(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準信号の受信点における電波強度の指標値は、固定通信装置または移動通信装置のうちの前記基準信号を受信した装置から取得された前記基準信号におけるLQI値(Link Quality Indicator)である
請求項1から3の何れか1項に記載の位置検出システム。
前記基準信号の受信点における電波強度の指標値は、固定通信装置または移動通信装置のうちの前記基準信号を受信した装置から取得された前記基準信号におけるRSSI値(Received Signal Strength Indication)である
請求項1から3の何れか1項に記載の位置検出システム。
前記複数の基準パターンのそれぞれは、前記複数の固定通信装置と対応する部分領域に配置された基準通信機との間で無線通信された、複数の前記基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を表す
請求項1から5の何れか1項に記載の位置検出システム。
前記複数の基準パターンのそれぞれは、前記複数の固定通信装置と対応する部分領域に配置された基準通信機との間で無線通信された、複数の前記基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を所定単位で量子化した値を表し、
前記パターン選択部は、
前記複数の固定通信装置と前記移動通信装置との間で無線通信された複数の前記基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、前記所定単位で量子化し、
量子化した複数の前記基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を表す前記測定パターンと、前記複数の基準パターンのそれぞれとを比較して、前記測定パターンに最も近い1つの前記基準パターンを選択する
請求項1から7の何れか1項に記載の位置検出システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る位置検出システム10について説明する。位置検出システム10は、屋内または地下等を移動する移動通信装置20の位置を精度良く検出する。
【0012】
図1は、実施形態に係る位置検出システム10を示す図である。実施形態に係る位置検出システム10は、移動通信装置20と、複数の固定通信装置30と、算出装置40とを備える。
【0013】
移動通信装置20は、使用者により持ち運ばれる情報処理端末である。移動通信装置20は、通信機能、入力機能、および音声出力および画像表示等の出力機能を有する。移動通信装置20は、このような機能を有していれば、例えば、ノート型のコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機または専用の情報端末等のどのような装置であってもよい。
【0014】
複数の固定通信装置30は、屋内または地下等における互いに異なる予め定められた位置に配置される。例えば、複数の固定通信装置30は、移動通信装置20の位置を検出する対象領域を囲むように配置される。複数の固定通信装置30は、例えば屋内または地下等の天井、壁または柱等に設置される。
【0015】
固定通信装置30は、移動通信装置20と無線通信が可能な情報処理端末である。固定通信装置30は、例えば、Wi−Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)等の無線ルータ装置である。固定通信装置30が無線ルータ装置である場合、移動通信装置20は、複数の固定通信装置30のうちの何れかを介して、インターネット上のサーバにアクセスすることができる。
【0016】
算出装置40は、移動通信装置20および複数の固定通信装置30とネットワークを介して接続される情報処理装置である。例えば、算出装置40は、一般的なコンピュータまたはサーバであってよい。また、算出装置40は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドシステムのように複数台のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0017】
算出装置40は、対象領域の近傍に設けられてもよいし、対象領域から離れた場所に設けられてもよい。また、算出装置40は、移動通信装置20内に実現されてもよい。算出装置40は、移動通信装置20または複数の固定通信装置30とネットワークを介して接続され、移動通信装置20または複数の固定通信装置30から必要な情報を取得して、移動通信装置20の位置を算出する。
【0018】
使用者は、移動通信装置20を保持して、対象領域内を移動する。位置検出システム10は、対象領域内における移動通信装置20の位置を検出し、検出した位置を例えば移動通信装置20の表示部等に表示する。これにより、使用者は、対象領域内における自身の位置を認識することができる。
【0019】
