(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数の複極式エレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記外枠の外方に、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室に連通するヘッダーとを備える複極式電解槽であり、
前記陽極の電気容量が4825C/m2〜965000C/m2の範囲であり、前記陰極の電気容量が4825C/m2〜965000C/m2の範囲であり、
前記複極式エレメントの通電面の面積をS1、前記ヘッダーの流路の断面積をS2、前記ヘッダーの流路の長さをL2としたときに、(S2/S1)/L2が1.31×10−6m−1〜2.3×10−4m−1の範囲である、
ことを特徴とする、複極式電解槽。
陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数の複極式エレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記外枠の外方に、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室に連通するヘッダーとを備える複極式電解槽であり、
前記陽極の電気容量が4825C/m2〜965000C/m2の範囲であり、前記陰極の電気容量が4825C/m2〜965000C/m2の範囲であり、
前記複極式エレメントの通電面の面積をS1、前記ヘッダーの流路の断面積をS2、前記ヘッダーの流路の長さをL2としたときに、(S2/S1)/L2が1.31×10−6m−1〜2.3×10−4m−1の範囲である、
ことを特徴とする、アルカリ水電解用複極式電解槽。
前記陰極が、Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及びPt−Ir系、Ir−Pt−Pd系、Pt−Ni系からなる群から選択される少なくとも一種のPt族化合物を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の複極式電解槽。
前記陰極及び前記陽極の構成が、前記導電性基材の表面に触媒層を有するものであり、前記導電性基材が金属ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種のニッケル化合物を含む、請求項13に記載の複極式電解槽。
前記陰極、前記陽極、隔膜、陽極室と陰極室を区画する隔壁を有する複極式エレメントを備え、前記陰極と前記陽極の間に前記隔膜が位置し、前記隔膜は前記陰極及び前記陽極と接触している、請求項18に記載の複極式水電解槽。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
図1に、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例の全体についての側面図を示す。
図2に、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例の電解室、ヘッダー、導管についての斜視図を示す。
図3に、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例における電解液の流れについての斜視図を示す。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50は、
図1に示すとおり、陽極2aと、陰極2cと、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1と、隔壁1を縁取る外枠3とを備える複数の複極式エレメント60が隔膜4を挟んで重ね合わせられている複極式電解槽50である。
【0022】
(複極式電解槽)
複極式は、多数のセルを電源に接続する方法の1つであり、片面が陽極2a、片面が陰極2cとなる複数の複極式エレメント60を同じ向きに並べて直列に接続し、両端のみを電源に接続する方法である。
複極式電解槽50は、電源の電流を小さくできるという特徴を持ち、電解により化合物や所定の物質等を短時間で大量に製造することができる。電源設備は出力が同じであれば、定電流、高電圧の方が安価でコンパクトになるため、工業的には単極式よりも複極式の方が好ましい。
【0023】
((複極式エレメント))
一例のアルカリ水電解用複極式電解槽50に用いられる複極式エレメント60は、
図1に示すように、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1を備え、隔壁1を縁取る外枠3を備えている。より具体的には、隔壁1は導電性を有し、外枠3は隔壁1の外縁に沿って隔壁1を取り囲むように設けられている。
【0024】
なお、本実施形態では、複極式エレメント60は、通常、隔壁1に沿う所与の方向D1が、鉛直方向となるように、使用してよく、具体的には、
図2、
図3に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、隔壁1に沿う所与の方向D1が、向かい合う2組の辺のうちの1組の辺の方向と同じ方向となるように、使用してよい(
図1〜
図5参照)。そして、本明細書では、上記鉛直方向を電解液通過方向とも称する。
【0025】
本実施形態では、
図1に示すとおり、複極式電解槽50は複極式エレメント60を必要数積層することで構成されている。
図1に示す一例では、複極式電解槽50は、一端からファストヘッド51g、絶縁板51i、陽極ターミナルエレメント51aが順番に並べられ、更に、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7、複極式エレメント60が、この順番で並べて配置される。このとき、複極式エレメント60は陽極ターミナルエレメント51a側に陰極2cを向けるよう配置する。陽極側ガスケット部分7から複極式エレメント60までは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。陽極側ガスケット部分7から複極式エレメント60までを必要数だけ繰り返し配置した後、再度、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7を並べて配置し、最後に陰極ターミナルエレメント51c、絶縁板51i、ルーズヘッド51gをこの順番で配置される。複極式電解槽50は、全体をタイロッド方式51r(
図1参照)や油圧シリンダー方式等の締め付け機構により締め付けることによりー体化され、複極式電解槽50となる。
複極式電解槽50を構成する配置は、陽極2a側からでも陰極2c側からでも任意に選択でき、上述の順序に限定されるものではない。
【0026】
図1に示すように、複極式電解槽50では、複極式エレメント60が、陽極ターミナルエレメント51aと陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置されている。隔膜4は、陽極ターミナルエレメント51aと複極式エレメント60との間、隣接して並ぶ複極式エレメント60同士の間、及び複極式エレメント60と陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置されている。
【0027】
また、本実施形態における複極式電解槽50では、
図2、
図3に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。
【0028】
本実施形態では、特に、複極式電解槽50における、隣接する2つの複極式エレメント60間の互いの隔壁1間における部分、及び、隣接する複極式エレメント60とターミナルエレメントとの間の互いの隔壁1間における部分を電解セル65と称する。電解セル65は、一方のエレメントの隔壁1、陽極室5a、陽極2a、及び、隔膜4、及び、他方のエレメントの陰極2c、陰極室5c、隔壁1を含む。
【0029】
詳細には、電極室5は、外枠3との境界において、電極室5に電解液を導入する電解液入口5iと、電極室5から電解液を導出する電解液出口5oとを有する。より具体的には、陽極室5aには、陽極室5aに電解液を導入する陽極電解液入口5aiと、陽極室5aから導出する電解液を導出する陽極電解液出口5aoとが設けられる。同様に、陰極室5cには、陰極室5cに電解液を導入する陰極電解液入口5ciと、陰極室5cから導出する電解液を導出する陰極電解液出口5coとが設けられる。
【0030】
