特許第6803399号(P6803399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803399アスペルギルス属菌由来の補酵素を用いるアントシアニジンオリゴマー製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803399
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】アスペルギルス属菌由来の補酵素を用いるアントシアニジンオリゴマー製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/06 20060101AFI20201214BHJP
   C12R 1/66 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   C12P17/06
   C12R1:66
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-558098(P2018-558098)
(86)(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公表番号】特表2019-505234(P2019-505234A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】KR2016008429
(87)【国際公開番号】WO2017131305
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年7月25日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0010085
(32)【優先日】2016年1月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518264583
【氏名又は名称】キットライフ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ピョ−ジャム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,トゥク−レ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヒュン−ピル
(72)【発明者】
【氏名】ハァン,ジン ウ
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許出願公開第03622818(DE,A)
【文献】 Lee et al.,British Journal of Nutrition,2005年,Vol.93,p.895-899
【文献】 峰時俊貴,化学と生物,2000年,Vol.38, No.12,p.831-838
【文献】 生化学辞典(第3版),株式会社東京化学同人,2002年 7月 1日,1296頁「補酵素」の項
【文献】 生化学辞典(第3版),株式会社東京化学同人,2002年 7月 1日,1062頁「発酵」の項
【文献】 浅野行蔵ら,北海道立食品加工研究センター報告,1994年,No.1,p.41-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 17/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アントシアニンモノマーに、ビスコザイムL(Viscozyme(登録商標) L)を添加して反応させる段階を含む、アントシアニジンオリゴマー製造方法。
【請求項2】
前記(1)段階の反応が、
アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:8乃至1:15の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した後、前記アントシアニンモノマー溶液と前記ビスコザイムLとを基質対酵素比40:1〜60:1の質量比で混合して行われることを特徴とする、
請求項1に記載のアントシアニジンオリゴマー製造方法。
【請求項3】
前記(1)段階の反応が15〜30℃の温度で5〜10日間行われることを特徴とする、請求項1に記載のアントシアニジンオリゴマー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスペルギルス属菌からの補酵素を用いるアントシアニジンオリゴマー製造方法に関し、さらに詳細には、アントシアニンモノマーを、アスペルギルス属菌の一種である黒カビ(アスペルギルス・ニガー)の補酵素と、該補酵素に含まれている個別酵素であるグルコシダーゼ(Glucosidase)で発酵させてアントシアニジンオリゴマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アントシアニンは、天然色素としての機能に加えて、例えば、抗酸化、コレステロール低下、視力改善効果、血管保護機能、動脈硬化・心臓病の予防、抗潰瘍機能、抗がん、抗炎症、糖尿病抑制、紫外線からの保護機能などのさまざまな生理活性を示し、医薬品にも積極的に活用されており、健康食品及び新医薬品の創出の新たな対象として注目を浴びている。
