廃止して、内径を小さくしたロック穴31のみで形成することも可能である。
【0102】
また、ロックピン30のフランジ部30aを廃止して、大径部30bが摺動用孔29の小径孔部29bに摺動案内されるものであってもよい。この場合、第1受圧室33aも廃止して第2受圧室33bのみとすることも可能である。この場合、第2受圧室33bには、遅角油室9と進角油室10の両方から選択的に油圧が供給されて、ロックピン30をコイルスプリング34のばね力に抗して後退移動させるようになっている。
【0103】
さらに、前記実施形態では、バルブタイミング制御装置を、吸気弁に適用した場合を示したが、排気側に適用することも可能である。この場合は、ベーンロータ7を、図4に示す最大進角位置でロックさせることからロック穴31の形成位置が図4に示す位置から進角側の所定位置に形成されることになる。
【0104】
また、各実施形態ではロックピン30の摺動用孔29を第1ベーン22に設けたが、例えばロータ部21の径を大きく形成し、ロータ部21に摺動用孔を設ける構成であっても良い。
【0105】
本発明の別の好ましい態様としては、内周に複数のシューが一体に設けられ、軸方向の少なくとも一端が開口形成された筒状のハウジング本体と、該ハウジング本体の一端開口を閉塞するプレート部材と、カムシャフトに固定されて、前記ハウジング本体の複数のシューの間に遅角作動室と進角作動室とを隔成する複数のベーンを有し、前記遅角作動室と進角作動室に作動油が選択的に給排されることによって、前記ハウジングに対して遅角側あるいは進角側に相対回転するベーンロータと、前記ハウジング本体の内底面あるいは前記プレート部材の内側面に形成されたロック凹部と、前記複数のベーンのうち、特定のベーンの内部軸方向に沿って形成された摺動用孔内に摺動自在に設けられ、前記摺動用孔の内周面に摺動する大径な第1軸部と、該第1軸部の先端側に一体に設けられ、第1軸部よりも小径に形成されて前記ロック凹部内に係脱可能な第2軸部とを有するロックピンと、前記ロックピンを前記ロック凹部方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記ロック凹部の開口縁から内底面までの深さよりも、前記第2軸部の軸方向長さの方が長く形成されていると共に、前記ロックピンの第2軸部がロック凹部に係入し、かつ、前記ベーンロータが一方向へ最大に相対回転することにより前記第1軸部の外周面の一方側端面が前記摺動用孔の内周面の一方側端面に周方向から当接した状態において、前記第1軸部の外周面の径方向の他方側端面と前記摺動用孔の内周面の径方向の他方側端面との間に形成された第1クリアランスの幅長と、前記第2軸部の外周面の他方側端面と該他方側端面に対向するロック凹部の内周面の他方側端面との間に形成された第2クリアランスの幅長と、さらに前記第1軸部の外周面と第2軸部の外周面との間の段差面の径方向の段差幅長と、の関係は、
前記第2クリアランスの幅長が、前記段差面の幅長とほぼ等しい大きさになるように形成されている。
【0106】
また、さらに好ましい態様としては、前記第1クリアランスの幅長よりも前記段差面の幅長が大きく形成されている。
【0107】
さらに好ましい態様としては、前記第1軸部と第2軸部は、同軸状に形成されている。
【0108】
さらに好ましい態様としては、前記第1軸部の内部軸心方向に沿って形成された有底円柱状の内底面に、前記付勢部材の一端部が弾持されている。
【0109】
さらに好ましい態様しては、前記ロック凹部は、丸穴状に形成されている。
【0110】
さらに好ましい態様としては、前記ロック凹部は、前記ハウジング本体の内底面またはプレート部材に形成された有底状の穴部と、該穴部の内周面に圧入固定された円環部材とによって構成されている。
【0111】
別の好ましい態様としては、クランクシャフトから回転力が伝達され、内周面に径方向内側に向かって突設された複数のシューを有する中空状のハウジング本体と、該ハウジング本体の少なくとも軸方向の一端に形成された開口を閉塞するプレート部材と、カムシャフトに固定され、前記複数のシューの間に形成された作動室を進角作動室と遅角作動室に隔成する複数のベーンを有すると共に、前記進角作動室と遅角作動室へ油圧を給排することによって前記ハウジング本体に対して相対回動するベーンロータと、前記プレート部材の前記作動室側に設けられたロック穴と、前記複数のベーンのうち、特定のベーンの内部にカムシャフト軸方向に沿って形成された摺動用孔と、該摺動用孔の内部に摺動する第1軸部と、該第1軸部の先端部に一体に設けられ、前記ロック穴に係入することによって前記ハウジング本体に対して前記ベーンロータを最進角または最遅角の相対回転位置に規制する前記第1軸部より小径な第2軸部と、を有するロックピンと、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
自由な回転が許容された前記プレート部材の上面に、前記ベーンロータが内部に収容された状態で前記ハウジング本体を載置する工程と、
前記特定ベーンの摺動用孔とプレート部材のロック穴に渡って、前記ロックピンに相当するピン相当治具を挿入する工程と、
前記プレート部材を一方向へ回転させることによって前記ピン相当治具を介してベーンロータも同方向へ回転させて、前記特定ベーンの一側面を一つのシューの対向側面に当接させると共に、前記ピン相当治具の外周面を前記摺動用孔の内周面の一方側端面に当接させる工程と、
前記ピン相当治具を前記摺動用孔とロック穴から抜き取った後に、前記ロックピンを前記摺動用孔に挿入して、前記第1軸部を前記摺動用孔に位置させると共に第2軸部をロック穴に係入させる工程と、
を備えている。
【0112】
さらに好ましい態様としては、前記ピン相当治具は、外径が前記ロックピンの第1軸部の外径とほぼ同一の円柱状に形成されている。
【0113】
さらに好ましい態様としては、前記ピン相当治具は、前記ロックピンの第1軸部に相当する円柱状の第1部位の外径が、前記第1軸部との外径とほぼ同じ大きさに形成されていると共に、前記ロックピンの第2軸部に相当する円柱状の第2部位の外径が、前記第2軸部の外径よりも大きく、前記第1軸部の外径よりも小さく形成されている。
【0114】
さらに好ましい態様としては、前記ロック凹部の開口縁から内底面までの深さよりも、前記第2軸部の軸方向長さの方が長く形成されていると共に、前記ロックピンの第2軸部がロック穴に係入し、かつ、前記ベーンロータの一方向の相対回転によって、前記第1軸部の外周面の径方向の一方の側端面が前記摺動用孔の内周面の一方の対向端面にベーンロータの周方向から当接した状態において、
前記第1軸部の外周面の一方の側端面と径方向で反対側に位置する他方の側端面と、前記摺動用孔の内周面の一方の対向端面と径方向で反対側に位置する他方の対向端面との間に形成された第1クリアランスの幅長をAとし、
前記第2軸部の外周面の他方の側端面とこの側端面に対向するロック穴の内周面の他方の対向面との間に形成された第2クリアランスの幅長をBとし、
さらに前記第1軸部の外周面と第2軸部の外周面との段差面の径方向の幅長をCとした場合に、
B≒Cの関係になるように形成されている。
【0115】
さらに好ましい態様としては、前記段差面の幅長Cと第1クリアランスの幅長Aの関係が、
C>Aとなるように形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7