図2は、基準信号の送信点における送信パワーおよび受信点における電波強度を示す図である。移動通信装置20は、所定の送信パワーで出力される基準信号を複数の固定通信装置30のそれぞれと無線通信する。
【0020】
本実施形態において、移動通信装置20は、第1間隔毎に、複数の固定通信装置30のそれぞれに基準信号を送信する。そして、本実施形態において、複数の固定通信装置30のそれぞれは、移動通信装置20から送信された基準信号を受信する。
【0021】
なお、複数の固定通信装置30のそれぞれは、第1間隔毎に、基準信号を移動通信装置20に対して送信してもよい。この場合、移動通信装置20は、複数の固定通信装置30のそれぞれから送信された複数の基準信号を受信する。この場合、複数の固定通信装置30は、送信した基準信号が干渉しないように、例えば互いに時間をずらして基準信号を送信する。
【0022】
基準信号の送信パワーは、
図2(A)に示されるように、所定の値である。これに対して、基準信号の受信点における電波強度は、移動通信装置20と固定通信装置30との間の伝送路によって異なる。
【0023】
例えば、基準信号の受信点における電波強度は、伝送路中に障害物等が存在しない場合には、移動通信装置20と固定通信装置30との間の距離が長い程、小さくなる。従って、移動通信装置20がある固定通信装置30から離れていく方向に移動する場合、その固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された基準信号の受信点における電波強度は、
図2の(B)に示されるように、徐々に小さくなる。反対に、移動通信装置20がある固定通信装置30に近づく方向に移動する場合、その固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された基準信号の受信点における電波強度は、
図2の(C)に示されるように、徐々に大きくなる。
【0024】
図3は、対象領域を分割した複数の部分領域を示す図である。位置検出システム10では、例えば
図3の点線で区切られたA〜Pに示されるような、対象領域を分割した複数の部分領域が設定されている。
【0025】
対象領域の周囲には、複数の固定通信装置30が配置されている。例えば、
図3の例では、10個の固定通信装置30(30−1〜30−10)が、対象領域を囲むように配置されている。複数の固定通信装置30は、全ての部分領域について、その部分領域を囲む少なくとも3個の固定通信装置30が存在するように配置されている。
【0026】
図4は、複数の部分領域に一対一に対応する複数の基準パターンを示す図である。
図5は、基準通信機50が部分領域(N)の中心に配置されている場合における、基準通信機50と、複数の固定通信装置30(30−1〜30−10)との間の複数の伝送路を示す図である。
【0027】
位置検出システム10では、移動通信装置20の位置を検出する処理に先だって、予め、複数の基準パターンが生成される。複数の基準パターンは、複数の部分領域に一対一に対応する。例えば、
図4の例の場合、A〜Pの部分領域に一対一で対応する16個の基準パターンが予め生成される。
【0028】
複数の基準パターンのそれぞれは、複数の固定通信装置30と対応する部分領域に配置された基準通信機50との間で無線通信された複数の基準信号の、受信点における電波強度の指標値を表す。
【0029】
電波強度の指標値とは、例えば、受信装置が受信した信号から算出された電波の通信品質または電波強度を表す値である。電波強度の指標値とは、例えば、アンテナにより受信した電波の電圧値の対数値を所定の整数値の範囲で表した値である。例えば、電波強度の指標値とは、LQI値(Link Quality Indicator)またはRSSI値(Received Signal Strength Indication)である。
【0030】
図4の例では、基準パターンは、固定通信装置30(♯1〜♯10)毎の基準信号の受信点における電波強度の指標値を表す。なお、
図4の例では、基準パターンは、所定単位で量子化した電波強度の指標値を表す。
【0031】
例えば、複数の基準パターンのそれぞれは、複数の固定通信装置30が受信した、対応する部分領域に配置された基準通信機50から送信された複数の基準信号の電波強度の指標値を表す。また、例えば、複数の基準パターンのそれぞれは、対応する部分領域に配置された基準通信機50が受信した、複数の固定通信装置30から送信された複数の基準信号の電波強度の指標値を表してもよい。
【0032】
例えば、
図5に示すように、位置検出システム10の管理者は、部分領域(N)に対応する基準パターンを生成する場合、部分領域(N)内の所定の位置(例えば部分領域(N)の中心)に基準通信機50を配置した場合における、基準通信機50と複数の固定通信装置30との間で無線通信された、複数の基準信号の受信点における電波強度の指標値を取得する。そして、位置検出システム10の管理者は、このように取得した複数の基準信号の受信点における電波強度の指標値に基づき、その部分領域に対応する基準パターンを生成する。なお、位置検出システム10の管理者は、実測した電波強度の指標値により基準パターンを設定してもよいし、シミュレーション等により算出した電波強度の指標値により基準パターンを生成してもよい。