アントシアニンは、中性またはアルカリ溶液で不安定であり、酸性溶液においても光に晒されると色が徐々に脱色する現象を示し、構造的に最も不安定な物質の一つに挙げられる。特にアントシアニン色素の安定性に影響を与える要因としては、アントシアニンの化学構造、色素の濃度、溶液のpH、温度、共存色素の有無、金属イオン、酵素、酸素、アスコルビン酸(ascorbic acid)、糖などが挙げられるが、これらの要因の違いによって色度の維持、すなわち構造的安定性が異なる。この構造的不安定性のため、食品及び医薬品としての積極的活用には多くの困難さが発生しているので、安定性を高めるための研究が進められている。
【0003】
ほとんどの食材に含まれているアントシアニンは、単量体形態であるが、この形態は、中性及びアルカリ性に不安定で、光と熱に不安定であるという欠点がある。重合体形態は、食品中に少量存在するが、単量体よりも機能性及び安定度が高く、既存の代表的な抗酸化機能も倍加することになる。最近、近視と弱視の問題において、主観的な症状及びコントラスト感度を改善するアントシアニジンオリゴマーに関する研究が報告されている。
関連従来技術としては、特許文献1(韓国登録特許第10−1182630号,2012年9月7日)及び特許文献2(韓国公開特許第10−2012−0079040号,2012年7月11日)などがある。
【0004】
アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌は、酵素、有機酸および薬理活性のある代謝産物を生産する有用な微生物であって、食品産業、酒類産業、医薬業だけでなく、農業にも有用に用いられてきたとともに、古くから伝統的な発酵食品の生産に用いられてきたから、安全な菌株として認識されている。また、菌類は、外部へ排出する外酵素(exoenzyme)が多く、機能が多様であるため、これを利用すれば、有用な物質を、天然酵素を用いて経済性よく生産することができる。従来、アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌を用いてアントシアニジンオリゴマーを生産した研究が報告されているが、菌株を直接用いると、アントシアニジンオリゴマーを生産する過程で汚染が生じるという欠点があった。
本発明者らは、アスペルギルス(Aspergillus)属菌を直接用いず、外部へ排出する酵素を用いて、アントシアニジンオリゴマーを製造することができるかを確認するために、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌を培養した培養液から抽出した補酵素と、該補酵素を分析して得られたグルコシダーゼ(glucosidase)及びビスコザイムL(Viscozyme L)酵素を用いた製造方法を考案し、その効能を確認することにより、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1182630号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第10−2012−0079040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)の補酵素、該補酵素を分析して得られたグルコシダーゼ(glucosidase)及びビスコザイムL(Viscozyme L)酵素を用いてアントシアニジンオリゴマーを合成することにより、前記アントシアニジンオリゴマーを経済的に生産する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、(1)アスペルギルス(Aspergillus)属菌株を培養した培養液から水溶性補酵素を分離する段階と、(2)アントシアニンモノマーに、前記(1)段階で分離した補酵素を添加して発酵させる段階とを含む、アントシアニジンオリゴマー製造方法を提供する。
好ましくは、前記(1)段階のアスペルギルス(Aspergillus)属菌株はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。
好ましくは、前記(1)段階の菌株は15〜30℃の温度で4〜8日間培養される。
好ましくは、前記(1)段階の補酵素は、培養液に有機溶媒を入れて沈殿させた後に得られる沈殿物から蒸留水に溶解して酵素として分離される。
好ましくは、前記(2)段階の発酵は、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:8乃至1:15の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した後、前記アントシアニンモノマー溶液と前記(1)段階で分離した補酵素とを基質対酵素比40:1〜60:1の質量比で混合して行われる。
好ましくは、前記(2)段階の発酵は15〜30℃の温度で5〜10日間行われる。
また、本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属菌株を培養した培養液にある、グルコシダーゼ(Glucosidase)を有効成分として含む補酵素とビスコザイムL(Viscozyme L)を、アントシアニンモノマーに添加して発酵させる段階を含む、アントシアニジンオリゴマー製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明によれば、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)を用いた培養過程上で生じる汚染問題を克服するために、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)の補酵素を抽出し、これを用いて発酵過程を経ることにより、既存のアントシアニンモノマーに比べて、汚染のおそれが少なく、ラジカル消去効果に優れる、アントシアニジンオリゴマーを製造する効果を確認した。