そして、本実施形態における複極式電解槽50は、外枠3の外方に、電極室5に連通するヘッダー10を備える(
図2、
図3参照)。
【0031】
図2、
図3に示す一例では、複極式電解槽50に、ガスや電解液を配液又は集液する管であるヘッダー10が取り付けられる。詳細には、ヘッダー10は、電極室5に電解液を入れるための入口ヘッダーと電極室5からガスや電解液を出すための出口ヘッダーとからなる。
一例では、隔壁1の端縁にある外枠3の下方に、陽極室5aに電解液を入れる陽極入口ヘッダー10Oaiと、陰極室5cに電解液を入れる陰極入口ヘッダー10Ociとを備えており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3の側方に、陽極室5aから電極液を出す陽極出口ヘッダー10Oaoと、陰極室5cから電解液を出す陰極出口ヘッダー10Ocoとを備えている。
また、一例では、陽極室5a及び陰極室5cにおいて、入口ヘッダーと出口ヘッダーとが、電極室5の中央部を挟んで向かい合うように設けられている。
【0032】
特に、この一例の複極式電解槽50は、複極式電解槽50とヘッダー10とが独立している形式である外部ヘッダー10O型を採用している。
図4に、本実施形態の外部ヘッダー型のアルカリ水電解用複極式電解槽の例を平面図で示す。
【0033】
なお、
図1〜
図3に示す複極式電解槽に取り付けられるヘッダー10の配設態様として、代表的には、内部ヘッダー10I型と外部ヘッダー10O型とがあるが、本発明では、いずれの型を採用してもよく、特に限定されない。
【0034】
さらに、
図2、
図3に示す一例では、ヘッダー10に、ヘッダー10に配液又は集液されたガスや電解液を集める管である導管20が取り付けられる。詳細には、導管20は、入口ヘッダーに連通する配液管と出口ヘッダーに連通する集液管とからなる。
一例では、外枠3のうちの下方に、陽極入口ヘッダー10Oaiに連通する陽極用配液管20Oaiと、陰極入口ヘッダー10Ociに連通する陰極用配液管20Ociとを備えており、また、同様に、外枠3のうちの側方に、陽極出口ヘッダー10Oaoに連通する陽極用集液管20Oaoと、陰極出口ヘッダー10Ocoに連通する陰極用集液管20Ocoとを備えている。
【0035】
本実施形態では、陽極室5a及び陰極室5cにおいて、入口ヘッダーと出口ヘッダーとは、水電解効率の観点から、離れた位置に設けられることが好ましく、電極室5の中央部を挟んで向かい合うように設けられることが好ましく、
図2、
図3に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、長方形の中心に関して対称となるように設けられることが好ましい。
【0036】
通常、
図2、
図3に示すように、陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci、陽極出口ヘッダー10Oao、陰極出口ヘッダー10Ocoは、各電極室5に1つずつ設けられるが、本実施形態では、これに限定されず、各電極室5にそれぞれ複数設けられてもよい。
また、通常、陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci、陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Ocoは、各電極室5に1つずつ設けられるが、本実施形態では、これに限定されず、複数の電極室5で兼用されてもよい。
【0037】
なお、図示した例では、平面視で長方形形状の隔壁1と平面視で長方形形状の隔膜4とが平行に配置され、また、隔壁1の端縁に設けられる直方体形状の外枠の隔壁1側の内面が隔壁1に垂直となっているため、電極室5の形状が直方体となっている。しかしながら、本発明において、電極室5の形状は、図示の例の直方体に限定されることなく、隔壁1や隔膜4の平面視形状、外枠3の隔壁1側の内面と隔壁1とのなす角度等により、適宜変形されてよく、本発明の効果が得られる限り、いかなる形状であってもよい。
【0038】
本実施形態では、ヘッダー10の延在方向は、特に限定されない。
【0039】
本実施形態では、導管20の延在方向は、特に限定されないが、
図2、
図3に示す一例のように、本発明の効果を得られやすくする観点から、配液管(陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci)及び集液管(陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Oco)は、ぞれぞれ、隔壁1に垂直な方向に延びることが好ましく、導管20のいずれもが、隔壁1に垂直な方向に延びることがさらに好ましい。
【0040】
ときに、電解セル65は、電解停止時に電解液供給配管によって形成される漏洩電流回路を介して自己放電反応を生じる。
【0041】
前記自己放電が生じた場合でも、電解セル65のセル電圧を保持するための、電気容量を持った構造体を、電荷保持体と呼ぶ。電荷保持体を、陰極室5c内部又は陽極室5a内部で、陰極2c又は陽極2aと電気的に接続し、陰極2c又は陽極2aの電気化学的な電位を長時間安定化することができる。電解槽を、電力供給が停止した場合に非常用の蓄電池として使用することができる。
【0042】
本実施形態では、陰極2c又は陽極2aが、触媒層と触媒層を支持する基材とで構成され、この触媒層や基材が、電荷保持体の機能を備える。
【0043】
ここで、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、陽極2aの電気容量が4825C/m
2〜965000C/m
2(0.05Fd/m
2〜10Fd/m
2)の範囲であり、陰極2cの電気容量が4825C/m
2〜965000C/m
2(0.05Fd/m
2〜10Fd/m
2)の範囲である。
【0044】
再生可能エネルギー等の変動電源での運転時に、電極室5の電荷保持体の機能により、電解槽に保有する電気量を増大化・バランス化させ、更に、電解液供給配管の構造の改善により、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減することで、電力供給停止時に、電解槽を非常用の蓄電池として使用することができ、非常時においても電気制御システムの安定化が可能となる。
【0045】
本実施形態では、本発明の効果を高める観点から、陽極2aの電気容量は、9650C/m
2〜772000C/m
2の範囲であることがさらに好ましく、48250C/m
2〜482500C/m
2の範囲であることが最も好ましい。陰極2cの電気容量は、9650C/m
2〜772000C/m
2の範囲であることがさらに好ましく、48250C/m
2〜482500C/m
2の範囲であることが最も好ましい。
【0046】
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、陽極2aの電気容量及び陰極2cの電気容量のうち低い方が9650C/m
2〜955350C/m
2の範囲あることが好ましく、48250C/m
2〜772000C/m
2の範囲であることがさらに好ましく、96500C/m
2〜482500C/m
2の範囲であることが特に好ましい。
電気容量のうち低い方が小さすぎると、電源として機能しにくくなり、また、電気容量のうち低い方が大きすぎると、実質的な製作が困難になる。
【0047】
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、陽極の電気容量が陰極の電気容量よりも大きいことが好ましく、その場合、陽極の電気容量に対する前記陰極の電気容量の割合は、0.1倍を超えて、0.99倍以下の範囲であることが好ましく、0.1倍を超えて、0.49倍以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0048】
なお、電極2(陽極2a、陰極2c)に関して、電極2(陽極2a、陰極2c)に加えて導電性弾性体2eや集電体2rを含めた電極複合体(陽極複合体、陰極複合体)を用いた場合は、前述の電気容量は、電極複合体(陽極複合体、陰極複合体)について定められてよい。
【0049】
上記本発明の効果は、ヘッダー設計に関して物理的な制約を受けにくく、電解停止時に、電解液出口5o側の電解液の排出ライン(出口ヘッダー)を遮断することが構造的に容易であるため、各電解セル65への電解液の供給ヘッダーが電解セル65外部に配置されている、外部ヘッダー10O型のアルカリ水電解槽において、得られやすい。