【0033】
図6は、実施形態に係る算出装置40の機能構成を、移動通信装置20および複数の固定通信装置30とともに示す図である。算出装置40は、ネットワークを介して複数の固定通信装置30と接続される。算出装置40と複数の固定通信装置30との間のネットワークは、無線であっても有線であってもよい。
【0034】
算出装置40は、パターン記憶部62と、位置記憶部64と、収集部70と、パターン選択部72と、装置選択部74と、補正部75と、位置算出部76とを有する。
【0035】
パターン記憶部62は、予め生成された複数の基準パターンを記憶する。例えば、複数の基準パターンは、位置検出システム10の管理者により、パターン記憶部62に登録される。
【0036】
なお、本実施形態においては、複数の基準パターンは、
図4に示したように、複数の基準信号の受信点における電波強度の指標値を所定単位で量子化した値を表す。
【0037】
位置記憶部64は、複数の固定通信装置30のそれぞれの位置を記憶する。複数の固定通信装置30のそれぞれの位置は、例えば、所定の位置を基準とした座標により表される。固定通信装置30の位置は、例えば、設置時において位置検出システム10の管理者により測定され、管理者により位置記憶部64に予め登録される。
【0038】
収集部70は、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値(例えば、LQI値またはRSSI値)を収集する。本実施形態においては、移動通信装置20が基準信号を送信し、複数の固定通信装置30のそれぞれが基準信号を受信する。この場合、収集部70は、複数の固定通信装置30が受信した複数の基準信号のそれぞれの電波強度の指標値を取得する。なお、複数の固定通信装置30のそれぞれが基準信号を送信し、移動通信装置20が複数の基準信号を受信してもよい。この場合、収集部70は、移動通信装置20が受信した複数の基準信号のそれぞれの電波強度の指標値を取得する。
【0039】
パターン選択部72は、収集部70により収集された、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を取得する。そして、パターン選択部72は、パターン記憶部62に記憶された複数の基準パターンの中から、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を表す測定パターンに最も近い1つの基準パターンを選択する。
【0040】
例えば、移動通信装置20が基準信号を送信し、複数の固定通信装置30のそれぞれが基準信号を受信する場合には、パターン選択部72は、複数の固定通信装置30が受信した複数の基準信号の電波強度のそれぞれの指標値を表す測定パターンと、複数の基準パターンのそれぞれとを比較して、1つの基準パターンを選択する。また、複数の固定通信装置30のそれぞれが基準信号を送信し、移動通信装置20が複数の基準信号を受信する場合、移動通信装置20が受信した複数の基準信号のそれぞれの電波強度の指標値を表す測定パターンと、複数の基準パターンのそれぞれとを比較して、1つの基準パターンを選択する。
【0041】
なお、本実施形態においては、パターン選択部72は、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、所定単位で量子化して測定パターンを生成する。そして、パターン選択部72は、量子化した複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を表す測定パターンと、複数の基準パターンのそれぞれとを比較して、測定パターンに最も近い1つの基準パターンを選択する。
【0042】
装置選択部74は、選択された基準パターンに対応する部分領域に基づき、複数の固定通信装置30の中から3以上の固定通信装置30を選択する。例えば、装置選択部74は、選択された基準パターンに対応する部分領域を囲む位置に配置された3以上の固定通信装置30を選択する。また、例えば、複数の基準パターンのそれぞれには、3以上の固定通信装置30を含む組が予め紐づけられていてもよい。この場合、装置選択部74は、選択された基準パターンに紐づけられた組に含まれる3以上の固定通信装置30を選択する。
【0043】
補正部75は、装置選択部74により選択された3以上の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された3以上の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、収集部70から取得する。補正部75は、収集した3以上の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、予め定められた指数関数により補正して、3以上の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値を算出する。なお、補正部75による補正電波強度値の具体的な算出方法の一例については、
図18を参照してさらに説明する。