また、補酵素に含まれている酵素のうちグルコシダーゼ(Glucosidase)を用いて発酵させたアントシアニジンオリゴマーが発酵効率及びラジカル消去能力に優れていることを確認したとともに、グルコシダーゼ(Glucosidase)を含む酵素の発酵においてもアントシアニジンオリゴマーの重合を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1によって、アントシアニンモノマーを黒カビ(アスペルギルス・ニガー)培養液で発酵させてアントシアニジンオリゴマーを製造する過程図である。
図2】本発明の実施例1によって、アントシアニンモノマーを対照群としてESI mass結果を確認したグラフである。
図3】本発明の実施例1によって、アントシアニジンオリゴマーを結果的に合成したかどうかをESI massによって確認して示すグラフである。
図4】本発明の実施例1によって、アントシアニンモノマーと黒カビ(アスペルギルス・ニガー)培養液で発酵させて製造したアントシアニジンオリゴマーのヒドロキシルラジカル消去能力を濃度別に比較して示すグラフである。
図5】本発明の実施例2によって、黒カビ(アスペルギルス・ニガー)培養液から補酵素を得る過程図である。
図6】本発明の実施例2によって、アントシアニンモノマーを黒カビ(アスペルギルス・ニガー)からの補酵素で発酵させてアントシアニジンオリゴマーを製造する過程図である。
図7】本発明の実施例2によって、アントシアニンモノマーを対照群としてESI mass結果を確認して示すグラフである。
図8】本発明の実施例2によって、アントシアニジンオリゴマーを結果的に合成したかどうかをESI massによって確認して示すグラフである。
図9】本発明の実施例2によって、黒カビ(アスペルギルス・ニガー)補酵素タンパク質を培養期間別にSDS−PAGEで分離して発現を確認した写真である。
図10】本発明の実施例2によって、黒カビ(アスペルギルス・ニガー)補酵素に含まれている酵素を分析するためのSDS−PAGE写真である。
図11】本発明の実施例3によって、アントシアニンモノマーを黒カビ(アスペルギルス・ニガー)からの酵素「グルコシダーゼ(Glucosidase)」及び「ビスコザイムL(Viscozyme L)」で発酵させてアントシアニジンオリゴマーを製造する過程図である。
図12】本発明の実施例3によって、アントシアニンモノマーを対照群としてESI mass結果を確認して示すグラフである。
図13】本発明の実施例3によって、グルコシダーゼ(Glucosidase)酵素を用いたとき、アントシアニジンオリゴマーを結果的に合成したかどうかをESI massによって確認して示すグラフである。
図14】本発明の実施例3によって、ビスコザイムL(Viscozyme L)酵素を用いたとき、アントシアニジンオリゴマーを結果的に合成したかどうかをESI massによって確認して示すグラフである。
図15】本発明の実施例3によって、黒カビ(アスペルギルス・ニガー)から得た酵素「グルコシダーゼ(Glucosidase)」と「ビスコザイムL(Viscozyme L)」で発酵させて製造したアントシアニジンオリゴマー2種類のヒドロキシルラジカル消去能力を濃度別に比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(1)アスペルギルス(Aspergillus)属菌株を培養した培養液から水溶性補酵素を分離する段階と、(2)アントシアニンモノマーに、前記(1)段階で分離した補酵素を添加して発酵させる段階とを含む、アントシアニジンオリゴマー製造方法を提供する。
前記(1)段階のアスペルギルス(Aspergillus)属菌株は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることが好ましい。
前記(1)段階の菌株は15〜30℃の温度で4〜8日間培養することが好ましい。さらに好ましくは、25℃の温度で5日間培養する。
前記(1)段階の補酵素は、培養液に有機溶媒を入れて沈殿させた後に得られる沈殿物から、蒸留水に溶解して酵素として分離されることが好ましい。
前記(2)段階の発酵は、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:8乃至1:15の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した後、前記アントシアニンモノマー溶液と前記(1)段階で分離した補酵素とを基質対酵素比40:1乃至60:1の質量比で混合して行われることが好ましい。基質はアントシアニンモノマーである。さらに好ましくは、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した後、前記アントシアニンモノマー溶液と前記(1)段階で分離した補酵素とを50:1の質量比で混合して行う。