【0050】
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、複極式エレメント60の通電面の面積をS1、ヘッダー10の流路の断面積をS2、ヘッダー10の流路の長さをL2としたときに、(S2/S1)/L2が1.5×10
−6m
−1〜2.3×10
−4m
−1の範囲であることが好ましく、4.0×10
−6m
−1〜2.0×10
−4m
−1の範囲であることがさらに好ましく、8.0×10
−6m
−1〜1.0×10
−4m
−1の範囲であることが特に好ましい。
【0051】
上記複極式エレメント60の通電面の面積S1とは、複極式エレメント60の電極(陽極2a及び陰極2c)の隔壁に平行な面における面積をいう。なお、陽極2aと陰極2cとにおいて上記面積が異なる場合には、その平均をいうものとする。
上記ヘッダー10の流路の断面積S2とは、ヘッダー10のうち電解液が通過する内部空間の断面積をいう。なお、ヘッダー10の延在方向について断面積に変化がある場合には、その断面積の平均をいうものとする。また、陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci、陽極出口ヘッダー10Oao、陰極出口ヘッダー10Ocoにおいて上記断面積が異なる場合には、その平均をいうものとする。
上記ヘッダー10の流路の長さL2とは、ヘッダー10のうち電解液が通過する内部空間の延在長さをいう。特に、ヘッダー10に連通する導管20を備える場合には、ヘッダー10の電解液入口5iから配液管(導管20)との接続部分まで、又は電解液出口5oから集液管(導管)との接続部分まで、の部分についての長さをいう。また、陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci、陽極出口ヘッダー10Oao、陰極出口ヘッダー10Ocoにおいて上記長さが異なる場合には、その平均をいうものとする。
【0052】
(S2/S1)/L2を上記範囲とすれば、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減して、電気制御システムの安定化が可能となると共に、高効率での電力の貯蔵、具体的には、リーク電流の低減することで高効率での水素製造を実現することが可能となる。
【0053】
さらに、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、複極式エレメント60の通電面の面積S1が、0.1m
2〜10m
2であることが好ましく、0.15m
2〜8m
2であることがさらに好ましく、0.2m
2〜5m
2であることが特に好ましい。
通電面が小さすぎると、電解液供給ヘッダーも小さくなり、電解槽50の製作が難しくなる。また、通電面が大きすぎると、シール面圧が不均一になりやすく、電解液の漏れやガス漏洩の原因になる。
【0054】
さらに、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電解セル65の厚さdが、10mm〜100mmであることが好ましく、15mm〜50mmであることがさらに好ましく、20mm〜40mmであることが特に好ましい。
上記電解セル65の厚さdとは、隣接する2つの複極式エレメント60間の互いの隔壁1間における部分の厚さ、及び、隣接する複極式エレメント60とターミナルエレメント51a、51cとの間の互いの隔壁1間における部分の厚さであり、それぞれ、隣接する2つの複極式エレメント60の隔壁1同士の間の隔壁1に垂直な方向についての距離、及び、隣接する複極式エレメント60の隔壁1とターミナルエレメント51a、51cの隔壁1との間の隔壁1に垂直な方向についての距離をいう。上記厚さdが複極式電解槽50全体において一定でない場合には、その平均をいうものとしてよい。
電解セルの厚さdが小さすぎると、電解セル65のガス液チャンバー内のガス比率が増大しやすくなり、セル電圧が上昇しやすくなる。また、厚さdが大きすぎると、ヘッダー10の圧損の影響で均一分配が難しくなり、設置面積が大きくなりすぎる。
【0055】
さらに、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、ガス純度をより高純度化させる観点、及び循環流路中に存在する固形物による流路閉塞を抑制する観点から、S2が、7.00×10
−7m
2〜3.14×10
−4m
2であることが好ましく、1.0×10
−6m
2〜2.0×10
−4m
2であることがさらに好ましい。
【0056】
さらに、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、特に限定されるものではないが、前記S2の好適範囲の場合と同様の観点から、L2が、0.2m〜10mであることが好ましく、0.4m〜8mであることがさらに好ましい。
【0057】
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50は、50〜500の複極式エレメント60を有することが好ましく、70〜300の複極式エレメント60を有することがさらに好ましく、100〜200の複極式エレメント60を有することが特に好ましい。
下限未満の場合、セルに対する締め付け機構の割合が相対的に大きくなるため、製作コストがアップし、また、設備の設置面積が増加するため、現実的な設備ではなくなるおそれがある。上限超の場合には、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減して、電気制御システムの安定化を可能にする効果、及び、高効率での電力の貯蔵、具体的には、ポンプ動力の低減やリーク電流の低減を実現することを可能にする効果の並立が困難になる。
また、複極式エレメント60の数(対数)が増え過ぎると、電解槽50の製作が困難になるおそれがあり、製作精度が悪い複極式エレメント60を多数スタックした場合には、シール面圧が不均一になりやすく、電解液の漏れやガス漏洩が生じやすい。
【0058】
以下、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50の構成要素について詳細に説明する。
また、以下では、本発明の効果を高めるための好適形態についても詳述する。
【0059】
−隔壁−
本実施形態における隔壁1の形状は、所定の厚みを有する板状の形状としてよいが、特に限定されない。
隔壁1の平面視形状としては、特に限定されることなく、矩形(正方形、長方形等)、円形(円、楕円等)としてよく、ここで、矩形は角が丸みを帯びていてもよい。
一実施形態において、隔壁1と外枠3とを溶接その他の方法で接合することで一体化してもよく、例えば、隔壁1に、隔壁1の平面に対して垂直な方向に張り出したフランジ部(陽極2a側に張り出した陽極フランジ部、陰極2c側に張り出した陰極フランジ部)を設け、フランジ部を外枠3の一部としてもよい。
【0060】
なお、隔壁1は、通常、隔壁1に沿う所与の方向D1が、鉛直方向となるように、使用してよく、具体的には、
図2、
図3に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、隔壁1に沿う所与の方向D1が、向かい合う2組の辺のうちの1組の辺の方向と同じ方向となるように、使用してよい。そして、本明細書では、上記鉛直方向を電解液通過方向とも称する。
【0061】
隔壁1の材料としては、電力の均一な供給を実現する観点から、導電性を有する材料が好ましく、耐アルカリ性や耐熱性といった面から、ニッケル、ニッケル合金、軟鋼、ニッケル合金上にニッケルメッキを施したものが好ましい。
【0062】
−電極−
本実施形態のアルカリ水電解による水素製造において、エネルギー消費量の削減、具体的には電解電圧の低減は、大きな課題である。この電解電圧は電極2に大きく依存するため、両電極2の性能は重要である。
【0063】
アルカリ水電解の電解電圧は、理論的に求められる水の電気分解に必要な電圧の他に、陽極反応(酸素発生)の過電圧、陰極反応(水素発生)の過電圧、陽極2aと陰極2cとの電極2間距離による電圧とに分けられる。ここで、過電圧とは、ある電流を流す際に、理論分解電位を越えて過剰に印加する必要のある電圧のことを言い、その値は電流値に依存する。同じ電流を流すとき、過電圧が低い電極2を使用することで消費電力を少なくすることができる。
【0064】
低い過電圧を実現するために、電極2に求められる要件としては、導電性が高いこと、酸素発生能(或いは水素発生能)が高いこと、電極2表面で電解液の濡れ性が高いこと等が挙げられる。