【0044】
位置算出部76は、装置選択部74により選択された3以上の固定通信装置30のそれぞれの位置を位置記憶部64から取得する。また、位置算出部76は、装置選択部74により選択された3以上の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された3以上の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値を、補正部75から取得する。そして、位置算出部76は、選択された3以上の固定通信装置30の位置、および、選択された3以上の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された3以上の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値に基づき、移動通信装置20の位置を算出する。
【0045】
例えば、位置算出部76は、三点測位法等により移動通信装置20の位置を算出する。なお、位置算出部76による位置の具体的な算出方法の一例については、
図19および
図20を参照してさらに説明する。
【0046】
そして、位置算出部76は、算出した位置を出力する。例えば、位置算出部76は、移動通信装置20の表示部に、算出した位置を表示させてもよい。また、位置算出部76は、算出した位置をネットワークを介して他の装置に送信してもよい。
【0047】
図7は、実施形態に係る算出装置40の処理の流れを示すフローチャートである。また、
図8〜
図14は、
図7に示すフローチャートを説明する際に参照される図である。
【0048】
算出装置40は、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で、基準信号が送受信される毎に、
図7に示す処理を実行する。
【0049】
まず、S11において、収集部70は、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値(例えば、LQI値またはRSSI値)を収集する。例えば、収集部70は、
図8に示すような、固定通信装置30(♯1〜♯10)毎の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を収集する。
【0050】
続いて、S12において、パターン選択部72は、複数の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、複数の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、所定単位で量子化して測定パターンを生成する。例えば、パターン選択部72は、
図9に示すような、固定通信装置30(♯1〜♯10)毎の基準信号の受信点における電波強度の指標値を量子化した測定パターンを生成する。
【0051】
続いて、S13において、パターン選択部72は、パターン記憶部62に記憶された複数の基準パターンの中から、測定パターンに最も近い1つの基準パターンを選択する。例えば、
図10に示すように、パターン選択部72は、複数の基準パターンのそれぞれについて、固定通信装置30(♯1〜♯10)毎に測定パターンに含まれる値と一致するか否かを判定する。続いて、パターン選択部72は、基準パターン毎に、値が一致した数を算出する。そして、パターン選択部72は、値が一致した数が最も多い基準パターンを、測定パターンに最も近い基準パターンとして選択する。なお、パターン選択部72は、他の比較方法により、測定パターンに最も近い1つの基準パターンを選択してもよい。例えば、パターン選択部72は、測定パターンと基準パターンとの間の距離(ノルム)を算出し、ノルムが最も小さい基準パターンを、測定パターンに最も近い基準パターンとして選択してもよい。
【0052】
そして、パターン選択部72は、選択した基準パターンに対応する部分領域を特定する。例えば、
図10の例では、パターン選択部72は、部分領域(L)を特定する。
【0053】
続いて、S14において、装置選択部74は、選択された基準パターンに対応する部分領域に基づき、複数の固定通信装置30の中から3以上の固定通信装置30を選択する。例えば、装置選択部74は、選択した3以上の固定通信装置30を頂点とした多角形が、選択された基準パターンに対応する部分領域を全て含むように、3以上の固定通信装置30を選択する。例えば、
図11の例では、装置選択部74は、選択された基準パターンに対応する部分領域(L)を囲む位置に配置された3個の固定通信装置30(♯3、♯7、♯8)を選択する。
【0054】
続いて、S15において、補正部75は、装置選択部74により選択された3以上の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、3以上の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、収集部70から取得する。例えば、補正部75は、
