【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(1)アスペルギルス(Aspergillus)属菌株を培養した培養液から水溶性補酵素を分離する段階と、(2)アントシアニンモノマーに、前記(1)段階で分離した補酵素を添加して発酵させる段階とを含む、
アントシアニジンオリゴマー製造方法を提供する。
前記(1)段階のアスペルギルス(Aspergillus)属菌株は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)であることが好ましい。
前記(1)段階の菌株は15〜30℃の温度で4〜8日間培養することが好ましい。さらに好ましくは、25℃の温度で5日間培養する。
前記(1)段階の補酵素は、培養液に有機溶媒を入れて沈殿させた後に得られる沈殿物から、蒸留水に溶解して酵素として分離されることが好ましい。
前記(2)段階の発酵は、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:8乃至1:15の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した後、前記アントシアニンモノマー溶液と前記(1)段階で分離した補酵素とを基質対酵素比40:1乃至60:1の質量比で混合して行われることが好ましい。基質はアントシアニンモノマーである。さらに好ましくは、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した後、前記アントシアニンモノマー溶液と前記(1)段階で分離した補酵素とを50:1の質量比で混合して行う。
前記(2)段階の発酵は15〜30℃の温度で5〜10日間行われることが好ましい。さらに好ましくは、25℃の温度で7日間培養する。7日に至るまでは
アントシアニジンオリゴマー合成量が増加したが、8日以後の条件では時間が経っても
アントシアニジンオリゴマー合成量が横ばいであることを確認した。
前記(1)段階で分離した補酵素は、グルコシダーゼ(Glucosidase)を有効成分として含む。
また、本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属菌株を培養した培養液にある、グルコシダーゼ(Glucosidase)を有効成分として含む補酵素とビスコザイムL(Viscozyme L)を、アントシアニンモノマーに添加して発酵させる段階を含む、
アントシアニジンオリゴマー製造方法を提供する。
【実施例】
【0011】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されるものと解釈されないことは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0012】
実施例1.アスペルギルス属菌培養液のオリゴマー合成能力の確認
図1にまとめたとおり、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した。そして、アントシアニンモノマー溶液と黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株培養液を95:5の質量比で混合して25℃の温度で5日間発酵させた。前記菌株培養液は、黒カビ菌株を培地溶液1Lで25℃の条件下に5日間培養して作っておいた。
発酵させた後、これをろ紙(filter paper)で濾過して菌株など、アントシアニン以外の物質を濾過することにより
アントシアニジンオリゴマーを分離し、凍結乾燥させて
アントシアニジンオリゴマーを得た。
アントシアニジンオリゴマーを精製するためには、チューブラー(tubular)、キャピラリー(capillary)、コイル状スパイラル(coiled spiral)、平面膜(plane membrane)を用いて濾過することが好ましい。
【0013】
アントシアニンモノマーを対照群とし、ESI massをかけてピークを観察した。
図2に示すように、分子量300付近のピークが非常に高いことを確認することができた。これに比べて、得られた
アントシアニジンオリゴマーを対象にESI massをかけてピークを観察した結果、
図3に示すように、分子量600付近で高いピークが観察されたとともに、900と1200付近でもピークが観察された。これは、アントシアニンモノマーが発酵の結果としてダイマー(dimer)、トリマー(trimer)、テトラマー(tetramer)などの
アントシアニジンオリゴマー(oligomer)に変換されたことを意味するもので、合成されたことが確認された。
アントシアニンモノマーとオリゴマーとの効能を比較するために、
図4に示すように、モノマーとオリゴマーの濃度を異ならせて、ヒドロキシルラジカルを消去する効能を実験した。実験の結果、オリゴマーの抑制濃度(inhibitory concentration、IC50)がモノマーに比べて半分程度にしかならないため、低濃度でもラジカル消去効能があることが確認された。
【0014】
実施例2.アスペルギルス属菌培養液から得られた補酵素のオリゴマー合成能力の確認
図5にまとめたように、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株培養液から補酵素を得るために、黒カビ菌株を培地溶液2Lで25℃の条件下に5日間培養して培養液を得、培地をろ紙(filter paper)で濾過して菌株を除去し、アセトンを投入して4℃で8〜12時間沈殿させた。3000rpmで20分間遠心分離した後、培養沈殿物を得、培養沈殿物の中から3次蒸留水に溶解する酵素を分離し、凍結乾燥させて補酵素を準備した。
次に、
図6にまとめたように、アントシアニンモノマーと蒸留水を1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した。そして、アントシアニンモノマー溶液と補酵素とを500:1の質量比で混合して25℃の温度で5日間発酵させた。
発酵させた後、これをろ紙(filter paper)で濾過してアントシアニン以外の物質を濾過することにより、
アントシアニジンオリゴマーを分離し、凍結乾燥させて
アントシアニジンオリゴマーを得た。