【0065】
アルカリ水電解の電極2として、過電圧が低いこと以外に、再生可能エネルギーのような不安定な電流を用いても、電極2の基材及び触媒層の腐食、触媒層の脱落、電解液への溶解、隔膜4への含有物の付着等が起きにくいことが挙げられる。
【0066】
陽極及び陰極の導電性基材の構造は、担体として比表面積を確保すること、及び、脱泡性を両立する観点で、メッシュ構造であることが好ましい。前記導電性基材の材質は、ニッケル鉄、バナジウム、モリブデン、銅、銀、マンガン、白金族、黒鉛及びクロム等からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。二種以上の金属からなる合金又は、二種以上の導電性物質の混合物を導電性基材に用いてもよい。金属ニッケルを導電性基材に用いるのが好ましい。
【0067】
−−陽極−−
陽極2aは、導電性基材と、導電性基材を被覆する触媒層と、を備え、触媒層は多孔質体であることが好ましい。なお、触媒層は導電性基材の表面全体を被覆していることが好ましい。
【0068】
陽極の触媒層は元素として、アルカリに対する耐久性と、酸素発生に対する活性が高い点で、ニッケルを含むことが好ましい。触媒層は、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金から選ばれる少なくとも一種のニッケル化合物を含むことが好ましい。
【0069】
陽極一枚当たりの幾何セル面積1m
2当たりの実電極表面積(実比表面積)は、90〜10000m
2の範囲にすることが好ましい。実電極表面が、90m
2/m
2未満の範囲では、触媒層全体の表面積が小さいため、酸素過電圧が高くなることが予想される。また、実電極表面が、10000m
2/m
2を超える範囲では、触媒層が微細な多孔質を含むため非常にもろくなり、耐久性が悪く、酸素発生とともに酸素過電圧が高くなることが予想される。
なお、幾何セル面積とは、電解セル65を隔壁1に垂直な方向に投影したときの面積をいう。
上記面積1m
2当たりの実電極表面としては、500〜8000m
2/m
2の範囲にすることがさらに好ましく、1000〜5000m
2/m
2の範囲にすることが特に好ましい。
【0070】
この陽極の触媒層中の細孔のうち、孔径が2〜5nmの範囲内である第一細孔の比表面積は0.6〜2.0m
2/gであり、第一細孔の細孔容積は3×10
−4〜9×10
−4ml/gであることが好ましい。触媒層中の細孔のうち、孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔の比表面積は2.0〜5.0m
2/gであり、第二細孔の細孔容積は、0.04〜0.2ml/gであることが好ましい。
触媒層の厚みは50〜800μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。
【0071】
孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔は、比表面積は小さいが、細孔容量が大きいため、第一細孔は、第二細孔の内壁に存在することになる。第一細孔は、触媒層の表面積を非常に大きくする。第一細孔の表面は、水酸化物イオンの酸化反応(酸素の生成反応)の反応場(反応界面)として機能する。第一細孔の内部では、酸素発生の際に水酸化ニッケルが生成され、そのため細孔を更に小さくすると予想される。しかし、第一細孔は孔径が大きな第二細孔の内部に存在するため、第一細孔内で生成された酸素は第二細孔を通じて触媒層の外へ抜けやすく、電解を阻害しにくい。そのため、本実施形態では電解時に酸素発生過電圧が上昇しにくいと推定される。
【0072】
第一細孔の比表面積は0.6〜1.5m
2/gであることが好ましく、0.6〜1.0m
2/gであることがより好ましい。第一細孔の比表面積は0.62〜0.98m
2/gであってもよい。一般的には第一細孔の比表面積の増加に伴い、酸素発生電位が低くなると考えられる。ただし、第一細孔が小さすぎると酸素発生時に生成する水酸化ニッケルにより第一細孔が完全に埋まり、第一細孔の実質的な表面積が少なくなる傾向がある。第一細孔の比表面積が減少すると、触媒層全体の表面積も減少する傾向がある。触媒層全体の表面積の減少に伴い、酸素発生電位が上昇する傾向がある。
【0073】
第一細孔の容積は3.3×10
−4〜8.5×10
−4ml/gことが好ましい。第一細孔の容積は3.6×10
−4ml/g〜7.9×10
−4ml/gであってもよい。第一細孔の細孔容積の増加に伴い、比表面積が減少する傾向がある。第一細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層全体の比表面積が増加する傾向がある。
【0074】
第二細孔の比表面積は2.3〜4.5m
2/gであることが好ましい。第二細孔の比表面積は2.5〜4.2m
2/gであってもよい。第二細孔の比表面積の増加に伴い触媒層全体の細孔容積が減少する傾向がある。また、第二細孔の比表面積の低下に伴い触媒層全体の細孔容積が増加する傾向がある。
【0075】
第二細孔の容積は0.04〜0.15ml/gであることが好ましく、0.04〜0.1ml/gであることがより好ましい。第二細孔の容積は0.04〜0.09ml/gであってもよい。第二細孔の細孔容積の増加に伴い、触媒層内で発生した酸素ガスが脱泡し易い傾向がある。第二細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層で発生した酸素ガスが脱泡し難くなる傾向があり、酸素発生過電圧が高くなる傾向がある。一方で、第二細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層の機械的強度は高まる傾向がある。
【0076】
厚みが50μm未満では、触媒層が薄いため、触媒層全体の表面積が小さくなり、酸素過電圧が高くなることが予想される。また、厚みが800μmを越える範囲では触媒層が厚くなりすぎて、剥離等が起こりやすくなる場合があり、さらに陽極の製作コストが高くなりすぎる場合がある。
【0077】
触媒層がニッケルの金属結晶を含み、触媒層中のニッケルの金属結晶の(1,1,1)面によって回折されるX線のピーク強度がI
Niであり、触媒層中のNiOの(0,1,2)面によって回折されるX線のピーク強度がI
NiOであるとき、[I
Ni/(I
Ni+I
NiO)]×100の値が75〜100%であることが好ましい。I[I
Ni/(I
Ni+I
NiO)]×100は90〜100%であることがより好ましく、95〜100%であることが特に好ましい。
【0078】
[I
Ni/(I
Ni+I
NiO)]×100が大きいほど、触媒層の電気抵抗が低く、酸素発生を行う際の電圧損失が小さくなる。触媒層中の酸化ニッケルの部分では、導電性が低下するが、酸素発生反応も起き難い。また、酸化ニッケルは比較的、化学的安定性に優れるため、触媒層が酸化ニッケルを含有することは、触媒層の強度を維持するために有効な場合がある。なお、I
Ni及びI
NiOは、触媒層についてのXRD((X‐Ray Diffraction)の測定結果から求められる。
【0079】
なお、触媒層には、ニッケルとその他の金属とから構成される合金を含んでもよい。触媒層は、金属ニッケルからなることが特に好ましい。チタン、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含んでもよい。また、触媒層の表面が、ロジウム、パラジウム、イリジウム及びルテニウム等からなる群より選ばれる少なくとも一種の触媒で修飾されてもよい。
【0080】
−−アルカリ水電解用陽極の製造方法−−
本実施形態に係るアルカリ水電解用陽極の製造方法は、特に限定されない。好ましい製造方法として、基材としてエクスパンドニッケルを用いて、分散メッキにてラネーニッケルを被覆し、32wt%のアルカリで展開する方法が挙げられる。
【0081】
−−陰極−−
陰極2cとしては、特に限定されない。Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及びPt−Ir系、Ir−Pt−Pd系、Pt−Ni系からなる群から選択される少なくとも一種のPt族化合物を含むことが好ましい。また、熱分解型活性陰極であることが好ましい。前記陰極の基材の構造は、担体として比表面積を確保すること、及び、脱泡性を両立する点で、メッシュ構造であることが好ましい。
【0082】