図12に示すように、選択された3個の固定通信装置30(♯3、♯7、♯8)と移動通信装置20との間で無線通信された、3つの基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を取得する。
【0055】
続いて、S16において、補正部75は、収集した3以上の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、予め定められた指数関数により補正して、3以上の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値を算出する。例えば、補正部75は、
図13に示すように、選択された3個の固定通信装置30(♯3、♯7、♯8)と移動通信装置20との間で無線通信された、3つの基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値を算出する。なお、補正部75による補正電波強度値の具体的な算出方法の一例については、
図18を参照してさらに説明する。
【0056】
続いて、S17において、位置算出部76は、装置選択部74により選択された3以上の固定通信装置30のそれぞれの位置を位置記憶部64から取得する。例えば、位置算出部76は、
図14に示すように、選択された3個の固定通信装置30(♯3、♯7、♯8)の位置を示す3個の座標(x,y)を取得する。
【0057】
続いて、S18において、位置算出部76は、選択された3以上の固定通信装置30の位置、および、選択された3以上の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された、3以上の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値に基づき、移動通信装置20の位置を算出する。例えば、位置算出部76は、3個の固定通信装置30(♯3、♯7、♯8)の位置および3つの基準信号の補正電波強度値を用いて三点測位法により移動通信装置20の位置を算出する。なお、位置算出部76による位置の具体的な算出方法の一例については、
図19および
図20を参照してさらに説明する。
【0058】
そして、S19において、位置算出部76は、算出した位置を出力する。
【0059】
図15は、部分領域に予め紐づけられた組の一例を示す図である。複数の基準パターンのそれぞれは、3以上の固定通信装置30を含む組が予め紐づけられていてもよい。この場合、装置選択部74は、選択された基準パターンに紐づけられた組に含まれる3以上の固定通信装置30を選択する。
【0060】
図16は、部分領域を囲む3個の固定通信装置30を含む複数の組の一例を示す図である。また、装置選択部74は、選択された基準パターンに対応する部分領域を囲む3以上の固定通信装置30の組を、複数組選択してもよい。
【0061】
例えば、
図16の例では、装置選択部74は、選択された基準パターンに対応する部分領域を囲む位置に配置された3個の固定通信装置30(♯3、♯7、♯8)を含む第1の組、および、3個の固定通信装置30(♯4、♯7、♯9)を含む第2の組を選択する。
【0062】
この場合、位置算出部76は、選択した組毎に移動通信装置20の候補位置を算出する。そして、位置算出部76は、組毎に算出した候補位置の平均値または中央値を、移動通信装置20の位置として決定する。
【0063】
図17は、部分領域に紐づけられた複数の組の一例を示す図である。また、複数の基準パターンのそれぞれは、3以上の固定通信装置30を含む組が、複数個紐づけられていてもよい。この場合、装置選択部74は、選択された基準パターンに紐づけられた複数個の組を選択する。そして、位置算出部76は、選択した組毎に移動通信装置20の候補位置を算出し、組毎に算出した候補位置の平均値または中央値を移動通信装置20の位置として決定する。
【0064】
図18は、3個の固定通信装置30を選択した場合における、3個の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
装置選択部74は、複数の固定通信装置30の中から、第1の固定通信装置30−1、第2の固定通信装置30−2および第3の固定通信装置30−3を選択する。
【0066】
ここで、移動通信装置20と第1の固定通信装置30−1との間で無線通信された基準信号の受信点における電波強度の指標値は“l”であるとする。また、移動通信装置20と第2の固定通信装置30−2との間で無線通信された基準信号の受信点における電波強度の指標値は“m”であるとする。移動通信装置20と第3の固定通信装置30−3との間で無線通信された基準信号の受信点における電波強度の指標値は“n”であるとする。
【0067】
このような場合、補正部75は、例えば、
図18に示すフローチャートに従って、3個の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値を算出する。
【0068】
まず、S21において、補正部75は、移動通信装置20と第1の固定通信装置30−1との間で無線通信された基準信号の受信点における第1の補正電波強度値(L)を、下記の式(11)により算出する。
【数1】
【0069】