アントシアニジンオリゴマーを精製するためには、チューブラー(tubular)、キャピラリー(capillary)、コイル状スパイラル(coiled spiral)、平面膜(plane membrane)を用いて濾過することが好ましい。
【0015】
アントシアニンモノマーを対照群とし、ESI massをかけてピークを観察した。
図7がその結果である。これに比べて、得られた
アントシアニジンオリゴマーを対象にESI massをかけてピークを観察した結果、
図8に示すように、
図7に比べて分子量600、900および1200付近でピークが高くなることが観察された。これは、アントシアニンモノマーが発酵の結果としてダイマー(dimer)、トリマー(trimer)、テトラマー(tetramer)などの
アントシアニジンオリゴマー(oligomer)に変換されたことを意味するもので、合成されたことが確認された。
アントシアニジンオリゴマーを作る補酵素を分離し、その特性と培養条件を確認するために、
図9のようなSDS−PAGE結果写真を得ることができた。培養期間を4〜8日に多様にして抽出される補酵素の量をSDS−PAGEによって比較した結果、6〜8日の条件では時間が経っても補酵素の量がほぼ同様に抽出された。したがって、
アントシアニジンオリゴマーの合成のための補酵素を用意するために、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)を5日間培養することが最適であることを確認することができる。
また、
図10に四角形で表示したように、9つの薄片を得て、それぞれトリプシンタンパク質分解酵素を用いて分解した後、Q−STAR Pulsar ESI−hybrid Q−TOF機器でLC−MS/MS分析を実施した。その結果、数十個のタンパク質を確認し、これらのMS/MSスペクトルピークをAnalyst QS(v1.1、Applied Biosystems)で分析してタンパク質を同定した。同定したタンパク質は、下記表のとおりである。黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)の場合、現在産業的に有用なモデル菌類として脚光を浴びているので、これらの菌類は様々な食品添加物や医薬品、産業用酵素の生産に非常に適した加水分解タンパク質(hydrolytic proteins)を分泌することが知られている。下記表1乃至表2において、同定されたタンパク質のうち、一部の
アントシアニジンオリゴマー代謝と関係があるものと予想されるタンパク質を選択して、斜体文字で表記した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
実施例3.アスペルギルス属菌の培養液から得られた補酵素のうちのグルコシダーゼ(Glucosidase)及びビスコザイムL(Viscozyme L)のオリゴマー合成能力の確認
図11でまとめたように、アントシアニンモノマーと蒸留水とを1:10の質量比で混合してアントシアニンモノマー溶液を用意した。アントシアニンモノマー溶液と、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株補酵素から分離した酵素であるグルコシダーゼ(glucosidase)とビスコザイムL(viscozyme L)をそれぞれ1000:1と500:1の質量比で混合(
図11に100:1で示されているものは、溶液ではなく、アントシアニンモノマー自体と酵素との質量比である。グルコシダーゼがより良い酵素効率を持つから、類似する効率を示すために、ビスコザイムL(Viscozyme L)を2倍多い量で混合する。)して、25℃の温度で5日間発酵させた。
ビスコザイムL(Viscozyme L)は、グルコシダーゼ(Glucosidase)を含む酵素であり、市販の酵素である。
発酵させた後、これをろ紙(filter paper)で濾過してアントシアニン以外の物質を濾過することにより、
アントシアニジンオリゴマーを分離し、凍結乾燥させて
アントシアニジンオリゴマーを得た。
アントシアニジンオリゴマーを精製するためには、チューブラー(tubular)、キャピラリー(capillary)、コイル状スパイラル(coiled spiral)、平面膜(plane membrane)を用いて濾過することが好ましい。
【0019】
アントシアニンモノマーを対照群とし、ESI massをかけてピークを観察した。
図12がその結果である。これに比べて、黒カビ(Aspergillus niger、アスペルギルス・ニガー)菌株補酵素から分離した酵素であるグルコシダーゼ(glucosidase)とビスコザイムL(viscozyme L)を用いて得られた
アントシアニジンオリゴマーを対象にESI massをかけてピークを観察した結果、
図13及び
図14に示すように、
図12に比べて分子量600、900および1200付近でピークが高くなることが観察された。これは、アントシアニンモノマーが発酵の結果としてダイマー(dimer)、トリマー(trimer)、テトラマー(tetramer)などの
アントシアニジンオリゴマー(oligomer)に変換されたことを意味するもので、合成されたことが確認された。さらに、酵素としてグルコシダーゼ(glucosidase)を用いた
図13の場合は、オリゴマーの割合がビスコザイムL(viscozyme L)を用いた
図14の場合よりも高いことを確認した。
【0020】
各酵素で得た
アントシアニジンオリゴマーの効能を比較するために、
図15に示すように、グルコシダーゼ(Glucosidase)で得られたオリゴマーとビスコザイムL(Viscozyme L)で得られたオリゴマーとの濃度を異ならせて、ヒドロキシルラジカルを消去する効能を実験した。実験結果、グルコシダーゼ(Glucosidase)で得られたオリゴマーの抑制濃度(inhibitory concentration、IC50)である0.217mg/mLが、ビスコザイムL(Viscoayme L)で得られたオリゴマーの抑制濃度である0.278mg/mLに比べて遥かに低い値なので、低濃度でもラジカル消去効能があることが確認された。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲及びそれらの等価物によって定められると理解されるべきである。