陰極の触媒層は元素として、アルカリに対する耐久性と、水素発生に対する活性が高い点で、ニッケルを含むことが好ましい。触媒層は、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金から選ばれる少なくとも一種のニッケル化合物を含むことが好ましい。
【0083】
特に、陰極の基材が、0.05〜0.5mmの範囲の線形を有し、目開きが30メッシュ〜80メッシュの範囲を有することが好ましい。この範囲にすることで、陰極として、メッシュの機械的強度を保ちつつ、担体として必要な比表面積、脱泡性を発現することができる。陽極の導電性基材のメッシュの開口率を20%〜60%の範囲にすることで、メッシュの機械的強度を保ちつつ、担体として必要な比表面積、脱泡性を発現することができる。
なお、電極の開口率は、下記の方法で測定することができる。
エキスパンドメタルを基材とした電極を5mm×5mm程度の大きさに切り出し、卓上顕微鏡Miniscope TM3000(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、短目方向中心間距離SW、長目方向中心間距離LW、ボンド長さB、開口部の単目方向長さSWO、開口部の長目方向長さLWOを測量した。これらの値を用いて、下記式に従って、開口率を算出した。
開口率=SWO×(LWO+B)×100/(SW×LW)
また、平織メッシュを基材とした電極は、同様にTM3000を用いて目開きA、線径dを測量し、下記式に従って開口率(%)を算出した。
開口率=(A/(A+d))
2×100
電極の開口率の算出方法は、エキスパンドメタルを基材とした電極と、平織メッシュを基材とした電極とで異なる。なお、エキスパンドメタル、平織メッシュ以外を基材とした電極の開口率は、電極を所定の大きさ(例えば5mm×5mm程度)に切り出し、水平に静置した該電極の中央部の鉛直方向上側から光を投射し、鉛直方向下側に電極を投影させ、光が透過した部分の総面積及び電極の投影面積(影と透過光との面積の合計)を測定して、以下の式に従って算出することができる。
開口率=(光が透過した部分の総面積)/(電極の投影面積)×100
【0084】
−−アルカリ水電解用陰極の製造方法−−
本実施形態に係るアルカリ水電解用陰極の製造方法は、上述の陽極の製造方法と同様としてよい。
【0085】
−外枠−
本実施形態における外枠3の形状は、隔壁1を縁取ることができる限り特に限定されない。
【0086】
−隔膜−
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50において用いられる隔膜4としては、イオンを導通しつつ、発生する水素ガスと酸素ガスを隔離するために、イオン透過性の隔膜4が使用される。このイオン透過性の隔膜4は、イオン交換能を有するイオン交換膜と、電解液を浸透することができる多孔膜が使用できる。このイオン透過性の隔膜4は、ガス透過性が低く、イオン伝導率が高く、電子電導度が小さく、強度が強いものが好ましい。
【0087】
−電極室−
本実施形態における複極式電解槽50では、
図2に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。
【0088】
−ガスケット−
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、隔壁1を縁取る外枠3同士の間に隔膜4を有するガスケット7が挟持されることが好ましい。
ガスケット7は、複極式エレメント60と隔膜4の間、複極式エレメント60間を電解液と発生ガスに対してシールするために使用され、電解液や発生ガスの電解槽外への漏れや両極室間におけるガス混合を防ぐことができる。
【0089】
−電荷保持体−
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、
図2に示すように、陰極2c又は陽極2aと隔壁1との間に、導電性弾性体2e及び集電体2rが、導電性弾性体2eが陰極2c又は陽極2aと集電体2rとに挟まれるように、設けられ、電解保持体をなしている。
電荷保持体は、アルカリに対する耐久性が高く、且つ、陽極に対して酸化還元電位が碑であり、電解停止時に陽極を還元することが出来るという点から、ニッケルを母体に含むことが好ましい。母体に酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0090】
陰極室が、さらに導電性弾性体2eと集電体2gを内包しており、導電性弾性体2eが、陰極室と集電体との間で電気的に接続した状態で圧縮収容されており、陰極集電体の一部が前記電荷保持体で構成されてもよい。これにより、電荷保持体を付加的に取り付けることによる、セルの重量の増加を抑えることができる。
【0091】
電荷保持体の表面層は、さらに元素としてニッケルを含むことが好ましい。この表面層は、酸化ニッケル、金属ニッケル(ニッケルの金属結晶)、水酸化ニッケル及びからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。表面層は、ニッケルとその他の金属とから構成される合金を含んでもよい。表面層が金属ニッケルからなることが特に好ましい。なお、表面層は、チタン、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含んでもよい。
【0092】
電荷保持体の製造方法としては、特に限定されないが、陽極と同様の製造方法が挙げられる。
【0093】
−ヘッダー−
アルカリ水電解用複極式電解槽50は、電解セル65毎に、陰極室5c、陽極室5aを有する。電解槽50で、電気分解反応を連続的に行うためには、各電解セル65の陰極室5cと陽極室5aとに電気分解によって消費される原料を十分に含んだ電解液を供給し続ける必要がある。
【0094】
電解セル65は、複数の電解セル65に共通するヘッダー10と呼ばれる電解液の給排配管と繋がっている。一般に、陽極用配液管は陽極入口ヘッダー10ai、陰極用配液管は陰極入口ヘッダー10ci、陽極用集液管は陽極出口ヘッダー10ao、陰極用集液管は陰極出口ヘッダー10coと呼ばれる。電解セル65はホース等を通じて各電極用配液管及び各電極用集液管と繋がっている。
【0095】
ヘッダー10の材質は特に限定されないが、使用する電解液の腐食性や、圧力や温度等の運転条件に十分耐えうるものを採用する必要がある。ヘッダー10の材質に、鉄、ニッケル、コバルト、PTFE、ETFE,PFA、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等を採用しても良い。
【0096】
本実施形態において、電極室5の範囲は、隔壁1の外端に設けられる外枠3の詳細構造により、変動するところ、外枠3の詳細構造は、外枠3に取り付けられるヘッダー10(電解液を配液又は集液する管)の配設態様により異なることがある。複極式電解槽50のヘッダー10の配設態様としては、内部ヘッダー10I型及び外部ヘッダー10O型が代表的である。
【0097】
−内部ヘッダー−
内部ヘッダー10I型とは、複極式電解槽50とヘッダー10(電解液を配液又は集液する管)とが一体化されている形式をいう。
【0098】
内部ヘッダー10I型複極式電解槽50では、より具体的には、陽極入口ヘッダー10Iai及び陰極入口ヘッダー10Iciが、隔壁1内及び/又は外枠3内の下部に設けられ、且つ、隔壁1に垂直な方向に延在するように設けられ、また、陽極出口ヘッダー10Iao及び陰極出口ヘッダー10Icoが、隔壁1内及び/又は外枠3内の上部に設けられ、且つ、隔壁1に垂直な方向に延在するように設けられる。
【0099】
内部ヘッダー10I型複極式電解槽50が内在的に有する、陽極入口ヘッダー10Iaiと、陰極入口ヘッダー10Iciと、陽極出口ヘッダー10Iaoと、陰極出口ヘッダー10Icoを総称して、内部ヘッダー10Iと呼ぶ。
【0100】
図4及び
図5に示す内部ヘッダー10I型の例では、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの下方に位置する部分の一部に、陽極入口ヘッダー10Iaiと陰極入口ヘッダー10Iciとを備えており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの上方に位置する部分の一部に、陽極出口ヘッダー10Iaoと陰極出口ヘッダー10Icoとを備えている。
【0101】
−外部ヘッダー−
外部ヘッダー10O型とは、複極式電解槽50とヘッダー10(電解液を配液又は集液する管)とが独立している形式をいう。