続いて、S22において、補正部75は、移動通信装置20と第2の固定通信装置30−2との間で無線通信された基準信号の受信点における第2の補正電波強度値(M)を、下記の式(12)により算出する。
【数2】
【0070】
続いて、S23において、補正部75は、移動通信装置20と第3の固定通信装置30−3との間で無線通信された基準信号の受信点における第3の補正電波強度値(N)を、下記の式(13)により算出する。
【数3】
【0071】
なお、k
1、k
2およびk
3は、定数である。k
1、k
2およびk
3は、基準信号を受信する受信装置によって異なる。
【0072】
このように補正部75は、gを基準信号における電波強度の指標値とし、kを基準信号を受信した装置に対応して予め定められた定数とし、Gを基準信号の受信点における補正電波強度値とした場合、式(14)の演算を実行する。
【数4】
【0073】
これにより、補正部75は、装置選択部74により選択された3個の固定通信装置30と移動通信装置20との間で無線通信された3個の基準信号のそれぞれの受信点における電波強度の指標値を、予め定められた指数関数により補正して、3個の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値を算出することができる。電波強度の指標値は、距離に対して線形ではない。補正部75は、このような電波強度の指標値を指数関数により補正して、距離の次元に近い値に変換する。従って、位置算出部76は、補正電波強度値を用いることにより、移動通信装置20の位置を精度良く算出することができる。
【0074】
図19は、移動通信装置20の位置の算出処理の流れを示すフローチャートである。
図20は、3個の固定通信装置30を選択した場合における、移動通信装置20の位置の算出方法の一例を説明するための図である。
【0075】
装置選択部74は、複数の固定通信装置30の中から、第1の固定通信装置30−1、第2の固定通信装置30−2および第3の固定通信装置30−3を選択する。
【0076】
ここで、第1の固定通信装置30−1の位置は(x
1,y
1)であり、第2の固定通信装置30−2の位置は(x
2,y
2)であり、第3の固定通信装置30−3の位置は(x
3,y
3)であるとする。また、移動通信装置20と第1の固定通信装置30−1との間で無線通信された基準信号の受信点における補正電波強度値は“L”であるとする。また、移動通信装置20と第2の固定通信装置30−2との間で無線通信された基準信号の受信点における補正電波強度値は“M”であるとする。移動通信装置20と第3の固定通信装置30−3との間で無線通信された基準信号の受信点における補正電波強度値は“N”であるとする。
【0077】
このような場合、位置算出部76は、例えば、
図19に示すフローチャートに従って、移動通信装置20の位置を算出する。
【0078】
まず、S31において、位置算出部76は、第1分割点(x
a,y
a)を算出する。第1分割点(x
a,y
a)は、第1の固定通信装置30−1の位置と第2の固定通信装置30−2の位置とを結ぶ線を、基準信号の受信点における補正電波強度値の大きさに応じた比率で分割した点である。この場合、第1の固定通信装置30−1および第2の固定通信装置30−2のうち、基準信号の受信点における補正電波強度値が大きい方が、第1分割点(x
a,y
a)が近くなるように分割される。従って、位置算出部76は、下記の式(21)および(22)を演算して、第1分割点(x
a,y
a)を算出する。
【数5】
【0079】
続いて、S32において、位置算出部76は、第2分割点(x
b,y
b)を算出する。第2分割点(x
b,y
b)は、第2の固定通信装置30−2の位置と第3の固定通信装置30−3の位置とを結ぶ線を、基準信号の受信点における補正電波強度値の大きさに応じた比率で分割した点である。この場合、第2の固定通信装置30−2および第3の固定通信装置30−3のうち、基準信号の受信点における補正電波強度値が大きい方が、第2分割点(x
b,y
b)が近くなるように分割される。従って、位置算出部76は、下記の式(23)および(24)を演算して、第2分割点(x
b,y
b)を算出する。
【数6】
【0080】
続いて、S33において、位置算出部76は、第1分割点(x
a,y
a)と第3の固定通信装置30−3の位置とを結ぶ第1直線121を算出する。続いて、S34において、位置算出部76は、第2分割点(x
b,y
b)と、第1の固定通信装置30−1の位置とを結ぶ第2直線122を算出する。
【0081】
続いて、S35において、位置算出部76は、第1直線121と第2直線122との交点(G
x,G
y)を算出する。そして、位置算出部76は、この交点(G
x,G
y)を、移動通信装置20の位置として出力する。
【0082】
なお、位置算出部76は、第1直線121と第2直線122との交点(G
x,G
y)を、下記の式(25)により直接演算してもよい。
【数7】
【0083】
なお、式(25)において、a、b、cおよびdは、下記の式により表される。
【数8】
【0084】