前記(2)段階の発酵は15〜30℃の温度で5〜10日間行われることが好ましい。さらに好ましくは、25℃の温度で7日間培養する。7日に至るまではアントシアニジンオリゴマー合成量が増加したが、8日以後の条件では時間が経ってもアントシアニジンオリゴマー合成量が横ばいであることを確認した。
前記(1)段階で分離した補酵素は、グルコシダーゼ(Glucosidase)を有効成分として含む。
また、本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属菌株を培養した培養液にある、グルコシダーゼ(Glucosidase)を有効成分として含む補酵素とビスコザイムL(Viscozyme L)を、アントシアニンモノマーに添加して発酵させる段階を含む、アントシアニジンオリゴマー製造方法を提供する。
【実施例】
【0011】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されるものと解釈されないことは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0012】
実施例1.アスペルギルス属菌培養液のオリゴマー合成能力の確認
図1にまとめたとおり、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した。そして、アントシアニンモノマー溶液と黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株培養液を95:5の質量比で混合して25℃の温度で5日間発酵させた。前記菌株培養液は、黒カビ菌株を培地溶液1Lで25℃の条件下に5日間培養して作っておいた。
発酵させた後、これをろ紙(filter paper)で濾過して菌株など、アントシアニン以外の物質を濾過することによりアントシアニジンオリゴマーを分離し、凍結乾燥させてアントシアニジンオリゴマーを得た。アントシアニジンオリゴマーを精製するためには、チューブラー(tubular)、キャピラリー(capillary)、コイル状スパイラル(coiled spiral)、平面膜(plane membrane)を用いて濾過することが好ましい。
【0013】
アントシアニンモノマーを対照群とし、ESI massをかけてピークを観察した。図2に示すように、分子量300付近のピークが非常に高いことを確認することができた。これに比べて、得られたアントシアニジンオリゴマーを対象にESI massをかけてピークを観察した結果、図3に示すように、分子量600付近で高いピークが観察されたとともに、900と1200付近でもピークが観察された。これは、アントシアニンモノマーが発酵の結果としてダイマー(dimer)、トリマー(trimer)、テトラマー(tetramer)などのアントシアニジンオリゴマー(oligomer)に変換されたことを意味するもので、合成されたことが確認された。
アントシアニンモノマーとオリゴマーとの効能を比較するために、図4に示すように、モノマーとオリゴマーの濃度を異ならせて、ヒドロキシルラジカルを消去する効能を実験した。実験の結果、オリゴマーの抑制濃度(inhibitory concentration、IC50)がモノマーに比べて半分程度にしかならないため、低濃度でもラジカル消去効能があることが確認された。
【0014】
実施例2.アスペルギルス属菌培養液から得られた補酵素のオリゴマー合成能力の確認
図5にまとめたように、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株培養液から補酵素を得るために、黒カビ菌株を培地溶液2Lで25℃の条件下に5日間培養して培養液を得、培地をろ紙(filter paper)で濾過して菌株を除去し、アセトンを投入して4℃で8〜12時間沈殿させた。3000rpmで20分間遠心分離した後、培養沈殿物を得、培養沈殿物の中から3次蒸留水に溶解する酵素を分離し、凍結乾燥させて補酵素を準備した。
次に、図6にまとめたように、アントシアニンモノマーと蒸留水を1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した。そして、アントシアニンモノマー溶液と補酵素とを500:1の質量比で混合して25℃の温度で5日間発酵させた。
発酵させた後、これをろ紙(filter paper)で濾過してアントシアニン以外の物質を濾過することにより、アントシアニジンオリゴマーを分離し、凍結乾燥させてアントシアニジンオリゴマーを得た。アントシアニジンオリゴマーを精製するためには、チューブラー(tubular)、キャピラリー(capillary)、コイル状スパイラル(coiled spiral)、平面膜(plane membrane)を用いて濾過することが好ましい。
【0015】
アントシアニンモノマーを対照群とし、ESI massをかけてピークを観察した。図7がその結果である。これに比べて、得られたアントシアニジンオリゴマーを対象にESI massをかけてピークを観察した結果、図8に示すように、図7に比べて分子量600、900および1200付近でピークが高くなることが観察された。これは、アントシアニンモノマーが発酵の結果としてダイマー(dimer)、トリマー(trimer)、テトラマー(tetramer)などのアントシアニジンオリゴマー(oligomer)に変換されたことを意味するもので、合成されたことが確認された。