【0102】
外部ヘッダー10O型複極式電解槽50は、陽極入口ヘッダー10Oaiと、陰極入口ヘッダー10Ociとが、電解セル65の通電面に対し、垂直方向に、電解槽50と並走する形で、独立して設けられる。この陽極入口ヘッダー10Oai及び陰極入口ヘッダー10Ociと、各電解セル65が、ホースで接続される。
【0103】
外部ヘッダー10O型複極式電解槽50に外在的に接続される、陽極入口ヘッダー10Oaiと、陰極入口ヘッダー10Ociと、陽極出口ヘッダー10Oaoと、陰極出口ヘッダー10Ocoを総称して、外部ヘッダー10Oと呼ぶ。
外部ヘッダー10O型の例では、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの下方に位置する部分に設けられたヘッダー10用貫通孔に、管腔状部材が設置され、管腔状部材が、陽極入口ヘッダー10Oai及び陰極入口ヘッダー10Ociに接続されており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの上方に位置する部分に設けられたヘッダー10用貫通孔に、管腔状部材(例えば、ホースやチューブ等)が設置され、かかる管腔状部材が、陽極出口ヘッダー10Oao及び陰極出口ヘッダー10Ocoに接続されている。
【0104】
(アルカリ水電解用電解装置)
図5に、本実施形態のアルカリ水電解用電解装置の概要を示す。
本実施形態の複極式水電解槽を、他の要素も含む電解装置にして、水素製造装置として使用することで、電解効率が高い水素製造装置が提供できる。
本実施形態のアルカリ水電解用電解装置は、少なくとも、本実施形態の複極式水電解槽50、気液分離タンク72(水素分離タンク72h、酸素分離タンク72o)、電解液循環ポンプ71、水投入ポンプ73、電気分解用の電力供給用の整流器74を具備する。
本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70は、上記以外にも、酸素濃度計75、水素濃度計76、流量計77、圧力計78、熱交換器79、圧力制御弁80を備えてよい。
【0105】
本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70によれば、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態によれば、再生可能エネルギー等の変動電源での運転時に、高効率での水素製造を実現することが可能となり、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減して、電気制御システムの安定化が可能となる。本実施形態によれば、さらには、高効率での電力の貯蔵、具体的には、ポンプ動力の低減やリーク電流の低減を実現することが可能となる。
【0106】
(アルカリ水電解方法)
本実施形態のアルカリ水電解方法は、本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70を用いて、実施することができる。
【0107】
以上、図面を参照して、本発明の実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽、アルカリ水電解用電解装置、アルカリ水電解方法について例示説明したが、本発明のアルカリ水電解用複極式電解槽、アルカリ水電解用電解装置、アルカリ水電解方法は、上記の例に限定されることはなく、上記実施形態には、適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0109】
アルカリ水電解用複極式セル及びそれを用いたアルカリ水電解装置は、下記のとおり作製した。
【0110】
−隔壁、外枠−
複極式エレメントとして、陽極と陰極とを区画する隔壁と、隔壁を取り囲む外枠3と、を備えたものを用いた。隔壁及び複極式エレメントのフレーム等の電解液に接液する部材の材料は、全てニッケルとした。
【0111】
−陽極−
導電性基材として,エクスパンドニッケル開口率:50%)を用いて、ブラスト処理を行った。導電性基材を切削加工により、50cm角に調整し、陽極サンプルAとした。
陽極サンプルAを5N−HCl水溶液に10分間浸漬し、陽極サンプルBとした。
陽極サンプルBを用いて、分散メッキにてラネーニッケル合金を被覆し、32wt%、80℃のNaOH水溶液に、10時間浸漬し、ラネーニッケル合金中のAlを溶かした。上記工程により、陽極サンプルCを得た。
陽極サンプルCを6枚重ねにして積層し、それぞれ等しい電位になるように接続した陽極サンプルDを用意した。
陽極サンプルCを8枚重ねにして積層し、それぞれ等しい電位になるように接続した陽極サンプルEを用意した。
【0112】
導電性基材として,エクスパンドニッケルを用いて、ブラスト処理を行った。上述と同様に、導電性基材を切削加工により、50cm角に調整し、陽極サンプルAとした。上述と同様に、陽極サンプルAを5N−HCl水溶液に10分間浸漬し、陽極サンプルBとした。陽極サンプルBを用いて、陽極サンプルCの8倍の時間、分散メッキにてラネーニッケル合金を被覆し、32wt%、80℃のNaOH水溶液に、10時間浸漬し、ラネーニッケル合金中のAlを溶かした。上記工程により、陽極サンプルFを得た。
【0113】
((陽極サンプルの陽極(酸素極)電位の測定))
陽極サンプルA、B、C、D、E、Fを一枚用意し、フッ素樹脂製ビーカーを30wt%KOHの電解液で満たした、その中に浸漬させた。KOHの水溶液の温度は90℃に維持した。陽極サンプル、白金金網(対極)及び対極の周りを覆うフッ素樹脂の筒を備え、これらの電気伝導性が確保された装置で、陽極サンプルに対して、0.4A/cm
2の電流密度の酸化電流を流し、30分間、水素を発生させた。その後、0.05A/cm
2の還元電流を流し、陽極サンプルの電位の変化を測定した。この電位変化を、流した電流のトータル保有電荷量(電気容量)に対してプロットして、陽極サンプルの酸化曲線とした。
【0114】
測定は、対極として、メッシュ状の白金電極を用いて、温度90℃にて行った。フッ素樹脂の筒としては、その周りに多数の1mmφの穴を開けたものを用いた。陽極サンプルの陽極電位は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と陽極との間隔は、常に0.05mmに固定した。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。
【0115】
((酸素発生時に陽極(酸素極)室内に蓄えられる正の保有電荷量(電気容量)の測定))
陽極サンプルA、B、C、D、E、Fについて測定した、陽極サンプルの還元曲線において、陽極電位が0V(v.s.Ag/AgCl)になるまで流した電流のトータル電荷量を酸素発生時に陽極室に蓄えられる正の保有電荷量(電気容量)(C/m
2)とした。
【0116】
陽極サンプルAの正の保有電荷量(電気容量)は、3667C/m
2だった。陽極サンプルBの正の保有電荷量(電気容量)は、5018C/m
2だった。陽極サンプルCの正の保有電荷量(電気容量)は、148610C/m
2だった。陽極サンプルDの正の保有電荷量(電気容量)は、955350C/m
2だった。陽極サンプルEの正の保有電荷量(電気容量)は、1061500C/m
2だった。陽極サンプルFの正の保有電荷量(電気容量)は、445830C/m
2だった。
【0117】
陽極サンプルA、B、C、Fの陽極一枚当たりの実比表面積を測定した。陽極サンプルD、Eは、陽極サンプルの陽極一枚当たりの実比表面積は陽極サンプルCと同じだった。
陽極サンプルAの実比表面積は、91m
2/m
2だった。陽極サンプルBの正の実非常面積は、125m
2/m
2だった。陽極サンプルCの実比表面積は、3700m
2/m
2だった。陽極サンプルFの実比表面積は、11100m
2/m
2だった。
【0118】
((陽極の触媒層の第一細孔及び第二細孔の比表面積及び細孔容積))
陽極の触媒層の孔径が2〜5nmの範囲内である第一細孔の比表面積は、陽極サンプルAとBで10
−5m
2/g以下、陽極サンプルC、D、Eで1.5m
2/g、陽極サンプルFで4.5m
2/gであった。
第一細孔の細孔容積は、陽極サンプルAとBで10
−6ml/g以下、陽極サンプルC、D、Eで4×10
−4ml/g、陽極サンプルFで5×10
−5ml/gであった。
陽極の触媒層の孔径が0.01〜2.00nmの範囲内である第二細孔の比表面積は、陽極サンプルAとBで0.1m