以上のように、実施形態に係る位置検出システム10は、対象領域内における移動通信装置20が存在する部分領域を特定し、部分領域を囲む3以上の固定通信装置30を選択する。続いて、実施形態に係る位置検出システム10は、移動通信装置20と選択した3以上の固定通信装置30との間で無線通信された3以上の基準信号のそれぞれの受信点における電波度値の指標値を、予め定められた指数関数により補正して補正電波強度を算出する。そして、実施形態に係る位置検出システム10は、選択した3以上の固定通信装置30の位置、および、移動通信装置20と選択した3以上の固定通信装置30との間で無線通信された3以上の基準信号のそれぞれの受信点における補正電波強度値に基づき、移動通信装置20を算出する。これにより、実施形態に係る位置検出システム10は、移動通信装置20の位置を精度良く検出することができる。
【0085】
(情報処理装置200のハードウェア構成)
図21は、情報処理装置200のハードウェア構成を示す図である。移動通信装置20、固定通信装置30および算出装置40は、例えば、
図21に示すような、通信機能を有する情報処理装置200により実現することができる。情報処理装置200は、一例として、一般のコンピュータと同様のハードウェア構成により実現される。情報処理装置200は、CPU(Central Processing Unit)202と、ROM(Read Only Memory)204と、RAM(Random Access Memory)206と、記憶装置208と、無線通信装置210と、ネットワークインターフェース装置212とを備える。各部は、バスにより接続される。
【0086】
CPU202は、RAM206の所定領域を作業領域としてROM204または記憶装置208に予め記憶された各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、情報処理装置200を構成する各部の動作を統括的に制御する。また、CPU202は、ROM204または記憶装置208に予め記憶されたプログラムとの協働により無線通信装置210およびネットワークインターフェース装置212等を動作させる。
【0087】
ROM204は、情報処理装置200の制御に用いられるプログラムおよび各種設定情報等を書き換え不可能に記憶する。RAM206は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体である。RAM206は、CPU202の作業領域として機能する。
【0088】
記憶装置208は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、磁気的または光学的に記録可能な記憶媒体等の書き換え可能な記録装置である。記憶装置208は、情報処理装置200の制御に用いられるプログラムを記憶する。
【0089】
無線通信装置210は、Wi−Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)等により他の装置と無線通信を行う。無線通信装置210は、移動通信装置20および固定通信装置30に適用された場合、基準信号の送受信を行う。なお、算出装置40は、無線通信装置210を備えない構成であってもよい。
【0090】
ネットワークインターフェース装置212は、他の装置とインターネット等を介して情報を送受信する。例えば、ネットワークインターフェース装置212は、算出装置40に適用された場合、基準信号の受信点における電波強度を、移動通信装置20または固定通信装置30から受信する。なお、移動通信装置20は、固定通信装置30を介してインターネット等のネットワークに接続する場合には、ネットワークインターフェース装置212を備えない構成であってもよい。
【0091】
情報処理装置200が算出装置40として動作する場合、情報処理装置200で実行されるプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供される。また、情報処理装置200が算出装置40として動作する場合、情報処理装置200で実行されるプログラムは、持ち運び可能な記憶媒体等に予め組み込んで提供されてもよい。
【0092】
情報処理装置200が算出装置40として機能する場合、情報処理装置200で実行されるプログラムは、収集モジュールと、パターン選択モジュールと、装置選択モジュールと、補正モジュールと、位置算出モジュールとを含むモジュール構成となっている。CPU202(プロセッサ)は、記憶媒体等からこのようなプログラムを読み出して、上記各モジュールをRAM206(主記憶装置)にロードする。そして、CPU202(プロセッサ)は、このようなプログラムを実行することにより、収集部70、パターン選択部72、装置選択部74、補正部75および位置算出部76として機能する。また、記憶装置208は、パターン記憶部62および位置記憶部64として機能する。なお、収集部70、パターン選択部72、装置選択部74、補正部75および位置算出部76の一部または全部がハードウェアにより構成されていてもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。