アントシアニジンオリゴマーを作る補酵素を分離し、その特性と培養条件を確認するために、図9のようなSDS−PAGE結果写真を得ることができた。培養期間を4〜8日に多様にして抽出される補酵素の量をSDS−PAGEによって比較した結果、6〜8日の条件では時間が経っても補酵素の量がほぼ同様に抽出された。したがって、アントシアニジンオリゴマーの合成のための補酵素を用意するために、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)を5日間培養することが最適であることを確認することができる。
また、図10に四角形で表示したように、9つの薄片を得て、それぞれトリプシンタンパク質分解酵素を用いて分解した後、Q−STAR Pulsar ESI−hybrid Q−TOF機器でLC−MS/MS分析を実施した。その結果、数十個のタンパク質を確認し、これらのMS/MSスペクトルピークをAnalyst QS(v1.1、Applied Biosystems)で分析してタンパク質を同定した。同定したタンパク質は、下記表のとおりである。黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)の場合、現在産業的に有用なモデル菌類として脚光を浴びているので、これらの菌類は様々な食品添加物や医薬品、産業用酵素の生産に非常に適した加水分解タンパク質(hydrolytic proteins)を分泌することが知られている。下記表1乃至表2において、同定されたタンパク質のうち、一部のアントシアニジンオリゴマー代謝と関係があるものと予想されるタンパク質を選択して、斜体文字で表記した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】

【0018】
実施例3.アスペルギルス属菌の培養液から得られた補酵素のうちのグルコシダーゼ(Glucosidase)及びビスコザイムL(Viscozyme L)のオリゴマー合成能力の確認
図11でまとめたように、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した。アントシアニンモノマー溶液と、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株補酵素から分離した酵素であるグルコシダーゼ(glucosidase)とビスコザイムL(viscozyme L)をそれぞれ1000:1と500:1の質量比で混合(図11に100:1で示されているものは、溶液ではなく、アントシアニンモノマー自体と酵素との質量比である。グルコシダーゼがより良い酵素効率を持つから、類似する効率を示すために、ビスコザイムL(Viscozyme L)を2倍多い量で混合する。)して、25℃の温度で5日間発酵させた。
ビスコザイムL(Viscozyme L)は、グルコシダーゼ(Glucosidase)を含む酵素であり、市販の酵素である。
発酵させた後、これをろ紙(filter paper)で濾過してアントシアニン以外の物質を濾過することにより、アントシアニジンオリゴマーを分離し、凍結乾燥させてアントシアニジンオリゴマーを得た。アントシアニジンオリゴマーを精製するためには、チューブラー(tubular)、キャピラリー(capillary)、コイル状スパイラル(coiled spiral)、平面膜(plane membrane)を用いて濾過することが好ましい。
【0019】
アントシアニンモノマーを対照群とし、ESI massをかけてピークを観察した。図12がその結果である。これに比べて、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株補酵素から分離した酵素であるグルコシダーゼ(glucosidase)とビスコザイムL(viscozyme L)を用いて得られたアントシアニジンオリゴマーを対象にESI massをかけてピークを観察した結果、図13及び図14に示すように、図12に比べて分子量600、900および1200付近でピークが高くなることが観察された。これは、アントシアニンモノマーが発酵の結果としてダイマー(dimer)、トリマー(trimer)、テトラマー(tetramer)などのアントシアニジンオリゴマー(oligomer)に変換されたことを意味するもので、合成されたことが確認された。さらに、酵素としてグルコシダーゼ(glucosidase)を用いた図13の場合は、オリゴマーの割合がビスコザイムL(viscozyme L)を用いた図14の場合よりも高いことを確認した。
【0020】
各酵素で得たアントシアニジンオリゴマーの効能を比較するために、図15に示すように、グルコシダーゼ(Glucosidase)で得られたオリゴマーとビスコザイムL(Viscozyme L)で得られたオリゴマーとの濃度を異ならせて、ヒドロキシルラジカルを消去する効能を実験した。実験結果、グルコシダーゼ(Glucosidase)で得られたオリゴマーの抑制濃度(inhibitory concentration、IC50)である0.217mg/mLが、ビスコザイムL(Viscoayme L)で得られたオリゴマーの抑制濃度である0.278mg/mLに比べて遥かに低い値なので、低濃度でもラジカル消去効能があることが確認された。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲及びそれらの等価物によって定められると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15