2/g以下、陽極サンプルC、D、Eで2.5m
2/g、陽極サンプルFで10.5m
2/gであった。
第二細孔の細孔容積は、陽極サンプルAとBで0.1ml/g以下、陽極サンプルC、D、Eで0.1ml/g、陽極サンプルFで0.45ml/gであった。
【0119】
((陽極の触媒層の厚み・外観))
陽極の触媒層の厚みは、陽極サンプルAとBで10μm以下、陽極サンプルC、D、Eで200μm、陽極サンプルFで1000μmであった。
陽極の触媒層には、ニッケルの金属結晶が含まれていた。
【0120】
−陰極−
マイクロメッシュ(線径:0.1mm、50メッシュ)状の活性陰極(Pt系の熱分解活性陰極)を切断加工により、50cm角に調整して陰極を作製した。
【0121】
−電荷保持体(構造体)−
導電性基材として,エクスパンドニッケルを用いて、ブラスト処理を行った。導電性基材を切削加工により、50cm角に調整した。5N−HCl水溶液に10分間浸漬した。分散メッキにてラネーニッケル合金を被覆し、32wt%、80℃のNaOH水溶液に、10時間浸漬し、ラネーニッケル合金中のAlを溶かした。上記工程により、活物質として機能する構造体を得た。
【0122】
陰極を、縦50cm×縦50cmに調整し、陰極サンプルGとした。
構造体を、縦50cm×横5.73cmに調整し、陰極サンプルGと重ね合わせ、陰極サンプルAとした。
構造体を、縦50cm×横0.73cmに調整し、陰極サンプルGと重ね合わせ、陰極サンプルBとした。
構造体を、縦50cm×横11.98cmに調整し、陰極サンプルGと重ね合わせ、陰極サンプルCとした。
構造体を、縦50cm×横18.86cmに調整し、陰極サンプルGと重ね合わせ、陰極サンプルDとした。
構造体を、縦50cm×横50cmに調整し、これを3枚重ねにしたものを、陰極サンプルGと重ね合わせ、陰極サンプルEとした。
構造体を、縦50cm×横50cmに調整し、これを4枚重ねにしたものを、陰極サンプルGと重ね合わせ、陰極サンプルFとした。
【0123】
(陽極及び陰極の電気容量)
以下のとおり、電解セルの陽極及び陰極の電気容量(C/m
2)を測定した。
【0124】
((陰極サンプルの酸化曲線の測定))
陰極サンプルA、B、C,D、E、F、G、各々一枚ずつ用意し、フッ素樹脂製ビーカーを30wt%KOHの電解液で満たした、その中に浸漬させた。KOHの水溶液の温度は90℃に維持した。陰極サンプル、白金金網(対極)及び対極の周りを覆うフッ素樹脂の筒を備え、これらの電気伝導性が確保された装置で、陰極サンプルに対して、0.4A/cm
2の電流密度の還元電流を流し、30分間、水素を発生させた。その後、0.05A/cm
2の酸化電流を流し、陰極サンプルの電位の変化を測定した。この電位変化を、流した電流のトータル電荷量に対してプロットして、陰極サンプルの酸化曲線とした。
【0125】
測定は、対極として、メッシュ状の白金電極を用いて、温度90℃にて行った。フッ素樹脂の筒としては、その周りに多数の1mmφの穴を開けたものを用いた。陰極サンプルの陰極(水素極)電位は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と陰極サンプルとの間隔は、常に0.05mmに固定した。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。
【0126】
((水素発生時に陰極室内に蓄えられる負の保有電荷量(電気容量)の測定))
陰極サンプルA、B、C、D、E、F、Gについて、測定した陰極サンプルの酸化曲線において、陰極電位が−0.8V(v.s.Ag/AgCl)になるまで流した電流のトータル電荷量を水素発生時に陰極室に蓄えられる負の保有電荷量(電気容量)とした。
【0127】
陰極サンプルAの負の保有電荷量(電気容量)は、48250C/m
2だった。陰極サンプルBの負の保有電荷量(電気容量)は、9650C/m
2だった。陰極サンプルCの負の保有電荷量(電気容量)は、96500C/m
2だった。陰極サンプルDの負の保有電荷量(電気容量)は、149575C/m
2だった。陰極サンプルEの負の保有電荷量(電気容量)は、868500C/m
2だった。陰極サンプルFの負の保有電荷量(電気容量)は、1158000C/m
2だった。陰極サンプルGの負の保有電荷量(電気容量)は、3956.5C/m
2だった。
【0128】
本実施例において使用する電解槽は、陰極を有する陰極室、陽極を有する陽極室、陰極室と陽極室とを区画する隔膜、並びに陰極室及び陽極室に充填された電解液を具備する電解セルを備えるものとした。電解セルは、陰極を有する陰極室、陽極を有する陽極室、並びに陰極室と陽極室とを区画する隔膜を具備するものであった。陰極室と陽極室とは、隔膜を介して対向して配置された。陰極室及び陽極室は、それぞれ、電解液によって充填した。陰極、陽極、隔膜、及び電解液としては、それぞれ、水の電気分解において使用される公知の材料をした。
【0129】
−隔膜−
ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを隔膜サンプルとした。
【0130】
−複極式電解槽、複極式エレメント−
複極式エレメントを49個使用し、
図1に示すように、一方の端側で、ファストヘッド、絶縁板、陽極ターミナルユニットを配置し、さらに、陽極側ガスケット部分、隔膜、陰極側ガスケット部分、複極式エレメントをこの順に並べたものを49組配置し、さらに、陽極側ガスケット部分、隔膜、電陰極側ガスケット部分を配置し、複極式電解槽を組み立てた。
この実施例においては、陰極室及び陽極室が、それぞれ50室ある50対の直列接続構造を有していた。
【0131】
−ガスケット−
ガスケットとして、EPDMゴムを材質のものを用いた。
【0132】
−ヘッダー、導管−
外部ヘッダー型の複極式エレメントを採用した。
図4に示すように、この実施例の複極式電解槽50では、電解槽50の筐体の外方に、電解液を配液及び集液するための導管20(陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci、陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Oco)を設けた。更に、この電解槽50では、これらの導管20から電極室5に電解液を通過させるヘッダー10としてのホース(陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci、陽極出口ヘッダー10Oao、陰極出口ヘッダー10Oco)を、外部から取り付けた。
ここで、
図4に示すように、ヘッダー10(陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci、陽極出口ヘッダー10Oao、陰極出口ヘッダー10Oco)のいずれもが、複極式エレメント60の隔壁1の側方から外方に延びるように、配置した。また、
図4に示すように、導管20(陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci、陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Oco)のいずれもが、複極式エレメント60の隔壁1に垂直な方向に延びるように、配置した。
こうして、外部ヘッダー10O型の電解槽50を作製した。
陰極入口ヘッダー10Ociを介して陰極室5cへ、陰極室5cから陰極出口ヘッダー10Ocoを介して、電解液を流した。また、陽極入口ヘッダー10Oaiを介して陽極室5aへ、陽極室5aから陽極出口ヘッダー10Ocoを介して、電解液を流した。
図4に示すように、入口ホースは平面視で長方形の外枠3の下辺の一方端側に、出口ホースは平面視で長方形の外枠3の下辺の他方端側に繋がる側辺の上側に、それぞれ接続されている。ここでは、入口ホースと出口ホースとを、平面視で長方形の電極室5において電極室5の中央部を挟んで向かい合うように、設けた。電解液は、鉛直方向に対して傾斜しながら下方から上方へ流れ、電極面に沿って上昇した。
この実施例の複極式電解槽50では、陽極室5aや陰極室5cの入口ホースから、陽極室5aや陰極室5cに、電解液が流入し、陽極室5aや陰極室5cの出口ホースから、電解液と生成ガスとが、電解槽50外へ流出する構造とした。
陰極室5cでは、電解により水素ガスが発生し、陽極室5aでは、電解により酸素ガスが発生するため、前述した、陰極出口ヘッダー10Ocoでは、電解液と水素ガスとの混相流となり、陽極出口ヘッダー10Oaoでは、電解液と酸素ガスとの混相流となった。
【0133】
(実施例1)
実施例1の複極式電解槽は下記のとおりの手順で作製した。
【0134】
陰極サンプルAを複極式フレームの陰極面に取付け、陽極サンプルCを複極式エレメントのフレームの陽極面に取付けたものを、複極式エレメントとした。また、陰極サンプルAを陰極ターミナルエレメントのフレームに取付けたものを、陰極ターミナルエレメントとした。陽極サンプルCを陽極ターミナルエレメントのフレームに取付けたものを、陽極ターミナルエレメントとした。
【0135】
複極式エレメントに取り付けた電極(陽極及び陰極)の面積S1は、0.25m
2に調整した。
外枠の側方に設けられた、ヘッダー(陽極入口ヘッダー、陽極出口ヘッダー、陰極入口ヘッダー、陰極出口ヘッダー)の流路の断面積S2は、2.83×10
−5m
2に調整した。
ヘッダーの流路の長さL2は、0.5m
2に調整した。
【0136】
また、複極式エレメントの厚さdは、33mmに調整した。また、陰極ターミナルエレメント、陽極ターミナルエレメントの厚みを、0.0125mに調整した。
【0137】
上記複極式エレメントを49個用意した。また、上記陰極ターミナルエレメント、上記陽極ターミナルエレメントを、1個ずつ用意した。
【0138】
全ての複極式エレメントと、陰極ターミナルエレメントと、陽極ターミナル電解セルエレメントの、金属フレーム部分にガスケットを貼付けた。
【0139】
陽極ターミナルエレメントと、複極式エレメントの陰極側との間に、隔膜サンプルを1枚挟み込んだ。49個の複極式エレメントを、隣接する複極式エレメントのうちの一方の陽極側と他方の陰極側とが対向するように、直列に並べ、隣接する複極式エレメントの間に、48枚の隔膜サンプルを1枚ずつ挟み込んだ。更に、49個目の複極式エレメントの陽極側と、陰極ターミナルエレメントとの間に、隔膜サンプルを1枚挟み込んだ。これらを、ファストヘッド、絶縁板、ルーズヘッドを用いたうえで、プレス機で締付けたものを、実施例1の複極式電解槽とした。
【0140】
電解液として、30%KOH水溶液を用いた。
電解液循環ポンプにより、陽極室、酸素分離タンク(陽極用気液分離タンク)、陽極室の循環を、また、陰極室、水素分離タンク(陰極用気液分離タンク)、陰極室の循環を、行った。
電解液の温度は90℃に調整した。
【0141】
整流器から複極式電解槽に、各々の陰極及び陽極の面積S1に対して、6kA/m
2となるように電流を流した。実施例1においては、電極の面積S1は500mm×500mmであるため、整流器から複極式電解槽に、1.5kAを通電した。
【0142】
電解槽内の圧力は、圧力計で測定し、陰極側圧力が50kPa、酸素側圧力が49kPaとなるとように調整しながら、電気分解を行った。圧力調整は、圧力計の下流に設置した圧力制御弁により行った。
【0143】
そして、実施例1におけるアルカリ水電解について下記のとおり評価した。
【0144】
(電解試験)
電流密度6kA/m
2で連続で8時間通電し、水電解を行った。電解槽のセル電圧Vを測定し、電解セルの相加平均値(V)を計算により求めた。
【0145】
(電位保持時間)
電流密度6kA/m
2で連続で7時間通電後、整流器の電源を切り、セル電圧Vを測定し続けた。電解停止直後の時間を基準に、セル電圧Vの相加平均が、1V以上保持される時間を、電位保持時間T(時間)とした。
【0146】
(製作性)
電解槽の製作性を以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
○(優れる):電極を電解槽に固定するために必要な溶接点数が500箇所/m
2未満
△(良):電極を電解槽に固定するために必要な溶接点数が500箇所/m
2以上1500箇所/m
2未満
×(不良):電極を電解槽に固定するために必要な溶接点数が1500箇所/m
2以上
【0147】
(実施例2)
L2を1mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0148】
(実施例3)
陰極サンプルを陰極サンプルBとし、S1を2.7m
2に調整し、L2を2.4mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0149】
(実施例4)
S1を2.7m
2に調整し、L2を2.4mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0150】
(実施例5)
S1を2.7m
2に調整し、L2を6.5mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0151】
(
参考例6)
L2を0.2mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0152】
(実施例7)
陰極サンプルとして陰極サンプルEを用いた以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0153】
(実施例8)
S1を2.7m
2に調整し、L2を7.2mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0154】
(実施例9)
S2を7.85×10
−7m
2に調整し、L2を2.4mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0155】
(
参考例10)
陰極サンプルを陰極サンプルCとし、S2を7.85×10
−7m
2に調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0156】
(実施例11)
陽極サンプルを陽極サンプルBとし、S2を1.77×10
−6m
2に調整し、L2を1mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0157】
(実施例12)
陽極サンプルを陽極サンプルDとし、陰極サンプルを陰極サンプルDとし、L2を1mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0158】
(実施例13)
L2を1mに調整し、スタック数を100とした以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0159】
(実施例14)
陽極サンプルを陽極サンプルFとした以外は実施例1と同様に複極式電解槽及び電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0160】
(比較例1)
陰極サンプルとして陰極サンプルFを用いた以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0161】
(比較例2)
陰極サンプルを陰極サンプルGとした以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0162】
(比較例3)
陽極サンプルを陽極サンプルAとし、陰極構造体サンプルを陰極サンプルCとした以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0163】
(比較例4)
陰極サンプルを陰極サンプルGとし、S1を2.7m
2に調整し、L2を2.4mに調整した以外は実施例1と同様に複極式電解槽及びアルカリ水電解用電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0164】
(比較例5)
陽極サンプルを陽極サンプルEとした以外は実施例1と同様に複極式電解槽及び電解装置を作製した。詳細な条件及び結果は表1に示すとおりである。
【0165】
実施例1〜
5、参考例6、実施例7〜9、参考例10、実施例11〜14では、1.85V以下で電解可能な上に、電位保持時間が3時間以上であり、システム制御する上で十分安定な結果であった。また、陽極の実電極表面積が10000m
2/m
2以下である実施例1〜
5、参考例6、実施例7〜9、参考例10、実施例11〜13では、更にセル電圧を下げることができた。特に、実施例2、4、7の電解槽は優れている。
一方、比較例1、3、5のものは、電解効率が悪く、比較例2〜4のものは、電位保持時間が短い結果となり、風力や太陽光等の再生可能エネルギー等の変動電源での運転において、電力供給停止時に電解槽を非常用の蓄電池として使用することや、非常時においても電気制御システムを安定的に作動させることには、実用上課題があることが示された。
【0166】
【表1】